JPH09121728A

JPH09121728A - 魚釣り用リールのスプール

Info

Publication number: JPH09121728A
Application number: JP28339595A
Authority: JP
Inventors: Masatoshi Katayama; 真敏片山
Original assignee: Daiwa Seiko Co Ltd
Current assignee: Globeride Inc
Priority date: 1995-10-31
Filing date: 1995-10-31
Publication date: 1997-05-13

Abstract

(57)【要約】【課題】高い表面硬度を有し、変形等により破損するこ
となく、複雑な形状に対応することができ、しかも軽量
で優れた耐食性を有する魚釣り用リールのスプールを提
供することを目的とする。【解決手段】前側フランジ部、後側フランジ部、並びに
前記前側フランジ部と後側フランジ部との間に位置し、
前記前側フランジ部および後側フランジ部の外径よりも
小さい外径を有する釣り糸巻回胴部を含むスプール本体
と、前記前側フランジ部上に固着され、表面にセラミッ
クコーティング層を有するスプールカバーとを具備する
ことを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、魚釣り用リールの
スプールに関する。

【０００２】

【従来の技術】魚釣り用リールにおいては、例えば仕掛
けを投げる際にスプールに巻回された釣り糸が放出され
るが、その場合に釣り糸はスプールの前側鍔部（フラン
ジ部）の外周縁に接触しながら放出される。このときに
釣り糸とスプールの前側鍔部との間に生じる摩擦を低減
して、仕掛けの飛距離を延ばしたり、釣り糸の損傷や糸
切れを防止するために、スプールの前側鍔部にリングや
カバーを取り付けることが行われている。

【０００３】例えば、実公昭５２−３４３０１号公報や
特開昭６０−１５３７４０号公報においては、合成樹脂
製のスプールの前側鍔部にステンレス鋼や真鍮等からな
る金属製のスプールカバーを取り付けた釣り用リールの
スプールが開示されており、実開昭６０−１９４９７４
号公報においては、スプールの前側鍔部にセラミックリ
ングを装着したスピニングリールのスプールが開示され
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スプー
ルの前側鍔部に金属製のスプールカバーを取り付けた釣
り用リールのスプールは、表面硬度が充分でなく、釣り
場で落下して岩等に衝突したり、砂や異物等が付着した
釣り糸が接触すると、スプールカバーの表面に傷が付い
てしまい、この傷により釣り糸が切断したり、耐食性が
低下する恐れがある。

【０００５】また、スプールの前側鍔部にセラミックリ
ングを装着したスピニングリールのスプールは、セラミ
ックリングを用いているので、表面硬度は高いものの脆
いために、釣り場で落下したときや大きな負荷で釣り糸
を巻き取った時の変形等により破損する恐れがある。ま
た、セラミックが加工性に乏しいために、複雑な形状に
対応することができず、しかも重量が重くなる欠点もあ
る。

【０００６】本発明はかかる点に鑑みてなされたもので
あり、高い表面硬度を有し、変形等により破損すること
なく、複雑な形状に対応することができ、しかも軽量で
優れた耐食性を有する魚釣り用リールのスプールを提供
することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、前側フランジ
部、後側フランジ部、並びに前記前側フランジ部と後側
フランジ部との間に位置し、前記前側フランジ部および
後側フランジ部の外径よりも小さい外径を有する釣り糸
巻回胴部を含むスプール本体と、前記前側フランジ部上
に固着され、表面にセラミックコーティング層を有する
スプールカバーとを具備することを特徴とする魚釣り用
リールのスプールを提供する。本発明においては、スプ
ールカバーは、ステンレス鋼で構成されたスプールカバ
ー本体上にＴｉＮ層を形成してなるものであることが好
ましい。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明の魚釣り用リールのスプー
ルは、前側フランジ部、後側フランジ部、並びに前記前
側フランジ部と後側フランジ部との間に位置し、前記前
側フランジ部および後側フランジ部の外径よりも小さい
外径を有する釣り糸巻回胴部を含むスプール本体と、前
記前側フランジ部上に固着され、表面にセラミックコー
ティング層を有するスプールカバーとを具備することを
特徴としている。

