JPH0913101A - 粉末冶金用鉄基混合物およびその製造方法 - Google Patents

粉末冶金用鉄基混合物およびその製造方法

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JPH0913101A
JPH0913101A JP8127629A JP12762996A JPH0913101A JP H0913101 A JPH0913101 A JP H0913101A JP 8127629 A JP8127629 A JP 8127629A JP 12762996 A JP12762996 A JP 12762996A JP H0913101 A JPH0913101 A JP H0913101A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】銅粉添加物の偏析および発塵(ダスト)の発生
が少なく、流動性とその製造後の経時による変化が少な
い粉末冶金用鉄基粉末混合物を提供する。 【解決手段】平均粒径が78μmの粉末冶金用鉄粉にオ
レイン酸0.3重量%をスプレー噴霧し3分間均一混合
し、平均粒径23μmの天然黒鉛粉1重量%、ステアリ
ン酸亜鉛0.4重量%、銅粉2重量%を添加して、十分
混合後、110℃で加熱混合し、さらに混合しながら8
5℃以下に冷却して、鉄粉粒子に黒鉛粉と銅粉をオレイ
ン酸とステアリン酸亜鉛の共融物結合剤によって固着し
た粉末混合物を製造し、さらにステアリン酸亜鉛0.3
重量%添加し均一に混合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、とりわけ銅粉添加物の
偏析および発塵(ダスト)の発生が少なく、流動性とそ
の製造後の経時による変化が少ない、粉末冶金用鉄基粉
末混合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金用鉄基粉末混合物は、鉄粉に銅
粉、黒鉛粉、燐化鉄粉などの合金粉末と、さらに必要に
応じて切削性改善用粉末に加えて、ステアリン酸亜鉛、
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛などの潤滑
剤を混合して製造するのが一般的である。このような潤
滑剤は金属粉末との混合性や焼結時の逸散性などから選
択されている。
【0003】しかし、このような混合方法は以下のよう
な欠点を持っている。先ず、混合法の大きな欠点は原料
混合物が偏析を生ずることである。偏析について述べる
と、粉末混合物は大きさ、形状および密度の異なる粉末
を含んでいるため、混合後の輸送、ホッパへの装入、払
い出し、または成形処理などの際に、容易に偏析が生じ
てしまう。例えば、鉄基粉末と黒鉛粉との混合物は、ト
ラック輸送中の振動によって、輸送容器内において偏析
が起こり、黒鉛粉が浮かび上がることは良く知られてい
る。また、ホッパに装入された黒鉛はホッパ内偏析のた
め、ホッパより排出する際、排出の初期、中期、終期で
それぞれ黒鉛粉の濃度が異なることも知られている。
【0004】これらの偏析によって製品は組成にばらつ
きを生じ、寸法変化および強度のばらつきが大きくなっ
て、不良品の原因となる。
【0005】また、黒鉛粉などはいずれも微粉末である
ため、混合物の比表面積を増大させ、その結果、流動性
が低下する。このような流動性の低下は、成形用金型へ
の充填速度を低下させるため、圧粉体の生産速度を低下
させてしまうという欠点もある。
【0006】このような粉末混合物の偏析を防止する技
術として特開昭56−136901号公報や特開昭58
−28321号公報に開示されたような結合剤を用いる
技術があるが、粉末混合物の偏析を充分に改善するよう
に結合剤の添加量を増加させると、粉末混合物の流動性
が低下する問題点がある。
【0007】また本発明者らは先に特開平1−1657
01号公報、特開平2−47201号公報において、金
属石鹸又はワックスとオイルとの共溶融物を結合剤とし
て用いる方法を提案した。これらは粉末混合物の偏析と
