JPH091066A - 超音波アクチュエータ用振動子 - Google Patents

超音波アクチュエータ用振動子

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JPH091066A
JPH091066A JP7156488A JP15648895A JPH091066A JP H091066 A JPH091066 A JP H091066A JP 7156488 A JP7156488 A JP 7156488A JP 15648895 A JP15648895 A JP 15648895A JP H091066 A JPH091066 A JP H091066A
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JP
Japan
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vibrator
piezoelectric element
oscillator
elastic body
resonance frequency
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JP7156488A
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English (en)
Inventor
Yasuaki Kawai
泰明 河合
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 振動子の形状等に制約が少なく、シンプルな
系で移動体を移動させることができ、移動体の移動方向
の転換を容易に行うことが可能な超音波アクチュエータ
用振動子を提供する。 【構成】 振動子3は、円板状の圧電素子1と、その上
面の右側部分に付着された半割リング状の弾性体2bと
から構成されている。この振動子3はその重心位置Gが
圧電素子1単独の重心位置G0 に対して、軸方向及び径
方向の両方向においてずれた状態となっている。そのた
め振動子3は2つの共振周波数を有し、圧電素子1に2
つの共振周波数に相当する周波数の電圧を印加すると、
振動子3の表面に変位の楕円軌跡が生じ、その向きは2
つの共振周波数で互いに逆方向となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は圧電素子を利用する超音
波アクチュエータ用振動子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超音波アクチュエータは、他のアクチュ
エータに比較して、小型、軽量、低コストの特長が知ら
れており、その最たるものとして圧電セラミック振動子
を振動体(共振子)として利用するものがある。例え
ば、日本音響学会講演論文集:p168-169 (昭和62年
10月)には、超音波モータを小型、軽量及び薄形状に
構成するため、圧電セラミック振動子の面内振動利用多
重モード振動子による超音波モータが提案されている。
このモータは2種類以上の面内振動モードを利用するた
め、板状の圧電セラミック振動子に多重モードを強制的
に生じさせるようにしている。即ち、図31(a)〜
(d)に示すように、圧電素子51の電極52を分割
し、分割した電極52の隣り合う部位は分極方向を逆に
した状態の振動子53を使用し、周方向、径方向の高次
モードの同形縮退モードを利用する。図32(a)の例
は、この振動子53の変形例で縦−横の長さW、Dの比
がW/D≒0.26の特定条件のみで、縦・屈曲振動が
縮退し、図32(b)の例はW/D≒0.36の特定条
件のみで、縦・屈曲振動が縮退する。
【0003】また、Jpn.J.Appl.Phys.:Vol.3
3(1994)p3071〜3074には、自己振動型超音波リ
ニアアクチュエータ(A Self-Oscillation-Type Ultras
onicLinear Actuator)が報告されている。このアクチ
ュエータは、円柱(角柱)状圧電セラミック振動子の縦
振動と非軸対称振動とを結合させるようにした。そし
て、非軸対称振動を生じさせるために、図33に示すよ
うに、円柱状圧電セラミック54の第1の端面に半月状
の電極55a,55bを2個設けるとともに、第2の端
面に円形の電極55cを1個設けている。また、非軸対
称振動が最も生じ易くするために直径と長さをほぼ等し
い長さにしている。変位の楕円軌跡の方向転換は第1の
端面の電極55a,55bへの接続をスイッチ56で選
択することにより行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】面内振動利用多重モー
ド振動子では、正逆方向の分極群を2つにまとめて2つ
の振動を強制的に生じさせるので、2相駆動源が必要と
なるとともに、配線等が複雑になる。小さな振動子の場
合、分極方向を逆にした電極部を作る際に正逆方向の均
一な分極状態とするのが難しい。図32(a),(b)
に示すような異形断面の場合、振動子の寸法限定があ
る。
【0005】圧電セラミック振動子の支持固定方法につ
いては述べられていないが、原理的な問題として、同形
縮退モードを利用しているため、2つの振動モードが同
じ状態で拘束される支持固定方法を利用する必要があ
る。従って、2つの振動モードのどちらか一方にアンバ
ランス等がある場合には振動子の効率が悪くなるという
問題がある。また、圧電セラミックのみでステータを構
成するため、圧電セラミックの一部を支持固定部として
利用しなければならない。ところが、圧電セラミックの
みでは確実な支持固定方法が現実的には難しいと考えら
れる。
【0006】また、圧電セラミック振動子が移動体との
接触面になるため、信頼性が無い。また、支持固定方法
とも関係するが、確実な支持固定方法が実現できなけれ
ば、移動体との安定な接触面を確保できない。さらに、
この振動子と移動体との接触状態はいずれも線接触に近
い構成であり、接触が不安定となり易い。即ち、振動子
が円板の場合は曲面での線接触がほとんどで、四角形板
の場合は四角形の角部を削って利用するが、角部を削り
