【発明の詳細な説明】
アニリン誘導体
本発明は、アニリン誘導体に関する。より詳細には、酵素である5−リポキシ
ゲナーゼ(以後「5−LO」と略す)の抑制作用を示すアニリン誘導体に関する
。また、本発明は、アニリン誘導体の製造方法、およびアニリン誘導体を含有す
る新規な医薬組成物に関する。さらに、本発明は、アラキドン酸の5−リポキシ
ゲナーゼ触媒酸化による直接または間接生成物が関与する炎症および/またはア
レルギー性疾患のような種々の疾患の治療への、アニリン誘導体の使用と、この
使用のための新しい医薬の製造をも含む。
上述のとおり、以下に記載するアニリン誘導体は5−リポキシゲナーゼ抑制作
用を示す。5−リポキシゲナーゼは、アラキドン酸酸化を触媒し、連鎖工程を経
て生理学的に活性なロイコトリエン(ロイコトリエンB4[LTB4]など)、ペ
プチド−脂質ロイコトリエン(ロイコトリエンC4[LTC4]やロイコトリエン
D4[LTD4]など)および種々の代謝生成物を生成することに関与することが
知られている酵素である。
ロイコトリエンの生合成関係や生理学的活性は、テイラー(G.W.Tayl
or)とクラーク(S.R.Clarke)のTrends in Pharm
acological Scienceの1986年7号100−103頁にま
とめられている。ロイコトリエンやその代謝生成物は、種々の炎症やアレルギー
性疾患などのさまざまな疾患の発生や進行に関係がある。そのような疾患として
、関節の炎症(とくにリューマチ性関節炎、骨関節炎、痛風)、胃腸管の炎症(
とくに炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎や胃炎)、皮膚疾患(とくに乾癬、湿疹、皮
膚炎)、接眼状態(とくにアレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎)、呼吸器系疾患(
とくに喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎)が例示され、例えば種々の心臓血管
および脳血管障害の発生および進行時(例えば心筋梗塞、アテローム硬化斑、高
血圧、血小板凝集、アンギナ、卒中、再灌流傷,血管損傷があり、これには再狭
窄および抹消血流障害が含まれる)、ショックまたは外傷状態の発生時(例えば
火傷による傷害、毒血症または外科的手術に付随し得るもの)、および種々の骨
代謝疾患(例えば骨そしょう症(老衰や閉経後の骨そしょう症を含む)、パジェ
ッ
ト病、骨変形、高カルシウム血症、上皮小体亢進症、骨硬化症、大理石骨病、歯
周炎)、リューマチ性関節炎や骨関節炎を伴い得る骨代謝における異常な変化に
伴う。また、ロイコトリエンは、リンパ球と白血球の機能を変調する作用により
炎症疾患に介在する。酵素であるシクロオキシゲナーゼのアラキドン酸に対する
作用により、プロスタグランジンやトロンボキサンのようなアラキドン酸のさら
なる生理学的活性代謝物が生じる。
欧州特許出願第0375404号および第0385662号には、ある種の複
素環式誘導体が5−リポキシゲナーゼに対する抑制作用を有することが記載され
ている。また、欧州特許出願第0409413号および第0420511号も、
5−リポキシゲナーゼに対する抑制作用を有する複素環式誘導体に関係している
。我々は、上記出願に開示される化合物に類似する構造的特徴を有するが、上記
先行出願には示唆されていない他の構造的特徴も有するアニリン誘導体(特にオ
ルト置換アニリン)が、酵素である5−リポキシゲナーゼとそれによるロイコト
リエン生合成に対する効果的な抑制作用を示すことを見いだした。このため、こ
れらの化合物は、アレルギー状態、乾癬、喘息、心臓血管および脳血管疾患およ
び/または炎症および関節炎症状態および/または骨代謝障害などの、1以上の
ロイコトリエンが単独または部分的に介在する疾患の治療剤として価値がある。
本発明によれば、式I:
で表されるアニリン誘導体およびその薬剤学的に許容される塩、エステルまたは
アミドが提供される。式Iにおいて、
R4は水素、C1-4アルキル、ハロゲノC1-4アルキル、シアノC1-4アルキル、
ヒドロキシC2-4アルキル、アミノC2-4アルキル、C1-4アルキルアミノC2-4ア
ルキル、ジ(C1-4アルキル)アミノC2-4アルキルまたはフェニルC1-4アルキ
ルであり、前記フェニルC1-4アルキルはハロゲン、トリフルオロメチル、シア
ノ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される1または2の置換基を
有していてもよく、
R5は水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシであり、
R6は水素またはC1-4アルキルであり、
X3はオキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、式:CR7R8で表される基
(R7は水素またはC1-4アルキルであり、R8は水素またはC1-4アルキルである
)、式:NR9で表される基(R9は水素またはC1-4アルキルである)またはア
ニリン環の2位への直接結合であり、
アニリン環はハロゲン置換基を有していてもよく、
A1はX1への直接結合かC1-3アルキレンであり、
X1はオキシ、チオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、
Arはフェニレン、ピリジンジイル、ピリミジンジイル、チオフェンジイル、
フランジイル、チアゾールジイル、オキサゾールジイル、チアジアゾールジイル
またはオキサジアゾールジイルであって、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチ
ル、ヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルア
ミノおよびジC1-4アルキルアミノから選択される1または2の置換基を有して
いてもよく、
R1は水素、C1-4アルキル、C3-4アルケニルまたはC3-4アルキニルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5また6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2およびA3は同一または異なっていてもよく、各々C1-3アルキレ
ンであり、X2はオキシ、チオ、スルフィニル、スルホニルまたはイミノであり
、前記環は、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、フルオロC1-4ア
ルキル、シアノC1-4アルキル、C3-4アルケニルおよびC3-4アルキニルから選
択される同一または異なる1、2または3つの置換基を有していてもよく、
あるいはR1およびR2は一緒になって、A2が結合している酸素原子とA3が結
合している炭素原子とともに5または6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2およびA3は同一または異なっていてもよく、各々C1-3アルキレ
ンであり、X2はオキシ、チオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、前記環
は1、2または3つのC1-4アルキルを有していてもよく、R3はC1-4アルキル
、C2-4アルケニルまたはC2-4アルキニルである。
本明細書において、「アルキル」には、直鎖および分枝アルキルがともに含ま
れる。しかしながら、「プロピル」のように特定のアルキルが指定されている場
合は直鎖のもののみを意味し、「イソプロピル」のように分枝アルキルが指定さ
れている場合は分枝のもののみを意味する。以上は、他の包括的な用語について
も同様に適用する。
上記定義の式Iの化合物には、酸性カルボン酸基と塩基性アニリノ基が存在す
るために、化合物の一部または全体が中性か2価のイオン型として存在すること
がある。本発明の式Iの化合物の中には、中性、2価のイオン型およびこれらの
