【発明の詳細な説明】
VII因子由来ペプチド
本発明は凝血形成を低減させるペプチド試薬およびその組成物に関する。
血液凝固は最終的にはフィブリン凝塊を生成する一連のまたは多段の活性化反
応による。フィブリン形成に至るこの多段反応は、初めは2種類の異なる経路−
すなわち異常な表面との接触(“内因性経路”)によるか、または“組織因子”
あるいはTFとして知られるリポタンパク質の分泌を引き起す血管の外傷形成(“
外因性経路”)−により引金が引かれうる。本発明は、主に外因性血液凝固に関
する。
TFは多くの種類の細胞上に出現する内在性膜タンパク質である。しかしながら
、本質的にTFを発現する細胞、例えば血管脈管内膜の筋肉細胞は通常血液には露
出されない(Edgington et.al.Thromb.Haemostas.66(1):67-69(1991)参
照)。従って外因性血液凝固経路の開始は血管壁の崩壊を必要とするか(Almus
et.al.Blood 76:354-360(1990)参照)および/または内皮細胞または単球
を活性化してTFを発現させることを必要とすると思われる(Edwards et.al.Bl
ood 54:359-370(1979)およびBevilaqua et.al.PNAS USA 83:4533-4537(1
986)参照)。血管壁の崩壊はアテローム性動脈硬化性プラクの裂けに起因して
起こり得、それが組織マクロファージおよび平滑筋細胞を血液に露出させる(Wi
lcox et.al.
PNAS USA 86:2839-2843(1989)参照)。TFはまた、血栓溶解治療、移植のため
の外科手術、血管開存の機械的回復または他の同様の技法の間での血管への傷害
に続いて露出させうる。他方、内皮細胞または単球におけるTF発現は腫瘍壊死因
子−αまたはインターロイキン-1の生産に起因する敗血症期間中に誘発させう
る(Eswards et.al.上記およびGregory et.al.J.Clin.Invest.76:2440-
2445(1985)参照)。
セリンプロテアーゼVIIa因子(FVIIa)は外因性血液凝固経路に関与する。FVI
IaはXa因子、XIIa因子、IXa因子またはトロンビンを含む血液凝固過程の他の関
与体による、その不活性プロ酵素VII因子(FVII)からのタンパク分解により形
成される。FVIIのFVIIaへの活性化は、FVIIがそのコファクターである組織因子
(TF)に結合された場合に著明に増強されると報告されている(Nemerson,Semi
n.Hematol.29(3):170-176(1992)参照)。Yamamoto et.al.もFVIIのFVIIa
への変換は自己触媒的である可能性があることを示唆している(J.Biol.Chem
.267(27):19089-19094(1992)参照)。
FVIIaはカルシウムイオンの存在下にTFと複合体を形成し、そしてこのFVIIa/
TF複合体は外因性経路による血液凝固過程の次の段階でX因子のその活性形、Xa
因子、への変換を触媒する。
FVIIの構造が調べられ、そしてcDNA配列がHagen et.al.によりPNAS USA 83
:2412-2416(1986)に報告されている。FVIIはビタミンK依存性タンパク質で
あり、そして他のビタミンK依存性タンパク質と同様に、推定γ-カルボキシグ
ルタミン酸(Gla)ド
メインがアミノ末端で確認されている。ここでもまた他のビタミンKタンパク質
と同様に、GlaドメインがTFへの結合に必要とされることが予測された(Hagen e
t.al.上記参照)。Glaドメインには2つの強力な増殖因子(GF)ドメインが続
く。しかしながら、この文献にはGFドメインについて何の機能も示唆されていな
い。
凝血形成に関する外因性経路の活性化が、フィブリン形成を招来する第一次事
象として示唆されており(Weiss et.al.Blood 71:629-635(1988)およびWel
ss et.al.Blood 73:968-975(1989)参照)、それゆえ動脈硬化性病変の病因
において、および動脈内膜切除後の再閉塞および再狭窄において最も重要である
。しかしながら、この経路の活性化に介在しうる有効な治療剤は要求されている
にもかかわらず入手できない(Shepard,TIBTECH 9:80-85(1991)参照)。
本発明はFVIIまたはFVIIaとTFとの会合を阻害するペプチドおよびその類似体
または塩を提供する。本発明によるペプチドの作用によって、FVIIa/TF複合体
の形成が制限され、そしてそれゆえX因子の活性化が低減される。
血液凝固治療に有用であると述べられているある種のペプチドはBoard of Reg
ents,The University of Texas SystemのWO-A-91/07432に開示されている。開
示されたペプチドはGlaと第一番目のGFドメインの間の領域に存在するか、また
はFVIIまたはFVIIaの触媒ドメイン中に存在する。FVIIa/TF複合体形成の阻害が
論じられているが、かかる効果を生ずるWO-A-91/07432開示のペプチドはGla機能
の阻害を介してそうする。かかるペプチドはこのように
それらの作用が非特異的である。なぜなら他の生理学的タンパク質がGlaドメイ
ンを有するからで、例えはタンパク質CはFVIIのGlaドメインと密接な配列相同
性を有する。それゆえ、タンパク質Cの機能はWO-A-91/07432に開示されたペプ
チドよっても望ましからぬ様式で乱されるであろう。
WO-A-90/03390でCorvas Inc.は、FVII(またはFVIIa)のアミノ酸配列に由来
するある種のペプチドが、完全に形成されたFVIIa/TF複合体の作用を阻止する
のに有用であるかも知れないことを示唆している。2種類の特定のペプチド配列
が、この点で活性であるとしてWO-A-90/03390に開示された。配列-VGHFGV-はカ
ルボキシ末端付近に位置するFVIIのアミノ酸No.372〜377に基づく。もう一つの
