【発明の詳細な説明】
ヒドロキシアルキル/アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムの製造発明の背景
本発明は、アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム界面活性物質の製造
に特に有用なヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸
アンモニウムに関し、より詳しくは、ヒドロキシアルキルスルホン酸の脂肪酸エ
ステルのアンモニウム塩の製造に関する。さらに詳しくは、本発明は、一般式R
CO(O)R'SO3M[式中、Rは炭素原子5〜23個を有する一価の脂肪族炭化
水素ラジカルであり、R'は炭素原子2〜4個を有する二価のアルキレンラジカ
ルであり、Mはアンモニウム陽イオンである]の界面活性物質を製造するために
、溶液のイセチオン酸アンモニウムを使用する方法に関する。好ましい具体例に
おいて、本発明は、アルカノイルイセチオネートのアンモニウム塩、例えば、コ
コイルイセチオン酸アンモニウムを製造するための、水溶液のイセチオン酸アン
モニウムの使用法に関する。さらに、本発明は、そのような反応が金属反応器、
例えばステンレス鋼オートクレーブ(これは、適切な予防手段を取らなければ、
金属汚染、例えば鉄、および製品の変色に加えて、反応器の腐蝕を生じる)で行
われたときに、反応器の腐蝕を防止することに関する。
アルカノイルアルキルスルホン酸のアルカリ金属、即ちナトリウムまたはカリ
ウム塩が、米国特許第3429136号に記載されている。そのような物質のう
ちで、ココイルイセチオン酸ナトリウムが個人ケア用途、例えば米国特許第46
63070号に記載されているような合成洗剤バー(bars)、に商業的に最も幅
広く使用されている。ココイルイセチオン酸ナトリウム(SCI)は事実上室温
で水に不溶性であり、従ってシャンプーのような透明な液体処方に使用するのに
は限界がある。
対照的に、1991年6月26日提出の同時継続中の米国出願第07/721
741号は、ココイルイセチオン酸のアンモニウム塩、即ちココイルイセチオン
酸アンモニウム(ACI)が、室温で水に非常に可溶性であることを開示してい
る。
水中におけるその高い溶解性によって、比較的純粋なACI、即ち少なくとも8
5%陰イオン活性のACIの、最大約40重量%までの透明な、即ち濁っていな
い、溶液を製造し得ることが見出された。現在のところ、アルカノイルアルキル
スルホン酸アンモニウム、例えばココイルイセチオン酸アンモニウム、を商業的
に入手できない。米国特許第4663070号は、C10からC16のアシルイセチ
オネートのアンモニウム塩について一般的に言及しているが、特に高い純度およ
び陰イオン活性のそのような物質の製造方法については記載しておらず、特に水
溶液のイセチオン酸アンモニウムに関しては記載していない。
米国出願07/721741号に、アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニ
ウム、例えば、ココイルイセチオン酸アンモニウムのようなアルカノイルイセチ
オン酸アンモニウムが、ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイ
セチオン酸アンモニウムを、炭素原子約6〜約24個を有する脂肪酸と共に、ア
ルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム生成物の炭化が起こる温度以下で加
熱することによって、製造できることが開示されている。さらに、少量のアルカ
リ性試薬、好ましくは高沸点、相対的不揮発性、相対的無水の有機アミン、例え
ばトリエタノールアミンのような第三アミン、を混合して、生成物の酸性度を中
性に近いpH約6〜約8に調節し、続いてこの生成物を水に溶解し、それによっ
てアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムの水溶液を形成することによっ
て、加水分解による重大な分解のない前記固体生成物を水溶液として反応器から
取り出すことができることも開示されている。実質的に透明な、即ち濁りのない
、そのような生成物の溶液を、透明なシャンプー処方のような美容用途に使用す
ることができる。発明の要約
本発明は、脂肪酸、例えばココ脂肪酸、およびヒドロキシルアルキルスルホン
酸アンモニウム、例えばイセチオン酸アンモニウム、から製造されるアルカノイ
ルアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばココイルイセチオン酸アンモニウム
に関し、該ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸ア
ンモニウムは、管理pH条件下で、重亜硫酸アンモニウムとアルキレンオキシド
、
例えばエチレンオキシドとを反応させることによって製造される。本発明の方法
は、硫酸アンモニウム、アルカノールアミン、例えばエタノールアミン、および
アルキレングリコール、例えばエチレングリコールのような不純物を低レベルで
含有する実質的に純粋なヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイ
セチオン酸アンモニウムを生成する。ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウ
ム、例えばイセチオン酸アンモニウムを製造するこの方法の結果として、該ヒド
ロキシアルキルスルホン酸アンモニウムを水溶液として使用して、脂肪酸、例え
ばココ脂肪酸と反応させ、アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム、例え
ばココイルイセチオン酸アンモニウムを形成する。従って、本発明の方法は、得
られるアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばココイルイセチオ
ン酸アンモニウムが、透明液体製品に使用されるのに許容される低さの色および
透明点を有するのに十分低いレベルにヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウ
ム中の不純物を減少させるために結晶化することによって、ヒドロキシアルキル
スルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸アンモニウムを精製する必要がな
い。重亜硫酸アンモニウムおよびアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド
の反応の間にpHを制御する2つの方法を、下記に詳細に述べる。1つの方法は
、重亜硫酸アンモニウムおよびアルキレンオキシドの反応混合物の初期pHを下
げることを含む。もう1つの方法は、実質的に反応全体を通してpHを規定の範
囲内に維持するために、反応混合物中のpHの上昇に応じて、酸性中和剤を反応
混合物に添加することを含む。
さらに関連する具体例において、本発明は、ヒドロキシアルキルスルホン酸ア
ンモニウムおよび脂肪酸を、金属含有反応器、例えば、ステンレス鋼オートクレ
ーブ中で反応させて、アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムを生成する
ことに関し、生成物の汚染および変色をも引き起こし得る金属含有反応器の腐蝕
を防止する方法を提供するものである。この具体例において、本発明は、次亜燐
酸(HPPA)またはHPPAの塩をヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウ
