JPH088342Y2 - 軸 受 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、例えば海水ポンプ、河川水ポンプをはじめ
とする各種のポンプや水車などの、異物の混入した流体
雰囲気中で使用される回転機器の回転軸を支承するのに
好適な軸受に関する。

従来の技術 第７図は従来用いられている軸受の縦断面図であり、
第８図は第７図のVIII−VIII線に沿う断面図である。

これらの図において、１は回転機器例えばポンプの主
軸であり、２はポンプのケーシングである。３は軸受ハ
ウジングで、この内面に軸受４がキー５によって固定さ
れている。そして、図示していないが、主軸１の下部に
はインペラが設けられていて、主軸１の回転によってこ
のインペラが回転し、水の吸入、吐出を行っているが、
軸受４は主軸１が安定に回転できるように支承するもの
である。

この軸受の材料としては、樹脂や焼結セラミックある
いは機械用構造鋼にセラミックをコーティングしたもの
などが用いられている。

考案が解決しようとする課題 ところで、異物の混入した水を扱っているようなポン
プでは、水Ｗや異物Ｓが主軸１と軸受４との間の隙間ｈ
に入り込むので、従来の樹脂を材料とした軸受は、材質
が軟質であるため、軸受４の摩耗を助長し、さらに樹脂
をえぐりとるようなことも起こるので、頻繁に軸受を交
換しなければならないという問題があった。

一方、焼結セラミックで形成した軸受は、高硬度なの
で耐摩耗性は良いが、脆性材料であるため、破損した
り、クラックが発生しやすいという問題があった。ま
た、焼結セラミックでは大径のものを作ることが困難で
あるという問題もあった。さらに、機械用構造鋼にセラ
ミックをコーティングしたものでは、セラミックは厚く
コーティングすると剥離しやすいので、通常は0.3mm以
下の膜厚にしかできず、強度は高いものの摩耗対策とし
ては不十分なものであった。

このように、軸受が摩耗すると回転軸を正常に支承す
ることができず、ポンプなど母機の運転に支障をきたす
という問題に発展するおそれがあった。

課題を解決するための手段 本考案は、このような従来技術の課題を解決するため
に、回転軸を支承する軸受において、軸受母材と、この
軸受母材の内面に溶接された表面に凹凸を有する超合金
層と、この超合金層の表面に溶射されてその表面が滑ら
かに形成されたセラミック層とで軸受を構成し、このセ
ラミック層で前記回転軸を支承するようにしたものであ
る。

作用 上記の手段によれば、回転軸を支承する面が高硬度の
セラミック溶射層で形成されるので、耐摩耗性が高く、
異物水中でも摩耗速度は遅くなる。仮に長時間かけてセ
ラミック溶射層が全部摩耗した場合でも、セラミック溶
射層の下層にも高硬度の超合金層が施工されており、超
合金層は耐摩耗性が高く肉厚も厚く施工できるので、摩
耗代を大きくしておくことにより、軸受寿命を延長する
ことができる。

実施例 以下本考案に係る軸受の一実施例を、第１図ないし第
６図を参照して詳細に説明する。

第１図は本考案に係る軸受の一実施例の縦断面図であ
り、第２図は第１図のII−II線に沿う断面図である。

これらの図において、主軸１、ポンプケーシング２、
軸受ハウジング３は第７図および第８図に示した従来の
ものと同じであり、同一部分には同一符号を付して示し
てある。そして、符号4aで示したものは軸受母材であ
り、これに超合金のステライト4bを被覆し、さらにその
上にセラミック材4cを被覆して、軸受４を構成してい
る。この軸受４は、軸受ハウジング３に圧入され、ポン
プケーシング２に取付けられている。

次に、このような構成の軸受４の製作過程を第３図お
よび第４図を参照して説明する。

軸受母材4aは例えばステンレス層などを材料としたも
ので、その表面に超合金のステライト4bを溶接して第１
層を被覆形成する。このとき、表面を滑らかにせず、凹
凸ができるようにする。そのためには、第３図に示すよ
うに表面をネジ山状８に加工したり、又は第４図に示す
ように櫛形６に加工したりする。

