JP2006250654A - 時計用文字板および時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】美的外観に優れた銀色の色彩を有する時計用文字板を提供すること、特に環境に優しい方法で提供すること、また、前記時計用文字板を有する時計を提供すること。
【解決手段】本発明の時計用文字板1Aは、少なくとも表面付近がAgを主とする材料で構成された基材2Aと、基材2Aの表面に設けられた第1の被膜3と、第1の被膜3の表面に設けられた第2の被膜4とを有するものである。第1の被膜3は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60であり、かつ、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が0.20以下の材料で構成されたものである。また、第2の被膜4は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60の材料で構成されたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、時計用文字板および時計に関する。
時計用文字板は、装飾品としての優れた装飾性(美的外観)が要求される。銀(Ag)は、美しく、高級感溢れる外観を有することから時計用文字板に好んで用いられている。
しかしながら、銀は、硫黄との親和性が極めて強く、大気中に長期間放置すると、大気中の酸素と反応して酸化銀を生成し、あるいは、大気中に存在する微量の硫黄化合物と反応して硫化銀または硫酸銀を生成し、次第に変色して美的外観を損ねてしまう。
そこで、耐食性の付与、および銀の変色防止を目的として、銀の表面に、Inで構成された層(In層)を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成の時計用文字板では、耐食性の向上、経時的な銀の変色を防止するという観点では十分な効果が得られるものの、銀の表面に被覆層(In層)が設けられることにより、銀そのものの優れた色彩が得られず、黄色味がかった色彩となってしまい、時計用文字板としての美的外観が低下する。
特開2004−084035号公報
本発明の目的は、美的外観に優れた銀色の色彩を有する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を有する時計を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の時計用文字板は、少なくとも表面付近がAgを主とする材料で構成された基材と、
前記基材の表面に設けられた第1の被膜と、
前記第1の被膜の表面に設けられた第2の被膜とを有する時計用文字板であって、
前記第1の被膜は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60であり、かつ、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が0.20以下の材料で構成されたものであり、
前記第2の被膜は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60の材料で構成されたものであることを特徴とする。
これにより、美的外観に優れた銀色の色彩を有する時計用文字板を提供することができる。
本発明の時計用文字板では、前記第2の被膜は、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が0.20以下の材料で構成されたものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記第1の被膜の平均厚さは、50〜500nmであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記第2の被膜の平均厚さは、8〜20μmであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記第2の被膜は、アクリル系材料で構成されたものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を優れたものとすることができるとともに、時計用文字板の耐食性(耐久性)を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記基材は、基部と、主としてAgで構成されたAg層とを有するものであることが好ましい。
これにより、基材の成形性(成形のし易さ)が向上し、複雑な形状の基材や比較的小さな時計用文字板であっても、容易かつ確実に得ることができる。
本発明の時計用文字板では、前記基材は、前記基部と、前記Ag層との間に、下地層を有するものであることが好ましい。
これにより、Ag層の密着性を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記下地層として、主としてNiで構成された層を有していることが好ましい。
これにより、Ag層の密着性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の時計は、本発明の時計用文字板を有することを特徴とする。
これにより、美的外観に優れた時計を提供することができる。
本発明によれば、美的外観に優れた銀色の色彩を有する時計用文字板を提供することができ、また、前記時計用文字板を有する時計を提供することができる。
以下、本発明の時計用文字板および時計の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の時計用文字板の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の時計用文字板の第1実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の時計用文字板1Aは、基材2Aと、基材2Aの表面に設けられた第1の被膜3と、第1の被膜3の表面に設けられた第2の被膜4とを有している。
[基材]
基材2Aは、Agを主とする材料で構成されたものである。基材2Aは、実質的にAgのみで構成されるものであってもよいし、Ag以外の成分を所定量含むものであってもよい。Ag以外の成分を含むものである場合、基材2A中に占めるAgの割合は、80wt%以上であるのが好ましく、95wt%以上であるのがより好ましく、99.5wt%以上であるのがさらに好ましい。Agの割合が80wt%未満であると、最終的に得られる時計用文字板1Aにおいて、Ag特有の高級感のある色彩や、化学的特性、物理的特性が十分に発揮されない場合がある。基材2Aの組成は、各部位で一定のものであってもよいし、各部位で異なるものであってもよい。
上記のような基材2Aは、第1の被膜3、第2の被膜4で被覆されている。
ところで、従来においても、時計用文字板の構成材料として、美的外観に優れたAgが用いられてきており、また、Agの硫化、酸化等による変色防止を目的として、Agの表面に被膜を形成する試みがあった。このような被膜が設けられた時計用文字板では、耐食性の向上、経時的なAgの変色防止するという観点では効果が得られるものの、Agの表面に被膜が設けられることにより、Agそのものの優れた色彩が得られず、黄色味がかった色彩となってしまい、時計用文字板としての美的外観が低下するという問題点があった。