混合物がすべて含まれるものと定義される。本発明は、本発明の特定の化合物を
指定する目的や、構造式の範囲内で便宜的に使用するいずれか1つの型にのみ限
定されるものではない。
さらに、上記定義の式Iの化合物の中には、不斉炭素が存在するために光学活
性体またはラセミ体として存在しうるものがあるが、本発明の定義には5−リポ
キシゲナーゼ抑制作用を有するすべての光学活性体やラセミ体が含まれるものと
理解すべきである。光学活性体は、本分野で周知の有機化学の標準的方法によっ
て合成することができる。例えば、光学活性な出発物質から合成したり、ラセミ
体の分割により合成したりすることができる。
上記の包括的な用語の適当な例は以下に示すとおりである。
R4がとり得る適当なC1-4アルキルとして、メチル、エチル、プロピル、イソ
プロピル、ブチルを例示することができる。R4がとり得る適当なハロゲノC1-4
アルキルとして、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2,2,2−トリフ
ルオロエチル、3−フルオロプロピル、3−クロロプロピルを例示することがで
きる。R4がとり得る適当なシアノC1-4アルキルとして、シアノメチル、2−シ
アノエチル、3−シアノプロピルを例示することができる。R4がとり得る適当
なヒドロキシC2-4アルキルとして、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプ
ロピルを例示することができる。R4がとり得る適当なアミノC2-4アルキルとし
て、2−アミノエチル、3−アミノプロピルを例示することができる。R4がと
り得る適当なC1-4アルキルアミノC2-4アルキルとして、2−メチルアミノエチ
ル、2−エチルアミノエチル、3−メチルアミノプロピルを例示することができ
る。R4がとり得る適当なジ(C1-4アルキル)アミノC2-4アルキルとして、2
−ジメチルアミノエチル、2−ジエチルアミノエチル、2−(N−エチル−N−
メチルアミノ)エチル、3−ジメチルアミノプロピルを例示することができる。
R4がとり得る適当なフェニルC1-4アルキルとして、ベンジル、フェネチル、3
−フェニルプロピルを例示することができる。
R5またはR6がとり得る適当なC1-4アルキルや、X3に存在し得る適当なC1- 4
アルキル(X3が式:CR7R8またはNR9であって、R7、R8またはR9がC1- 4
アルキルである場合)として、メチルやエチルを例示することができる。
R5がとり得る適当なC1-4アルコキシとして、メトキシやエトキシを例示する
ことができる。
A1がとり得る適当なC1-3アルキレンとして、メチレン、エチレンやトリメチ
レンを例示することができる。
Arがとり得る適当なフェニレンとして、1,3−や1,4−フェニレンを例
示することができる。
Arがとり得る適当なピリジンジイル、ピリミジンジイル、チオフェンジイル
、フランジイル、チアゾールジイル、オキサゾールジイル、チアジアゾールジイ
ルまたはオキサジアゾールジイルとして、2,4−、2,5−または3,5−ピ
リジンジイル、4,6−ピリミジンジイル、2,4−または2,5−チオフェン
ジイル、2,4−または2,5−フランジイル、2,4−または2,5−チアゾ
ールジイル、2,4−または2,5−オキサゾールジイル、2,5−チアジアゾ
ールジイルや2,5−オキサジアゾールジイルを例示することができる。
R4がフェニルC1-4アルキルであるときに存在し得る適当な置換基や、アニリ
ノ環またはAr上に存在する適当な置換基として、以下のものを例示することが
できる。
ハロゲンとして、フッ素、塩素、臭素
C1-4アルキルとして、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル
C1-4アルコキシとして、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキ
シ
C1-4アルキルアミノとして、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミ
ノ
ジC1-4アルキルアミノとして、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−エ
チル−N−メチルアミノ
R1がとり得る適当なC1-4アルキルとして、メチル、エチル、プロピルやブチ
ルを例示することができる。R1がとり得る適当なC3-4アルケニルとして、アリ
ル、2−ブテニルや3−ブテニルを例示することができる。R1がとり得る適当
なC3-4アルキニルとして、2−プロピニルや2−ブチニルを例示することがで
きる。
R2およびR3が一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成するとき、同一または異なっていてもよいA2およびA3がとりうる適当な
C1-3アルキレンとして、メチレン、エチレン、トリメチレンを例示することが
できる。この5または6員環に存在しうる置換基の適当なものとして、以下のも
のを例示することができる。
C1-4アルキルとして、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル
、イソブチル
C1-4アルコキシとして、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキ
シ、ブトキシ
フルオロC1-4アルキルとして、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル
、2,2−ジフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロエチル
シアノC1-4アルキルとして、シアノメチル、2−シアノエチル
C3-4アルケニルとして、アリル
C3-4アルキニルとして、2−プロピニル
これらの置換基は、置換し得る位置に存在し得る。例えば、X2がイミノであ
るときには、置換基は窒素原子上に存在するC1-4アルキル、フルオロC1-4アル
キルやC3-4アルキニルなどであり得る。
R1およびR2が一緒になって、A2が結合している酸素原子とA3が結合してい
る炭素原子とともに5または6員環を形成する式:−A2−X2−A3−であると
き、同一または異なっていてもよいA2およびA3がとり得る適当なC1-3アルキ
レンとして、メチレン、エチレン、トリメチレンを例示することができる。この
5または6員環上に存在し得る適当なC1-4アルキルとして、メチル、エチル、
プロピル、イソプロピルやブチルを例示することができる。
R3がとり得る適当なC1-4アルキルとして、メチル、エチル、プロピル、イソ
プロピルやブチルを例示することができる。R3がとり得る適当なC2-4アルケニ
ルとして、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ブテニルを例示することができ
る。R3がとり得る適当なC2-4アルキニルとして、エチニル、2−プロピニル、
2−ブチニルを例示することができる。
本発明の化合物の薬剤学的に許容される塩として適当なものとして、本発明の
化合物の酸付加塩であって十分な塩基性を示すものなどを例示することができる
。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マ
レイン酸といった無機酸または有機酸などの酸付加塩を挙げることができる。さ
らに、本発明の化合物の薬剤学的に許容される塩であって十分な酸性を示すもの
として、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩)、アルカリ土類金
属塩(例えばカルシウム塩やマグネシウム塩)、アンモニウム塩(例えばアンモ
ニウムやテトラメチルアンモニウム)や生理学的に許容されるカチオンを与える
有機塩基との塩(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピ
ペリジンとの塩)を例示することができる。
本発明の化合物の薬剤学的に許容される適当なエステルとして、式Iの化合物
のカルボキシ基をアルコール(例えばメタノール、エタノール、エチレングリコ
ール、プロパノール、tert−ブタノールなどのC1-6アルコール)、フェノ
ールまたはフェニルC1-4アルコール(例えばフェノール、ベンジルアルコール
)
、置換フェノールまたは置換フェニルC1-4アルコール(各置換基は、例えばフ
ッ素や塩素などのハロゲン、メチルなどのC1-4アルキル、メトキシなどのC1-4
アルコキシ)でエステル化したものを例示することができる。
また、本発明の化合物の薬剤学的に許容される適当なエステルとして、式Iの
化合物のヒドロキシ基(例えばR1が水素であるときのヒドロキシ)を、カルボ
ン酸(例えば酢酸やプロピオン酸などのC2-5アルカン酸)、安息香酸や置換安
息香酸(各置換基は、例えばフッ素や塩素などのハロゲン、メチルなどのC1-4
アルキル、メトキシなどのC1-4アルコキシ)でエステル化したものを例示する
ことができる。
本発明の化合物の薬剤学的に許容される適当なアミドとして、式Iの化合物の
カルボキシル基を、C1-6アルキルアミン(例えばメチルアミン、エチルアミン
、プロピルアミン)、ジC1-6アルキルアミン(例えばジメチルアミン、ジエチ
ルアミン、N−エチル−N−メチルアミン)などのアミンでアミド化したものを
例示することができる。
本発明の具体的な新規化合物として、式Iのアニリン誘導体またはその薬剤学
的に許容される塩、エステルまたはアミドであって、R4、R5、R6、X3、A1
、X1、Ar、R1、R2およびR3が本発明の特定の化合物について本節の前後に
記載される基であるものを例示することができる。
(a)R4はC1-4アルキルであり、
(b)R5は水素またはC1-4アルキルであり、
(c)R6は水素またはC1-4アルキルであり、
(d)X3はオキシ、チオ、式:CR7R8で表される基(R7およびR8は水素で
ある)またはアニリン環の2位への直接結合であり、
(e)X3は式:CR7R8で表される基(R7およびR8は水素である)またはア
ニリン環の2位への直接結合であり、
(f)A1はC1-3アルキレンであって、X1はオキシであり、
(g)A1はX1への直接結合であって、X1はオキシ、チオ、スルフィニルまた
はスルホニルであり、
(h)Arはハロゲン、トリフルオロメチル、C1-4アルキルおよびC1-4アルコ
キシから選択される1または2の置換基を有していてもよいフェニレンであり、
(i)Arは1つのアミノ置換基を有していてもよいピリジンジイルまたはピリ
ミジンジイルであり、
(j)Arはチオフェンジイルまたはチアゾールジイルであり、
(k)R1は水素であり、
(l)R1はC1-4アルキルまたはC3-4アルケニルであり、
(m)R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とと
もに1または2のC1-4アルキル置換基を有していてもよい5また6員環を形成
する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2およびA3は各々独立にC1-3アルキレンであり、X2はオキ
シであるか、あるいは、
(n)R1およびR2は一緒になって、A2が結合している酸素原子とA3が結合し
ている炭素原子とともに1または2つのメチルを有していてもよい5員環を形成
する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2およびA3は各々メチレンであり、X2はオキシであって、
R3はメチルまたはエチルである。
本発明の好ましい化合物として、
R4がメチル、エチルまたはプロピルであり、
R5が水素またはメチルであり、
R6が水素またはメチルであり、
X3がオキシ、チオまたは式:CR7R8で表される基(R7およびR8は各々水
素である)であり、
A1がメチレンであってX1がオキシであるか、A1がX1への直接結合であって
X1がオキシ、チオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、
Arが1,3−または1,4−フェニレンであって、フッ素、塩素、トリフル
オロメチル、メチルおよびメトキシから選択される1または2の置換基を有して
いてもよく、あるいはArが3,5−ピリジンジイル、4,6−ピリミジンジイ
ル、2−アミノ−4,6−ピリミジンジイル、2,4−または2,5−チオフェ
ンジイル、または2,4−または2,5−チアゾールジイルであり、
R1が水素、メチル、エチルまたはアリルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2がメチレンまたはエチレンであり、A3がエチレンであり、X2が
オキシであり、前記環はメチルおよびエチルから選択される1または2の置換基
を有していてもよい、式Iで表されるアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容
される塩を例示することができる。
本発明の他の好ましい化合物として、
R4がメチル、エチルまたはプロピルであり、
R5が水素またはメチルであり、
R6が水素またはメチルであり、
X3が式:CR7R8で表される基(R7およびR8は各々水素である)であり、
A1がメチレンであってX1がオキシであるか、A1がX1への直接結合であって
X1がオキシ、チオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、
Arが1,3−または1,4−フェニレンであって、フッ素、塩素、トリフル
オロメチル、メチルおよびメトキシから選択される1または2の置換基を有して
いてもよく、あるいはArが3,5−ピリジンジイル、4,6−ピリミジンジイ
ル、2−アミノ−4,6−ピリミジンジイル、2,4−または2,5−チオフェ
ンジイル、または2,4−または2,5−チアゾールジイルであり、
R1が水素、メチル、エチルまたはアリルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2がメチレンまたはエチレンであり、A3がエチレンであり、X2が
オキシであり、前記環はメチルおよびエチルから選択される1または2の置換基
を有していてもよい、式Iで表されるアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容
される塩を例示することができる。
本発明の他の好ましい化合物として、
R4がメチルまたはエチルであり、
R5が水素であり、
R6が水素であり、
X3がオキシまたはCH2であり、
A1がX1への直接結合であって、X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレン、5−フルオロ−1,3−フェニレン、2,4−チ
オフェンジイル(2位にX1を有する)、2,5−チオフェンジイル、2,4−
チアゾールジイル(2位にX1を有する)または2,5−チアゾールジイル(2
位にX1を有する)であり、
R1が水素またはメチルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2がメチレンまたはエチレンであり、A3がエチレンであり、X2が
オキシであり、前記環はX2のα位にメチルを有していてもよい
式Iで表されるアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩を例示するこ
とができる。
本発明の他の好ましい化合物として、
R4がメチルであり、
R5が水素であり、
R6が水素であり、
X3がCH2であり、
A1がX1への直接結合であって、X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレン、5−フルオロ−1,3−フェニレン、2,4−チ
オフェンジイル(2位にX1を有する)、2,5−チオフェンジイル、2,4−
チアゾールジイル(2位にX1を有する)または2,5−チアゾールジイル(2
