JPH0856683A - 高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法 - Google Patents

高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法

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JPH0856683A
JPH0856683A JP6203832A JP20383294A JPH0856683A JP H0856683 A JPH0856683 A JP H0856683A JP 6203832 A JP6203832 A JP 6203832A JP 20383294 A JP20383294 A JP 20383294A JP H0856683 A JPH0856683 A JP H0856683A
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JP
Japan
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fatty acid
unsaturated fatty
highly unsaturated
lipid
reaction
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JP6203832A
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English (en)
Inventor
Mutsuo Hatano
六男 羽田野
Yoshitarou Takahashi
是太郎 高橋
Masafumi Hosokawa
雅史 細川
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SUISANCHIYOU CHOKAN
Original Assignee
SUISANCHIYOU CHOKAN
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加水分解の促進なしにリパーゼとホスホリパ
ーゼの高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成能を向上させる
ことのできる高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法を提
供する。 【構成】 リパーゼおよびホスホリパーゼよりなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の酵素を用いて高度不飽和脂
肪酸含有脂質を合成する方法において、反応系に高誘電
率水素結合形成物を微量添加することを特徴とする。 【効果】 高度不飽和脂肪酸の含有率に優れた脂質の回
収率を高めることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な高度不飽和脂肪
酸含有脂質の合成方法に関するものである。より詳しく
は、医薬品や特定保健用食品に利用し得る健康機能性を
有する高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】高度不飽和脂肪酸含有脂質には、優れた
健康性機能があるが、このものを副反応なしに化学的に
合成することは困難である。そのため、現在はリパーゼ
やホスホリパーゼなどの酵素を用いた酵素的合成法に関
する研究が活発である。
【0003】例えば、こうした酵素的合成法に関する研
究としては、本発明者の羽田野らがNippon Su
isan Gakkaishi 59(2),309−
314(1993)で報告した「ホスホリパーゼ2 によ
る高度不飽和脂肪酸含有ホスファチジルコリンの合成と
細胞分化誘導作用に及ぼす影響」において発表してある
ように、リゾ型リン脂質と基質脂肪酸をグリセロールに
分散後、ホスホリパーゼA2 を6mM塩化カルシウム含
有200mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解
した酵素液を加えて反応を開始し、1000rpmで撹
拌しながら25℃で48時間反応を行い、反応終了後、
Folch溶媒で脂質成分を抽出し、ケイ酸カラムクロ
マトグラフィーに供してメタノールによってリン脂質画
分を回収する方法が開示されている。
【0004】また、特開平2−295489号公報に
は、長鎖高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドの製造方
法として、長鎖高度不飽和脂肪酸を含有する油脂をリパ
ーゼを用いて加水分解し後、脱グリセリンして得られた
部分加水分解物質であって、長鎖高度不飽和脂肪酸を多
量に含むグリセリドと脂肪酸との混合物を用い、さらに
クロモバクテリウム属由来リパーゼを作用させることを