そこで、本発明者は、鋭意研究を行った結果、所定の条件を満足する第1の被膜および第2の被膜を基材上に被覆(積層)することにより、基材の経時的な変色等を防止するとともに、基材を構成するAgが本来有している優れた美的外観を十分に発揮させることができることを見出した。より具体的には、第1の被膜についての、波長580nmの光の絶対屈折率、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第2の被膜についての、波長580nmの光の絶対屈折率を規定することにより、優れた効果が得られることを見出した。上記の波長、波長領域は、黄色に相当するものであり、このような波長、波長領域での屈折率について所定の条件を満足させることにより、黄色味の少ない、優れた色調の時計用文字板が得られることを見出した点に、本発明は特徴を有する。
以下、第1の被膜、第2の被膜について、詳細に説明する。
[第1の被膜]
第1の被膜3は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60であり、かつ、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が0.20以下の材料で構成されたものである。
第1の被膜3が、上記のような条件を満足するものであると、後に詳述するような第2の被膜4と積層することにより、基材2Aの経時的な変色等を防止するとともに、基材2Aを構成するAgが本来有している優れた美的外観を十分に発揮させることができる。
これに対し、第1の被膜3の構成材料についての、波長580nmの光の絶対屈折率が前記下限値未満であると、時計用文字板の外観が青っぽくなる。一方、第1の被膜3の構成材料についての、波長580nmの光の絶対屈折率が前記上限値を超えると、時計用文字板の外観が黄色っぽく見えるという問題が発生する。
また、第1の被膜3の構成材料についての、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が前記上限値を超えると、時計用文字板の外観が黄色っぽく見えるという問題が発生する。
前述したように、第1の被膜3の構成材料についての、波長580nmの光の絶対屈折率は、1.40〜1.60であるが、1.44〜1.49であるのが好ましく、1.45〜1.48であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著なものとして発揮することができる。
また、前述したように、第1の被膜3の構成材料についての、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差は、0.20以下であるが、0.10以下であるのがより好ましく、0.05以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著なものとして発揮することができる。
また、第1の被膜3の平均厚さは、特に限定されないが、50〜500nmであるのが好ましく、70〜400nmであるのがより好ましく、100〜300nmであるのがさらに好ましい。第1の被膜3の平均厚さが前記下限値未満であると、Agの変色防止効果が十分に発揮されない可能性がある。第1の被膜3の平均厚さが前記下限値未満であると、第1の被膜3にピンホールが発生し易くなり、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、第1の被膜3の平均厚さが前記上限値を超えると、被膜の応力増加による密着性の低下を招く可能性がある。また、第1の被膜3の平均厚さが前記上限値を超えると、第1の被膜3の内部応力が高くなり、第1の被膜3と基材2Aとの密着性が低下したり、Ag特有の色彩を保持するのが困難になる場合がある。
なお、第1の被膜3は、図示の構成では基材2Aの全面に形成されているが、基材2Aの表面の少なくとも一部に形成されるものであればよい。
また、第1の被膜3の各部位における組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、第1の被膜3は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。また、第1の被膜3は、例えば、組成の異なる複数の層の積層体であってもよい。
また、第1の被膜3と、基材2Aとの境界は、必ずしも、図示のように明確なものでなくてもよい。
[第2の被膜]
第2の被膜4は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60の材料で構成されたものである。
第2の被膜4が、上記のような条件を満足するものであると、前述したような第1の被膜3上に積層することにより、基材2Aの経時的な変色等を防止するとともに、基材2Aを構成するAgが本来有している優れた美的外観を十分に発揮させることができる。
これに対し、第2の被膜4の構成材料についての、波長580nmの光の絶対屈折率が前記下限値未満であると、時計用文字板の外観が青っぽくなる。一方、第2の被膜4の構成材料についての、波長580nmの光の絶対屈折率が前記上限値を超えると、時計用文字板の外観が黄色っぽく見えるという問題が発生する。
また、第2の被膜4の構成材料についての、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差は、0.20以下であるのが好ましく、0.10以下であるのがより好ましく、0.05以下であるのがさらに好ましい。これにより、外観の白っぽさが増す(白色化効果)という効果が得られる。これに対し、第2の被膜4の構成材料についての、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が前記上限値を超えると、時計用文字板の外観が黄色っぽく見えるという問題が発生する。
また、第2の被膜4の平均厚さは、特に限定されないが、8〜20μmであるのが好ましく、6〜15μmであるのがより好ましく、7〜12μmであるのがさらに好ましい。第2の被膜4の平均厚さが前記下限値未満であると、Agの変色防止効果が十分に発揮されない可能性がある。また、第2の被膜4の平均厚さが前記下限値未満であると、第2の被膜4にピンホールが発生し易くなり、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、第2の被膜4の平均厚さが前記上限値を超えると、被膜の内部応力が増大し、クラックの発生や密着の低下という問題が発生する可能性がある。また、第2の被膜4の平均厚さが前記上限値を超えると、第2の被膜4の内部応力が高くなり、第2の被膜4と第1の被膜3との密着性が低下したり、クラックが発生し易くなるとともに、Ag特有の色彩を保持するのが困難になる場合がある。
第2の被膜4は、上記のような絶対屈折率を有するものであれば、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、アクリル系材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、時計用文字板1Aの美的外観を優れたものとすることができるとともに、時計用文字板1Aの耐食性(耐久性)を特に優れたものとすることができる。
アクリル系材料としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの誘導体を含む重合体を用いることができる。
このような重合体の構成成分としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等の官能基含有モノマーのほか、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。なお、アクリル系材料は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体以外の構成成分(例えば、その他のモノマー成分)を含むものであってもよい。
