【発明の詳細な説明】
2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体
本発明は、2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体に関す
る。より詳細には、酵素である5−リポキシゲナ−ゼ(以後「5−LO」と略す
)の抑制作用を示す2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体
に関する。また、本発明は、2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリ
ン誘導体の製造方法、および2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリ
ン誘導体を含有する新規な医薬組成物に関する。さらに、本発明は、アラキドン
酸の5−リポキシゲナ−ゼ触媒酸化による直接または間接生成物が関与する炎症
および/またはアレルギ−性疾患のような種々の疾患の治療への、2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体の使用と、この使用のための新し
い医薬の製造をも含む。
上述のとおり、以下に記載する2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン誘導体は5−リポキシゲナ−ゼ抑制作用を示す。5−リポキシゲナ−ゼは
、アラキドン酸酸化を触媒し、連鎖工程を経て生理学的に活性なロイコトリエン
(ロイコトリエンB4[LTB4]など)、ペプチド−脂質ロイコトリエン(ロイ
コトリエンC4[LTC4]やロイコトリエンD4[LTD4]など)および種々の
代謝生成物を生成することに関与することが知られている酵素である。
ロイコトリエンの生合成関係や生理学的活性は、テイラ−(G.W.Tayl
or)とクラ−ク(S.R.Clarke)のTrends in Pharm
acological Scienceの1986年7号100−103頁にま
とめられている。ロイコトリエンやその代謝生成物は、種々の炎症やアレルギ−
性疾患などのさまざまな疾患の発生や進行に関係がある。そのような疾患として
、関節の炎症(とくにリュ−マチ性関節炎、骨関節炎、痛風)、胃腸管の炎症(
とくに炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎や胃炎)、皮膚疾患(とくに乾癬、湿疹、皮
膚炎)、接眼状態(とくにアレルギ−性結膜炎、ぶどう膜炎)、呼吸器系疾患(
とくに喘息、気管支炎、アレルギ−性鼻炎)が例示され、例えば種々の心臓血管
および脳血管障害の発生および進行時(例えば心筋梗塞、アテロ−ム硬化斑、高
血圧、血小板凝集、アンギナ、卒中、再灌流傷,血管損傷があり、これには再狭
窄
および抹消血流障害が含まれる)、ショックまたは外傷状態の発生時(例えば火
傷による傷害、毒血症または外科的手術に付随し得るもの)、および種々の骨代
謝疾患(例えば骨そしょう症(老衰や閉経後の骨そしょう症を含む)、パジェッ
ト病、骨変形、高カルシウム血症、上皮小体亢進症、骨硬化症、大理石骨病、歯
周炎)、リュ−マチ性関節炎や骨関節炎を伴い得る骨代謝における異常な変化に
伴う。また、ロイコトリエンは、リンパ球と白血球の機能を変調する作用により
炎症疾患に介在する。酵素であるシクロオキシゲナ−ゼのアラキドン酸に対する
作用により、プロスタグランジンやトロンボキサンのようなアラキドン酸のさら
なる生理学的活性代謝物が生じる。
欧州特許出願第0385662号には、ある種の複素環式誘導体が5−リポキ
シゲナ−ゼに対する抑制作用を有することが記載されている。とくに欧州特許出
願第0420511号も、5−リポキシゲナ−ゼに対する抑制作用を有する複素
環式誘導体に関係している。我々は、欧州特許出願第0420511号の開示範
囲内にあるがその出願書類中には具体的に特定されていない2−オキソ−1,2
,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体の一部が、好ましい5−リポキシゲナ−
ゼ抑制作用を有し、このためにロイコトリエンの生合成を抑制することを見い出
した。このため、これらの化合物は、アレルギ−状態、乾癬、喘息、心臓血管お
よび脳血管疾患および/または炎症および関節炎症状態および/または骨代謝障
害などの、1以上のロイコトリエンが単独または部分的に介在する疾患の治療剤
として価値がある。
欧州特許出願第0420511号に記載されるある種の化合物は非結晶である
ことが見いだされている。例えば、油状またはガム状に形成されたり、泡状物と
して単離される。このような非結晶化合物は、合成、精製、分析、取扱い易さ、
大量合成について検討する限り望ましいものではない。4−[3−(1,2−ジ
ヒドロ−1−エチル−2−オキソキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メ
トキシテトラヒドロピラン(欧州特許出願第0420511号の実施例2)はガ
ム状物として得られ、(2RS,4SR)−4−[3−(1,2−ジヒドロ−1
−メチル−2−オキソキノリン−6−イルチオ)−5−フルオロフェニル]−4
−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピラン(欧州特許出願第0420511号
の実施例5)は油状物として得られる。
本発明によれば、式I:
で表される2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル誘導体および
その薬剤学的に許容される塩が提供される。式Iにおいて、
Qは1位の窒素原子上にC1-4アルキルを有する2−オキソ−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1はチオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、
Arは1または2のハロゲンを有していてもよい1,3−フェニレンであり、
R1はC1-4アルキル、C3-4アルケニルまたはC3-4アルキニルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
1または2のC1-4アルキルを有していてもよい5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2およびA3は同一または異なっていてもよく各々C1-3アルキレン
であり、X2はオキシである。
本明細書において、「アルキル」には、直鎖および分枝アルキルがともに含ま
れる。しかしながら、「プロピル」のように特定のアルキルが指定されている場
合は直鎖のもののみを意味し、「イソプロピル」のように分枝アルキルが指定さ
れている場合は分枝のもののみを意味する。以上は、他の包括的な用語について
も同様に適用する。
さらに、上記定義の式Iの化合物の中には、不斉炭素が存在するために光学活
性体またはラセミ体として存在しうるものがあるが、本発明の定義には5−リポ
キシゲナ−ゼ抑制作用を有するすべての光学活性体やラセミ体が含まれるものと
理解すべきである。光学活性体は、本分野で周知の有機化学の標準的方法によっ
て合成することができる。例えば、光学活性な出発物質から合成したり、ラセミ
体の分割により合成したりすることができる。
上記の包括的な用語の適当な例は以下に示すとおりである。
Qに存在するC1-4アルキルとして適当なものとして、メチル、エチル、プロ
ピルを例示することができる。
Arに存在するハロゲンとして適当なものとして、フッ素を例示することがで
きる。
R1がC1-4アルキルであるときの適当なものとして、メチル、エチル、プロピ
ルを例示することができる。R1がC3-4アルケニルであるときの適当なものとし
て、アリルを例示することができる。R1がC3-4アルキニルであるときの適当な
ものとして、2−プロピニルを例示することができる。
R2およびR3が一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成するとき、同一または異なっていてもよいA2およびA3がとりうる適当な
C1-3アルキレンとして、メチレン、エチレン、トリメチレンを例示することが
できる。この5または6員環に存在しうるC1-4アルキルの適当なものとして、
メチルおよびエチルを例示することができる。
本発明の化合物の薬剤学的に許容される塩として適当なものとして、本発明の
化合物の酸付加塩であって十分な塩基性を示すものなどを例示することができる
。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マ
