JPH09125215A - β型チタン合金板材の製造方法 - Google Patents

β型チタン合金板材の製造方法

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JPH09125215A
JPH09125215A JP28526395A JP28526395A JPH09125215A JP H09125215 A JPH09125215 A JP H09125215A JP 28526395 A JP28526395 A JP 28526395A JP 28526395 A JP28526395 A JP 28526395A JP H09125215 A JPH09125215 A JP H09125215A
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cold rolling
rolling
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cold
ductility
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JP28526395A
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English (en)
Inventor
Jun Shimotori
潤 霜鳥
Kazuyuki Nakasuji
和行 中筋
Atsuhiko Kuroda
篤彦 黒田
昌樹 ▲高▼島
Masaki Takashima
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanyo Special Steel Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sanyo Special Steel Co Ltd
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 「研削痕」を除去し、加工硬化で強度を向上
させても、最終加工のための延性を維持し、最終加工時
に割れや疵が見られないβ型チタン合金板材の製造方法
を提供する。 【解決手段】 第1冷間圧延+最終溶体化処理+第2冷
間圧延+第3冷間圧延を行い、第2および第3冷間圧延
をクロス方式で行い、第1冷間圧延の圧下量をH1、第2
冷間圧延の圧下量をH2、第3冷間圧延の圧下量をH3とし
たとき、下記の関係を満足するように圧下量を規定す
る。 HA=H2+H3 、H=H1+H2+H3、0.1H≦HA、0.5HA ≦H2
≦0.95HA

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、β型チタン合金
板材の製造方法、特にゴルフクラブヘッド、時計外板、
自転車ギアスプロケットなどに用いられるβ型チタン合
金板材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン合金は、α型合金、α+β型合
金、そしてβ型合金に大別される。そのうちβ型合金
は、溶体化処理によって常温で準安定なβ相単相とする
ことで、常温での変形、つまり、冷間加工を容易にした
合金である。
【0003】これまでβ型チタン合金としては、Ti-20V
-4Al-1Sn合金、Ti-15V-3Al-3Cr-3Sn合金、Ti-22V-4Al合
金などが知られている。これらβ型チタン合金の高い冷
間加工性は、β相の結晶構造が多数のすべり系を有する
体心立方晶であり、すべり系の少ない最密六方晶のα相
よりも変形が容易であることを利用したものである。
【0004】しかし、変形の容易なβ型チタン合金であ
っても、冷間加工率が上がるにつれて加工硬化し、次第
に変形は困難となる。よって、大きな冷間加工率を達成
するためには、冷間加工の中間に「焼鈍」あるいは「溶
体化処理」といった工程を加えることになる。
【0005】なお、α相が析出してもよい熱処理 (β変
態点以下の温度での熱処理) を「焼鈍」、β相単相とす
る熱処理 (β変態点を超える温度での熱処理) を「溶体
化処理」として区別できるが、厳密なものではない。ま
た、一連の冷間圧延工程の途中で行うものを「焼鈍」あ
るいは「中間焼鈍」、冷間圧延工程の最終に行うもの
を、最後の溶体化処理という意味で、「溶体化処理」あ
