JPH0867950A - 強度及び靭性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

強度及び靭性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法

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JPH0867950A
JPH0867950A JP22574394A JP22574394A JPH0867950A JP H0867950 A JPH0867950 A JP H0867950A JP 22574394 A JP22574394 A JP 22574394A JP 22574394 A JP22574394 A JP 22574394A JP H0867950 A JPH0867950 A JP H0867950A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 炭化物析出処理後、炭化物が完全には溶解し
ない温度から焼入れすることにより、靭性を改善したマ
ルテンサイト系ステンレス鋼を得る。 【構成】 このマルテンサイト系ステンレス鋼は、C:
0.05〜1.5%,Si:2%以下,Mn:2%以
下,Cr:10〜20%,Ni:0〜7%の組成をも
ち、焼入れ処理前の状態ではマトリックス中に粒径2μ
m以下の微細炭化物が1〜30体積%の割合で均一分散
しており、焼入れ後に旧オーステナイト粒径が30μm
以下の微細なマルテンサイト組織を呈する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強度及び靭性に優れ、
建築資材,車両,船舶,発電設備等の構造材料や機械部
品として使用されるマルテンサイト系ステンレス鋼及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】SUS420に代表されるマルテンサイ
ト系ステンレス鋼は、フェライト系やオーステナイト系
に比較してC含有量が多く、製造性や加工性に劣ってい
る。そのため、一般的には次のプロセスで製造されてい
る。可能な限り高温のオーステナイト単相域に鋼材を加
熱し、熱間圧延する。高温加熱は、鋼中のCが粗大炭化
物として存在することに起因した熱延性の低下を防止す
る上で有効である。また、多量の固溶Cを含むオーステ
ナイトが急冷によってマルテンサイト変態するとき、焼
き割れが入り易い。そのため、熱延後の鋼材を徐冷する
ことにより、焼き割れを防止する。他方、冷間圧延や成
形品としての加工工程では、圧延又は加工に先立つ焼き
なましにより鋼材を軟質化し、圧延性又は加工性を確保
している。最終製品として必要な強度は、圧延又は加工
後の焼入れ・焼戻し処理によって確保している。この種
の熱処理は、JIS G4303,JIS G430
4,JIS G4305等で規定されており、製造性及
び製品特性の両立が図られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】マルテンサイト系ステ
ンレス鋼は、フェライト生成元素及びオーステナイト生
成元素とのバランス如何によってはδフェライトが生成
し、鋼材の靭性を低下させる。また、Ms点が下がり、
強度低下の原因であるオーステナイトが室温に冷却した
後でも残留することがある。特に、強度の向上を狙って
多量のCを含ませた系では、Ms点の下降に伴って焼入
れ時にオーステナイト相が残存し易く、マルテンサイト
に変態した場合でもCの固溶量が多いことに起因して焼
入れ時に焼き割れが発生し易い。焼き割れは、鋼中のC
がクロム炭化物として析出するように徐冷することによ
り防止できる。また、Ms点を上昇させたり、製造性を
確保するための焼きなまし処理等が採用されている。
【0004】焼きなまし等の熱処理で析出した炭化物
は、粗大で且つ不均一に分散し、最終製品の特性を不安
定にする。この析出した炭化物を圧延・加工後の溶体化
・焼入れにより再固溶させるとき、鋼材の特性が安定化
する。また、焼戻し処理によって、材料特性を調整する
場合もある。焼入れ・焼戻しにより硬さや材料強度は向
上するものの、高温溶体化時にオーステナイト粒が激し
く成長し、最終製品の靭性等が劣化する。その結果、構
造物等として必ずしも満足できる材料特性が得られてい
ない。焼きなまし後のマルテンサイト系ステンレス鋼
は、軟質化されているため圧延性・加工性が確保され