ムおよび脂肪酸の反応混合物に加えることを包含し、アルカノイルアルキルスル
ホン酸アンモニウム反応生成物中の金属の分析によって判定すると、これの存在
に
よって金属含有反応器の腐蝕が大いに減少される。発明の詳細な説明
一般式RCO(O)R'SO3M[式中、Mはアンモニウム陽イオン]の界面活性
物質、例えばアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムは、ヒドロキシアル
キルスルホン酸アンモニウム、特に水溶液のイセチオン酸アンモニウムでの脂肪
酸の直接エステル化を含む方法によって製造することができる。前記一般式にお
いて、Rは炭素原子6〜24個を含む脂肪酸の脂肪族炭化水素残基を表わし、即
ちRは炭素原子5〜23個を含む一価の脂肪族炭化水素ラジカルであり、R'は
炭素原子2〜4個を含む二価の分岐鎖または直鎖炭化水素ラジカルを表わす。好
ましくは、Rは、溶解性および洗浄力の理由により、炭素原子約7〜約17個を
有する脂肪族炭化水素ラジカル(炭素原子8〜18個を含む脂肪酸)である。よ
り好ましくは、Rは炭素原子約9〜約17個を含む脂肪族炭化水素ラジカルであ
り、R'は二価のエチレンラジカル、即ち(−CH2−CH2−)である。
脂肪族炭化水素ラジカルRは、直鎖および分岐鎖脂肪族ラジカルを含み、さら
に、例えば、天然油脂から誘導される脂肪酸に見出されるような、記載した炭素
鎖長の範囲内の脂肪族ラジカルの混合物を含む。本発明に使用される脂肪酸は、
合成によって製造することができるが、都合のよいことに、例えば、ヤシ油、パ
ーム油、ババスー油、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、ナタネ油、トウモ
ロコシ油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、紅花油および麻実油(水素化
および非水素化)のような天然の植物油脂から誘導される混合脂肪酸として入手
することができる。ラウリン酸、カプリル酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パル
ミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸およびオレイン酸もまた、単独また
は混合で、または脂肪酸反応体の一部の代わりに、使用することができる。主に
C8〜C18脂肪酸の混合物を含むヤシ油から誘導される脂肪酸は、好ましい脂肪
酸反応体を代表するものである。
本明細書に記載の方法に反応体として使用されるヒドロキシアルキルスルホン
酸のアンモニウム塩は、一般式HOR'SO3M[式中、R'およびMは前記定義
と同様である]で表わすことができる。さらに詳しくは、ヒドロキシアルキルス
ル
ホン酸アンモニウム反応体は、一般式:
[式中、Aは、水素、メチルおよびエチルから成る群から選択され、好ましくは
水素であり、即ちイセチオン酸アンモニウムである]で表わすことができる。
1991年6月26日提出の同時係属中の米国特許出願第07/721741
号は、例えば米国特許2820818号に記載されているように、前記エステル
化工程に使用されるヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムが、次亜硫酸ア
ンモニウムと炭素原子2〜4個を含むアルキレンオキシド、即ちエチレンオキシ
ド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドとの反応によって製造すること
ができることを開示しており、また、商業的入手の次亜硫酸アンモニウムが硫酸
アンモニウムを不純物として有意量、例えば60%次亜硫酸アンモニウム溶液中
2%硫酸アンモニウム、含むことを記載している。次亜硫酸アンモニウム反応体
に存在する硫酸アンモニウムはまた次に、そのような次亜硫酸アンモニウムから
製造されるヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム中に不純物として存在す
る。例えば、商業的入手の次亜硫酸アンモニウムから製造されるイセチオン酸ア
ンモニウムが、6.5重量%の硫酸アンモニウムを含むことが見出されている。
同時係属中の米国特許出願第07/721741号はさらに、純粋な二酸化硫
黄とアンモニアを反応させ、続いて得られる次亜硫酸アンモニウムとC2〜C4ア
ルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドを反応させることによって、好まし
くは硫酸アンモニウム2重量%未満を含有するヒドロキシアルキルスルホン酸ア
ンモニウム、例えばイセチオン酸アンモニウムを製造することができることを開
示している。硫酸アンモニウム2重量%未満、好ましくは1重量%未満含有する
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えば、イセチオン酸アンモニウ
ムを、商業的入手の次亜硫酸アンモニウムを精製することによって、またはそれ
から製造されるヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムを精製することによ
って、例えばイセチオン酸アンモニウムを結晶化することによって、製造するこ
とができることも開示している。そのような結晶化イセチオン酸アンモニウムは
一般に硫酸アンモニウム1重量%未満で得ることができる。
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムと脂肪酸の縮合反応が金属含有反
応器、例えばステンレス鋼オートクレーブ中で行われるとき、容器の金属の腐蝕
が生じる。そのような腐蝕を防止するために、この反応をガラス反応器中で行な
うことができるが、商業上は実用的でない。反応器の金属腐蝕はまた、アルカノ
イルアルキルスルホン酸アンモニウム生成物を、反応器の金属表面から出る金属
腐蝕生成物、例えば鉄で汚染させる結果となる。鉄汚染は、アルカノイルアルキ
ルスルホン酸アンモニウム生成物の変色を生じ、該生成物を透明な液体組成物に
使用するのに望ましくないものにする。さらに、鉄汚染物はまた美容組成物中の
他の成分、例えば香料、と相互作用することがある。
本発明は、ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム生成物、例えばイセチ
オン酸アンモニウムを、商業的入手の次亜硫酸アンモニウムから製造する方法を
提供するものであり、該生成物は、結晶化せずに、特に周囲温度において透明な
液体製品に使用するのに十分に透明なアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニ
ウム、例えばココイルイセチオン酸アンモニウムを生成するために使用するのに
十分に低い不純物レベルを有する。さらに、該アルカノイルアルキルスルホン酸
アンモニウムを、商業的に実行できる反応時間で製造することができる。比較的
純粋なヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸アンモ
ニウムを製造するための本発明の方法は、次亜硫酸アンモニウムとアルキレンオ
キシド、例えばエチレンオキシドの反応混合物のpHを、実質的に反応全体を通
して約4.3から7.0の特定の範囲内に制御することを含む。そのような反応混
合物のpHは反応の進行と共に自然に増加する。本発明によって、pHを制御す
る2つの具体例が開示される。
本発明の1つの具体例において、次亜硫酸アンモニウムとアルキレンオキシド
、例えばエチレンオキシドの反応混合物の初期pHが、適切な酸性試薬を加える
こ
とによって、4.5〜5.2、好ましくは4.6〜5.0、最も好ましくは約4.7