過ぎると必要な振動モードが得られないため、線接触に
近い状態となる。振動子が円板の場合、全周にほぼ等し
い部分を移動体と接触させる構成例も開示されている
が、超精密加工を要求されるため実施が難しい。
【0007】さらに、面内振動利用の場合、2種類の振
動で駆動するためにその境界部で変位の楕円軌跡が大き
くなる。従って、移動体を接触させる最適位置は分割し
た電極の境界近傍になる。4分割した場合は4ケ所、8
分割した場合は8ケ所となり、その部位のいずれか1ケ
所以上に移動体を接触させなければならない制約があ
る。
【0008】一方、自己振動型超音波リニアアクチュエ
ータでは、直径と長さの寸法限定があり、薄型形状には
向かない。また、面内振動利用の場合と同様、圧電セラ
ミックのみでステータを構成するので、圧電セラミック
の一部を支持固定部として利用する。円柱状の振動子の
場合は支持固定部は分割した電極の境の左右両端の軸方
向部位に限定される。他の部位に支持固定部を設けた場
合には非軸対称振動を拘束してしまうので好ましくな
い。従って、強固な支持固定ができない。また、支持固
定部位も左右の線状支持固定に限定される。
【0009】また、面内振動利用の場合と同様、圧電セ
ラミック振動子が移動体との接触面になるため、信頼性
が無い。その他、移動体の方向転換を行うには、円柱側
面の上側(forward direction)と下側(backward direc
tion) とを使い分ける必要がある。従って、上側と下側
の接触状態は必ずしも同じでないため、特性に差が生じ
てしまうと考えられる。
【0010】本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされ
たものであって、その第1の目的は、圧電素子を備えた
振動子の形状等に制約が少なく、シンプルな系で移動体
を移動させることができる超音波アクチュエータ用振動
子を提供することにあり、第2の目的は、第1の目的に
加えて移動体の移動方向の転換を容易に行うことが可能
な超音波アクチュエータ用振動子を提供することにあ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記第1の目的を達成す
るため請求項1に記載の発明では、伸縮振動を呈する圧
電素子により構成される超音波アクチュエータ用振動子
において、前記振動子は、圧電素子が伸縮振動すること
により振動子に直線状の往復運動を発生させる状態の重
心を基準として、該重心を移動させた構成とすることに
より、圧電素子の伸縮振動と、振動子に生じる撓みとを
合成させて振動子に曲線閉路の軌跡を形成する運動を発
生させるようにした。
【0012】請求項2に記載の発明では、前記振動子
は、圧電素子が伸縮振動することにより振動子に直線状
の往復運動を発生させる状態の重心を基準として、圧電
素子に弾性体を付着させることにより、該重心を移動さ
せた構成とするようにした。
【0013】また、前記第2の目的を達成するため請求
項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明におい
て、前記振動子は、圧電素子が伸縮振動することにより
振動子に直線状の往復運動を発生させる状態の重心を基
準として、圧電素子に弾性体を付着させることにより、
該重心を直交する2方向に移動させた構成とするように
した。
【0014】請求項4に記載の発明では、請求項2又は
請求項3に記載の発明において、前記圧電素子を板状と
した。圧電素子の伸縮振動は使用する圧電素子の材料で
決まる周波数定数frL(kHz・cm) と、円板状の圧電
素子の場合は直径L(正方形の圧電素子の場合は一辺の
長さとなる)とが分かれば、下記の式から求めことが
できる。
【0015】 L=frL/fr 従ってfr =frL/L… 例えば、PZT(ジルコン酸・チタン酸鉛系の多結晶
体)系の周波数定数frLは約235kHz・cmであり、
円板状の圧電素子の直径を20mm=2cmとすると、
r =235/2=117.5kHz・cmとなる。
【0016】圧電素子は一般に単体で利用することはな
く、周知のようにトランスデューサならびにアクチュエ
ータとして利用する場合には、弾性体及び樹脂等を付着
結合して利用する。その際、完成されたトランスデュー
サならびにアクチュエータの伸縮振動の値は、圧電素子
単体に比べてずれたものとなる。
【0017】本願発明者は、この圧電素子に弾性体等を
付着させた時の共振周波数等の変化を調査研究してい
た。そして、圧電素子に対して、径方向ならびに軸方向
にアンバランスマス(弾性体)を与えて、重心を移動さ
せた際に、顕著に伸縮振動の共振周波数が増減分離する
知見を得た。
【0018】その際の共振周波数は、伸縮振動がアンバ
ランスマスの影響を受け、変位となる楕円軌跡等の曲線
閉路の軌跡に変わっている事も確認された。種々のアン
バランスマスを圧電素子に与えて調査した結果、変位と
なる曲線閉路の軌跡の方向転換と基準とする共振周波数
の関係があることが分かった。本発明はこの実験事実に
基づく現象を利用することによりなされたものである。
【0019】本発明の超音波アクチュエータ用振動子
は、圧電素子の伸縮振動により振動子に直線状の往復運
動を発生させる状態を基準として、重心を移動させた構
成とする。
【0020】基準である、圧電素子の伸縮振動により振
動子に直線状の往復運動を発生させる状態とは、振動子
全体が重量バランスが整っている状態である。例えば、
円柱状の振動子の場合、径方向及び厚さ方向のいずれに
も重量バランスが整っている状態である。また、角柱状
の振動子の場合、厚さ方向及び厚さ方向に垂直な方向の
いずれにも重量バランスが整った状態である。
【0021】このような基準の状態で、圧電素子が伸縮
振動しても振動子の側面は、直線状の往復運動を呈し、
該側面に接触する移動体を移動させることはできない。
本発明の振動子では、上記基準の振動子の重心を移動さ
せたものである。重心の移動方向は、どのような方向で
もよいが、圧電素子の伸縮振動と、振動子に生じる撓み
とを合成させて振動子に曲線閉路の軌跡を形成する運動
を発生させることができる状態とする。この曲線閉路の
