JPH0893816A - 湿式摩擦係合板及びその製造方法 - Google Patents

湿式摩擦係合板及びその製造方法

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JPH0893816A
JPH0893816A JP25422894A JP25422894A JPH0893816A JP H0893816 A JPH0893816 A JP H0893816A JP 25422894 A JP25422894 A JP 25422894A JP 25422894 A JP25422894 A JP 25422894A JP H0893816 A JPH0893816 A JP H0893816A
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engagement plate
sintered
friction
friction material
friction engagement
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JP25422894A
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English (en)
Inventor
Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
Yoshie Kouno
由重 高ノ
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動変速機等の湿式多板クラッチや湿式多板
ブレーキに適用できるように、湿式摩擦摺動下において
十分高い摩擦係数を実現でき、しかも簡単な方法で生産
性良く製造することができる湿式摩擦係合板を提供す
る。 【構成】 金属製基板2の表面に焼結摩擦材1を固着し
た湿式摩擦係合板で、該焼結摩擦材1が3〜20重量%
の錫と、10〜30重量%の鉄系金属間化合物と、残部
の銅とからなり、前記鉄系金属間化合物が硬質粒子とし
て合金素地を構成する旧粉末粒内部に均一に分散してい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動変速機等の湿式多
板クラッチや湿式多板ブレーキに用いられる湿式摩擦係
合板、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の自動変速機等に用いられている摩
擦係合板は、一般に鋼材からなる金属製基板の表面に摩
擦材を張り付けて構成されている。又、摩擦材として
は、多孔質の紙製摩擦材あるいは炭素焼結摩擦材が主に
用いられている。
【0003】例えば、紙製摩擦材としては、特開平6−
25653号公報に記載されているような、フェノール
樹脂等の熱硬化性樹脂と黒鉛、有機ダスト等の摩擦調整
剤を主成分とし、有機繊維や炭素繊維等を補強材とする
もの等がある。又、炭素焼結摩擦材に関しては、例えば
特開平4−76086号公報に、未炭化炭素質繊維と炭
素質粉末からなる複合体を焼結して得られる炭素繊維強
化炭素焼結体等が提案されている。
【0004】これらの摩擦材は、共に弾性変形が可能で
あるため、偏った係合力を吸収できるといった特徴を有
する。その反面、これらの摩擦材の潤滑油中での摩擦係
数は一般に0.05〜0.1と小さいため、クラッチにお
いて十分な伝達トルクを得るには摩擦材の大径化ないし
大面積化が必要となり、現状の小型軽量化の要望には答
えられないという欠点があった。又、紙製摩擦材に関し
ては、耐熱性に欠けることから、高温下での摩擦摺動に
おいて摩耗損傷したり、あるいは特性が劣化することで
摩擦係数が低下するといった問題があった。
【0005】これらの問題に対して、特公平1−234
629号公報では、ガラス繊維やゴムバインダからなる
摩擦材の摺動面に2種類の金属からなる疑似合金溶射皮
膜を形成することにより、0.25を越える高い摩擦係
数を確保できる摩擦材を提案している。しかしながら、
この方法によると、基板上に固着した摩擦材に更に溶射
皮膜処理が必要となるため、経済性の低下並びに工程の
複雑化といった新たな問題が生じ、更には溶射処理のた
め優れた生産性は期待できない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の紙
製摩擦材及び炭素焼結摩擦材等は、自動変速機等の湿式
多板クラッチや湿式多板ブレーキの湿式摩擦係合板に適
用する場合には、湿式摩擦摺動下における摩擦係数が
0.1以下と小さいためトルクの伝達に十分ではなく、
小型軽量化の要望に適応できなかった。
【0007】本発明は、かかる従来の事情に鑑み、自動
変速機等の湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキの湿式
摩擦係合板に適用できるように、湿式摩擦摺動下におい
て十分高い摩擦係数を実現でき、しかも簡単な方法で生
産性良く製造することができる湿式摩擦係合板を提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明が提供する湿式摩擦係合板は、環状の金属製
基板の表面に環状の摩擦材を固着した湿式摩擦係合板に
