JPH09125189A - 高耐力、高延性鋳鉄及びその製造方法 - Google Patents

高耐力、高延性鋳鉄及びその製造方法

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JPH09125189A
JPH09125189A JP28272495A JP28272495A JPH09125189A JP H09125189 A JPH09125189 A JP H09125189A JP 28272495 A JP28272495 A JP 28272495A JP 28272495 A JP28272495 A JP 28272495A JP H09125189 A JPH09125189 A JP H09125189A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高耐力、高延性を兼備した鋳鉄およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
1.0〜3.0%、Mn0.1〜1.2%、P0.1%
以下、S0.02%以下、Cu0.7%〜1.5%、M
g0.015〜0.06%を含み、残部Feと不可避的
不純物の鋳鉄であって、微細フェライト基地組織に黒鉛
が晶出した組織であり、Niを含有しても良く、このよ
うな適正な組成と成分範囲を持つ鋳鉄素材をオーステナ
イト化処理後焼入し、640〜710℃で焼戻し処理す
る製造方法によって得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高耐力、高延性の鋳
鉄及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】球状黒鉛鋳鉄は高い機械的強度や伸びを
有しているため、種々の機械や自動車部品として広く使
用されている。伸びを必要とする部品にはJISのFC
D370材や450材等が使用され、機械的強度を必要
とする部品には、JISのFCD600材等が使用され
ている。とくに自動車の懸架装置部品としては、かしめ
加工や塑性加工の必要性が高まってきており、優れた耐
力と伸び特性、または優れた耐力比と伸び特性を兼備し
たものが要求されている。
【0003】球状黒鉛鋳鉄の強靱化を狙ったものとし
て、特公昭55ー9452号公報には、低Mn材でフェ
ライト粒とパーライト粒との微細混合組織よりなる基地
に黒鉛を晶出した組織を有するものが開示されている。
また、特開平3ー202418号公報には、JISのF
CD400材等を用い、自動車部品の締結部のみを誘導
加熱保持後、焼入れ、焼戻し処理し、硬さの低下を防ぐ
技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、JIS
のFCD370材はほとんどが通常のフェライトの基地
で伸びは17%以上、耐力は235N/mm2と規定さ
れており、高延性を示すが、耐力比(耐力/引張強さ)
は0.65〜0.70程度である。一方、FCD600
材は通常のフェライトとパーライトの混合組織の基地で
耐力は373N/mm2 以上、伸びは3%以上と規定さ
れており、耐力比は0.63〜0.65程度である。何
れの場合も耐力比は0.63〜0.70と不十分であっ
た。
【0005】また、上記特公昭55ー9452号公報に
開示される球状黒鉛鋳鉄として、CuやNiを含有する
例が示されている。しかしこの球状黒鉛鋳鉄は0.06
又は0.07%の低Mn材を用い、パーライト基地のも
のを775〜790℃の狭い共析変態温度に加熱後空冷
することにより、基地がパーライト粒とこのパーライト
粒からフェライト化した粒との微細混合組織となるもの
である。耐力比は0.65と低く優れた耐力と伸び特
性、または優れた耐力比と伸び特性を兼備するものでは
なく、熱処理加熱温度範囲も狭く管理する温度範囲が狭
いという問題がある。また、特開平3ー202418号
公報には、JISのFCD400材等の鋳造部品につい
て部分的に硬度の低下を防ぐために、誘導加熱による局
部熱処理が開示されているが、局部熱処理された部分は
焼戻しマルテンサイト組織となり、他の部分は通常のフ
ェライト基地組織となっており、鋳造部品全体について
優れた耐力と伸び特性、または優れた耐力比と伸び特性
を兼備していない。
【0006】本発明は、上記課題を解決し、高耐力と高
延性を兼備した鋳鉄とその製造方法を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題を
解決するために種々検討し、鋳鉄の適正な組成と成分範
囲を確認し、かつ適正な熱処理を施すことが必要である
ことを究明し本発明に想到した。
【0008】即ち、上記目的を達成するための本第1の
発明の高耐力、高延性鋳鉄は、重量比で、C3.0〜
4.0%、Si1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2
%、P0.1%以下、S0.02%以下、Cu0.7〜
1.5%、Mg0.015〜0.06%を含み、残部F
eと不可避的不純物の鋳鉄であって、焼入マルテンサイ
トを焼戻しした微細フェライト基地組織に黒鉛が晶出し
た組織であることを特徴とする。
【0009】また、本第2の発明の高耐力、高延性鋳鉄
は、重量比で、C3.0〜4.0%、Si1.0〜3.
