JPH09117111A - 回転電機の円形積層鉄心の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 円筒状の回転電機鉄心の板厚クラウンに起因
して発生する積層高さのかたよりをより安価な方法で防
止する。 【解決手段】 円形積層鉄心の外周面あるいは内周面と
なる円形部にその周囲を３等分する位置にそれぞれ同一
形状部分をもつ切欠部２を有する円形鉄心単板１を抜板
方位を電磁鋼板の長さ方向と一定の関係に保って所定枚
数打抜く第１の工程と、第１の工程で得た円形鉄心単板
１を、切欠部２の数のほぼ等しい枚数の円形鉄心単板群
に仕分けし、仕分けした円形鉄心単板群を各円形鉄心単
板群ごとにそれぞれ異なる各切欠部を基準にしてスロッ
ト３を打抜く第２の工程と、第２の工程によって得た円
形鉄心単板を第２の工程において基準にした各切欠部２
を１つの基準位置に合わせて第２の工程における各円形
鉄心単板群ごとに所定の枚数ずつ順次繰り返して積み上
げる第３の工程とで回転電機の円形積層鉄心を製造す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、回転電機の円形
積層鉄心の製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】回転電機鉄心の素材である電磁鋼板は、
電磁鋼板圧延設備の能力に見合った幅の圧延電磁鋼板
（一般には、長尺の帯状圧延電磁鋼板を渦巻状に巻いた
コイルと称する形態をとる）を回転電機鉄心の製造に必
要な幅に適宜切断したものを使用するのが一般的であ
る。しかしながら、鋼板の圧延過程で圧延ローラーの撓
みが避けられないため圧延電磁鋼板の幅方向には板厚偏
差が少なからず存在する。板幅の中心部で厚く縁部で薄
いのが一般的で、このような形態を板厚クラウンと呼
ぶ。円形の回転電機鉄心板（以下、単に円形鉄心単板と
呼ぶ）を所定の高さに積み重ねて円筒状の回転電機鉄心
（以下、単に円形積層鉄心と呼ぶ）とする場合、円形積
層鉄心の円周方向で積層高さにかたよりがあると、磁気
特性も円周方向でかたよりを生じる。円周方向における
磁気特性のかたよりは、回転電機の特性に悪影響をおよ
ぼす。特に、回転子の両端に交流電圧を生じて、２つの
軸受を介して固定子と回転子を周回する経路に電流が流
れ、軸受を損傷させる、いわゆる軸電流の発生原因にな
る。このため、板厚クラウンのある電磁鋼板から円形鉄
心単板を製造するにあたっては、円形積層鉄心の円周方
向で積層高さにかたよりが生じないように対策するのが
一般的である。