なお、第2の被膜4は、図示の構成では第1の被膜3の全面に形成されているが、第1の被膜3の表面の少なくとも一部に形成されるものであればよい。
また、第2の被膜4の各部位における組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、第2の被膜4は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。また、第2の被膜4は、例えば、組成の異なる複数の層の積層体であってもよい。
以上説明したように、少なくとも表面付近がAgを主とする材料で構成された基材上に、所定の条件を満足する第1の被膜、第2の被膜を積層した構成にすることにより、銀に特有の色彩を生かしつつ、長期安定性、耐酸化性、耐硫化性、耐光性に優れた時計用文字板を得ることができる。また、時計用文字板は、十分な耐食性、耐久性を有し、長期間にわたって、Agに特有の優れた色彩を保持することができるため、暗い場所等においても、視認しやすい状態を長期間にわたって維持することができる。
時計用文字板1Aは、腕時計、腕時計以外の携帯時計、置時計、掛け時計等、いかなる時計に適用されるものであってもよい。
時計用文字板1Aは、JIS Z 8729で規定されるL表示の色度図において、aが−0.7〜0.7であり、かつ、bが0〜2.3の範囲であるのが好ましく、aが−0.6〜0.6であり、かつ、bが0〜1.3の範囲であるのがより好ましく、aが−0.5〜0.5であり、かつ、bが0〜1.2の範囲であるのがさらに好ましい。このような条件を満足することにより、時計用文字板1Aの美的外観が特に優れたものとなり、高級感がさらに向上する。
[時計用文字板の製造方法]
次に、上述したような時計用文字板1Aの製造方法の好適な実施形態について説明する。
図2は、図1に示す時計用文字板の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態の製造方法は、Agを主とする材料で構成された基材2Aの表面の少なくとも一部(2a)に、第1の被膜3を形成する工程(2b)と、第1の被膜3の表面に、第2の被膜4を形成する工程(2c)とを有する。
基材2Aとしては、前述したようなものを用いることができる。
基材2Aは、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、基材2Aの製造方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、鍛造加工、鋳造加工、粉末冶金焼結、金属粉末射出成形(MIM)、ロストワックス法等が挙げられる。この中でも特に、鋳造加工または金属粉末射出成形(MIM)が好ましい。鋳造加工、金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れている。このため、これらの方法を用いた場合、複雑な形状の基材2Aを比較的容易に得ることができる。
金属粉末射出成形(MIM)は、通常、以下のようにして行われる。まず、金属粉と有機バインダーとを含む材料を混合、混練して混練物を得る。次に、この混練物を射出成形することにより成形体を形成する。その後、この成形体に対して、脱脂処理(脱バインダー処理)を施し、脱脂体を得る。この脱脂処理は、通常、減圧条件下で、加熱することにより行われる。さらに、得られた脱脂体を焼結することにより、焼結体を得る。この焼結処理は、通常、前記脱脂処理より高温で加熱することにより行われる。本発明では、以上のようにして得られる焼結体を基材2Aとして用いることができる。
また、基材2Aの表面に対しては、例えば、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工等の表面加工を施してもよい。これにより、得られる時計用文字板1Aの表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可能となり、得られる時計用文字板1Aの装飾性をさらに向上させることができる。
また、基材2Aと第1の被膜3との密着性の向上等を目的として、第1の被膜3の形成に先立ち、基材2Aに対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理、エッチング処理等が挙げられるが、この中でも特に、清浄化処理が好ましい。基材2Aの表面に、清浄化処理を施すことにより、例えば、基材2Aと第1の被膜3との密着性を特に優れたものとすることができる。
<第1の被膜の形成>
基材2Aの表面に、第1の被膜3を形成する(2b)。
第1の被膜3の形成方法としては、例えば、ディッピング、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法、溶射法、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、真空蒸着、スパッタリング、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、イオンプレーティング等の乾式めっき法等が挙げられるが、この中でも、塗布法が好ましい。
このような塗布法によれば、その操作は、極めて簡単であり、かつ、大掛かりな装置も必要としないので、時計用文字板1Aの製造コストの削減、製造時間の短縮に有利である。また、塗布法によれば、例えばマスキング等を用いることにより、所望のパターン形状の第1の被膜3を容易に得ることができる。
また、第1の被膜3の形成には、第1の被膜3の構成材料そのものを用いてもよいし、第1の被膜3の構成材料の前駆体(1または2以上の化学反応により第1の被膜3の構成材料に変化するもの)を用いてもよい。例えば、第1の被膜3の前駆体を含む材料を基材2A上に付与し、その後、加熱等の処理を施すことにより、第1の被膜3の構成材料に化学変化させてもよい。
<第2の被膜の形成>
第1の被膜3の表面に、第2の被膜4を形成する(2c)。
第2の被膜4の形成方法としては、例えば、ディッピング、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法、溶射法、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、真空蒸着、スパッタリング、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、イオンプレーティング等の乾式めっき法等が挙げられるが、この中でも、塗布法が好ましい。
このような塗布法によれば、その操作は、極めて簡単であり、かつ、大掛かりな装置も必要としないので、時計用文字板1Aの製造コストの削減、製造時間の短縮に有利である。また、塗布法によれば、例えばマスキング等を用いることにより、所望のパターン形状の第2の被膜4を容易に得ることができる。
また、第2の被膜4の形成には、第2の被膜4の構成材料そのものを用いてもよいし、第2の被膜4の構成材料の前駆体(1または2以上の化学反応により第2の被膜4の構成材料に変化するもの)を用いてもよい。例えば、第2の被膜4の前駆体を含む材料を第1の被膜3上に付与し、その後、加熱等の処理を施すことにより、第2の被膜4の構成材料に化学変化させてもよい。
次に本発明の時計用文字板の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の時計用文字板の第2実施形態を示す断面図である。
以下、第2実施形態の時計用文字板について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の時計用文字板1Bは、基部21および主としてAgで構成されたAg層22を有する基材2Bと、基材2Aの表面に設けられた第1の被膜3と、第1の被膜3の表面に設けられた第2の被膜4とを有している。すなわち、基材が、基部とAg層とを有するものである以外は、前記第1実施形態と同様である。このように、本発明において、基材は、少なくとも表面付近がAgを主とする材料で構成されたものであればよい。