るいは「最終溶体化処理」とする場合がある。本明細書
においては、「最終溶体化処理」との用語について最後
の溶体化処理という意味で用いる。
【0006】図1にβ型合金の従来の一般的な製造工程
の概略を示す。つまり、所定合金組成を有するように溶
製され、インゴットに鋳込まれてから鍛造、熱間圧延を
経て、最終形状にまで冷間圧延される。このとき、予め
研削、溶削によって表面を整えてから、冷間圧延に供さ
れる。なお、図中、L方向というのは板材の長手方向が
圧延方向であるという意味である。
【0007】冷間圧延に際しては、中間焼鈍および研削
・溶削を適宜行いながら、圧延を繰り返し、所定寸法に
なったときに最終溶体化処理を行ってから、表面の研削
・溶削を行い、次いで研磨する。そして板材としては通
常はこの時点で出荷し、ユーザにおいて最終形状への冷
間プレス成形、打ち抜き、あるいは切断などを行ってか
ら製品とするのである。しかしながら、このような従来
技術におけるβ型チタン合金の製造工程には次のような
問題点がある。
【0008】研削疵の発生 一般にβ型チタン合金はVなどの酸化され易い合金元素
を多量に含有するため、その表面が酸化されやすく、加
熱を必要とする工程の後には、酸化スケールおよび表面
硬化層を除去するための研削、溶削工程が必要不可欠で
あり、しかも、酸化した表面を深く研削することによっ
て、深い「研削痕」が発生することは避けられない。こ
の「研削痕」を除去して製品の表面性状を良好なものと
するためには研磨工程を付与しなければならなかった。
【0009】ところで、これまでにもβ型チタン合金の
製造工程の改善については、いくつか提案されており、
例えば最終の冷間加工後の表面性状を良好とするための
方法として、中間焼鈍の時期 (中間焼鈍と冷間圧延との
組み合わせ) を適正化し、結晶粒径を制御する方法が、
特開平2−34754 号公報に開示されている。
【0010】それによれば、製品の表面は肌荒れのない
良好な状態とすることができ、製品の品質を向上させる
のに有効であるとしている。しかし、前述の「研削痕」
は、結晶粒が原因ではないためこのような方法では除去
することができない。
【0011】溶体化処理による強度の低下 β型チタン合金の最終製品の強度を向上させるには、時
効処理を行いα相の析出硬化作用を利用することが期待
できる。しかし、最終製品を加熱することで行うそのよ
うな時効処理を大気雰囲気下で行った場合、製品表面に
酸化スケールが生成することにより、製品が着色した
り、酸化スケールが亀裂の起点となるなどの問題が新た
に発生し、その対策として研削・溶削工程が必要とな
る。また、そのような時効処理を真空あるいは非酸化性
雰囲気で行う場合、そのための設備が必要となり、コス
トも上昇する。
【0012】これらのことから、時効処理をすることな
く、最終加工 (冷間プレス成形、打ち抜き、切断など)
のままで最終製品とする場合も少なくない。しかし、そ
の場合の最終製品の強度は最終溶体化処理後と大きくは
変わらない。例えば、冷間プレス成形による加工硬化
は、冷間加工率の限界、位置による加工率のばらつき、
などの理由で、強度の大きな向上、均一な向上はそれほ
ど期待できないからである。
【0013】そのような強度の確保には、製品肉厚の増
加が考えられるが、それでは製品重量が増加することに
なり、軽量であるというチタン合金の優位性が失われて
しまう。
【0014】その他の手段としては、最終加工 (冷間プ
レス成形、打ち抜き、切断など) の前に冷間圧延などを
付与し、それによる加工硬化によって強度を高める方法
が考えられるが、そのようにして高強度とした場合、今
度は、最終加工のための延性が不足してしまい、最終加
工時に割れや疵となるときがあった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、上
記の問題に鑑み、研磨工程によらず「研削痕」を除去し
て製品の表面性状を良好なものとするとともに、加工硬
化によって強度を向上させ、しかも、最終加工のための
延性を維持し、最終加工時に割れや疵となることのない
高強度で高延性のβ型チタン合金冷間圧延板材を製造す
る方法を提供することである。この発明の具体的な目的
は、引張強さ 850 MPa以上、伸び 15 %以上、そして光
沢度150 %以上のチタン合金板の製造方法を提供するこ