おいて、該摩擦材が3〜20重量%の錫と、10〜30
重量%の鉄系金属間化合物と、残部の銅とからなり、前
記鉄系金属間化合物が硬質粒子として合金素地を構成す
る旧粉末粒内部に均一に分散している焼結摩擦材である
ことを特徴とするものである。
【0009】かかる本発明の湿式摩擦係合板は、3〜2
0重量%の錫と、10〜30重量%の鉄系金属間化合物
と、残部の銅とからなり、前記鉄系金属間化合物が硬質
粒子として合金素地を構成する旧粉末粒内部に均一に分
散している焼結摩擦材を、接着剤又は接着シートを用い
るか、又は拡散接合法若しくは溶融溶接法により、環状
の金属製基板の表面に固着させる方法により製造するこ
とができる。
【0010】又、3〜20重量%の錫粉末と残部の銅粉
末又は3〜20重量%の錫を含む銅−錫合金粉末に、1
0〜30重量%の鉄系金属間化合物を添加し、機械的に
粉砕混合処理することにより鉄系金属間化合物の硬質粒
子をCu−Sn合金粉末素地中に均一に分散させた後、
得られたCu−Sn合金粉末を環状の金属製基板の表面
上に堆積させて成形し、不活性ガス又は還元性ガス雰囲
気中にて焼結固化させると同時に金属製基板の表面に固
着させる方法によっても、本発明の湿式摩擦係合板の製
造が可能である。
【0011】
【作用】本発明の湿式摩擦係合板は、通常の管状の金属
製基板とその表面の固着した焼結摩擦材とからなり、当
該焼結摩擦材は、耐摩耗性及び耐焼付性に優れたCu−
Sn合金の素地中に、鉄系金属間化合物の硬質粒子を微
細且つ均一に分散させ、しかも分散した硬質粒子が摺動
中に脱落することを抑制することによって、潤滑油中で
の摩擦摺動において摩耗損傷を生ずることがなく、且つ
1.0以上の高い摩擦係数を安定して得ることができ、
自動変速機等の湿式摩擦材として十分使用できるもので
ある。
【0012】かかる焼結摩擦材は、その材質としてCu
−Sn合金を使用する。この合金組成の構成成分である
錫(Sn)は、Cuと共に合金素地を形成し、合金の高
温強度及び靭性を向上させる作用があり、又高温での相
手材との耐焼付性を向上させる作用がある。しかし、S
nの含有量が3重量%未満ではこれらの効果が得られ
ず、20重量%を越えると硬くて脆い相が析出して強度
や靭性を低下させるので、Snの含有量は3〜20重量
%の範囲とする。尚、合金中には不可避的不純物が含ま
れる。
【0013】硬質粒子である鉄系金属間化合物はCu−
Sn合金素地の旧粉末粒内部に微細且つ均一に分散し、
湿式(潤滑油中)での摩擦摺動条件下において、相手材
との凝着を抑制し、耐焼付性及び耐摩耗性を向上させる
と共に、相手材の素地表面と直接接触して摩擦係数を大
きくする作用がある。鉄系金属間化合物としては、Fe
Mo、FeCr、FeTi、FeW及びFeBのうちの
少なくとも1種が好ましい。尚、Al23、SiO2
ZrO2等の金属酸化物や、SiC、Si34、AlN
等のセラミックスも摩擦係数を向上させる効果がある
が、これらの粒子は鉄系金属間化合物に比べて被削性に
劣るため、経済性の面で問題がある。
【0014】鉄系金属間化合物の含有量が合計で10重
量%未満では、後述するように焼結体中の空孔部が油溜
まりとなって油膜を形成するため、摩擦係数が0.05
〜0.1程度に小さくなる。又、その含有量が30重量
%を越えると、相手材を激しく摩耗させるほか、金属間
化合物が亀裂発生の起点となるため強度及び靭性が低下
し、自動変速機用の湿式摩擦材として使用に耐えること
ができなくなる。
【0015】又、この硬質粒子の粒径は、最大粒径が2
0μm以下及び平均粒径が10μm以下であることが好
ましい。最大粒径が20μmを越えるか又は平均粒径が
10μmを越えた場合、相手材を激しく摩耗させる危険
がるほか、大きな金属間化合物の粒子が亀裂発生の起点
となりやすいため強度及び靭性が低下し、自動変速機用
の湿式摩擦材としての使用に耐え得ない場合があるから
である。
【0016】しかしながら、硬質粒子である鉄系金属間
化合物が摺動時に合金素地から脱落すると、その脱落部
を起点として相手材と移着や凝着を起こして焼付が発生
したり、脱落した硬質粒子が相手材に噛む込むことで相
手材を摩耗又は損傷させる。従って、硬質粒子の脱落を
抑えて安定した摩擦摺動を確保するためには、微細な硬
質粒子をCu−Sn合金素地中に均一に分散させ、且つ
その脱落を防止する必要がある。
【0017】そのため本発明に係わる焼結摩擦材におい
ては、原料粉末であるCu−Sn合金粉末中に鉄系金属
間化合物を予め分散させておき、その粉末を成形し焼結
することにより、鉄系金属間化合物の硬質粒子を焼結摩
擦材の合金素地中に微細且つ均一に分散させ、しかもそ
の脱落を防止することが可能となったものである。
【0018】具体的には、本発明に係わる焼結摩擦材の
製造は、3〜20重量%のSn粉末と残部のCu粉末又
は3〜20重量%のSnを含むCu−Sn合金粉末に、
10〜30重量%の鉄系金属間化合物を添加し、機械的
に粉砕混合処理することにより鉄系金属間化合物の硬質
粒子をCu−Sn合金粉末素地中に均一に分散させ、そ
の後このCu−Sn合金粉末を成形し、焼結する方法に
よる。
【0019】即ち、機械的な粉砕混合処理により、素地
粉末を合金化すると同時に、鉄系金属間化合物の硬質粒