位にX1を有する)であり、
R1が水素またはメチルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2がメチレンまたはエチレンであり、A3がエチレンであり、X2が
オキシであり、前記環はX2のα位にメチルを有していてもよい、
式Iで表されるアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩を例示するこ
とができる。
本発明の他の好ましい化合物として、
R4がメチルであり、
R5が水素であり、
R6が水素であり、
X3がCH2であり、
A1がX1への直接結合であって、X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレンまたは5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であって、A2およびA3がエチレンであり、X2がオキシであり、前記環はX2の
α位にメチルを有していてもよい、
式Iで表されるアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩を例示するこ
とができる。
本発明の特に好ましい具体的化合物として、アニリン誘導体である
3−{5−[5−フルオロ−3−(4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル
)フェニルチオ]−2−メチルアミノフェニル}プロピオン酸
(2S,4R)−3−{5−[5−フルオロ−3−(4−メトキシ−2−メチル
テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルチオ]−2−メチルアミノフェニル}
プロピオン酸、
(2S,4R)−3−{5−[5−フルオロ−3−(4−メトキシ−2−メチル
テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルスルホニル]−2−メチルアミノフェ
ニル}プロピオン酸、
(2S,4R)−3−{5−[3−(4−ヒドロキシ−2−メチルテトラヒドロ
ピラン−4−イル)フェニルチオ]−2−メチルアミノフェニル}プロピオン酸
またはこれらの薬剤学的に許容される塩を挙げることができる。
式Iのアニリン誘導体およびその薬剤学的に許容される塩、エステルまたはア
ミドを包含する本発明の化合物は、構造的が類似する化合物の合成に適した既知
の方法によって製造することができる。この製造方法は、本発明のさらに別の特
徴として提供されるものであり、以下に記載する代表例によって説明する。他に
断りのない限り、R4、R5、R6、X3、A1、X1、Ar、R1、R2およびR3は
上記定義のとおりである。ただし、本発明の化合物にアミノ、イミノ、アルキル
アミノ、カルボキシやヒドロキシが存在するときは、通常用いられる保護基によ
ってこれらの基を保護し、所望の時期に通常法によりこれを除去してもよい。
(a)式II:
の化合物を、式III:
(ここにおいて、Zは置換可能な基である)とカップリングさせる。この工程は
、
適当な塩基の存在下で行うのが簡便である。
置換可能な基Zの適当な例として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスル
ホニルオキシやトルエン−p−スルホニルオキシなどのハロゲンまたはスルホニ
ルオキシを例示することができる。
カップリング反応の適当な塩基として、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの
アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、ナトリウムエトキシドやカリウム
ブトキシドなどのC1-4アルコキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムや水
酸化カリウムなどの水酸化物、水素化ナトリウムや水素化カリウムなどの水素化
物を例示することができる。また、n−ブチルリチウムといったC1-4アルキル
リチウムなどの有機金属塩基も例示することができる。カップリング反応は適当
な不活性溶媒または希釈剤中で行うのが簡便である。例えば、N,N−ジメチル
ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン−2−オ
ン、ジメチルスルホキシド、アセトン、1,2−ジメトキシエタンやテトラヒド
ロフランを例示することができる。カップリング反応は、例えば10−150℃
で行うことができ、100℃またはその近傍で行うと簡便である。
反応は、適当な触媒の存在下で行うのが簡便である。例えば、テトラキス(ト
リフェニルホスフィン)パラジウム、塩化第一銅、臭化第一銅といったパラジウ
ム(0)または銅(I)などの金属触媒を用いることができる。
アミノ、イミノまたはアルキルアミノの適当な保護基として、アシル(例えば
C2-4アルカノイル、特にアセチル)、C1-4アルコキシカルボニル(特にメトキ
シカルボニル、エトキシカルボニルまたはtert−ブトキシカルボニル)、ア
リールメトキシカルボニル(特にベンジルオキシカルボニル)またはアロイル(
特にベンゾイル)を例示することができる。この保護基の脱保護の条件は、選択
した保護基の種類によって異なる。例えば、アルカノイルのようなアシル、アル
コキシカルボニルやアロイルは、水酸化リチウムや水酸化ナドリウムなどのアル
カリ金属水酸化物といった適当な塩基を用いて加水分解するなどして脱保護し得
る。また、ベンジルオキシカルボニルのようなアリールメトキシカルボニルは、
パラジウム/炭素のような触媒上で水素化するなどして脱保護し得る。
カルボキシの適当な保護基として、C1-4アルキル(特にメチル、エチル)、
などのエステル化用の基を例示することができ、これらは水酸化リチウムや水酸
化ナドリウムなどのアルカリ金属水酸化物といった適当な塩基を用いて加水分解
するなどして脱保護し得る。
ヒドロキシの適当な保護基として、C2-4アルカノイル(特にアセチル)やア
ロイル(特にベンゾイル)などのアシルやアリールメチル(特にベンジル)を例
示することができる。これらの保護基の脱保護条件は、選択した保護基の種類に
よって異なる。例えば、アルカノイルやアロイルなどのアシルは、水酸化リチウ
ムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物といった適当な塩基を用いて
加水分解するなどして脱保護し得る。あるいは、ベンジルなどのアリールメチル
は、パラジウム/炭素のような触媒上で水素化するなどして脱保護し得る。
式IIおよび式IIIの出発物質は、有機化学の標準的方法によって得ること
ができる。これらの出発物質は、以下に記載する非制限的な実施例に記載する方
法に類する方法によって調製することもできる。欧州特許出願第0375404
号、第0385662号、第0409413号、第0420511号、第046
2812号および第0462813号には、適当な出発物質の調製に大いに関係
する記載がある。
(b)式IV:
(ここにおいて、Zは上記定義の置換可能な基である)と、式V:
の化合物とをカップリングさせる。この工程は、上記定義の適当な塩基の存在下
で行うのが簡便である。
カップリング反応は、上記定義の適当な不活性溶媒中か希釈剤中で行うのが簡
便である。反応温度は、例えば10−150℃で行い、100℃またはその近傍
で行うと簡便である。反応は、上記定義の適当な触媒の存在下で行うのが簡便で
ある。
出発物質である式IVと式Vの化合物は、有機化学の標準的な方法によって得
ることができる。これらの出発物質は、後述する非制限的な実施例に記載される
方法に類する方法で調製することもできる。欧州特許出願第0375404号、
第0385662号、第0409413号、第0420511号、第04628
12号および第0462813号には、適当な出発物質の調製に大いに関係する
記載がある。