特徴とする長鎖高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドの
製造方法が開示されている。
【0005】さらに同様の長鎖高度不飽和脂肪酸含有ト
リグリセリドの製造方法としては、特開昭58−165
796号をはじめ、以下に列挙するような多くの発明が
提案されている。こうした高度不飽和脂肪酸を含有する
リン脂質を、天然物から抽出されるリン脂質をもとに酵
素反応を利用するなどして、分解濃縮する方法が、例え
ば、特開昭58−165796号、特開昭61−156
92号、特開昭60−102192号、特公昭60−1
9999号、特公昭61−20275号、特開平2−3
03492号、特開平3−103499号および特開平
3−108489号など多くの公報に、また合成する方
法が、例えば、特開昭60−234589号、特開昭6
2−262998号、特開昭63−105686号、特
開昭63−134042号、特開昭63−185391
号、特開昭63−209742号、特開昭63−279
753号、特開平2−113891号、特開平2−35
093号、特開平2−295489号、特開平5−95
792号および特開平5−236974号公報などにお
いて開示されており、これら公報の中で酵素反応を利用
して高度不飽和脂肪酸含有リン脂質を得ることができる
ことを述べている。
【0006】しかしながら、上述したような従来公知の
こうした酵素的合成法においては、その欠陥としてリパ
ーゼやホスホリパーゼの活性発現のために添加した必須
水分による加水分解反応の進行があり、これによる収率
の大幅な低下をもたらすことが問題になっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、加水分解の促進なしに、リパーゼおよびホスホ
リパーゼよりなる群から選ばれた少なくとも1種の酵素
による高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成能を向上させる
ことのできる高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法を提
供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点を解決すべく鋭意検討した結果、必須水分の一部代
替物として多価アルコールなどの高誘電率水素結合形成
物を反応系に一定量を添加することによって上記目的を
達成できることを知り、この知見に基づき本発明を完成
するに至ったものである。
【0009】すなわち、本発明の目的は、(1) リパ
ーゼおよびホスホリパーゼよりなる群から選ばれた少な
くとも1種の酵素を用いて高度不飽和脂肪酸含有脂質を
合成する方法であって、反応系に高誘電率水素結合形成
物を添加することを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有脂
質の合成方法により達成される。
【0010】さらに、本発明の目的は、(2) 高度不
飽和脂肪酸含有脂質が、高度不飽和脂肪酸含有リン脂質
または高度不飽和脂肪酸含有単純脂質であることを特徴
とする上記(1)に示す高度不飽和脂肪酸含有脂質の合
成方法によっても達成される。
【0011】
【作用】本発明の高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法
では、リパーゼまたはホスホリパーゼよりなる群から選
ばれた少なくとも1種の酵素を用いて高度不飽和脂肪酸
含有脂質を合成する際に、反応系に必須水分の一部を水
代替物として高誘電率水素結合形成物を添加すること
で、酵素による加水分解反応が抑制され、かつ前記酵素
の合成能が著しく促進されるものである。
【0012】以下、本発明の合成方法につき、より詳細
に説明する。
【0013】まず、本発明の特徴とするところは、従来
の高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法における反応系
に必須水分の一部を水代替物として高誘電率水素結合形
成物を一定量添加する点にある。
【0014】ここで、「高誘電率水素結合形成物」と
は、高い比誘電率εr を有する水素結合を形成する物質
またはその混合物であって、水分子(比誘電率εr =7
8.3(25℃))の代替物として用いる必要上、水分
子と同様にその電荷分布が非対称で、外部電場の影響な
しに本来電気双極子をもつ有極性分子であって、該水分
子と同程度の双極子モーメントをもつものが望ましく、
該比誘電率εr は、通常10以上(25℃)、好ましく
は30以上(25℃)の範囲である。該比誘電率εr
10(25℃)未満の場合には、誘電率が十分に高くな
いためタンパク質分子の自由度が十分に増大しないこと
により、また、該比誘電率εr が80(25℃)を越え
る場合には、加水分解を生ずるため、それぞれ好ましく
ない。
【0015】上記高誘電率水素結合形成物としては、例
えば、エチレングリコール(εr =37.7(25