とである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題を達成すべくβ型チタン合金の冷間圧延について種々
検討を重ねた結果、次のような知見を得るに至った。
【0017】(1) 研削痕およびその消失 最終焼溶体化処理および研削工程を終えた冷間圧延板の
表面には、平面的に様々な方向、立体的に様々な角度の
「研削痕」が存在するため、一方向の冷間圧延では「研
削痕」のすべてを消失させることができず、「研削痕」
の一部が残留すること。よって、圧延方向に直角な方向
の圧延を加えることにより「研削痕」のすべてを消失さ
せることができ、光沢が出ること。
【0018】(2) 高延性、高強度の実現 最終溶体化処理後の冷間圧延に関して、一方向のみとし
た場合は、加工硬化による延性の低下が、組織の微細化
による延性の向上を常に凌駕し、そのため圧下量の増加
に伴って延性が低下する。しかし、90度の異なる二方向
からの圧延とした場合は、一方向のみの場合よりも少な
い圧下量で組織の微細化が達成され、これによる延性の
向上が、加工硬化による延性の低下を補填し、それらの
総合的効果として圧下量を増加しても延性が低下しない
こと。
【0019】また、加工硬化による強度、耐力の増加、
組織の微細化による耐力の増加は、最終溶体化処理後の
冷間圧延の圧下量に応じ、依然として認められること。
その結果、延性と強度、耐力が同時に確保されること。
【0020】かくして、この発明は、熱間圧延、第1冷
間圧延、最終溶体化処理、そして該最終溶体化処理に続
いて第2冷間圧延、および該第2冷間圧延に対してクロ
ス方式とした第3冷間圧延を行うことを特徴とするβ型
チタン合金板材の製造方法である。
【0021】ここに、クロス方式の冷間圧延とは、圧延
方向を変えた圧延という趣旨であり、角度の変更は、い
わゆる研削痕が消失するに十分な程度であれば特に制限
はない。通常は、直角にクロスさせるが、例えば45〜13
5 度程度変更させた場合であっても研削痕が消失すれば
この発明に言うクロス方式の冷間圧延ということができ
る。
【0022】この発明の好適態様によれば、前記第1冷
間圧延と第2冷間圧延とを同一方向からの圧延で行って
もよい。また、第1冷間圧延の圧下量H1、第2冷間圧延
の圧下量H2、そして第3冷間圧延の圧下量H3とし、HA=
H2+H3、H=H1+H2+H3としたとき、下記式(1) および
(2) を満足するように各冷間圧延を行ってもよい。これ
により、一層容易に延性と強度、耐力が同時に確保でき
るのである。
【0023】 0.1H ≦HA ・・・(1) 0.5HA≦H2≦0.95HA ・・・(2) ここに、この発明において対象とするチタン合金は、β
型チタン合金である限り特に制限はないが、その好適態
様によれば、この発明におけるβ型チタン合金は、成分
元素としてVを14重量%以上含み、溶体化処理によって
常温で準安定なβ相単相とすることで、常温での変形、
つまり、冷間加工を容易にした合金であると言うことが
できる。そのようなβ型チタン合金としては、Ti-20V-4
Al-1Sn合金、Ti-15V-3Al-3Cr-3Sn合金、Ti-22V-4Al合金
などが知られている。
【0024】
【発明の実施の形態】次に、添付図面を参照してこの発
明についてさらに具体的に説明する。図2は、この発明
にかかるチタン合金の製造工程を示すが、この発明によ
れば、最終溶体化処理とそれに続く研削・溶削工程まで
は従来法と同様に行ってよいが、最終溶体化処理に続い
てL方向およびT方向の第2および第3冷間圧延を付加
することで加工硬化による強度改善を図っている。
【0025】すなわち、最終の冷間圧延 (L方向) が終
了してから、溶体化処理を行うが、この発明によれば、
研削・溶削の後に同じくL方向への第2冷間圧延、そし
て続いて図示例では、T方向への第3冷間圧延が行われ
るのである。この発明にかかるβ型チタン合金の冷間圧
延方法において、β型チタン合金および製造条件を上述
のように限定した理由を以下さらに具体的に説明する。
【0026】合金成分の特定 この発明が対象とするβ型チタン合金はすでに述べたよ
うに特に制限はないが、好ましくは、V:14 重量%以上
含有する。
【0027】なぜなら、Vの含有量が14重量%未満の場
合、冷間加工によって誘起されるマルテンサイト相が多
くなるため延性が不足し、冷間圧延および最終加工が困
難となり、冷間加工用の材料として使用できなくなるか
らである。