軌跡を形成する運動(変位)により、振動子の側面に接
触する移動体を移動させることができる。
【0022】また、請求項2及び請求項3に記載の発明
のように、圧電素子に弾性体を付着させることにより、
基準より重心を移動させた構成とする方が望ましい。こ
れは、弾性体を付着させる方が、振動子の重心の移動が
容易であるためである。
【0023】また、請求項4のように、請求項2又は請
求項3に記載の発明において、弾性体を付着させる圧電
素子は板状とするのがよい。これは、弾性体を付着させ
た際の振動子の重心の移動方向や移動量を制御し易いた
めである。
【0024】本発明の振動子では、振動体の移動体との
接触部が曲線閉路の軌跡を形成する運動を生じることに
より、移動体を移動させる。この振動子の先端部が呈す
る曲線閉路の軌跡とは、移動体を一方向に移動させるこ
とができる曲線Cであり、例えば、真円(図1等に記載
のもの)、楕円(図34の(a))、歪んだ楕円(図3
4の(b))、8の字型の曲線(図34の(c))等で
ある。すなわち、図35のように曲線でも内部の空間の
ない曲線等の曲線閉路の軌跡では、移動体を移動させる
ことができず、内部に空間を有する曲線閉路の軌跡であ
れば、移動体を移動させることができる。
【0025】本発明の超音波アクチュエータ用振動子は
基準状態における圧電素子の伸縮(長さ方向伸び)振動
の共振周波数を知る事が重要なポイントとなる。従っ
て、用いる圧電素子の共振周波数が容易に推定できるも
のが好ましい。好適な圧電素子の平面形状として、円
(リングも含む)、長方形(但し、長辺の寸法が短辺の
寸法の4〜5倍程度以下)、正三角形、正四角形、正六
角形、正八角形等である。
【0026】圧電素子の厚みが厚い場合には、高電圧を
加える必要があるので、板状のものが望ましい。尚、板
状の場合の方が径方向の撓みを生じ易いメリットもあ
る。また、振動子として薄型の特長を生かす意味で圧電
素子は板状のものが望ましい。ここで板状とは、円板状
圧電素子の場合、直径をLとして厚みをTとすると、T
≒L/2以下程度のものを示している。
【0027】振動子(圧電素子+弾性体)の軸方向に対
して基準から重心を移動させて、重量バランスが崩れる
ような形態としては、径方向中心軸を境として上下の重
量の与え方に違いを生じさせればよい。効果的な部位は
径方向中心軸からの距離が大きな位置である。円板状圧
電素子の軸方向にのみアンバランスを与える場合は、例
えば、図1(a),(b)に示すように、圧電素子1の
上面にリング状の弾性体2aを付着させて振動子3を構
成する。この場合、振動子3の重心位置Gは円板状圧電
素子1単体の重心位置G0 に比べて上方にずれる。
【0028】円板状圧電素子の径方向にのみアンバラン
スを与える場合は、軸方向中心軸を境として左右の重量
の与え方に違いを生じさせればよい。効果的な部位は軸
方向中心軸からの距離が大きな位置である(質量が一定
ならば曲げモーメントは中心軸からの距離に比例して大
になる)。例えば、図2(a),(b)に示すように、
圧電素子1の上下両面の右側部分に半割リング状の弾性
体2bをそれぞれ付着する。この場合、振動子3の重心
位置Gは円板状圧電素子単体の場合に比べ、右側にずれ
る。また、圧電素子1の一部を削除してもよい。
【0029】円板状圧電素子の軸方向及び径方向の直交
する2方向に基準から重心を移動させてアンバランスを
与える場合は、径方向中心軸を境として上下の重量の与
え方に違いを生じさせるとともに、軸方向中心軸を境と
して左右の重量の与え方に違いを生じさせればよい。例
えば、図3(a),(b)に示すように、圧電素子1の
上面の右側部分に半割リング状の弾性体2bを付着した
り、図4(a),(b)に示すように、圧電素子1の上
面外周寄りに弾性体2を付着する。側面の変位となる曲
線閉路の軌跡を広い範囲で得たい場合は、図3(a),
(b)に示すように、半割リング状の弾性体2bが望ま
しい。
【0030】また、図5に示すように、弾性体2の一部
が圧電素子1の外周よりもはみ出てもよい。さらに、図
6(a),(b)に示すように、圧電素子1の右側の一
部を削除して上面の左端に弾性体2を付着したり、図7
(a),(b)に示すように、圧電素子1の一部を削除
するとともに、削除した箇所(右端)に一部が圧電素子
1の上面から突出するように角柱状の弾性体2cを付着
してもよい。また、図8(a),(b)に示すように、
円板状の圧電素子1の径方向中心軸を境として上側でか
つ軸方向中心軸より右側となる部分を削除するととも
に、削除した形状と対応する半円状の弾性体2dを付着
してもよい。
【0031】尚、弾性体の重量は、使用する圧電素子の
重量とほぼ同等かそれ以下が望ましい。弾性体の重量が
圧電素子の重量より大きい場合は、圧電素子の伸縮振動
を拘束する虞がある。
【0032】圧電素子としては、例えば、チタン酸バリ
ウムやPZT(ジルコン酸・チタン酸鉛系の多結晶体)
等の圧電セラミックス、ポリフッ化ビニリデン系やビニ
リデンシアナイド系重合体等の高分子圧電材料、圧電性
のセラミック微粒子を高分子中に分散させた高分子複合
物圧電材料が使用される。弾性体の材質としては、例え
ば、鋼、アルミニウム、ステンレス等の金属やセラミッ
クスが使用される。
【0033】
【作用】請求項1に記載の発明によれば、圧電素子に伸
縮振動の共振周波数の振動を加えたとき、圧電素子が伸
縮振動することに伴い、基準状態から重心が移動してい
るため振動子が撓む。この圧電素子による伸縮振動と振
動子の撓みとが合成されて振動子に曲線閉路の軌跡を形
成する運動が生じる。
【0034】請求項2に記載の発明によれば、圧電素子
に付着した弾性体に基づく振動子の互いに直交する2方
向のうちのどの方向に基準からの重心の移動により重量
バランスがくずれるかにより、振動子の共振周波数が基
準の圧電素子の基準周波数に対して所定の方向にずれ
る。そして、振動子の側面に曲線閉路の軌跡を形成する
運動が生じ、この運動方向は重量バランスがくずれた方
向により特定される。
【0035】軸方向にのみ基準から重心が移動して重量
バランスがくずれた場合、例えば、図1(a),(b)