基部21は、いかなる材料で構成されるものであってもよく、例えば、プラスチック等の非金属性の材料で構成されるものであっても、あるいは金属材料で構成されるものであってもよい。
基部21が金属材料で構成される場合、特に優れた強度特性を有する時計用文字板1Bを提供することができる。基部21が非金属材料で構成される場合、比較的軽量で携帯し易く、かつ、重厚な外観を有する時計用文字板1Bを提供することができる。
また、基部21が非金属材料で構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、直接成形するのが困難な形状の時計用文字板1Bであっても、比較的容易に提供することができる。また、基部21が非金属材料で構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果も得られる。
基部21を構成する金属材料としては、例えば、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、Mo、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、Ag等の各種金属や、これらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。この中でも特に、基部21が、Cu、Zn、Niまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金で構成されたものであると、基材2Bの加工性が向上し、基材2Bの成形の自由度がさらに増す。さらに、基部21はCu−Zn系合金、いわゆる真鍮で構成されることが好ましい。基部21を真鍮で構成することで、基材2Bの加工性がさらに向上し、基材2Bの成形の自由度がさらに増す。
また、基部21が、主として、ステンレス鋼で構成されるものである場合、基材2Bの加工性が向上し、基材2Bの成形の自由度がさらに増す。なお、ステンレス鋼としては、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Ni系合金等が挙げられる。Fe−Cr−Ni系合金としては、例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L等が挙げられ、Fe−Cr系合金としては、例えば、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F等が挙げられる。
また、基部21を構成する非金属材料としては、例えば、プラスチックやセラミックス、石材、木材、ガラス等が挙げられる。
プラスチックとしては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられる。基部21がプラスチックで構成される場合、比較的軽量で携帯し易く、かつ、重厚な外観を有する時計用文字板1Bを得ることができる。また、基部21がプラスチックで構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができる。このため、複雑な形状を有する時計用文字板1Bであっても、比較的容易に製造することができる。また、基部21がプラスチックで構成される場合、電磁ノイズを遮蔽する効果が得られる。
セラミックスとしては、例えば、Al、SiO、TiO、Ti、ZrO、Y、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の酸化物系セラミックス、AlN、Si、SiN、TiN、BN、ZrN、HfN、VN、TaN、NbN、CrN、CrN等の窒化物系セラミックス、グラファイト、SiC、ZrC、Al、CaC、WC、TiC、HfC、VC、TaC、NbC等の炭化物系のセラミックス、ZrB、MoB等のホウ化物系のセラミックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組み合わせた複合セラミックスが挙げられる。基部21が前記のようなセラミックスで構成される場合、高強度、高硬度の時計用文字板1Bを得ることができる。
また、Ag層22は、主としてAgで構成されるものであればよく、例えば、実質的にAgのみで構成されるものであってもよいし、Ag以外の成分を所定量含むものであってもよい。Ag以外の成分を含むものである場合、Ag層22中に占めるAgの割合は、80wt%以上であるのが好ましく、95wt%以上であるのがより好ましい。Agの割合が80wt%未満であると、最終的に得られる時計用文字板1Bにおいて、Ag特有の高級感のある色彩や、化学的特性、物理的特性が十分に発揮されない場合がある。
Ag層22の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜2μmであるのが好ましく、0.1〜0.5μmであるのがより好ましい。Ag層22の平均厚さが前記下限値未満であると、Ag層22にピンホールが発生し易くなり、時計用文字板1Bの美的外観が低下する可能性がある。一方、Ag層22の平均厚さが前記上限値を超えると、形成されるAg層22が黄色味を帯びた色となる傾向を示し、最終的に得られる時計用文字板1Bの審美性が低下する場合がある。
なお、Ag層22は、図示の構成では基部21の全面に形成されているが、基部21の表面の少なくとも一部に形成されるものであればよい。
また、Ag層22の各部位における組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、Ag層22は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。
また、Ag層22と、基部21との境界は、必ずしも、図示のように明確なものでなくてもよい。
次に、上述した時計用文字板1Bの製造方法について説明する。
以下、第2実施形態の時計用文字板の製造方法について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
図4は、図3に示す時計用文字板の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態の製造方法は、基部21の表面の少なくとも一部(4a)に、主としてAgで構成されたAg層22を形成することにより、基材2Bを得る工程(4b)と、基材2Bの表面の少なくとも一部に、第1の被膜3を形成する工程(4c)と、第1の被膜3の表面に、第2の被膜4を形成する工程(4d)とを有する。
基部21は、いかなる方法で製造されたものであってもよい。基部21が金属材料で構成される場合、その製造方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、鍛造加工、鋳造加工、粉末冶金焼結、金属粉末射出成形(MIM)、ロストワックス法等が挙げられるが、この中でも特に、鋳造加工または金属粉末射出成形(MIM)が好ましい。鋳造加工、金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れている。このため、これらの方法を用いた場合、複雑な形状の基部21を比較的容易に得ることができる。
また、基部21が前記のようなプラスチックで構成される場合、その製造方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、光造形等が挙げられる。また、基部21が前記のようなセラミックスで構成される場合、その製造方法は、特に限定されないが、金属粉末射出成形(MIM)であるのが好ましい。金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れているため、複雑な形状の基部21を比較的容易に得ることができる。