【０００３】図６は、例えば特開昭５１−５０４０１号
公報に記載された円形鉄心単板を示すものである。図に
おいて、円形鉄心単板１の内周には複数の巻線を収納す
るスロット３が設けてあり、外周には、外周をほぼ４等
分しスロット３との相対位置関係が同一の位置に同形の
切欠部２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄが設けてある。円形鉄心
単板１はその外周上の特定の一点（任意の位置でよい
が、ここでは切欠部２ａの位置とする）の円形鉄心単板
１の中心からの方向（以下、抜板方位と呼ぶ）を常に素
材である電磁鋼板の長さ方向と一致するように製造して
ある。円形鉄心単板１を１枚あるいは適当な枚数ごと
に、円形積層鉄心の基準位置が順次切欠部２ａ、２ｂ、
２ｃ、２ｄと一致するように繰り返して積み上げ、円形
積層鉄心を完成する。このように鉄心単板を積み上げれ
ば、切欠部２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄが円形鉄心単板１の
外周にほぼ均一の間隔で設けてあるため、電磁鋼板にお
ける幅方向の厚さの不同は、円形積層鉄心全体でみると
円形積層鉄心の周囲にほぼ均等に分散する形になり、積
層高さのかたよりは解消できる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来の円形鉄心単板お
よび円形積層鉄心は以上のように製造しているので、外
周をほぼ４等分しスロットとの相対位置関係が同一の位
置に４つの同形の切欠部を設ける必要があり、円形積層
鉄心の外径寸法が同一でも、スロット数の異なる円形鉄
心単板では一般にその外周形状を共有することができな
い。円形鉄心単板はプレス機械による打抜によって製造
するが、上記のような従来の製造方法では、スロット数
に応じて複数の外周形状打抜用金型を必要とするため、
経済的負担が大きい。スロット数選定の自由度を制限す
ると、回転電機における最適設計を行う上での足枷とな
り、それにともなう経済的損失は大きい。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明は上記のような
問題点を解消するためになされたもので、円形積層鉄心
の外周面あるいは内周面となる円形部にその周囲を２等
分あるいは３等分する位置にそれぞれ同一形状部分をも
つ切欠部を有する円形鉄心単板を抜板方位を電磁鋼板の
長さ方向と一定の関係に保って所定枚数打抜く第１の工
程と、第１の工程で得た円形鉄心単板を、切欠部の数の
ほぼ等しい枚数の円形鉄心単板群に仕分けし、仕分けし
た円形鉄心単板群を各円形鉄心単板群ごとにそれぞれ異
なる各切欠部を基準にしてスロットを打抜く第２の工程
と、第２の工程によって得た円形鉄心単板を第２の工程
において基準にした各切欠部を１つの基準位置に合わせ
て第２の工程における各円形鉄心単板群ごとに所定の枚
数ずつ順次繰り返して積み上げる第３の工程とで回転電
機の円形積層鉄心を製造するようにした。

【０００６】

【発明の実施の形態】 実施形態１．以下、この発明の第１の実施形態を図を用
いて説明する。図１〜図４は、この発明の第１の実施形
態による円形積層鉄心の製造方法を説明するためのもの
である。図中、先に説明した図６と同一あるいは相当す
る部分には同じ符号を付している。

【０００７】第１の製造手順では、外周を３等分する位
置に同一形状の切欠部３つを有する円形鉄心単板の外周
形状を抜板方位を電磁鋼板の長さ方向と一致するように
して所用数、例えば円形積層鉄心１セット分の円形鉄心
単板を打抜く。図１は第１の製造手順が完了した段階で
の円形鉄心単板１ａを示し、外周を３等分する位置に同
形状の切欠部２ａ、２ｂ、２ｃが設けてある。第２の製
造手順は円形鉄心鉄心１ａの内径にスロット３を加工す
る手順であり、次の手順２ａ〜手順２ｄからなってい
る。 手順２ａ．円形積層鉄心１セット分の円形鉄心単板１ａ
の枚数をほぼ３等分し、３つの円形鉄心単板群に分割す
る。 手順２ｂ．第１の円形鉄心単板群に切欠部２ａを基準に
してスロット３を加工する。（「切欠部２ａを基準にし
てスロット３を加工する」とは、切欠部２ａとスロット
３との相対的な位置関係を等しくすることを意味して
る。円周上のスロット３の数には依存しない。また、ス
ロット３を１つずつあるいは２つ以上組み合わせ、ノッ
チングプレスを用いて複数回の打抜き動作により加工す
るか、スロット３の全数を一挙に打抜いて加工するかと
いう加工手段には関係がない。以下の手順１ｃおよび手
順１ｄについても同様である） 手順２ｃ．第２の円形鉄心単板群に切欠部２ｂを基準に
してスロット３を加工する。 手順２ｄ．第３の円形鉄心単板群に切欠部２ｃを基準に
してスロット３を加工する。 図２は、第２の製造手順が完了した段階での円形鉄心単
板１ｂ〜１ｄを示す。円形鉄心単板１ｂは手順２ｂによ
って完成したもの、円形鉄心単板１ｃは手順２ｃによっ
て完成したもの、円形鉄心単板１ｄは手順２ｄによって
完成したものである。