子をCu−Sn合金素地中に均一に分散させ、得られた
粉末を成形して焼結することで素地のCu−Sn合金と
金属間化合物の界面に反応層を形成させ、硬質粒子を素
地中に強固に固定することができる。特に、この機械的
な粉砕混合処理により、鉄系金属間化合物の硬質粒子を
最大粒径20μm以下及び平均粒径10μm以下の微細
な粒子として、Cu−Sn合金素地中に均一に分散させ
ることが好ましい。
【0020】機械的な粉砕混合処理は、機械的合金化法
(メカニカルアロイング法)、機械的混合法(メカニカ
ルグラインディング法)、又は造粒法のいずれかを用い
ることが好ましい。尚、この機械的な粉砕混合処理は、
従来のボールミル粉砕や混合のような湿式法ではなく、
乾式法で行うことが好ましい。又、過度の凝集や付着を
防ぐために、PCA(Process Control Agent)として
ステアリン酸やアルコール等を少量添加することもでき
る。具体的な処理装置としては、アトライターやボール
ミルが適当である。前者は粉砕効率に優れていることか
ら高速処理に適しており、後者は雰囲気制御が容易であ
り、投入エネルギーの設計さえ適切に行えば比較的経済
性に優れている。
【0021】機械的な粉砕混合処理に代わる他の方法と
して、所定量の銅と錫を溶解した溶湯から噴霧法により
Cu−Snアトマイズ合金粉末を製造する方法を用い、
前記溶湯に鉄系金属間化合物を添加しておくことによ
り、金属間化合物の硬質粒子が分散したCu−Sn合金
粉末が得られる可能性がある。しかし、本発明では金属
間化合物を好ましくは平均粒径10μm以下という微細
な粒子として分散させる必要があるので、溶湯内で均一
に撹拌されずに凝集する可能性があるうえ、噴霧法では
歩留りが悪く経済的に望ましくない。
【0022】又、通常の粉末冶金法により、Cu粉末と
Sn粉末に鉄系金属間化合物の硬質粒子を混合し、混合
粉末を成形及び焼結した場合には、分散する硬質粒子が
合金素地の旧粉末粒界(粉末の三重点)に存在するため
摩擦摺動時に合金素地から脱落しやすく、かえって相手
材を攻撃したり、更には焼付や摩耗が生じるといった問
題がある。
【0023】本発明に係わる焼結摩擦材は、硬質粒子の
分散したCu−Sn合金の焼結体からなるので、通常は
その内部に空孔が存在する。一般の含油軸受け用Cu−
Sn系合金は、内部に多くの空孔を有するので、例えば
20m/秒を越えるような高滑り速度領域では潤滑油が
内部から流出し、且つ摺動面の空孔に油溜まりを生じる
ので、相手材との間に厚い油膜が形成される結果、摩擦
係数が0.05〜0.1程度にまで低下する。
【0024】これに対して本発明では、空孔の大きさや
量等を制御することで、自動変速機用の湿式摩擦材とし
て十分な機械的特性、特に引張強度を有し、且つ潤滑油
中で0.1以上の高い摩擦係数を安定して得ることが可
能となった。又、空孔の分布が不均一であると、摩擦摺
動時における相手材とのなじみ性が局所的に低下するた
め安定した摩擦係数が得られず、更には相手材との焼付
を生じやすいので、焼結摩擦材中に均一に空孔を分散さ
せることが望ましい。尚、空孔の大きさや量等は、原料
粉末を成形する際の圧力により制御することが可能であ
る。
【0025】好ましい態様としては、空孔が焼結摩擦材
中に均一に分散し、空孔の平均径が30μm以下で且つ
空孔の存在量が30容量%以下とする。空孔の平均径が
30μmを越えると空孔が亀裂の起点となるため強度及
び靭性が低下する。空孔の存在量については、30容量
%を越えると強度及び靭性が低下する。即ち、平均径3
0μm以下の空孔が30容量%以下の存在量で均一に分
散している場合には、引張強度等の機械的特性を低下さ
せることなく、0.1を越える摩擦係数を安定して得る
ことができる。
【0026】又、潤滑油中での摩擦摺動特性の観点から
見ると、空孔は油溜まりとして作用し、摺動面に油膜を
形成して相手材との摺動特性ないしは耐焼付性を改善す
る効果がある。しかし湿式摩擦摺動においては、厚く且
つ強固な油膜を形成させると摩擦係数が0.05〜0.1
程度にまで低下してしまう。一方、空孔の存在量が15
容量%以下になると、摺動面に形成される油膜が局所的
に不連続状態になり、若しくは界面潤滑状態になるた
め、相手材との焼付や摩擦係数の変動という問題が生じ
る。
【0027】これらの問題に対して、空孔の存在量が1
5容量%以下の焼結摩擦材においては、摺動面の少なく
とも1カ所に軸中心から半径方向に摺動面を貫通する油
溝を放射状に形成することにより、適切な油膜の形成を
助長して、好ましい摺動特性ないし耐焼付性を達成する
ことができる。油溝の幅及び深さは、焼結摩擦材の使用
条件に応じて適正な形状を選択すれば良いが、深さに関
しては少なくとも0.1mmより小さくなければ有効で
ある。特に、油溝を焼結摩擦材の軸中心に対して軸対象
に配置することで、摩擦摺動時の摩擦係数の変動を抑制
することができる。
【0028】尚、空孔の存在量が15容量%を越えて分
散しているような焼結摩擦材においても、油溝を付与す
ることによって、高滑り速度領域で発生する摩擦係数の
変動を有効に抑制できることも確認された。
【0029】湿式摩擦摺動条件下においては、滑り速度
が大きくなると摺動面に存在する空孔の楔効果により、
潤滑油が空孔内に取り込まれ、摩擦材と相手材の摺動面