0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%以下、S0.
02%以下、Ni0.1〜3.0%、Cu0.7〜1.
5%、Mg0.015〜0.06%を含み、残部Feと
不可避的不純物の鋳鉄であって、焼入マルテンサイトを
焼戻しした微細フェライト基地組織に黒鉛が晶出した組
織であることを特徴とする。
【0010】また、上記本第1の発明の組成と組織を有
し、伸びが13%以上で耐力比が0.75以上であるこ
と、あるいは伸びが13%以上で耐力y(N/mm2
と伸びx(%)との関係が次式で表される相関式y≧ー
(100/17)x+490を満足することを特徴とす
る。
【0011】また、上記本第2の発明の組成と組織を有
し、伸びが10%以上で耐力比が0.80以上であるこ
と、あるいは伸びが10%以上で、耐力y(N/m
2) と伸びx(%)との関係が次式で表される相関式
y≧ー(100/17)x+530を満足することを特
徴とする。
【0012】また、上記鋳鉄であって、降伏現象を示す
こと、黒鉛が鋳造時に晶出する黒鉛と熱処理時に晶出す
る微細2次黒鉛からなることを特徴とする。
【0013】また、上記鋳鉄であって、より好ましい成
分範囲として、Cuが0.85〜1.30%であるこ
と、Niが0.5〜1.5%であることを特徴とする。
【0014】また、上記鋳鉄であって、より好ましい特
性として、Cuのみを含有する場合、伸びが15%以上
で耐力比が0.80以上であること、CuおよびNiを
含有する場合、伸びが12%以上で耐力比がO.85以
上であることを特徴とする。なお、本発明の鋳鉄として
は、上記した組成と成分範囲からなり、焼入マルテンサ
イトを焼戻しした微細フェライト基地組織に黒鉛を晶出
した組織であるが、組織中に未分解のマルテンサイトか
ら生じた炭化物が一部存在しても良い。
【0015】また、本発明の高耐力、高延性鋳鉄の製造
方法は、重量比で、C3.0〜4.0%、Si1.0〜
3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%以下、S
0.02%以下、Cu0.7〜1.5%、Mg0.01
5〜0.06%を含み、残部Feと不可避的不純物の鋳
鉄素材をオーステナイト化温度領域に昇温した後に所定
時間保ち、その後焼入れを行い、さらに640〜720
℃で焼戻しを行って微細フェライト基地組織に黒鉛を析
出することを特徴とする。
【0016】また、本発明の別の製造方法は、重量比
で、C3.0〜4.0%、Si1.0〜3.0%、Mn
0.2〜1.2%、P0.1%以下、S0.02%以
下、Ni0.1〜3.0%、Cu0.7〜1.5%、M
g0.015〜0.06%を含み、残部Feと不可避的
不純物の鋳鉄素材をオーステナイト化温度領域に昇温し
た後に所定時間保ち、その後焼入れを行い、さらに64
0〜720℃で焼戻しを行って微細フェライト基地組織
に黒鉛を析出することを特徴とする。
【0017】また、上記本発明の製造方法は、オーステ
ナイト化温度領域が790〜910℃であること、オー
ステナイト化温度領域で2つの所定温度に所定時間保つ
2段加熱することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】次に、本発明の高耐力、高延性鋳
鉄の組成と各成分範囲の限定理由について述べる。
【0019】(1)C(炭素):3.0〜4.0% Cは3.0%未満では黒鉛粒数が減少して共晶セメンタ
イト(チル)が晶出しやすく、また4.0%を越えると
キッシュ黒鉛が出やすくなりいずれも強度と伸びが低下
するので、3.0〜4.0%とする。
【0020】(2)Si(珪素):1.0〜3.0% Siは1.0%未満では黒鉛化せずチルしやすくなり伸
びが低下する。一方、Siが3.0%を越えると基地が
脆くなり伸びが低下し、被削性も低下するので、1.0
〜3.0%とする。
【0021】(3)Mn(マンガン):0.2〜1.2
% Mnは炭化物形成元素であり1.2%を越えるとチルを