る。しかし、そのままでは硬さや強度が不足し、用途に
適した材料特性が得られない。そのため、強度,製造
性,靭性等を改善すべく従来から種々の熱処理が提案さ
れているが、相反する特性を両立させることは困難であ
る。
【0005】たとえば、鋼材を強化し且つ靭性等を改善
する方法として結晶粒の微細化,熱間圧延による加工硬
化,副元素添加による固溶強化や析出強化等が知られて
いるが、マルテンサイト系のように温度によって組織変
化が生じ、しかも時効硬化を図る元素が添加されていな
い鋼種では、これらの手段は採用されておらず、単にC
による固溶強化のみが用いられている。その結果、前述
したCに起因する弊害が避けられない。本発明は、この
ような問題を解消すべく案出されたものであり、溶体化
処理に先立って微細な炭化物を均一に分散させ、析出炭
化物が完全に固溶しない温度で焼入れすることにより、
オーステナイト粒の成長を抑制し、焼入れ後に生じるマ
ルテンサイト相の強度及び靭性を向上させることを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のマルテンサイト
系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C含有量
が0.05〜1.5重量%,Si含有量が2重量%以
下,Mn含有量が2重量%以下及びCr含有量が10〜
20重量%の組成をもち、焼入れ処理前の状態ではマト
リックス中に粒径2μm以下の微細炭化物が1〜30体
積%の割合で均一分散しており、焼入れ後に旧オーステ
ナイト粒径が30μm以下の微細な組織を呈することを
特徴とする。本発明が対象とする鋼材は、靭性を向上さ
せるため7重量%のNiを含む場合もある。この鋼材
は、Ac1 点以下の温度に加熱して微細な炭化物を均一
に析出させた後、Ac3 点以上で且つ炭化物が完全溶解
する温度以下に加熱し、次いでAc1点以下の温度に急
冷することにより製造される。炭化物析出処理として
は、仕上げ温度500〜900℃で熱間圧延した後、該
温度範囲に250秒以上保持することもできる。焼入れ
は、Ac3 ≦[T]≦6100/[4.32−0.01
86×(Cr%+Ni%)−log C%]−273を満足
する温度Tで行うことが好ましい。
【0007】
【作用】本発明者等は、各種強化方法のうち結晶粒の微
細化に着目して種々調査・研究した結果、焼入れ処理前
における析出炭化物の分散状態が焼入れ・焼戻し後の材
料特性に大きく影響していることを見いだした。析出炭
化物の分散状態は、適正な成分範囲と処理条件との組合
せで調整され、従来の鋼材にはみられない優れた材料特
性が得られる。一般的な鋼材では、焼鈍温度の上昇に応
じて結晶粒径が大きくなる。しかし、本発明が対象とす
るマルテンサイト系ステンレス鋼では、焼入れ処理に先
立って炭化物の固溶・析出状態を制御することで、焼入
れのための加熱時の金属組織(オーステナイト粒径)、
ひいては焼入れ後の金属組織(旧オーステナイト粒径)
が制御可能であることを本発明者等は見い出した。鋼中
のCは、焼きなまし等の熱処理後にはクロム炭化物とし
て析出している。この炭化物が微細に且つ均一に分布し
ていると、焼入れ時に結晶粒の粗大化が抑制される。他
方、不均一に或いは粗大化して分布した炭化物は、結晶
粒粗大化を抑制する作用を呈さない。本発明では、この
炭化物の析出形態を制御することにより旧オーステナイ
トの粒径を小さくし、靭性の向上を図っている。
【0008】炭化物の析出形態は、焼入れに先立つ炭化
物析出処理の温度によって調整できる。C固溶限は、フ
ェライト相で非常に小さく、オーステナイト相で大き
い。そこで、500℃〜Ac1 点の温度に鋼材を加熱す
ると、鋼中のCが微細な炭化物となって均一に析出す
る。このときの加熱温度が500℃に達しないと、炭化
物の析出速度が遅く、必要とする析出状態を得るために
長時間がかかり、実用的でなくなる。逆にAc1 点を超
える加熱温度では、オーステナイト相にCが固溶し、マ
トリックスがフェライト+オーステナイトの二相にな
る。炭化物が析出した鋼材は、焼きなまし処理後とほぼ
同様な機械的性質を呈し、圧延や加工によってもマルテ
ンサイトの生成がなく、軟質であることから、圧延性及
び加工性に優れている。この特性を利用し、必要に応じ
て適宜の冷間圧延や成形加工を、炭化物析出処理後の鋼
材に施すことができる。
【0009】炭化物が析出している鋼材は、Ac3 点以