間に潤滑膜が形成される。特に20m/秒を越えるよう
な高滑り速度で使用する場合には、摩擦係数の低下が生
じる。例えば、滑り速度5mm/秒の条件で摩擦係数が
0.3である場合、滑り速度が20m/秒になると摩擦
係数は0.1〜0.2程度まで低下することが知られてい
る。
【0030】かかる問題に対して、本発明に係わる焼結
摩擦材に固体潤滑剤を含有させることにより、自己潤滑
作用によって摺動面に形成される油膜の影響を低減さ
せ、滑り速度による摩擦係数の安定性を改善できること
が分かった。しかし、固体潤滑剤の添加量が合計で3重
量%を越えると、焼結摩擦材の強度及び靭性が低下する
ので好ましくない。
【0031】かかる固体潤滑剤としては、黒鉛、MoS
2、CaF2及びBNのうちの少なくとも1種を使用する
ことが好ましい。他の潤滑剤として、例えばPbが軸受
け用Cu−Sn系合金に使用されているが、Pbは合金
素地と化合物を生成せず微粒子としてα相のデンドライ
ト間に存在するため、摺動部材に適用すると摺動時に脱
落する可能性が高く不適当である。
【0032】以上述べたように、本発明に係わる焼結摩
擦材は、自動変速機用の湿式摩擦材としての使用に適し
た機械的特性と摩擦摺動特性とを兼ね備えたものであ
る。従って、図1又は図2に示すように、この焼結摩擦
材1を通常の鋼材等からなる金属製基板2の表面に固着
することによって、自動変速機等に用いられる湿式多板
クラッチや湿式多板ブレーキのような湿式摩擦係合板を
構成することが可能である。尚、この湿式摩擦係合板
は、駆動側又は被駆動側回転体と嵌合させるため、その
内周又は外周にスプライン形状の歯形部4を有すること
が好ましい。
【0033】本発明の湿式摩擦係合板の製造方法の一つ
は、接着剤又は接着シートを用いるか、又は拡散接合法
若しくは溶融溶接法により、上記の焼結摩擦材を環状の
金属製基板の表面に固着させる方法である。接着剤又は
接着シートとしては、一般の金属同士を接着できるよう
な接着剤又は接着シートを用いることができるが、好ま
しくは200℃付近の潤滑油中においても接着性能が低
下しないものが望ましい。
【0034】拡散接着法は、金属製基板の表面に銅系焼
結合金である前記焼結摩擦材を載せて加熱加圧処理を施
すことにより、両者の界面で拡散現象を促進させ、固着
させる方法である。具体的な方法としては、熱間静水圧
プレス(HIP)法、ホットプレス(HP)法、熱間鍛
造法、熱間圧延法等の方法が工業的に有効である。
【0035】溶融溶接法は、金属製基板の表面に前記焼
結摩擦材を載せた状態で、厚み方向に高密度エネルギー
を照射することにより、局所的に基板と焼結摩擦材を溶
接接合させる方法である。具体的な方法としては、アー
ク溶接法、レーザー溶接法、電子ビーム溶接法、抵抗溶
接法等がある。しかし、入熱量が大きい場合には溶融領
域が大きくなり、摩擦材及び基板の反りや変形が生じた
り、焼結摩擦材の特性が低下する等の問題が生じやす
い。
【0036】更に、本発明の湿式摩擦係合板の他の製造
方法として、3〜20重量%の錫粉末と残部の銅粉末又
は3〜20重量%の錫を含む銅−錫合金粉末に、10〜
30重量%の鉄系金属間化合物を添加し、機械的に粉砕
混合処理することにより鉄系金属間化合物の硬質粒子を
Cu−Sn合金粉末素地中に均一に分散させた後、得ら
れたCu−Sn合金粉末を環状の金属製基板の表面上に
堆積させて成形し、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中
にて焼結固化させると同時に金属製基板の表面に固着さ
せる方法を採ることができる。
【0037】尚、この方法においては、基板表面上に合
金粉末を成形する際に、基板と合金粉末との界面部分を
より緻密に接触させることが望ましい。そのためには、
基板表面に予め凹凸部を形成しておくことが有効であ
る。即ち、凹凸部に合金粉末が入り込んだ状態で加圧す
ると、合金粉末が基板界面で塑性変形して疑似的に密着
した状態となるので、基板表面と接する部分の粉末の表
面積が増加し、加熱加圧処理により両者の界面での拡散
現象がより有効に促進されるからである。
【0038】
【実施例】実施例1 下記表1に示す合金組成となるように、Sn粉末とCu
粉末又はCu−Sn合金粉末にFe系金属間化合物を添
加し、機械的合金化法により機械的に粉砕混合処理して
Fe系金属間化合物の硬質粒子をCu−Sn合金素地中
に分散させた後、得られたCu−Sn合金粉末をそのま
ま又は更に固体潤滑剤を添加混合して成形し、窒素雰囲
気中で焼結することにより焼結摩擦材を製造した。各焼
結摩擦材の具体的な製造は次の(a)■(d)の工程のいず
れかに従って行った。
【0039】(a)Cu−Sn合金粉末+硬質粒子→機械
的粉砕混合処理→成形→焼結 (b)Cu−Sn合金粉末+硬質粒子→機械的粉砕混合処
理→固体潤滑剤の添加→成形→焼結 (c)Cu粉末+Sn粉末+硬質粒子→機械的粉砕混合処
理→成形→焼結 (d)Cu粉末+Sn粉末+硬質粒子→機械的粉砕混合処
理→固体潤滑剤の添加→成形→焼結
【0040】尚、成形条件は面圧4〜6t/cm2の範
囲で空孔の量と平均径を制御して行い、外径65mm×
内径40mm×高さ7mmの成形体とした。成形体の焼
結条件は窒素雰囲気中において800℃で1時間とし、