出やすくし伸びが低下する。また、0.2%以下にする
には使用原材料を厳選する必要があり、コスト高となる
ことから、0.2〜1.2%とする。
【0022】(4)P(リン):0.1%以下 Pは多量に含有すると基地中に固溶して組織を脆化させ
るので、0.1%以下とする。
【0023】(5)S(硫黄):0.02%以下 Sは多量に含有すると黒鉛の球状化が阻害され強度が低
下するので、0.02%以下とする。
【0024】(6)Cu(銅):0.7〜1.5%、好
ましくは、0.85〜1.30% Cuは本発明の鋳鉄を構成する成分としては重要な元素
であり、焼入れマルテンサイトのフェライト化にあた
り、フェライトの再結晶化を阻止するため含有され、
0.7%未満ではその効果が小さく必要とする耐力、耐
力比が得られず、1.5%を越えて含有すると伸びが低
下する。従って、Cuは0.7〜1.5%とし、より優
れた耐力と伸びを兼備するために、好ましくは、0.8
5〜1.30%とする。
【0025】(7)Mg(マグネシウム):0.015
〜0.06% Mgは黒鉛球状化剤として含有されるものであり、0.
015%未満では黒鉛が球状化せず、一方、0.06%
を越えて含有されると、チル発生の原因となるので0.
015〜0.06%とする。
【0026】(8)Ni(ニッケル):0.1〜3.0
%、好ましくは、0.5〜1.5% Niは耐力や耐力比を向上する成分であり、その効果を
発揮するためには0.1%以上の含有を必要とするが、
3.0%を越えて含有されても効果は小さく、高価格と
なる。従って、Niは0.1〜3.0%とし、より優れ
た耐力と伸びを兼備するために、好ましくは、0.5〜
1.5%とする。
【0027】本発明の高耐力、高延性鋳鉄は、上記組成
と成分範囲を有する鋳鉄素材が次に述べる適正な熱処理
によって、微細フェライト基地組織に微細2次黒鉛が析
出した組織となって得られるものである。
【0028】本発明の高耐力、高延性鋳鉄の製造方法と
しては、上記組成と成分範囲を有する鋳鉄素材を、オー
ステナイト化温度領域に昇温してオーステナイト化した
後に焼入れを行い、さらに焼戻し処理を行うものであ
る。焼戻し温度が640℃未満では焼戻しマルテンサイ
トのセメンタイトの分解が十分でなく、伸びが不十分で
あり、710℃を越えるとフェライトが急激に粗大化す
る傾向を示し耐力が低下し、優れた耐力と伸びを兼備す
ることができない。またSi含有量が少なく、かつ、N
i、Mnを多めに添加する場合にはオーステナイトが生
じるため望ましくない。従って、上記組成と成分範囲を
有し、微細フェライト基地組織に黒鉛を晶出または析出
した組織として、優れた耐力と伸び、または優れた耐力
比と伸びを兼備するために、焼戻し温度を640〜72
0℃とする。
【0029】焼戻し後の基地組織を微細フェライトと
し、微細2次黒鉛と通常サイズの黒鉛を晶出するために
は、オーステナイト化温度領域として790〜910℃
とする。焼入れ後のマルテンサイトの炭素濃度を低く
し、焼戻し後の耐力および伸びを向上させるためには、
オーステナイト化温度領域で2つの所定温度に加熱処理
し、オーステナイト化温度領域内の低い温度に保持後焼
入れを行う2段加熱オーステナイト化処理とすることも
できる。
【0030】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。本実施例
に用いた鋳鉄素材の組成を比較例と共に、その最終化学
成分(ただし、残部Feと不可避的不純物を除く)と、
その鋳鉄素材の熱処理後の本発明鋳鉄の耐力、引張強
さ、伸び、耐力比(耐力/引張強さ)の値を表1に示
す。なお、熱処理としては、850℃に30分加熱後8
00℃まで冷却し800℃で30分保持後、油冷焼入れ
し、700℃に1時間焼戻し処理したものである。
【0031】