【0028】また、この発明が対象とするβ型チタン合
金に合金成分として含まれるVは、25重量%以下が望ま
しい。Vの含有量が25重量%超の場合、熱間加工時に発
生する酸化スケール量および表面硬化層厚さが増加する
ため、これらを除去することによる製造歩留りおよび作
業工数の増加が、製造コストを増加させるからである。
【0029】その他の合金成分 (Al、Sn、Crなど) の含
有量については、上記の作用がないため、その範囲を特
定しないが、β相が安定な温度範囲を確保するために
は、それぞれ5重量%以下が望ましい。
【0030】冷間圧延条件の特定:この発明は、最終
溶体化処理後に少なくとも2回行い、それらをクロス圧
延で行うのである。この発明の好適態様によれば、板材
の長手方向( L方向) とこれに対して直角方向の幅方向
( T方向) 、つまりほぼ90度の角度だけ圧延方向を変え
て行う。
【0031】この発明の場合、第1冷間圧延の後で最終
溶体化処理を行うことから、圧延履歴は消失すると考え
られ、特に第2、第3の冷間圧延についてクロス圧延を
行えばよい。もちろん、第1冷間圧延と第2冷間圧延を
同じ圧延方向で行っても行わなくてもよい。ここに、
「研削痕」の消失のメカニズムは、「研削痕」の溝が圧
延ロールでならされることで説明できる。
【0032】つまり、「研削痕」が平面的に様々な方
向、立体的な様々な角度で存在する場合、一方向の冷間
圧延では、圧延方向に適合した方向、角度をもった「研
削痕」の溝をならすことはできるが、この方向に適合し
ない方向、角度をもった「研削痕」の溝を消失させるこ
とはできない。そのため、冷間圧延が一方向のみの場
合、「研削痕」の溝をならす方向についても一方向、一
次元的となるので、「研削痕」の消失には限界がある。
【0033】そこで、この発明にあっては、冷間圧延を
二方向とすることによって、「研削痕」の溝を二次元的
にならすことで、一方向の冷間圧延でならすことのでき
なかった「研削痕」の溝もならすことができ、あらゆる
方向、角度をもった「研削痕」の溝にも対応することが
できるようになるのである。
【0034】このようにして、「研削痕」を除去するた
めの研磨工程を経ずして、冷間圧延板の表面上に存在す
る「研削痕」の多くが消失し、光沢を出すことができ
る。さらにこのような冷間圧延は、延性の改善を実現す
るが、それは次のような機構による。
【0035】つまり、最終溶体化処理後の冷間圧延によ
ってもたらされる結晶粒内の加工歪の蓄積には、延性を
低下させる直接的な作用と、延性を向上させる間接的な
作用がある。前者は加工硬化であり、後者は組織が微細
化し、歪を解放すると同時に、変形を拘束する粗大な伸
長粒が消失する作用である。よって、後者の作用を有効
に発揮させることによって、高延性の材料となる可能性
がある。
【0036】ここに、延性を向上させるメカニズムは、
結晶粒内の加工歪の蓄積が起点となって組織が微細化す
ることである。そして、組織の微細化を促進するために
は、冷間圧延の圧下量を増加、加工歪の蓄積をより顕著
にする必要がある。
【0037】ところが、冷間圧延の圧下量は、製品の寸
法、加工硬化による延性の低下によって制約されるの
で、圧下量の増加には限界がある。そこで、圧下量の少
ない場合であっても組織を微細化することのできる効率
的な方法として考え出されたのが、本発明の二方向のク
ロス冷間圧延である。
【0038】図3(a) ないし(c) は、この発明の好適態
様として、最終溶体化処理後の冷間圧延を、第1冷間圧
延と同じ圧延方向のL方向 (工程) とこれに直角なT
方向(工程) の二方向を組み合わせて行った場合の結
晶粒の変化の様子を模式的に示す説明図である。
【0039】図3(a) は、最終溶体化処理後の結晶組織
の模式図であり、圧延による方向性は見られない。次い
でこれを例えば第1冷間圧延の圧延方向に対応するL方
向と同じ方向に圧延したとすると、そのL方向に結晶粒
が伸長した組織が得られる。図3(b) は、L方向の冷間
圧延によってある程度の圧下量が加えられた組織は、L
方向に伸長した結晶粒からなることを示している。
【0040】これをL方向に再び冷間圧延する場合は、
結晶粒はさらに伸長し、加工歪が大きく蓄積された後に
微細化するので、大きな圧下量が必要となる。しかし、
これをT方向に冷間圧延すれば、L方向に伸長した結晶
粒に対して直角の方向で組織を分断することになるた