炉内冷却した後、得られた焼結摩擦材を取り出した。合
金組成のうち、表1に示したSnとFe系金属間化合物
の硬質粒子及び固体潤滑剤以外は、残部のCuと通常含
有される不可避的不純物である。又、表1に記号で示し
た固体潤滑剤は、Aが黒鉛、BがMoS2、CがCa
2、及びDがBNである。
【0041】
【表1】 試料 Sn 硬 質 粒 子 (wt%) 粒径(μm) 固体潤滑剤(wt%) No. 工程 (wt%) FeMo FeCr FeW FeTi FeB 合計 最大 平均 合計 1 a 10 20 0 0 0 0 20 14 5 0 0 0 0 0 2 a 10 0 20 0 0 0 20 18 7 0 0 0 0 0 3 a 11 0 0 20 0 0 20 20 8 0 0 0 0 0 4 a 10 0 0 0 20 0 20 18 6 0 0 0 0 0 5 a 12 0 0 0 0 20 20 18 7 0 0 0 0 0 6 a 9 15 0 0 0 0 15 11 4 0 0 0 0 0 7 c 10 25 0 0 0 0 25 17 7 0 0 0 0 0 8 b 9 10 10 0 0 0 20 16 6 1 0 0 0 1 9 c 4 5 0 0 20 0 20 17 6 0 0 0 0 0 10 a 15 20 0 0 0 0 20 15 6 0 0 0 0 0 11 b 10 20 0 0 0 0 20 17 7 1 0 0 0 1 12 d 12 20 0 0 0 0 20 12 4 3 0 0 0 3 13 a 9 0 20 0 0 0 20 14 5 0 0 0 0 0 14 d 9 20 0 0 0 0 20 16 6 0 1 0 0 1 15 a 10 10 10 0 0 0 20 18 8 0 0 0 0 0 16 b 9 20 0 0 0 0 20 18 7 0 0 1 0 1 17 a 12 20 0 0 0 0 20 10 4 0 0 0 0 0 18* a 2 20 0 0 0 0 20 17 6 0 0 0 0 0 19* a 35 20 0 0 0 0 20 18 7 0 0 0 0 0 20* a 10 5 0 0 0 0 5 18 8 0 0 0 0 0 21* a 10 20 0 15 0 0 35 16 6 0 0 0 0 0 22* a 10 20 0 0 0 0 20 17 7 0 0 0 0 0 23* a 10 20 0 0 0 0 20 16 7 0 0 0 0 0 24* a 10 20 0 0 0 0 20 14 6 0 0 0 0 0 25* b 10 20 0 0 0 0 20 15 6 4 0 0 0 4 26* a 10 20 0 0 0 0 20 17 7 0 0 0 0 0 27* − 10 20 0 0 0 0 20 35 10 1 0 0 0 1 28* − 10 20 0 0 0 0 20 20 17 1 0 0 0 1 (注)表中の*を付した試料は比較例である(以下同じ)。又、試料No.27と28 の製造は、各粉末の機械的な粉砕混合処理を施さず、従来の混合処理のみを行っ た後、他と同様の条件で成形及び焼結する工程により実施した。
【0042】次に、上記の各焼結摩擦材について、空孔
の存在量と平均径を求めると共に、引張強度(UTS)
と伸びを測定し、これらの結果を下記表2に示した。更
に、摩擦摺動特性を測定するため、各焼結摩擦材を外径
60mm×内径45mm×高さ5mmのリング状の試験
片に加工し、その内の幾つかには摺動面の軸中心から半
径方向に端から端まで貫通した幅2mmで深さ0.2m
mのスリット(油溝)を表2に示す本数だけ形成した。
【0043】
【表2】 試料 空孔量 空孔径 引張強度 伸び スリットNo. (vol%) (μm) (MPa) (%) 本数 1 17 10 290 7.5 0 2 18 10 292 6.8 0 3 18 12 296 7.2 0 4 16 9 294 7.0 0 5 18 10 298 7.1 0 6 17 10 320 6.5 0 7 10 7 375 7.7 2 8 6 5 405 7.0 2 9 3 4 432 7.0 3 10 0 0 458 6.6 4 11 20 12 333 6.6 0 12 5 5 402 9.9 4 13 20 12 330 6.8 2 14 11 7 365 6.6 1 15 20 13 335 6.7 0 16 10 6 370 7.4 2 17 25 18 270 6.6 0 18* 13 8 112 9.8 2 19* 19 11 205 1.6 0 20* 20 12 305 9.8 0 21* 11 6 195 1.6 4 22* 35 20 175 1.8 0 23* 40 25 115 1.1 0 24* 28 37 218 2.0 0 25* 17 8 185 1.8 0 26* 0 0 445 7.5 0 27* 16 8 215 0.8 0 28* 17 9 225 1.2 2
【0044】上記各試験片を用いて図3に示す湿式摩擦
試験方法により摩擦試験を行った。即ち、試験片である
焼結摩擦材1をS35C材からなる相手材5(直径70
mm×高さ5mm)の上に載せ、固定側の焼結摩擦材1
に125kgfの荷重を負荷しながら、油温80℃の潤
滑油(ATF)中で相手材5を回転させ、摩擦時間1時