【表1】 最終化学成分(重量%) 耐力 引張 伸び 耐力 比 No. C Si Mn P S Ni Cu Mg (N/mm2)(N/mm2)(%) 1 3.74 2.15 0.27 0.023 0.006 0.03 0.11 0.041 320 440 26 0.73 2 3.71 2.31 0.42 0.020 0.006 0.04 0.52 0.034 420 750 9 0.56 3 3.64 2.25 0.55 0.026 0.007 0.03 0.75 0.037 426 530 16.4 0.804 4 3.78 2.23 0.33 0.033 0.012 0.04 1.01 0.040 410 520 14.0 0.786 5 3.73 2.30 0.31 0.028 0.013 0.04 1.25 0.027 460 550 19.7 0.838 6 3.70 2.28 0.30 0.028 0.009 0.02 1.27 0.040 470 560 16.7 0.839 7 3.85 2.36 0.32 0.033 0.009 0.02 1.50 0.042 470 560 16.5 0.843 8 3.80 2.37 0.23 0.019 0.012 0.50 1.23 0.039 500 570 16.9 0.877 9 3.85 2.45 0.29 0.037 0.016 1.05 1.27 0.039 525 596 15.2 0.881 10 3.60 2.35 0.30 0.035 0.009 2.00 1.32 0.040 555 623 11.2 0.892 11 3.70 2.66 0.30 0.034 0.009 2.96 1.41 0.051 593 659 12.1 0.901
【0032】表1において、No.1はJISのFCD
370相当材、No.2はFCD600相当材の比較例
であり、No.3〜11は本発明の実施例である。FC
D370相当材は伸びは26%と大きいが耐力は320
N/mm2、耐力比はO.73と低い。一方、FCD6
00相当材は耐力が420N/mm2と比較的高いが、
耐力比が0.56と低く、伸びも9%と小さい。これに
対し、No.3〜11の本実施例は、いずれも優れた耐
力と伸び、または耐力比と伸びを兼備している。No.
3〜7のCuを含有したものは、伸びが13%以上で耐
力比が0.75以上であり、好ましいものでは伸びが1
5%以上で耐力比が0.80以上である。No.8〜1
1のCuとNiを含有したものは、伸びは若干低下する
が耐力、耐力比は高くなる。伸びが10%以上で耐力比
が0.80以上であり、好ましいものでは伸びが12%
で耐力比が0.85以上である。
【0033】図1および図2に、比較例と本発明でCu
含有量を変えた場合の焼戻し後のミクロ組織を示す。図
1の(a)はJISのFCD370相当材について、
(b)は比較例としてCuを0.27%含有したもの、
(c)は本発明でCuを0.75%含有したものの焼戻
し後のミクロ組織を示す金属顕微鏡写真であり、倍率は
400倍である。図2の(a)は本発明でCuを1.2
5%含有したものの焼戻し後のミクロ組織を示す倍率が
400倍の金属顕微鏡写真であり、(b)はその拡大S
EM写真で、倍率は4000倍である。本発明の熱処理
として、850℃に30分加熱後冷却し800℃に30
分保持後、油冷焼入れし、700℃に1時間焼戻し処理
を施した。
【0034】JISのFCD370相当材は、フェライ
トのサイズが約60〜65μm と大きく、CuをO.2
7%含有した鋳鉄でも、黒鉛の周りのフェライトが大き
い。Cuを0.75および1.25%含有した本発明の
鋳鉄では、約10μm という微細フェライト基地組織と
なり、鋳造時に晶出した黒鉛の他に熱処理時に晶出した
約5〜10μm の微細2次黒鉛が分散した組織となって
いる。パーライトからフェライト化するものと相違し、
本発明の如くマルテンサイトからフェライト化されたも
のは、焼戻し処理時に焼入れマルテンサイトから炭素が
抜け、マルテンサイトのレンズ状の形状を痕跡として残
す長形の微細フェライトになっていることが、図2
(b)からわかる。
【0035】表2に、No.4、6、9、10の本発明
の実施例について、850℃に30分加熱後冷却し80
0℃に30分保持後、油冷焼入れし、焼戻し温度を70