にされる。初期pHを前記範囲内に下げることによって、アルカノールアミンを
生成するためにアルキレンオキシドと反応することができるアンモニウムイオン
の比率が下がる。反応混合物のpHは反応の進行と共になお上昇するであろうが
、実質的に反応全体を通じて中性近くに維持される。好ましくは、残留亜硫酸の
量によって測定して反応が少なくとも90%完成するまで、好ましくは95%近
く完成するまで、pHは約7未満に維持される。
本発明のもう1つの具体例において、次亜硫酸アンモニウムとアルキレンオキ
シド、例えばエチレンオキシドの反応混合物のpHは、一般的には約5.5から
6.0の範囲であるが、実質的に反応サイクルを通じてpHを所望の範囲に維持
するのに十分な量の酸性中和剤を必要に応じて加えることによって、実質的に反
応全体を通じて約5.5から7.0に維持されるが、そうでなければpHは7.0
を越えて上昇する。該中和剤は、亜硫酸のような酸であってもよいが、好ましく
は二酸化硫黄、SO2、であり、SO2ガスを反応混合物中に泡立たせることによ
って迅速に加えることができる。
例えば、次亜硫酸アンモニウム溶液を、等モル量のエチレンオキシドと反応さ
せ、反応混合物のサンプルを定期的に取り出し、亜硫酸含有量およびpHを分析
する。反応混合物のpHが7付近かまたは7を超過するレベルに上昇すると、S
O2を連続的または断続的に加えてpHを約6〜7に維持する。追加のエチレン
オキシドを、加えたSO2に化学量論的に当量の量で、反応混合物に加える。こ
の反応混合物を再び、pHおよび亜硫酸含有量に関して分析する。追加のエチレ
ンオキシドを亜硫酸の残量に対して当量加える;この順序を、残留亜硫酸が許容
されるレベルになるまで、一般に0.35重量%未満、好ましくは0.2重量%未
満になるまで、繰返す。次に反応混合物を真空ストリッピングして残留エチレン
オキシドを除去し、得られるイセチオン酸アンモニウムをココ脂肪酸と反応させ
てココイルイセチオン酸アンモニウムを生成することができる。
次亜硫酸アンモニウムをアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドと反応
させて、対応するヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム生成物、例えばイ
セチオン酸アンモニウムを生成するとき、対応するアルカノールアミンおよびア
ルキレングリコール、例えばエタノールアミンおよびエチレングリコールが、ア
ルキレンオキシドとアンモニアまたは水との反応によって各々形成され、生成物
中に不純物として存在する。例えば、1〜約4重量%のエチレングリコール、お
よび最大12重量%のエタノールアミンが、エチレンオキシドと典型的な商業的
入手の次亜硫酸アンモニウムとの反応によって製造されるイセチオン酸アンモニ
ウム中に見出された。
前記の具体例のいずれにおいても、ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウ
ム生成物中のアルキレングリコールのレベルを低く維持するために、次亜硫酸ア
ンモニウムおよびアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドの反応混合物の
固形物濃度を、70重量%未満に維持するのが好ましい。そのようなヒドロキシ
アルキルスルホン酸アンモニウム中に不純物として、一般に2〜4重量%の量で
存在するアルキレングリコール、例えばエチレングリコールは、生成物の真空ス
トリッピングによって除去することができる。アルキレングリコール不純物を除
去するためのヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸
アンモニウムの真空ストリッピングは、アルキレングリコールのレベルを、1重
量%未満、例えば0.5重量%未満に、容易に減少させる。例えば、温度約14
0℃、および圧力約4〜5水銀柱ミリメートル(mmHg)が、イセチオン酸アン
モニウムのエチレングリコールのレベルを0.5重量%未満に減少させるのに適
切である。相対的に水に不溶性で、そのためにアルカノイルアルキルスルホン酸
アンモニウム生成物の溶液を曇らせるアルキレングリコールエステルを形成する
アルキレングリコールと脂肪酸の反応を最小限にするために、アルキレングリコ
ールが低レベルに維持される。
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム中、硫酸アンモニウム、アルカノ
ールアミンおよび/またはアルキレングリコール不純物の有意量の存在は、脂肪
酸とヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムの反応の開始を遅らせ、その結
果反応時間が長くなることが見出された。そのような不純物が存在すると、低い
純度および陰イオン活性、例えば、85%未満の陰イオン活性、の生成物が製造
されることにもなる。そのような生成物は色が悪く、濁った水溶液を生じる。例
えば、ココ脂肪酸と、商業的入手の次亜硫酸アンモニウムのエトキシル化によっ
て得られるイセチオン酸アンモニウム水溶液の反応は、完了するのに180℃で
14〜16時間を必要とすることが観察された。このようにして得られるココイ
ルイセチオン酸アンモニウムは、非常に色が濃く、かすかな硫化物臭気を有し、
濃色の濁った水溶液となった。さらに、このようにして得られる生成物の陰イオ
ン活性は、80〜82%の範囲に過ぎなかった。有意量の硫酸アンモニウムおよ
びアルキレングリコール不純物がヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム反
応体に存在するとき、ドデシルベンゼンスルホン酸、酸化亜鉛および第四アンモ
ニウム化合物のような通常の触媒を、前記反応に加えることは、反応時間を減少
させるのに有意な効果を有さないことが分った。
これに対比して、ココ脂肪酸と、本発明によって製造され、そのため有意量の
不純物がない、即ちエチレングリコール約1重量%未満、エタノールアミン2重
量%未満、硫酸アンモニウム2重量%未満であるイセチオン酸アンモニウムとの
反応は、180℃で容易に進行することが見出された。この反応は1〜2時間で
開始する。続いて、反応混合物が均質になり、水の蒸留が始まる。この反応は、
全体で約6〜10時間で完了して、高い収量、例えば90〜100%の、高純度
、例えば90から97%、ココイルイセチオン酸アンモニウムが生成される。そ
のような生成物から作られる水溶液は実質的に透明である、即ち濁りがない。
本発明の好ましい具体例によれば、硫酸アンモニウム2重量%未満、好ましく
は1重量%未満、アルカノールアミン、例えばエタノールアミン2重量%未満、
およびアルキレングリコール、例えばエチレングリコール1重量%未満を有する
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸アンモニウム
を、炭素原子約8〜約18個を含有する脂肪酸、例えばココ脂肪酸と共に、15
0℃〜200℃の温度で加熱することによって、陰イオン活性が85%より大き
い、例えば86〜97%のアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム、例え
ばココイルイセチオン酸アンモニウムが、製造される。
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸アンモニウ
ムの水溶液から、アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムを製造するとき
、少なくとも理論量の脂肪酸反応体を使用するのが一般的である。一般に、モノ