レイン酸といった無機酸または有機酸などの酸付加塩を挙げることができる。さ
らに、本発明の化合物の薬剤学的に許容される塩であって十分な酸性を示すもの
として、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩)、アルカリ土類金
属塩(例えばカルシウム塩やマグネシウム塩)、アンモニウム塩や生理学的に許
容されるカチオンを与える有機塩基との塩(例えばメチルアミン、ジメチルアミ
ン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリン、トリス(2−ヒドロキシエチ
ル)アミンと形成する塩)を例示することができる。
本発明の化合物として、式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩であって、Q,X1、Ar、R1
、R2およびR3が本発明の特定の化合物について本節の前後に記載される基であ
るものを例示することができる。
(a)Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−
6−イルであり、
(b)X1がチオまたはスルホニルであり、
(c)Arが1,3−フェニレンまたは5−フルオロ−1,3−フェニレンであ
り、
(d)Arが2,5−ジフルオロ−1,3−フェニレンであり、
(e)R1がメチルであり、または、
(f)R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とと
もにX2のα位にメチルを有していてもよい5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2はメチレンまたはエチレンであり、A3はエチレンであり、
X2はオキシである。
本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,
4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレンまたは5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
X2のα位にメチルを有していてもよい6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2およびA3は各々エチレンであり、X2はオキシである、式Iの2
−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に
許容される塩を例示することができる。
別の本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレン、5−フルオロ−1,3−フェニレンまたは2,5
−ジフルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
X2のα位にメチルを有していてもよい6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2およびA3は各々エチレンであり、X2はオキシである、式Iの2
−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に
許容される塩を例示することができる。
別の本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、−CH2CH2OCH(CH3)CH2−である、
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩を例示することができる。
別の本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが5−フルオロ−1,3−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,3
−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、−CH2CH2OCH(CH3)CH2−である、
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩を例示することができる。
本発明の好ましい具体的化合物は、以下の式Iの化合物である。
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2
,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ−
2
−メチルテトラヒドロピラン
本発明の特に好ましい具体的化合物は、以下の式Iの化合物である。
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2
,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン
本発明の特に好ましい具体的化合物は、以下の式Iの化合物である。
(2S,4R)−4−[2,5−ジフルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン
本発明のさらに他の側面において、我々は本発明のある種の化合物が結晶であ
ることを発見した。後述する実施例1−9に開示されるような化合物がこの事実
を実証している。結晶状態で得られるならば、大量製造するときに精製、分析、
取扱いが容易であるため、これらの化合物はとくに価値がある。例えば、非結晶
の油状物から残留溶媒を除去するのが問題になることが知られているが、結晶含
有医薬組成物は、通常の方法にしたがって調製することができる。例えば、錠剤
やカプセル剤のように経口投与に適した形態にしたり、微粉砕粉末や微小結晶と
して吸入に適した形態にすることができる。しかし、油状物として得られるなら
ば、このように形態を選択することはできなくなる。
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体およびその
薬剤学的に許容される塩を包含する本発明の化合物は、構造的が類似する化合物
の合成に適した既知の方法によって製造することができる。この製造方法は、本
発明のさらに別の特徴として提供されるものであり、以下に記載する代表例によ
って説明する。他に断りのない限り、Q,X1、Ar、R1、R2およびR3は上記
定義のとおりである。
(a)式:Q−X1−Hの化合物を、式II:
(上式において、Zは置換可能な基である)の化合物とカップリングさせる。こ
の工程は、適当な塩基の存在下で行うのが簡便である。
置換可能な基Zの適当な例として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスル
ホニルオキシやトルエン−4−スルホニルオキシなどのハロゲンまたはスルホニ
ルオキシを例示することができる。
カップリング反応の適当な塩基として、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの
アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、ナトリウムエトキシドやカリウム
ブトキシドなどのC1-4アルコキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムや水
酸化カリウムなどの水酸化物、水素化ナトリウムや水素化カリウムなどの水素化
物を例示することができる。また、n−ブチルリチウムといったC1-4アルキル
リチウムなどの有機金属塩基も例示することができる。カップリング反応は適当
な不活性溶媒または希釈剤中で行うのが簡便である。例えば、N,N−ジメチル
ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン−2−オ
ン、ジメチルスルホキシド、アセトン、1,2−ジメトキシエタンやテトラヒド
ロフランを例示することができる。カップリング反応は、例えば10−150℃
で行うことができ、100℃またはその近傍で行うと簡便である。
反応は、適当な触媒の存在下で行うのが簡便である。例えば、テトラキス(ト
リフェニルホスフィン)パラジウム、塩化第一銅、臭化第一銅といったパラジウ
ム(0)または銅(I)などの金属触媒を用いることができる。
出発物質である式Q−X1−Hの化合物と式IIの化合物は、有機化学の標準
的な方法によって得ることができる。これらの出発物質の調製は、後述する非制
限的な実施例に記載されている。あるいは、必要とされる出発物質は、有機化学
の通常技術の範囲内にある方法に類する方法によって得ることができる。欧州特
