JPH0881461A - 新規エポキシ化合物及びその製造方法 - Google Patents

新規エポキシ化合物及びその製造方法

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JPH0881461A
JPH0881461A JP21704294A JP21704294A JPH0881461A JP H0881461 A JPH0881461 A JP H0881461A JP 21704294 A JP21704294 A JP 21704294A JP 21704294 A JP21704294 A JP 21704294A JP H0881461 A JPH0881461 A JP H0881461A
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epoxy compound
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】耐熱性、耐候性等の優れた硬化物性を与える新
規なエポキシ化合物とその製造方法を提供する。 【構成】下記一般式(1); (ただし、式中のRは水素原子又はメチル基を、nは1
又は2の整数を示す。)で表されるエポキシ化合物なら
びに当該エポキシ化合物を硬化して得られるエポキシ樹
脂硬化物。上記エポキシ化合物は、トリ(カルボキシア
ルキル)イソシアヌレートに、α−エピハロゲノヒドリ
ンを付加反応させて得られるエステルと、アルカリ性物
質とを反応させて製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性、耐候性等の優
れた硬化物性を与える新規なエポキシ化合物とその製造
方法並びにこのエポキシ化合物を硬化して得られるエポ
キシ樹脂硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】エポキシ樹脂は、接着性、電気絶縁性、
耐熱性等に優れていることから電気・電子材料、塗料、
接着剤、各種複合材料、土木建築材料等に使用されてい
る。これらエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジ
グリシジルエーテル型の樹脂が広く利用されているが、
多くの用途で求められている耐熱性を満足させるもので
はない。一方、耐熱性エポキシ樹脂としてはフェノール
ノボラックエポキシ樹脂やクレゾールノボラックエポキ
シ樹脂があるが、これらはビスフェノールAジグリシジ
ルエーテル型の樹脂と同様に、構造中にフェニルエーテ
ル結合を有し、その主骨格がベンゼン環を有する為に、
耐候性に問題がある。
【0003】一方、トリアジン環を主骨格とする構造を
持つエポキシ化合物、例えばトリグリシジルイソシアヌ
レートを硬化して得られる樹脂では、結晶性が高い為に
液状酸無水物と共に液状コンパウンド化した際に、トリ
グリシジルイソシアヌレートの結晶析出という問題があ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ビスフェノ
ールAジグリシジルエーテル型の樹脂、フェノールノボ
ラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹
脂、或いはトリグリシジルイソシアヌレートを硬化して
得られる硬化物では満足されない耐熱性や耐候性を与
え、更にトリグリシジルイソシアヌレートの様に室温で
結晶化せず、加熱時に低粘度である為に作業性に優れる
新規なエポキシ樹脂を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明は、下記一般式
(1);
【0006】
【化4】
【0007】(ただし、式中のRは水素原子又はメチル
基を、nは1又は2の整数を示す。)で表されるエポキ
シ化合物である。この一般式(1)の化合物は、トリ
(カルボキシアルキル)イソシアヌレートトリグリシジ
ルエステルである。一般式(1)の化合物では、1分子
中に存在する3個のRは、水素原子のみからなる場合、
メチル基のみからなる場合、或いは水素原子とメチル基
の組合せからなる場合を含み、また、1分子中に存在す
る3個のnは、1の整数のみからなる場合(メチレン
基)、2の整数のみからなる場合(エチレン基)、或い
は1と2の整数の組合せからなる場合を含むものである
が、nは1の整数のみからなる場合が好ましい。