に示すように、圧電素子1の上面にリング状の弾性体2
aを付着した振動子3の共振周波数Bを測定すると、図
9に示すように120kHzとなり、円板状の圧電素子の
伸縮振動の共振周波数fr (117.5kHz)に比べ
て、共振周波数が数kHz上昇しているのが観察される。
また、弾性体2a及び圧電素子1の側面にベアリング等
の回転体(図示せず)を接触させて振動姿態を観察する
と、変位となる運動軌跡は図1(b)に示すように、反
時計方向に回転していることが確認された。
【0036】また、径方向にのみ基準から重心が移動し
て重量バランスがくずれた場合、例えば、図2(a),
(b)に示すように、圧電素子1の上下両面の右側部分
に半割リング状の弾性体2bを付着した振動子3の共振
周波数Aを測定すると、図10に示すように115kHz
となり、円板状の圧電素子の場合の共振周波数fr に比
べて共振周波数が数kHz低下しているのが観察される。
また、弾性体2b及び圧電素子1の側面には、図2
(b)に示すように、時計方向回りの変位となる運動軌
跡が確認された。
【0037】また、軸方向及び径方向に基準から重心が
移動して重量バランスがくずれた場合は、請求項3に記
載の発明と同様な作用をなす。例えば、図3(a),
(b)に示すように、圧電素子1の上面の右側部分に半
割リング状の弾性体2bを付着した振動子3の共振周波
数を測定すると、図11に示すように、円板状圧電素子
の伸縮振動の共振周波数fr を基準として数kHz低い共
振周波数Aと、数kHz高い共振周波数Bとを持つ事が確
かめられた。この2つの共振周波数A,Bは、上述の軸
方向及び径方向アンバランスが原因で生ずるものとほぼ
一致をした。
【0038】振動子3を前記2つの共振周波数A,Bで
それぞれ駆動させた場合に、半割リング状の弾性体2b
及び圧電素子1の側面に生じる変位となる運動軌跡の方
向が転換できる事も確認された。すなわち、共振周波数
Aで振動子3を駆動させた場合は、振動子3の側面には
時計方向回りの変位となる運動軌跡が生じ、共振周波数
Bで振動子3を駆動させた場合は、振動子3の側面には
反時計方向回りの変位となる運動軌跡が生じる。
【0039】また、図4〜図8に示す各振動子3の場合
も、円板状圧電素子の伸縮振動の共振周波数を基準とし
て数kHz低い共振周波数Aと、数kHz高い共振周波数B
とを持つ事が確かめられた。そして、共振周波数Aで振
動子3を駆動させた場合は、振動子3の側面に径方向ア
ンバランスが原因となる時計方向回りの変位となる運動
軌跡が生じ、共振周波数Bで振動子3を駆動させた場合
は、振動子3の側面に軸方向アンバランスが原因となる
反時計方向回りの変位となる運動軌跡が生じる。
【0040】すなわち、本発明の振動子の形状と共振周
波数の関係は次のようになる。振動子を構成する基準と
なる圧電素子の共振周波数fr と、圧電素子に径方向の
アンバランスマスを付加した時の共振周波数Aと、圧電
素子に軸方向のアンバランスマスを付加した時の共振周
波数Bとは次式の関係がある。
【0041】A<fr <B… A=fr −数kHz… B=fr +数kHz… 付加させる弾性体の質量及び位置等により基準共振周波
数fr に対して数kHzの変化を生じる。特に付加させる
弾性体の位置に関しては、これまで示したように径方向
及び軸方向アンバランスの影響度に顕著な違いがある。
径方向アンバランスが主な場合は基準共振周波数fr
対してマイナス側に、軸方向アンバランスが主な場合は
基準共振周波数fr に対してプラス側になる傾向を示
す。両者の要素を含む場合はその両方が現れる。
【0042】圧電素子に弾性体を付着することにより径
方向及び軸方向に対して重量バランスがくずれるように
したことによる作用は必ずしも明確ではないが、重量バ
ランスがくずれることにより、振動子の重心位置がズレ
るため圧電素子の伸縮振動により振動子全体に軸方向及
び径方向の撓みが励起されるためと考えられる。
【0043】特に軸方向アンバランスが寄与している場
合は、図12(a)に示すように、径方向の伸縮振動
(主)と、軸方向の撓み振動(従)の2成分が合成され
る。そして、振動子の側面で径方向伸縮振動をしている
際に、径方向に伸びて変位が元に戻る瞬間に軸方向に伸
び、次に径方向に縮み、次に軸方向に縮むことにより、
図12(b)に示す反時計方向回りの運動軌跡Q1 を示
す。
【0044】また、径方向アンバランスが寄与する場合
は、図13(a)に示すように、軸方向の伸縮振動
(主)と、径方向の撓み振動(従)の2成分の振動が合
成される。そして、振動子の側面で径方向伸縮振動をし
ている際に、径方向に伸びて変位が元に戻る瞬間に軸方
向に縮み、次に径方向に縮み、次に軸方向に伸びること
により、図13(b)に示す時計方向回りの運動軌跡Q
2 を示す。
【0045】弾性体の軸方向アンバランスマス及び径方
向アンバランスマスは振動子の軸及び径方向の撓みの位
相を変える作用があると考えられる。具体的に言えば、
軸方向及び径方向のアンバランスマス4を付着した圧電
素子の部位により、運動軌跡の回転方向が決定される。
図12(a)で軸方向アンバランスマスが反時計方向回
りの運動軌跡を示すのは、圧電素子の上部にマスを付加
しているためである。同様に図13(a)で径方向アン
バランスマスが時計方向回りの運動軌跡を示すのは、圧
電素子の右側にマスを付加しているためである。
【0046】本発明の振動子は変位となる運動軌跡が側
面に生じるものとして記載したが、図14に示すよう
に、弾性体2の側面と位置的に90°ずれた状態にある
上面に逆方向の運動軌跡が生じる。従って、振動子の側
面又は上面を利用して移動体を移動させるアクチュエー
タとして使用することもできる。
【0047】本発明の超音波アクチュエータ用振動子
は、単純な構成で低コスト、軽量薄型で寸法に制約が無
く、簡単に設計できるため、ミリサイズアクチュエータ
等に好適である。
【0048】
【実施例】
(第1実施例)以下、本発明を具体化した第1実施例を
図15〜図17に基づいて説明する。図15に示すよう
に、円板状の圧電素子1の第1の面(上面)にリング状
の弾性体2aを圧電素子1の右側にずらして接着して振
動子3を構成した。圧電素子1は材質をPZT(ジルコ
