JP3929585B2 - 淡色α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とその製造法に関し、特に白色に近い淡色のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、その用途のひとつとして界面活性剤があり、特にその洗浄力が高く、生分解性が良好で、環境に対する影響が少ないことから洗浄剤材料としての性能が高く評価されている。
このα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、脂肪酸アルキルエステルをSO3によりスルホン化してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得た後に、アルカ リによって中和することによって得られる 。
【0003】
脂肪酸アルキルエステルのスルホン化メカニズムについては、Smith and Stirton:JAOCS vol.44,P.405(1967)およびSchmid, Baumann, Stein, Dolhaine: Proceeding of the World Surfactants Congress Munchen, vol.2, P.105, Gelnhausen, Kurle(1984)およびH.Yoshimura:油 化学(JJOCS),41巻,10頁 (1992)に示されるように、以下の反応スキ−ムによって進行する。
【0004】
【化1】
【0005】
脂肪酸アルキルエステルからα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを得るには、最初にSO3が脂肪酸アルキルエステルのα位に反応してα−スルホ脂肪酸アル キルエステルを生成すれば効率がよいと考えられる。
しかし実際はアルコキシ基に挿入されるような反応がおこり、SO3一分子付 加体(以下、一分子付加体と略記する。)が生成する。
そしてつぎの段階でさらにSO3と反応してα位にスルホン基が導入され、S O3二分子付加体(以下、二分子付加体と略記する。)が生成する。
最後にアルコキシ基に挿入したSO3が脱離してα−スルホ脂肪酸アルキルエ ステルが生成する。
【0006】
この反応は、前記二分子付加体の生成段階までは速やかに進行するが、二分子付加体からα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを生成する反応速度は非常に遅い。
このため、実際はSO3ガスなどのスルホン化ガスを過剰に使用しなくてはな らず、さらに二分子付加体生成段階まで進行させた後に、熟成工程を設けてSO3の脱離を促進させる必要がある。
【0007】
また、通常α−スルホ脂肪酸アルキルエステルは著しく着色しており、このためアルカリ中和後に得られるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩も着色している。
このような着色は洗浄剤材料として用いる場合には不都合である。
このため中和工程の前あるいは後に、過酸化水素などによる過酷な条件の漂白工程が行われている。
つまり従来のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、スルホン化ガス導入工程と熟成工程を経てスルホン化され、その後、中和工程、漂白工程を経て製造されている。
【0008】
ところでα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩には、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩などの副生物が含まれている。
これは製造過程で一部エステル結合の切断が生じるためである。
これらの副生物は洗浄剤活性成分としては洗浄力が小さく、水溶性も劣るので、洗浄剤材料としてはこれらの副生物の生成はできるだけ抑制することが好ましい。
したがって特に条件が過酷で、エステル結合の一部が加水分解しやすく、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の生成に直接的に関係しない漂白工程は、できるだけ簡略化または省略できると好ましい。
さらに過酸化水素を用いた漂白作業は取扱いが困難で、操作が煩雑になったり、作業環境が悪化したりすることがある。
【0009】
またα−スルホ脂肪酸アルキルエステルの着色原因のひとつは、過剰なスルホン化ガスの存在によるものである。
また特に熟成工程中に着色が進行することが確認されている。
しかし熟成工程は、副生物を抑えるためにも十分に行うことが必要不可欠である。
すなわち熟成工程が不十分で二分子付加体が残存していると、この後に行われる例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ中和により、下記(III)に示すような反応がおこり、洗浄力、水溶力の劣るα−スルホ脂肪酸ジソ−ダ(α−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩)を生成する。そして界面活性剤としての物性、例えば好ましい洗浄力や浸透力などを得ることが困難となる。
【0010】
【化2】
【0011】
したがって最も望まれるのは、熟成工程を十分に行って反応率を高めることができ、かつ漂白工程を簡略化あるいは省略できる方法であって、白色に近い淡色で、できるだけ副生物を含有しないα−スルホ脂肪酸アルキルエステルからα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を得る方法である。
【0012】