基部21の表面の少なくとも一部に、主としてAgで構成されたAg層22を形成することにより、基材2Bが得られる(4b)。
Ag層22の形成方法は、特に限定されないが、めっき法が好ましい。めっき法を用いてAg層22を形成することにより、均質で、かつ基部21との密着性に優れたAg層22を容易に形成することができる。このように、基部21とAg層22との密着性が優れたものとなるため、得られる時計用文字板1Aの耐久性は、特に優れたものとなる。
めっき法としては、例えば、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、真空蒸着、スパッタリング、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、イオンプレーティング等の乾式めっき法等が挙げられる。
この中でも特に、湿式めっきが好ましく、電解めっきがより好ましい。Ag層22の形成方法として、湿式めっき法を用いることにより、基部21との密着性に特に優れるAg層22を、比較的簡易な装置、方法で、形成することができる。その結果、得られる時計用文字板1Aの長期耐久性は、特に優れたものとなる。
特に、めっき法として、電解めっきを用いた場合、上記のような効果がさらに顕著になる。また、めっき法として、電解めっきを用いた場合、めっき液組成、めっき液温度(浴温)、電流密度、めっき時間等のめっき条件を容易に制御することができ、これにより、形成されるAg層22の膜厚、組成等を容易に調節することができる。その結果、例えば、時計用文字板1Aの色彩や、耐食性等の物性を容易に調節することができる。
電解めっきは、例えば、以下のような条件で行うのが好ましい。
電解めっき時における浴温は、特に限定されないが、15〜30℃であるのが好ましく、16〜20℃であるのがより好ましい。浴温が、前記下限値未満であると、Agの析出効率が低下し、形成されるAg層22の光沢が低下する傾向を示す。一方、浴温が、前記上限値を超えると、形成されるAg層22が黄色味を帯びた色となる傾向を示し、最終的に得られる時計用文字板1Bの審美性が低下する場合がある。
また、電解めっき時における電流密度は、特に限定されないが、0.5〜3A/dmであるのが好ましく、0.5〜1A/dmであるのがより好ましい。電流密度が、前記下限値未満であると、Ag層22の形成に要する時間が長くなり、時計用文字板1Aの生産性が低下する。一方、電流密度が、前記上限値を超えると、いわゆる、クモリ、カブリといった光沢不良を生じる場合がある。
電解めっきに用いるめっき液中におけるAgの濃度は、特に限定されないが、5〜30[g/リットル]であるのが好ましく、10〜20[g/リットル]であるのがより好ましい。めっき液中におけるAgの濃度が前記下限値未満であると、Agの析出効率が低下し、時計用文字板1Bの生産性が低下する。一方、めっき液中におけるAgの濃度が前記上限値を超えると、形成されるAg層22が黄色味を帯びた色となる傾向を示し、最終的に得られる時計用文字板1Bの審美性が低下する場合がある。
以上のようにして、基部21の少なくとも表面の一部にAg層22を有する基材2Bが得られる。
以上のようにして得られた基材2Bの表面に、前記第1実施形態と同様にして、第1の被膜3、第2の被膜4を積層することにより時計用文字板1Bが得られる(4c、4d)。
次に本発明の時計用文字板の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の時計用文字板の第3実施形態を示す断面図である。
以下、第3実施形態の時計用文字板について、前記第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の時計用文字板1Cは、基部21、下地層23、および、主としてAgで構成されたAg層22を有する基材2Cと、基材2Aの表面に設けられた第1の被膜3と、第1の被膜3の表面に設けられた第2の被膜4とを有している。すなわち、基材が、基部とAg層との間に、下地層を有するものである以外は、前記第2実施形態と同様である。
以下、下地層23について詳細に説明する。
下地層23は、いかなる機能を有するものであってもよいが、以下のような機能を有するものであるのが好ましい。
下地層23は、例えば、基部21とAg層22との電位差を緩和する緩衝層として機能するものであるのが好ましい。これにより、基部21とAg層22との電位差による腐食(異種金属接触腐食)の発生をより効果的に防止することが可能となる。
また、下地層23は、例えば、基部21と、Ag層22との密着性を向上させる機能を有するものであるのが好ましい。このように、基部21と、Ag層22との密着性が向上することにより、時計用文字板1Cの耐食性がさらに優れたものとなる。その結果、時計用文字板1Cは、特に耐久性に優れたものとなる。
また、下地層23は、例えば、基部21の孔、キズ等をレベリング(ならし)により補修する機能等を有するものであってもよい。
下地層23の構成材料は、特に限定されないが、Cu、Co、Pd、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Zn、Al、Fe、Cr、Pt、Rh、Ru、Ir等の金属材料や、前記金属材料のうち少なくとも1種を含む合金、前記金属材料のうち少なくとも1種による金属化合物(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等)、またはこれらを2種以上組み合わせたもの等が挙げられる。
下地層23が、Cu、Co、Pd、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Zn、Al、Fe、Cr、Pt、Rh、Ru、Irまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金で構成されるものである場合、基部21とAg層22との電位差による腐食の発生を、さらに効果的に防止することができる。
また、下地層23が上記のような材料で構成されたものである場合、基部21、Ag層22との密着性も向上する。このように、基部21と、Ag層22との密着性が向上することにより、時計用文字板1Cの耐食性がさらに優れたものとなる。その結果、時計用文字板1Cは、特に耐久性に優れたものとなる。
また、下地層23が、Cu、Co、Pd、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Znまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金で構成されたものである場合、上述した効果はさらに顕著なものとなる。
また、下地層23の構成材料は、基部21を構成する材料またはAg層22を構成する材料のうち少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。これにより、基部21と、Ag層22との密着性がさらに向上する。このように、基部と、Ag層との密着性が向上することにより、時計用文字板1Cの耐食性がさらに優れたものとなる。その結果、時計用文字板1Cは、特に耐久性に優れたものとなる。
また、下地層23の標準電位は、基部21の標準電位と、Ag層22の標準電位との間の値であるのが好ましい。すなわち、下地層23は、その標準電位が、基部21の構成材料の標準電位と、Ag層22の構成材料の標準電位との間の値である材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、基部21とAg層22との電位差による腐食(異種金属接触腐食)の発生をより効果的に防止することが可能となる。