℃))、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、テトラエチレングリコール、プロピレングルコー
ル、ジプロピレングルコール、1,3−ブチレングリコ
ール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチ
ル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール、グリセリン(εr =42.5(25
℃))、エリトリトール(εr =28.2(120
℃))、D−、L−およびD,L−スレイトール、リビ
トール、D−、L−およびD,L−アラビニトール、キ
シトール、アリトール、ダルシトール(ガラクチトー
ル)、グルシトール、ソルビトール(D−グルシトー
ル)、L−およびD,L−グルシトール、D−、L−お
よびD,L−マンニトール、D−、L−およびD,L−
アルトリトール、D−およびL−イジトール、マルチト
ール、ラクチトール、ペンタエリトリトール、ジペンタ
エリトリトールなどの多価アルコール、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、プロピオンアミド、アセトアミドおよ
びホルムアミドなどが挙げられ、これらを単独または複
数を混合して用いることができる。
【0016】また、該高誘電率水素結合形成物は、必須
水分の一部を水代替物として添加することで、酵素を活
性化させ、エステル交換反応を促進し、さらに加水分解
反応を抑制する効果を奏するものであることから、該高
誘電率水素結合形成物を必須水分の一部代替物として、
水と高誘電率水素結合形成物とを適当な割合に混合して
用いる必要がある。この場合の水と高誘電率水素結合形
成物との比率(重量混合比)は、水1重量部に対して高
誘電率水素結合形成物が0.2〜5重量部、好ましくは
0.5〜2重量部、より好ましくは0.75〜1.5重
量部である。該比率が水1重量部に対して0.2重量部
未満の場合には、加水分解反応が進行し、高度不飽和脂
肪酸含有脂肪の回収率が低くなることにより、該比率が
水1重量部に対して5重量部を越える場合には、水代替
物として酵素を十分活性化できず、エステル交換反応の
進行が遅くなることにより、それぞれ好ましくない。
【0017】また、本発明により得られる高度不飽和脂
肪酸含有脂質の利用分野が、主に医療品、化粧品や食品
などであることから、高誘電率水素結合形成物について
も食品添加物として使用の認められているプロピレング
リコール、ソルビトール(D−グルシトール)、D−、
L−およびD,L−マンニトールのほか、医療品、化粧
品や食品(主に甘味料)など多様な分野で使用されてい
るアリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、グル
シトール、ソルビトール(D−グルシトール)、L−お
よびD,L−グルシトール、D−、L−およびD,L−
マンニトール、マルチトールおよびラクチトールなど
を、上記比率にて水と混合して用いることが望ましい。
【0018】また、上記高誘電率水素結合形成物の反応
系への添加量としては、反応系の全組成物に対して、通
常0.05〜0.4重量%、好ましくは0.1〜0.2
5重量%、より好ましくは0.15〜0.20重量%で
ある。該添加量が0.05重量%未満の場合には、水代
替物として酵素を活性化させ、エステル交換反応を促進
し、さらに加水分解反応を抑制する効果が十分でなく、
また添加量が0.4重量%を越える場合には、水代替物
による加水分解反応の進行が抑制されるため、合成反応
速度が早くなる反面、得られる高度不飽和脂肪酸含有脂
質の回収率が低くなるため好ましくない。
【0019】次に、本発明に係る高度不飽和脂肪酸含有
脂質の合成方法においては、反応系に高誘電率水素結合
形成物を一定量添加することを除いては、特に制限され
るものでなく、原料となる脂質および高度不飽和脂肪酸
を出発原料とし、該原料にリパーゼまたはホスホリパー
ゼよりなる群から選ばれた少なくとも1種の酵素を用い
て酵素反応を行って、原料脂質に高度不飽和脂肪酸を導
入する従来公知の合成方法を用いることができ、例え
ば、リパーゼ(例えば、1,3位特異性のムコール属由
来のリポザイム)を用いて原料脂質に高度不飽和脂肪酸
をエステル交換して導入する方法(特開昭60−234
589号公報または特開平5−95792号公報などに
記載)などが挙げられる。
【0020】ここで、原料となる脂質としては、特に制
限されるものでなく、単純脂質および複合脂質の双方を
用いることができる。単純脂質としては、例えば、モノ
−、ジ−、トリ−アシルグリセロール(中性脂肪)、ろ
う、コレステロールエステル、ビタミンAおよびDのエ
ステルなどが挙げられる。また、複合脂質は、一般的に
リン脂質と糖脂質に大別され、リン脂質としては、例え
ば、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジ
ルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファ
チジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール
(カルジオリピン)、ホスファチジルイノシトール、プ
ラスマローゲン、スフィンゴミエリンおよびセラミドシ
リアチンなどが挙げられ、糖脂質としては、例えば、微
生物や高等植物に存在するジアシルグリセロールに種々
の糖が結合したものや、哺乳動物の精子に存在するセミ
ノリピド、セレブロジド、スルファチドおよびガングリ
オジドなどが挙げられる。こうした原料脂質のなかで
も、海産動物油、特にイワシ、サバ、マグロ、カツオな
どから得られる魚油が、もともとエイコサペンタエン酸
やドコサヘキサエン酸などの高度不飽和脂肪酸を比較的
多く含有するため、こうした魚油から精製して得られる
脂質を用いることが好適である。こうした油脂の添加量
は、用いる高度不飽和脂肪酸との合成反応での化学量論
付近でよいが、使用する高度不飽和脂肪酸が反応中に変
成するのを考慮して、通常、使用する高度不飽和脂肪酸
の5〜10重量%を追加するのが望ましい。
【0021】また、原料となる高度不飽和脂肪酸として
は、炭素数が18以上であって、かつ不飽和結合が3個
以上ある脂肪酸であり、例えば、α−リノレン酸、γ−
リノレン酸、アラキドン酸、エイコサトリエン酸、エイ
コサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサトリ
エン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ド
コサヘキサエン酸などが挙げられる。この場合の該高度
不飽和脂肪酸の添加量は、用いる脂質との合成反応での
化学量論付近でよい。
【0022】さらに、合成に用いられる酵素としては、
リパーゼまたはホスホリパーゼよりなる群から選ばれた
少なくとも1種の酵素であればよく、例えば、(1)リ
パーゼによるエステル交換反応の場合では、哺乳動物体
液(血清、白血球、脳脊髄液、リンパ液、尿、乳)、そ
の組織、臓器、ほどんどの脊椎動物臓器、昆虫、植物種
子、カビ類、細菌などから精製されているものを用いる
ことができ、例えば、膵臓、リゾプス、アスペルギル
ス、ムコール、キャンデイダ、ジオトリグラム、シュー
ドモナスおよびクロモバクテリウム属などの微生物由来
のリパーゼなどを単独または組合せて用いることができ
る。なかでも脂質の1位の脂肪酸エステルを高度不飽和
脂肪酸とエステル交換する反応をするムコール属やシュ
ウドモナス属菌、クロモバクテリウム属菌由来のリパー
ゼを固定化したものが、リパーゼの水分含有量を100
ppm以下のほぼ無水状態でも活性を維持でき、高度不
飽和脂肪酸含有脂質の合成に好適なものである。このよ
うな固定化されたリパーゼとしては、例えば、カンデイ
ダ属菌に由来するリパーゼをアクリル樹脂に固定化した
もの、ムコール属菌に由来するリパーゼをマイクロポー
ラスな陰イオン交換樹脂に固定化したものなどが挙げら
れる。この場合の該リパーゼの添加量としは、反応系の
出発原料1gに対して、通常50〜500units、
好ましくは190〜300unitsである。また、
(2)ホスホリパーゼA1 によるエステル合成反応の場
合では、毒蛇、ハチ毒、サソリ毒などの毒液や動物の膵
臓などに大量に存在するほか、動物の各種臓器、植物、
細菌など広く生物界に存在しているものを利用できる
が、好ましくは、動物の膵臓から抽出、精製されたもの
が比較的安価で使用しやすいものである。この場合、該
ホスホリパーゼA1 の添加量としは、反応系の出発物質
1gに対して、通常5000〜100000unit
s、好ましくは20000〜60000unitsであ
る。さらに、(3)ホスホリパーゼDとしては、加水分
解と同時にホスファチジル基転位能を示すキャベツ、ニ
ンジン、綿実、落花生などの植物由来酵素を用いること
ができが、好ましくは、ストレプトマイセス種(Strept
omyces sp.) などが比較的安価で使用しやすいものであ
る。この場合の該ホスホリパーゼDの添加量としは、反
応系の出発物質1gに対して、通常1〜3000uni
ts、好ましくは500〜2000unitsである。
【0023】次に、上記酵素反応においては、用いる酵
素などによりそれぞれ好適な条件は異なるが、合成反応
中に高度不飽和脂肪酸中の二重結合の移動などを防止す
るためには低いほうが好ましく、通常5〜60℃、好ま
しくは20〜40℃で行うのがよい。5℃未満では、反
応が遅く、また60℃を越える場合には、用いる酵素が
失活するため好ましくない。
【0024】また上記酵素反応では、反応系を撹拌した
ほうが望ましいが、反応によっては、静置反応させるこ
ともできる。さらにこうした酵素反応は、一段反応でも
よいが、さらに反応を効率的に早く進めるために、多段
反応でもよく、また連続反応として合成することもでき
る。