許出願第0420511号には、適当な出発物質の製造に大いに関係する記載が
ある。
(b)式:Q−Z(ここにおいて、Zは上記定義の置換可能な基である)と、式
III:
の化合物とをカップリングさせる。この工程は、上記定義の適当な塩基の存在下
で行うのが簡便である。
カップリング反応は、上記定義の適当な不活性溶媒中で行うのが簡便である。
反応温度は、例えば10−150℃で行い、100℃またはその近傍で行うと簡
便である。反応は、上記定義の適当な触媒の存在下で行うのが簡便である。
出発物質である式Q−Zの化合物と式IIIの化合物は、有機化学の標準的な
方法によって得ることができる。これらの出発物質の調製は、後述する非制限的
な実施例に記載されている。あるいは、必要とされる出発物質は、有機化学の通
常技術の範囲内にある方法に類する方法によって得ることができる。欧州特許出
願第0420511号には、適当な出発物質の製造に大いに関係する記載がある
。(c)式:Q−X1−Z(ここにおいて、Zが上記定義の置換可能な基である
か、X1がチオであるときはZは式Q−X1−でありうる)の化合物と、式IV:
(上式において、Mはリチウムのようなアルカリ金属またはカルシウムのような
アルカリ土類金属であるか、Mは通常のグリニヤ試薬のハロゲン化マグネシウム
部分である)の有機金属試薬をカップリングさせる。
カップリング反応は、上記定義の適当な不活性溶媒中で行うのが簡便である。
反応温度は、例えば−80℃から50℃で行い、−80℃から周囲温度で行うと
簡便である。
出発物質である式Q−X1−Zの化合物と式IVの化合物は、有機化学の標準
的な方法によって得ることができる。これらの出発物質の調製は、後述する非制
限的な実施例に記載されている。あるいは、必要とされる出発物質は、有機化学
の通常技術の範囲内にある方法に類する方法によって得ることができる。上記の
欧州特許出願には、適当な出発物質の製造に大いに関係する記載がある。
(d)式V:
の化合物と、式:R1−Z(ここにおいて、Zは上記定義の置換可能な基である
)の化合物を用いてアルキル化する。この反応は上記定義の適当な塩基の存在下
で行うのが簡便である。
このアルキル化反応は、上記定義の適当な不活性溶媒または希釈剤中で行うの
が簡便である。反応温度は、例えば−20℃から70℃で行い、周囲温度または
その近傍で行うと簡便である。
出発物質である式Vの化合物は、有機化学の標準的な方法によって得ることが
できる。あるいは、必要とされる出発物質は、上記の欧州特許出願に記載される
方法に類する方法によって得ることができる。
(e)Qにある窒素がアルキルを有する式Iの化合物を製造するときは、その窒
素に水素が結合している式Iの化合物をアルキル化する。
適当なアルキル化剤として、上記定義の適当な塩基の存在下で用いる、塩化、
臭化またはヨウ化C1-4アルキルといったハロゲン化アルキルなどの、窒素原子
のアルキル化技術分野で知られている試薬を例示することができる。アルキル化
剤は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチ
ルスルホキシド、アセトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランな
どの適当な不活性溶媒または希釈剤中で行うのが好ましい。反応温度は、例えば
10−150℃で行うのが好ましく、周囲温度またはその近傍で行うと簡便であ
る。
(f)X1がスルフィニルまたはスルホニルである式Iの化合物を製造するとき
は、X1がチオである式Iの化合物を酸化する。
適当な酸化剤として、チオを酸化してスルフィニルおよび/またはスルホニル
にする技術分野において知られている試薬を例示することができる。例えば、過
酸化水素、過酸(例えば3−クロロペルオキシ安息香酸、ペルオキシ酢酸)、ア
ルカリ金属ペルオキシ硫酸塩(例えばペルオキシモノ硫酸カリウム)、三酸化ク
ロムまたは白金存在下の気体酸素を挙げることができる。酸化は、過剰な酸化と
他の官能基の損傷の危険を減ずるために、必要とされる理論量の酸化剤を用いて
、できるだけ穏やかな条件下で行うのが一般的である。概して、反応は適当な溶
媒または希釈剤中で行う。例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、テ
トラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエ−テルを例示することができる。
反応は、例えば周囲温度またはその近傍(15−35℃)で行うのが一般的であ
る。スルフィニル基を有する化合物が必要とされるときは、メタ過ヨウ素酸ナト
リウムまたはカリウムなどのより穏やかな酸化剤も使用することができ、酢酸や
エタノ−ルのような極性溶媒中で行うのが簡便である。スルホニル基を有する式
Iの化合物が必要とされるときは、対応するチオ化合物や対応するスルフィニル
化合物を酸化することによって得ることができる。
式Iの新規化合物の薬剤学的に許容される塩が必要とされるときは、通常法を
用いて式Iの新規化合物を適当な酸または塩基と反応させることによって得るこ
とができる。式Iの化合物の光学活性体が必要とされるときは、光学活性な出発
物質を用いて前述の工程を実施するか、あるいは、通常法によって式Iの化合物
のラセミ体を分割することによって得ることができる。
上述のように、式Iの化合物は酵素である5−リポキシゲナ−ゼの抑制活性を
有する。抑制活性は、以下に記載する1以上の標準法を用いて説明することがで
きる。
a)カルシウムイオノフォアA23187をチャレンジする前に、ヘパリン化
したヒト血液とともに試験化合物をインキュベ−トし、カ−リ−(F.Care
y)とフォ−ダ−(R.A.Forder),Prostaglandins,
Leukotriens Med.,1986年22巻57頁、Prostag
landins,1984年28巻666頁、Brit.J.Pharmaco
l.1985年84巻34頁に記載される特定の放射線免疫検定法を用いてLT
B4量を測定することによって5−リポキシゲナ−ゼ抑制効果を間接的に検定す
ることを含むインビトロ検定法を用いる。放射線免疫検定法には、ヤング(Yo
ung)らのProstaglandins,1983年26巻4号605−6
13頁の方法を用いて調製したタンパク質−LTB4複合体を使用する。酵素で
あるシクロオキシゲナ−ゼに対する試験化合物の効果も、上記のカ−リ−とフォ
−ダ−が記載するトロンボキサンB2(TxB2)の特定の放射線免疫検定法を用
いて同時に検定することができる。シクロオキシゲナ−ゼは、アラキドン酸の代
替的代謝経路に関与し、プロスタグランジン、トロンボキサンや関連する代謝生
成物を生成する。この試験は、血液細胞とタンパク質の存在下における5−リポ
キシゲナ−ゼとシクロオキシゲナ−ゼに対する試験化合物の効果を示すものであ
る。この試験よって、5−リポキシゲナ−ゼまたはシクロオキシゲナ−ゼに対す
る抑制活性の選択性を評価することができる。
b)試験化合物をラットの一群に投与し(通常は試験化合物のジメチルスルホ
キシド溶液をカルボキシメチルセルロ−スに添加して得られる乳濁液を経口投与
する)、血液採取し、ヘパリン化し、A23187をチャレンジして、LTB4
とTxB2の放射線免疫検定をすることを含む、上記試験a)に類する半ビボ検
定法を用いる。この試験は、5−リポキシゲナ−ゼまたはシクロオキシゲナ−ゼ
に対する抑制剤としての試験化合物の生物学的利用可能性を示すものである。
c)オスラットの一群に試験化合物を経口投与して、オスラット背面皮下細胞
内に形成した空気小袋内のチモサンによって誘導されるLTB4放出に対する試
験化合物の効果を検定することを含むインビボ検定法を用いる。ラットを麻酔し
て、無菌空気(20ml)を注射することによって空気小袋を形成し、同様にし
て空気(10ml)を3日後にさらに注射する。最初の空気注射後6日目に試験
化合物を投与して(通常は試験化合物のジメチルスルホキシド溶液をヒドロキシ
プロピルメチルセルロ−スに添加して得られる懸濁液を経口投与する)、チモサ
ンを小袋内に注射する(1%生理食塩水懸濁液1ml)。3時間後にラットを殺
して、空気小袋を生理食塩水を用いて洗浄し、上記の特定の放射線免疫検定を用
いて洗浄液中のLTB4を検定した。この試験は、炎症状態における5−リポキ
シゲナ−ゼ抑制効果を示すものである。
式Iの化合物の薬剤学的性質は予期される構造変化によって変わるものである
が、一般に式Iの化合物は1以上の上記試験a)−c)にて以下の濃度または投
与量で5−リポキシゲナ−ゼ抑制効果を示す。
試験a):IC50(LTB4)は例えば0.01−40μM
IC50(TxB2)は例えば40−200μM
試験b):経口ED50(LTB4)は例えば0.1−100mg/kg