具体的に、例えば、基部21がCu−Zn系合金、いわゆる真鍮からなる場合、下地層23は、Niから構成されることが好ましい。下地層23をNiから構成することで、真鍮からなる基部21と、Ag層22との密着性が良好なものとなる。また、下地層23をNiから構成することで、真鍮からなる基部21とAg層22との電位差による腐食(異種金属接触腐食)の発生もより効果的に防止することができる。その結果、得られる時計用文字板1Cの耐食性、耐久性は特に優れたものとなる。
下地層23の平均厚さは、例えば、0.5〜3μmであるのが好ましく、0.5〜1μmであるのがより好ましい。下地層23の平均厚さが前記下限値未満であると、上述した下地層23の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、下地層23の平均厚さが前記上限値を超えると、下地層23の各部位における膜厚のバラツキが大きくなる傾向を示す。また、基部21の表面形状(例えば、基部21表面に形成された模様)等を、最終的に得られる時計用文字板1Cの外観に十分に反映するのが困難となる。
なお、下地層23は、図示の構成では基部21の全面に形成されているが、基部21の表面の少なくとも一部に形成されるものであればよい。
また、下地層23の各部位における組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、下地層23は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。
また、下地層23と、基部21との境界は、必ずしも、図示のように明確なものでなくてもよい。
また、下地層23は、前記のような機能を有するものに限定されない。例えば、下地層23は、保管時(Ag層22の形成の工程までの間)等に腐食が発生するのを防止する機能等を有するものであってもよい。
次に、上述した時計用文字板1Cの製造方法について説明する。
以下、第3実施形態の時計用文字板の製造方法について、前記第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については、その説明を省略する。
図6は、図5に示す時計用文字板の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態の製造方法は、基部21の表面の少なくとも一部(6a)に、下地層23を形成する工程(6b)と、下地層23の表面の少なくとも一部に、主としてAgで構成されたAg層22を形成することにより、基材2Cを得る工程(6c)と、基材2Cの表面の少なくとも一部に、第1の被膜3を形成する工程(6d)と、第1の被膜3の表面に、第2の被膜4を形成する工程(6e)とを有する。
下地層23の形成方法としては、例えば、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法、真空蒸着、スパッタリング、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、イオンプレーティング等の乾式めっき法、溶射、金属箔の接合等が挙げられるが、この中でも特に、湿式めっき法または乾式めっき法が好ましい。下地層23の形成方法として、湿式めっき法または乾式めっき法を用いることにより、形成される下地層23は、基部21との密着性に特に優れたものとなる。その結果、得られる時計用文字板1Cの長期耐久性は、特に優れたものとなる。
また、下地層23は、例えば、基部21の表面に、酸化処理、窒化処理、クロメート処理、炭化処理、酸浸漬、酸電解処理、アルカリ浸漬処理、アルカリ電解処理等の化学処理を施すことにより形成された被膜、特に、不動態膜であってもよい。
[時計]
次に、上述したような本発明の時計用文字板を備えた本発明の時計について説明する。
本発明の時計は、上述したような本発明の時計用文字板を有するものである。上述したように、本発明の時計用文字板は、美的外観に優れた銀色の色彩を有し、耐久性に優れたものである。このため、このような時計用文字板を備えた本発明の時計は、時計としての求められる要件を十分に満足することができる。すなわち、本発明の時計は、特に優れた審美性を長期間にわたって保持することができる。なお、本発明の時計を構成する前記時計用文字板以外の部品としては、公知のものを用いることができるが、以下、本発明の時計について、一例を挙げてより詳細に説明する。
図7は、本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
図7に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)100は、胴(ケース)62と、裏蓋63と、ベゼル(縁)64と、ガラス板(カバーガラス)65とを備えている。また、ケース62内には、前述したような本発明の時計用文字板1(1A、1B、1C)と、ムーブメント61とが収納されており、さらに、図示しない針(指針)等が収納されている。
ガラス板65は、通常、透明性の高い透明ガラスやサファイア等で構成されている。これにより、本発明の時計用文字板1の審美性を十分に発揮させることができる。
胴62には巻真パイプ66が嵌入・固定され、この巻真パイプ66内にはりゅうず67の軸部671が回転可能に挿入されている。
胴62とベゼル64とは、プラスチックパッキン68により固定され、ベゼル64とガラス板65とはプラスチックパッキン69により固定されている。
また、胴62に対し裏蓋63が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)90には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)80が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部90が液密に封止され、防水機能が得られる。
りゅうず67の軸部671の途中の外周には溝672が形成され、この溝672内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)70が嵌合されている。ゴムパッキン70は巻真パイプ66の内周面に密着し、該内周面と溝672の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず67と巻真パイプ66との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず67を回転操作したとき、ゴムパッキン70は軸部671と共に回転し、巻真パイプ66の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
なお、上記の説明では、時計の一例として、腕時計(携帯時計)を挙げて説明したが、本発明は、腕時計以外の携帯時計、置時計、掛け時計等の他の種類の時計にも同様に適用することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、前述した第3実施形態においては、1層の下地層を有する構成について説明したが、このような下地層を2層以上有するものであってもよい。この場合、下地層の少なくとも1層がその片方の面側と他方の面側との電位差を緩和する作用を有するものであるのが好ましい。また、隣接する2つの下地層は、互いに共通の元素を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、隣接する下地層の密着性は、特に優れたものとなる。