上で且つ炭化物が完全には溶解しない温度域に加熱され
る。この温度域はオーステナイト単相域であり、炭化物
がオーステナイト相に若干固溶する。しかし、炭化物
は、完全に固溶することなく、微細な析出物として残存
し、オーステナイト粒の成長を抑制する。前述した温度
域における昇温速度,保持時間,降温速度等の条件を制
御することにより、必要とする微細炭化物の均一分散が
図られる。最終的に得られるマルテンサイトを強度及び
靭性の改善に有効な微細結晶粒とする上で、析出炭化物
は、粒径2μm以下及び析出量1〜30体積%に調整す
ることが必要である。炭化物の粒径及び析出量は、前述
した温度域における昇温速度,保持時間,降温速度等の
条件によって制御される。粒径が2μmを超える炭化
物、或いは1体積%に達しない析出量は、マルテンサイ
ト組織の微細化に有効でない。逆に30体積%を超える
析出量は、結晶粒の微細化には有効であるが、鋼の靭性
に悪影響を及ぼす。なお、本発明に従った析出処理を施
したとき、たとえば0.3%C鋼で6体積%のM23
6 ,1.0%C鋼で20体積%のM236が析出するこ
とを確認している。
【0010】焼入れ処理時の加熱温度がAc3 点に達し
ないと、鋼材がフェライト+オーステナイトの二相域に
なっており、オーステナイトの体積率が小さいために却
ってオーステナイト相中のC量を増加させる。そのた
め、オーステナイト相が低温でも安定化し、焼入れ後の
残留オーステナイト量が増加する。逆に炭化物が完全溶
解する高温加熱では、炭化物の消失に伴ってオーステナ
イト粒が粗大化する。炭化物が完全溶解する温度は、6
100/[4.32−0.0186×(Cr%+Ni
%)−log C%]−273として表される。この式は、
後述する実施例で説明しているように、本発明者等によ
る調査・研究の結果として求められたものである。Ac
3 点以上で且つ炭化物が完全には溶解しない温度域での
加熱により、オーステナイト粒の析出サイトとして有効
な微細炭化物が均一に分散した組織が得られる。均一に
析出した微細炭化物の界面からオーステナイト相が析出
するため、多数のオーステナイト粒が生成する。また、
炭化物が粒成長を抑制するピンニング作用を呈するの
で、生成したオーステナイト粒は、30μm以下、好ま
しくは15〜25μmの微細粒径を維持し、粗大結晶粒
に成長しない。この点、従来の鋼材では、45μm以上
の大きな結晶粒径となっている。
【0011】このようにして多数の微細オーステナイト
粒が生成した鋼材を焼入れすると、マルテンサイト変態
が生じる。このとき、生成したマルテンサイト相が粒径
30μm以下の微細な旧オーステナイト粒に由来するこ
とから、結晶粒が微細化された金属組織をもつ鋼材とな
る。得られた鋼材は、衝撃靭性,低温靭性等の特性が著
しく向上する。結晶粒の微細化により靭性等が向上する
理由は不明であるが、衝撃試験後の破面を観察した結果
から粒界破壊が抑制されていることに起因するものと推
察される。しかも、析出炭化物が分散している状態から
焼入れされているので、旧オーステナイト粒の固溶C量
が低く、強度低下の原因となる残留オーステナイトや焼
き割れが抑制される。
【0012】焼入れ処理に先立つ熱間圧延の条件を制御
することにより、微細なクロム炭化物を均一に析出させ
ることもできる。すなわち、熱延仕上げ温度を500〜
900℃とし、この温度域に250秒以上保持すると
き、オーステナイト中に導入された歪みにより、クロム
炭化物が微細に且つ均一に析出する。この熱延材をAc
3 点以上で且つ炭化物が完全溶解する温度以下に加熱し
て焼入れすると、同様に旧オーステナイト粒径が30μ
m以下となり、良好な特性が得られると共にマルテンサ
イト変態時の固溶C量が低下し、焼き割れが防止され
る。以上の炭化物析出処理及び焼入れ処理を施した場合
でも、C量の増加に従って靭性が低下することが予想さ
れる。そこで、更に靭性を改善するために成分面から種
々検討した結果、C量が高い系においてはNiの添加が
非常に有効であることが判った。すなわち、炭化物析出
処理及び焼入れ処理にNi添加を組み合わせるとき、従
来に比較して著しく優れた強度及び低温靭性を兼ね備え
る鋼材が得られる。
【0013】以下、本発明で使用する鋼材の成分や熱処
理条件等について説明する。 C:0.05〜1.5重量% クロム系炭化物の生成により結晶粒を微細化させると共
に、オーステナイト中で固溶することにより室温で得ら
れるマルテンサイトの引張り強さを上昇させる。このよ
