JP2019099868A - ろう付用アルミニウム合金板材及びその製造方法 - Google Patents

ろう付用アルミニウム合金板材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【解決課題】Al−Zn−Mg系合金を用い、強度と成形性に優れ、且つ、最終焼鈍後の自然時効による耐力上昇が小さいアルミニウム合金板材を提供すること。【解決手段】1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が500μm以下であり、板厚が0.6〜5mmのO材であり、25℃で180日間の保持試験において、保持試験前に対する保持試験後の耐力上昇値が40MPa以下であること、を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた成形性と強度及びろう付性を有する自動車熱交換器用アルミニウム合金板材、及びその製造方法に関する。
従来、熱交換器用として用いられるアルミニウム合金ブラケット材には、一般に、Al−Mn系(AA3000番台)が用いられていた。そして、近年の熱交換器の軽量化、低コスト化の目的から各種構成部材の薄肉化の要求が高まっており、それゆえに高強度な材料が求められている。
自動車熱交換器用のなかでも、熱交換器を自動車車体に取り付ける接続部材として用いられるブラケット材には高い強度と成形性が求められる。このようなブラケット材に関しては、Al−Zn−Mg系合金を用いたアルミニウム合金板材が用いられることがある。この材料は、一般的に使用されるAl−Mn系合金を用いた材料と比較すると強度が高いといった利点がある。
ところが、Al−Zn−Mg系合金を用いたブラケット材は、最終焼鈍後の時効硬化により、耐力値が増加するため、経時変化と共に、成形性が不十分になる場合がある。
特開平8−260087号公報 特開昭62−212094号公報
ここで、Al−Zn−Mg系合金を用いたアルミニウム合金板材は、焼鈍後に溶体化処理後自然時効されるため、引張強さと耐力が経時変化で上昇する。そのため、板材を溶体化処理後、成形加工までの時間の経過によっては、当初設計した通りの成形条件が適用できないケースが散見され、同じ製造条件で製造した材料を用いても製造後の経過時間によって成形条件を調整する必要があった。
また、Al−Zn−Mg系合金の結晶粒径が大きいと、成形時の強加工部に肌荒れが発生し、成形性が低くなる。
従って、本発明の目的は、Al−Zn−Mg系合金を用い、強度と成形性に優れ、且つ、最終焼鈍後の自然時効による耐力上昇が小さいアルミニウム合金板材を提供することにある。
上記課題は、以下の本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
平均結晶粒径が500μm以下であり、板厚が0.6〜5mmのO材であり、25℃で180日間の保持試験において、保持試験前に対する保持試験後の耐力上昇値が40MPa以下であること、
を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材を提供するものである。
また、本発明(2)は、更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有することを特徴とする(1)のろう付用アルミニウム合金板材を提供するものである。
また、本発明(3)は、アルミニウム合金鋳塊を作製し、次いで、該アルミニウム合金鋳塊を熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得、次いで、該熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得、次いで、該冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより得られるろう付用アルミニウム合金板材であり、
該アルミニウム合金鋳塊が、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
該熱間圧延における、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であり、
該冷間圧延における、冷間圧延率が20%以上であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であり、
該炉出し温度が300℃以下であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度から該炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であり、
板厚が0.6〜5mmであること、
を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材を提供するものである。
また、本発明(4)は、更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有することを特徴とする(3)のろう付用アルミニウム合金板材を提供するものである。
また、本発明(5)は、アルミニウム合金鋳塊を作製し、次いで、該アルミニウム合金鋳塊を、熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得、次いで、該熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得、次いで、該冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより、ろう付用アルミニウム合金板材を得るろう付用アルミニウム合金板材の製造方法であり、
該アルミニウム合金鋳塊が、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
該熱間圧延における、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であり、
該冷間圧延における、冷間圧延率が20%以上であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であり、
該炉出し温度が300℃以下であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度から該炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であること、
を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材の製造方法を提供するものである。