試験c):経口ED50(LTB4)は例えば0.1−100mg/kg
式Iの化合物を最小抑制投与量または濃度で数回投与しても、試験b)および
/またはc)において明らかな毒性その他の悪影響はなかった。
例えば、(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキ
ソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル]
−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピランは、試験a)のLTB4に対す
るIC50が0.07μMであり、試験c)のLTB4に対するED50が約0.2
5mg/kgであった。
これらの化合物は、シクロオキシゲナ−ゼではなく5−リポキシゲナ−ゼの抑
制特性を選択的に示す本発明の化合物の例示である。この選択的特性は、インド
メタシンなどのシクロオキシゲナ−ゼ抑制剤に頻繁に伴う胃腸への副作用を緩和
したり無くしたりするなどするために、優れた治療特性を与えるものと期待され
る。
さらに別の本発明の特徴によれば、式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テト
ラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩を薬剤学的に許容さ
れる希釈剤または担体と組み合わせて含有する医薬組成物が提供される。
この医薬組成物は、経口用に例えば錠剤、カプセル剤、水溶液、油性溶液、懸
濁液、乳濁液にしたり;局所用に例えばクリ−ム、軟膏、ゲル、水溶液、油性溶
液、懸濁液にしたり;鼻用に例えば鼻用吸入剤、鼻用スプレ−、鼻用ドロップに
したり;膣用または直腸用に例えば座剤にしたり;吸入用に例えば乾燥粉末など
の微粉砕粉末、微小結晶、液体エ−ロゾルにしたり;舌下または口腔用に例えば
錠剤、カプセル剤にしたり;非経口用(動脈、静脈、筋肉内、皮膚、注入などを
含む)に例えば無菌水性または油性の水溶液または懸濁液などにしたりすること
ができる。
1以上の賦形剤と組み合わせて単一の投与形態にする際の活性成分の量(式I
の2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学
的に許容される塩)は、治療する検体や特定の投与経路によって変化させる必要
があろう。例えば、ヒトへ経口投与するときは、0.5−2gの活性成分と、製
剤全量の約5から約98重量%の適当で簡便な量の賦形剤を含有するのが一般的
である。各投与形態は一般に約1mgから約500mgの活性成分を含有するの
が一般的である。
本発明のさらに別の特徴によれば、ヒトまたは動物の体を治療する方法に使用
するための、式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体
またはその薬剤学的に許容される塩が提供される。
本発明はさらに、1以上のロイコトリエンが単独または部分的に介在する疾患
または状態を治療する方法をも含む。この方法は、この治療が必要な温血動物に
効果量の上記定義の活性成分を投与することを含む。本発明は、このような活性
成分を、ロイコトリエンが介在する疾患または状態に用いる新しい薬剤の製造に
使用することをも示す。
治療または予防のための式Iの化合物の投与量は、周知の薬剤原理にしたがっ
て、動物や患者の性状、状態の重さ、年齢、性別や、投与経路によって変えるの
が自然である。上記のとおり、式Iの化合物は、線状経路(5−リポキシゲナ−
ゼ触媒)ととくに生成に5−ロイコトリエンが介在するロイコトリエンによって
生じるアラキドン酸代謝効果単独または部分的に起因するアレルギ−および炎症
状態、骨代謝障害の治療に有用である。上記のとおり、喘息状態、アレルギ−反
応、アレルギ−性鼻炎、アレルギ−性ショック、乾癖,アトピ−性皮膚炎,心臓
血管または脳血管障害、関節炎および炎症性関節障害、炎症性腸疾患、結膜炎、
ショックまたは外傷性症状および骨代謝のさまざまな障害などの治療に有用であ
る。
治療または予防のために式Iの化合物を分割服用させるときは、1日あたり0
.5−0.75mg/kg体重となるように投与するのが一般的であろう。一般
に、非経口投与するときは投与量を少なめにするであろう。静脈投与するときは
例えば0.5−30mg/kg体重にし、吸入の場合は例えば0.5−25mg
/kg体重にするであろう。
式Iの化合物は、ヒトを含む温血動物の治療剤として主たる価値があるが、酵
素である5−リポキシゲナ−ゼ抑制が必要とされる場合にも常に有用である。し
たがって、式Iの化合物は、新しい生物学的試験を発展させたり新しい薬剤学的
試薬の研究に使用する薬剤学的標準として有用である。
ロイコトリエン生成への作用により、式Iの化合物はある種の細胞保護効果を
示す。例えば、式Iの化合物は、インドメタシン、アセチルサリチル酸、イブプ
ロフェン、サリンダック、トルメチンおよびピロキシカムなどのシクロオキシゲ
ナ−ゼ抑制非ステロイド系抗炎症剤(NSAIA)が胃腸に及ぼすある種の副作
用を減じたり抑制したりするのに有用である。さらに、式Iの5−リポキシゲナ
−ゼ抑制剤とNSAIAを並行投与することによって、治療効果発現に必要なN
SAIA量を減らし、それによって予測される副作用を減ずることができる。本
発明のさらに別の特徴によると、上記定義の式Iの2−オキソ−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩を、上記例の
ようなシクロオキシゲナ−ゼ抑制非ステロイド抗炎症剤と共奏または混合して、
薬剤学的に許容される希釈剤または担体とともに含有する医薬組成物が提供され
る。
式Iの化合物の細胞保護効果は、例えばラットの胃腸管におけるインドメタシ
ン誘導またはエタノ−ル誘導の抗潰瘍化検定をする標準的実験モデルで説明する
ことができる。
本発明の医薬組成物は、疾患治療に有用であるものとして知られている1以上
の治療または予防剤をさらに含んでもよい。例えば、既知の血小板凝集抑制剤、
抗脂肪欠乏血症剤、抗高血圧剤、β−アドレナリン産生遮断剤または血管拡張剤
を、心臓または血管障害または状態の治療用の本発明の医薬組成物に共存させる
と有用である。同様に、抗ヒスタミン剤、ステロイド(ジプロピオン酸ベクロメ
タゾンなど)、クロモリンナトリウム、ホスホジエステラーゼ抑制剤またはβ−
アドレナリン産生刺激剤を、肺疾患または状態の治療用の本発明の医薬組成物に
共存させると有用である。
以下に非制限的な実施例を記載して本発明を説明する。これらの実施例におい
ては、他に断りのない限り以下の条件に従う。
(i)蒸留は減圧下で回転式蒸溜器を用いて行った。後処理はろ過して残留固体
を除去した後に行った。
(ii)操作はアルゴンなどの不活性気体下にて室温(すなわち18−25℃)で
行った。
(iii)フラッシュカラムクロマトグラフィ−と中圧液体クロマトグラフィ−(
MPLC)は、ドイツのダ−ムシュタットのE.メルクから入手したメルクキ−
ゼルゲル(Kieselgel)シリカ(Art.9385またはメルクリクロ
プレプ(Lichroprep)RB−18(Art.9303)逆相シリカに
より行った。
(iv)収率は説明のためにだけ記載したものであり、達成可能な最大収率を必ず
しも示したものはない。
(v)式Iの最終生成物の微量分析結果は満足のゆくものであり、構造は核磁器
共鳴(NMR)と質量分析法によって確認した。他に断りのない限り、式Iの最
終生成物のCDCl3溶液を用いてNMRスペクトルデ−タを取得した。化学シ
フト値はデルタ値で示し、以下の略号を用いた。
s=シングレット d=ダブレット t=トリプレット
q=カルテット m=マルチプレット
(vi)一般に中間体は十分に分析していない。薄層クロマトフラフィ−、赤外線
吸収(IR)、NMR分析によって、純度を評価した。
(vii)融点は補正していない。メトラ−(Mettler)SP62自動融点
測定機または湯浴装置を用いて測定した。式Iの最終生成物の融点は、エタノ−
ル、メタノ−ル、アセトン、エ−テルまたはヘキサンなどの通常の有
機溶媒を単独または混合して用いて再結晶した後に行った。
(viii)以下の略号を用いた。
NMP=N−メチルピロリジン−2−オン
DMP=N,N−ジメチルホルムアミド
THF=テトラヒドロフラン実施例1
6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−
オン(0.386g)、4−(3,5−ジフルオロフェニル)−4−メトキシテ
トラヒドロピラン(欧州特許出願第0462813号の実施例5、0.547g
)およびNMP6mlを0℃に撹拌冷却した混合物に、n−ブチルリチウム(ヘ