発塵を格段に低減することができると共に、流動性を改
善することができるものである。しかし、これらの方法
では上述の偏析を防止する手段に起因して、粉末混合物
の流動性が経時的に変化する問題があった。そこで、さ
らに本発明者らは特開平2−57602号公報において
提案したような、高融点のオイルと金属石鹸の共溶融物
を結合剤に用いる方法を開発した。その技術は、共溶融
物の経時変化が少なく、粉末混合物の流動性の経時的な
変化が低減されるものである。しかし、その技術では常
温では固体の高融点の飽和脂肪酸と金属石鹸とを鉄基粉
末と混合するので、粉末混合物の見掛け密度が変化する
という別の問題があった。
【0008】この問題を解決するため本発明者らは特開
平3−162502号公報にて、鉄基粉末表面を脂肪酸
で被覆した後、鉄基粉末表面に添加物を脂肪酸と金属石
鹸との共溶融物で付着させ、さらにその外表面に金属石
鹸を添加するという方法を提案した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これら方法において偏
析の問題はかなり解決されたが、添加合金成分として最
も重要な銅粉のみはこれら方法においても鉄基粉末への
固着が不十分で、偏析する度合が大きく、これの問題が
課題となっていた。
【0010】本発明はこの問題を解決することを目的と
するものである。本発明は銅粉末の1次粒径と凝集粒径
との関係が付着度に大きく影響することを見出したこと
によりなされたものである。また、銅粉表面を処理する
ことによって一層付着度が高まることを知見した結果な
されたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するためになされたもので、鉄基粉末と、少なくとも
銅粉末または亜酸化銅粉末を含む1種以上の合金用粉末
と、鉄基粉末に合金用粉末を結合するための有機物とを
含んでなる粉末冶金用鉄基混合物において、前記銅粉末
または亜酸化銅粉末は、マイクロトラック法で評価され
る凝集粒径が5〜28μm、BET法で評価される1次
粒径が0.2〜1.5μmであることを特徴とする粉末
冶金用鉄基混合物である。
【0012】この場合において、粉末冶金用鉄基混合物
全体中の銅の含有率に対する、該混合物の325メッシ
ュを通過した部分の銅の含有率の比が2以下であると好
ましい。また、前記有機物としては脂肪酸と金属石鹸と
の共溶融物又は融点の異なる2種以上のワックスの部分
溶融物であると好適である。
【0013】さらに上記粉末冶金用鉄基混合物におい
て、前記銅粉末又は亜酸化銅粉末が、の表面に0.1〜
2重量%のポリビニルブチラールが付着されたこと、前
記銅粉末が、表面に0.1〜2重量%のSi系又はAl
系カップリング剤が付着されたこと、又は前記銅粉末の
表面に0.1〜2重量%の黒鉛が付着されたことが好ま
しく、さらにまた、銅粉末が酸化還元銅粉であると好適
である。
【0014】次に、本発明の粉末冶金用鉄基混合物の製
造方法として次を提供する。すなわち、本発明の製造方
法は、鉄基粉末に常温で液体の脂肪酸を加えて1次混合
し、次いで少なくとも銅粉末または亜酸化銅粉末を含む
1種以上の合金用粉末に金属石鹸を加えて添加して2次
混合し、該2次混合工程中又は2次混合後に昇温して脂
肪酸と金属石鹸の共溶融物を生成させ、次いで、3次混
合しながら冷却し、前記共溶融物を冷却固着させ、該共
溶融物の結合力により鉄基粉末粒子の表面に合金用粉末
を固着させ、さらに、冷却時に金属石鹸又はワックスを
加え、4次混合を行う粉末冶金用鉄基混合物の製造方法
において、前記銅粉末又は亜酸化銅粉末は、マイクロト
ラック法で評価される凝集粒径が5〜28μm、BET
法で評価される1次粒径が0.2〜1.5μmであるこ
とを特徴とする粉末冶金用鉄基混合物の製造方法であ
る。
【0015】また、本発明の粉末冶金用鉄基混合物の別
の製造方法として、鉄基粉末に、少なくとも銅粉末また
は亜酸化銅粉末を含む1種以上の合金用粉末と融点の異
なる2種以上のワックスを加えて1次混合し、該1次混