ン酸・チタン酸鉛系の多結晶体)として、直径20m
m、厚み4mmとした。弾性体2aはリング状で材質を
鋼として外径20mm、内径10mm、厚み2mmとし
た。圧電素子1を配線5を介して高周波電源としての発
振器6と接続した。尚、必要に応じてアンプを設けても
よい。圧電素子1の分極方向は矢印Pで示す。
【0049】この振動子3を、圧電素子1の中心部付近
の上下両面をプラスチック製のバイスで挟持して固定支
持した。そして、その状態で振動子3の共振周波数を測
定した。その結果、図16に示すように、周波数116
kHz及び120kHzで共振現象が観測された。そして、
周波数116kHz及び120kHzで振動子3を駆動する
とともに、その側面にベアリングを押し当ててベアリン
グの回転方向を観察した。その結果、周波数A(116
kHz)の場合は、ベアリングは反時計方向回りに回転す
ること(即ち、変位となる運動軌跡は時計方向回り)が
観察され、周波数B(120kHz)の場合は、ベアリン
グは時計方向回りに回転すること(即ち、変位となる運
動軌跡は反時計方向回り)が観察された。また、ベアリ
ングを弾性体2aの上面に押し当てた場合は、その回転
方向が側面に押し当てた場合と逆方向となった。
【0050】また、レーザドップラ振動速度計で振動速
度と周波数の関係を測定した。その結果、周波数Aと周
波数Bとで振動速度の位相が180°変わっていること
が確認された。同様に、振動子3の上面と側面では位相
が180°ずれて振動していることも確認された。
【0051】比較のため、図17(a)に示すような円
板状の圧電素子1について、同じ大きさのものを使用し
て共振周波数を測定したところ、118kHzが共振周波
数となった。また、共振周波数における振動を観察した
結果、図17(b)に示すように径方向及び軸方向の伸
縮振動は生じるが、圧電素子1の側面及び上面のいずれ
においても曲線閉路の軌跡は観察されなかった。
【0052】また、弾性体2aを径方向にずらさない
で、圧電素子1の上面に付着(接着)した場合は、周波
数B(120kHz)のみの共振周波数が確認された。そ
して、弾性体2aの付着位置の径方向のずれ量をそれぞ
れ変えた振動子について共振周波数数を測定したとこ
ろ、径方向へのずれ量が多くなるに従って径方向アンバ
ランスに起因する共振周波数A(116kHz)が明瞭に
現れた。
【0053】即ち、基準となる圧電素子1に対して径方
向及び軸方向の両方にアンバランスが生じる図15に示
す振動子3は、基準となる圧電素子1の共振周波数fr
を挟んで、低い側Aと高い側Bとの両方にそれぞれ共振
周波数が存在することが確認された。また、低い共振周
波数Aで駆動されると径方向のアンバランスに基づく運
動軌跡(振動子3の側面において時計方向回り)が生
じ、高い共振周波数Bで駆動されると軸方向のアンバラ
ンスに基づく運動軌跡(振動子3の側面において反時計
方向回り)が生じることが確認された。
【0054】尚、振動子3の中心部の上下面は強固に支
持しても目的とする周波数及び曲線閉路の軌跡が得られ
ることが確認された。 (第2実施例)次に第2実施例を図18に従って説明す
る。この実施例では振動子3を構成する弾性体の形状
と、圧電素子への弾性体の付着位置が前記実施例と異な
っている。尚、前記実施例と同じものは同一符号を付し
てその詳細な説明を省略する。
【0055】第1実施例の弾性体2aを半分に切断して
形成した半割リング状の弾性体2bを、第1実施例と同
じ圧電素子1の上面の右側に、その外周面がずれない状
態で付着して振動子3を構成した。この振動子3を使用
して第1実施例と同様にして、プラスチック製のバイス
で挟持して固定支持した状態で共振周波数の測定を行っ
た。第1実施例とほぼ同じ2つの共振周波数が確認され
た。また、共振周波数で振動子3を駆動した状態でベア
リングを振動子3に押し当てる実験と、レーザドップラ
振動速度計による振動速度と周波数との関係の測定を行
った。
【0056】その結果、変位の楕円軌跡の方向も前記実
施例と同じとなり、駆動周波数をA、Bと変えることに
より振動速度の位相が180°変わることが確認され
た。また、振動子3の上面と側面では位相が180°ず
れて振動していることも確認された。
【0057】即ち、この実施例では第1実施例の弾性体
2aの半分の大きさの弾性体2bを使用し、その付着位
置を圧電素子1の上面に対してずらさなくても、第1実
施例の振動子3と同様な作用、効果を発揮する。
【0058】尚、第1及び第2実施例においては振動子
3の支持固定方法として、圧電素子1の上下両面をプラ
スチック製のバイスで挟持する方法を示したが、バイス
で挟持する代わりに上面及び下面の少なくとも一方を、
支持部に対して接着剤等で付着してもよい。また、上面
及び側面少なくとも一方の運動軌跡を利用する振動子3
の場合は、例えば図19(a),(b)に示すように、
運動軌跡を利用する部位に対して±90°ずれた圧電素
子1の側面の部位を支持固定部として利用できる。即
ち、図19(a)に矢印で示した部位をバイスで挟持し
たり、支持部に対して接着剤等で付着してもよい。
【0059】さらに、図20に示すように、振動子3を
構成する圧電素子1に孔7をあけ、固定部8に形成され
たねじ穴に先端が螺入されるボルト9及びワッシャ10
を介して支持固定する方法を採用してもよい。
【0060】(第3実施例)次に第3実施例を説明す
る。この実施例では駆動力アップと圧電素子1への印加
電圧の低電圧化を目的として、複数の圧電素子を積層し
て構成した圧電素子1を使用した点が前記両実施例と大
きく異なっている。図21(a),(b)に示すよう
に、振動子3は直径20mm、厚み4mmの円板状の圧
電素子1の上面左側に、同じ圧電素子1を半分に割った
半円状の圧電素子1aを分極方向(矢印Pで図示)が互
いに対向するように付着し、上面右側に半月状の弾性体
2eを付着した構成となっている。弾性体2eは直径2
0mm、厚み4mmの鋼製の円板をその中心からの距離
が5mmの位置で切断した形状となっている。
【0061】この振動子3を図21(a)に示すよう
に、発振器6に電気的に接続し、プラスチック製のバイ