キサン中1.4M、1.5ml)を滴下した。混合物を0℃で5分間撹拌して、
ヘキサンを留去しつつ145℃で2,2時間加熱した。混合物を周囲温度に冷却
して、酢酸エチルと水の間で分配した。有機相を水、0.5N水酸化ナトリウム
溶液、生理食塩水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留した。得られた
残渣をカラムクロマトグラフィ−によって、塩化メチレンとジエチルエ−テルの
混合物の極性を上げながら溶出して、油状物を得た。これをジエチルエ−テル中
でトリチュレ−トして、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メト
キシテトラヒドロピラン(0.404g,50%)を得た。融点124−125
℃;NMRスペクトル
:1.8−2.1(m,4H),2.55−3.0(m,4H
),2.99(s,3H),3.38(s,3H),3.7−4.0(m,4H
),6.7−7.15(m,4H),7.2−7.5(m,2H)
出発物質である6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ
キノリン−2−オンは、以下の方法によって合成した。
ジ−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6
−イル)ジスルフィド(欧州特許出願第0462812号の実施例7、38.4
g)、トリフェニルホスフィン(29g)および1,4−ジオキサン(300m
l)の混合物に、塩酸(5滴)および水(50ml)の混合物を添加した。この
混合物を周囲温度で30分間撹拌して、蒸留して濃縮することによって体積を約
半分にした。残渣を酢酸エチルと0.5N水酸化ナトリウム溶液の間で分配して
、水相をジエチルエ−テルで洗浄して、希塩酸を添加してpHを2にした。この
酸性混合物を酢酸エチルで抽出して、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留
した。残留油状物をジエチルエ−テル中に溶解して、ヘキサンを添加することに
よって、固体状の6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ
キノリン−2−オン(35.5g、92%)を得た。この生成物はさらに精製す
ることなく使用した。実施例2
6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−
オン(0.247g)、(2S,4R)−4−(3,5−ジフルオロフェニル)
−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピラン(欧州特許出願第046281
3号の実施例10、0.31g)、リチウムヒドロキシドモノヒドレ−ト(0.
056g)、ジ−(2−メトキシエチル)エ−テル(1ml)およびNMP(4
ml)を撹拌して、140℃で2時間加熱した。この混合物を周囲温度に冷却し
て、酢酸エチルと水の間で分配した。有機相を水、1N塩酸、生理食塩水で洗浄
して、硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィ−
によって、塩化メチレンとジエチルエ−テルの混合物の極性を上げながら溶出し
て油状物を得た。これをジエチルエ−テル中でトリチュレ−トして、(2S,4
R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−
テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ−2−メチル
テトラヒドロピラン(0.135g、25%)を得た。融点137−139℃;NMRスペクトル
:1.18(d,3H),1.4−2.2(m,4H),2.
50−2.96(m,4H),2.98(s,3H),3.37(s,3H),
3.65−4.15(m,3H),6.65−7.50(m,6H)実施例3
6−ヨ−ド−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−オン
(0.29g)、(2S,4R)−4−(3−メルカプトフェニル)−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン(欧州特許出願第0420511号の実施
例6、0.26g)塩化第一銅(0.02g)、炭酸カリウム(0.15g)お
よびDMF(3ml)の混合物を撹拌して、120℃で75分間加熱した。この
混合物を周囲温度に冷却して、塩化メチレンと水の間で分配した。有機相を水で
洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフ
ィ−によって、ヘキサンと酢酸エチルの混合物の極性を上げながら溶出して、(
2S,4R)−4−メトキシ−4−[3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−2−メチルテトラ
ヒドロピラン(0.25g、63%)を得た。融点112−115℃;NMRスペクトル
:1.2(d,3H),1.55(m,1H),1.9(m,
3H),2.65(m,2H),2.85(m,2H),3.2(s,3H),
3.4(s,3H),3.9(m,3H),6.95(d,1H),7.1−7
.4(m,6H)
出発物質たる6−ヨ−ド−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリ
ン−2−オンは以下の方法によって合成した。
1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−2−オン(欧州特許出
願第0420511号の実施例1、8g)、10%パラジウム/炭素触媒(2g
)およびエタノ−ル(60ml)の混合物を3.5気圧の水素圧下で24時間撹
拌した。混合物をろ過して蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィ−によって
、塩化メチレンとジエチルエ−テルの混合物(9:1)で溶出して、油状の1−
メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−オン(7.
88g、98%)を得た。
この生成物の一部(1.2g)、一塩化ヨウ素(1.9g)および氷酢酸(2
5ml)の混合物を2時間80℃に加熱撹拌した。この混合物を周囲温度に冷却
して、希チオ硫酸ナトリウム中に注いだ。炭酸水素ナトリウムを添加して中和し
、酢酸エチルで抽出した。有機相を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、生理食
塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留した。残渣をヘキサンと酢酸エ
チルの混合物を用いて再結晶して、6−ヨ−ド−1−メチル−1,2,3,4−
テトラヒドロキノリン−2−オン(1.09g、51%)を得た。NMRスペクトル
(CD3SOCD3):2.65(t,2H),2.85(t,
2H),3.2(s,3H),6.9(d,1H),7.6(m,2H)実施例4
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,
2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ
−2−メチルテトラヒドロピラン(2g)、エタノ−ル(20ml)および水(
10ml)の混合物へ、ペルオキシモノ硫酸カリウム(4.4g)を添加した。
この混合物を周囲温度で18時間撹拌して、塩化メチレンと水の間で分配した。
有機相を亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥して
蒸留した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィ−によって、ヘキサンと酢酸
エチルの極性を上げながら溶出して固体を得た。これをヘキサンと酢酸エチルの
混合物を用いて結晶することによって、(2S,4R)−4−[5−フルオロ−
3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−
イルスルホニル)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピラン(
1.3g、60%)を得た。融点110−112℃;NMRスペクトル
:1.2(d,3H),1.55(m,1H),1.9(m,
2H),2.7(m,2H),3.0(m,5H),3.4(s,3H),3.