【０００９】本発明において、スプール本体を構成する
材料としては、ポリアミド樹脂、強化されたポリアミド
樹脂（強化ナイロン）等の合成樹脂、アルミニウム、ス
テンレス鋼、チタン系合金等を挙げることができる。

【００１０】スプールカバーを構成する材料としては、
ステンレス鋼；銅、黄銅、リン青銅、アルミニウム、青
銅等の銅系合金；アルミニウム、アルミニウム合金；チ
タン、チタン系合金等を挙げることができる。特に銅系
合金は、切削性に優れ、複雑な形状のスプールカバーを
寸法精度よく作製することができるので好ましい。

【００１１】セラミックコーティング層は、スプールカ
バーの腐食を防止すると共に、釣り糸に対する摺動性を
向上させるためのものである。セラミックコーティング
層を構成する材料としては、ＴｉＮ、Ｓｉ₃ Ｎ₄ 、Ａｌ
Ｎ、Ｃｒ₂ Ｎ等の窒化物セラミック、ＴｉＣ、ＳｉＣ、
Ｃｒ₃ Ｃ₂ 等の炭化物セラミック、ＴｉＯ₂ 、ＳｉＯ
₂ 、Ａｌ₂ Ｏ₃ 等の酸化物セラミックやＴｉＣＮを用い
ることができる。これらのセラミック材料により、スプ
ールカバーの表面の硬度を向上させることができる。

【００１２】また、これらのセラミックは種々の色を示
す。例えば、ＴｉＮは金色、ＴｉＣＮは灰色または茶色
（淡い金色）、ＴｉＯ₂ はピンクまたは青色、Ｃｒ₂ Ｎ
は銀色、ＴｉＣは銀色を示す。特に、ＴｉＮは金色であ
り、光輝性が高く色彩的な豪華さを表わすことができる
ので好ましい。このため、使用用途に応じて適宜セラミ
ックコーティング層の材料を選択して色を調整すること
ができる。例えば、リールにおけるスプール以外の部材
の色に合わせるようにスプールカバーのセラミックコー
ティング層の材料を選択することにより、スプール以外
の部材とスプールカバーの色を合わせて装飾性を向上さ
せることができる。

【００１３】これらの材料は、イオンプレーティング、
真空蒸着、スパッタリング等の物理的気相成長法（ＰＶ
Ｄ法）や、化学的気相成長法（ＣＶＤ法）や、溶射法
や、電気メッキ法等によりスプールカバー上に被着させ
ることができる。ＰＶＤ法は、電気メッキ法やＣＶＤ法
に比べて、形成される膜が密着性に優れており、また、
均一に膜形成することができるので、複雑な形状の母材
に対しても有効である。特に、イオンプレーティング法
は、形成される膜が密着性に優れており、さらに耐食性
や耐摩耗性に優れるので、魚釣り用リールのスプールカ
バーの表面処理方法としては好適である。

【００１４】セラミックコーティング層の厚さは、０．
１〜１００μｍであることが好ましい。これは、セラミ
ックコーティング層の厚さが０．１μｍ未満であると耐
食性や耐摩耗性が低下し、１００μｍを超えると表面の
平滑度が低下したり、クラッックが発生したり、コスト
高となるからである。

【００１５】セラミックコート層とスプールカバーとの
間に下地層を設けてもよい。下地層を構成する材料とし
ては、硬質クロム、ニッケル等を用いることができる。
これらの材料は、電気メッキ法、無電解メッキ法、或い
はアルマイト法（陽極酸化法）等によりスプールカバー
上に被着させることができる。具体的に、スプールカバ
ーの材料がステンレス鋼であり、セラミックコーティン
グ層の材料がＴｉＮである場合には、下地層は硬質クロ
ムメッキ層であることが好ましく、スプールカバーの材
料が銅系合金であり、セラミックコーティング層の材料
がＴｉＮである場合には、下地層は硬質クロムメッキ層
または無電解ニッケルメッキ層であることが好ましく、
スプールカバーの材料がアルミニウムであり、セラミッ
クコーティング層の材料がＴｉＮである場合には、下地
層はアルマイト層であることが好ましい。