スで圧電素子1の両側面(図21(b)に矢印で示した
部位)を挟持して固定支持した状態で共振周波数の測定
を行った。その結果、図22に示すように周波数の値は
若干異なるが、第1及び第2実施例と同様に2つの共振
周波数A,Bが確認された。低い側の周波数Aは111
kHzで、高い側の周波数Bは125kHzであった。ま
た、周波数A及び周波数Bで振動子3を駆動した状態で
変位となる運動軌跡の有無及びその方向を観察した。そ
の結果、A,B両周波数で駆動したいずれの場合におい
ても、振動子3の側面及び上面で曲線閉路の軌跡が存在
し、駆動周波数をA、Bと変えることによりその回転方
向が転換される事と、上面と側面とで変位となる運動軌
跡の方向が逆になる事が確認された。
【0062】比較のため、直径20mm、厚み4mmの
円板状の2枚の圧電素子1を分極方向が互いに対向する
ように電極16を介して付着して形成した振動子3を、
図23に示すように、前記と同様にして発振器6に接続
して共振周波数の測定及び運動軌跡の有無を観察した。
その結果、第1実施例で比較のために行った円板状の圧
電素子1の場合とほぼ同じ結果が得られた。即ち、ほぼ
117kHzが共振周波数となったが、振動子3は軸方向
及び径方向に伸縮振動するだけで、圧電素子1の側面及
び上面のいずれにおいても曲線閉路の軌跡は観察されな
かった。
【0063】即ち、同じ圧電素子1を2枚積層した構成
では曲線閉路の軌跡は生じないが、積層した圧電素子1
を基にして径方向及び軸方向のアンバランスが生じるよ
うに弾性体2eを付着した振動子3は、第1及び第2実
施例と同様に、2つの共振周波数A,Bが存在する。そ
して、その共振周波数A,Bと基準の圧電素子1の共振
周波数fr とは、A<fr <Bの関係が存在する。
【0064】(比較例1)日本音響学会講演論文集:p
168-169 (昭和62年10月)で提案された圧電セラミ
ック振動子の面内振動利用多重モード振動子による超音
波モータ(超音波アクチュエータ)の場合、振動子とし
て図24(a),(b)に示すように円板状の振動子5
3の中心に孔53aを開けたものや、正方形板の振動子
53の中心に孔53aを開けたものを利用する。振動子
53は圧電セラミック(圧電素子)の電極52を複数に
分割するとともに、分割した電極52の隣り合う部位は
分極方向を逆にした状態とする。そして、振動子53を
ステータとし、ロータ57を振動子53の外周面又は内
周面に接触させて使用する。また、正逆方向の分極群を
2つにまとめて2つの振動を強制的に生じさせるため、
各電極52を2相駆動源に配線(いずれも図示せず)を
介して接続する。
【0065】この超音波アクチュエータと前記各実施例
とを比較すると、本発明の場合は次の優位性がある。 特別に多数の正方向及び逆方向に分極した圧電素子を
用いる必要がなく、また、形状的な制約が少なくて振動
子自身の構成が簡単となる。一方、比較例では小さな振
動子の場合、分極方向を逆にした電極部を作る際に正逆
方向の均一な分極状態とするのが難しい。また、各電極
と駆動源との配線が複雑となる。さらに、図32
(a),(b)に示すような異形断面の場合、振動子の
寸法に制約がある。
【0066】圧電素子の伸縮振動と弾性体のアンバラ
ンスマスに起因する撓み振動との合成で変位の楕円軌跡
を得るので、振動子の中心軸近傍あるいは圧電素子の移
動体との接触面から離れた位置における側面を利用する
ことにより、振動子の効率を悪くせずに振動子を強固に
支持固定できる。一方、比較例では2つの振動モードが
同じ状態で拘束される支持固定方法を必要とし、2つの
振動モードのどちらか一方にアンバランス等がある場合
には振動子の効率が悪くなる。また、圧電セラミックの
みでステータを構成するため、圧電セラミックの一部を
支持固定部として利用しなければならない。ところが、
圧電セラミックのみでは振動のノード(節)部がないか
ぎり、確実な支持固定方法が現実的には難しい。
【0067】移動体との接触面に金属等の弾性体を用
いて任意形状のものが利用できるため、確実な面接触を
実現できる。一方、比較例では圧電セラミック振動子が
移動体との接触面になるため、信頼性が無い。また、支
持固定方法とも関係するが、確実な支持固定方法が実現
できないため、移動体との安定な接触面を確保できな
い。さらに、振動子と移動体との接触状態はいずれも線
接触に近い構成であり、接触が不安定となり易い。即
ち、振動子が円板の場合は曲面での線接触がほとんど
で、四角形板の場合は四角形の角部を削って利用する
が、角部を削り過ぎると必要な振動モードが得られない
ため、線接触に近い状態となる。
【0068】振動子の中心部近傍以外に変位の楕円軌
跡を生じさせることができるので、振動子としての設計
バリエーションが豊富である。特に小型化に有利であ
る。一方、比較例では移動体を接触させる最適位置は分
割した電極の境界近傍になり、移動体を接触させる位置
に制約があり、設計の自由度が小さい。
【0069】(比較例2)Jpn.J.Appl.Phys.:V
ol.33(1994)p3071〜3074に開示された図33
に示す円柱状の圧電セラミック54を使用した自己振動
型超音波リニアアクチュエータと、前記各実施例とを比
較すると、本発明の場合は次の優位性がある。
【0070】形状的な制約が少なくて振動子自身の構
成が簡単となり、薄型形状に適する。一方、比較例では
直径と長さの寸法限定(ほぼ1:1)があり、薄型形状
に向かない。
【0071】圧電素子の伸縮振動と弾性体のアンバラ
ンスマスに起因する撓み振動との合成で変位の楕円軌跡
を得るので、振動子の中心軸近傍あるいは圧電素子の移
動体との接触面から離れた位置における側面を利用する
ことにより、振動子の効率を悪くせずに振動子を強固に
支持固定できる。一方、比較例では圧電セラミックのみ
でステータを構成するので、圧電セラミックの一部を支
持固定部として利用する。円柱状の振動子の場合は支持
固定部は分割した電極の境の左右両端の軸方向部位に限
定される。他の部位に支持固定部を設けた場合には非軸
対称振動を拘束してしまうので好ましくない。従って、
強固な支持固定ができない。また、支持固定部位も左右
の線状支持固定に限定される。