合工程中又は1次混合後に昇温してワックスの部分溶融
物を生成させ、次いで、2次混合しながら冷却し、前記
部分溶融物を冷却固着させ、該部分溶融物の結合力によ
り鉄基粉末粒子の表面に合金用粉末を固着させ、さら
に、冷却時に金属石鹸又はワックスを加え、3次混合を
行う粉末冶金用鉄基混合物の製造方法において、前記銅
粉末又は亜酸化銅粉末は、マイクロトラック法で評価さ
れる凝集粒径が5〜28μm、BET法で評価される1
次粒径が0.2〜1.5μmであることを特徴とする粉
末冶金用鉄基混合物の製造方法を提供する。
【0016】以下に本発明の技術思想並びに限定理由を
述べる。前述のように、銅は鉄基粉末を焼結して製造さ
れる焼結体の強度を高めるために必要な元素であるが、
予め銅粉を鉄基粉末その他と混合物を形成した場合、鉄
基粉末への付着がかならずしも十分ではなく、混合物中
での偏析やダスト化の問題があった。本発明者らは鋭意
検討した結果鉄基粉末の形状に着目し、これら鉄基粉末
の凹部に優先的に銅粉末を付着させることでこの問題の
解決を計った。
【0017】すなわち、粉末冶金で通常用いられる鉄基
粉末の粒径は平均で80μmであり凹部の径は5〜20
μm程度である。この凹部に入り込むためには銅粉の見
掛け上の粒径である凝集粒径が5〜28μmでなければ
ならない。28μmを越えると凹部に入り込むには大き
くなりすぎ不適であり、5μm未満の銅粉は高価で実用
上不向きである。
【0018】また、付着強度を出すため銅粉の周囲に結
合剤となるべき有機物が均一にまんべんなくコーティン
グされている必要があるが、凝集粉末を構成する1次粒
子の径を0.2〜1.5μmとすれば、毛細管現象によ
りこれら1次粒子の空隙に溶融した有機物が浸み込み前
記目的を達成しうる。安価にて0.2μm未満の銅粉末
を入手するのは困難であり、1.5μmを越えると付着
率が低下する。以上の理由により、銅粉末の凝集粒径
を、マイクロトラック法で5〜28μm、1次粒径をB
ET法で0.2〜1.5μmとした。なお本願で言うマ
イクロトラック法で評価した凝集粒径とは、実施例でも
述べるとおりレーザ回析型マイクロトラック粒度分析計
で測定した50%粒径を、BET法で評価される1次粒
径とは、BET法で測定した比表面積から粒子が全て球
状で同一粒径からなると仮定して算出した粒径を言う。
【0019】
【発明の実施の形態】銅粉末が鉄基粉末に付着している
か否かは、鉄基混合物全体に含まれる銅の含有率に対す
る、該混合物の325メッシュ(45μm)を通過した
部分の銅の含有率の比で評価される。すなわち、−32
5メッシュの鉄基粉末の比率は小さく、銅粉の凝集粒径
は5〜28μmであるから、銅粉が全て鉄基粉末に鉄基
粉末径に関係なく均一に付着すればこの比は1となり、
遊離銅粉が多いほどこの比は1より大きくなる。本発明
者らは偏析、ダスト等について検討した結果、この比が
2以下であれば実際上問題がないことを確認した。
【0020】鉄基粉末と銅粉末を固着する有機物として
は脂肪酸と金属石鹸との共溶融物または融点の異なる2
種以上のワックスの部分溶融物であることが好ましい。
本発明者らが特開平3−162502号公報で開示した
脂肪酸と金属石鹸との共溶融物を用いる方法は、共溶融
状態において融体が銅粉末の凝集粒子に毛細管現象によ
り浸み込み、粒全体をコーティングするのに最適であ
る。融点の異なる2種以上のワックスの部分溶融物も同
様に銅粉末を均一にコーティングするので好ましい。
【0021】銅粉末の表面に0.1〜2重量%のポリビ
ニルブチラールを付着すると、粉末混合物中に含まれる
有機物とPVBとが共融合化合物を形成し、鉄基粉末と
の固着性がさらに向上する。0.1重量%未満では付着
率が低く、2重量%を越えてポリビニルブチラールを付
着させるのは困難なので共に不適である。
【0022】また銅粉末の表面に0.1〜2重量%のS
i系またはAl系カップリング剤が表面処理されると、
粉末混合物中に含まれる有機物とカップリング剤とが化
学結合し、鉄基粉末との固着性がさらに向上する。0.