配列は-SDHTGTKRSCR-であり、これはFVIIのアミノ酸No.103-113に位置し、そし
て第2のGF ドメインの一部分である。Corvas Incはこれらペプチドおよびその
類似体がFVIIa/TF複合体により開始される多段反応を阻害することを示してい
る。
さらに、WO90/03390の第14頁にある表1では、第2のGFドメインの種々の領域
のうち、SDHTGTKRSC(103〜112)のみが活性であったこと、および他の領域すな
わちアミノ酸50〜101および114〜127はVII因子および組織因子によるX因子の活
性化の阻害に全く不活性であったことが示されている。
しかしながら、Corvas Inc.の報告された所見と反対に、我々は、103〜112の
領域SDHTGTKRSCがVII因子の組織因子への結合のむしろ弱い阻害剤でしかなく、
そして不活性であると言われているある種の領域が実際は高度に活性であること
を示した。
我々の当所の所見は、100位のアミノ酸グルタミンがアルギニンによって置換
されているFVIIの点変異が16人のFVII欠乏ノルウェー人患者で観察されていると
いうもので、そしてFVII分子のこの領域がFVII活性にとって重要であることを示
唆した。我々は第1にアミノ酸配列91〜102が特に活性であること、およびこれ
は実用的にはまたアミノ酸103および104をも包含しうることを確立した。次に我
々は同じくGFドメイン中にあるアミノ酸配列114〜127は比較的活性である一方で
、Corvas配列103〜112はほんの中程度の活性しか有しないことを見出した。
続いて、我々はアミノ酸配列72〜81が配列91−104のペプチドの阻害作用を増
強するのに相乗的に作用し、そして領域72〜81に由来するペプチドの主たる有用
性はかかる相乗的組み合せにあることを見出した。
さらに、前記配列のフラグメントが阻害性であることが見出されており、そし
て一般に前記配列からの5またはそれ以上のアミノ酸のフラグメントはFVII活性
を阻害するのに有用であろう。
それゆえ本発明は式:
を有するアミノ酸配列ならびにそのペプチドフラグメント、特に5またはそれ以
上のアミノ酸を有するフラグメント、それらのエステル、アミド、塩および環状
誘導体、それらの機能的類似体および前記配列またはフラグメントの末端でアミ
ノ酸またはペプチドを担持
する伸張されたペプチド鎖を包含するペプチドに関する。
本発明の1つの特徴によれば、我々はペプチド:
を除く前記定義した配列IA、IBおよび/またはICのペプチドを提供する。
それが適切な場合は、式IA、IBおよびICの化合物およびそれらの種々の誘導体
およびフラグメントは便宜上ペプチドIA化合物、ペプチドIB化合物およびペプチ
ドIC化合物と呼ばれる。
式IA、IBおよび/またはICのペプチド配列のフラグメントには、特に
が包含される。
我々の研究では、アミノ酸95がアミノ酸配列91〜104のペプチドのうちで重要
であり、そして配列95〜104のペプチドが試験した中では最も活性な阻害剤であ
ることが示されている。これはNGGCEQYCSDである。
式IIA、IIBおよびIICのペプチドは、ゼロ阻害活性を有すると述べられてはい
るが、Corvas Inc.のWO90/03390に開示されているという理由で除外される。WO
9O/03390において、血液凝固傷害の
克服への使用に関し、それらのフラグメントや伸張物を含む関連ペプチドのいず
れかを作ることで何らかの利益があることは、明らかに全く示唆されていない。
式IIAおよびIIBのペプチドについて、WO90/03390が誤ってゼロ阻害活性を報告
したことに基づき、本発明の観点の一つは、組織因子に結合させ、それにより組
織因子のFVIIへの結合を阻止または阻害することへの、前記定義された式IAおよ
び/またはIB化合物の治療的または診断的使用を提供する。ペプチドIC化合物の
場合、これらはペプチドIAまたはIB化合物と一緒でのみ使用されよう。明解にす
るために、式IIA、IIBおよびIICの化合物はかかる使用に包含されることが強調
される。
本発明のもう一つの特徴によれば、我々は所望の場合は前記定義した式ICのペ
プチドと組み合わせた、前記定義した式IAおよび/またはIBのペプチドを提供す
る。
本発明のさらにもう一つの観点によれば、我々はFVIIへの組織因子の結合を阻
止または阻害するための医薬組成物の製造への、所望の場合は式ICのペプチドと
一緒の、前記定義した式IAおよび/またはIBの化合物の使用を提供する。
前記したとおり、式IAの配列のペプチドが最も活性であるが、それらの活性は
式IBおよび/またはICのペプチドおよびそれらのフラグメントおよび他の誘導体
と一緒に使用することにより相乗的に増強することができる。かかる組み合せ使
用においては、ペプチドは単純に混ぜ合せるかまたは例えばシステイン残基間の
ジスルフィド結合を介してまたはスペーサーペプチドにより共有結合させ
ることができる。
本発明のペプチドのエステルには、C1〜6アルキルエステルおよび保護された
カルボキシル基として以下に列挙されるもののような容易に開裂されるエステル
基が包含される。
本発明のペプチドの末端に結合されたアミノ酸またはペプチドは保護基のよう
な官能基を担持できる。
本発明のペプチドの塩には、酸付加塩例えば、塩酸塩のような生理学的に受容
できる塩が包含される。
前記した配列において、それぞれの天然に存在するアミノ酸を指すのに標準一
文字コードが使用される。このコードは当業界での標準命名法であり、そしてW
.H.Freeman and Companyにより出版された“Biochemistry”Stryerのような任
意の標準的生化学テキストブックに見ることができる。
かかるペプチドの機能的類似体は、本発明の範囲内に包含される。ある種のア
ミノ酸は機能的に同等であって、かかる同等のペプチドを交換することはタンパ
ク質機能に何らの減退も生じないことがしばしば観察されていることは当業上よ
く知られている。その上、ある種の非重要アミノ酸の置換も、たとえそれらアミ