【0072】移動体との接触面に金属等の弾性体を用
いて任意形状のものが利用できるため、確実な面接触を
実現できる。一方、比較例では比較例1と同様、圧電セ
ラミック振動子が移動体との接触面になるため、信頼性
が無い。また、支持固定方法とも関係するが、確実な支
持固定方法が実現できないため、移動体との安定な接触
面を確保できない。さらに、角柱状振動子の場合は面接
触が確保できるが、円柱状振動子の場合は線接触になり
易い。
【0073】振動子の中心部近傍以外に変位の楕円軌
跡を生じさせることができるので、振動子としての設計
バリエーションが豊富である。また、移動体の方向転換
を振動子の駆動共振周波数を変更することにより容易に
行うことができる。一方、比較例では移動体の方向転換
を行うには、円柱側面の上側(forward direction)と下
側(backward direction) とを使い分ける必要がある。
従って、上側と下側の接触状態は必ずしも同じでないた
め、特性に差が生じてしまうと考えられる。
【0074】なお、本発明は前記各実施例に限定される
ものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。 (1) 圧電素子と弾性体により構成される振動子3の
形状は、第1〜第3実施例で例示したものに限らず、様
々な形状を採用できる。圧電素子1の形状も円板状に限
らず、様々な形状を採用できるが、共振周波数が容易に
推定できるものが好ましい。例えば、平面形状が図25
(a)に示すリング状、図25(b)に示す長方形、図
25(c)に示す正三角形、図25(d)に示す正四角
形、図25(e)に示す正六角形、図25(f)に示す
正八角形等のものがある。
【0075】また、圧電素子1に付着する弾性体は、曲
線閉路の軌跡を生じさせる原因としてその形状に意味が
あるのではなく、付着位置及び重量が所定の条件を満足
していれば任意の形状のものを使用できる。例えば、図
1に示すように、圧電素子1の軸方向にのみアンバラン
スが生じる状態、あるいは図2に示すように、圧電素子
1の径方向にのみアンバランスが生じる状態に弾性体2
a,2bを付着してもよい。軸方向及び径方向のいずれ
か一方のみにアンバランスが生じる状態に弾性体を付着
した場合は、共振周波数は1つで曲線閉路の軌跡の向き
を転換させることはできない。従って、この振動子は移
動体の移動方向を転換させる必要が無いアクチュエータ
に適している。圧電素子1の軸方向及び径方向の両方に
アンバランスが生じる状態に弾性体を付着する場合、弾
性体の形状及び付着位置は一方向のみにアンバランスが
生じる場合に比較して自由度が大幅に増す。例えば、圧
電素子1が円板状の場合、図4に示すようにほぼ四角柱
状の弾性体2を圧電素子1の片面に圧電素子1からはみ
出さない状態に付着したり、図5に示すように一部がは
み出す状態に付着する。図6に示すように、圧電素子1
の側面の一部を削除するとともに、削除した側と反対側
の上面に弾性体2を付着したり、図7に示すように、圧
電素子1の側面の一部を削除するとともに、削除した箇
所に削除した体積より大きな四角柱状の弾性体2cを一
部が圧電素子1の上面から突出するように付着してもよ
い。また、図8に示すように圧電素子1の上側の一部を
削除して、削除した部分と同じ形状の弾性体2dを付着
してもよい。
【0076】また、図26(a),(b)に示すように
リング状の圧電素子1の片面に弾性体2b,2を付着し
たり、図26(c),(d)に示すように正方形板状の
圧電素子1の片面に弾性体2を付着して振動子3として
もよい。また、図25に示す他の形状の圧電素子1に対
して、図26(c),(d)の振動子3とほぼ同様な位
置に弾性体2を付着して振動子3を構成してもよい。こ
のとき、振動子3が基準となる圧電素子1の共振周波数
より低い共振周波数と高い共振周波数の2つの共振周波
数を有するためには、振動子3の重心が基準となる圧電
素子1単独の場合の重心に対して軸方向及び径方向(軸
方向と直交する方向)へのずれがある程度以上存在する
ことが必要となる。
【0077】(2)前記各実施例では振動子3をアクチ
ュエータとして利用する際、移動体の方向転換等は駆動
周波数の変更により行うこととして説明したが、駆動周
波数を一定にして、振動子3の上面と側面とを選択する
使用方法としてもよい。また、曲線閉路の軌跡が生じて
いる部位は、弾性体等を付着した部位即ちアンバランス
マスとして利用した部位以外にも生じているので、その
部位以外の部位を適宜利用してもよい。例えば、図27
(a),(b)に示すように、アンバランスマスとして
主に利用する弾性体2bを圧電素子1の右側に付着し、
圧電素子1の左側上面に別の弾性体2を付着して、弾性
体2の表面に生じる曲線閉路の軌跡を利用してもよい。
【0078】(3) 前記振動子3をアクチュエータと
して使用する場合、例えば図28に示すように、複数の
振動子3を各振動子3の弾性体2が付着された側が同一
平面上に位置するように配列して、移動体11を移動さ
せる構成とする。各振動子3が小型のため、移動体11
の移動距離を大きくする場合にはこの構成が適する。各
振動子3の支持固定は、各振動子3の両側面を一対の共
通の支持バー12で図における紙面と直交方向から挟持
する。このアクチュエータ13の場合は、各振動子3の
駆動周波数を変更することにより、移動体11と接触す
る部位の変位の移動軌跡の方向を簡単に変更でき、移動
体の移動方向を簡単に転換できる。また、振動子3を構
成する圧電素子1としては円板状のものより、移動体1
1との接触面が平面となる正多角形板状又は長方形板状
のものが、移動体11との接触面が広くなるため好まし
い。
【0079】(4) 図29に示すように、複数の振動
子3を互いに平行に延びる状態で連結バー14を介して
連結するとともに、各振動子3の側面が走行面15と当
接する状態で走行面15上に載置して、自走式のアクチ
ュエータ13を構成してもよい。この場合、図示しない
発振器から共振周波数で印加電圧を供給すると、アクチ
ュエータ13は図の右側あるいは左側へ移動し、その移
動方向は駆動周波数を振動子3の2つの共振周波数のい