(c)式VI:
(ここにおいて、Zが上記定義の置換可能な基である)の化合物と、式VII:
(上式において、Mはリチウムのようなアルカリ金属またはカルシウムのような
アルカリ土類金属であるか、Mは通常のグリニヤ試薬のハロゲン化マグネシウム
部分である)の有機金属試薬をカップリングさせる。
カップリング反応は、上記定義の適当な不活性溶媒中で行うのが簡便である。
反応温度は、例えば−80℃から50℃で行い、−80℃から周囲温度で行うと
簡便である。
出発物質である式VIの化合物と式VIIの化合物は、後述する非制限的な実
施例に記載される方法に類する方法で調製することができる。また、有機化学の
標準的な方法によって得ることもできる。
(d)式VIII:
の化合物を加水分解する。この反応は上記定義の適当な塩基の存在下で行うのが
簡便である。
この加水分解反応は、上記定義の適当な不活性溶媒または希釈剤中で行うのが
簡便である。反応温度は、例えば10℃から180℃で行い、100℃から15
0℃で行うと簡便である。
出発物質である式VIIIの化合物は、説明のみの目的で記載した後述する非
制限的な実施例に記載される方法に類する方法で調製することができる。
(e)X1またはX3がスルフィニルまたはスルホニルであり、R2およびR3が一
緒になって式:−A2−X2−A3−(ここにおいて、X2はスルフィニルまたはス
ルホニルである)であるか、R1およびR2が一緒になって式:−A2−X2−A3
−(ここにおいて、X2はスルフィニルまたはスルホニルである)である式Iの
化合物を製造するときは、X1またはX3がチオであり、R2およびR3が一緒にな
って式:−A2−X2−A3−(ここにおいて、X2はチオである)であるか、R1
およびR2が一緒になって式:−A2−X2−A3−(ここにおいて、X2はチオで
ある)である式Iの化合物を酸化する。
適当な酸化剤として、チオを酸化してスルフィニルおよび/またはスルホニル
にする技術分野において知られている試薬を例示することができる。例えば、過
酸化水素、過酸(例えば3−クロロペルオキシ安息香酸、ペルオキシ酢酸)、ア
ルカリ金属ペルオキシ硫酸塩(例えばペルオキシモノ硫酸カリウム)、ジC1-4
アルキルジオキシラン(例えばジメチルジオキシラン)、三酸化クロムまたは白
金存在下の気体酸素を挙げることができる。酸化は、過剰な酸化と他の官能基の
損傷の危険を減ずるために、必要とされる理論量の酸化剤を用いて、できるだけ
穏やかな条件下で行うのが一般的である。概して、反応は適当な溶媒または希釈
剤中で行う。例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフ
ラン、tert−ブチルメチルエーテルを例示することができる。反応は、例え
ば周囲温度またはその近傍(15−35℃)で行うのが一般的である。スルフィ
ニル基を有する化合物が必要とされるときは、メタ過ヨウ素酸ナトリウムまたは
カリウムなどのより穏やかな酸化剤も使用することができ、酢酸やエタノールの
ような極性溶媒中で行うのが簡便である。スルホニル基を有する式Iの化合物が
必要とされるときは、対応するチオ化合物や対応するスルフィニル化合物を酸化
することによって得ることができる。
式Iの化合物の薬剤学的に許容される塩は、通常法を用いて式Iの新規化合物
を適当な酸または塩基と反応させることによって得ることができる。式Iの化合
物の薬剤学的に許容されるエステルは、式Iの化合物のカルボキシを適当なアル
コールまたはフェノールと通常法にしたがって反応させるか、式Iの化合物のヒ
ドロキシを適当なカルボン酸と通常法にしたがって反応させることによって得る
ことができる。式Iの化合物の薬剤学的に許容されるアミドは、式Iの化合物の
カルボキシを適当なアミンと通常法にしたがって反応させることによって得るこ
とができる。式Iの化合物の光学活性体は、光学活性な出発物質を用いて前述の
工程を実施するか、あるいは、式Iのラセミ化合物を通常法によって分割するこ
とによって得ることができる。
上述のように、式Iの化合物は酵素である5−リポキシゲナーゼの抑制活性を
有する。抑制活性は、以下に記載する1以上の標準法を用いて説明することがで
きる。
a)カルシウムイオノフォアA23187をチャレンジする前に、ヘパリン化
したヒト血液とともに試験化合物をインキュベートし、カーリー(Carey)
とフォーダー(Forder),Prostaglandins,Leukot
riens Med.,1986年22巻57頁、Prostaglandin
s,1984年28巻666頁、Brit.J.Pharmacol.1985
年84巻34頁に記載される特定の放射線免疫検定法を用いてLTB4量を測定
することによって5−リポキシゲナーゼ抑制効果を間接的に検定することを含む
インビトロ検定法を用いる。放射線免疫検定法には、ヤング(Young)らの
Prostaglandins,1983年26巻4号605−613頁の方法
を用いて調製したタンパク質−LTB4複合体を使用する。酵素であるシクロオ
キシゲナーゼに対する試験化合物の効果も、上記のカーリーとフォーダーが記載
するトロンボキサンB2(TxB2)の特定の放射線免疫検定法を用いて同時に検
定することができる。シクロオキシゲナーゼは、アラキドン酸の代替的代謝経路
に関与し、プロスタグランジン、トロンボキサンや関連する代謝生成物を生成す
る。この試験は、血液細胞とタンパク質の存在下における5−リポキシゲナーゼ
とシクロオキシゲナーゼに対する試験化合物の効果を示すものである。この試験
よって、5−リポキシゲナーゼまたはシクロオキシゲナーゼに対する抑制活性の
選択性を評価することができる。
b)試験化合物をラットの一群に投与し(通常は試験化合物のジメチルスルホ
キシド溶液をカルボキシメチルセルロースに添加して得られる乳濁液を経口投与
する)、血液採取し、ヘパリン化し、A23187をチャレンジして、LTB4
とTxB2の放射線免疫検定をすることを含む、上記試験a)に類する半ビボ検
定法を用いる。この試験は、5−リポキシゲナーゼまたはシクロオキシゲナーゼ
に対する抑制剤としての試験化合物の生物学的利用可能性を示すものである。
c)オスラットの一群に試験化合物を経口投与して、オスラット背面皮下細胞
内に形成した空気小袋内のチモサンによって誘導されるLTB4放出に対する試
験化合物の効果を検定することを含むインビボ検定法を用いる。ラットを麻酔し
て、無菌空気(20ml)を注射することによって空気小袋を形成し、同様にし
て空気(10ml)を3日後にさらに注射する。最初の空気注射後6日目に試験
化合物を投与して(通常は試験化合物のジメチルスルホキシド溶液をヒドロキシ
プロピルメチルセルロースに添加して得られる懸濁液を経口投与する)、チモサ
ンを小袋内に注射する(1%生理食塩水懸濁液1ml)。3時間後にラットを殺
して、空気小袋を生理食塩水を用いて洗浄し、上記の特定の放射線免疫検定を用
いて洗浄液中のLTB4を検定した。この試験は、炎症状態における5−リポキ
シゲナーゼ抑制効果を示すものである。
式Iの化合物の薬剤学的性質は予期される構造変化によって変わるものである
が、一般に式Iの化合物は1以上の上記試験a)−c)にて以下の濃度または投
与量で5−リポキシゲナーゼ抑制効果を示す。
試験a):IC50(LTB4)は例えば0.01−40μM
IC50(TxB2)は例えば40−200μM
試験b):経口ED50(LTB4)は例えば0.1−100mg/kg
試験c):経口ED50(LTB4)は例えば0.1−50mg/kg
式Iの化合物を最小抑制投与量または濃度で数回投与しても、試験b)および
/またはc)において明らかな毒性その他の悪影響はなかった。
例えば、3−{5−[5−フルオロ−3−(4−メトキシテトラヒドロピラン
−4−イル)フェニルチオ]−2−メチルアミノフェニル}プロピオン酸ナトリ
ウムは、試験a)のLTB4に対するIC50が1.3μMであり、試験c)のL
TB4に対するED50が<1.5mg/kgであった。概して、特に好ましい式