【０００８】第３の製造手順では、円形鉄心単板１ｂ〜
１ｄを第２の製造手順においてそれぞれの基準にした切
欠部２ａ〜２ｃと外周上の複数個所を円形鉄心積層用治
具（以下、単に積層治具と呼ぶ）のガイド部に沿わせな
がら、１枚ずつあるいは適当な枚数ずつ順次積み上げ
る。第４の製造手順では、円形鉄心単板１ｂ〜１ｄの積
み上げ完了後、積み上げた方向に所定の加圧力を加え
て、外周面に所定数の固定金具を溶接し、円形積層鉄心
として一体化する。

【０００９】図３は、積層治具の１例とこの積層治具を
用いた円形積層鉄心の構成を示す説明図である。図３
（ａ）において、１０は完成した円形積層鉄心であり、
外周にはほぼ等間隔で円形鉄心単板１ｂ〜１ｄの積層高
さと等しい長さの固定金具１１が溶接してあり、円形鉄
心単板１ｂ〜１ｄを一体化している。なお、溝１０ａ〜
１０ｃは切欠部２ａ〜２ｃを円形積層鉄心１０の高さ方
向に整列させて形成したものであり、例えば溝１０ａは
第２の製造手順で基準として用いた切欠部２ａ〜２ｃが
整列したものである。図３（ｂ）において、２０は積層
治具である。円筒形の治具枠２１の内径側に６箇所ガイ
ド部２２ａ〜２２ｆが設けてあり、対向する各ガイド部
の内法は円形積層鉄心の外径寸法と同一寸法になってい
る。ガイド部２２ａにはガイドキー２２ｇが設けてあ
り、その幅は円形鉄心単板１ａの溝２ａ、２ｂ、２ｃと
同一寸法になっている。もちろん、ガイド部２２ａ〜２
２ｆおよびガイドキー２２ｇの高さは、完成した円形積
層鉄心の高さに対して若干の余裕をもっている。円形鉄
心単板１ｂ〜１ｄは第２の製造手順で基準として用いた
切欠部２ａ〜２ｃをガイドキー２２ｇと噛み合わせて積
み上げる。

【００１０】この発明の第１の実施形態では、上記のよ
うに円形積層鉄心を製造するので、外径寸法が同一であ
ってスロット数の異なる円形鉄心単板においても、外周
形状が共用でき、同一の外周形状打抜用金型を使用する
ことができる。そして、必要とする外周形状打抜用金型
の種類を削減することができる。いうまでもないが、打
抜用金型の製造において円弧部分に比べて上記した鉄心
単板の切欠部のように円弧部分に接続する突起部もしく
は凹部等の変形部は、製作費を大きくする原因になる。
さらに、打抜用金型の精度維持のためにも、突起部もし
くは凹部等の変形部の数は可能な限り少なくすることが
望ましい。このことから、円形鉄心単板に３つの切欠部
を設けて製造するこの発明の円形積層鉄心の製造方法に
よって、円形積層鉄心の外周における積層高さのかたよ
りを解消できることの意味は大きい。さらに、円形積層
鉄心の外径寸法が同一でスロット数の異なる多種類の回
転電機を製造する場合、外周形状打抜用金型をプレス機
械に取り付け、また取り外す頻度が減少するので、１種
類の回転電機あたりの製造に必要な時間が低減でき、さ
らには金型保管スペースも削減できるので、波及的な経
済的効果も大きい。

【００１１】なお、円形鉄心単板１ａの切欠部２ａ、２
ｂ、２ｃは同一形状として説明したが、同一形状を必要
とする理由は、スロットを加工するとき、または積層治
具に円形鉄心単板をガイド部に沿わせて積み上げるとき
に位置の基準として作用すればよいものであるから、切
欠部２ａ、２ｂ、２ｃの円周方向の幅が正確に一致して
いればよい。このため、例えば、図４に示すように切欠
部２ａ、２ｂ、２ｃの底辺にそれぞれ異なった識別マー
クを付加した形状にすれば、第２〜第４の製造手順にお
いて対象とする各円形鉄心単板の識別が容易になるこ
と、完成した円形積層鉄心の製造過程における作業ミス
の検出を容易に行えること等の新たな利点が得られる。

