JPH0892650A - 丸鋸チップソー台金の焼入方法及びその装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 台金のスケールの発生等を防止し得て焼入品
質を向上させる、丸鋸チップソー台金の焼入方法及びそ
の装置を提供する。 【構成】 外周部にチップ取付部を有する台金を略密閉
した状態でケース内に収納配置し、ケースの外側もしく
はケース内に配置した加熱コイルに高周波電流を供給
し、台金を焼入すると共に、焼入後、ケース内に冷却液
を供給して台金を冷却する。加熱コイルは、例えば基台
の下部に配置したり、ケース内に一体的に埋設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、台金の外周部にチップ
がロウ付け固定されて使用される、丸鋸チップソー台金
の焼入方法及びその装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、草刈用、木材切断用等に使用され
る丸鋸チップソーとしては、ＳＫＳ等の材料からなる円
盤状の台金を有し、この台金の外周部に形成されている
段部等からなるチップ取付部には、超硬合金のチップが
ロウ付け固定されている。そして、台金は、座屈現象等
を防止するために、一般的に焼入処理が施されており、
その装置としては、例えば特公平３ー４００８５公報に
開示のように、高周波誘導加熱式の焼入装置が知られて
いる。

【０００３】この焼入装置は、上下動可能な上金型と、
載置台が配置された下金型とを具備し、上下の金型間に
は、高周波変成器に接続された加熱コイルが、移送手段
によって進退可能に配置されている。そして、台金を載
置台にセットした後に、台金の略半分の上下面に加熱コ
イルを位置させ、台金を回転させつつ加熱コイルに高周
波変成器から高周波電流を供給して、台金を所定温度ま
で誘導加熱する。その後、加熱コイルを金型間から退去
させ、上金型を下降させて上下金型で加熱された台金を
加圧してプレス状態とし、この状態で冷却油を供給して
台金を急速冷却させて焼入する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この焼
入装置にあっては、台金にスケールが発生する等、焼入
品質が劣るという問題点があった。即ち、台金に近接配
置した加熱コイルによって、台金を回転させつつ大気中
で誘導加熱するため、焼入時にスケールが発生したり、
焼入歪が発生し易く、焼入品質が劣ることになる。

【０００５】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、その目的は、台金のスケールの発生等を防止
し得て、焼入品質を向上させる、丸鋸チップソー台金の
焼入方法及びその装置を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成すべ
く、請求項１記載の丸鋸チップソー台金の焼入方法は、
外周部にチップ取付部を有する台金を略密閉した状態で
ケース内に収納配置し、ケース内に不活性ガスを供給し
て、ケースの外側もしくはケース内に配置した加熱コイ
ルに高周波電流を供給し、台金を焼入れすると共に、焼
入後、ケース内に冷却液を供給して台金を冷却すること
を特徴とする。

【０００７】また、請求項２記載の丸鋸チップソー台金
の焼入装置は、外周部にチップ取付部を有する台金を略
密閉した状態で収納し得るケースと、ケース内に不活性
ガスを供給するガス供給装置と、ケース内に冷却液を供
給する冷却液供給装置と、ケースの外側もしくはケース
内に配置された加熱コイルと、加熱コイルに高周波電流
を供給するトランジスタインバータと、を具備すること
を特徴とする。また。請求項３記載の焼入装置は、加熱
コイルが、ケース内に一体的に埋設されていることを特
徴とする。

【０００８】

【作用】まず、請求項１記載の丸鋸チップソー台金の焼
入方法によれば、ケース内に台金を略密閉した状態で収
納配置し、このケース内に不活性ガスを供給して、ケー
ス内をガス置換する。このガス置換された状態で、ケー
スの外側に配置した加熱コイルに高周波電流を供給し、
台金を誘導加熱して焼入する。焼入後、ケース内に冷却
液を供給して、不活性ガスを外部に排出すると共に、台
金を冷却する。台金は、ガス置換された状態で焼入され
るため、酸化スケール等の発生が防止され、高品質のチ
ップソー台金が得られる。