間の連続摩擦試験を実施した。尚、焼結摩擦材1と鋼製
の相手材5との滑り速度は10m/秒一定とした。
【0045】この連続摩擦試験により、焼結摩擦材1と
相手材5の摺動面における摩擦係数μの平均値及び変動
量(△μ=最大μ値−最小μ値)、並びに焼結摩擦材1
と相手材5の摩耗量を求め、それぞれ下記表3に示し
た。又、焼結摩擦材1と相手材5の損傷状況を観察し、
その結果を表3に併せて示した。
【0046】
【表3】 試料 摩擦係数μ 摩 耗 量 (mg) No. 平均値 △μ 焼結摩擦材 相手材 損 傷 状 況 1 0.36 0.09 3 4 異状なし 2 0.35 0.09 4 3 異状なし 3 0.34 0.08 4 3 異状なし 4 0.35 0.09 5 3 異状なし 5 0.37 0.08 4 4 異状なし 6 0.31 0.09 4 3 異状なし 7 0.42 0.06 3 3 異状なし 8 0.33 0.03 4 3 異状なし 9 0.33 0.04 5 3 異状なし 10 0.42 0.04 4 4 異状なし 11 0.32 0.06 4 5 異状なし 12 0.31 0.01 4 4 異状なし 13 0.35 0.04 5 5 異状なし 14 0.34 0.05 4 5 異状なし 15 0.33 0.09 3 4 異状なし 16 0.37 0.05 4 4 異状なし 17 0.31 0.07 4 5 異状なし 18* 0.62 0.51 2×102 7 焼結材が摩耗 19* 0.67 0.48 10 68 相手材を攻撃 20* 0.08 0.05 4 3 異状なし 21* 0.64 0.44 12 80 相手材を攻撃 22* 0.52 0.33 6×102 15 焼結材が摩耗 23* 0.58 0.37 8×102 18 焼結材が摩耗 24* 0.54 0.38 5×102 11 焼結材が摩耗 25* 0.22 0.05 1×102 5 焼結材が摩耗 26* 0.70 0.47 42 98 焼付き発生 27* 0.66 0.42 2×102 6 焼結材が摩耗 28* 0.62 0.44 3×102 −3×102 相手材を攻撃 (注)摩耗量の表示のマイナス(−)は付着による増加を表す。
【0047】上記の結果から、本発明に係わる焼結摩擦
材は機械的特性及び摩擦摺動特性が共に良好であること
が分かる。一方、比較例の焼結摩擦材においては、No.1
8はSn量が少ないため合金素地の強度不足により摩擦
材に摩耗が生じ、摩擦係数の増加及び変動が大きい。N
o.19はSn量が多すぎるため合金素地が硬化し、相手材
を攻撃して摩擦係数の増加及び変動が大きい。No.20は
硬質粒子が少ないため0.1を越える十分な摩擦係数が
得られず、No.21は逆に硬質粒子が多すぎるため強度や
靭性が低下し、摩擦試験では相手材を攻撃する。
【0048】No.22とNo.23は空孔量が多いため強度が低
下し、摩擦試験では摩耗が著しい。No.24は空孔の平均
径が大きいため強度が低下し、摩擦試験ではやはり摩耗
が著しい。No.25は固体潤滑剤の添加量が多すぎるため
強度や靭性が低下し、摩擦試験では摩耗が生じる。No.2
6は空孔量がゼロであるにも拘らず摺動面にスリットが
形成されていないので、なじみ性や耐焼付性が低下して
相手材と焼付を生じている。No.27とNo.28は機械的な粉
砕混合処理を行っていないので共に粗大な硬質粒子が存
在し、この硬質粒子が摺動時に合金素地から脱落して相
手材を攻撃して焼付を生じ、更に強度や靭性も低下して
いる。
【0049】実施例2 上記実施例1で製造した本発明例及び比較例の焼結摩擦
材の内の幾つかの試料を用い、図1に示す摩擦試験方法
により滑り速度を変化させた以外は実施例1と同様にし
て摩擦試験を行い、実施例1と同様に摩擦摺動特性を評
価した。その結果を、滑り速度と共に表4に示した。
【0050】
【表4】 実験 試料 滑り速度 摩擦係数μ 摩 耗 量 (mg) No. No. (m/秒) 平均値 △μ 焼結摩擦材 相手材 損 傷 状 況 1 1 0.1 0.39 0.08 3 1 異状なし 2 1 1 0.38 0.09 3 1 異状なし 3 1 5 0.37 0.07 3 1 異状なし 4 1 20 0.36 0.06 4 1 異状なし 5 10 20 0.41 0.03 4 1 異状なし 6 10 40 0.39 0.03 4 2 異状なし 7 11 5 0.33 0.06 3 0 異状なし 8 11 20 0.31 0.05 3 1 異状なし 9 13 8 0.35 0.04 2 1 異状なし 10 13 30 0.33 0.04 3 2 異状なし 11* 18 5 0.67 0.54 5×102 −5×102 摩擦材摩耗・焼付発生 12* 19 12 0.70 0.51 44 4×102 相手材攻撃・焼付発生 13* 20 5 0.08 0.04 2 1 異状なし 14* 21 5 0.68 0.45 26 3×102 相手材攻撃 15* 22 40 0.14 0.04 7×102 5 摩擦材摩耗 16* 25 30 − − − − 摩擦材欠け試験中止 17* 26 5 0.70 0.49 4×102 −3×102 摩擦材摩耗・焼付発生 18* 28 5 0.68 0.45 6×102 −5×102 摩擦材摩耗・焼付発生 (注)△μは摩擦係数μの変動量(最大μ値−最小μ値)であり、摩耗量の表示 のマイナス(−)は付着による増加を表す。