【0008】本願発明の上記一般式(1)で表されるエ
ポキシ化合物は、下記a工程及びb工程; a、一般式(2);
【0009】
【化5】
【0010】(ただし、式中のmは1又は2の整数を示
す。)で示されるトリ(カルボキシアルキル)イソシア
ヌレートに、一般式(3);
【0011】
【化6】
【0012】(ただし、式中のR1 は水素原子又はメチ
ル基を、X1 はハロゲン原子を示す。)で示されるα−
エピハロゲノヒドリンを付加反応させエステルを得る工
程、及び、 b、a工程で得られたエステルとアルカリ性物質を反応
させる工程、より製造する事ができる。
【0013】上記a工程に使用する一般式(2)で示さ
れるトリ(カルボキシアルキル)イソシアヌレートの中
で、mが1であるトリ(カルボキシメチル)イソシアヌ
レートは、例えば米国特許第3230220号明細書に
記載されている公知の方法によって得られる。即ち、式
(4);
【0014】
【化7】
【0015】で示されるシアヌール酸3ナトリウムと、
クロルアセトニトリルとを、ジメチルホルムアミド等の
溶媒中で90℃、18時間で反応させ、脱塩化ナトリウ
ムを行って得られた式(5);
【0016】
【化8】
【0017】で示されるトリ(シアノメチル)イソシア
ヌレートを、塩酸等の酸触媒によって加水分解して得る
方法。また、上記の式(4)のシアヌール酸3ナトリウ
ムと、モノハロゲノ酢酸エステル〔X2 CH2 COOR
2 、但し、X2 はハロゲン原子を、R2 はアルキル基を
示す。〕とを、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホ
キシド等の溶媒中で80〜120℃、5〜20時間で反
応させ、脱塩化ナトリウムを行って得られた一般式
(6);
【0018】
【化9】
【0019】(但し、R2 はアルキル基を示す。)で示
されるトリ(メチルカルボン酸アルキル)イソシアヌレ
ートを、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化カリウム、
水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒によって加水分解し
て得る方法がある。また、上記a工程で使用する一般式
(2)で示されるトリ(カルボキシアルキル)イソシア
ヌレートの中で、mが2であるトリ(2−カルボキシエ
チル)イソシアヌレートは、市販の試薬として入手する
事も出来るが、シアヌール酸にアクリロニトリルをマイ
ケル付加反応させる事によって得られた式(7);
【0020】
【化10】
【0021】で示されるトリ(2−シアノエチル)イソ
シアヌレートを塩酸、硫酸等の酸触媒を用いて加水分解
する事によっても得られる。本発明のa工程に使用する
一般式(3)で示されるα−エピハロゲノヒドリンは、
例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−
メチルエピクロルヒドリン等が挙げられ、これらのα−
エピハロゲノヒドリンは単独又は混合物として使用する
事ができる。
【0022】一般式(2)で示されるトリ(カルボキシ
アルキル)イソシアヌレートはポリカルボン酸化合物で
あり、本発明のa工程は一般式(2)の化合物に、一般
式(3)で示されるα−エピハロゲノヒドリンを付加さ
せエステルを得る反応である。この反応は、一般式
(2)の化合物の1モルに対して、一般式(3)で示さ
れるα−エピハロゲノヒドリンを3〜30モル、好まし
くは15〜25モルの割合で用い、室温(約20℃)〜
160℃で、好ましくは80〜140℃の温度で、1〜
20時間反応させる事が出来る。また、触媒として、例
えばテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチ
ルアンモニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホ
スフォニウムブロマイド等の4級オニウム塩又はトリエ
チルアミン等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等
のホスフィン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ
る。これらの触媒は単独又は混合物として使用する事が
でき、その使用量は一般式(2)の化合物に対して、
0.001〜10重量%の割合で用いる事が出来る。