うな効果は、0.05重量%以上のC含有量で顕著にな
る。しかし、1.5重量%を超える多量のC含有量は、
製造性を悪化させるばかりでなく、Ms点を下げ、残留
オーステナイト量が増加する原因となる。 Si:2重量%以下 耐食性や耐酸化性の改善に有効な合金元素であるが、2
重量%を超える過剰なSi含有量は製造性を低下させ
る。 Mn:2重量%以下 製造性や溶接性の改善に有効である。しかし、2重量%
を超える多量のMn含有量は、耐食性や耐酸化性を劣化
させる。
【0014】Cr:10〜20重量% クロム炭化物を生成し、結晶粒を微細化する作用を呈す
る合金元素であり、耐食性を維持するためにも10重量
%以上のCrが必要である。しかし、20重量%を超え
る多量のCrが含まれると、製造性が悪化する。また、
多量のCrは、Ms点を下げ、残留オーステナイト量を
増加させる。 Ni:0〜7重量% 靭性を改善するために、必要に応じて添加される合金元
素である。また、オーステナイト相の固溶C量を増大さ
せる作用も呈する。しかし、7重量%を超える多量のN
iが含まれると、Ms点が下がり、残留オーステナイト
量が多くなる欠点が生じる。 本発明鋼は、更に結晶粒微細化のために0.5重量%以
下のTi,Nb,V,耐食性改善のために2.0重量%
以下のMo,3.0重量%以下のCu、耐酸化性改善の
ために0.5重量%以下のAl,熱間加工性改善のため
に0.1重量%以下のV,0.1重量%以下の希土類元
素(REM)等を含むこともできる。
【0015】
【実施例】
実施例1:成分を表1に示したステンレス鋼を溶製し、
表2に示す条件下で熱間圧延,炭化物析出処理及び焼入
れ焼戻しを施した。各ステンレス鋼について、旧オース
テナイト粒,焼戻し後の硬さ,炭化物の析出量等を調査
した。調査結果を示す表2にみられるように、本発明に
従った鋼材は、何れも旧オーステナイト粒が30μm以
下になっていた。そして、従来鋼に比較して結晶粒径が
小さく、同じ硬さにおいても低温靭性に優れていること
が確認された。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】A1〜A3及びA5の鋼種について、析出
炭化物が完全溶解する温度及びそのときのオーステナイ
ト粒径を調査した。オーステナイト粒は、図1に示すよ
うに加熱温度が高くなるに従って大きく成長したが、成
長開始温度はC含有量の増加に応じて高くなっていた。
何れのC含有量でも、Cが完全溶解した後でオーステナ
イト粒の急激な成長がみられた。したがって、Ac3
〜Cの完全溶解温度の温度域で加熱するとき、オーステ
ナイト粒を30μmを超えて大きく成長させることなく
溶体化できることが確認された。Cが完全溶解する温度
c をC含有量が異なる種々の鋼種について調査したと
ころ、温度Tc とC含有量との間に図2に示す関係が成
立していた。C含有量が増加するに従い温度Tc が上昇
し、その上昇率はC含有量が多くなるほど小さくなるこ
とが判った。また、Ni含有量が増加するに従って温度
c は上昇するが、その上昇率はCと異なりNi含有量
に依らずほぼ一定であることが判った。
【0019】Cが完全溶解する温度Tc は、Tc =61
00/[4.32−0.0186×(Cr%+Ni%)
−log C%]−273として整理される。そこで、炭化
物析出処理された鋼種をAc3 〜Tc の間の温度で焼入
れ処理するとき、オーステナイト粒の成長を30μm以
下に抑制できることが判る。また、鋼中に析出していた
炭化物は、オーステナイト相に若干溶解するが、粒径2
μm以下の微細な析出物として均一に分散していた。A
3鋼を炭化物析出処理した後、種々の温度から焼入れ
し、旧オーステナイト粒を測定した。測定結果を、炭化
物析出処理を施さない場合と比較して図3に示す。図3
から明らかなように、旧オーステナイト粒は、炭化物析
出処理によって著しく小さくなっている。
【0020】A3鋼を800℃に30分間保持して炭化
物を析出させ、900℃から焼き入れた。そして、硬さ
がHV235となるように焼き戻した。比較のため、炭
化物析出処理を施していない同じA3鋼を1150℃か
ら焼き入れた後、同じ硬さが得られるように焼き戻し
た。そして、炭化物析出処理の有無がシャルピー衝撃靭
性に与える影響を調査した。調査結果を示す図4にみら
れるように、炭化物析出処理を施したものは、析出処理
しないものに比較し衝撃遷移温度が低下しており、衝撃
靭性が著しく改善されていた。