【００１６】また、下地層は、単層である必要はなく多
層構造であってもよい。例えば、電気メッキ法により硬
質クロム膜を形成した後に、無電解メッキ法でニッケル
膜を形成して硬質クロム膜とニッケル膜で下地層を構成
してもよい。このような構成にすることにより、ニッケ
ル膜が硬質クロム膜のクラックやピンホールを覆い、ス
プールカバーの腐食を防止することができる。なお、無
電解メッキ法は、均一な膜厚で成膜することができるの
で好ましい。

【００１７】下地層の厚さは、１〜１００μｍであるこ
とが好ましい。これは、下地層の厚さが１μｍ未満であ
ると硬度や耐摩耗性が低下し、１００μｍを超えると付
き回りが悪くなり、コスト高となるからである。

【００１８】以下、本発明の実施例を図面を参照して具
体的に説明する。図１は、本発明の魚釣り用リールの一
部を示す概略図である。図中１１はリール本体の回転軸
（図示せず）に固定されたロータに取り付けられ、リー
ル本体に対して往復運動して進退可能であるスプールの
スプール本体を示す。スプール本体１１は、ロータから
遠い側のフランジ部である前側フランジ部１１ａと、ロ
ータに近い側のフランジ部である後側フランジ部１１ｃ
と、後側フランジ部１１ｃとほぼ同じ外径を有する円筒
部１１ｄと、前側フランジ部と後側フランジ部との間に
位置し、前側フランジ部および後側フランジ部の外径よ
りも小さい外径を有する釣り糸巻回胴部１１ｂとから主
に構成されている。

【００１９】前側フランジ部１１ａおよび円筒部１１ｄ
には、表面にセラミックコーティング層１３を有するス
プールカバー１２が固着されている。前側フランジ部１
１ａにスプールカバー１２を固着する方法としては、カ
ーリングローラーを用いる方法等を挙げることができ
る。

【００２０】上記構成を有するスプールカバー１２は、
セラミックコーティング層１３が高い表面硬度を有する
ので、リールを誤って地面に落下させたときや、砂、異
物等が多く付着した釣り糸を巻き取り・放出して接触さ
せても、表面に傷が付きにくい。したがって、スプール
カバーの傷による釣り糸の損傷や糸切れを確実に防止す
ることができる。また、スプールカバーの表面に傷が付
きにくいので、長期間にわたって優れた耐食性を維持す
ることができる。

【００２１】このように、本発明のスプールは、軽量化
を図りながら、使用環境の厳しい釣り場における使用に
際して、傷付きを防止し、釣り糸への損傷を防止して、
釣り糸放出操作を円滑に行うことができる。

【００２２】また、スプールカバーをステンレス鋼で構
成されたスプールカバー本体上にＴｉＮ層を形成して構
成することにより、ステンレス鋼の優れた耐食性を生か
しながら、さらに表面硬度を向上させることができる。
これにより、釣り糸放出性を一段と向上させることがで
きる。また、色調を金色にすることができるので、装飾
性が向上して高級感が増加する。

【００２３】本発明の魚釣り用リールのスプールは、図
１に示すものに限定されない。例えば、図１において、
円筒部１１ｄに固着したスプールカバー（金属筒）は、
補強および傷防止のために設けているので、特に設けな
くてもよい。

【００２４】また、図２に示すように、釣り糸巻回銅部
１１ｂと両フランジ部１１ａ，１１ｃとの間の外径差が
小さいスプールにおいては、浅溝タイプのスプールカバ
ーを絞り加工により成形することが可能であるので、前
側フランジ部１１ａ、釣り糸巻回銅部１１ｂ、後側フラ
ンジ部１１ｃ、および円筒部１１ｄをすべてスプールカ
バー１２で覆ってもよく、図３に示すように、円筒部１
１ｄ以外をスプールカバー１２で覆ってもよい。これら
の場合においても本発明の効果が発揮される。

【００２５】以下、本発明の魚釣り用リールのスプール
を実際に作製した場合について説明する。（実施例１）樹脂を射出成型によりスプール形状に成形
してスプール本体を作製した。