【0023】本発明のb工程は、a工程で得られたエス
テルとアルカリ性物質を反応させる工程であるが、上記
のアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化リチウムのアルカリ金属水酸化
物が挙げられ、これらを単独又は混合物として使用する
事ができる。特に水酸化ナトリウムを用いる事が好まし
く、水溶液の形態で使用する事が出来る。その使用量は
一般式(2)で示されるトリ(カルボキシアルキル)イ
ソシアヌレートの1モルに対して、上記のアルカリ性物
質を3.0〜6.0モル用いる事が出来る。このb工程
は、室温(約20℃)〜80℃の温度で、0.5〜5時
間反応させる事が好ましい。この時、大気圧下で反応さ
せる事も出来るが、水酸化ナトリウム水溶液の滴下によ
る水及び反応によって生じた水を、過剰に添加し未反応
物として存在するα−エピハロゲノヒドリンと共沸して
反応系外に除去する為に、反応容器内を20〜100m
mHgの減圧度に保つ事が好ましい。b工程では、副成
物として水と塩を生成するが、異常反応を抑制し収率良
くエポキシ基を得るには、反応系から逐次水を取り除き
ながら反応を行う必要がある。この様に、b工程におい
て、a工程で得られたエステルとアルカリ性物質を反応
させると、a工程で得られたエステルから脱ハロゲン化
水素が起こり、a工程で得られたエステルは分子内に3
個のエポキシ基を生じ、本願発明の一般式(1)の化合
物となる。
【0024】b工程で得られた本願発明の一般式(1)
の化合物は、副成物の塩や過剰量使用した場合のアルカ
リ金属水酸化物が共存している。これらの中から一般式
(1)の化合物を単離するには、硫酸水素ナトリウム、
リン酸2水素ナトリウム等の中和剤によってアルカリ金
属水酸化物を塩とした後、更に水洗し塩類を除去し、そ
の後、過剰量使用した事による未反応のα−エピハロゲ
ノヒドリンを留去して不純物を取り除く事が出来る。
【0025】本発明の一般式(1)で示されるエポキシ
化合物は硬化、即ち重合することによって耐熱性や耐候
性に優れたエポキシ樹脂硬化物とする事ができる。一般
式(1)のエポキシ化合物は、1分子中に存在する3個
のRは、水素原子のみからなる場合、メチル基のみから
なる場合、或いは水素原子とメチル基の組合せの場合が
あり、また、1分子中に存在する3個のnは、1の整数
のみからなる場合(メチレン基)、2の整数のみからな
る場合(エチレン基)、或いは1と2の整数の組合せの
場合がある。これらの一般式(1)のエポキシ化合物は
単独で硬化する事または2種以上組み合わせて硬化する
事により、本発明のエポキシ樹脂硬化物とする事が出来
る。また、本発明では所望によりビスフェノールAジグ
リシジルエーテル型樹脂、フェノールノボラックエポキ
シ樹脂等の他のエポキシ樹脂を併用し、硬化させる事に
より本発明のエポキシ樹脂硬化物とする事もできる。こ
の時に使用する硬化剤はジアミノジフェニルメタン、ジ
アミノジフェニルスルフォン等のアミン、メチルナジッ
ク酸無水物、メチルハイミック酸無水物、ヘキサハイド
ロフタル酸無水物、テトラハイドロフタル酸無水物等の
酸無水物、又はポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、
三弗化ホウ素とアミンの錯体、ジシアンジアミドが挙げ
られる。更に、上記エポキシ樹脂硬化物にはシリカ、ア
ルミナ、タルク、炭酸カルシウム等の充填剤、赤燐、リ
ン酸エステル等のリン系難燃剤、塩素化パラフィン等の
ハロゲン系難燃剤、第3級アミン、第4級アンモニウム
塩、第3級ホスフィン、第4級ホスフォニウム塩等の硬
化促進剤、或いはゴム粒子等の靭性改質剤を配合する事
が出来る。
【0026】
【作用】本発明の一般式(1)で示されるエポキシ化合
物は、1分子中に3個のエポキシ基を有し、更に分子中
に剛直なトリアジン骨格を有する事からその硬化物はガ
ラス転移温度(Tg)が高く、そのために熱変形する温
度が高くなり、エポキシ樹脂硬化物とした場合に高い耐
熱性を有する。そして、一般式(1)で示されるエポキ
シ化合物は主骨格がトリアジン環であるために結合エネ
ルギーが大きく、また、主骨格にベンゼン環を用いた場
合に比べ紫外線吸収の割合が低く、且つ結合エネルギー
が大きいので耐候性が良い。特に一般式(1)で示され
るエポキシ化合物の中でもnが1の化合物は、優れた耐
熱性を有する。
【0027】本発明の一般式(1)で示されるエポキシ