また、本発明(6)は、更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有することを特徴とする(5)のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、Al−Zn−Mg系合金を用い、強度と成形性に優れ、且つ、最終焼鈍後の自然時効による耐力上昇が小さいアルミニウム合金板材を提供することができる。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
平均結晶粒径が500μm以下であり、板厚が0.6〜5mmのO材であり、25℃で180日間の保持試験において、保持試験前に対する保持試験後の耐力上昇値が40MPa以下であること、
を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材である。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
Mgは、強度を付与するための元素である。Mgの含有量は、1.0〜2.0質量%、好ましくは1.1〜1.4質量%である。Mgの含有量が、上記範囲にあることにより、十分な強度が得られる。一方、Mgの含有量が、上記範囲未満だと、十分な強度が得られず、また、上記範囲を超えると、冷間圧延性が損なわれる。
Znは、強度を付与するための元素である。Znの含有量は、4.0〜5.0質量%、好ましくは4.1〜4.5質量%である。Znの含有量が上記範囲にあることにより、十分な強度が得られる。一方、Znの含有量が、上記範囲未満だと、十分な強度が得られず、また、上記範囲を超えると、耐食性が損なわれる。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、Mg及びZnに加えて、更に、Mnを含有してもよい。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材がMnを含有する場合、Mnの含有量は、0.1〜1.8質量%、好ましくは0.2〜0.8質量%である。Mnの含有量が上記範囲にあることにより、強度向上効果が得られる。一方、心材中のMnの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が得られ難くなり、また、上記範囲を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が生じやすく、圧延材を得ることが困難となる。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材を構成するアルミニウム合金の平均結晶粒径は、500μm以下である。平均結晶粒径が500μm以下であることにより、成形性が良好となる。一方、平均結晶粒径が500μmを超えると、成形加工時に肌荒れが発生するため、成形ができなくなる。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、総板厚が0.6〜5mmのO材である。総板厚が、0.6mm未満だと、強度が不足し、自動車熱交換器の材料として適用できず、また、5mmを超えると、成形加工時に強加工部に肌荒れが発生する。
25℃で180日間の保持試験において、本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材の、保持試験前に対する保持試験後の耐力上昇値は40MPa以下である。25℃で180日間の保持試験における、ろう付用アルミニウム合金板材の、保持試験前に対する試験後の耐力上昇値が、40MPaを超えると、板材を製造後まもなく成形加工を行う場合と、板材を製造後しばらく時間が経過した後に成形加工を行う場合の板材の強度の差が大きく、成形加工時に、設計された通りの成形ができなくなる。なお、耐力上昇値の測定は、JIS Z 2241に準拠した方法で、JIS 5号試験片を用いて行われる。
本発明の第一の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、自然時効による耐力上昇が小さく、自然時効による6か月後の耐力上昇が、40MPa以下である。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法は、アルミニウム合金鋳塊を作製し、次いで、該アルミニウム合金鋳塊を、熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得、次いで、該熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得、次いで、該冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより、ろう付用アルミニウム合金板材を得るろう付用アルミニウム合金板材の製造方法であり、
該アルミニウム合金鋳塊が、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
該熱間圧延における、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であり、
該冷間圧延における、冷間圧延率が20%以上であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であり、
該炉出し温度が300℃以下であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度から該炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であること、
を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材の製造方法である。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法は、(1)アルミニウム合金鋳塊を作製する工程(以下、工程(1)とも記載する。)と、次いで、(2)アルミニウム合金鋳塊を、熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得る工程(以下、工程(2)とも記載する。)と、次いで、(3)熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得る工程(以下、工程(3)とも記載する。)と、次いで、(4)冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより、ろう付用アルミニウム合金板材を得る工程(以下、工程(4)とも記載する。)と、を有する。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法に係る工程(1)は、ろう付け用アルミニウム合金板材用のアルミニウム合金鋳塊を作製する工程である。つまり、工程(1)は、ろう付け用アルミニウム合金板材の原材料となる合金鋳塊を作製する工程である。