カルボン脂肪酸の過剰モル、例えば約3から約10%モル過剰が使用される。し
かし、ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム反応体過剰もまた使用するこ
とができる。従って、脂肪酸とヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムのモ
ル比は、一般に約0.95:1〜約1.1:1である。脂肪酸およびアルキレング
リコールエステル、例えばエチレングリコールエステルが、生成物中に存在する
と、アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばココイルイセチオン
酸アンモニウムの濁った水溶液を生じ、透明な美容処方、例えばシャンプーに使
用できないものになるので、脂肪酸の多量過剰を防止するように注意しなければ
ならない。アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム最終生成物中に存在す
る脂肪酸不純物の量は、一般に5重量%未満、例えば3〜4重量%である。好ま
しくは、脂肪酸不純物の量は、3重量%未満である。アルキレングリコールエス
テルの量は、透明な液体製品を製造するために、好ましくは2重量%未満、より
好ましくは1重量%未満である。
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムおよび脂肪酸の縮合反応のための
反応温度は、一般に150〜200℃である。イセチオン酸アンモニウムおよび
ココ脂肪酸の縮合のための、縮合温度は一般に約150〜190℃、例えば約1
80℃である。200℃より高い温度において、縮合生成物の炭化が起こる可能
性があり、従ってそのような高い温度は避けるべきである。従って、アルカノイ
ルアルキルスルホン酸アンモニウム生成物の炭化が起こる温度より低い温度が用
いられる。
縮合反応は一般に、縮合反応から生じる副生物の水が除去され、反応混合物が
均質になるまで、不活性気体雰囲気下、例えば窒素パージ下で開始される。その
後、部分真空、即ち約500〜700水銀柱ミリメートル(mmHg)を反応器に
適用して、圧力を大気未満のレベルにし、反応が本質的に完了するまで、反応を
前記反応温度で継続し、その後高真空、即ち約5〜10mmHgを適用して未反応
脂肪酸を除去する。その後、真空を除去し、生成物を反応器から取り出す。
高レベル(前記に記載)のアルカノールアミン、硫酸アンモニウムおよびアル
キレングリコール不純物が存在しないとき、前記反応は触媒の不在下に容易に進
行する。このような反応は一般に、反応温度に到達後約1〜2時間で開始され、
約6〜10時間で完了する。要すれば、通常の触媒物質の触媒量を使用して縮合
反応を促進してもよい。そのような触媒は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DD
BSA)、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、酸化亜鉛およびステアリルト
リメチルアンモニウムクロリドのような第四アンモニウム化合物、を含むがそれ
らに限定されない。そのような触媒の混合物もまた使用することができる。その
ような物質の触媒量は一般に、反応体の重量に基づき、約0.1〜約3重量%で
ある。反応混合物はさらに、本明細書において「ヒール」と呼ばれる少量の予備
形成アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばココイルイセチオン
酸アンモニウムを含み、これは、全固形物、即ちヒドロキシアルキルスルホン酸
アンモニウム、脂肪酸およびヒールの合計重量の最大20%まで、好ましくは約
5〜12%を構成することができる。
本発明の方法によって製造されるアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウ
ム、例えばココイルイセチオン酸アンモニウム生成物は、少なくとも約90%の
収量、および少なくとも約85%の純度で得られる。アルカノイルアルキルスル
ホン酸アンモニウム生成物の純度は88〜97%、例えば90〜92%である。
最終生成物の主な不純物は一般に未反応脂肪酸であり、これは好ましくは5重量
%未満であり、3〜4重量%であってもよいが、最も好ましくは3重量%未満で
ある。該生成物の陰イオン活性は、固体アルカノイルアルキルスルホン酸アンモ
ニウムに基づき、少なくとも85%であり、好ましくは約88〜97%である。
固体ACIに基づき85%未満の陰イオン活性を有するココイルイセチオン酸ア
ンモニウムは、透明なシャンプーのような美容製品に使用される透明美容処方の
製造に有用でない濁った水溶液を形成する。本発明の方法によるアルカノイルア
ルキルスルホン酸アンモニウム生成物の陰イオン活性を、ASTM Test Method D16
81-83によって測定することができる。
アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばココイルイセチオン酸
アンモニウム(ACI)は、室温において固体である。ACIは高温においても
固いペーストである。従って、そのような生成物は、それらが製造された反応器
から除去するのが本質的に困難である。そのような物質を水溶液として反応器か
ら取り出すことができれば都合がよいが、ACIのような物質は酸性条件下、水
溶液としては不安定である。ココイルイセチオン酸アンモニウムの水溶液は一般
に、約3.0〜3.5のpHを有する。その酸性pHによって、ACIは、高温に
おいて反応器中の水に溶解すると、容易に加水分解し、それによって生成物の損
失を生じる。
アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム生成物の自然酸性度を、pH約
6〜約8、好ましくは約6.5〜7.5、例えば6.7〜7.2に調節すれば、固体
アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム生成物を、水に溶解することによ
って、有意な加水分解もなく、容易に反応器から取り出し得ることが、同時係属
中の米国特許出願第07/721741号に開示されている。該生成物の酸性度
を調節する際、該生成物を最初に、反応温度から約120℃以下、例えば約50
〜120℃に冷却するのが好ましい。アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニ
ウム生成物の酸性度は、適切なアルカリ性試薬で調節することができ、その例と
しては、有機アミン、例えばトリエタノールアミン、および水酸化アンモニウム
、好ましくは実質的に無水、さらに好ましくは、無水、アルカリ性試薬である。
好ましくは、アルカリ性試薬は、相対的に高い沸点である。即ち、生成物の酸性
度が調節される温度において相対的不揮発性である。さらに、アルカリ性試薬が
美容用途に使用するのに許容されるものであることも好ましい。酸性度を調節後
、十分な水を「中性」アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム生成物と混
合してそれを溶解し、それの水溶液を形成し、生成物を反応器から取り出す。
アルカリ性試薬の添加、および好ましくはそれに続く生成物を溶解するのに十
分な水の添加を、激しく撹拌しつつ行って、反応生成物中の局部的高アルカリ性
度(または高酸性度)状態を避け、また反応器から容易に取り出すことができる
水溶液の形成を補助する。冷却生成物は固形または固いペーストの形態であるた
め、固形生成物を全て溶解するために数時間の撹拌が必要である。得られる水溶
液は