漂白工程を簡略化あるいは省略してα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の色調を改善する方法として、特表平6−510300号公報には暗色不純物を含むα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩をメタノール溶剤に溶解し、前記暗色不純物を活性炭などに吸着させる方法;特表平8−501309号公報には暗色不純物を含むα−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルコキシドによってメタノールを溶媒とする実質的に無水溶媒中で連続的に中和する方法;特開昭63−105097号公報には暗色不純物を含むα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を食塩で2回以上塩析する方法などが提案されている。
しかしこれらの従来の提案方法は、反応率や色調改善効果が不十分であったり、また操作が煩雑であったり、他の添加物や溶媒を使用するためコストが高くなるなど、必ずしも満足できるものではなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明は、白色に近い淡色のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩と その製造法を提供することを課題とする。
さらには副生物の生成を抑え、洗浄剤材料に適した白色に近い淡色のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とその製造法を得ることを目的とする。
またできるだけ簡便な操作で白色に近い淡色のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を得ることができる方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を鑑み、本発明においては、下記の一般式(I)
R1CH2COOR2 …(I)
(式中、R1は炭素数6〜24のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表す)
で示される脂肪酸アルキルエステルと、スルホン化ガスとを接触させるスルホン化ガス導入工程と、該スルホン化ガス導入工程後に、着色抑制剤存在下でSO3二分子付加体からSO3を脱離させる熟成工程と、該熟成工程後にアルカリで中和する中和工程と、該中和工程後に、過酸化水素を用いた漂白工程をすることなく、80〜130℃の温度条件下で、100℃以下の場合は還流させ、100℃を超える場合にはオートクレーブを用いて加熱処理を行う加熱処理工程を経て淡色α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を製造することを特徴とする。
また、好ましくは前記熟成工程と中和工程の間に、低級アルコールによってエステル化するエステル化工程を行って淡色α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を得ることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の製造法は、好ましくは例えば以下の(A)〜(E)の工程を順次行ってα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を得るものである。
(A)前記一般式(I)で示される脂肪酸アルキルエステルと、スルホン化ガスとを接触させるスルホン化ガス導入工程。
(B)SO3二分子付加体からSO3を脱離させる熟成工程。
(C)副生物をさらに抑制するために低級アルコールにてエステル化するエステル化工程。
(D)アルカリで中和してα−スルホ脂肪酸アルキルエステルからα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を得る中和工程。
(E)色調を改善する加熱処理工程。
前記(C)エステル化工程は必須ではないが、この工程を経ることによって副生物であり、着色の原因でもあるα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩の含量を低下させて製品純度を向上させることができるので、(B)熟成工程と(D)中和工程の間に、(C)エステル化工程を行うと好ましい。
【0016】
本発明に用いる脂肪酸アルキルエステルは、前記式(I)で示されるもので、脂肪酸残基の炭素数が6〜24で、アルコ−ル残基の炭素数が1〜6で、両者の合計の炭素数が9〜26である。
また牛脂、魚油などから誘導される動物系油脂;ヤシ油、パ−ム油、大豆油などから誘導される植物系油脂;α−オレフィンのオキソ法から誘導される合成脂肪酸アルキルエステルなどのいずれでもよく、特に限定はされない。
具体的には、ラウリン酸メチル、エチルまたはプロピル;パルミチン酸メチルまたはエチル;ステアリン酸メチルまたはエチル;硬化牛脂脂肪酸メチルまたはエチル;硬化魚油脂肪酸メチルまたはエチル;ヤシ油脂肪酸メチルまたはエチル;パ−ム油脂肪酸メチルまたはエチル;パ−ム核油脂肪酸メチルまたはエチルなどを例示することができ、これらは単独でも2種以上混合して用いてもよい。
またヨウ素価は低い方が着色しにくいので、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下である。
【0017】
以下各工程について詳細に説明する。
(A)スルホン化ガス導入工程
反応方式としては槽型反応、フィルム反応、管型気液混相流反応などの方式が用いられる。
スルホン化方法としては薄膜式スルホン化法、回分式スルホン化法などのいずれのスルホン化方式でもよい。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの色調を重視すると回分式スルホン化法が望ましいが、生産レベルでコストなどを重視すると薄膜式スルホン化法が望ましい。