【0051】上記の結果から分かるように、本発明の焼
結摩擦材は、滑り速度の変動に対して摩擦係数が安定し
ており、摩耗損傷を生じることもなく良好な摩擦摺動特
性を示している。これに対して、比較例の焼結摩擦材に
おいては、実験No.11はSn量が少ないため合金素地の
強度が不足し、摩擦材の摩耗及び焼付が生じている。同
No.12はSn量が多すぎるため合金素地が著しく硬化
し、相手材を攻撃して焼付が発生し、その結果摩擦係数
が増加している。同No.13は硬質粒子が少ないため0.1
を越える十分な摩擦係数が得られない。
【0052】同No.14は硬質粒子が多すぎるため相手材
を攻撃して焼付が発生し、その結果摩擦係数が増加して
いる。No.15は空孔量が多いため強度が低下し、摩擦材
が摩耗する。同No.16は固体潤滑剤が多すぎるため強度
や靭性が低下し、摩擦材が摩耗する。同No.17は空孔量
が0%である摩擦材の摺動面にスリットがないため、な
じみ性及び耐焼付性が低下し、相手材と焼付が生じる。
同No.18は機械的な粉砕混合処理を行っていないので共
に粗大な硬質粒子が存在し、この硬質粒子が摺動時に合
金素地から脱落して相手材と焼付を生じ、更に摩擦材の
強度や靭性が低下する。
【0053】実施例3 図1及び図2に示すように、前記実施例1の表1及び表
2に示した試料の内の試料No.1及びNo.8からなる環状の
焼結摩擦材1(外径100mm×内径90mm×高さ3
mm)を、S35C鋼材からなる金属製基板2(内径側
表面にギア歯形部を有する)の表面に固着させて、それ
ぞれ湿式摩擦係合板を作製した。尚、前記表2に示した
ように、試料No.1の焼結摩擦材1にはスリットが存在し
ない(図1参照)が、試料No.8の焼結摩擦材1の摺動面
には軸中心から半径方向に放射状に4本のスリット3を
等間隔で設け(図2参照)、スリット3の幅は2mm及
び深さは0.2mmとした。
【0054】得られた各湿式摩擦係合板を、図4に示す
湿式摩擦試験機を用いて、その摩擦摺動特性を評価し
た。即ち、S35C鋼材の金属製基板2に固着した焼結
摩擦材1の表面上にS35C鋼材からなる相手材5を載
せ、固定側の相手材5に150kgf(10kg/cm
2)の荷重を負荷しながら、油温80℃の潤滑油(AT
F)中で金属製基板2側を回転させ、摩擦時間5時間の
連続摩擦試験を実施した。尚、焼結摩擦材1と鋼製の相
手材5との滑り速度は20m/秒一定とした。
【0055】この連続摩擦試験により、焼結摩擦材1と
相手材5の摺動面における摩擦係数μの平均値及び変動
量(△μ=最大μ値−最小μ値)を測定し、それぞれ下
記表5に示した。又、焼結摩擦材1と相手材5の損傷状
況を観察し、その結果を表5に併せて示した。
【0056】
【表5】 試験 試料 摩擦材と基板の 摩擦係数μ No. No. 接続固着方法 平均値 △μ 試 験 結 果 1 1 エポキシ系接着剤 0.35 0.07 剥離なく良好 2 1 接着シート 0.36 0.08 剥離なく良好 3 8 加熱拡散処理1) 0.32 0.04 剥離なく良好 4 8 HIP/HP2) 0.31 0.05 剥離なく良好 5 1 熱間鍛造3) 0.35 0.07 剥離なく良好 6 8 700℃熱間鍛造 0.32 0.05 剥離なく良好 7 8 粉末焼結4) 0.31 0.04 剥離なく良好 8 1 粉末焼結5) 0.35 0.06 剥離なく良好 9 1 電子ビーム溶接 0.36 0.07 剥離なく良好 10 8 CO2レーザー溶接 0.33 0.05 剥離なく良好 11* 1 圧入 − − 開始2分で剥離 12* 1 圧入後端部かしめ − − 開始2分で剥離 (注)接続固着方法における条件: 1)焼結摩擦材を基板に圧入した状態で水素ガス中800℃で1時間処理、2)75 0℃を越える温度にて面圧500kg/cm2、3)800℃以上にて面圧6t/ cm2、4)原料粉末を基板上に載せ面圧6t/cm2で成形後、水素ガス中にて8 00℃で1時間焼結して固着、5)原料粉末を基板上に載せて750℃以上に加熱 し、HIP(面圧500kg/cm2)で焼結して固着。
【0057】上記の結果から、本発明の製造方法により
得られた湿式摩擦係合板は、S35C鋼材の金属製基板
と強固に固着され、摩擦摺動試験においても剥離するこ
となく、又は焼結摩擦材が摩耗損傷しあるいは相手材と
焼付を起こすこともないことが分かる。一方、比較例の
試験No.11及び12では、共に圧入及びかしめといった機
械的な結合方法により焼結摩擦材と金属製基板を固着し
ているので、強固な結合力が得られず、摩擦摺動試験に
おいて両者が剥離する結果となった。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、湿式摩擦摺動下におけ
る摺動特性及び強度や硬度等の機械的特性に優れた焼結
摩擦材を用い、これを金属製基板に固着することによっ
て、湿式摩擦摺動環境下において滑り速度、加圧力、潤
滑油の粘性等の摺動条件の影響を受けることなく、相手
材として通常用いられる鋼材との間に0.1を越える高
い摩擦係数を安定して保持できる湿式摩擦係合板を提供
することができる。
【0059】しかも、本発明の湿式摩擦係合板は、0.