【0025】また、酵素反応によっては、大気下で行っ
てもよいが、不活性ガス雰囲気下、例えば、乾燥窒素ガ
ス、アルゴンガス、炭酸ガス、ネオンガスなどの雰囲気
にしておくと、高度不飽和脂肪酸の劣化(酸化)を防ぐ
ばかりでなく、酵素の失活も防止することができるため
望ましい。
【0026】また、同様に用いる高度不飽和脂肪酸の劣
化(酸化)を防止するために、反応系に酸化防止剤とし
て、例えば、トコフェロール、TBHQ、BHA、BH
Tを添加するなどして併用してもよい。
【0027】このようにして、上記酵素反応による合成
を、通常6〜120時間、好ましくは48〜72時間行
った後、通常、カラム処理により精製できる。溶剤とし
ては単純脂質の場合はエーテルやヘキサン、リン脂質の
場合はメタノールを用い、塩基性アルミナ充填カラムま
たはマグネシウムで活性化したシリカゲル充填カラムに
より精製を行うと過酸化物も除去された所望の高度不飽
和脂肪酸含有脂質を得ることができるため好適である。
この他にクロマトグラフィー、結晶分別、分別蒸留、液
々分配、脱酸法などの公知の技術を用いて、所望の高度
不飽和脂肪酸含有脂質を得ることもできるものである。
【0028】なお、本発明に係る高度不飽和脂肪酸含有
脂質の合成方法としては、上述したものに限定されるも
のでなく、従来公知の他の手段を幅広く適用できるもの
であることは言うまでもない。
【0029】
【実施例】
実施例1 原料脂質としてイワシ油1g(エイコサペンタエン酸
(以下、単にEPAともいう)の脂肪酸組成14%)
を、また高度不飽和脂肪酸として純度90%のEPAエ
チルエステル3gを出発原料として用い、これらに高誘
電率水素結合形成物としてエチレングリコールを0.1
ml混合して水分活性をそれぞれ0.033、0.25
7、0.415、0.608および0.897に調整
後、五酸化リンによって脱水して、それぞれ同一水分活
性に調整してある固定化リパーゼの1種であるリポザイ
ム(Lipozyme IM-20(Mucor miehei起源,Novo Nordisk
社製)、以下同様)を400mg添加し、25℃にて4
8時間反応させた。その後、クロロホルム:メタノー
ル:水(2:1:0.6、v/v)100mlを用いて
反応を停止し、クロロホルム層を濃縮、TLC−デンシ
トメトリーで回収率を算出した。また、脂質画分のGL
C分析からEPA含量を求め、エステル交換率とした。
【0030】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図1に示す。
【0031】実施例2 高度不飽和脂肪酸として、純度90%のEPAエチルエ
ステル3gを用いる代わりに、純度90%の遊離のEP
A3gを用いた以外は、実施例1と同様にしてリパーゼ
による酵素反応を行い、脂質画分を分離した後、回収率
およびエステル交換率を求めた。
【0032】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図1に示す。
【0033】比較例1 高誘電率水素結合形成物としてエチレングリコールを
0.1ml混合して水分活性をそれぞれ0.033、
0.257、0.415、0.608および0.897
に調整する代わりに、該高誘電率水素結合形成物を用い
ることなく水分活性をそれぞれ0.033、0.25
7、0.415、0.608および0.897に調整し
た以外は、実施例1と同様にしてリパーゼによる酵素反
応を行い、脂質画分を分離した後、回収率およびエステ
ル交換率を求めた。
【0034】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図1に示す。
【0035】比較例2 高誘電率水素結合形成物としてエチレングリコールを
0.1ml混合して水分活性をそれぞれ0.033、
0.257、0.415、0.608および0.897
に調整する代わりに、該高誘電率水素結合形成物を用い
ることなく水分活性をそれぞれ0.033、0.25
7、0.415、0.608および0.897に調整し
た以外は、実施例2と同様にしてリパーゼによる酵素反
応を行い、脂質画分を分離した後、回収率およびエステ
ル交換率を求めた。
【0036】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図1に示す。
【0037】図1より、上記実施例1〜2および比較例
1〜2の結果において、低〜中間の水分活性域0.03
3〜0.257において、高誘電率水素結合形成物であ
るエチレングリコールの反応系への添加が、脂質への著
しいEPAの導入率改善効果を示すことを認めた。ま
た、TLC−デンシトメトリーの結果より、この間、部
分グリセリドの生成はほとんど認められず、原料脂質で
あるイワシ油のトリグリセリド中のEPA含有率約14
%に対して水分活性0.26付近で、EPAの両アシル
基供与体(エチルエステル型(EE)および遊離型(F
FA))が、高誘電率水素結合形成物を添加しない場合