【００１２】以上の説明では、円形積層鉄心として静止
部に用いその内径側に巻線を収納するスロットを有する
ものを前提にしたが、軸に嵌合して用い、その外周側に
巻線を収納するスロットを有する円形積層鉄心について
も、同様の製造方法を適用できることはいうまでもな
い。この場合、切欠部は軸に嵌合する中心部の穴の周囲
に設け、積層治具としては円筒状のものを用いて、円周
上の１箇所にガイドキーを設ければよい。もちろん、円
形積層鉄心を固定する回転電機の枠体あるいは回転軸
に、円形鉄心単板を直接組み付けていく場合において
も、この発明を適用することが可能である。さらにいう
までもないが、静止部と回転部の円形積層鉄心を、例え
ば外形形状を円形に打抜いた中間製品から外側と内側に
分離して製造する場合にも、この発明は適用できる。

【００１３】実施形態２．一般に、電磁鋼板圧延設備で
製造した圧延電磁鋼板の幅は、回転電機の円形鉄心の直
径に比べて大きい。このため、１枚の円形鉄心における
厚さの偏差は小さくなる。そして、外周上の特定の位置
で厚さが大きく、その位置から中心に対して１８０゜離
れた位置の厚さが小さくなるくさび状の形状になる傾向
がある。この傾向は回転電機の円形鉄心の直径が小さく
なればより顕著になる。このことは、第１の実施形態で
用いた円形鉄心単板の外周に等間隔で設けた同形状の３
つの切欠部を等間隔で設ける同形状の２つの切欠部とし
ても同等の効果が得られることを示している。図５は、
この発明の第２の実施形態を説明するためのものであ
り、外周の切欠部が２つである以外は図１と同等であ
り、製造手順は既に説明した第１の実施形態の場合と基
本的に同一であるため、説明を省略する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明の第１の実施形態による第１の製造
手順が完了した段階での円形鉄心単板を示す模式図であ
る。

【図２】 この発明の第１の実施形態による第２の製造
手順が完了して完成した円形鉄心単板を示す図である。

【図３】 この発明の第１の実施形態による積層治具の
１例とこの積層治具を用いた円形積層鉄心の構成を示す
説明図である。

【図４】 この発明の第１の実施形態の変形例を示す部
分説明図である。

【図５】 この発明の第２の実施形態による円形鉄心単
板の模式図である。

【図６】 従来の製造方法による円形鉄心単板の模式図
である。

【符号の説明】

１ 円形鉄心単板 ２ 切欠部 ３ スロット １０ 円形積層鉄心 ２０ 積層治具。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電磁鋼板を加工した円形鉄心単板を積み
   上げ所定高さの円形積層鉄心を形成する回転電機の円形
   積層鉄心の製造方法において、 前記円形積層鉄心の外周面あるいは内周面となる円形部
   にその周囲を２等分あるいは３等分する位置にそれぞれ
   同一形状部分をもつ切欠部を有する円形鉄心単板を抜板
   方位を電磁鋼板の長さ方向と一定の関係に保って所定枚
   数打抜く第１の工程、 前記第１の工程で得た前記円形鉄心単板を、前記切欠部
   の数のほぼ等しい枚数の円形鉄心単板群に仕分けし、該
   仕分けした円形鉄心単板群を各円形鉄心単板群ごとにそ
   れぞれ異なる前記各切欠部を基準にしてスロットを打抜
   く第２の工程、 前記第２の工程によって得た円形鉄心単板を前記第２の
   工程において基準にした前記各切欠部を１つの基準位置
   に合わせて前記第２の工程における各円形鉄心単板群ご
   とに所定の枚数ずつ順次繰り返して積み上げる第３の工
   程を有することを特徴とする回転電機の円形積層鉄心の
   製造方法。
2. 【請求項２】 前記切欠部がそれぞれ異なる識別マーク
   を有することを特徴とする請求項１に記載の回転電機の
   円形積層鉄心の製造方法。