工程(1)において、合金鋳塊を作製する方法は、特に制限されず、常法に従って、溶解及び鋳造して、所定の元素が所定の含有量で配合されている合金鋳塊を得る。例えば、アルミニウムの地金及び本発明の所定の含有元素の地金又は含有元素とアルミニウムの合金を、ろう付用アルミニウム合金板材中の含有量が、所定の含有量となるように配合して、成分調整を行い、次いで、連続鋳造することにより、合金鋳塊を鋳造する。
工程(1)において作製するアルミニウム合金鋳塊は、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなる。
アルミニウム合金鋳塊中のMgの含有量は、1.0〜2.0質量%、好ましくは1.1〜1.4質量%である。アルミニウム合金鋳塊中のMgの含有量が、上記範囲未満だと、十分な強度が得られず、また、上記範囲を超えると、冷間圧延性が損なわれる。
アルミニウム合金鋳塊中のZnの含有量は、4.0〜5.0質量%、好ましくは4.1〜4.5質量%である。アルミニウム合金鋳塊中のZnの含有量が、上記範囲未満だと、十分な強度が得られず、また、上記範囲を超えると、耐食性が損なわれる。
アルミニウム合金鋳塊は、Mg及びZnに加えて、更に、Mnを含有してもよい。
アルミニウム合金鋳塊がMnを含有する場合、アルミニウム合金鋳塊中のMnの含有量は、0.1〜1.8質量%、好ましくは0.2〜0.8質量%である。アルミニウム合金鋳塊中のMnの含有量が上記範囲にあることにより、強度向上効果が得られる。一方、アルミニウム合金鋳塊中のMnの含有量が、上記範囲未満だと、上記効果が得られ難くなり、また、上記範囲を超えると、鋳造時に粗大な晶出物が生じやすく、圧延材を得ることが困難となる。
工程(1)では、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法を行い、最終的に得られるろう付用アルミニウム合金板材の総板厚が0.6〜5mmとなるように、アルミニウム合金鋳塊の形状等を調節する。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法に係る工程(2)は、アルミニウム合金鋳塊を、熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得る工程である。つまり、工程(2)は、熱間粗圧延と熱間仕上げ圧延とからなる。
工程(2)に係る熱間粗圧延では、工程(1)で得られたアルミニウム合金鋳塊を、450〜500℃で、圧延ロールが正転と反転を交互に繰り返しながらロール間隔を狭くするたびに、その圧延ロール間を通過させることでアルミニウム合金鋳塊の厚さを減少させることにより、アルミニウム合金鋳塊を熱間で圧延して、熱間粗圧延物を得る。
熱間粗圧延の総圧延率は、特に制限されないが、好ましくは70〜95%である。なお、熱間粗圧延の総圧延率(%)とは、「((熱間粗圧延前のアルミニウム合金鋳塊の厚み−熱間粗圧延後の熱間粗圧延物の厚み)/熱間粗圧延前のアルミニウム合金鋳塊の厚み)×100」の式により求められる値である。
工程(2)に係る熱間仕上げ圧延では、熱間粗圧延で得られた熱間粗圧延物を、450〜500℃で、圧延ロールの間を通しながら圧下することにより、熱間粗圧延物を熱間で圧延して、熱間圧延物を得る。
そして、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法では、工程(2)における熱間仕上げ圧延において、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃となる条件で、熱間仕上げ圧延を行う。
熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上であることにより、最終焼鈍時にアルミニウム合金板材中の再結晶が起こり易くなり、アルミニウム合金板材の結晶粒径を500μm以下とすることができる。一方、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%未満だと、最終焼鈍時にアルミニウム合金板材中の再結晶が起こり難くなり、アルミニウム合金板材の結晶粒径を500μm以下とすることができない。なお、熱間仕上げ圧延の総圧延率(%)とは、「((熱間仕上げ圧延前の熱間粗圧延物の厚み−熱間仕上げ圧延後の熱間圧延物の厚み)/熱間仕上げ圧延前の熱間粗圧延物の厚み)×100」の式により求められる値である。
また、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下であることにより、ひずみエネルギーが十分に蓄積されるので、最終焼鈍後(工程(4)の後)のアルミニウム合金板材の結晶粒径が小さくなる。一方、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分より長くなると、ひずみエネルギーが十分に蓄積されないため、最終焼鈍後のアルミニウム合金板材の結晶粒径が粗大になる。なお、熱間仕上げ圧延の圧延時間とは、圧延されるアルミニウム合金の同一部位が、熱間仕上げ圧延の最初の圧延ロールに接してから、最後の圧延ロールから離れるまでの時間を指す。
また、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であることにより、ひずみエネルギーが十分に蓄積されるので、最終焼鈍後(工程(4)の後)のアルミニウム合金板材の結晶粒径が小さくなる。一方、熱間圧延最終パス終了温度が、300℃未満だと、ひずみエネルギーが十分に蓄積されないため、最終焼鈍後のアルミニウム合金板材の結晶粒径が粗大になり、また、350℃を超えると、表面品質が悪くなる。なお、熱間圧延最終パス終了温度とは、熱間仕上げ圧延の最後のロールから離れたときの熱間圧延物の温度を指す。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法に係る工程(3)は、工程(2)で得られた熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得る工程である。工程(3)における冷間圧延の圧延回数は、1回であっても、2回以上であってもよい。そして、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法では、工程(3)における冷間圧延において、冷間圧延率を20%以上にする。