に約55ないし35%であるのに対して、高誘電率水素
結合形成物を添加した場合には共に約70%にまで該ト
リグリセリド中のEPA含量を向上できることが確認で
きた。
【0038】実施例3 原料脂質としてイワシ油1g(ドコサヘキサエン酸(以
下、単にDHAともいう)の脂肪酸組成11%)を、ま
た高度不飽和脂肪酸として純度89%のDHAエチルエ
ステル3gを出発原料として用い、これらに高誘電率水
素結合形成物としてエチレングリコールを0.1ml混
合して水分活性をそれぞれ0.024、0.155、
0.415、0.698および0.895に調整後、五
酸化リンによって脱水して、それぞれ同一水分活性に調
整してある固定化リパーゼの1種であるリポザイムを4
00mg添加し、25℃にて48時間反応させた。その
後、クロロホルム:メタノール:水(2:1:0.6、
v/v)100mlを用いて反応を停止し、クロロホル
ム層を濃縮、TLC−デンシトメトリーで回収率を算出
した。また、脂質画分のGLC分析からEPA含量を求
め、エステル交換率とした。
【0039】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図2に示す。
【0040】実施例4 高度不飽和脂肪酸として、純度89%のDHAエチルエ
ステル3gを用いる代わりに、純度89%の遊離のDH
A3gを用いた以外は、実施例3と同様にしてリパーゼ
による酵素反応を行い、脂質画分を分離した後、回収率
およびエステル交換率を求めた。
【0041】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図2に示す。
【0042】比較例3 高誘電率水素結合形成物としてエチレングリコールを
0.1ml混合して水分活性をそれぞれ0.024、
0.155、0.415、0.698および0.895
に調整する代わりに、該高誘電率水素結合形成物を用い
ることなく水分活性をそれぞれ0.024、0.15
5、0.415、0.698および0.895に調整し
た以外は、実施例3と同様にしてリパーゼによる酵素反
応を行い、脂質画分を分離した後、回収率およびエステ
ル交換率を求めた。
【0043】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図2に示す。
【0044】比較例4 高誘電率水素結合形成物としてエチレングリコールを
0.1ml混合して水分活性をそれぞれ0.024、
0.155、0.415、0.698および0.895
に調整する代わりに、該高誘電率水素結合形成物を用い
ることなく水分活性をそれぞれ0.024、0.15
5、0.415、0.698および0.895に調整し
た以外は、実施例4と同様にしてリパーゼによる酵素反
応を行い、脂質画分を分離した後、回収率およびエステ
ル交換率を求めた。
【0045】このうち、それぞれの水分活性における脂
質中のエステル交換率の変化を図2に示す。
【0046】図2より、上記実施例3〜4および比較例
3〜4の結果において、低〜中間水分活性域が0を越え
て0.7までにおいて、高誘電率水素結合形成物である
エチレングリコールの反応系への添加が、脂質への著し
いDHAの導入率改善効果を示すことを認めた。また、
TLC−デンシトメトリーの結果より、この間の部分グ
リセリドの生成はほとんど認められず、原料脂質である
イワシ油のトリグリセリド中のDHA含有率約11%に
対して低〜中間水分活性域が0を越えて0.7まででD
HAの両アシル基供与体(エチルエステル型(EE)お
よび遊離型(FFA))が、高誘電率水素結合形成物を
添加しない場合に約25〜50%であるのに対して、高
誘電率水素結合形成物を添加した場合にはともに約60
〜65%にまで該トリグリセリド中のDHA含量を向上
できることが確認できた。
【0047】実施例5 原料脂質として大豆ホスファチジルコリン(アバンティ
ポラー−リピッド(Avanti Polar-Lipid)社製、以下、
単にPCともいう)10mgと高度不飽和脂肪酸として
EPA(日本化学飼料株式会社製)60mgを含んだヘ
キサン溶液0.5mlに、高誘電率水素結合形成物とし
てプロピレングリコール0.5μlを、さらに水0.5
μlを添加し、固定化リパーゼの1種であるリポザイム
23mgを加えて、40℃にて6、24、48、72、
96および120時間エステル交換反応を行った。反応
終了後、脂質を回収して脂質クラスに分画し、TLC−
FID法並びにGLC法でそれぞれEPA含有PCの回
収率並びにEPAの導入率を算出した。
【0048】得られた回収率並びにEPAの導入率の結
果を図3(a)および図3(b)に示す。
【0049】比較例5 高誘電率水素結合形成物としてプロピレングリコール
0.5μlを、さらに水0.5μlを添加する代わり
に、プロピレングリコール1.0μlだけを添加した以
外は実施例5と同様にしてリパーゼによる酵素反応を行
い、脂質画分を分離した後、回収率およびEPAの導入
率を算出した。
【0050】得られた回収率並びにEPAの導入率の結