0、675、650、600℃に変えた場合の耐力、引
張強さ、伸び、耐力比の値を示す。
【0036】
【表2】 耐力(N/mm2) 引張強さ(N/mm2) No. 700℃ 675℃ 650℃ 600℃ 700℃ 675℃ 650℃ 600℃ 4 410 486 − − 520 588 − − 6 470 450 480 610 560 560 610 790 9 525 570 716 790 596 646 830 919 10 555 613 733 788 623 681 826 884 伸び(%) 耐力比 No. 700℃ 675℃ 650℃ 600℃ 700℃ 675℃ 650℃ 600℃ 4 14.0 14.4 − − 0.786 0.826 − − 6 16.7 12.2 9.8 11.8 0.839 0.798 0.783 0.767 9 15.2 10.4 10.1 6.8 0.881 0.882 0.863 0.860 10 11.2 11.0 7.9 4.7 0.892 0.900 0.888 0.892
【0037】表2より、優れた耐力および伸びの観点か
ら焼戻し温度としては、640〜720℃が良いが、焼
戻し温度が低くなると伸びが低下する傾向にあるので、
好ましくは、665〜720℃である。720℃を上限
としたのは表2中No.10(2.0%Ni添加)のオース
テナイト変態開始温度が720℃、完了温度が743℃
となるためである。
【0038】表3に、Cuを1%含有する本発明の鋳鉄
について、オーステナイト化温度の影響を調べた結果を
示す。
【表3】 熱処理 耐力 引張強さ 伸び 耐力比 (N/mm2)(N/mm2) (%) 850/800℃× 30分 427 536 13.8 0.797 →0.Q→700℃×1時間 850℃×1時間 475 562 11.5 0.844 →0.Q→700℃×1時間 900℃×1時間 520 607 12.1 0.856 →0.Q→700℃×1時間 850/800℃× 30分 503 604 14.2 0.837 →0.Q→675℃×1時間 850℃×1時間 548 641 13.8 0.856 →0.Q→675℃×1時間 900℃×1時間 479 563 11.9 0.851 →0.Q→675℃×1時間
【0039】表3より、オーステナイト化温度が850
℃の場合は、焼戻し温度としては675℃でも700℃
でも伸びが大きいが、オーステナイト化温度が900℃
と高くなった場合には、伸びおよび耐力の観点より焼戻
し温度としては675℃より700℃の方が良い。
【0040】表1、表2および表3に示す耐力と伸びと
の関係を図3に示す。図3には、JIS G5502に
示されるFCD370、400、450、500、60
0、700、800材の下限値(図中×)とそれぞれ相
当材の実測値(図中△)を合わせ表示する。図中黒三角
▲1は表1のNo.1の比較例(FCD370相当材)
を、黒三角▲2は表1のNo.2の比較例(FCD60
0相当材)の値を示し、白丸○はCu含有の本発明の実
施例を、黒丸●はCuとNiを含有する本発明の実施例
の値を示している。
【0041】図中黒三角▲1(耐力:320N/m
2、伸び:26%)と黒三角▲2(耐力:420N/
mm2、伸び:9%)を結ぶ線は、耐力をyで、伸びを
xで表すと次の相関式となる。 y=ー(100/17)x+473 本発明としては、優れた耐力と伸びの兼備した鋳鉄の提
供を目的としており、Cuを含有するものでは、耐力と
してはy≧ー(100/17)x+490以上の相関式
を満足し、伸びが13%以上である図3の線ABCの右
上の領域の値を有する高耐力、高延性鋳鉄である。Cu
とNiを含有するものでは、より高い耐力と若干の伸び
の低下を考慮し、耐力としてはy≧ー(100/17)
x+530以上の相関式を満足し、伸びが10%以上で
ある図3の線DEFの右上の領域の値を有する高耐力、
高延性鋳鉄である。
【0042】表1に示すNo.1と2の比較例であるJ
ISのFCD370材およびFCD600材と、No.