通常約40重量%以下の生成物濃度を有する。生成物のゲル化を防止するために
25〜35重量%の濃度が好ましい。本発明の管理pH法によって製造されるヒ
ドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、例えばイセチオン酸アンモニウムは
、アルカノールアミン、アルキレングリコールおよび硫酸アンモニウムを低レベ
ルで含有するので、それから製造されるアルカノイルアルキルスルホン酸アンモ
ニウムは、室温で、これらの濃度において、透明な、即ち濁りのない溶液を形成
する。
ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムと脂肪酸の縮合反応を行なうため
に金属反応器を使用する場合、反応器の腐蝕およびそれに続く縮合生成物の変色
が、反応混合物に腐蝕防止量の次亜燐酸(HPPA)またはその水溶性塩を組み
込むことによって抑制される。使用されるHPPAの量は、多くのファクターに
依存し、例えば、反応器の材料、反応混合物中の反応体のpHおよび濃度、反応
体中の不純物、温度、反応時間、触媒の個性および量などに依存する。一般に、
反応体の重量に基づき0.01〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%
の次亜燐酸が、十分に腐蝕防止性である。アルカノイルアルキルスルホン酸アン
モニウムを形成するためのヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムと脂肪酸
の反応混合物におけるHPPAの存在は、エステル化反応または金属反応器、例
えばステンレス鋼オートクレーブの腐蝕からの金属不純物以外の不純物のレベル
に影響を及ぼさないと考えられる。
次亜燐酸が下記の関連する実施例に使用されているが、次亜硫酸の種々の塩も
また使用することができる。例えば、次亜燐酸ナトリウムまたはカリウムのよう
なアルカリ金属塩を使用してもよい。次亜燐酸アンモニウムもまた適している。
有害な反応がない限り、次亜燐酸のアミン塩もまた、次亜燐酸のアルカノールア
ミン塩と同様、使用することができる。次亜燐酸が好ましく、一般に約50重量
%の濃度で、一般に水溶液として添加される。実施例中のHPPAの濃度は、反
応体、即ちヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム、脂肪酸、および存在す
るとすればアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムヒール、の固体重量に
基づいて、無水HPPAの重量%として計算されている。
実施例において、次亜燐酸は一段階で加えられる。しかし、本発明の大規模な
実施において、腐蝕抑制化合物、好ましくはHPPAを、工程の数段階において
増量的に加えて、反応の後半段階においても活性HPPAが使用可能であるよう
にするのが好ましい。例えば、選択された量のHPPAを数分割し(必ずしも同
じ量でなくてもよい)、工程のいくつかの段階において反応器に加えてもよい。
HPPAを加えることができる1つの段階は、ヒドロキシアルキルスルホン酸ア
ンモニウム、即ちイセチオン酸アンモニウム、の溶液から水が蒸発する前である
。HPPA添加のためのもう1つの段階は、ヒドロキシアルキルスルホン酸アン
モニウム、即ちイセチオン酸アンモニウム、の溶液から水が蒸発した後であるが
、反応混合物がさらに加熱されて、ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム
、例えばイセチオン酸アンモニウム、および脂肪酸、例えばココ脂肪酸のエステ
ル化反応が起こる前である。HPPAの一部を、アルカノイルアルキルスルホン
酸アンモニウムを製造するためのヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムお
よび脂肪酸のエステル化反応が実質的に完了した後だが、過剰の脂肪酸、例えば
ココ脂肪酸が除去される前に、加えることもできる。より多くのまたはより少な
いHPPA分割を使用してもよいし、反応器の腐蝕が効果的に抑制される限りそ
の他の段階で加えてもよい。
本発明を以下の実施例においてより詳しく説明するが、それらの実施例には多
数の改良および変更が当業者に明らかであり、因って、それらは単に説明するこ
とだけを意図したものである。
実施例1
1リットルのステンレス鋼オートクレーブに、pH4.94を有する重亜硫酸
アンモニウム溶液(57.1%アッセイNH4HSO3)300g、および脱イオ
ン水211gを入れた。オートクレーブを、空気を除去するために窒素で圧力パ
ージした。オートクレーブを35〜40℃に加熱し、温度を冷却水で約35℃に
維持し、圧力を30ポンド/平方インチゲージ(psig)(241kPa)に維持
するためにエチレンオキシド76gを分割して加えた。エチレンオキシドの添加
が完了したとき、温度を数時間約35℃に維持した。イセチオン酸アンモニウム
反応混合
物のサンプルをこの間に取り、pHおよび亜硫酸、SO3 =、含有量に関して分析
し、下記の結果を得た。
前記の最初のサンプルは、残留亜硫酸の重量%から計算して、pHが7を越え
る前に、反応が約91.5%完了したことを示した。最後のサンプルの分析に続
いて、反応混合物に真空を45分間適用して、過剰のエチレンオキシドを除去し
た。この反応混合物を分析し、亜硫酸、SO3 =、0.13重量%、エチレングリ
コール0.29重量%、固形物47.7重量%を含むことが判明した。13C NM
Rによる分析は、エタノールアミン0.9モル%の存在を示した。
撹拌反応フラスコに、前記水性イセチオン酸アンモニウム(〜1モル)304
g、ココ脂肪酸233g(1.1モル)、および予備製造の水性ココイルイセチ
オン酸アンモニウム88g(水溶液中31.0重量%固形物)を入れた。本明細
書の全実施例に使用されている脂肪酸は、Procter & Gamble Co.からのC−10
8脂肪酸である。この反応混合物を110℃に加熱し、約100mm圧下で、45
分間、真空ストリッピングによって水を除去した。
該反応フラスコを開け、p−トルエンスルホン酸一水化物触媒1gを加え、フ
ラスコを再度閉め、窒素パージで150〜160℃に加熱した。3.5時間後、
反応混合物が1つの相になり、前記温度をさらに1時間維持した。次に、過剰の
脂肪酸を、約10mmHgの圧力で4時間、同じ温度で、真空ストリッピングによ
って除去した。
真空を窒素で除去し、反応混合物を110℃に冷却した。水800g中の1.
5g濃水酸化アンモニウムの水溶液を加え、この混合物を50〜60℃で完全に
溶解するまで撹拌した。最終溶液は、pH6.1、固形物30.9%を有し、陰イ
オン活性27.7%であった(100%固形物を基準として89.6%陰イオン活
性)。この溶液を冷やして曇らせ、続いて温めると、溶液は15℃において透明
になった(透明点)。
実施例2
商業的入手の重亜硫酸アンモニウム溶液(60.9%アッセイNH4HSO3)
を、製造業者P.B.& S.Chemical Company,Inc.から得た。pHが4.8に低下
するまで、10℃で、亜硫酸ガスを溶液中に泡立たせた。
ステンレス鋼オートクレーブに、前記溶液800g、および脱イオン水232
gを入れた。反応器の蒸発空間を窒素でパージして空気を除去し、オートクレー
ブを35〜40℃に加熱した。次にエチレンオキシド(EO)220gを加え、
温度を約35〜40℃に維持した。EOの添加の完了に続いて、反応を1時間継
続し、イセチオン酸アンモニウム反応混合物を試料採取し、残留亜硫酸陰イオン
3.9重量%を含み、pH5.7を有することが判明した。エチレンオキシドをさ
らに5g加え、反応を1時間継続した。反応混合物の試料の分析は、pHが6.