果を図3(a)および図3(b)に示す。
【0051】比較例6 高誘電率水素結合形成物としてプロピレングリコール
0.5μlを、さらに水0.5μlを添加する代わり
に、水1.0μlだけを添加した以外は実施例5と同様
にしてリパーゼによる酵素反応を行い、脂質画分を分離
した後、回収率およびEPAの導入率を算出した。
【0052】得られた回収率並びにEPAの導入率の結
果を図3(a)および図3(b)に示す。
【0053】比較例7 高誘電率水素結合形成物としてプロピレングリコール
0.5μlを、さらに水0.5μlを添加することな
く、該高誘電率水素結合形成物および水を用いなかった
以外は実施例5と同様にしてリパーゼによる酵素反応を
行い、脂質画分を分離した後、回収率およびEPAの導
入率を算出した。
【0054】得られた回収率並びにEPAの導入率の結
果を図3(a)および図3(b)に示す。
【0055】図3(a)および図3(b)より、上記実
施例5および比較例5〜7の結果において、本実施例で
あるところの、反応系にプロピレングリコールと水分と
をそれぞれ0.5μlづつ添加して48時間反応させた
ときには、ほぼ理論上の上限値の約85%までEPAを
PC中に導入でき、かつPCの回収率を約80%にまで
維持できることが確認できた。
【0056】
【発明の効果】本発明の高度不飽和脂肪酸含有脂質の合
成方法では、リパーゼまたはホスホリパーゼからなる酵
素を用いて高度不飽和脂肪酸含有脂質を合成する際に、
反応系に必須水分の一部の水代替物として高誘電率水素
結合形成物を一定量添加することによって、前記酵素に
よる加水分解反応を制御して、酵素による合成能を著し
く促進することができ、高度不飽和脂肪酸の含有率に優
れた脂質の回収率を高めることができる。
【0057】本発明の高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成
方法では、リパーゼまたはホスホリパーゼからなる酵素
を用いた酵素反応において、反応系の水分の高精度の制
御と高誘電率水素結合形成物の一定量の添加により高度
不飽和脂肪酸含有脂質を効率よく合成することができ、
特に高誘電率水素結合物として、食品添加物として認可
されているような毒性の少ない安全な物を選択すること
により、合成によって得られる高度不飽和脂肪酸含有脂
質の利用形態として、健康食品、医療品、経口製剤およ
び化粧品などの幅広い分野に、高度不飽和脂肪酸の含有
率に優れた脂質を大量かつ安定的に比較的安価に供給す
ることが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 高誘電率水素結合形成物であるエチレングリ
コールの反応系への添加の有無による、それぞれの水分
活性における脂質中への高度不飽和脂肪酸(EPA)の
導入率(エステル交換率)の変化を示すグラフである。
【図2】 高誘電率水素結合形成物であるエチレングリ
コールの反応系への添加の有無による、それぞれの水分
活性における脂質中への高度不飽和脂肪酸(DHA)の
導入率(エステル交換率)の変化を示すグラフである。
【図3】 図3(a)は、反応系に水および/または高
誘電率水素結合形成物の添加の有無による、反応時間に
対するPC中へのEPAの導入率を示すグラフであり、
図3(b)は、反応系に水および/または高誘電率水素
結合形成物の添加の有無による、反応時間に対するEP
A含有PCの回収率を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リパーゼおよびホスホリパーゼよりなる
    群から選ばれた少なくとも1種の酵素を用いて高度不飽
    和脂肪酸含有脂質を合成する方法において、反応系に高
    誘電率水素結合形成物を添加することを特徴とする高度
    不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法。
  2. 【請求項2】 前記高度不飽和脂肪酸含有脂質が、高度
    不飽和脂肪酸含有リン脂質または高度不飽和脂肪酸含有
    単純脂質であることを特徴とする請求項1に記載の高度
    不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法。
JP6203832A 1994-08-29 1994-08-29 高度不飽和脂肪酸含有脂質の合成方法 Pending JPH0856683A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002171993A (ja) * 2000-09-27 2002-06-18 Ikeda Shokken Kk 食品用ステロール脂肪酸エステルの製造方法
WO2011004794A1 (ja) 2009-07-06 2011-01-13 株式会社カネカ リン脂質の製造方法

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