【0018】
スルホン化ガスはSO3ガス、発煙硫酸などが例示できるが、好ましくはSO3ガスが用いられる。通常空気または窒素などの不活性ガスで濃度3〜30容量%に希釈したSO3ガスが使用される。
SO3は原料の脂肪酸アルキルエステルの1.0〜2.0倍モル、好ましくは 1.0〜1.5倍モル、さらに好ましくは1.05〜1.3倍モル使用される。1.0倍モル未満ではスルホン化反応が十分に進行せず、2.0倍モルをこえると、スルホン化反応がより過激になるため局部熱に起因する着色が発生しやすく、不都合である。
【0019】
反応温度は脂肪酸アルキルエステルが流動性を有する温度であればよい。
一般に脂肪酸アルキルエステルの凝固点以上、好ましくは凝固点から凝固点より70℃高い温度までである。
反応時間はスルホン化方法により異なり、薄膜式スルホン化法では5〜60秒、回分式スルホン化法では10〜120分程度である。
【0020】
(B)熟成工程
熟成工程の温度は70〜100℃が適当である。
70℃より低いと反応は速やかに進行せず、100℃以下とすることによって着色を抑制することができる。
反応時間は1〜120分とされる。
【0021】
(C)エステル化工程
エステル化工程は、前記(B)熟成工程後に少量の低級アルコールを添加し、エステル化反応を進行させるものである。
ここで用いられる低級アルコールは、通常反応に用いる脂肪酸アルキルエステルのアルコ−ル残基の炭素数と等しい炭素数のものが好ましいが、特に限定されることはない。すなわちこの低級アルコールの炭素数は1〜6が好ましい。
低級アルコールは、反応液中の二分子付加体に対して0.5〜5.0倍モル、好ましくは0.8〜2.0倍モル用いられる。
また反応温度は50〜100℃、好ましくは50〜90℃、反応時間は5〜120分とされる。
【0022】
このエステル化によって、熟成工程後に残留している二分子付加体は、そのアルコキシ基に挿入されていたSO3が脱離してα−スルホ脂肪酸アルキルエステ ルとなる。
この結果製品の純度が向上し、性能向上を図ることができる。
また二分子付加体が中和されて生成するα−スルホ脂肪酸ジアルカリ塩は着色原因でもあるので、より製品の色調を改善することができる。
【0023】
(D)中和工程
中和工程は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルとアルカリとの中和液が、酸性あるいは弱いアルカリ性の範囲(pH4〜9)で行われると好ましい。強アルカリ性の場合、エステル結合が切断されやすくなる可能性がある。
使用されるアルカリとしては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、エタノールアミンなどが用いられる。
これらのアルカリは通常水溶液として用いられ、アルカリ水溶液の濃度は2〜40重量%程度とされる。
また中和液中のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃度は10〜80重量%とされる。
中和温度は30〜70℃、中和時間は10〜60分間とされる。
【0024】
(E)加熱処理工程
前記(D)中和工程後に、得られた中和液を加熱処理する。
加熱温度は80℃以上、好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは80〜130℃とされる。
80℃未満の場合色調改善効果が得られない。また170℃をこえると効果が得られなかったり、副生物が生成しやすくなることがある。
加熱温度が100℃以下の場合は、通常還流させながら常圧で行う。100℃をこえる場合には、オートクレーブなどを用いると好ましい。
加熱時間は0.5時間〜7日間、好ましくは1時間〜5日間とされる。
この加熱処理を行うことにより、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の色調が改善され、過酷な条件の漂白を省略あるいは簡略化して製品を得ることができる。
【0025】
また前記(A)スルホン化ガス導入工程、あるいは(B)熟成工程において、少なくとも(B)熟成工程を着色抑制剤存在下で行うと好ましい。
着色抑制剤としては、本出願人が提案している種々のものを用いることができる。
有効な着色抑制剤について、詳細は特願平08−24433号、特願平08−336077号、特願平08−340149号、特願平08−340148号、特願平08−340147号、特願平08−342244号、特開平09−216861号公報、特開平09−216862号公報、特開平09−216863号公報などに開示されている。
【0026】
これらの中では特開平09−216863号公報に示されている一価の金属イオンを有し、かつ平均粒径250μm以下の無機硫酸塩を用いると好ましい。
無機硫酸塩は着色抑制効果が高く、安価なものが多く、さらに洗浄剤に配合される成分なのでα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩(製品)から除去する必要がない。
無機硫酸塩は、一価の金属イオンを有する粉末状の無水塩であれば特に限定されず、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムなどが例示される。
【0027】
無機硫酸塩は、その平均粒径は250μm以下、好ましくは50μm以下のものが用いられる。
無機硫酸塩は、反応中、反応液にはその表面がわずかに溶解する程度でほとんど溶解しない。このため粒子状で反応液中に分散している。
したがってこのように粒径の小さい無機硫酸塩を用いることにより、無機硫酸塩全体としては接触面積が大きく、分散性が向上し、より効果を高めることができる。