6の本発明の実施例について、応力ー歪曲線を図4に示
す。図中に示すNo.は表1に示すNo.に対応し、そ
の鋳鉄についての特性を示している。本発明の鋳鉄は、
従来の球状黒鉛鋳鉄であるFCD370や600材と異
なり、鋼に類似した降伏現象を示し、優れた耐力と伸び
特性を兼備すると共に、耐塑性変形能は高いが、一度塑
性変形を開始するとあまり加工硬化せず変形する。した
がって、かしめ加工のように部分的な塑性加工を行う必
要がある場合、例えば図5に示す自動車の懸架装置部品
1の材料として本発明の材料を適用する場合には、懸架
装置部品1のかしめ加工部2を誘導コイル3を用いた誘
導加熱により部分加熱し、熱処理を施すことによって、
熱処理部について耐塑性変形能は高いが、一度塑性変形
を開始するとあまり加工硬化せず変形するという特性を
備える様にすることができ、極めて有用となる。
【0043】
【発明の効果】以上のように本発明の鋳鉄は、高耐力と
高延性を兼備しており、機械的強度と共にかしめ加工や
塑性加工の必要性が高まってきている自動車の懸架装置
部品の材料として有用であり、このような優れた特性と
組織を有する鋳鉄は、適正な組成と成分範囲を持つ鋳鉄
素材をオーステナイト化処理後焼入し、640〜720
℃で焼戻し処理する本発明の製造方法によって得られる
ものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例と本発明の一実施例の焼戻し後のミクロ
組織を示す金属顕微鏡写真である。
【図2】本発明の他の実施例の焼戻し後のミクロ組織を
示す金属顕微鏡およびその拡大SEM写真である。
【図3】本発明の実施例と比較例の耐力と伸びとの関係
を示す図である。
【図4】本発明の実施例と比較例の応力ー歪曲線を示す
図である。
【図5】自動車の懸架装置部品に本発明の材料を適用す
る場合の部分熱処理の態様を示す図である。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Cu0.7〜1.5%、Mg
    0.015〜0.06%を含み、残部Feと不可避的不
    純物の鋳鉄であって、焼入マルテンサイトを焼戻しした
    微細フェライト基地組織に黒鉛が晶出または析出した組
    織であることを特徴とする高耐力、高延性鋳鉄。
  2. 【請求項2】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Ni0.1〜3.0%、Cu
    0.7〜1.5%、Mg0.015〜0.06%を含
    み、残部Feと不可避的不純物の鋳鉄であって、焼入マ
    ルテンサイトを焼戻しした微細フェライト基地組織に黒
    鉛が晶出または析出した組織であることを特徴とする高
    耐力、高延性鋳鉄。
  3. 【請求項3】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Cu0.7〜1.5%、Mg
    0.015〜0.06%を含み、残部Feと不可避的不
    純物の鋳鉄であって、焼入マルテンサイトを焼戻しした
    微細フェライト基地組織に黒鉛が晶出または析出した組
    織であり、伸びが13%以上で耐力比が0.75以上で
    あることを特徴とする高耐力、高延性鋳鉄。
  4. 【請求項4】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Ni0.1〜3.0%、Cu
    0.7〜1.5%、Mg0.015〜0.06%を含
    み、残部Feと不可避的不純物の鋳鉄であって、焼入マ
    ルテンサイトを焼戻しした微細フェライト基地組織に黒
    鉛が晶出または析出した組織であり、伸びが10%以上
    で耐力比が0.80以上であることを特徴とする高耐
    力、高延性鋳鉄。
  5. 【請求項5】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Cu0.7〜1.5%、Mg
    0.015〜0.06%を含み、残部Feと不可避的不