また、時計用文字板の表面の少なくとも一部には、耐食性、耐光性、耐水性、耐油性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐変色性等の機能を向上させ、防錆、防汚、防曇、防傷等の効果を向上する保護層等が形成されていてもよい。このようなコート層は、時計用文字板の使用時等において除去されるものであってもよい。
また、本発明の時計用文字板の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.時計用文字板の製造
(実施例1)
以下に示すような方法により、時計用文字板(時計用文字板)を製造した。
まず、JIS H 2141で規定される銀地金1種(Ag含有率:99.99%以上)を用いて、鋳造により、時計用文字板の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を20秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、5wt%硫酸を用いた中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を5秒間行った。
このようにして洗浄を行った基材の表面に、第1の被膜を形成した。第1の被膜の形成は、以下に説明するような方法により行った。
まず、コルコートP(コルコート社製)の2wt%溶液をスプレー塗装した。その後、150℃×10分間の乾燥処理を行うことにより、第1の被膜を形成した。
上記のようにして形成された第1の被膜の平均厚さは、150nmであった。また、第1の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率は、1.47、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差は、0.2であった。
次に、第1の被膜の表面に、第2の被膜を形成することにより、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。第2の被膜の形成は、アクリル系材料(久保孝ペイント社製:アクリオンクリア)を用いて、スプレー塗装により行った。形成された被覆層の平均厚さは、15μmであった。また、第2の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率は、1.47、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差は、0.2であった。
(実施例2)
第1の被膜の形成条件を変更(ディッピングにて成膜、液温:常温)することにより、第1の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(実施例3)
第1の被膜の厚さを300nmに変更することにより、第1の被膜についての、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差を、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(実施例4)
第1の被膜の形成に用いる液体の濃度を2wt%から、5wt%に変更することにより、第1の被膜についての、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(実施例5)
以下に示すような方法により、時計用文字板(時計用文字板)を製造した。
まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60wt%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、時計用文字板の形状を有する部材(基部)を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基部を洗浄した。基部の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を20秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、5wt%硫酸を用いた中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を5秒間行った。
このようにして洗浄を行った基部の表面に、Ag層を形成し、基材を得た。Ag層の形成は、以下に説明するような電解めっきにより行った。
まず、シアン化銀カリウム(20g/リットル)と、シアン化ナトリウム(23g/リットル)と、炭酸ナトリウム(12g/リットル)と、水とを用いて、めっき液を調製した。得られためっき液中におけるAgの濃度CAgは10.8[g/リットル]であった。このめっき液を用いて、浴温:18℃、電流密度:0.5A/dm、時間:20秒間という条件で、電解めっきを行った。電解めっきにより形成されたAg層の平均厚さは、0.2μmであった。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ浸漬脱脂を20秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を5秒間行った。
このようにして洗浄を行った基材の表面に、第1の被膜を形成し、その後、第1の被膜の表面に第2の被膜を形成した。第1の被膜、第2の被膜の形成は、前記実施例1と同様にして行った。
(実施例6)
Ag層の形成に先立ち、基部の表面に、Niで構成される下地層を形成した以外は、実施例5と同様にして時計用文字板(時計用文字板)を製造した。
下地層の形成は、電解めっき(ストライクめっき)により、浴温:30℃、電流密度:2A/dm、時間:1分間という条件で行った。このようにして形成された下地層の平均厚さは、0.5μmであった。
(比較例1)
基材上に、第1の被膜、第2の被膜を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして時計用文字板(時計用文字板)を製造した。
(比較例2)
基材上に、第1の被膜を形成することなく、直接、第2の被膜を形成した以外は、前記実施例1と同様にして時計用文字板(時計用文字板)を製造した。
(比較例3)
基材上に、第1の被膜を形成した後、第2の被膜を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして時計用文字板(時計用文字板)を製造した。
(比較例4)
第1の被膜形成用の材料として、フッ素樹脂を用いるとともに、第1の被膜の形成をスプレー塗装により行うことにより、第1の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(比較例5)
第1の被膜形成用の材料として、Alを用いるとともに、第1の被膜の形成をスパッタにより行うことにより、第1の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(比較例6)
第1の被膜形成用の材料として、TiOを用いるとともに、第1の被膜の形成をスパッタにより行うことにより、第1の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(比較例7)
第2の被膜形成用の材料を変更するとともに、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
(比較例8)
第2の被膜形成用の材料として、エポキシ系塗料を用いるとともに、第1の被膜形成用の材料として、SiOを用いることにより、第1の被膜についての、580nmの光の絶対屈折率、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差、第1の被膜の平均厚さを、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造した。