0、残留亜硫酸陰イオン含有量2.3重量%であることを示し、反応が94.3%
完了したことを示した。エチレンオキシドをさらに10g加え、続いて反応をさ
らに1時間継続した。得られる反応混合物の分析は、亜硫酸陰イオン含有量が0
.47重量%に減少し、pHが7.7に上昇したことを示した。エチレンオキシド
ンを追加しなかった。反応を1時間継続し、さらに分析したところ、亜硫酸含有
量が0.3重量%に減少したことを示した。この反応混合物はpH7.76を有し
ていた。最後の1時間の反応時間後、この反応混合物を真空ストリッピングして
残留エチレンオキシドを除去し、この反応混合物の最終分析は、残留亜硫酸陰イ
オン含有量が0.24重量%、pHが8.4、固形物含有量が60.5重量%、エ
チレングリコール含有量が0.68重量%であることを示した。13C NMR分析
によると、0.4モル%エタノールアミンもまた存在することが判明した。
撹拌反応スラスコに、前記で生成した水性イセチオン酸アンモニウム247g
、ココ脂肪酸223g、予備調製の水性ココイルイセチオン酸アンモニウム溶液
80g(30.9%固形物)を入れた。この反応混合物を110℃に加熱し、ほ
とんどの水を除去した。反応フラスコを開け、p−トルエンスルホン酸一水化物
触媒1gを加え、フラスコを再び閉め、窒素パージで150〜160℃に加熱し
た。前記温度で7.5時間後、過剰の脂肪酸を、さらに4時間、10mmHg未満で
、真
空ストリッピングして除去した。
窒素で真空を除去し、反応混合物を110℃に冷却した。水800g中、濃水
酸化アンモニウム1.2gの水溶液を加え、混合物を完全に溶解するまで撹拌し
た。最終溶液は、31.0%固形物濃度において、陰イオン活性27.7%(10
0%固形物を基準として89.4%陰イオン活性)であった。冷やして曇らせ、
続いて温めると、この溶液は19℃で透明になった(透明点)。
比較実施例A
イセチオン酸アンモニウムの製造時に未制御の高pHが、それから製造される
ココイルイセチオン酸アンモニウムに与える影響を示すために、商業的入手の重
亜硫酸アンモニウム溶液(57.9%アッセイNH4HSO3)を製造業者、P.B.
& S.Chemical Company,Inc.から入手し、この溶液の入手時のpH5.5を本発
明の方法によって制御しなかった。1ガロンのステンレス鋼オートクレーブに、
重亜硫酸アンモニウム溶液1680gおよび脱イオン水1228gを入れた。空
気を除去するために、オートクレーブを窒素で2回パージした。重亜硫酸溶液を
30℃に加熱し、エチレンオキシド(EO)430gを、温度を30〜35℃、
圧力を40psig(276kPa)に維持するのに必要な量で加えた。EOを
全て加えた後、反応を1時間継続した。反応混合物を分析して、高いレベルの残
留亜硫酸陰イオンが含まれていることが分った。エチレンオキシドを3回(30
、30、60g)反応混合物に加えた。最後に、この反応混合物を真空ストリッ
ピングして、エチレンオキシドを除去した。イセチオン酸アンモニウム反応生成
物は、0.91重量%亜硫酸陰イオンおよび0.36重量%エチレングリコールを
含有していた。13C NMRによる分析は、14.7モル%エタノールアミン、4
.8モル%ジエタノールアミンおよび0.9モル%トリエタノールアミンの存在を
示した。
前記イセチオン酸アンモニウム溶液は47.8%固形物を含有していた。撹拌
反応フラスコにこのイセチオン酸アンモニウム溶液192g(0.6モル)を入
れた。この溶液を窒素下に36℃に加熱し、次に8水銀柱ミリメートルで、45
分間、真空ストリッピングした。この溶液に、ココ脂肪酸138g(10%モル
過剰)および50%水性次亜燐酸(HPPA)0.12gを加えた。この反応混
合物を、
110℃に徐々に加熱し、水の蒸留が遅くなるまでこの温度に維持した。この反
応混合物を次に、約5水銀柱ミリメートルで、2時間真空ストリッピングした。
HPPAをさらに0.2g加え、温度をゆっくりと175℃に上げた。この反応
混合物を175℃に6.4時間維持し、次に約150〜160℃に冷却した。H
PPAをさらに0.19g加え、この反応混合物を、約6水銀柱ミリメートルで
4時間、真空ストリップした。窒素下に約30℃に冷却後、非常に硬質の固体生
成物を、スパチュラで粉砕し、トリエタノールアミン(TEA)1.2gを含有
する水410gに溶解する一方、この溶液の温度を約50〜60℃に維持し、必
要なときにTEAを加えてpHを7±0.5に維持した。TEAさらに3.34g
が必要であった。
ココイルイセチオン酸アンモニウムの最終溶液はpH7.2であり、31.4%
固形物を含有し、陰イオン活性19.0%(100%固形物を基準として60.5
%陰イオン活性)であった。この溶液は、周囲温度において、濃く、曇っており
、38℃(透明点)まで温めて初めて透明になったが、これは透明な液体組成物
に使用するのには許容されない高い透明点である。
比較実施例B
この比較実施例は、重亜硫酸アンモニウムおよびそれから製造されるイセチオ
ン酸アンモニウム中の高硫酸含有量が、そのようなイセチオン酸アンモニウムか
ら製造されるココイルイセチオン酸アンモニウムに与える影響を示すものである
。一般的な商業的入手の重亜硫酸アンモニウムの70%水溶液(566.0g)
を、水225ミリリットル(ml)で希釈し、1リットルのオートクレーブに入れ
た。このオートクレーブを正窒素圧10psig(69kPa)下に封をし、溶液を
60℃に加熱した。エチレンオキシド(EO)をオートクレーブ中の溶液に、1
分間に約2gの割合で加えた。180gをオートクレーブに加えた後に、エチレ
ンオキシドの添加を中止した。EO添加の間ほとんどずっと、オートクレーブ内
の圧力は30〜35psig(207〜241kPa)であった。得られる反応体混
合物を60℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に冷却した。オートクレーブ内の
圧力を除去し、内容物の重さを測った。重量増加は175gであり、溶液のpH
は8.4であっ
た。溶液は、固形物含有量60%、硫酸含有量4.7%であり、これは6.5重量
%硫酸アンモニウムに対応した。
硫酸アンモニウム約6.5重量%を含有する前記のように製造したイセチオン
酸アンモニウムの水溶液(206g)を、機械撹拌機、温度調節器および窒素入
口を備えた反応器に入れた。この溶液を窒素下に140℃に加熱し、水を除去し
た。水の蒸留を中止すると、反応器が徐々に部分真空されて10水銀柱mmに減
圧されて、揮発物が除去された。真空を除去し、ココ脂肪酸209gおよびドデ
シルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒5滴を、反応器中の残留物に加えた
。反応混合物を180℃に加熱し、窒素下に3.25時間撹拌した。この間、反
応は起こらなかった。反応器の加熱を止め、反応混合物を室温で一夜(約16時
間)置いた。
該反応混合物を次に、180℃に再加熱し、窒素下に2時間、撹拌した。どの
ような反応も観察されなかった。次に、p−トルエンスルホン酸(PTSA)触
媒(0.2g)を反応混合物に加え、この混合物を180℃で2時間撹拌した。
水留出物が不在であることによって証明されるように、どのような反応も観察さ
れなかった。次に、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド(0.1g)を
反応混合物に加え、この混合物を180℃で1時間加熱した。有意な反応はなお
観察されなかった。反応器を徐々に排気して10水銀柱ミリメートルの圧力にし
、180℃に維持した。真空下180度で4時間後、反応混合物が均質および濃
厚になった。次に反応器の真空を除去し、生成物を取り出した。180℃におけ
る全反応時間は14時間であった。固体生成物の陰イオン活性が82.3%であ
ることが分った。この生成物は色が濃く、30%水溶液をこの生成物から製造す
ると、濁った溶液が形成された。
比較実施例C
この比較実施例は、イセチオン酸アンモニウム中のエチレングリコールの、そ
れから製造されるココイルイセチオン酸アンモニウム(AIS)に対する影響を
示すものである。500ミリリットル、3首フラスコに、硫酸アンモニウム0.