ずれと対応したものにするかにより決定される。そし
て、駆動周波数を変更することによりアクチュエータ1
3の移動方向が変更される。
【0080】(5) 前記自走式のアクチュエータ13
を使用する場合、図30に示すように、各振動子3の両
側と当接するように一対の走行面15a,15bを互い
に対向して平行に延びるように構成してもよい。振動子
3の両側に生じる変位の楕円軌跡はその回転方向が逆の
ため、振動子3を走行面15a,15bに対して相対移
動させる方向は同じとなり、2倍の推力が得られる。
【0081】前記各実施例及び変更例から把握できる請
求項記載以外の発明について、以下にその効果と共に記
載する。 (1)請求項3に記載の振動子と、その振動子を構成す
る圧電素子に共振駆動電圧を印加するとともに印加電圧
の周波数を変更可能な電源部を備えた超音波アクチュエ
ータ。この場合、印加電圧の周波数を変更することによ
り、移動体の移動方向を転換できる。
【0082】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項
4に記載の発明によれば、圧電素子を備えた振動子の形
状等に制約が少なく、シンプルな系で移動体を移動させ
ることができる超音波アクチュエータ用振動子を得るこ
とができる。
【0083】請求項2に記載の発明によれば、弾性体の
形状を移動体と確実な面接触を実現する形状とすること
により、信頼性の高い超音波アクチュエータ用振動子を
得ることができる。
【0084】請求項3に記載の発明によれば、印加電圧
の周波数を変更することにより、移動体の移動方向の転
換を容易に行うことが可能な超音波アクチュエータ用振
動子を得ることができる。
【0085】請求項4に記載の発明によれば、印加電圧
を低くできるとともに、径方向の撓みを生じ易くなり、
また、薄型の振動子を形成し易い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は振動子の斜視図、(b)は模式断面
図。
【図2】(a)は別の振動子の斜視図、(b)は模式断
面図。
【図3】(a)は別の振動子の平面図、(b)は模式断
面図。
【図4】(a)は別の振動子の平面図、(b)は模式断
面図。
【図5】別の振動子の模式断面図。
【図6】(a)は別の振動子の平面図、(b)は模式断
面図。
【図7】(a)は別の振動子の平面図、(b)は模式断
面図。
【図8】(a)は別の振動子の平面図、(b)は模式断
面図。
【図9】図1の振動子の共振周波数を示す線図。
【図10】図2の振動子の共振周波数を示す線図。
【図11】図3の振動子の共振周波数を示す線図。
【図12】(a)は軸方向アンバランス状態の模式図、
(b)は変位となる曲線閉路の軌跡の模式図。
【図13】(a)は軸方向アンバランス状態の模式図、
(b)は変位となる曲線閉路の軌跡の模式図。
【図14】振動子の模式断面図。
【図15】第1実施例の振動子の駆動構成を示す概略
図。
【図16】同じく振動子の共振周波数を示す線図。
【図17】(a)は圧電素子の斜視図、(b)は伸縮振
動を示す模式図。
【図18】第2実施例の振動子の駆動構成を示す概略
図。
【図19】(a)は振動子の支持固定位置を示す平面
図、(b)は振動子の側面図。
【図20】振動子の別の固定方法を示す断面図。
【図21】(a)は第3実施例の振動子の駆動構成を示
す概略図、(b)は振動子の平面図。
【図22】同じく振動子の共振周波数を示す線図。
【図23】比較の圧電素子の駆動構成を示す概略図。
【図24】比較例の振動子の平面図。
【図25】変更例の圧電素子の平面図。
【図26】変更例の振動子の斜視図。
【図27】(a)は変更例の振動子の平面図、(b)は
模式断面図。
【図28】振動子を利用した超音波アクチュエータの概
略図。
【図29】別の超音波アクチュエータの概略図。
【図30】別の超音波アクチュエータの概略図。
【図31】従来技術の圧電セラミック振動子の平面図。
【図32】従来技術の圧電セラミック振動子の平面図。
【図33】別の従来技術の圧電セラミック振動子の概略
斜視図。
【図34】(a)は振動子に生じる曲線閉路の軌跡の模
式図、(b)は振動子に生じる曲線閉路の軌跡の模式
図、(c)は振動子に生じる曲線閉路の軌跡の模式図。
【図35】曲線閉路の軌跡の模式図。
【符号の説明】
1…圧電素子、2,2a〜2e…弾性体、3…振動子、
6…発振器。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 伸縮振動を呈する圧電素子により構成さ
    れる超音波アクチュエータ用振動子において、 前記振動子は、圧電素子が伸縮振動することにより振動
    子に直線状の往復運動を発生させる状態の重心を基準と
    して、該重心を移動させた構成とすることにより、圧電
    素子の伸縮振動と、振動子に生じる撓みとを合成させて
    振動子に曲線閉路の軌跡を形成する運動を発生させるこ
    とを特徴とする超音波アクチュエータ用振動子。
  2. 【請求項2】 前記振動子は、圧電素子が伸縮振動する
    ことにより振動子に直線状の往復運動を発生させる状態
    の重心を基準として、圧電素子に弾性体を付着させるこ
    とにより、該重心を移動させた構成とすることを特徴と
    する請求項1に記載の超音波アクチュエータ用振動子。
  3. 【請求項3】 前記振動子は、圧電素子が伸縮振動する
    ことにより振動子に直線状の往復運動を発生させる状態
    の重心を基準として、圧電素子に弾性体を付着させるこ
    とにより、該重心を直交する2方向に移動させた構成と
    することを特徴とする請求項2に記載の超音波アクチュ
    エータ用振動子。
  4. 【請求項4】 前記圧電素子は、板状としたことを特徴
    とする請求項2又は請求項3に記載の超音波アクチュエ
    ータ用振動子。
JP7156488A 1995-06-22 1995-06-22 超音波アクチュエータ用振動子 Pending JPH091066A (ja)

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