各実施例および各比較例の時計用文字板の構成等を表1にまとめて示す。
Figure 2006250654
2.時計用文字板の外観評価
上記各実施例および各比較例で製造した時計用文字板について、表面の色調を色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:a表示の色度図において、aが−0.5〜0.5であり、かつ、bが0〜1.2の範囲内である。
B:a表示の色度図において、aが−0.6〜0.6であり、かつ、bが0〜1.3の範囲内(ただし、Aの範囲は除く。)である。
C:a表示の色度図において、aが−0.7〜0.7であり、かつ、bが0〜2.3の範囲内(ただし、AおよびBの範囲は除く。)である。
D:a表示の色度図において、aが−0.8〜0.8であり、かつ、bが0〜2.7の範囲内(ただし、A、BおよびCの範囲は除く。)である。
E:a表示の色度図において、aが−0.8〜0.8であり、かつ、bが0〜2.7である範囲(A、B、CまたはDの範囲)から外れるものである。
なお、色度計の光源としては、JIS Z 8720で規定されるD65のものを用い、視野角:2°で測定した。
3.時計用文字板の耐酸化性評価
上記各実施例および各比較例で製造した時計用文字板を、40℃、常圧の大気雰囲気下で100時間放置し、その後の表面の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、上記の5段階の基準に従い、評価した。
4.時計用文字板の耐硫化性評価
上記各実施例および各比較例で製造した時計用文字板を、室温(23℃)の環境下で、NaSが150ppm濃度で存在する硫化雰囲気中に3分間放置し、その後の、表面の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、上記の5段階の基準に従い、評価した。
5.時計用文字板の耐光性評価
上記各実施例および各比較例で製造した時計用文字板について、以下のような耐光性試験を行った。
まず、高さ0.3mm×幅3.9cm×奥行3.8cmのケースを用意した。この中に、0.1ミリリットルの蒸留水を含ませた濾紙と、上記各実施例および各比較例で製造した時計用文字板とを入れ、密閉状態とした後、カーボンアークフェドメータ(スガ試験株式会社製、FA−2型)を用いて、時計用文字板の表面に、紫外線を照射した。なお、紫外線照射時におけるケース内の温度は、63±3℃であった。50時間、紫外線を照射した後、時計用文字板をケース内から取り出し、その後の表面の色調を、色度計(ミノルタ社製、CM−2022)を用いて測定し、上記の5段階の基準に従い、評価した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2006250654
表2から明らかなように、本発明の時計用文字板は、銀特有の色彩を有しており、前述した長期安定性試験、耐酸化性試験、耐硫化性試験の各試験後においても、美的外観に優れた色彩を保持しており、優れた耐食性を有していることがわかる。
これに対し、比較例の時計用文字板では、満足な結果が得られなかった。
すなわち、比較例1の時計用文字板では、初期の段階(製造直後)においては、優れた美的外観を有しているものの、耐久性に劣り、長期安定性試験、耐酸化性試験、耐硫化性試験後の外観の低下が著しかった。
また、第1の被膜および第2の被膜を有する比較例4〜8の時計用文字板では、経時的な色彩の変化は少ないものの、初期の段階から、黄色味がかった色彩を有しており、銀特有の高級感のある外観を示すものではなかった。
また、基材として、実施例5、6で用いたのと同様の構成を有するものを用いた以外は、前記比較例4〜8と同様にして、時計用文字板(腕時計用文字板)を製造し、これらについて、前記と同様の評価を行った。その結果、前記比較例4〜8と同様の結果が得られた。
また、各実施例および各比較例で得られた時計用文字板を用いて、図7に示すような時計を組み立てた。このようにして得られた各時計について、上記と同様の試験、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
本発明の時計用文字板の第1実施形態を示す断面図である。 図1に示す時計用文字板の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。 本発明の時計用文字板の第2実施形態を示す断面図である。 図3に示す時計用文字板の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。 本発明の時計用文字板の第3実施形態を示す断面図である。 図5に示す時計用文字板の製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。 本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
符号の説明
1、1A、1B、1C…時計用文字板 2A、2B、2C…基材 21…基部 22…Ag層 23…下地層 3…第1の被膜 4…第2の被膜 61…ムーブメント 62…胴(ケース) 63…裏蓋 64…ベゼル(縁) 65…ガラス板(カバーガラス) 66…巻真パイプ 67…りゅうず 671…軸部 672…溝 68…プラスチックパッキン 69…プラスチックパッキン 70…ゴムパッキン(りゅうずパッキン) 80…ゴムパッキン(裏蓋パッキン) 90…接合部(シール部) 100…腕時計(携帯時計)

Claims (9)

  1. 少なくとも表面付近がAgを主とする材料で構成された基材と、
    前記基材の表面に設けられた第1の被膜と、
    前記第1の被膜の表面に設けられた第2の被膜とを有する時計用文字板であって、
    前記第1の被膜は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60であり、かつ、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が0.20以下の材料で構成されたものであり、
    前記第2の被膜は、波長580nmの光の絶対屈折率が1.40〜1.60の材料で構成されたものであることを特徴とする時計用文字板。
  2. 前記第2の被膜は、570〜590nmの波長領域における絶対屈折率の最大値と最小値との差が0.20以下の材料で構成されたものである請求項1に記載の時計用文字板。
  3. 前記第1の被膜の平均厚さは、50〜500nmである請求項1または2に記載の時計用文字板。
  4. 前記第2の被膜の平均厚さは、8〜20μmである請求項1ないし3のいずれかに記載の時計用文字板。
  5. 前記第2の被膜は、アクリル系材料で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の時計用文字板。
  6. 前記基材は、基部と、主としてAgで構成されたAg層とを有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の時計用文字板。
  7. 前記基材は、前記基部と、前記Ag層との間に、下地層を有するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の時計用文字板。
  8. 前記下地層として、主としてNiで構成された層を有している請求項1ないし7のいずれかに記載の時計用文字板。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の時計用文字板を有することを特徴とする時計。
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