Iの化合物は、試験b)および/または試験c)のLTB4に対する経口ED50
が<10mg/kgである。
これらの化合物は、シクロオキシゲナーゼではなく5−リポキシゲナーゼの抑
制特性を選択的に示す本発明の化合物の例示である。この選択的特性は、インド
メタシンなどのシクロオキシゲナーゼ抑制剤に頻繁に伴う胃腸への副作用を緩和
したり無くしたりするなどするために、優れた治療特性を与えるものと期待され
る。
さらに別の本発明の特徴によれば、式Iのアニリン誘導体またはその薬剤学的
に許容される塩を薬剤学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせて含有す
る医薬組成物が提供される。
この医薬組成物は、経口用に例えば錠剤、カプセル剤、水溶液、油性溶液、懸
濁液、乳濁液にしたり;局所用に例えばクリーム、軟膏、ゲル、水溶液、油性溶
液、懸濁液にしたり;鼻用に例えば鼻用吸入剤、鼻用スプレー、鼻用ドロップに
したり;膣用または直腸用に例えば座剤にしたり;吸入用に例えば乾燥粉末など
の微粉砕粉末、微小結晶、液体エーロゾルにしたり;舌下または口腔用に例えば
錠剤、カプセル剤にしたり;非経口用(動脈、静脈、筋肉内、皮膚、注入などを
含む)に例えば無菌水性または油性の水溶液または懸濁液などにしたりすること
ができる。
1以上の賦形剤と組み合わせて単一の投与形態にする際の活性成分の量(式I
のアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩)は、治療する検体や特定
の投与経路によって変化させる必要があろう。例えば、ヒトへ経口投与するとき
は、0.5−2gの活性成分と、製剤全量の約5から約98重量%の適当で簡便
な量の賦形剤を含有するのが一般的である。各投与形態は一般に約1mgから約
500mgの活性成分を含有するのが一般的である。
本発明のさらに別の特徴によれば、ヒトまたは動物の体を治療する方法に使用
するための、式Iのアニリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩が提供さ
れる。
本発明はさらに、1以上のロイコトリエンが単独または部分的に介在する疾患
または状態を治療する方法をも含む。この方法は、この治療が必要な温血動物に
効果量の上記定義の活性成分を投与することを含む。本発明は、このような活性
成分を、ロイコトリエンが介在する疾患または状態に用いる新しい薬剤の製造に
使用することをも示す。
治療または予防のための式Iの化合物の投与量は、周知の薬剤原理にしたがっ
て、動物や患者の性状、状態の重さ、年齢、性別や、投与経路によって変えるの
が自然である。上記のとおり、式Iの化合物は、線状経路(5−リポキシゲナー
ゼ触媒)ととくに生成に5−ロイコトリエンが介在するロイコトリエンによって
生じるアラキドン酸代謝効果単独または部分的に起因するアレルギーおよび炎症
状態、骨代謝障害の治療に有用である。上記のとおり、種々の炎症やアレルギー
性疾患などが含まれるが、そのような疾患として、関節の炎症(とくにリューマ
チ性関節炎、骨関節炎、痛風)、胃腸管の炎症(とくに炎症性腸疾患、潰瘍性大
腸炎や胃炎)、皮膚疾患(とくに乾癬、湿疹、皮膚炎)、接眼状態(とくにアレ
ルギー性結膜炎、ぶどう膜炎)、呼吸器系疾患(とくに喘息、気管支炎、アレル
ギー性鼻炎)が例示され、例えば種々の心臓血管および脳血管障害の発生および
進行時(例えば心筋梗塞、アテローム硬化斑、高血圧、血小板凝集、アンギナ、
卒中、再灌流傷,血管損傷があり、これには再狭窄および抹消血流障害が含まれ
る)、ショックまたは外傷状態の発生時(例えば火傷による傷害、毒血症または
外科的手術に付随し得るもの)、および種々の骨代謝疾患(例えば骨そしょう症
(老衰や閉経後の骨そしょう症を含む)、パジェット病、骨変形、高カルシウム
血症、上皮小体亢進症、骨硬化症、大理石骨病、歯周炎)、リューマチ性関節炎
や骨関節炎を伴い得る骨代謝における異常な変化に伴う。
治療または予防のために式Iの化合物を分割服用させるときは、1日あたり0
.5−0.75mg/kg体重となるように投与するのが一般的であろう。一般
に、非経口投与するときは投与量を少なめにするであろう。静脈投与するときは
例えば0.5−30mg/kg体重にし、吸入の場合は例えば0.5−25mg
/kg体重にするであろう。
式Iの化合物は、ヒトを含む温血動物の治療剤として主たる価値があるが、酵
素である5−リポキシゲナーゼ抑制が必要とされる場合にも常に有用である。し
たがって、式Iの化合物は、新しい生物学的試験を発展させたり新しい薬剤学的
試薬の研究に使用する薬剤学的標準として有用である。
ロイコトリエン生成への作用により、式Iの化合物はある種の細胞保護効果を
示す。例えば、式Iの化合物は、インドメタシン、アセチルサリチル酸、イブプ
ロフェン、サリンダック、トルメチンおよびピロキシカムなどのシクロオキシゲ
ナーゼ抑制非ステロイド系抗炎症剤(NSAIA)が胃腸に及ぼすある種の副作
用を減じたり抑制したりするのに有用である。さらに、式Iの5−リポキシゲナ
ーゼ抑制剤とNSAIAを並行投与することによって、治療効果発現に必要なN
SAIA量を減らし、それによって予測される副作用を減ずることができる。本
発明のさらに別の特徴によると、上記定義の式Iのアニリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩を、上記例のようなシクロオキシゲナーゼ抑制非ステロイ
ド抗炎症剤と共奏または混合して、薬剤学的に許容される希釈剤または担体とと
もに含有する医薬組成物が提供される。
式Iの化合物の細胞保護効果は、例えばラットの胃腸管におけるインドメタシ
ン誘導またはエタノール誘導の抗潰瘍化検定をする標準的実験モデルで説明する
ことができる。
本発明の医薬組成物は、疾患治療に有用であるものとして知られている1以上
の治療または予防剤をさらに含んでもよい。例えば、既知の血小板凝集抑制剤、
抗脂肪欠乏血症剤、抗高血圧剤、β−アドレナリン産生遮断剤または血管拡張剤
を、心臓または血管障害または状態の治療用の本発明の医薬組成物に共存させる
と有用である。同様に、抗ヒスタミン剤、ステロイド(ジプロピオン酸ベクロメ
タゾンなど)、クロモリンナトリウム、ホスホジエステラーゼ抑制剤またはβ−
アドレナリン産生刺激剤を、肺疾患または状態の治療用の本発明の医薬組成物に
共存させると有用である。
以下に非制限的な実施例を記載して本発明を説明する。これらの実施例におい
ては、他に断りのない限り以下の条件に従う。
(i)蒸留は減圧下で回転式蒸溜器を用いて行った。後処理はろ過して残留固体
を除去した後に行った。
(ii)操作はアルゴンなどの不活性気体下にて周囲温度(すなわち18−25℃
)で行った。
(iii)フラッシュカラムクロマトグラフィーと中圧液体クロマトグラフィー(
MPLC)は、ドイツのダームシュタットのE.メルクから入手したメルクキー
ゼルゲル(Kieselgel)シリカ(Art.9385またはメルクリクロ
プレプ(Lichroprep)RB−18(Art.9303)逆相シリカに
より行った。
(iv)収率は説明のためにだけ記載したものであり、達成可能な最大収率を必ず
しも示したものはない。
(v)式Iの最終生成物の構造は、NMRとマススペクトル法によって確認した
。他に断りのない限り、式Iの最終生成物のCDCl3溶液を用いてNMRスペ
クトルデータを取得した。化学シフト値はデルタ値で示し、以下の略
号を用いた。
s=シングレット d=ダブレット t=トリプレット
q=カルテット m=マルチプレット
(vi)一般に中間体は十分に分析していない。薄層クロマトフラフィー、赤外線
吸収(IR)、NMR分析によって、純度を評価した。
(vii)融点は補正していない。メトラー(Mettler)SP62自動融点
測定機または湯浴装置を用いて測定した。式Iの最終生成物の融点は、エタノー
ル、メタノール、アセトン、エーテルまたはヘキサンなどの通常の有機溶媒を単
独または混合して用いて再結晶した後に行った。
(viii)以下の略号を用いた。