化合物の中で、nが2の化合物は放置状況により分解反
応を起こす可能性がある。これは本発明の化合物の製造
において、b工程で使用したアルカリ性物質が残留して
いる場合に、僅かではあるがイソシアヌール酸と一般式
(8);
【0028】
【化11】
【0029】(ただし、R3 は水素原子又はメチル基を
示す。)で示されるグリシジルアクリレートに分解する
ことがある。例えば、上記のnが2の化合物を、アルカ
リ性物質が残留した状態で約1か月間放置した後、1
−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルの測定によ
って、一般式(8)で示されるグリシジルアクリレート
のビニル基に由来する特性スペクトルは、テトラメチル
シラン(内部基準)からのδ値で6ppm付近にプロト
ン積分比を増加させていることから確認できる。このn
が2の化合物の分解反応を抑制するには、b工程で得ら
れた一般式(1)のエポキシ化合物を十分に中和剤で中
和した後水洗する事が必要であり、また、長期間の保存
を行わずに、速やかにエポキシ樹脂硬化物とする事が望
ましい。
【0030】本発明の一般式(1)で示されるエポキシ
化合物を重合する事によって得られるエポキシ樹脂硬化
物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型樹脂、
フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラ
ックエポキシ樹脂等の公知の樹脂に比べて室温で液状で
あり分子のアスペクト比が小さいので、加熱時の粘度が
低く作業性に優れている。
【0031】
【実施例】
実施例1 a工程:撹拌装置、温度計、及び連続滴下装置等の付い
た内容量1リットルのフラスコに、一般式(2)の化合
物でmが1で示されるトリ(カルボキシメチル)イソシ
アヌレート101g〔0.33モルに相当〕、α−エピ
クロルヒドリン625g〔6.7モルに相当〕、テトラ
メチルアンモニウムクロライド3gを加えて100℃で
10時間撹拌した。この間、減圧下にα−エピクロルヒ
ドリンと水の共沸蒸気を濃縮し、α−エピクロルヒドリ
ンだけを反応系に戻す様にした。
【0032】b工程:反応系内を減圧し、50mmHg
の圧力に保ち、反応容器内の液温を40〜50℃に保持
しながら50重量%濃度の苛性ソーダ水溶液120g
〔1.5モルに相当〕を3時間かけて滴下した。この
間、滴下した苛性ソーダ水溶液中の水及び反応によって
生成した水は、過剰に添加し未反応物として存在するα
−エピクロルヒドリンと共沸することによって系外に除
去した。
【0033】反応終了後、反応容器内の温度を室温まで
冷却し、10重量%のリン酸2水素ナトリウム水溶液に
より過剰に添加した苛性ソーダを中和し、次いで水洗し
て副生成物の塩類を除去した。そして、減圧下(10m
mHg)120℃でα−エピクロルヒドリンを留去して
エポキシ化合物133gを得た。収率は84.9%であ
った。このエポキシ化合物は、エポキシ当量が177g
/eqで、淡黄色の粘稠な液体であった。このエポキシ
化合物は、IR(赤外吸収)スペクトルをKBr法で測
定した結果、910cm-1にエポキシ基に由来する吸
収、1690cm -1にトリアジン環のカルボニル基に由
来する吸収、1760cm-1にエステルカルボニル基に
由来する吸収が観測された。このIRスペクトルを図1
に示した。これより得られたエポキシ化合物は、一般式
(1)の化合物においてRが水素原子、nが1のエポキ
シ化合物であるトリ(カルボキシメチル)イソシアヌレ
ートトリグリシジルエステル〔TCMICTG〕である
事を確認した。
【0034】実施例2 a工程:撹拌装置、温度計、及び連続滴下装置等の付い
た内容量1リットルのフラスコに、一般式(2)の化合
物でmが1で示されるトリ(カルボキシメチル)イソシ
アヌレート101g〔0.33モルに相当〕、β−メチ
ルエピクロルヒドリン711g〔6.7モルに相当〕、
テトラメチルアンモニウムクロライド3gを加えて11
0℃で10時間撹拌した。この間、減圧下にβ−メチル
エピクロルヒドリンと水の共沸蒸気を濃縮し、β−メチ
ルエピクロルヒドリンだけを反応系に戻す様にした。
【0035】b工程:反応系内を減圧し、50mmHg
の圧力に保ち、反応容器内の液温を40〜50℃に保持
しながら50重量%濃度の苛性ソーダ水溶液104g
〔1.3モルに相当〕を3時間かけて滴下した。この