ノ酸が化学的に異なるアミノ酸により置換されたとしても、何らまたは何ら有意
な機能損失を伴うことなくなされうる。さらに、天然に存在するアミノ酸の化学
的変異体が知られており、そしてかかる分子による置換もここで使用される用語
“類似体”に包含される。
前記した式Iの配列において、アミノ酸システインを表わすすべての“C”は
アラニン(“A”で示される)によって置き代える
ことができる。従って、特に関心のあるペプチドには-ENGGA-、-GGAEQ-および-A
EQYV-が包含される。
加えて、式IA、IBおよび/またはICの配列から誘導されるペプチドには、式I
の配列の2つの通常非隣接部分(2またはそれ以上のアミノ酸を含有する)が並
列されたキメラ誘導体も包含される。かかるキメラ配列の例は-EQYVNE-である。
所望の場合は、本発明によるペプチドは、TFに結合する配列がコンホーメーシ
ョン的に結合に利用できるという条件で環状であることができる。環化は例えば
2つのシステインアミノ酸の間のジスルフィド架橋の形成を含む任意の好適な化
学的手段により達成でき
ある。
本発明はまた、ペプチドのアミノ酸配列が前記式IA、IBおよび/またはICの配
列を包含するか、またはそれから誘導されたものである1種またはそれ以上のペ
プチドまたはその類似体または塩を包含する医薬組成物をも提供する。これらペ
プチドは当業者に知られた生理学的に受容できる付形剤と一緒に投与でき、好適
な付形剤の例には水および油が包含される。
本発明による組成物は、例えば経口、鼻内、非経口または直腸投与に好適な形
態で提供されうる。
本明細書で使用される用語“医薬”には、本発明の動物への適用が包含される
。
本発明による化合物は錠剤、被覆錠、鼻スプレー、溶液、乳剤、
粉剤、カプセルまたは徐放性形態物のような慣用の薬理学的投与形態で提供でき
る。慣用の医薬上の付形剤ならびに通常の製造法をこれら形態物の製造に使用で
きる。錠剤は、例えば活性成分または複数種の活性成分を公知付形剤、例えば炭
酸カルシウム、りん酸カルシウムまたはラクトースのような希釈剤、コーンスタ
ーチまたはアルギン酸のような崩壊剤、スターチまたはゼラチンのような結合剤
、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクのような潤滑剤、および/またはカル
ボキシポリメチレン、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースま
たはポリ酢酸ビニルのような徐放を得るための作用物質と混合することにより製
造できる。
錠剤は所望の場合は数層からなることができる。被覆錠は錠剤と同様の方法で
得られたコアを、錠剤被覆に通常使用される化学物質、例えばポリビニルピロリ
ドンまたはシェラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタンまたは糖を用いて
被覆することにより製造できる。徐放を得るため、または非相溶性を避けるため
には、コアも数層からなることができる。錠剤被覆も徐放を得るために数層から
なることができ、その場合前記した錠剤用付形剤を使用できる。
臓器特異的担体系も使用できる。
注射溶液は、例えば、p-ヒドロキシベンゾエートのような防腐剤またはEDTAの
ような安定剤の添加によるような慣用の方法で製造できる。次に溶液を注射バイ
アルまたはアンプル中に充填する。
鼻スプレーは同様にして水溶液に製剤化し、そしてエーロゾル推進剤を備える
かまたは手動圧縮手段を備えたスプレー容器に詰めることができる。1種または
数種の活性成分を含有するカプセルは、
例えば活性成分(複数)をラクトースまたはソルビトールのような不活性担体と
混合し、そしてこの混合物をゼラチンカプセル中に充填することにより製造でき
る。
好適な坐剤は、例えば活性成分または活性成分の組合せ物を天然脂肪またはポ
リエチレングリコールまたはその誘導体のようなこの目的に意図された慣用の担
体と混合することにより製造できる。
本発明の化合物を含有する投薬単位は、好ましくは0.1〜10mg、例えば1〜5m
gの式(I)のペプチドまたはその塩を含有する。
前記したとおり、本発明の観点の一つは血液凝固傷害または問題の治療または
予防に使用するための本発明によるペプチド(その類似体および塩を含む)を提
供する。血液凝固傷害には血栓症(特に血管血栓症または深部静脈血栓症)、急
性心筋梗塞、再狭窄、再閉鎖、狭心症、脳血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患、過凝
血能症および肺塞栓が包含される。本発明によるペプチドはまた例えば血栓溶解
療法、移植外科手術、血管開存回復等の間での血管への傷害により惹起される血
液凝固問題の発生を阻止するのにも使用できる。血液凝固傷害はTNF-αまたはIL
-1の生産に起因する敗血症により引き金が引かれる可能性がある。
さらにもう一つの観点において、本発明は、哺乳動物体、好ましくはヒトにお
ける血液傷害の治療方法をも提供し、この治療方法は、式IIA、IIBおよび/また
はIICの化合物を含む前記定義した式IA、IBおよび/またはICを有するペプチド
またはそれらの類似体または塩の1種またはそれ以上をその身体に投与すること
からなる。予防的処置法も提供され、これによって、例えば外科手術または本
発明によるペプチドを患者に投与して、他の侵襲性技術の間にありうる血液凝固
問題の出現を阻止または低減させる。勿論ペプチドは医薬上受容できる組成物の
形態で通常投与されよう。
もう一つの観点においては、本発明は式Iの配列を包含するかまたはそれから
誘導されるペプチド、またはそれらの類似体または塩の製造方法を提供する。
本発明のペプチドは任意の好都合な経路で合成できる。一般的には存在する反
応基(例えばアミノ、チオールおよび/またはカルボキシル)は全合成期間中保
護されよう。従って合成の最終段階は、本発明のペプチドの保護された誘導体の
脱保護であろう。
ペプチド鎖の構築において、C-末端出発操作のみが通常使用されるが、原則的