【０００９】また、請求項２記載の丸鋸チップソー台金
の焼入装置によれば、ケース内に略密閉した状態で台金
を収納配置し、ガス供給装置で、このケース内に不活性
ガスを供給しケース内をガス置換する。このガス置換さ
れた状態で、トランジスタインバータを作動させて、加
熱コイルに高周波電流を供給し、台金を誘導加熱して焼
入する。焼入後、冷却液供給装置により、ケース内に冷
却液を供給して、ケース内の不活性ガスを外部に排出す
ると共に、台金を冷却する。また、請求項３記載の焼入
装置は、加熱コイルをケースに一体的に埋設することに
より、加熱効率を向上させる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。図１は、本発明に係わる丸鋸チップソー
台金の焼入装置の概略構成図を示している。図１におい
て、焼入装置１は、基台２上に配置されたケース３と、
基台２の下部に配置された加熱コイル４と、加熱コイル
４に高周波電流を供給するトランジスタインバータ５
と、ケース３を基台２に対して上下動させるケース移動
装置６と、ケース３内にガスを供給するガス供給装置７
と、ケース３内に冷却液を供給する冷却液供給装置８
と、これらを制御する制御装置９とを有している。

【００１１】基台２は、例えばセラミックス等の非磁性
体で形成され、この基台２上に、下面が開口したケース
３が、ケース移動装置６によって接離可能に配設されて
いる。ケース３は、例えばセラミックス、耐熱性合成樹
脂等の非磁性体で形成されている。そして、この基台２
上に、外周部にチップ取付部１０ａを有する台金１０を
載置し、この基台２上にケース３を被嵌させることによ
り、台金２がケース３内に略密閉した状態で収納配置さ
れる。なお、ケース３の下端外周縁には、基台３とのシ
ール性を向上させるために、シール部材１５が配設され
ている。

【００１２】ケース３の上面には、ガス供給弁１１とガ
ス排出弁１２が、また、ケース３の側面には、冷却液供
給弁１３と冷却液排出弁１４がそれぞれ配設されてい
る。そして、ガス供給弁１１が、ガス供給装置７に接続
され、ガス排出弁１２は、ケース３内の圧力が所定値以
上になった時に、ケース３内のガスを外部に排出させ
る。また、冷却液供給弁１３及び冷却液排出弁１４は、
冷却液供給装置８に接続され、この弁１３、１４が制御
装置９の制御信号によって適宜開閉し、ケース３内に、
例えば冷却水等からなる冷却液を供給すると共に、ケー
ス３内の冷却液をケース３外に排出する。

【００１３】トランジスタインバータ５は、例えばパワ
ーＭＯＳＦＥＴ、ＩＧＢＴ、サイリスタ等の半導体素子
を有し、半導体素子のオン・オフによって、所定周波数
の高周波電流を発生する。このトランジスタインバータ
５に接続された加熱コイル４は、例えば銅パイプを渦巻
き状に巻回して構成され、その両端部に固定された図示
しないホースコネクタを介して、冷却水が循環供給され
る。また、制御装置９は、図示しないシーケンサー等を
有し、トランジスタインバータ５、ケース移動装置６、
ガス供給装置７、冷却液供給装置８等を制御する。

【００１４】次に、この焼入装置１による台金１０の焼
入方法について説明する。まず、制御装置９の制御信号
により、ケース移動装置６が作動して、ケース３を図１
の二点鎖線の位置まで上昇させる。この状態で、基台２
上に台金１０を載置してセットする。そして、制御装置
９の制御信号により、ケース移動装置６が作動して、ケ
ース３を下降させその下端を基台２に当接させる。この
時、下端外周のシール部材１５によって、ケース３がシ
ールされ、ケース３内が略密閉された状態になる。

【００１５】この状態で、制御装置９の制御信号によ
り、ガス供給装置７が作動して、例えばアルゴンガス、
窒素ガス等の不活性ガスを、ガス供給弁１１を介してケ
ース３内に所定時間供給する。このガスの供給により、
ケース３内の空気がガス排出弁１２を介して外部に排出
され、ケース３内がガス置換されて、無酸化状態にな
る。そして、制御装置９の制御信号により、トランジス
タインバータ５が作動して、加熱コイル４に、所定周波
数の高周波電流を供給する。

【００１６】加熱コイル４に供給された高周波電流によ
り、台金１０に渦電流が誘起されて誘導加熱され、所定
温度て焼入される。なお、この焼入時、高周波電流の供
給と同時に、例えば、トランジスタインバータ５に一体
的に設けた冷却水供給装置（図示せず）から、加熱コイ
ル４内に冷却水が循環供給され、加熱コイル４の発熱が
抑えられる。

【００１７】そして、台金１０が、無酸化状態で所定時
間焼入されると、加熱コイル４への高周波電流の供給を
停止させると共に、制御装置９の制御信号により、冷却
液供給装置８が作動して、例えば冷却液供給弁１３を開
くと共に、冷却液排出弁１４を閉じ、ケース３内に冷却
液を供給する。この冷却液の供給により、ケース３内に
冷却液が所定量充填されると共に、冷却液の供給と同時
にケース３内の圧力が上昇して、ケース３内のガスがガ
ス排出弁１２から排出される。