    純物の鋳鉄であって、焼入マルテンサイトを焼戻しした
    微細フェライト基地組織に黒鉛が晶出または析出した組
    織であり、伸びが13%以上で、耐力y(N/mm2
    と伸びx(%)との関係が次式で表される相関式y≧ー
    (100/17)x+490を満足することを特徴とす
    る高耐力、高延性鋳鉄。
  6. 【請求項6】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Ni0.1〜3.0%、Cu
    0.7〜1.5%、Mg0.015〜0.06%を含
    み、残部Feと不可避的不純物の鋳鉄であって、焼入マ
    ルテンサイトを焼戻しした微細フェライト基地組織に黒
    鉛が晶出または析出した組織であり、伸びが10%以上
    で、耐力y(N/mm2) と伸びx(%)との関係が次
    式で表される相関式y≧ー(100/17)x+530
    を満足することを特徴とする高耐力、高延性鋳鉄。
  7. 【請求項7】 前記鋳鉄であって、降伏現象を示すこと
    を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高耐
    力、高延性鋳鉄。
  8. 【請求項8】 黒鉛が鋳造時に晶出する黒鉛と熱処理時
    に晶出する微細2次黒鉛からなることを特徴とする請求
    項1〜7のいずれか1項に記載の高耐力、高延性鋳鉄。
  9. 【請求項9】 重量比でCuが0.85〜1.30%で
    ある請求項1〜8のいずれか1項に記載の高耐力、高延
    性鋳鉄。
  10. 【請求項10】 重量比でNiが0.5〜1.5%である
    請求項2、4、6〜8のいずれか1項に記載の高耐力、
    高延性鋳鉄。
  11. 【請求項11】 伸びが15%以上で耐力比が0.80以
    上である請求項3、5、7〜9のいずれか1項に記載の
    高耐力、高延性鋳鉄。
  12. 【請求項12】 伸びが12%以上で耐力比が0.85以
    上である請求項4、6〜8、10のいずれか1項に記載
    の高耐力、高延性鋳鉄。
  13. 【請求項13】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Cu0.7〜1.5%、Mg
    0.015〜0.06%を含み、残部Feと不可避的不
    純物の鋳鉄素材をオーステナイト化温度領域に昇温した
    後に所定時間保ち、その後焼入れを行い、さらに640
    〜710℃で焼戻しを行って微細フェライト基地組織に
    黒鉛を晶出することを特徴とする高耐力、高延性鋳鉄の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 重量比で、C3.0〜4.0%、Si
    1.0〜3.0%、Mn0.2〜1.2%、P0.1%
    以下、S0.02%以下、Ni0.1〜3.0%、Cu
    0.7〜1.5%、Mg0.015〜0.06%を含
    み、残部Feと不可避的不純物の鋳鉄素材をオーステナ
    イト化温度領域に昇温した後に所定時間保ち、その後焼
    入れを行い、さらに640〜720℃で焼戻しを行って
    微細フェライト基地組織に黒鉛を晶出することを特徴と
    する高耐力、高延性鋳鉄の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記オーステナイト化温度領域が790
    〜910である請求項13又は請求項14記載の高耐
    力、高延性鋳鉄の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記オーステナイト化温度領域で2つの
    所定温度に所定時間保つ2段加熱する請求項13〜15
    のいずれか1項に記載の高耐力、高延性鋳鉄の製造方
    法。
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