8重量%、およびエチレングリコール約3.7重量%、およびC−108ココ脂
肪
酸109.5g含有するイセチオン酸アンモニウム水溶液120g(60%固形
物)を入れた。この混合物を、窒素散布下に、1.75時間かけて170℃に撹
拌しつつ加熱した。反応混合物に含まれる水のほとんどがこの間に蒸留された。
縮合反応から水が蒸留を開始する前に、この反応混合物を7時間170℃に維持
した。この反応混合物をさらに3時間170℃に維持した。この間に、水50ミ
リリットルおよび脂肪酸12ミリリットルを留出物として集めた。反応器への加
熱を止め、混合物を室温で一夜置いた。蒸留脂肪酸を反応器に戻し、混合物を撹
拌しつつ再度170℃に加熱し、その温度に2時間維持した。この反応混合物を
次に、ゆっくりと排気して4〜5水銀柱ミリメートルの圧力にし、その圧力に2
時間170℃で維持した。この混合物を次に冷却し、反応生成物を取り出した。
生成物の陰イオン活性が80.2%であることが分った。この生成物の30%水
溶液を製造した。この溶液は濁っていた。
実施例3
これらの実施例は、どのレベルのエチレングリコールおよびエタノールアミン
不純物(これらの不純物をほんの僅かの量含む結晶イセチオン酸アンモニウム(
AIS)に加えられた。)が、溶液において許容されない高い透明点を有するA
CIを生成するかを示すものである。
反応フラスコに、結晶イセチオン酸アンモニウム71.6g(0.5モル)、コ
コ脂肪酸114.8g(0.55モル、理論量の10%過剰)、p−トルエンスル
ホン酸一水化物0.5g、および試験される不純物を入れた。
撹拌しつつ窒素流を開始し、反応混合物を150〜160℃に加熱し、その温
度に保った。一定時間後(不純物および添加する量に依存して、1時間10分〜
9時間25分の範囲)、反応混合物の2つの相が「一緒になった」、即ち、均質
単一相になった。
粘性が増して反応混合物が「ドウ様」ちょう度(“dough-like”consistency
)を展開するように、この反応混合物をさらに2〜4時間150〜160℃に維
持した。反応混合物を4〜8mmHgの圧力および150〜160℃で、2.5〜4
時間、真空ストリッピングすることによって、過剰の未反応脂肪酸を除去した。
冷却後、
反応混合物を細かく砕き、陰イオン活性についてサンプルを分析し、水に溶解し
た。
凝固した反応混合物を50〜60℃で、脱イオン水で撹拌した。pHをpH電
極で監視し、必要なときにトリエタノーアミンを滴下することによってpHを約
7(±0.5)に保った。固形物が完全に溶解したら、必要であれば水を加える
ことによって濃度の最終調節を行なった。
サンプルを曇るまで冷やし、次にサンプルをゆっくりと温めることによって透
明点を測定した。この透明点は、サンプルが透明または本質的に透明(さらに温
めても消えない曇りがほんの僅かある)になるときの温度として測定した。表I
のデータは、イセチオン酸アンモニウム中のグリコールのレベルが0.9%、お
よびアルカノールアミンのレベルが2%に近付くと、それらから製造されるココ
イルイセチオン酸アンモニウム(ACI)の透明点が周囲温度に近付くことを示
している。従って、周囲温度において透明なアルカノイルアルキルスルホン酸ア
ンモニウムを提供するためには、使用されるヒドロキシアルキルスルホン酸アン
モニウムは、実質的に純粋でなければならない、即ち、これら不純物のレベルが
これらの数値未満でなければならない。
比較実施例D
ステンレス鋼Parr反応器に、イセチオン酸アンモニウム321g(44%水溶
液)、ココ脂肪酸223g、およびココイルイセチオン酸アンモニウムのヒール
92g(23.9%水溶液)を入れた。これらの反応体を窒素雰囲気下に105
℃に加熱し、パラ−トルエンスルホン酸触媒(PTSA)1gを添加する前に真
空ストリッピングした。反応混合物を4時間150〜160℃に加熱し、冷却し
、反応器に一夜静置した。翌朝、反応混合物を150〜160℃に再度加熱し、
10mmHgで真空ストリッピングして、過剰の脂肪酸を除去した。サンプルを定
期的に取り、鉄含有量を分析した。加熱前に取った初期サンプルは1.4ppm鉄を
有していた。105℃で加熱した後だが触媒を添加する前に取った第二のサンプ
ルは、16ppm鉄を含有していた。150〜160℃で4時間加熱後に取った
第三のサンプルは、50〜80ppm鉄を含有していた。反応混合物を一夜反応器
に静置し、過剰の脂肪酸を真空ストリッピングした後に取った最終サンプルは、
400ppmを超過する鉄を含有していた。30%固形物溶液に希釈すると、鉄の
濃度は120ppm超過となるであろう。
実施例4
次亜燐酸0.16%(次亜燐酸、およびACIヒールを含む反応体の無水重量
に基づく)を加えること以外は、前記比較実施例Dと同様に反応混合物を作り、
反応させた。次亜燐酸(HPPA)を50%水溶液として加えた。イセチオン酸
アンモニウム溶液からの水が蒸発する前に、HPPAを加えた。反応混合物を3
5分間撹拌した後に取った第一サンプルは、1.9ppm鉄を有していた。水を真空
ストリッピングによって除去した後、反応混合物は触媒添加前に3.0ppm鉄を含
有していた。添加した触媒と共に4時間加熱後、反応混合物は10ppm鉄を含有
していた。4時間真空ストリッピング後の最終サンプルは、34ppm鉄を含有し
ていた。30%固形物に希釈すると、最終反応混合物は10ppm鉄を含有する。
実施例5
0.13重量%HPPAを加えること以外は実施例4と同様に製造した第二反
応混合物は、触媒添加前は1ppm鉄を含有し、カップリング前は13ppm鉄を含有
し、カップリング後は27ppm鉄を含有し、最終非希釈サンプルは20ppm鉄を含
有し、30%固形物の組成物では6ppm鉄と計算された。
前記実施例は、本発明を説明するために示されたものである。本発明の様々な
変更が、下記請求の範囲によって定義された範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】1996年5月10日
【補正内容】
請求の範囲
1.式
RCO(O)R’SO3M [式中、Rは6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸の一価炭化水素残基であり、 R’は2〜4個の炭素原子を有する2価炭化水素ラジカルであり、そしてMはア ンモニウムカチオンである。] で示すアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムを製造する方法であって、
