JPH085700B2 - 無機質板の押出成形方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は無機質板の押出成形方法に関する。

〔従来の技術〕

従来、セメント等を主原料として無機質壁板を押出成
形することが広く行なわれており、石綿に代わる補強繊
維としてパルプ繊維を添加した繊維補強セメント製品を
上記製法により成形することが広く行なわれている。

〔従来技術の問題点〕

ところで、補強繊維としてのパルプ繊維には予め水分
を含浸せしめたウエットパルプと乾燥状態とされたドラ
イブパルプとが有るが、前者のウエットパルプはパルプ
中に含まれる水分量が一定せず、押出成形スラリーとす
るときの水分管理が難しく、水分の変動により押出成形
時の流動性が変化し、品質管理が困難となる問題が有
る。一方、後者のドライパルプは開繊した際、表面が疎
水性を帯び水とのなじみが悪くなりセメントマトリック
スとの接着性も低下するので添加量に見合った充分な強
度が得られなくなると言った問題が有る。もっとも、ド
ライパルプについての上記問題点を解消するため、水と
の親和性を高分子吸収剤の添加により発現させ、この改
良パルプ繊維を他のセメント等の混合材量と共に加水混
合することも考えられ、さらに具体的には近年特に需要
が増大し大量に生産される紙おむつなど高分子吸収剤を
含むパルプを構成原料とする物品の切断屑の有効利用を
併せて図ることが考えられる。

しかし、これら高分子吸収剤を含むパルプ繊維は親水
性はきわめて良好であるものの吸水作用によって高分子
吸収剤が膨潤し、他の原料との混合が不均一となると言
った欠点が生じ、充分な強度を発現させることは出来な
い。

従って、上記した高分子吸収剤を含むパルプの使用は
適当でなく、結果として紙おむつ等の生産時大量に発生
する切断屑に含まれるパルプ繊維の有効再利用を図るこ
とも出来ないと言った問題が有った。

〔発明が解決する問題点〕

この発明は上記問題点に鑑み、セメントを主原料とす
る配合物中に補強繊維として添加するパルプ繊維の水添
加混合時の親水性を改良し、スラリーとなした時の水分
管理を容易にし、均一な強度の繊維補強セメント板を製
造可能とすると共に、厖大な量の産業廃棄物である紙お
むつ等の切断屑の有効利用をも図ることを目的としてな
されたものである。

〔問題点を解決する技術〕

即ち、この発明の無機質板の押出成形方法はドライパ
ルプと高分子吸水剤とを事前混合して成るパルプとセメ
ント等の水硬性高アルカリ石灰質原料とシリカ質原料と
メチルセルロース等の押出助剤とを乾燥状態のまま混合
し、次いで必要量の水を加えて混練してスラリーとな
し、押出成形により板状体を成形後一次養生を行ない、
硬化後オートクレーブ養生を行なうことを特徴とするも
のである。

〔作用〕

この発明において、ドライパルプと高分子吸水剤とを
事前混合して成るパルプ繊維とは、パルプ繊維表面に高
分子吸水剤を付着させたものを言い、紙おむつの構成原
料であるパルプ等を使用することも出来る。

高分子吸水剤の付着したパルプは例えばドライパルプ
であっても水の付着性が良く、他の原料とのなじみが良
くなる。

しかし、既述のようにこれらパルプを他の原料と共に
加水混合した場合、高分子吸水剤の膨潤が生じ、均一混
合が阻害される。

そこで、これらパルプとセメント、シリカ分、必要に
応じ他の補強繊維、骨材、軽量骨材等を乾燥状態のまま
均一に混合する。

このとき、全く水は添加されないので高分子吸水剤の
膨潤は生じない。

なお、セメント等の水硬性高アルカリ石灰質原料とし
て、セメントの他、石こう等を使用しても良い。

次に上記均一混合原料に水を加えスラリーとなしたと
き、パルプ繊維に付着した高分子吸水剤はセメント等の
水硬性高アルカリ石灰質原料のアルカリ成分によって吸
水機能が著しく抑えられ、一部の水分がパルプ繊維と接
触し、その表面に水分が付着するものの他のセメント、
メチルセルロース等押出助剤に添加水が吸水されてしま
う結果、膨潤は殆ど生じない。