にはC-末端またはN-末端のいずれでも開始できる。
従って、例えばリジンの適当に保護された誘導体をシステインまたはシスチン
の適当に保護された誘導体と反応させることによりC-末端で開始することができ
る。リジン誘導体は遊離のα-アミノ基を有しようが、一方他の反応体は遊離か
または活性化されたカルボキシル基と保護されたアミノ基とを有しよう。結合の
のち、中間体を例えばクロマトグラフィーにより精製し、そして次に選択的にN-
脱保護して他のアミノ酸残基を付加できるようにすることができる。この操作を
、要求されるアミノ酸配列が完成するまで続ける。
例えば使用できるカルボン酸活性化性置換基には、対称または混合無水物、ま
たは例えばp-ニトロフェニルエステル、2,4,5-トリクロロフェニルエステル、N-
ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル(OBt)、またはN-ヒドロキシスクシン
イミジルエステル(OSu)の
ような活性化エステルが包含される。
遊離アミノ基とカルボキシル基の結合は、例えば、ジシクロヘキシルカルボジ
イミド(DCC)を用いて実施できる。例えば使用できるもう一つのカップリング
剤はN-エトキシカルボニル-2−エトキシ-1,2-ジヒドロキノリンである。
一般的に、結合反応は低温、例えば−20℃から周囲温度までの間で、好都合に
は好適な溶媒系、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミ
ド、メチレンクロライドまたはこれら溶媒の混合物中で実施するのが好都合であ
る。
固相樹脂支持体上で合成を実施するのがより好都合でありうる。クロロメチル
化ポリスチレン(1%ジビニルベンゼンを用いて架橋)が支持体の一つの有用な
種類である。この場合、合成は例えば支持体にN-保護リジンを結合させることに
よりC-末端で開始されよう。
多数の好適な固相技術がEric Atherton,ChristoPher J.Logan,およびRober
t C.Sheppard,J.Chem.Soc.Perkin I,538-46(1981);James P.Tam,Fo
e S.Tjoeng,およびR.B.Merrifield,J.Am.Chem.Soc.102 6117-27(1980
);James P.Tam,Richard D.DimarchiおよびR.B.Merrifield,Int.J.Pep
tide Protein Res 16 412-25(1980);Manfred MutterおよびDieter Bellof,H
elvetica Chimica Acta 67 2009-16(1984)に記載されている。
アミノ酸に関する保護基は広く選択できることが知られており、
New YorkおよびLondon,1965および1966;Pettit,G.R.,Synthetic Peptides
,Vols.1-4,Van Nostrand,Reinhold,New York 1970,1971,1975および1976
;Houben-Weyl,Methodender Organischen Chemie,Synthese von Peptiden,Ba
nd 15,Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1974;Amino Acids,Peptides and P
roteins,Vol.4-8,The Chemical Society,London 1972,1974,1975および19
76;Peptides,Synthesis-physical data 1-6,Wolfgang Voelter,Eric Schmid
t-Siegman,Georg Thieme Verlage Stuttgart,NY,1983;The Peptides,Analy
sis,synthesis,biology 1-7,Ed:Erhard Gross,Johannes Meienhofer,Acad
emic Press,NY,San Fransisco,London;Solid phase peptide synthesis第2
版、John M.Stewart,Janis D.Young,Pierce Chemical Company。
従って例えば使用できるアミノ保護基には、カルボベンゾキシ(以下Zとも示
す)、t-ブトキシカルボニル(以下Bocとも示す)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチ
ルベンゼンスルホニル(Mtr)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(以下F
mocとも示す)のような保護基が包含される。ペプチドがC-末端から構築される
場合、アミン保護基は付加される新たな残基それぞれのα-アミノ基上に存在し
、そして次のカップリング工程に先立って選択的に除去される必要があろうこと
は認識されよう。かかる一時的なアミン保護に特に有用な基の一つはFmoc基であ
り、これは有機溶媒中ピペリジンで処理することにより選択的に除去できる。
例えば使用できるカルボキシル保護基には、ベンジル(Bzl)、
p-ニトロベンジル(ONb)、ペンタクロロフェニル(OPClP)、ペンタフルオロフ
ェニル(OPFP)またはt-ブチル(OtBu)基のような容易に開裂されるエステル基
、ならびに固相支持体上のカップリング基、例えばポリスチレンに連結されたメ
チル基が包含される。
チオール保護基には、p-メトキシベンジル(Mob)、トリチル(Trt)およびア
セトアミドメチル(Acm)が包含される。
例えば前記引用文献で詳述されるように広範囲の他のかかる基が存在し、そし
てこれまで述べた方法におけるすべてのかかる基の使用が本発明の範囲内に該当
することは認識されよう。
アミンおよびカルボキシル保護基の除去には広範囲の操作が存在する。しかし
ながらこれらは用いられる合成戦略と一致する必要がある。側鎖保護基は後続の