冷間圧延率が20%以上であることにより、高いひずみエネルギーが蓄積されるので、最終焼鈍後(工程(4)の後)のアルミニウム合金板材の結晶粒径が小さくなる。一方、冷間圧延率が20%未満だと、高いひずみエネルギーが蓄積されないため、最終焼鈍後のアルミニウム合金板材の結晶粒径が粗大になり、成形性が低くなる。なお、冷間圧延率(%)とは、「((最初の冷間圧延前の熱間圧延物の厚み−最後の冷間圧延後の冷間圧延物の厚み)/最初の冷間圧延前の熱間圧延物の厚み)×100」の式により求められる値である。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法では、ろう付用アルミニウム合金板材の総板厚が0.6〜5mmとなるように、工程(2)及び工程(3)を行う。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法に係る工程(4)は、工程(3)で得られた冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより、ろう付用アルミニウム合金板材を得る工程である。つまり、工程(4)では、冷間圧延物を、焼鈍炉内で焼鈍した後、焼鈍炉内で冷却してから、焼鈍炉外へと取り出す。
そして、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法では、工程(4)において、最終焼鈍の焼鈍温度を300〜570℃、炉出し温度を300℃以下、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度までの冷却速度を50℃/時間以下とする。
最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であることにより、O材調質となる。一方、最終焼鈍の焼鈍温度が、300℃未満だと、O材調質にならず、また、570℃を超えると、結晶粒径が粗大化してしまう。なお、最終焼鈍の焼鈍温度とは、最終焼鈍を行う焼鈍炉内の最高到達温度を指す。最終焼鈍の焼鈍時間は、好ましくは3時間以上である。
また、工程(4)における炉出し温度が300℃以下であることにより、自然時効による耐力上昇を小さくすることができる。一方、工程(4)における炉出し温度が300℃を超えると、自然時効による耐力上昇が大きくなり過ぎる。なお、工程(4)における炉出し温度とは、最終焼鈍及び冷却されたろう付用アルミニウム合金板材が、焼鈍炉から出た直後のろう付用アルミニウム合金板材の温度を指す。
また、工程(4)において、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であることにより、自然時効による耐力上昇を小さくすることができる。一方、工程(4)における最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間より速くなると、自然時効による耐力上昇が大きくなり過ぎる。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法では、工程(4)の焼鈍における最終焼鈍の焼鈍温度を300〜570℃、炉出し温度を300℃以下、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度までの冷却速度を50℃/時間以下とすることにより、25℃で180日間の保持試験における耐力上昇値が40MPa以下であるろう付用アルミニウム合金板材を得ることができる。
本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法により得られるろう付用アルミニウム合金板は、O材である。また、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法により得られるろう付用アルミニウム合金板は、25℃で180日間の保持試験における耐力上昇値が40MPa以下である。
このようにして、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法により得られるろう付用アルミニウム合金板材は、自然時効による耐力上昇が小さく、自然時効による6か月後の耐力上昇が、40MPa以下である。また、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法により得られるろう付用アルミニウム合金板材は、強度が高く、成形性及びろう付性に優れる。
本発明の第二の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法を行うことにより得られるろう付用アルミニウム合金板材である。つまり、本発明の第二の形態のろう付用アルミニウム合金板材は、本発明のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法に係る工程(1)と、工程(2)と、工程(3)と、工程(4)と、を行うことにより得られるろう付用アルミニウム合金板材、すなわち、アルミニウム合金鋳塊を作製し、次いで、該アルミニウム合金鋳塊を熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得、次いで、該熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得、次いで、該冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより得られるろう付用アルミニウム合金板材であり、
該アルミニウム合金鋳塊が、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
該熱間圧延における、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であり、
該冷間圧延における、冷間圧延率が20%以上であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であり、
該炉出し温度が300℃以下であり、
該最終焼鈍の焼鈍温度から該炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であり、
板厚が0.6〜5mmであること、
を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材である。
本発明の第二の形態のろう付用アルミニウム合金板材では、更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有してもよい。