間、滴下した苛性ソーダ水溶液中の水及び反応によって
生成した水は、過剰に添加し未反応物として存在するβ
−メチルエピクロルヒドリンと共沸することによって系
外に除去した。
【0036】反応終了後、反応容器内の温度を室温まで
冷却し、10重量%のリン酸2水素ナトリウム水溶液に
より過剰に添加した苛性ソーダを中和し、次いで水洗し
て副生成物の塩類を除去した。そして、減圧下(10m
mHg)120℃でβ−メチルエピクロルヒドリンを留
去してエポキシ化合物157gを得た。収率は92.0
%であった。このエポキシ化合物は、エポキシ当量が1
79g/eqで、淡黄色の粘稠な液体であった。このエ
ポキシ化合物は、IR(赤外吸収)スペクトルをKBr
法で測定した結果、910cm-1にエポキシ基に由来す
る吸収、1690cm-1にトリアジン環のカルボニル基
に由来する吸収、1760cm-1にエステルカルボニル
基に由来する吸収が観測された。このIRスペクトルを
図2に示した。また、重水素化クロロホルム溶媒中で内
部基準にテトラメチルシランを用いて60MHzの磁場
中で1 H−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルを
測定した結果、δ値が1.4ppmにβ−メチル基に由
来するピーク、2.7ppmにエポキシメチレン基に由
来するピーク、4.2ppmにエステルメチレン基に由
来するピーク、4.7ppmにカルボキシメチル基に由
来するピークが観測された。このNMRスペクトルを図
3に示した。以上より得られたエポキシ化合物は、一般
式(1)の化合物においてRがメチル基、nが1のエポ
キシ化合物であるトリ(カルボキシメチル)イソシアヌ
レートトリβ−メチルグリシジルエステル〔TCMIC
β−MeTG〕である事を確認した。
【0037】実施例3 a工程:撹拌装置、温度計、及び連続滴下装置等の付い
た内容量1リットルのフラスコに、一般式(2)の化合
物でmが2で示されるトリ(カルボキシエチル)イソシ
アヌレート115g〔0.33モルに相当〕、α−エピ
クロルヒドリン625g〔6.7モルに相当〕、テトラ
メチルアンモニウムクロライド3gを加えて100℃で
10時間撹拌した。この間、減圧下にα−エピクロルヒ
ドリンと水の共沸蒸気を濃縮し、α−エピクロルヒドリ
ンだけを反応系に戻す様にした。
【0038】b工程:反応系内を減圧し、50mmHg
の圧力に保ち、反応容器内の液温を40〜50℃に保持
しながら50重量%濃度の苛性ソーダ水溶液112g
〔1.4モルに相当〕を3時間かけて滴下した。この
間、滴下した苛性ソーダ水溶液中の水及び反応によって
生成した水は、過剰に添加し未反応物として存在するα
−エピクロルヒドリンと共沸することによって系外に除
去した。
【0039】反応終了後、反応容器内の温度を室温まで
冷却し、10重量%のリン酸2水素ナトリウム水溶液に
より過剰に添加した苛性ソーダを中和し、次いで水洗し
て副生成物の塩類を除去した。そして、減圧下(10m
mHg)120℃でα−エピクロルヒドリンを留去して
エポキシ化合物147gを得た。収率は86.0%であ
った。このエポキシ化合物は、エポキシ当量が184g
/eqで、淡黄色の粘稠な液体であった。このエポキシ
化合物は、重水素化クロロホルム溶媒中で内部基準にテ
トラメチルシランを用いて500MHzの磁場中で1
−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルを測定した
結果、δ値が2.6ppm及び2.9ppmにエポキシ
メチレン基に由来するピーク、3.2ppmにエポキシ
メチン基に由来するピーク、3.9ppm及び4.4p
pmにエステルメチレン基に由来するピーク、2.7p
pm及び4.2ppmにカルボキシエチル基に由来する
ピークが観測された。このNMRスペクトルを図4に示
した。これより得られたエポキシ化合物は、一般式
(1)の化合物においてRが水素原子、nが2のエポキ
シ化合物であるトリ(カルボキシエチル)イソシアヌレ
ートトリグリシジルエステル〔TCEICTG〕である
事を確認した。
【0040】実施例4 実施例1で得られた一般式(1)のRが水素原子、nが
1のエポキシ化合物であるトリ(カルボキシメチル)イ
ソシアヌレートトリグリシジルエステル〔略号としてT
CMICTG、エポキシ当量は177g/eq〕のエポ
キシ基1当量に対して、酸無水物である無水メチルハイ
ミック酸〔略号としてMHAC、分子量178〕を0.