カップリング工程に先立って一時的α-アミノ保護基を除去するのに用いられる
条件に対して安定でなければならない。
Bocのようなアミン保護基およびtBuのようなカルボキシル保護基は、例えば、
トリフルオロ酢酸を用いる酸処理により同時に除去することができる。Trtのよ
うなチオール保護基はヨウ素のような酸化剤を用いて選択的に除去することがで
きる。
以下の実施例は説明のためにのみ掲げる。
図1は異なるFVIIペプチドおよびFVIIペプチド類似体による血液凝固阻害を示
す。
図2はFVII/TF活性とペプチドFVII-5の間の薬量応答関係を示す。
図3はFVII/TF活性とペプチドFVII-5dとの間の薬量応答関係を示す。
図4は異なるFVII-5濃度でのX因子活性化の阻害を示す。
本発明を下記の非限定的例によりさらに説明する。
実施例においては以下の略語が用いられる。
TFA :トリフルオロ酢酸
BocAA:t-ブトキシカルボニルにより保護されたアミノ酸
BOP :ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホス
ホニウム-ヘキサフルオロホスフェート
HOBT :N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
DCM :ジクロロメタン
NEM :N-エチルマレイミド
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
DMF :ジメチルホルムアミド実施例1 一般的ペプチド合成
使用されるペプチドは固相化学の標準的操作により合成し、そし
て調製用HPLCにより精製した。各ペプチドの純度を分析用HPLC、アミノ酸分析お
よび質量分光測定により検査した。すべてはNeosystems Laboratoire(Strasbou
rg,France)の製品であった。
ペプチドは下記一般操作を用いて組み立ておよび開裂させた。
用いられた樹脂は当初負荷0.9meq/gを有する4-メチルベンズヒドリルアミン
(バッチR2161)であった。各ペプチドにつき450mgの出発樹脂(0.4ミリモル)
を使用した。
1.組み立て
中和後、下記カップリング/脱保護プロトコルが用いられた(容量:各溶媒に
つき10ml)。
a)ニート(Neat)TFA 1分
b)ニートTFA 3分
c)流れ洗浄メチレンクロライド
d)イソプロパノール 0.5分
e)ジメチルホルムアミド(DMF) 0.5分(3回)
f)ジメチルホルムアミド流れ洗浄カップリング
5当量のBocAA、BOPおよびHOBTをDMF5ml中に溶解させ、そして樹脂に加えた
。発泡開始後、ジイソプロピルエチルアミン0.5mlを加え、そして13分間攪拌を
継続した。2回のDMF洗浄後、同じ条件下でダブルカップリングを行った。アセチル化
最後の脱保護工程後、DMF 10 ml中の10当量の無水酢酸および10当量のDIEAを
用いてアセチル化を行った。
反応時間:10分間
ひとたび組み立てが達成されると、ペプチドに樹脂をDMF、DCMおよびエーテル
で洗浄し、そして次に窒素気流の下乾燥した。
2.開裂
ペプチドを樹脂から開裂させ、そして0℃で45分間HF/アニソール(容量比9
/1、ペプチド樹脂1g当たり10ml)で処理することにより脱保護した。
HFを蒸発させ、エーテルで沈澱させた後、粗製ペプチドをニートTFA中に可溶
化させ、濾過した。
次にTFAを減圧下に蒸発させ、そして再びペプチドをエーテルで沈澱させた。
この段階で生成物はすぐ精製できる状態にあった。
3.精製および分析
それぞれのペプチドを逆相C18カラム(15〜25μm)上、アセトニトリル/水
(0.1%TFA)の線形グラジエントを用いてHPLC精製した。純度>95%を有するフ
ラクションを集め、凍結乾燥した。次にこの精製ペプチドをHPLCにより分析し、
そしてサンプルを加水分解してアミノ酸分析した。各ペプチドと共に送られる分
析デー
タシートに結果を書き留めた。
精製に用いられる基本的戦略は常に同じであった。調製用精製に用いられるグ
ラジエントのみが、それぞれのペプチド個々の初期保持時間の如何によって異な
った。実施例2
ペプチドFVII-5
使用された樹脂は当初負荷0.63meq/gを有するBoc-Cys(4-MeBzl)-PAM樹脂
(バッチ52172)であった。0.96gの出発樹脂(0.6ミリモル)を用いた。
用いられた組み立て/カップリング/開裂操作は前記したと同じであるが、下
記の変更を加えてある。
1.組み立て
a)DCM中TFA 55% 5分
b)DCM中TFA 55% 25分
2.開裂
エーテルで沈澱した後、ペプチド樹脂を水中の10%酢酸30mlで洗い、そして凍
結乾燥した。
3.精製−環化
溶媒組成
A:水0.1%TFA
B:アセトニトリル/溶媒A(容量比60/40)
粗生成物を逆相HPLC上、アセトニトリル/水(0.1% TFA)、10〜80%Bの線
形グラジエントを用い、30分間予備精製した。
純度>80の直線状ペプチドを含有するフラクションのすべてを集め、そして容
量を水で0.5リットルとなるよう調整した。この溶液をDIEAを用いてpH8.5に調整
し、そして磁気攪拌下、周囲温度で一夜放置した。環化反応の進展は、反応混合
物のサンプルをN-エチルマレイミド(NEM)と同時注入することにより追跡した
。
24時間後、環化が完結した。次に酢酸を用いてpHを2.5に低下させ、そして減
圧下に溶液を濃縮したのち凍結乾燥した。
次に環状ペプチドをRP-HPLC(30分間でB5%から30%までの線形グラジエン
ト)により95%まで精製した。
最終生成物の純度および同定は、分析用HPLC、アミノ酸分析および質量分光測
定により制御した。実施例3 ペプチドFVII-1
このペプチドは90mgのFmoc-Ala-Wang樹脂(0.67meq/g)から出発し、Fmoc/
t-But戦略を用いて合成した。
1.組み立て
脱保護/カップリングに下記プロトコルを用いた。
a)DMF中ピペリジン25% 2分