1重量%未満では銅粉の付着率が低く、2重量%を越え
て添加してもその効果は変わらず、添加コストが高くな
るだけである。
【0023】また、黒鉛粉末は銅粉末に比べて鉄基粉末
への付着性が強いので、銅粉末の表面に0.1〜2重量
%の黒鉛を付着することにより、黒鉛粉末を介して銅粉
末を鉄基粉末にさらに強く固着させることができる。
0.1重量%未満では銅粉の付着率は低く、2重量%を
越えて付着させることはできない。
【0024】これら粉末冶金用鉄基混合物の製造方法と
しては、鉄基粉末に常温で液体の脂肪酸を加えて1次混
合し、次いで少なくともマイクロトラック法で評価され
る凝集粒径が5〜28μm、BET法で評価される1次
粒径が0.2〜1.5μmである銅粉末を含む1種以上
の合金用粉末に金属石鹸を加えて添加して2次混合し、
該2次混合工程中又は2次混合後に昇温して脂肪酸と金
属石鹸の共溶融物を生成させ、次いで3次混合しながら
冷却し、前記共溶融物を冷却固着させ、該共溶融物の結
合力により鉄基粉末粒子の表面に合金用粉末を固着さ
せ、さらに冷却時に金属石鹸またはワックスを加え、4
次混合を行なうのが好ましい。
【0025】また、鉄基粉末に少なくともマイクロトラ
ック法で評価される凝集粒径が5〜28μm、BET法
で評価される1次粒径が0.2〜1.5μmである銅粉
末を含む1種以上の合金用粉末と融点の異なる2種以上
のワックスを加えて1次混合し、該1次混合工程中又は
1次混合後に昇温してワックスの部分溶融物を生成さ
せ、次いで2次混合しながら冷却し、前記部分溶融物を
冷却固着させ、該部分溶融物の結合力により鉄基粉末粒
子の表面に合金用粉末を固着させ、さらに冷却時に金属
石鹸又はワックスを加え、3次混合を行うのが好まし
い。
【0026】前記のとおり、表面に0.1〜2重量%の
ポリビニルブチラールを付着させたり、0.1〜2重量
%のSi系またはAl系カップリング剤を表面処理した
り、または0.1〜2重量%の黒鉛を付着した銅粉末を
用いることがさらに好ましい。これらの具体的な実現方
法は実施例で詳しく述べる。
【0027】なお、銅粉末としては電解銅粉や酸化銅還
元粉等があり、いずれの種類のものでも使用可能である
が、凝集粒内部をミクロ的に見たとき、酸化銅還元粉の
方が内部に小さな空洞をもった性状であることからより
好ましい。図1、図2に銅粉の電子顕微鏡写真を示し
た。電解銅粉の形状は図1に示すように一次粒子が樹枝
状に結合しており、一方、酸化銅還元粉は図2に示すよ
うにウイスカ状の繊維形状が「まゆ」のようにゆるく結
合している。このため同じ凝集粒径では酸化銅還元粉の
一次粒径が小さくなる。混合時には銅粉は鉄粉に衝突を
繰り返しながら付着するが、酸化銅還元粉は鉄粉の凹部
に適合するように変形しながら付着している。一方電解
銅粉ではこのような混合時の変形は起こらない。このた
め電解銅粉よりも酸化銅還元粉の方が銅の付着力が向上
する。
【0028】前記説明で銅粉末に限って説明したが、さ
らに実験を進めた結果、銅粉末のかわりに亜酸化銅粉
(Cu2 O)を用いても全く同様の結果を得られること
が分かった。これは亜酸化銅粉の表面が金属粉に比べ有
機物との付着性に優れているためと思われる。従って以
上の説明は亜酸化銅粉末の場合にも当てはまるものであ
る。
【0029】
【実施例】
実施例1〜6、比較例1〜3 平均粒径が78μmの粉末冶金用鉄粉にオレイン酸0.
3重量%をスプレー噴霧し3分間均一混合した(1次混
合)。その後平均粒径23μmの天然黒鉛粉1重量%、
ステアリン酸亜鉛0.4重量%、表1に示す凝集粒径、
1次粒径をもつ銅粉2重量%を添加して、十分混合後、
110℃で加熱混合し(2次混合)、さらに混合しなが
ら85℃以下に冷却して(3次混合)、鉄粉粒子に黒鉛
粉と銅粉をオレイン酸とステアリン酸亜鉛の共融物結合
剤によって固着した粉末混合物を製造した。さらにステ
アリン酸亜鉛0.3重量%添加し均一に混合後(4次混
合)、加熱混合機から排出した。これを混合方法1とす
る。
【0030】平均粒径が78μmの粉末冶金用鉄粉に平
均粒径23μmの天然黒鉛粉1重量%、ステアリン酸ア
ミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの混合物0.