【0021】実施例2:SUS410相当の鋼に種々の
含有量でNiを添加した表1のA1,A6,A8,A9
の鋼種について、600〜800℃に60分間保持する
炭化物析出処理後に、900〜950℃で焼入れし、硬
さがHV235となるように600〜700℃で焼き戻
した。比較のため、同じ鋼材に、炭化物析出処理するこ
となく焼入れ・焼戻しを施した。焼戻し後の鋼材につい
て、シャルピー衝撃靭性を調査した。調査結果を比較し
て図5に示すように、何れの場合もNi含有量の増加に
従って衝撃遷移温度が低くなっている。なかでも、炭化
物析出処理したものでは、少ないNi含有量でも衝撃靭
性が著しく改善されていた。このことから、炭化物析出
処理とNi添加とを組み合わせるとき、低温靭性が大幅
に改善されることが判る。
【0022】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のマルテ
ンサイト系ステンレス鋼は、旧オーステナイト粒径が3
0μm以下の微細組織となっていることから、衝撃靭性
に優れ且つ十分な強度をもっている。微細化された結晶
組織は、炭化物析出処理をした後、析出炭化物が完全に
は溶解しない温度から焼入れすることによって得られ
る。このとき、旧オーステナイトに含まれているC量が
少ないので、Ms点が下がらず、焼き割れや強度不足の
原因となる残留オーステナイトが抑制される。炭化物析
出処理は、Ni添加と組み合わせると、靭性向上に一層
顕著な効果を発揮する。このようにして得られた鋼材
は、その優れた材質を活かし、建築,車両,船舶,発電
機器等の広範な分野における機械部品,構造材等として
使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 オーステナイト粒径及びCの溶解に及ぼす加
熱温度の影響
【図2】 C含有量とCの完全溶解温度との関係
【図3】 焼入れ温度と旧オーステナイト粒径との関係
【図4】 炭化物析出処理の有無が衝撃靭性に与える影
【図5】 炭化物析出処理の有無及びNi含有量が衝撃
靭性に与える影響

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C含有量が0.05〜1.5重量%,S
    i含有量が2重量%以下,Mn含有量が2重量%以下及
    びCr含有量が10〜20重量%である組成をもち、焼
    入れ処理前の状態ではマトリックス中に粒径2μm以下
    の微細炭化物が1〜30体積%の割合で均一分散してお
    り、焼入れ後に旧オーステナイト粒径が30μm以下の
    微細なマルテンサイト組織を呈する強度及び靭性に優れ
    たマルテンサイト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1の組成が更に7重量%以下のN
    iを含む強度及び靭性に優れたマルテンサイト系ステン
    レス鋼。
  3. 【請求項3】 C含有量が0.05〜1.5重量%,S
    i含有量が2重量%以下,Mn含有量が2重量%以下及
    びCr含有量が10〜20重量%である組成をもつ鋼材
    を、Ac1 点以下の温度に加熱して微細な炭化物を均一
    に析出させた後、Ac3 点以上で且つ炭化物が完全溶解
    する温度以下に加熱し、次いでAc1点以下の温度に急
    冷する強度及び靭性に優れたマルテンサイト系ステンレ
    ス鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の合金成分に加えて更に7
    重量%以下のNiを含む鋼材を使用する強度及び靭性に
    優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 仕上げ温度500〜900℃で熱間圧延
    した後、該温度範囲に250秒以上保持することにより
    請求項3記載の炭化物析出処理を施す強度及び靭性に優
    れたマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 Ac3 ≦[T]≦6100/[4.32
    −0.0186×(Cr%+Ni%)−log C%]−2
    73を満足する温度Tで焼入れする請求項3記載のマル
    テンサイト系ステンレス鋼の製造方法。
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