b)流れ洗浄DMF
c)DMF中ピペリジン25% 4分
d)流れ洗浄DMF
e)DMF中ピペリジン25% 6分
f)流れ洗浄DMF 5回反復
2.カップリング
5当量のFmoc-AA、BOPおよびHOBTをDMF3ml中に溶解させ、そして樹脂に加え
た。気泡が出始めたら、0.13mlのDIEAを加え、そして13分間カップリングを続け
た。2回DMFで洗ったのち、前記したようにしてダブルカップリングを実施した
。
3.開裂
ペプチドの開裂および脱保護はTFA(83.3%)、水(4.2%)、チオアニソール
(4.2%)、エタンジチオール(2.1%)およびフェノール(6.25%)の混合物5
mlを用いて2.5時間処理することにより達成された。濾過後、この混合物を冷エ
ーテル25ml中に注入した。沈澱したペプチドを遠心分離し、そしてエーテルで2
回洗った。次にこの生成物を水に溶解させ、凍結乾燥し、そしてそれ以上精製す
ることなく使用した。実施例4
他の合成ペプチドが実施例1記載の操作と同様にして製造された。
表1には合成されたすべてのペプチドを列記する。
実施例5 FVIIa/TF活性のアッセイ
ペプチド(0〜1mM)を0.1MトリスHCl pH7.2中組織因子
と共に22℃で30分間プレインキュベーションし、次にX因子(American Diagnos
tica Inc.,Greenwich,CT USA;70nM)を加え、
びCaCl2(5mM)を加えた。インキュベーションを30分間継続し、そして必須Ca2+
を除去するEDTA(50mM)を用いてクエンチした。
Sweden)の加水分解をモニターすることにより定量した。
結果を図1に示す。実施例6
異なる濃度のペプチドFVII-5の効果を実施例5記載のアッセイ操作を用いて調
査した。この実験はペプチドFVII-5Dを用いて反復した。
結果はそれぞれ図2および図3に示す。実施例7
FVII-5によるFX活性化阻害の動力学を調査した。種々に濃度を変動させたFVII
-5をTFおよびFVIIaの存在下または非存在下に異なる濃度のX因子とインキュベ
ートした。
結果を図4に示す。いずれのグラフも同じデータに基づいており、
そして両方共FVII-5によるX因子活性化の非競合的阻害を示し、このことは従っ
て阻害がX因子結合より早期の段階で起こること、すなわち阻害かFVIIa/TF複
合体形成時に生ずることを示している。実施例8 アポTF/FVIIa触媒活性のアッセイ
この比色定量アッセイは、隣脂質の非存在下に組換えヒトTFに結合した場合の
精製ヒトFVIIaのアミド分解(触媒)活性を直接測定するのに用いられた。
プロトコル
最終インキュベーション容量200μLを用いてマイクロタイタープレートウエ
ル中で反応を行った。水中に溶解した試験化合物(最終濃度0〜1mM)を、NaCl
(150mM)およびBSA(1mg/ml)を含有するトリス緩衝液(100mM)、pH7.2の中
で組換えヒト組織因子(American Diagnostica,cat#4500;5nM)およびCaCl2
(5mM)と共に、周囲温度で30分間プレインキュベーションした。VIIa因子(En
zyme Research Laboratories,cat#HFVlla;5nM)を加え、そしてインキュベ
ーションを60分間続けた。次に色原性基質S2288(Chromogenix cat#820852;0.
5mM)を加え、そして組織因子アポプロテイン/VII因子複合体(アポTF/FVIIa
)の酵素活性を405nmでモニターした。実施例9
HT 1080細胞表面TF/FVIIaにより伸介されたFXの活性化のアッセイ
このアッセイ系は、その細胞膜にTFを発現する生きた細胞の表面上の天然のTF
/FVIIa複合体の触媒活性を測定するのに使用した。活性は添加されたFXに及ぼ
す細胞表面TF/FVIIaの作用により生産されたFXaのアミド分解(触媒)活性とし
て測定された。このアッセイに選択されたセルラインはヒト繊維肉腫HT-1080(A
merican Type Culture Collection CCL 121)であった。
プロトコル
HT-1080細胞を少量の血清含有培地に懸濁させ、そして約50〜100細胞/マイク
ロキャリアの割合でマイクロキャリア(Cytodex-3,Pharmacia)と混合した。細
胞は通常2時間以内にマイクロキャリアに付着し、そして次により多量の培地を
有する通常のローラーボトルに移すことができた。マイクロキャリア細胞調製物
を次にカルシウム不含緩衝液中で2回洗浄して結合血清因子を除去した。試験し
た9種の異なる洗浄緩衝液のうち、‘ハンクス(Hank's)緩衝塩溶液’が、i)
血清因子の繰越しの低さ、ii)マイクロキャリア球への細胞付着に及ぼす影響の
少なさ、iii)細胞膜への少ない損傷、およびiv)細胞表面TF活性の高さ、を考
慮した場合に最適であると判明した。マイクロキャリア球をハンクス緩衝液中に
再懸濁し、そしてビーズを計測した。
次にFVII(Enzyme Research Laboratories cat#HVlI 1007;5pM)(および阻
害アッセイにおけるインヒビター)を加え、そしてこの混合物を30分間平衡化せ
しめ、次にFX(Enzyme Research Laboratoriescat#HFX 1010;50nM)およびCaC
l2(5mM)を加えた。FX形成速度をFXaの色原体基質S2765(Chromogenix cat#8
21413)および405nmでの吸光増大の測定を用いるアミド分解アッセイにより測定
した。TF活性はマイクロキャリア懸濁液を単に希釈することにより容易に調整さ
れた。アリコートがとり出される場合に懸濁液を攪拌することにより、変動は最
小限に保つことができた。それは14±7%と測定された。
細胞によるFX活性化は細胞表面TFに事実依存するということが、図5に示され
るようにヒトTFに対する中和性モノクローナル抗体の使用により示すことができ
た。FVIIを用いる細胞結合TFの滴定では、細胞当たり約11,000のTF分子または0.