DMSO=ジメチルスルホキシド
NMP=N−メチルピロリジン−2−オン
THF=テトラヒドロフラン
DMP=N,N−ジメチルホルムアミド実施例1
4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テト
ラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピラ
ン(0.3g)、水酸化カリウム(0.23g)、水(0.5ml)およびDM
SO(2ml)の混合物を撹拌して、130℃で1時間加熱した。この混合物を
周囲温度に冷却して、水(10ml)を添加した。混合物に希塩酸を添加して酸
性にし、pHを5にした。この混合物をジエチルエーテル(10ml)で抽出し
て、水酸化ナトリウム(0.03g)のメタノール(2ml)溶液を添加した。
混合物を蒸留して、得られた残渣をジエチルエーテル(10ml)と水(5ml
)の間で分配した。水相を蒸留してガム状の3−{5−{5−フルオロ−3−(
4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル)−フェニルチオ}−2−メチルア
ミノフェニル}プロパン酸ナトリウム(0.2g、60%)を得た。NMRスペクトル
(CD3SOCD3)1.8(m,4H),2.15(t,2H
),2.65(t,2H),2.7(s,3H),2.85(s,3H),3.
7(m,4H),6.5−7.2(m,7H)
出発物質として用いた4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メト
キシテトラヒドロピランを以下の方法により合成した。
ジ−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6
−イル)ジサルファイト(欧州特許出願第0462812号の実施例7;38.
4g),トリフェニルホスフィン(29g)と1,4−ジオキサン(300ml
)の混合物を撹拌して、これに濃塩酸(5滴)と水(50ml)の混合物を添加
した。この混合物を周囲温度で30分間撹拌した。混合物を蒸留濃縮し、体積を
約半分にした。残渣を酢酸エチルと0.5N水酸化ナトリウム水溶液の間で分配
して、水相をジエチルエーテルで洗浄した。その後希塩酸を添加して酸性にし、
pHを2にした。この酸性混合物を酢酸エチルで抽出して、有機相を硫酸マグネ
シウムで乾燥して蒸留した。残留油状物をジエチルエーテルに溶解し、ヘキサン
を添加することによって、固体の6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン−2−オン(35.5g、92%)を得た。この生成物
をさらに精製することなく使用した。
6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−
オン(0.386g)、4−(3,5−ジフルオロフェニル)−4−メトキシテ
トラヒドロピラン(欧州特許出願第0462813号の実施例5;0.547g
)およびNMP(6ml)の混合物を0℃に冷却して撹拌し、これにn−ブチル
リチウム(ヘキサン中1.4M、1.5ml)を添加した。混合物を0℃で5分
間撹拌して、ヘキサンを蒸留しながら2.2時間145℃で加熱した。混合物を
周囲温度に冷却して、酢酸エチルと水の間で分配した。有機相を水で洗浄し、0
.5N水酸化ナトリウム水溶液および生理食塩水で洗浄して、硫酸マグネシウム
で乾燥した。蒸留して得られた残渣をカラムクロマトグフラフィーによって、塩
化メチレンとジエチルエーテルの混合物の極性を上げながら溶出し、4−[5−
フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノ
リン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピラン(0.40
4g、50%)を得た。融点124−125℃;NMRスペクトル
1.8−2.1(m,4H),2.55−3.0(m,4H)
,
2.99(s,3H),3.38(s,3H),3.7−4.0(m,4H),
6.7−7.15(m,4H),7.2−7.5(m,2H)実施例2
実施例1に記載される方法と同様の方法を用いて、(2S,4R)−4−[5
−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピ
ラン、水酸化カリウム、水およびDMSOの混合物を撹拌して、130℃で1時
間加熱した。混合物を周囲温度に冷却して、水を添加した。混合物に希塩酸を添
加して酸性にして、pHを5にした。混合物をジエチルエーテルで抽出して、水
酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加して、混合物を蒸留した。残渣をジエチ
ルエーテルと水の間で分配し、水相を蒸留することによって、泡状の(2S,4
R)3−{5−[5−フルオロ−3−(4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロ
ピラン−4−イル)フェニルチオ]−2−メチルアミノフェニル}プロピオン酸
ナトリウム(95%)を得た。NMRスペクトル
(CD3SOCD3)1,1(d,3H),1.4(m,1H)
,1.8(m,3H),2.1(t,2H),2.55(t,2H),2.7(
d,3H),2.88(s,3H),3.45(m,1H),3.7(m,2H
),6.5(m,1H),6.55(m,1H),6.9(m,2H),7.1
(d,1H),7.2(m,1H),7.3(d,1H)
出発物質である(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2
−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]
−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピランを、以下の方法によって合成し
た。
6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−
オン(0.247g)、(2S,4R)−4−(3,5−ジフルオロフェニル)
−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピラン(欧州特許出願第046281
3号の実施例10;0.31g)、水酸化リチウム一水和物(0.056g)、
ジ−(2−メトキシエチル)エーテル(1ml)およびNMP(4ml)の混合
物を撹拌して、140℃で2時間加熱した。混合物を周囲温度に冷却して、酢酸
エチルと水の間で分配した。有機相を水、1N塩酸および生理食塩水で洗浄して
、硫酸マグネシウムで乾燥し蒸留した。得られた残渣を、カラムクロマトグラフ
ィーによって塩化メチレンとジエチルエーテルの混合物の極性を上げて溶出して
精製した。得られた油状物をジエチルエーテルを用いてトリチュレートし、(2
S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3
,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ−2−
メチルテトラヒドロピランを(0.135g、25%)を得た。融点137−1
39℃;NMRスペクトル
1.18(d,3H),1.4−2.2(m,4H),2.5
0−2.96(m,4H),2.98(s,3H),3.37(s,3H),3
.65−4.15(m,3H),6.65−7.50(m,6H)実施例3
実施例1に記載される方法と同様の方法を用いて、(2S,4R)−4−[5
−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン−6−イルスルホニル)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒ
ドロピラン、水酸化カリウム、水およびDMSOの混合物を撹拌して、130℃