め、加工歪の蓄積が大きくなくても組織が微細化し、大
きな圧下量は必要でない。そこで、この発明では、今度
は、図3(c) に示すように、上記L方向に対しほぼ直角
方向のT方向から圧延を行う。これにより、先にL方向
の圧延によって伸長した結晶粒がこのT方向の圧延によ
って分断され、全体として均一な結晶粒をもって組織が
得られる。
【0041】このようにして、圧下量の低い場合におい
ても、加工硬化による延性の低下を補填し、最終溶体化
処理直後の延性を維持することができるだけの組織の微
細化を達成することができる。
【0042】ここで、第1の冷間圧延工程 (工程とい
う) における圧下率をH1、最終溶体化処理後の第2冷間
圧延における同じくL方向の圧延工程 (工程という)
における圧下率をH2、そしてそれに続くT方向への第3
の冷間圧延工程 (工程という) における圧下率をH3
し、HA=H2+H3、H=H1+H2+H3としたとき、下記式
(1) および(2) を満足するように各冷間圧延を行っても
よい。
【0043】 0.1H ≦HA ・・・(1) 0.5HA≦H2≦0.95HA ・・・(2) すなわち、この発明の好適態様によれば、第2、第3の
クロス冷間圧延を全圧下量の10%以上だけ行い、第2冷
間圧延を第2、第3の冷間圧延の合計圧下量うち、50〜
95%を示すように行うのである。なお、工程の圧下量
H2が、0.5HA ≦H2≦0.95HAであることは、T方向の冷間
圧延 (工程) の圧下量H3が、0.05HA≦H3≦0.5HA であ
ることを意味する。
【0044】これは、HA<0.1Hの場合、加工硬化による
強度、耐力の増加が小さく、組織も十分に微細化されな
いため、この発明の意図する高強度で高延性のβ型チタ
ン合金板材とすることができない。また、HA<0.1Hの場
合、「研削痕」が深いと、これを消失させることができ
ないため、光沢が出ないからである。
【0045】圧下量HAの上限については、その範囲を特
定しないが、加工硬化によって延性が低下し、最終加工
が困難となるため、最終溶体化処理前を含めた圧下量H
に対して85%以下 (HA≦0.85H)が望ましい。より好まし
くはHAはHの30〜70%である。
【0046】さらに、H2>0.95HA (H3<0.05HA) の場
合、T方向の圧下量が少なく、L方向の「研削痕」の消
失が不十分となり、光沢が出ないからであり、さらに
は、組織の微細化が十分でないために、T方向に伸長し
た組織が残留して延性が低下するからである。また、H2
<0.5HA(H3>0.5HA)の場合、L方向の冷間圧延による結
晶粒の伸長が十分でないために、T方向の冷間圧延によ
っても組織が分断せず、T方向に伸長した組織が残留し
て延性を低下させるからである。好ましくは、0.6HA ≦
H2≦0.8HA である。次に、実施例によってこの発明の作
用効果をさらに具体的に説明する。
【0047】
【実施例】本例では図2に示す工程図にしたがって、こ
の発明を実施した。すなわち、真空アーク溶解によって
溶製したTi-15V-3Al-3Cr-3Sn合金およびTi-20V-4Al-1Sn
合金の鋳塊から、鍛造、熱間圧延により厚さ6mmの熱間
圧延板を製造した。
【0048】続いて、グラインダによる研削と硝弗酸に
よる溶削によって、熱間圧延板の酸化スケールおよび表
面硬化層を除去し、厚さ5.5 mmとした後、種々の条件の
第1冷間圧延 (全圧下量H=3.5 mm) と熱処理 (工程
と工程の間で、大気雰囲気、850 ℃、5分間) 、研削
・溶削 (減厚0.5 mm) 、さらに第2および第3冷間圧延
により、厚さ1.5 mmの冷間圧延板を製造した。
【0049】第1、第2、そして第3の冷間圧延の条件
はそれぞれ工程、およびなる3として表1(Ti-20V-
4Al-1Sn 合金の場合) 、表2(Ti-15V-3Al-3Cr-3Sn 合金
の場合) に示す。
【0050】続いて、冷間圧延板の性状を評価するため
に、機械的性質 (JIS 5号引張試験片) 、鏡面光沢度
(JIS Z 8741、入射角75°) 、ミクロ組織 (結晶粒形状)
を調査した。
【0051】各性状の評価について、「強度」は、「引
張強さ」が850 MPa 以上、「延性」は「伸び」が15%以
上、「光沢」は「光沢度」が160 %以上、「ミクロ組
織」は「粗大伸長粒」がない場合 (すべてが「微細等軸
粒」の場合) 、を「充足、良」とし、表中「○」で示