そして、上記スラリーを押出成形して板状体を成形す
る。

上記板状体を一次養生し硬化させるが、この硬化段階
においても高分子吸水剤はアルカリ成分により吸水機能
が抑えられたままであり、膨潤は生じない。

この一次養生による硬化後オートクレーブにより高温
高圧養生を行なえば高分子吸水剤は熱により分解され、
吸水及び膨潤作用は消失される。

一方、パルプ繊維は高分子吸水剤により一部発揮され
る水分付着力によりセメントマトリックスとの結合性は
高められているため、高強度の繊維補強無機質板となし
得るのである。

〔実施例〕

次に、この発明の実施例を説明する。

（実施例１） パルプ繊維１重量部に対し、高分子吸水剤として１重
量部のカルボキシルメチルセルロースを添加し、均一混
合し乾燥して成るパルプ繊維を用い、該パルプ繊維５重
量％、セメント40重量％、シリカ分としてフライアッシ
ュ55重量％を乾式混合し、次いで、上記スラリー100重
量％に対し外割で押出助剤として0.5重量％のメチルセ
ルロース、軽量骨材として１重量％の発泡ポリスチレン
粒子、及び水45重量％を添加し、均一混合を行ない、厚
さ4.5cm、長さ90cm、幅45cmの板状体を成形し、室温で
一次養生後、180℃×10時間の条件でオートクレーブに
より高温蒸気養生を行なった。

（実施例２） 産業廃棄物である紙おむつ屑を５〜20mmに裁断し、紙
おむつを構成する防水シート部を高分子吸水剤が含まれ
るパルプ部と不織布とにふるい分け、パルプを開繊機に
より粉砕開繊し、高分子吸水剤を含む繊維状物を得た。

この繊維状物を実施例１のパルプ繊維に代え実施例１
と同様にして無機質板を成形した。

（比較例１） 実施例１におけるパルプとして高分子吸水剤で処理し
ない乾燥パルプを用いた他は実施例１と同様にして無機
質板を得た。

（比較例２） 実施例２で使用した繊維状物を用い、実施例１と同一
の配合量とし、これら原料を乾式混合することなく最初
より加水混合し、このスラリーを押出成形した後、実施
例１と同様にして無機質板を得た。

上記実施例1,2及び比較例1,2について混練状態、押出
成形性及び試験片の曲げ強度を測定したところ、表に示
す結果となった。

上表において、混練状態の○は均一なスラリーとなっ
たもの、Δは一部塊が出来たもの、×は毛だまの塊が多
数出来たものを示す。また、押出性の○は押出速度にむ
らがなくスムーズな押出が行なえたもの、Δはやや脈動
が生じたものを示す。

〔効果〕

この発明は以上説明したように乾燥パルプの疎水性を
高分子吸水剤の使用により改良し、しかもアルカリ分の
作用による高分子吸水剤の膨潤を抑えているため、スラ
リー調整時の水分管理を容易にし、高強度の無機質板を
製造可能とするのである。さらにこの発明によれば大量
に産出され、従来廃棄されるにまかされていた紙おむつ
屑の有効利用も図れるなど種々の効果を有する。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ドライパルプと高分子吸水剤とを事前混合
   して成るパルプとセメント等の水硬性高アルカリ石灰質
   原料とシリカ質原料とメチルセルロース等の押出助剤と
   を乾燥状態のまま混合し、次いで必要量の水を加えて混
   練してスラリーとなし、押出成形により板状体を成形後
   一次養生を行ない、硬化後オートクレーブ養生を行なう
   ことを特徴とする無機質板の押出成形方法。
2. 【請求項２】ドライパルプと高分子吸水剤とを事前混合
   して成るパルプが紙おむつなど前記高分子吸水剤の含ま
   れるパルプ繊維を構成要素とする物品の切断屑から分離
   されたものである特許請求の範囲第１項記載の無機質板
   の押出成形方法。