で1時間加熱した。混合物を周囲温度に冷却して、水を添加した。混合物に希塩
酸を添加して酸性にして、pHを5にした。混合物をジエチルエーテルで抽出し
て、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加して、混合物を蒸留した。残渣を
ジエチルエーテルと水の間で分配し、水相を蒸留することによって、吸湿性固体
の(2S,4R)3−{5−[5−フルオロ−3−(4−メトキシ−2−メチル
テトラヒドロピラン−4−イル)フェニルスルホニル]−2−メチルアミノフェ
ニル}プロピオン酸ナトリウム(30%)を得た。融点160℃(分解)NMRスペクトル
(CD3SOCD3)1,1(d,3H),1.5(m,1H)
,1.9(m,3H),2.1(t,2H),2.7(m,5H),2.9(s
,3H),3.7(m,3H),6.5(d,1H),7.45(m,2H),
7.6(m,2H),7.7(m,1H),8.2(d,1H)
出発物質の(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オ
キソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル
]
−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピランを以下の方法により合成した。
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,
2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ
−2−メチルテトラヒドロピラン(2g)、エタノール(20ml)および水(
10ml)の混合物へ、ペルオキシモノ硫酸カリウム(4.4g)を添加した。
この混合物を周囲温度で18時間撹拌して、塩化メチレンと水の間で分配した。
有機相を亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥して
蒸留した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーによって、ヘキサンと酢酸
エチルの極性を上げながら溶出して固体を得た。これをヘキサンと酢酸エチルの
混合物を用いて結晶することによって、(2S,4R)−4−[5−フルオロ−
3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−
イルスルホニル)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピラン(
1.3g、60%)を得た。融点110−112℃;NMRスペクトル
:1.2(d,3H),1.55(m,1H),1.9(m,
2H),2.7(m,2H),3.0(m,5H),3.4(s,3H),3.
9(m,3H),7.1(d,1H),7.3(m,1H),7.5(m,1H
),7.75(m,2H),7.85(q,1H)実施例4
実施例1に記載される方法と同様の方法を用いて、(2S,4R)−4−ヒド
ロキシ−2−メチル−4−[3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−
テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]テトラヒドロピラン、水酸化
カリウム、水およびDMSOの混合物を撹拌して、130℃で1時間加熱した。
混合物を周囲温度に冷却して、水を添加した。この混合物に希塩酸を添加してp
H5にし、ジエチルエーテルで抽出した。水酸化カリウムのメタノール溶液を添
加して、混合物を蒸留した。得られた残渣をジエチルエーテルと水の間で分解し
、水相を蒸留することによって、泡状物の(2S,4R)−3−{5−[3−(
4−ヒドロキシ−2−メチルテトラヒドロピラン−4−イル)−フェニルチオ]
−2−メチルアミノフェニル}プロピオン酸カリウムを得た(25%)。NMRスペクトル
(CD3SOCD3/CD3CO2D)1.0(d,3H),1.
5(m,3H),1.8(m,1H),2.5(m,2H),2.7(m,2H
),3.8(m,3H),6.5(d,1H),6.8(m,1H),7.0−
7.4(m,5H)
出発物質である(2S,4R)−4−ヒドロキシ−2−メチル−4−[3−(
1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチ
オ)フェニル]テトラヒドロピランを以下の方法により合成した。
1,3−ジヨードベンゼン(19.8g)のTHF(200ml)溶液を−7
0℃に撹拌冷却し、これにn−ブチルリチウム(1.5Mヘキサン溶液、40m
l)を滴下した。この混合物を−70℃で12分間撹拌して、(2S)−2−メ
チルテトラヒドロピラン−4−オン(欧州特許出願第0385662号の実施例
20、5.7g)を添加した。混合物を撹拌して、周囲温度まで加温して、1時
間撹拌した。混合物を氷酢酸を添加することによって酸性にし、ジエチルエーテ
ルと水の間で分配した。有機相を生理食塩水で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥
して蒸留した。残渣をジエチルエーテル(50ml)に溶解させ、この溶液を0
℃に冷却してある濃硫酸(35%v/v、200ml)に添加した。混合物を撹
拌して、周囲温度に加温して3時間撹拌した。混合物を砕氷上に注ぎ、ジエチル
エーテルで抽出した。有機相を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、生理食塩水
で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥し蒸留した。得られた残渣をカラムクロマト
グラフィーによって、ヘキサンと酢酸エチルの極性を上げながら溶出して、(2
S,4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−ヨードフェニル)−2−メチルテトラ
ヒドロピラン(12g、75%)を得た。
6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−
オン(0.23g)、(2S,4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−ヨードフェ
ニル)−2−メチルテトラヒドロピラン(0.35g)、炭酸カリウム(0.2
g)、塩化第一銅(0.05g)およびDMF(3ml)の混合物を撹拌して、
120℃で2時間加熱した。混合物を周囲温度に冷却して、酢酸エチルと水の間
で分配した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して蒸留した。得られた残渣をカラ
ムクロマトグラフィーによって、ヘキサンと酢酸エチルの極性を上げながら溶出
して、(2S,4R)−4−ヒドロキシ−2−メチル−4−[3−(1−メチル
−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニ
ル]テトラヒドロピラン(0.33g)を得た。融点:135−137℃(ヘキ
サンと酢酸エチルの混合物を用いて再結晶)NMRスペクトル
:1.21(d,3H),1.55−1.8(m,4H),2
.1(m,1H),2.66(m,2H),2.86(m,2H),3.35(
s,3H,3.85−4.05(m,3H),6.93(d,1H),7.13
(m,1H),7.2−7.4(m,4H),7.47(m,1H)
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07D 263/34 9283−4C C07D 263/34
271/02 9283−4C 271/02
277/32 9283−4C 277/32
285/04 9283−4C 285/04
309/10 7329−4C 309/10