9(m,3H),7.1(d,1H),7.3(m,1H),7.5(m,1H
),7.75(m,2H),7.85(q,1H)実施例5
実施例4に記載される方法と同様の方法を用いて、(2S,4R)−4−メト
キシ−4−[3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン−6−イルチオ)フェニル]−2−メチルテトラヒドロピランを酸化して
、(2S,4R)−4−メトキシ−4−[3−(1−メチル−2−オキソ−1,
2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル]−2−メ
チルテトラヒドロピランを収率57%で得た。融点144−147℃;NMRスペクトル
:1.22(d,3H),1.6(m,1H),2.0(m,
3H),2.7(t,2H),3.0(t,2H),3.0(s,3H),3.
4(s,3H),3.9(m,3H),7.05(d,1H),7.6(m,2
H),7.7(m,1H),7.85(m,2H),8.0(s,1H)実施例6
実施例4に記載される方法と同様の方法を用いて、4−[5−フルオロ−3−
(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イル
チオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランを酸化して、4−[5−フ
ルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリ
ン−6−イルスルホニル)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランを収率
80%で得た。融点140−142℃;NMRスペクトル
:2.0(m,4H),2.7(m,2H),3.0(m,5
H),3.35(s,3H),3.8(m,4H),7.1(d,1H),7.
55(m,1H),7.75(m,2H),7.85(m,1H)実施例7
6−メルカプト−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−
オン(0.38g)、4−メトキシ−4−(2,3,5−トリフルオロフェニル
)テトラヒドロピラン(0.5g)、リチウムヒドロキシモノヒドレ−ト(0.
085g)およびNMP(5ml)の混合物を90℃で2時間加熱撹拌した。こ
の混合物を周囲温度に冷却して、ジエチルエ−テルと水の間で分配した。有機相
を生理食塩水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留した。残渣を酢酸エ
チルとヘキサンの混合物を用いて粉砕して、4−[2,5−ジフルオロ−3−(
1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチ
オ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピラン(0.31g、37%)を得
た。融点142−144℃;NMRスペクトル
:2.1(m,4H),2.7(t,2H),2.9(t,2
H),3.1(s,3H),3.4(s,3H),3.8(m,4H),6.5
(m,1H),6.8(m,1H),7.0(d,1H),7.3(d,1H)
,7.4(q,1H)
出発物質である4−メトキシ−4−(2,3,5−トリフルオロフェニル)テ
トラヒドロピランは、以下の方法によって合成した。
マグネシウム(0.075g)とTHF(3ml)の混合物を撹拌して、これ
に1−ブロモ−2,3,5−トリフルオロベンゼン(0.15ml)と1,2−
ジブロモエタン(0.03ml)を順に添加した。混合物を暖めてグリニヤ試薬
の調製を始めた。1−ブロモ−2,3,5−トリフルオロベンゼン(0.15m
l)を再度添加して、混合物を周囲温度で30分間撹拌した。テトラヒドロピラ
ン−4−オン(0.2ml)のTHF(1ml)溶液を添加して、混合物を周囲
温度で30分間撹拌した。混合物をジエチルエ−テルと飽和塩化アンモニウム水
溶液の間で分配して、有機溶液を水と生理食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウム
で乾燥し蒸留して残渣を得た。これをカラムクロマトグラフィ−によって、ヘキ
サンと酢酸エチルの混合溶媒の極性を上げながら溶出して、ガム状の4−ヒドロ
キシ−4−(2,3,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロピラン(0.2
5g)を得た。NMRスペクトル
:1.7(m,2H),2.1(d,1H),2.4(m,2
H),3.9(m,4H),6.9(m,1H),7.1(m,1H)
上記工程を適当に繰り返した後、4−ヒドロキシ−4−(2,3,5−トリフ
ルオロフェニル)テトラヒドロピラン(1.8g)、ヨウ化メチル(4.4g)
およびNMP(15ml)の混合物を撹拌し、これに水素化ナトリウム(60%
の鉱油中分散液、0.4g)を滴下した。混合物を周囲温度で1時間撹拌して、
蒸留して得た残渣をジエチルエ−テルと水の間で分配した。有機相を生理食塩水
で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥して蒸留することによって、4−メトキシ
−4−(2,3,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロピランを定量的に得
た。この生成物はさらに精製することなく使用した。実施例8
実施例7に記載される方法と同様の方法を用いて、6−メルカプト−1−メチ
ル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−オンを(2S,4R)−4−
メトキシ−2−メチル−4−(2,3,5−トリフルオロフェニル)テトラヒド
ロピランと反応させて、(2S,4R)−4−[2,5−ジフルオロ−3−(1
−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ
)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピランを収率15%で得
た。融点119−121℃;NMRスペクトル
:1.2(d,3H),1.7(q,1H),2.1(m,3
H),2.7(t,2H),2.9(t,2H),3.1(s,3H),3.4
(s,3H),3.9(m,3H),6.5(m,1H),6.9(m,1H)
,7.0(d,1H),7.3(d,1H),7.4(q,1H)
出発物質として用いた(2S,4R)−4−メトキシ−2−メチル−4−(2
,3,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロピランは、出発物質の合成に関
する実施例7に記載される方法と同様の方法を用いて合成した。ただし、テトラ
ヒドロピラン−4−オンの代わりに(2S)−2−メチルテトラヒドロピラン−
4−オン(欧州特許出願第0385662号の実施例20)を用いた。実施例9
実施例4に記載される方法と同様の方法を用いて、(2S,4R)−4−[2
,5−ジフルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒ
ドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒ
ドロピランを酸化して、(2S,4R)−4−[2,5−ジフルオロ−3−(1
−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスル
ホニル)フェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピランを収率20
%で得た。融点141−143℃;NMRスペクトル
:1.2(d,3H),1.6−2.2(m,4H),2.7
(q,2H),3.0(q,2H),3.05(s,3H),3.4(s,3H
),3.9(m,3H),7.1(d,1H),7.35(m,1H),7.8
(m,2H),7.9(m,1H)実施例10
実施例7に記載される方法と同様の方法を用いて、6−メルカプト−1−メチ
ル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−オンを4−(3,4−ジフル
オロフェニル)−4−メトキシテトラヒドロピランと反応させることによって、
2つの生成物の混合物を得た。この混合物をカラムクロマトグラフィ−によって
、ヘキサンと酢酸エチルの混合物の極性を上げながら溶出して以下の2つの化合
物を得た。
4−[4−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラ
ヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピラン
(収率16%)NMRスペクトル
:2.0(m,4H),2.65(q,2H),2.9(q,
2H),2.95(s,3H),3.35(s,3H),3.8(m,4H),
6.9(d,1H),7.1(t,1H),7.3(m,3H)
4−[3−フルオロ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラ
ヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピラン
(収率13%)NMRスペクトル
:2.0(m,4H),2.7(q,2H),2.9(q,2
H),3.0(s,3H),3.35(s,3H),3.8(m,4H),6.