(a)重亜硫酸アンモニウムの水溶液と2〜4個の炭素原子を有するアルキレ ンオキシドとを、反応混合物の固形分濃度を70重量%未満に、そして反応混合 物のpHを4.3〜7の範囲に保って、反応混合物中の残存スルファイトの量に より測定して反応が少なくとも90%完結するまで反応させ、そのことにより、 式
HOR’SO3M [式中、R’及びMは上記と同意義である。] で示すヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムから本質的に成る生成物を提 供する工程;
(b)工程(a)で調製したヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムをス トリッピングすることによりアルキレングリコールを除去する工程;及び
(c)全てヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムの重量を基準にして、 1重量%以下のアルキレングリコール、2重量%以下のアルカノールアミン、及 び約2重量%以下のスルホン酸アンモニウムを有するヒドロキシアルキルスルホ ン酸アンモニウムと6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸とを150〜200℃ の範囲の温度で反応させ、そのことにより、上記の式で示され、その30重量% 水溶液が室温で濁らないアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムの製造方 法。
2.前記2価炭化水素ラジカルR’がエチレン2価ラジカルであり、前記アル キレンオキシドがエチレンオキシドである請求項1記載の方法。
3.前記脂肪酸が8〜18個の炭素原子を有する請求項2記載の方法。
4.前記重亜硫酸アンモニウム反応混合物の初期pHが4.5〜5.2の範囲で ある請求項1記載の方法。
5.前記pHが4.6〜5.0の範囲である請求項4記載の方法。
6.前記反応混合物のpHが、酸性中和剤の添加により実質的に反応を通して 5.5〜7.0の範囲に保たれる請求項1記載の方法。
7.前記酸性中和剤が亜硫酸又はSO2である請求項6記載の方法。
8.工程(b)で用いるヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムが0.8 5重量%以下のアルキレングリコールを含有する請求項3記載の方法。
9.前記アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムが85%を上回る陰イ オン活性を有する請求項2記載の方法。
10.(a)重亜硫酸アンモニウム反応混合物の初期pHを4.5〜5.2の 範囲とするか、又は(b)pHを5.5〜7の範囲に維持するのに要求されるよ うに反応混合物に酸性中和剤を添加することにより、反応混合物のpHが約7を 下回るように維持される請求項3記載の方法。
11.前記脂肪酸がココ脂肪酸である請求項10記載の方法。
12.前記アルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウムが85%を上回る陰 イオン活性を有し、その30重量%水溶液が22℃において濁らない請求項11 記載の方法。
13.前記ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムが約0.9重量%を下 回るアルキレングリコールを含有する請求項12記載の方法。
14.前記ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムが約1重量%を下回る 硫酸アンモニウムを含有する請求項13記載の方法。
15.請求項1記載の方法で調製される組成物。
16.請求項3記載の方法で調製される組成物。
17.請求項13記載の方法で調製される組成物。
18.請求項1記載の組成物の水溶液を含有ずる透明液体洗浄組成物。
19.請求項17記載の組成物の水溶液を含有する透明液体シャンプー成物。
20.ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウム及び脂肪酸の反応物を本質 的に含む反応混合物を反応させてアルカノイルアルキルスルホン酸アンモニウム 生成物を製造する方法において、次亜リン酸及びそれらの塩からなる群から選択 される化合物の腐蝕防止量の存在下で金属含有反応器中で該反応を行い、そのこ とにより、該反応中における金属含有反応器の金属の腐蝕及び生成物の汚染を低 減する工程を包含する方法。
21.前記腐蝕防止性次亜リン酸塩が次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリ ウム、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸アミン及び次亜リン酸アルカノール アミンからなる群から選択される請求項20記載の方法。
22.前記次亜リン酸の使用量が反応物の固形分重量を基準にして0.01〜 1.0重量%である請求項20記載の方法。
23.前記次亜リン酸の添加量が反応物の固形分重量を基準にして0.02〜 0.50重量%である請求項22記載の方法。
24.前記ヒドロキシアルキルスルホン酸アンモニウムがイセチオン酸アンモ ニウムである請求項20記載の方法。
25.前記脂肪酸が、式
RCOOH [式中、Rは5〜23個の炭素原子を有する1価脂肪族炭化水素ラジカルである 。] で示す構造を有する請求項24記載の方法。
26.前記脂肪酸が、8〜18個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物を含むコ コ脂肪酸である請求項25記載の方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),BR,CA,CN,JP,K
R
(72)発明者 ゴビンダン、チェルサー
アメリカ合衆国ペンシルベニア州15239、
ピッツバーグ、ノース・リッジ・ロード
4613番
(72)発明者 ネムスマン、ルイス・ジェイ
アメリカ合衆国ペンシルベニア州15613、
アポロ、ヤング・ドライブ301番
(72)発明者 ワン、アラン・イー
アメリカ合衆国イリノイ州60195、ホフマ
ン・エステーツ、アンジュ・レーン3870番