【００２６】一方、ステンレス鋼をプレス成形法により
スプールカバーの形状に成形してスプールカバー本体を
作製した。次いで、このスプールカバー本体上に電気メ
ッキ法によりにより厚さ１０μｍの硬質クロム膜を下地
層としてを形成した。なお、電気メッキの条件は通常の
条件を採用した。次いで、硬質クロム膜上にイオンプレ
ーティングによりＴｉＮを厚さ２μｍで被着してＴｉＮ
コーティング層を形成してスプールカバーを作製した。

【００２７】上記のようにして得られたスプールカバー
をカーリングローラーによりスプール本体の前側フラン
ジ部に固着した。このようにして、実施例１の魚釣り用
リールのスプールを作製した。

【００２８】この魚釣り用リールのスプールについて、
耐食性および釣り糸摺動性の有無を調べた。なお、耐食
性は、塩水噴霧試験の条件でスプール本体の腐食の有無
により評価し、釣り糸摺動性は、砂が多量に付着した糸
を用いた糸こすりテストにより評価した。

【００２９】その結果、実施例１の魚釣り用リールのス
プールは、スプール本体の腐食がなく、優れた耐食性を
示し、釣り糸の糸切れが起こらず、優れた釣り糸摺動性
を示し、高い硬度を有していた。また、実施例１の魚釣
り用リールのスプールは、セラミックコーティング層が
ＴｉＮであるので、金色を示すことにより装飾性が向上
した。（実施例２）樹脂を射出成形法によりスプール形状に成
形してスプール本体を作製した。

【００３０】一方、アルミニウムをプレス成形法により
スプールカバーの形状に成形してスプールカバー本体を
作製した。次いで、このスプールカバー本体上に陽極酸
化法によりにより厚さ１０μｍのアルマイト膜を下地層
としてを形成した。なお、陽極酸化の条件は通常の条件
を採用した。次いで、アルマイト膜上にイオンプレーテ
ィングによりＴｉＮを厚さ２μｍで被着してＴｉＮコー
ティング層を形成してスプールカバーを作製した。

【００３１】上記のようにして得られたスプールカバー
をカーリングローラーによりスプール本体の前側フラン
ジ部に固着した。このようにして、実施例２の魚釣り用
リールのスプールを作製した。

【００３２】実施例１の魚釣り用リールのスプールは、
セラミックコーティング層がＴｉＮであるので、金色を
示すことにより装飾性が向上した。また、実施例２の魚
釣り用リールのスプールは、比重の小さいアルミニウム
をスプールカバー本体に使用しているので、スプールの
軽量化を図ることができ、魚釣り操作性を向上させるこ
とができた。

【００３３】

【発明の効果】以上説明したように本発明の魚釣り用リ
ールのスプールは、前側フランジ部、後側フランジ部、
並びに前記前側フランジ部と後側フランジ部との間に位
置し、前記前側フランジ部および後側フランジ部の外径
よりも小さい外径を有する釣り糸巻回胴部を含むスプー
ル本体と、前記前側フランジ部上に固着され、表面にセ
ラミックコーティング層を有するスプールカバーとを具
備するので、高い表面硬度を有し、変形等により破損す
ることなく、複雑な形状に対応することができ、しかも
軽量で優れた耐食性を有するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の魚釣り用リールのスプールの一実施例
を示す一部破断図。

【図２】本発明の魚釣り用リールのスプールの他の実施
例を示す一部破断図。

【図３】本発明の魚釣り用リールのスプールの他の実施
例を示す一部破断図。

【符号の説明】

１１…スプール本体、１１ａ…前側フランジ部、１１ｂ
…釣り糸巻回胴部、１１ｃ…後側フランジ部、１１ｄ…
円筒部、１２…スプールカバー、１３…セラミックコー
ティング層、１４…スプール軸。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】前側フランジ部、後側フランジ部、並び
に前記前側フランジ部と後側フランジ部との間に位置
し、前記前側フランジ部および後側フランジ部の外径よ
りも小さい外径を有する釣り糸巻回胴部を含むスプール
本体と、前記前側フランジ部上に固着され、表面にセラ
ミックコーティング層を有するスプールカバーとを具備
することを特徴とする魚釣り用リールのスプール。
【請求項２】前記スプールカバーは、ステンレス鋼で
構成されたスプールカバー本体上にＴｉＮ層を形成して
なるものである請求項１記載の魚釣り用リールのスプー
ル。