95(d,1H),7.1(m,3H),7.25(s,1H),7.35(q
,1H)
出発物質として用いた4−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシテ
トラヒドロピランは、出発物質の合成に関する実施例7の部分に記載した方法と
同様の方法によって合成した。ただし、1−ブロモ−2,3,5−テトラフルオ
ロベンゼンの代わりに1−ブロモ−3,4−ジフルオロベンゼンを用いた。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年5月10日
【補正内容】
(差替用紙3頁〜17頁の和訳文)
(翻訳文2頁24行〜17頁5行に対応)
4−[3−(1,2−ジヒドロ−1−エチル−2−オキソキノリン−6−イルチ
オ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピラン(欧州特許出願第04205
11号の実施例2)はガム状物として得られ、(2RS,4SR)−4−[3−
(1,2−ジヒドロ−1−メチル−2−オキソキノリン−6−イルチオ)−5−
フルオロフェニル]−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピラン(欧州特許
出願第0420511号の実施例5)は油状物として得られる。
本発明によれば、式I:
で表される2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル誘導体および
その薬剤学的に許容される塩が提供される。式Iにおいて、
Qは1位の窒素原子上にC1-4アルキルを有する2−オキソ−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1はチオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、
Arは1または2のハロゲンを有していてもよい1,3−フェニレンであり、
R1はC1-4アルキル、C3-4アルケニルまたはC3-4アルキニルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
1または2のC1-4アルキルを有していてもよい5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2およびA3は同一または異なっていてもよく各々C1-3アルキレン
であり、X2はオキシである。ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル
−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニ
ル]−4−メトキシテトラヒドロピランは含まれない。
本明細書において、「アルキル」には、直鎖および分枝アルキルがともに含ま
れる。しかしながら、「プロピル」のように特定のアルキルが指定されている場
合は直鎖のもののみを意味し、「イソプロピル」のように分枝アルキルが指定さ
れている場合は分枝のもののみを意味する。以上は、他の包括的な用語について
も同様に適用する。
さらに、上記定義の式Iの化合物の中には、不斉炭素が存在するために光学活
性体またはラセミ体として存在しうるものがあるが、本発明の定義には5−リポ
キシゲナ−ゼ抑制作用を有するすべての光学活性体やラセミ体が含まれるものと
理解すべきである。光学活性体は、本分野で周知の有機化学の標準的方法によっ
て合成することができる。例えば、光学活性な出発物質から合成したり、ラセミ
体の分割により合成したりすることができる。
上記の包括的な用語の適当な例は以下に示すとおりである。
Qに存在するC1-4アルキルとして適当なものとして、メチル、エチル、プロ
ピルを例示することができる。
Arに存在するハロゲンとして適当なものとして、フッ素を例示することがで
きる。
R1がC1-4アルキルであるときの適当なものとして、メチル、エチル、プロピ
ルを例示することができる。R1がC3-4アルケニルであるときの適当なものとし
て、アリルを例示することができる。R1がC3-4アルキニルであるときの適当な
ものとして、2−プロピニルを例示することができる。
R2およびR3が一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成するとき、同一または異なっていてもよいA2およびA3がとりうる適当な
C1-3アルキレンとして、メチレン、エチレン、トリメチレンを例示することが
できる。この5または6員環に存在しうるC1-4アルキルの適当なものとして、
メチルおよびエチルを例示することができる。
本発明の化合物の薬剤学的に許容される塩として適当なものとして、本発明の
化合物の酸付加塩であって十分な塩基性を示すものなどを例示することができる
。
例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレ
イン酸といった無機酸または有機酸などの酸付加塩を挙げることができる。さら
に、本発明の化合物の薬剤学的に許容される塩であって十分な酸性を示すものと
して、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩)、アルカリ土類金属
塩(例えばカルシウム塩やマグネシウム塩)、アンモニウム塩や生理学的に許容
されるカチオンを与える有機塩基との塩(例えばメチルアミン、ジメチルアミン
、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリン、トリス(2−ヒドロキシエチル
)アミンと形成する塩)を例示することができる。
本発明の化合物として、式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩であって、Q,X1、Ar、R1
、R2およびR3が本発明の特定の化合物について本節の前後に記載される基であ
るものを例示することができる。ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチ
ル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェ
ニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは含まれない。
(a)Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−
6−イルであり、
(b)X1がチオまたはスルホニルであり、
(c)Arが1,3−フェニレンまたは5−フルオロ−1,3−フェニレンであ
り、
(d)Arが2,5−ジフルオロ−1,3−フェニレンであり、
(e)R1がメチルであり、または、
(f)R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とと
もにX2のα位にメチルを有していてもよい5または6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2はメチレンまたはエチレンであり、A3はエチレンであり、
X2はオキシである。
本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,
4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレンまたは5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
X2のα位にメチルを有していてもよい6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2およびA3は各々エチレンであり、X2はオキシである、式Iの2
−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に
許容される塩を例示することができる。ただし、4−[5−フルオロ−3−(1
−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ
)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは含まれない。
別の本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレン、5−フルオロ−1,3−フェニレンまたは2,5
−ジフルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
X2のα位にメチルを有していてもよい6員環になる式:
−A2−X2−A3−
を形成し、A2およびA3は各々エチレンであり、X2はオキシである、式Iの2
−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に
許容される塩を例示することができる。ただし、4−[5−フルオロ−3−(1
−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ
)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは含まれない。
別の本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、−CH2CH2OCH(CH3)CH2−である、
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩を例示することができる。
別の本発明の好ましい化合物として、Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,
3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが5−フルオロ−1,3−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,3
−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、−CH2CH2OCH(CH3)CH2−である、