添加量は原料の脂肪酸アルキルエステルに対して0.1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%である。0.1重量%未満の場合は添加効果が得られない。
【0028】
無機硫酸塩(着色抑制剤)は少なくとも(B)熟成工程において存在してればよい。
したがって脂肪酸アルキルエステルに無機硫酸塩を添加し、混合しておいて(A)スルホン化ガス導入工程に供するのが、手順が簡略化されるため通例であるが、(A)スルホン化ガス導入工程と(B)熟成工程との間に添加してもよい。
【0029】
この製造法においては、(E)加熱処理工程を経ることによってα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の色調が改善されることが特徴的である。
すなわち中和液を加熱するのみなので、従来行われていた過酸化水素を用いた漂白工程と比較すると、取扱いが容易で煩雑な操作や作業環境の悪化を伴わず、製品に過酸化水素などが残留せず、副生物も生成しにくいため、安全で経済的である。
【0030】
本発明の実施の態様をまとめると以下のようになる。
(1) 原料の脂肪酸アルキルエステルのヨウ素価は、好ましくは0.5以下 、より好ましくは0.2以下である。
(2) 本発明は、好ましくは(A)スルホン化ガス導入工程;(B)熟成工程; (C)エステル化工程;(D)中和工程;(E)加熱処理工程を順次行ってα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を製造するものである。
(C)エステル化工程は必須ではないが、着色の原因の副生物含量を少なくすることができ、製品純度を向上させるとともに色調を改善することができるので(C)エステル化工程を行うことが好ましい。
【0031】
(3) (A)スルホン化ガス導入工程
スルホン化ガスは、空気または窒素などの不活性ガスで濃度3〜30容量%に希釈したSO3ガスが通常用いられる。
SO3は原料の脂肪酸アルキルエステルの1.0〜2.0倍モル、好ましくは 1.0〜1.5倍モル、さらに好ましくは1.05〜1.3倍モル使用される。
反応温度は脂肪酸アルキルエステルの凝固点以上、好ましくは凝固点から凝固点より70℃高い温度までである。
反応時間は、薄膜式スルホン化法では5〜60秒、回分式スルホン化法では10〜120分程度である。
【0032】
(4) (B)熟成工程
熟成工程の温度は70〜100℃が適当である。
反応時間は反応時間は1〜120分とされる。
(5) (C)エステル化工程
低級アルコールの炭素数は1〜6が好ましい。
低級アルコールは、反応液中の二分子付加体に対して0.5〜5.0倍モル、好ましくは0.8〜2.0倍モル用いられる。
また反応温度は50〜100℃、好ましくは50〜90℃、反応時間は5〜120分とされる。
【0033】
(6) (D)中和工程
中和工程は、中和液が酸性あるいは弱いアルカリ性の範囲(pH4〜9)で行われることが好ましい。
中和に用いられるアルカリ水溶液の濃度は2〜40重量%程度とされる。
中和液中のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃度は10〜80重量%とされる。
中和温度は30〜70℃、中和時間は10〜60分間とされる。
【0034】
(7) (E)加熱処理工程
前記中和工程後に得られた中和液の加熱処理温度は、80℃以上、好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは80〜130℃とされる。
加熱温度が100℃未満の場合は、通常還流させながら常圧で行う。100℃をこえる場合には、オートクレーブなどを用いると好ましい。
加熱時間は0.5時間〜7日間、好ましくは1時間〜5日間とされる。
【0035】
(8) (A)スルホン化ガス導入工程、あるいは(B)熟成工程において、少な くとも(B)熟成工程を着色抑制剤存在下で行うと好ましい。
着色抑制剤としては、特開平09−216863号に示されている一価の金属イオンを有し、かつ平均粒径250μm以下の無機硫酸塩を用いると好ましい。
無機硫酸塩は、一価の金属イオンを有する粉末状の無水塩で、例えば硫酸ナトリウムや、硫酸カリウムなどである。
その平均粒径は250μm以下、好ましくは50μm以下のものが用いられる。
添加量は原料の脂肪酸アルキルエステルに対して0.1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲がこれにより限定されるものではない。
(比較例1)
ミリスチン酸メチルとパルミチン酸メチルを、重量比2:8で混合した脂肪酸メチルエステル(ヨウ素価0.40)を、ジャケット冷却、攪拌器付き300mlガラス製反応器を用いて、温度を80℃に保ちながら、N2ガスで7容量%に希釈した無水硫酸ガス1.2倍モル(対混合脂肪酸メチルエステル)を60分間、等速で導入した((A)スルホン化ガス導入工程)。
導入後、85℃に保ちながら30分間攪拌して熟成し、α−スルホ脂肪酸メチルエステルを製造した((B)熟成工程)。
【0037】
このときに仕込の混合脂肪酸メチルエステルに対して二分子付加体が20モル%生成していた。
さらにこの二分子付加体に対して等モルのメタノールを添加し、80℃で20分間撹拌してエステル化を行った((C)エステル化工程)。
ついで2重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和液がpH7〜8となるように中和し、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩を得た。
この中和液のα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩濃度は13.6重量%であった。また反応率は98.2%であった。