8ng/106細胞が示された。FX活性化もインキュベーション時間および添加された
FVIIに依存した(図6&7)。測定された活性がFXaを表わすことは、TAP(ダニ
抗凝固剤ポリペプチド、G.Vlasuk,Corvas Int.)を用いる活性の阻害により証
明された(図8)。
図面の説明
図5 組織因子に対する中和性モノクローナル抗体(American Diagnostica#45
04)による、細胞仲介X因子活性化の阻害。HT-1080細胞と抗体を室温で1時間
プレインキュベーション
し、次にVII因子(5pM)およびX因子(56nM)を加えた。反応を2時間継続さ
せ、そしてEDTAの添加によりクエンチした。Xa因子の形成はXa因子色原性基質(
Chromogenix,S2765)を用いるアミド分解アッセイによりモニターした。阻害は
>95%に達し、このことは組織因子への完全なる依存を示している。
図6 0(■)および1nM(●)のVII因子を用いるX因子活性化の時間的経過
。
図7 添加されたVII因子に対する、細胞仲介X因子活性化の依存。三回の測定
の平均。アッセイ間変動は12±14%であった。
図8 HT-1080細胞表面TF/FVIIaにより生成したFXaアミド分解活性のTAP(ダニ
抗凝固剤ポリペプチド)による阻害。実施例10
細胞表面TFにより開始された血漿凝固のアッセイ
生きた細胞の表面上に発現された組織因子(TF)により誘発された血漿凝固(
すなわち凝固時間)を測定するために、新規アッセイ系が考案されている。この
アッセイはマイクロキャリア表面付着性のヒトまたは動物細胞を使用しており(
図9参照)、それにより電磁凝固計の攪拌測定ウェル中における既知量のTF活性
の再現性ある
提示が可能となる。使用される細胞は正常または形質転換されたものであること
ができ、そして単球、内皮細胞、繊維芽細胞等のような表現型であることができ
る(図10参照)。
この新規なアッセイは特に開発され、そして血清環境中の生きた細胞を用い、
凝固の外因性経路に及ぼす合成ペプチドおよびペプチド擬似化合物の作用を決定
するのに高度に有用であるよう特性化されている。ヒトFVIIのアミノ酸配列に基
づく合成ペプチドの阻害作用に関する結果が示される。
プロトコル
マイクロキャリア細胞調製物は次のようにして作られる。形質転換系の初代単
離物または継代培養物から得られた細胞(図10参照)を少量の血清含有培地中に
懸濁させ、そして約50−100細胞/マイクロキャリアの割合でマイクロキャリア
(Cytodex-3,Pharmacia)と混合する。細胞は通常2時間以内にマイクロキャリ
アに付着し、そして次により多量の培地を含有する通常のローラーボトルに移す
ことができる。マイクロキャリアを約20〜60個の細胞で均一に被覆することは、
多数の細胞が入手できる場合には、軽質転換細胞を用いて直接、または初代培養
物(例えば膳帯静脈内皮細胞)が用いられる場合は2日増殖後に達成できる。TF
を発現しない細胞(例えば、単球または内皮細胞)の初代培養物は、細菌性リポ
多糖類(LPS)または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)のような作用物質と付着
細胞をインキュベーションすることにより刺激してTFを発現
されても良い(図10参照)。
外因性凝固活性をアッセイするには、マイクロキャリア細胞調製物を初めにカ
ルシウム不含緩衝液を用いて洗浄して結合血清因子をとり除く。次にカルシウム
含有緩衝液と血漿を加え、そして凝固時間を電磁凝固計中で自動的に測定する。
凝固時間はマイクロキャリア懸濁液を単に希釈することにより非常に好都合に調
整(例えば35秒)でき、そしてこの懸濁液を、その一部分がとり出される場合は
攪拌するならば再現性が容易に得られる。凝固時間はウサギ脳トロンボプラスチ
ンを用いて生成されたlog-log検量曲線により自由裁量TF単位に変換できる。
得られる系は、凝固因子のそれぞれが欠乏した免疫涸渇ヒト血漿パネルの使用
により、凝固の外因性経路を忠実に表わすことが示されうる。例えばECV304ヒト
内皮細胞(American Culture Collection CRL-1998)により仲介された凝固は明
らかにFVIIおよびFXに依存している(図11参照)。従ってFXの直接の活性化は存
在しない。凝固は細胞表面TF/FVIIにより仲介される。このプロ凝固剤活性が真
実にTF仲介凝固を表わすということは、全ての凝固活性を消滅させうるヒトTFに
対する中和性モノクローナル抗体の使用により例証された(図12)。
図面の説明
図9 細胞表面により仲介された血漿凝固のマイクロキャリアアッセイの原理。
マイクロキャリア表面上に付着する生きた細胞
(例えばヒトHT-1080繊維肉腫;ATCC CRL 121)をThrombotrackTM電磁凝固計(N
ycomed)のインキュベーションウェル中でカルシウム含有緩衝液および血漿と混
合する。凝固時間はフィブリン繊維の形成により生成する、磁気ボールの動きに
対する抵抗増大により測定される。Cytodex-3マイクロキャリア上に付着するHT-
1080細胞は、使用できるTF発現性細胞の種類の一例として下方のはめ込み部分に
示される。
図10 マイクロキャリアに付着する細胞種類の選択物の凝固活性。活性はウサギ
脳トロンボプラスチン(Nycomed)を用いて生成させた検量曲線から計算した、1
05細胞当たりのTF単位として表わされる。示される細胞種類は次のとおりである
。すなわち、RD、ヒト横紋筋肉腫細胞(ATCC CCL 136),HT-1080、ヒト繊維肉
腫細胞(ATCC CRL 121);HE US、ヒト臍帯静脈内皮細胞の未刺激初代培養物;H
E ST、細菌性リポ多糖類(1μg/ml;5時間)で刺激後のヒト臍帯静脈内皮細
胞;ECV-304、ヒト内皮細胞(ATCC CRL 1998);HM US、未刺激ヒト末梢単球お
よびHM ST、細菌性リポ多糖類(0.5μg/ml、2時間)で刺激後のヒト末梢単球
。
図11 マイクロキャリアアッセイにおいて、免疫涸渇ヒト血漿(American Diagn
ostica)の使用により例証されるECV-304仲介凝固の、特異的凝固因子への依存
。VII因子およびX
因子への完全な依存に注目されたい。
図12 ヒトTFに対する中和性モノクローナル抗体(American Diagnostica cat#