以下、本発明の実施例について説明し、その効果を実証する。これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されない。
表1の合金をDC鋳造した後、両面を10mmずつ面削した。次いで、得られた合金鋳塊を、熱間粗圧延を行い、続いて、表2に示す条件で、熱間仕上げ圧延(4パスで実施)、冷間圧延、最終焼鈍及び冷却を施して、アルミニウム合金板材を製造した。
最終焼鈍後、2時間以内に、得られたアルミニウム合金板材の耐力値を測定した。次いで、25℃で180日間保持試験(以下の表中では、保持試験Aと記載する。)を行い、保持後の耐力値を測定した。
また、得られたアルミニウム合金板材の最終焼鈍直後から180日間の保持試験後の耐力上昇値と結晶粒径を求めた。
耐力上昇値については、引張試験により求めた。先ず、最終焼鈍直後に、最終焼鈍直後のサンプルを、JIS5号試験片に成形加工をした後、引張試験を行い、0.2%オフセット法により耐力を求めた。また、180日間の保持試験後に、25℃で180日間保持したサンプルを、JIS5号試験片に成形加工をした後、引張試験を行い、0.2%オフセット法により耐力を求めた。180日間保持後の耐力上昇値が40MPa以下のものを○、40MPaを超過するものを×とした。
結晶粒径については、交線法により求めた。バーカー試液を用いてサンプルのLLT断面をエッチングをして、金属顕微鏡で金属組織を撮影した後、組織写真から結晶粒径を測定した。結晶粒径が500μm以下のものを○、500μmを超過するものを×とした。
得られたアルミニウム合金のろう付後の強度、成形性、ろう付け性を評価した。
ろう付後の強度については、引張試験により求めた。得られたサンプルを600℃で3分間保持した後に、JIS5号試験片に成形加工し、引張試験を行った。引張強さが200MPa以上のものを○、200MPaに満たないものを×とした。
成形性については、曲げ試験により求めた。最終焼鈍直後のサンプルと常温で6ヶ月間保持したサンプルの心材が露出した面が外側になるよう、曲率R=2で90度曲げを施した。焼鈍直後のサンプルと6ヶ月間保持したサンプルの曲げた部分を目視で比較し、肌荒れなき場合を○、肌荒れがある場合を×とした。
ろう付性については、Tジョイント試験により求めた。相手材には板厚0.8mmからなる3003合金を心材とし、その両面に4045合金を100μmずつクラッドしたアルミニウム合金板材を35mm幅×60mm長に切断したもの底板として用い、供試材を20mm幅×50mm長に切断したものを垂直板に用い、600℃で3分間保持をした後に、フィレットが形成され引け巣が無いものを○、そうでないものを×とした。
Figure 2019099868
Figure 2019099868
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Figure 2019099868

Claims (6)

  1. 1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
    平均結晶粒径が500μm以下であり、板厚が0.6〜5mmのO材であり、25℃で180日間の保持試験において、保持試験前に対する保持試験後の耐力上昇値が40MPa以下であること、
    を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材。
  2. 更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有することを特徴とする請求項1記載のろう付用アルミニウム合金板材。
  3. アルミニウム合金鋳塊を作製し、次いで、該アルミニウム合金鋳塊を熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得、次いで、該熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得、次いで、該冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより得られるろう付用アルミニウム合金板材であり、
    該アルミニウム合金鋳塊が、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
    該熱間圧延における、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であり、
    該冷間圧延における、冷間圧延率が20%以上であり、
    該最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であり、
    該炉出し温度が300℃以下であり、
    該最終焼鈍の焼鈍温度から該炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であり、
    板厚が0.6〜5mmであること、
    を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材。
  4. 更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有することを特徴とする請求項3記載のろう付用アルミニウム合金板材。
  5. アルミニウム合金鋳塊を作製し、次いで、該アルミニウム合金鋳塊を、熱間粗圧延し、更に、熱間仕上げ圧延して、熱間圧延物を得、次いで、該熱間圧延物を、冷間圧延して、冷間圧延物を得、次いで、該冷間圧延物を、焼鈍炉内で最終焼鈍し、その後、焼鈍炉内で、最終焼鈍の焼鈍温度から炉出し温度まで冷却してから、炉出しすることにより、ろう付用アルミニウム合金板材を得るろう付用アルミニウム合金板材の製造方法であり、
    該アルミニウム合金鋳塊が、1.0〜2.0質量%のMg及び4.0〜5.0質量%のZnを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、
    該熱間圧延における、熱間仕上げ圧延の総圧延率が70%以上、熱間仕上げ圧延の圧延時間が2分以下、熱間圧延最終パス終了温度が300〜350℃であり、
    該冷間圧延における、冷間圧延率が20%以上であり、
    該最終焼鈍の焼鈍温度が300〜570℃であり、
    該炉出し温度が300℃以下であり、
    該最終焼鈍の焼鈍温度から該炉出し温度までの冷却速度が50℃/時間以下であること、
    を特徴とするろう付用アルミニウム合金板材の製造方法。
  6. 更に、0.1〜0.8質量%のMnを含有することを特徴とする請求項5記載のろう付用アルミニウム合金板材の製造方法。
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