【0038】
得られたα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩を抜き出し、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩として5重量%エタノ−ル溶液とし、40mm光路長、No.4 2ブル−フィルタ−を用いたクレット光電光度計で測定したところ、色調は4400であった。この数値が小さい程着色していないことを示している。
ついで前記中和液を、攪拌器付き300mlガラス製反応器で還流管をつけて95℃、9時間加熱した(加熱処理工程)。
この加熱処理工程後の色調を、上述と同様の条件で測定したところ、色調は2100に改善されていた。
【0039】
(実施例1)
ミリスチン酸メチルとパルミチン酸メチルを重量比3:7で混合した脂肪酸メチルエステル(ヨウ素価0.03)に、着色抑制剤として硫酸ナトリウム(平均粒径40〜60μm)を5重量%(対混合脂肪酸メチルエステル)添加して、比較例1と同様の方法でスルホン化ガスを導入した((A)スルホン化ガス導入工程)。
導入後、80℃に保ちながら60分間攪拌して熟成し、α−スルホ脂肪酸メチルエステルを製造した((B)熟成工程)。
【0040】
このときに仕込の脂肪酸メチルエステルに対して二分子付加体が20モル%生成していた。
さらにこの二分子付加体に対して2倍モルのメタノールを添加し、80℃で30分間撹拌してエステル化を行った((C)エステル化工程)。
ついで3.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和液がpH7〜8となるように中和し、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩を得た。
この中和液のα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩濃度は20.5重量%であった。また反応率は98.0%であった。
【0041】
得られたα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩を抜き出し、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩として5重量%エタノ−ル溶液とし、40mm光路長、No.4 2ブル−フィルタ−を用いたクレット光電光度計で測定したところ、色調は415であった。
ついで前記中和液を、攪拌器付き300mlガラス製反応器で還流管をつけて95℃、9時間加熱した(加熱処理工程)。
この加熱処理工程後の色調を、上述と同様の条件で測定したところ、色調は250に改善されていた。
【0042】
(比較例2、実施例2〜7)
原料(脂肪酸アルキルエステル)、着色抑制剤、エステル化工程の有無、中和液濃度、加熱処理工程の温度、時間などの条件をかえて実験を行った。
なお加熱処理温度が100℃をこえる場合にはオートクレーブを使用した。
結果を表1に示す。
表1中、原料の脂肪酸アルキルエステルについては、脂肪酸残基の炭素数のみが示されているが、これらは全てメチルエステルである。
また、この原料において異なる脂肪酸残基の炭素数を有するものを混合した場合には、その混合重量比が示されている。例えばC14/C16=2/8というのは、ミリスチン酸メチルとパルミチン酸メチルを2:8の重量比で混合して原料としたことを示している。
また着色抑制剤の添加量(重量%)は、原料の脂肪酸アルキルエステルに対する割合で示されている。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、加熱処理工程を経ることによって色調が改善されることが明らかである。
また原料のヨウ素価が低いこと、着色抑制剤を添加すること、エステル化工程を行うことがさらなる色調の改善に効果的であることがわかる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は中和工程後に加熱処理を行うことによって、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の色調改善効果が得られるものである。
すなわち中和液を加熱するのみなので、従来行われていた過酸化水素を用いた漂白工程と比較すると、取扱いが容易で煩雑な操作や作業環境の悪化を伴わず、過酸化水素が残留せず、副生物も生成しにくいため、安全で経済的である。
このため製品純度と品質の向上を図ることができる。
Claims (2)
- 下記の一般式(I)
R1CH2COOR2 …(I)
(式中、R1は炭素数6〜24のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表す)
で示される脂肪酸アルキルエステルと、スルホン化ガスとを接触させるスルホン化ガス導入工程と、
該スルホン化ガス導入工程後に、着色抑制剤存在下でSO3二分子付加体からSO3を脱離させる熟成工程と、
該熟成工程後にアルカリで中和する中和工程と、
該中和工程後に過酸化水素を用いた漂白工程をすることなく、80〜130℃の温度条件下で、100℃以下の場合は還流させ、100℃を超える場合にはオートクレーブを用いて加熱処理を行う加熱処理工程を含むことを特徴とする淡色α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造法。 - 前記熟成工程と中和工程の間に、低級アルコールによってエステル化するエステル化工程を行うことを特徴とする請求項1記載の淡色α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の製造法。
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