4重量%、表1に示す凝集粒径、1次粒径をもつ銅粉を
2重量%添加して、十分混合後、110℃で混合加熱し
(1次混合)、さらに混合しながら85℃以下に冷却し
て鉄粉粒子に黒鉛粒子に黒鉛粉と銅粉をステアリン酸ア
ミドとエチレンビスステアリン酸アミドとの共融物結合
材によって固着した粉末混合物を製造した(2次混
合)。さらにエチレンビスステアリン酸アミド0.3重
量%とステアリン酸亜鉛0.1重量%添加し均一に混合
後加熱、混合機から排出した(3次混合)。これを混合
方法2とする。
【0031】実施例1、2は空気分級した電解銅粉を使
用した。実施例3、4では酸化銅を還元して製造された
銅粉を用いた。実施例5では亜酸化銅を用いた。各混合
物について黒鉛付着度、銅付着度、流動性を評価し、混
合方法とともに表1にまとめた。黒鉛付着度、銅付着
度、流動性は次のように定義したものである。 黒鉛付着度=(−100〜+200メッシュの混合粉中
のC含有量)/(全混合粉中のC含有量)*100
(%) 銅付着度=(−325メッシュの混合粉中のCu量)/
(全混合粉中のCu量) 流動性:JIS Z2502による。
【0032】なお銅粉の凝集粒径はレーザ回折型マイク
ロトラック粒度分析計で測定した50%粒径を、1次粒
径はBET法で測定した比面積から粒子がすべて球状で
同一粒径からなると仮定して算出した粒径で表す。実施
例1〜6においては、混合方法1、2を問わず使用され
る銅粉末がマイクロトラック法で評価される凝集粒径が
5〜28μm、BET法で評価される1次粒径が0.2
〜1.5μmであれば、銅の付着率が1〜2と良好であ
る。また実施例1、2と実施例3、4を比べると後者の
銅付着が多い(銅付着度が小さい程良く付着してい
る)。これは酸化銅還元粉が内部に小さな空洞をもった
性状であることに関係する。比較例1は通常鉄基粉末冶
金に良く用いられる電解銅粉であり凝集粒径、1次粒径
とも大きく銅の付着が悪い。比較例2、3ではそれぞれ
凝集粒径、1次粒径が大きく銅の付着が悪い。また何れ
の実施例でも黒鉛付着、流動性はともに良好である。
【0033】実施例7〜13、比較例4〜6 実施例2及び4と比較例1で用いた銅粉を用いて混合方
法1、2で粉末混合物を製造した。ただし銅粉はポリビ
ニルブチラール(PVB)の10%エタノール溶液を銅
粉と所定量混合後乾燥し、さらに解砕してPVBを0.
08〜0.5重量%付着した。実施例7〜13、比較例
4〜6を表2にまとめて示した。黒鉛付着度、銅付着
度、流動性は表1と同様のものである。混合方法1、2
を問わず、実施例7から実施例12のように、使用され
る銅粉末が、マイクロトラック法で評価される凝集粒径
が5〜28μm、BET法で評価される1次粒径が0.
2〜1.5μmでかつ表面に0.1〜2%のPVBを付
着した粉末を使用すれば、実施例2、4と比べ一層銅粉
が付着する(銅付着度が小さい)。なお、PVA付着量
が0.1%未満(実施例12)ではこの改善効果はみら
れない。比較例4〜6は銅粉の凝集粒径、1次粒径とも
大きいので、PVBを付着しても銅の付着が悪い。なお
PVAは付着量が2%を超えては付着しなかった。
【0034】実施例14〜19、比較例7〜8 実施例1と同様の方法(混合方法1,2)で粉末混合物
を製造した。ただし銅粉はカップリング材を種々の量付
着させたものを使用した。カップリング材の銅粉への付
着は、カップリング材の10%エタノール溶液を銅粉と
所定量混合後、100℃で1時間乾燥後解砕によりおこ
なった。表3に実施例14〜19、比較例7〜8をまと
めて示した。黒鉛付着度、銅付着度、流動性は表1と同
様である。
【0035】混合方法1,2を問わず、使用される銅粉
末が、マイクロトラック法で評価される凝集粒径が5〜
28μm、BET法で評価される1次粒径が0.2〜
1.5μmである銅粉末の表面に0.1〜2%のSi系
カップリング材、およびAl系カップリング材を表面処
理した粉末であれば、実施例2,4に比べ一層銅粉が付
着する。
【0036】比較例7はカップリング材の付着量が2%
を超えてもその添加効果は認められず、コスト的に好ま
しくない。比較例8ではカップリング材の付着量が小さ
く銅の付着性が改善されない。
【0037】実施例20〜22、比較例9 銅粉として、黒鉛粉を種々の量付着させた銅粉を使用し
た。黒鉛粉の銅粉への付着は、PVBの10%エタノー
ル溶液に黒鉛粉末を分散させ、銅粉と混合後混合しなが
ら乾燥させた。表4に実施例20〜22、比較例9を示
した。使用される銅粉末が、マイクロトラック法で評価
される凝集粒径が5〜28μm、BET法で評価される
1次粒径が0.2〜1.5μmである銅粉末の表面に
0.1〜2%の黒鉛粉を付着させた場合、銅の付着性が
実施例2に比べ改善される。比較例9では黒鉛の付着量