9当量になる割合で混合した。この混合物を80℃で3
0分間、加熱しながら混合した後、硬化促進剤であるト
リス(ジメチルアミノメチル)フェノール〔商品名、D
MP−30〕を減圧下で脱気しながら混合してエポキシ
樹脂組成物を得た。その各成分の混合割合は、重量部で
表1に表示した。
【0041】この組成物をオーブンで100℃2時間加
熱後、更に180℃3時間加熱してエポキシ樹脂硬化物
を得た。このエポキシ樹脂硬化物の耐熱性は、ガラス転
移温度(Tg)の測定値から評価した。ガラス転移温度
(Tg)は、熱機械分析法(TMA)により、その硬化
物の熱膨張の変化から測定した。上記のガラス転移温度
(Tg)の値は表2に示した。
【0042】実施例5 実施例1で得られたエポキシ化合物の代わりに、実施例
2で得られた一般式(1)のRがメチル基、nが1のエ
ポキシ化合物であるトリ(カルボキシメチル)イソシア
ヌレートトリβ−メチルグリシジルエステル〔略号とし
てTCMICβ−MeTG、エポキシ当量は179g/
eq〕を用いた以外は、実施例4と同様に行った。
【0043】実施例6 実施例1で得られたエポキシ化合物の代わりに、実施例
3で得られた一般式(1)のRが水素原子、nが2のエ
ポキシ化合物であるトリ(カルボキシエチル)イソシア
ヌレートトリグリシジルエステル〔略号としてTCEI
CTG、エポキシ当量は184g/eq〕を用いた以外
は、実施例4と同様に行った。
【0044】比較例1 市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル型の樹脂
〔略号としてBPAG、エポキシ当量は186g/e
q、分子量380〕のエポキシ基1当量に対して、酸無
水物である無水メチルハイミック酸〔略号としてMHA
C、分子量178〕を0.9当量になる割合で混合し
た。この混合物を80℃で30分間、加熱しながら混合
した後、硬化促進剤であるトリス(ジメチルアミノメチ
ル)フェノール〔商品名、DMP−30〕を減圧下で脱
気しながら混合してエポキシ樹脂組成物を得た。その各
成分の混合割合は、重量部で表1に表示した。
【0045】この組成物をオーブンで100℃2時間加
熱後、更に180℃3時間加熱してエポキシ樹脂硬化物
を得た。このエポキシ樹脂硬化物の耐熱性は、ガラス転
移温度(Tg)の測定値から評価した。ガラス転移温度
(Tg)は、熱機械分析法(TMA)により、その硬化
物の熱膨張の変化から測定した。上記のガラス転移温度
(Tg)の値は表2に示した。
【0046】 表1 組成(重量部) 実施例4 実施例5 実施例6 比較例1 TCMICTG 100 TCMICβ−MeTG 100 TCEICTG 100 BPAG 100 MHAC 90.5 89.5 87.1 84.3 DMP−30 3 3 3 3 表2 実施例4 実施例5 実施例6 比較例1 Tg(℃) 195 172 160 156 実施例7 実施例1で得られた一般式(1)のRが水素原子、nが
1のエポキシ化合物であるトリ(カルボキシメチル)イ
ソシアヌレートトリグリシジルエステル〔略号としてT
CMICTGとする〕、実施例2で得られた一般式
(1)のRがメチル基、nが1のエポキシ化合物である
トリ(カルボキシメチル)イソシアヌレートトリβ−メ
チルグリシジルエステル〔略号としてTCMICβ−M
eTGとする〕、及び実施例3で得られた一般式(1)
のRが水素原子、nが2のエポキシ化合物であるトリ
(カルボキシエチル)イソシアヌレートトリグリシジル
エステル〔略号としてTCEICTGとする〕の各エポ
キシ化合物の紫外吸収(UV)スペクトルを測定した。
各エポキシ化合物とも3ppm濃度で測定を行った。そ
の測定結果を図5に示した。図5中のスペクトルで左側
の縦軸の上から順に、TCEICTG、TCMICT
G、TCMICβ−MeTGである。
【0047】比較例2 市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル型の樹脂
〔略号としてBPAG、エポキシ当量は186g/e
q、分子量380〕の紫外吸収(UV)スペクトルを測
定した。実施例7と同様に3ppm濃度で測定を行っ
た。その測定結果を図6に示した。
【0048】表2から本願発明の一般式(1)で示され
るエポキシ化合物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化
物は、従来から用いられているビスフェノールAジグリ
シジルエーテル型の樹脂を硬化して得られるエポキシ樹