し、これらの範囲以外を「不足、不良」とし、表中に
「×」で示した。
【0052】表1、表2において試験番号1〜5の本発
明例は、「強度」、「延性」、「ミクロ組織」、「光
沢」のいずれも「充足、良 (○) 」であり、本発明の冷
間加工によって、高強度、高延性の冷間圧延板で、しか
も、光沢を出すことができることがわかる。
【0053】試験番号6は、最終溶体化処理後の冷間圧
延のない場合であり、溶体化処理による焼鈍、再結晶硬
化により「延性」は充足しているが、加工硬化がないた
めに「強度」が不足し、「研削痕」が残留しているため
に「光沢」が不足している。
【0054】試験番号7は、最終溶体化処理後の冷間圧
延を工程 (L方向) のみとした場合であり、L方向の
「粗大伸長粒」が残留しているために「延性」が不足
し、「研削痕」が残留しているために「光沢」が不足し
ている。
【0055】試験番号8は、最終溶体化処理後の冷間圧
延のうち、工程 (L方向) の圧下量の割合が下方には
ずれている場合であり、T方向の「粗大伸長粒」が残留
しているために「延性」が不足している。
【0056】試験番号9は、最終溶体化処理後の冷間圧
延のうち、工程 (L方向) の圧下量の割合が上方には
ずれている場合であり、工程 (T方向) の冷間圧延の
圧下量が不足していることから、L方向の「粗大伸長
粒」が残留しているために「延性」が不足し、また、
「研削痕」が十分に消失されていないために「光沢」が
不足している。
【0057】試験番号10は、最終溶体化処理後の冷間圧
延の圧下量 (工程+工程) が下方にはずれている場
合であり、冷間圧延の圧延量が不足していることから、
加工硬化が十分でないために「強度」が不足し、「研削
痕」が十分に消失されていないために「光沢」が不足し
ている。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】この発明の方法によれば、冷間圧延工程
によって「研削痕」を除去し、そのまま最終加工のため
のβ型チタン合金板材とすることができるので、研磨工
程によらない表面性状の大幅な向上に加えて、高強度、
高延性のβ型チタン合金の冷間圧延板材を安定製造でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のβ型チタン合金冷間圧延板材の製造工程
の概要説明図である。
【図2】この発明のβ型チタン合金冷間圧延板材の製造
工程の概要説明図である。
【図3】図3(a) 〜(c) はそれぞれ冷間圧延による結晶
粒の伸長および組織の微細化の変化の様子の模式的説明
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 黒田 篤彦 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金 属工業株式会社内 (72)発明者 ▲高▼島 昌樹 栃木県下都賀郡野木町野木1985番地 株式 会社三洋特殊合金内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱間圧延、第1冷間圧延、最終溶体化処
    理、そして該最終溶体化処理に続いて第2冷間圧延、お
    よび該第2冷間圧延に対してクロス方式とした第3冷間
    圧延を行うことを特徴とするβ型チタン合金板材の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記第1冷間圧延の圧下量H1、前記第2
    冷間圧延の圧下量H2、そして前記第3冷間圧延の圧下量
    H3とし、HA=H2+H3、H=H1+H2+H3としたとき、下記
    式(1) および(2) を満足する請求項1記載のβ型チタン
    合金板材の製造方法。 0.1H ≦HA ・・・(1) 0.5HA≦H2≦0.95HA ・・・(2)
  3. 【請求項3】 前記β型チタン合金がV:14重量%以上を
    含む、請求項1または2のいずれかに記載のβ型チタン
    合金板材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105032973A (zh) * 2015-07-29 2015-11-11 宝鸡市富源通工贸有限责任公司 一种tc4钛合金板的加工方法

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