1を越える高い摩擦係数に加えて、相手材を攻撃するこ
とがなく、更に相手材と焼付を生じないので、自動変速
機等の湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキの湿式摩擦
係合板として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の湿式摩擦係数板の一具体例を示す概略
正面図である。
【図2】本発明の湿式摩擦係数板の別の具体例を示す概
略正面図である。
【図3】本発明に係わる焼結摩擦材についての湿式摩擦
試験方法を示す概略の一部切欠側面図である。
【図4】本発明の湿式摩擦係合板についての湿式摩擦試
験方法を概略の一部切欠側面図である。
【符号の説明】
1 焼結摩擦材 2 金属製基板 3 スリット 4 歯形部 5 相手材

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 環状の金属製基板の表面に環状の摩擦材
    を固着した湿式摩擦係合板において、該摩擦材が3〜2
    0重量%の錫と、10〜30重量%の鉄系金属間化合物
    と、残部の銅とからなり、前記鉄系金属間化合物が硬質
    粒子として合金素地を構成する旧粉末粒内部に均一に分
    散している焼結摩擦材であることを特徴とする湿式摩擦
    係合板。
  2. 【請求項2】 焼結摩擦材中に分散している鉄系金属間
    化合物からなる硬質粒子は、最大粒径が20μm以下及
    び平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請
    求項1に記載の湿式摩擦係合板。
  3. 【請求項3】 鉄系金属間化合物が、FeMo、FeC
    r、FeTi、FeW及びFeBのうちの少なくとも1
    種であることを特徴とする、請求項2に記載の湿式摩擦
    係合板。
  4. 【請求項4】 焼結摩擦材中に平均径30μm以下の空
    孔が均一に分散し、空孔の存在量が30容量%以下であ
    るか、又は空孔の存在量が15容量%以下であって且つ
    焼結摩擦材の摺動面の少なくとも1カ所に軸中心から半
    径方向に摺動面を貫通する油溝を備えたことを特徴とす
    る、請求項1〜3のいずれかに記載の湿式摩擦係合板。
  5. 【請求項5】 焼結摩擦材が3重量%以下の固体潤滑剤
    を更に含有することを特徴とする、請求項1〜4のいず
    れかに記載の湿式摩擦係合板。
  6. 【請求項6】 固体潤滑剤が黒鉛、MoS2、CaF2
    BNから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とす
    る、請求項5に記載の湿式摩擦係合板。
  7. 【請求項7】 3〜20重量%の錫と、10〜30重量
    %の鉄系金属間化合物と、残部の銅とからなり、前記鉄
    系金属間化合物が硬質粒子として合金素地を構成する旧
    粉末粒内部に均一に分散している焼結摩擦材を、接着剤
    又は接着シートを用いるか、又は拡散接合法若しくは溶
    融溶接法により、環状の金属製基板の表面に固着させる
    ことを特徴とする湿式摩擦係合板の製造方法。
  8. 【請求項8】 3〜20重量%の錫粉末と残部の銅粉末
    又は3〜20重量%の錫を含む銅−錫合金粉末に、10
    〜30重量%の鉄系金属間化合物を添加し、機械的に粉
    砕混合処理することにより鉄系金属間化合物の硬質粒子
    をCu−Sn合金粉末素地中に均一に分散させた後、得
    られたCu−Sn合金粉末を環状の金属製基板の表面上
    に堆積させて成形し、不活性ガス又は還元性ガス雰囲気
    中にて焼結固化させると同時に金属製基板の表面に固着
    させることを特徴とする湿式摩擦係合板の製造方法。
  9. 【請求項9】 環状の金属製基板の表面に、予め凹凸部
    を形成しておくことを特徴とする、請求項8に記載の湿
    式摩擦係合板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20190108082A (ko) * 2019-06-24 2019-09-23 주식회사 제이앤에이취프레스 냉간단조 프레스 장비의 클러치/브레이크를 위한 마찰판

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