脂硬化物に比べ、ガラス転移温度が高い為に、高い耐熱
性を有し、熱劣化を起こし難い。特に、実施例1及び実
施例2で得られたエポキシ化合物を用いる場合に高い耐
熱性が得られる。
【0049】また、図5より実施例1〜実施例3で得ら
れた本願発明の一般式(1)で示されるエポキシ化合物
は、太陽光線中に含まれる紫外線(300nm付近の波
長)の吸収がほとんどないので、エポキシ樹脂硬化物と
した場合に耐候性が良く、長期間露光させても劣化がな
い。一方、図6よりビスフェノールAジグリシジルエー
テル型の樹脂では、300nm付近の波長に僅かではあ
るが吸収があるので長期間露光により、光劣化が起こ
る。また、波長が300nmより短い紫外部では、両者
の吸収の差は更に大きくなる。上記の紫外光を利用する
電子工業分野には、本願発明のエポキシ化合物は、紫外
線劣化が少ないので好ましく用いる事が出来る。
【0050】
【発明の効果】本発明の一般式(1)で示されるエポキ
シ化合物は、1分子中に3個のエポキシ基を有し、更に
分子中に剛直なトリアジン骨格を有する事からガラス転
移温度(Tg)が高く、そのために熱変形する温度が高
くなり、エポキシ樹脂硬化物とした場合に高い耐熱性を
有する。しかも、主骨格がトリアジン環であるために結
合エネルギーが大きく、紫外線吸収の割合が低いので耐
候性が良い。特に一般式(1)でnが1の化合物は安定
であり、しかも極めて高い耐熱性を示す。本発明におい
て、一般式(1)のエポキシ化合物は、一般式(2)の
トリ(カルボキシアルキル)イソシアヌレートに、一般
式(3)のα−エピハロゲノヒドリンを付加反応させて
得られるエステルを、アルカリ性物質と反応させて簡単
な工程により収率よく得る事が出来る。一般式(1)の
エポキシ化合物を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化
物は、耐熱性、耐候性が良好な為に、電気・電子材料、
塗料、接着剤、各種複合材料、土木建築材料等の分野に
利用する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたエポキシ化合物のIR(赤
外吸収)スペクトルを示す。
【図2】実施例2で得られたエポキシ化合物のIR(赤
外吸収)スペクトルを示す。
【図3】実施例2で得られたエポキシ化合物の1 H−N
MR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルを示す。
【図4】実施例3で得られたエポキシ化合物の1 H−N
MR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルを示す。
【図5】実施例1、実施例2及び実施例3で得られたエ
ポキシ化合物の紫外吸収(UV)スペクトルを示す。
【図6】ビスフェノールAジグリシジルエーテル型の樹
脂の紫外吸収(UV)スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 毛呂 健夫 東京都千代田区神田錦町3丁目7番地1 日産化学工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1); 【化1】 (ただし、式中のRは水素原子又はメチル基を、nは1
    又は2の整数を示す。)で表されるエポキシ化合物。
  2. 【請求項2】 一般式(1)において、nが1の整数で
    表される請求項1に記載のエポキシ化合物。
  3. 【請求項3】 下記a工程及びb工程; a、一般式(2); 【化2】 (ただし、式中のmは1又は2の整数を示す。)で示さ
    れるトリ(カルボキシアルキル)イソシアヌレートに、
    一般式(3); 【化3】 (ただし、式中のR1 は水素原子又はメチル基を、X1
    はハロゲン原子を示す。)で示されるα−エピハロゲノ
    ヒドリンを付加反応させエステルを得る工程、及び b、a工程で得られたエステルとアルカリ性物質を反応
    させる工程、より成る請求項1又は請求項2に記載のエ
    ポキシ化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は請求項2に記載のエポキシ
    化合物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物。
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