が小さく銅の付着性が改善されない。また本試験では2
%を超えて黒鉛を付着させることはできなかった。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【発明の効果】本発明の粉末冶金用鉄基粉末混合物は、
上記のように形成されているので、とくに銅粉添加物の
偏析および発塵(ダスト)の発生が少なく、流動性が変
化せず、製造後の経時による変化が少ないという効果を
奏する。この粉末冶金用鉄基粉末混合物は本発明の製造
方法によって、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解銅粉の形状を示す倍率100倍の電子顕微
鏡写真である。
【図2】酸化銅還元粉の形状を示す倍率100倍の電子
顕微鏡写真である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄基粉末と、少なくとも銅粉末または亜
    酸化銅粉末を含む1種以上の合金用粉末と、鉄基粉末に
    合金用粉末を結合するための有機物とを含んでなる粉末
    冶金用鉄基混合物において、前記銅粉末または亜酸化銅
    粉末は、マイクロトラック法で評価される凝集粒径が5
    〜28μm、BET法で評価される1次粒径が0.2〜
    1.5μmであることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合
    物。
  2. 【請求項2】 粉末冶金用鉄基混合物全体中の銅の含有
    率に対する、該混合物の325メッシュを通過した部分
    の銅の含有率の比が2以下であることを特徴とする請求
    項1記載の粉末冶金用鉄基混合物。
  3. 【請求項3】 前記有機物は脂肪酸と金属石鹸との共溶
    融物又は融点の異なる2種以上のワックスの部分溶融物
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の粉末冶金
    用鉄基混合物。
  4. 【請求項4】 銅粉末の表面に0.1〜2重量%のポリ
    ビニルブチラールが付着されたことを特徴とする1、2
    又は3記載の粉末冶金用鉄基混合物。
  5. 【請求項5】 銅粉末の表面に0.1〜2重量%のSi
    系またはAl系カップリング剤が付着されたことを特徴
    とする1、2又は3記載の粉末冶金用鉄基混合物。
  6. 【請求項6】 銅粉末の表面に0.1〜2重量%の黒鉛
    が付着されたことを特徴とする1、2又は3記載の粉末
    冶金用鉄基混合物。
  7. 【請求項7】 銅粉末が酸化還元銅粉であることを特徴
    とする1、2、3、4、5又は6記載の粉末冶金用鉄基
    混合物。
  8. 【請求項8】 鉄基粉末に常温で液体の脂肪酸を加えて
    1次混合し、次いで少なくとも銅粉末または亜酸化銅粉
    末を含む1種以上の合金用粉末に金属石鹸を加えて添加
    して2次混合し、該2次混合工程中又は2次混合後に昇
    温して脂肪酸と金属石鹸の共溶融物を生成させ、次い
    で、3次混合しながら冷却し、前記共溶融物を冷却固着
    させ、該共溶融物の結合力により鉄基粉末粒子の表面に
    合金用粉末を固着させ、さらに、冷却時に金属石鹸又は
    ワックスを加え、4次混合を行う粉末冶金用鉄基混合物
    の製造方法において、前記銅粉末又は亜酸化銅粉末は、
    マイクロトラック法で評価される凝集粒径が5〜28μ
    m、BET法で評価される1次粒径が0.2〜1.5μ
    mであることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合物の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 鉄基粉末に、少なくとも銅粉末または亜
    酸化銅粉末を含む1種以上の合金用粉末と融点の異なる
    2種以上のワックスを加えて1次混合し、該1次混合工
    程中又は1次混合後に昇温してワックスの部分溶融物を
    生成させ、次いで、2次混合しながら冷却し、前記部分
    溶融物を冷却固着させ、該部分溶融物の結合力により鉄
    基粉末粒子の表面に合金用粉末を固着させ、さらに、冷
    却時に金属石鹸又はワックスを加え、3次混合を行う粉
    末冶金用鉄基混合物の製造方法において、前記銅粉末又
    は亜酸化銅粉末は、マイクロトラック法で評価される凝
    集粒径が5〜28μm、BET法で評価される1次粒径
    が0.2〜1.5μmであることを特徴とする粉末冶金
    用鉄基混合物の製造方法。
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