4504)の使用によるマイクロキャリアアッセイにおけるECV-304細胞に関する凝
固活性の特性決定。ほとんどすべての凝固活性が中和性抗体により消滅し、従っ
てTFの機能に高度に依存することを示している。実施例11
FVIIペプチドによるTF/FVIIアッセイの阻害
ELISAアッセイ
図13に示される阻害結果は、“ヒンジ”領域(すなわちGLAドメインと第1番
目のEGFドメインの間の残基41〜48、UNIVERSITY OF TEXAS)からの配列および第
1番目のEGFドメインそれ自体(すなわち残基50〜61、Clarke et.al.)からの
配列に加え、第2のEGFドメイン中に付加的な配列(特に95〜104)が存在するこ
とを示しており、これらはこの結合アッセイでペプチドとして提示された場合は
阻害剤である。ペプチド95〜104はこのアッセイにおいては103〜111(CORVAS In
t.)よりも阻害剤としてかなりより良好であった。
アポTF/FVIIaアミド分解活性の比色定量アッセイ
この種類のアッセイを用いる試験では、ヒトFVIIの残基95〜104を表わすペプ
チドはTF/FVII複合体形成の良好な阻害剤であり、そしてペプチド103〜111(CO
RVAS Int.)より良好であることがさらに示された(図14および15参照)。残基9
5はペプチド95〜104の阻害特性にとって重要な寄与物であることに注目すべきで
、このことはペプチド95〜104に比較してペプチド96〜104の活性が非常に低いこ
とにより示される(図14)。ある種のペプチド混合物、例えば95〜104と72〜81
の混合物を阻害剤として試験した場合の相乗作用も明白であった(図16参照)。
動力学的実験では、ペプチド95〜104による阻害はFVIIaの触媒部位に関して非競
合的であることが示され(図17参照)、このことはFVIIaの酵素活性の直接阻害
よりむしろTF/FVIIa複合体形成の阻害と一致する。
細胞表面TF/FVIIaによるFXの活性化
ペプチド95〜104はやはりこのアッセイで試験されたペプチドのうちで明らか
に最良の阻害性ペプチドであり、そして103〜111(CORVAS Int.)よりかなり良
い(図18参照)。残基95〜97はペプチド95〜104の阻害特性にとって重要な寄与
物であったことに注目されたい。
細胞表面TF/FVIIaにより開始される凝固
このアッセイ系は、反応混合物が全ヒト血漿を含有しており、そしてそれゆえ
インビボ内皮細胞の管腔(Iuminal)表面の環境をかなりより密接に表わす点で
、前記したものとは決定的に相異した。この系においても、ペプチド95〜104が
良好な阻害剤であり、これに41〜48(TEXAS UNIVERSITY)および91〜102が続い
た(図19)。95〜104の阻害効果も明らかに残基95に依存している。114〜127は
中程度の阻害剤であったことに注目されたい。もう一度、95〜104はこの系にお
いても103〜111(CORVAS Int.)よりかなり良い阻害剤であった(図20)。
図面の説明
図13 合成FVIIペプチド(全て0.5mMにて)により生じた固定化rTFへのFVIIの結
合阻害のELISAアッセイ。ペプチド配列に関しては前記ペプチドの表1参照。C
およびLは、末端システインを有するペプチドの環状および直線状形態をそれぞ
れ示す。
図14 合成FVIIペプチド(全て0.5mMにて)により生じたアポTF/FVIIaアミド分
解活性阻害の比色定量アッセイ。CおよびLは末端システインを有するペプチド
の環状および直線状形態をそれぞれ示す。
図15 Bioreg(95-104)およびCorvas Int(103-111)により選択
されたFVIIペプチド配列によるアポTF/FVIIaアミド分解活性の阻害。
図16 アポTF/FVIIaアミド分解活性の相乗的阻害。数字は95〜104単独(■)、
95〜104と固定濃度(0.5mM)の72〜81の混合物(△)、および0.5mM72〜81単独
(●)での阻害を示す。2種類のペプチドの等モル混合物の理論的(相加的)効
果を記号なしの実線で示す。
図17 ペプチド95〜104によるアポTF/FVII活性の阻害様式を分析する動力学的
実験。この阻害は明らかに非競合的であり、従って観察される阻害はFVIIaの活
性部位への作用により仲介されるものではないことを示している。
図18 HT-1080細胞表面上のTF/FVIIaによるFX活性化の、FVIIペプチドによる阻
害。結果は各ペプチドの0.5mMについて示される。
図19 HT-1080およびECV304細胞表面上のTF/FVIIaによる血漿凝固に及ぼす合成
FVIIペプチド(全て0.5mMにて)の選択の作用。示されるペプチド番号はヒトFVI
Iのアミノ酸配列を指す。CおよびLは末端システインを有するペプチドの環状
および直線状形態をそれぞれ示す。
図20 Bioreg(95-104)およびCorvas Int(103-111)により選択された合成FVI
Iペプチド配列による、ECV-304細胞表面TF仲介凝固の阻害。
前記ペプチド阻害実験の結果を以下に表示する。
ペプチド阻害結果のまとめ
実施例12
ペプチド阻害剤の特異性の確認
凝固アッセイにおいて観察されるペプチドの作用は、考えるに凝固多段反応(
cascade)に寄与する数種の構成分のうちの他の一種またはそれ以上に及ぼす作
用ゆえであり得よう。それゆえこの可能性を、接触活性化により開始され、そし
てそれゆえ内因性および通常の経路の凝固の凝固因子、すなわちTF/FVII以外の
すべての凝固因子を包含する凝固アッセイにペプチドを加えることにより試験し
た。(CephotestTM,Nycomed)。この系において、ペプチド95〜104、91〜102お
よび103〜111は不活性であったが一方FX(TAP)およびトロンビン(Hirudin;HI
R)の対照阻害剤は強い阻害性を示した(下記図21参照)。従って、前記したT
F/FVIIにより開始される凝固アッセイにおいて観察される作用は事実TF/FVII
複合体への直接作用によるという証拠が得られた。
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I,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,VN