【００１８】この冷却液により焼入された台金１０が冷
却されると、制御装置９の制御信号により、冷却液供給
装置８を介して、冷却液供給弁１３が閉じると共に、冷
却液排出弁１４が開き、ケース３内の冷却液をケース３
外に排出する。そして、冷却液が排出された時点で、ケ
ース移動装置６を作動させて、ケース３を上昇させ、焼
入された台金１０を基台２上から取り出す。これによ
り、台金１０の焼入が終了する。

【００１９】なお、上記焼入方法においては、ケース３
内に冷却液が充満されるように冷却液供給弁１３と冷却
液排出弁１４を制御したが、例えば冷却液がケース３内
を流通する如く、弁１３、１４を制御しても良いし、冷
却液供給弁１３の代わりに、冷却液を所定の圧力でシャ
ワー状に噴出する冷却ジャケットを使用しても良い。ま
た、ケース３内にセットされる台金１０に、所定の圧力
を加えた状態で焼入するようにしても良い。

【００２０】このように、上記の焼入方法にあっては、
台金１０を略密閉状態のケース３内で、無酸化状態で焼
入することができるため、スケール等の発生が防止され
ると共に、焼入歪を最小に抑えることができる。これに
より、焼入品質が高い台金１０を得ることができる。ま
た、台金１０を基台２上に載置するだけで、制御装置９
によって、自動的に焼入することができるため、焼入作
業を簡単かつ容易に行うことができる。さらに、焼入の
ための大型電気炉等も必要がなくなり、使用する不活性
ガスの量も少なくし得ると共に、焼入装置１のメンテナ
ンスも容易になる。

【００２１】なお、上記実施例においては、加熱コイル
４を基台２の下部に配置したが、例えば図２に示すよう
に、ケース３内に加熱コイル４を一体的に埋設しても良
い。すなわち、下面が開口したケース３を、セラミック
スで形成すると共に、その周壁内部にコイル収納部１６
を形成する。そして、このコイル収納部１６に、銅パイ
プを略円筒形状に巻回した加熱コイル４を収納し、コイ
ル収納部１６内にガラス樹脂１７等を充填させる。そし
て、ケース３の上面をカバー３ａで覆う。このようにし
ても、上記実施例と同様の作用効果が得られる他に、ケ
ース３内に台金１０を複数枚セットした場合でも、各台
金１０を略均等に焼入でき、焼入効率が向上するという
作用効果が得られる。

【００２２】なお、この実施例の場合、ケース３の上面
に図１と同様の加熱コイル４を埋設しても良いし、基台
２の下部とケース３の両方に加熱コイル４を配設しても
良い。また、上記実施例における、不活性ガスの供給方
法、加熱された台金１０の冷却方法等も一例であって、
本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能
であることは言うまでもない。

【００２３】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明の丸鋸チッ
プソー台金の焼入方法及びその装置にあっては、無酸化
状態下での焼入が可能になり、スケールの発生等を防止
することができて、高品質の台金を得ることができる等
の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる丸鋸チップソー台金の焼入装置
の概略構成図

【図２】本発明に係わる焼入装置の他の実施例を示す概
略構成図

【符号の説明】

１ 焼入装置 ２ 基台 ３ ケース ４ 加熱コイル ５ トランジスタインバータ ６ ケース移動装置 ７ ガス供給装置 ８ 冷却液供給装置 ９ 制御装置 １０ 台金 １０ａ チップ取付部 １６ コイル収納部 １７ ガラス樹脂

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】外周部にチップ取付部を有する台金を略密
   閉した状態でケース内に収納配置し、該ケース内に不活
   性ガスを供給して、前記ケースの外側もしくはケース内
   に配置した加熱コイルに高周波電流を供給し、前記台金
   を焼入れすると共に、焼入後、前記ケース内に冷却液を
   供給して台金を冷却することを特徴とする、丸鋸チップ
   ソー台金の焼入方法。
2. 【請求項２】外周部にチップ取付部を有する台金を略密
   閉した状態で収納し得るケースと、該ケース内に不活性
   ガスを供給するガス供給装置と、前記ケース内に冷却液
   を供給する冷却液供給装置と、前記ケースの外側もしく
   はケース内に配置された加熱コイルと、該加熱コイルに
   高周波電流を供給するトランジスタインバータと、を具
   備することを特徴とする、丸鋸チップソー台金の焼入装
   置。
3. 【請求項３】前記加熱コイルが、前記ケース内に一体的
   に埋設されていることを特徴とする、請求項２記載の丸
   鋸チップソー台金の焼入装置。