そして、このステライト溶接層4bの上にセラミック材
4cを溶射して第２層を被覆成形し、その表面を滑らかに
形成する。このセラミック材4cの表面すなわち軸受４の
内面が、主軸１を支承する摺動面となる。第１層のステ
ライト4bの表面にネジ山状８や櫛形６の凹凸を形成した
のは、ステライト4bに対するセラミック材4cの接着面積
を広くし、容易に剥離しないようにするためである。

さて、軸受４については上記のように２層の被覆を形
成して耐摩耗性の向上を図ったが、主軸１に対しても同
様の被覆を施すことにより、より耐摩耗性を向上するこ
とができる。

すなわち、第１図、第２図に示されているように、主
軸１の軸受４に支承される部分の近傍の周囲を削除し
て、軸スリーブ７を取付ける。この軸スリーブ７には、
軸受４と同様に表面に超合金のステライト7bを溶接して
第１層を被覆形成し、さらにその上にセラミック材7cを
溶射して第２層を被覆形成する。

本考案は、上記のような構成であるが、次にその作用
について、第５図の軸受硬度と摩耗速度の関係図を参照
して説明する。

一般に異物が介在した耐摩耗速度は、硬度が高くなる
につれて急速に減少し、ある硬度からは徐々に小さくな
る傾向を示す。本考案は、この特性に着目して各被覆層
を形成したもので、主軸と軸受との摺動面となる第２層
に硬度が高く、良好な耐摩耗性を有するセラミック材を
コーティングし、その下の第１層に軸受母材の硬度に比
べ十分耐摩耗性を有する硬度のステライトを配置してあ
るので、摩耗速度を極めて遅らせることができる。

すなわち、第６図に示すように、軸受の運転時間と摩
耗量との関係を見ても、第２層として溶射されたセラミ
ック材が摩耗するには長時間を要し、つぎに第１層のス
テライトの摩耗が始まることになるので、従来の樹脂製
の軸受に比べると摩耗速度は極端に遅く、また軸受母材
の摩耗速度に比べても非常に小さい摩耗速度となり、母
機を損傷させる異常摩耗にはなかなか進展しないことが
わかる。

考案の効果 以上詳述したように、本考案によれば、摩耗速度を極
めて遅らせ長寿命の軸受が提供され、異常摩耗によって
母機の運転を不能とするようなことが確実に予防でき
る。そして、超合金のステライト上へのセラミック溶射
は、焼結セラミックに比べて破損、クラックなどが発生
しにくく、施工法も比較的簡単で大径の軸受にも適用す
ることが可能である。

また、第１層のステライトは、溶接により肉盛されて
いるので軸受母材とは冶金的に結合されることとなり、
剥離のおそれが極めて少なく、セラミック溶射被膜に比
べて５ないし10倍の厚さに肉盛することが可能なので、
摩滅の恐れもない。

さらに、第１層の表面には凹凸を形成してその上に第
２層を溶射しているので、第１層と第２層との接着面積
が大きくなり、セラミック材の層間剪断強度が接着境界
面の剪断強度となり、剪断剥離が生ずる恐れもない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る軸受の一実施例を示した縦断面
図、第２図は第１図のII−II線に沿う断面図、第３図お
よび第４図は本考案において軸受母材上に形成された第
１層と第２層の接着状態を説明するために示した軸受の
部分的な断面図、第５図は本考案の作用を説明するため
に示した軸受硬度と摩耗速度の関係を示した特性図、第
６図は同じく運転時間と摩耗量の関係を示した特性図、
第７図は従来の軸受を示した縦断面図、第８図は第７図
のVIII−VIII線に沿う断面図である。 １……主軸、４……軸受、4a……軸受母材、4b……ステ
ライト、4c……セラミック材、6,8……凹凸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸を支承する軸受において、軸受母材
   と、この軸受母材の内面に溶接された表面に凹凸を有す
   る超合金層と、この超合金層の表面に溶射されてその表
   面が滑らかに形成されたセラミック層とから成り、この
   セラミック層で前記回転軸を支承するようにしたことを
   特徴とする軸受。