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩を例示することができる。
本発明の好ましい具体的化合物は、以下の式Iの化合物である。
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2
,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシ−
2−メチルテトラヒドロピラン
本発明の特に好ましい具体的化合物は、以下の式Iの化合物である。
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2
,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン
本発明の特に好ましい具体的化合物は、以下の式Iの化合物である。
(2S,4R)−4−[2,5−ジフルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン
本発明のさらに他の側面において、我々は本発明のある種の化合物が結晶であ
ることを発見した。後述する実施例1−9に開示されるような化合物がこの事実
を実証している。結晶状態で得られるならば、大量製造するときに精製、分析、
取扱いが容易であるため、これらの化合物はとくに価値がある。例えば、非結晶
の油状物から残留溶媒を除去するのが問題になることが知られているが、結晶含
有医薬組成物は、通常の方法にしたがって調製することができる。例えば、錠剤
やカプセル剤のように経口投与に適した形態にしたり、微粉砕粉末や微小結晶と
して吸入に適した形態にすることができる。しかし、油状物として得られるなら
ば、このように形態を選択することはできなくなる。
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体およびその
薬剤学的に許容される塩(ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2
−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]
−4−メトキシテトラヒドロピランは除く)を包含する本発明の化合物は、構造
的が類似する化合物の合成に適した既知の方法によって製造することができる。
この製造方法は、本発明のさらに別の特徴として提供されるものであり、以下に
記載する代表例によって説明する。他に断りのない限り、Q,X1、Ar、R1、
R2およびR3は上記定義のとおりである。
(a)式:Q−X1−Hの化合物を、式II:
(上式において、Zは置換可能な基である)の化合物とカップリングさせる。こ
の工程は、適当な塩基の存在下で行うのが簡便である。
置換可能な基Zの適当な例として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスル
ホニルオキシやトルエン−4−スルホニルオキシなどのハロゲンまたはスルホニ
ルオキシを例示することができる。
カップリング反応の適当な塩基として、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの
アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、ナトリウムエトキシドやカリウム
ブトキシドなどのC1-4アルコキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムや水
酸化カリウムなどの水酸化物、水素化ナトリウムや水素化カリウムなどの水素化
物を例示することができる。また、n−ブチルリチウムといったC1-4アルキル
リチウムなどの有機金属塩基も例示することができる。カップリング反応は適当
な不活性溶媒または希釈剤中で行うのが簡便である。例えば、N,N−ジメチル
ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン−2−オ
ン、ジメチルスルホキシド、アセトン、1,2−ジメトキシエタンやテトラヒド
ロフランを例示することができる。カップリング反応は、例えば10−150℃
で行うことができ、100℃またはその近傍で行うと簡便である。
反応は、適当な触媒の存在下で行うのが簡便である。例えば、テトラキス(ト
リフェニルホスフィン)パラジウム、塩化第一銅、臭化第一銅といったパラジウ
ム(0)または銅(I)などの金属触媒を用いることができる。
出発物質である式Q−X1−Hの化合物と式IIの化合物は、有機化学の標準
的な方法によって得ることができる。これらの出発物質の調製は、後述する非制
限的な実施例に記載されている。あるいは、必要とされる出発物質は、有機化学
の通常技術の範囲内にある方法に類する方法によって得ることができる。欧州特
許出願第0420511号には、適当な出発物質の製造に大いに関係する記載が
ある。
(b)式:Q−Z(ここにおいて、Zは上記定義の置換可能な基である)と、式
III:
の化合物とをカップリングさせる。この工程は、上記定義の適当な塩基の存在下
で行うのが簡便である。
カップリング反応は、上記定義の適当な不活性溶媒中で行うのが簡便である。
反応温度は、例えば10−150℃で行い、100℃またはその近傍で行うと簡
便である。反応は、上記定義の適当な触媒の存在下で行うのが簡便である。
出発物質である式Q−Zの化合物と式IIIの化合物は、有機化学の標準的な
方法によって得ることができる。これらの出発物質の調製は、後述する非制限的
な実施例に記載されている。あるいは、必要とされる出発物質は、有機化学の通
常技術の範囲内にある方法に類する方法によって得ることができる。欧州特許出
願第0420511号には、適当な出発物質の製造に大いに関係する記載がある
。
(c)式:Q−X1−Z(ここにおいて、Zが上記定義の置換可能な基であるか
、X1がチオであるときはZは式Q−X1−でありうる)の化合物と、式IV:
(上式において、Mはリチウムのようなアルカリ金属またはカルシウムのような
アルカリ土類金属であるか、Mは通常のグリニヤ試薬のハロゲン化マグネシウム
部分である)の有機金属試薬をカップリングさせる。
カップリング反応は、上記定義の適当な不活性溶媒中で行うのが簡便である。
反応温度は、例えば−80℃から50℃で行い、−80℃から周囲温度で行うと
簡便である。
出発物質である式Q−X1−Zの化合物と式IVの化合物は、有機化学の標準
的な方法によって得ることができる。これらの出発物質の調製は、後述する非制
限的な実施例に記載されている。あるいは、必要とされる出発物質は、有機化学
の通常技術の範囲内にある方法に類する方法によって得ることができる。上記の
欧州特許出願には、適当な出発物質の製造に大いに関係する記載がある。
(d)式V:
の化合物と、式:R1−Z(ここにおいて、Zは上記定義の置換可能な基である
)の化合物を用いてアルキル化する。この反応は上記定義の適当な塩基の存在下
で行うのが簡便である。
このアルキル化反応は、上記定義の適当な不活性溶媒または希釈剤中で行うの
が簡便である。反応温度は、例えば−20℃から70℃で行い、周囲温度または
その近傍で行うと簡便である。
出発物質である式Vの化合物は、有機化学の標準的な方法によって得ることが
できる。あるいは、必要とされる出発物質は、上記の欧州特許出願に記載される
方法に類する方法によって得ることができる。
(e)Qにある窒素がアルキルを有する式Iの化合物を製造するときは、その窒
素に水素が結合している式Iの化合物をアルキル化する。
適当なアルキル化剤として、上記定義の適当な塩基の存在下で用いる、塩化、
臭化またはヨウ化C1-4アルキルといったハロゲン化アルキルなどの、窒素原子
のアルキル化技術分野で知られている試薬を例示することができる。アルキル化
剤は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチ
ルスルホキシド、アセトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランな
どの適当な不活性溶媒または希釈剤中で行うのが好ましい。反応温度は、例えば
10−150℃で行うのが好ましく、周囲温度またはその近傍で行うと簡便であ
る。
(f)X1がスルフィニルまたはスルホニルである式Iの化合物を製造するとき
は、X1がチオである式Iの化合物を酸化する。
適当な酸化剤として、チオを酸化してスルフィニルおよび/またはスルホニル
にする技術分野において知られている試薬を例示することができる。例えば、過
酸化水素、過酸(例えば3−クロロペルオキシ安息香酸、ペルオキシ酢酸)、ア
ルカリ金属ペルオキシ硫酸塩(例えばペルオキシモノ硫酸カリウム)、三酸化ク
ロムまたは白金存在下の気体酸素を挙げることができる。酸化は、過剰な酸化と
他の官能基の損傷の危険を減ずるために、必要とされる理論量の酸化剤を用いて
、できるだけ穏やかな条件下で行うのが一般的である。概して、反応は適当な溶
媒または希釈剤中で行う。例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、テ
ト
ラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエ−テルを例示することができる。反
応は、例えば周囲温度またはその近傍(15−35℃)で行うのが一般的である
。スルフィニル基を有する化合物が必要とされるときは、メタ過ヨウ素酸ナトリ
ウムまたはカリウムなどのより穏やかな酸化剤も使用することができ、酢酸やエ
タノ−ルのような極性溶媒中で行うのが簡便である。スルホニル基を有する式I
の化合物が必要とされるときは、対応するチオ化合物や対応するスルフィニル化
合物を酸化することによって得ることができる。
式Iの新規化合物の薬剤学的に許容される塩が必要とされるときは、通常法を
用いて式Iの新規化合物を適当な酸または塩基と反応させることによって得るこ
とができる。式Iの化合物の光学活性体が必要とされるときは、光学活性な出発
物質を用いて前述の工程を実施するか、あるいは、通常法によって式Iの化合物
のラセミ体を分割することによって得ることができる。
上述のように、式Iの化合物は酵素である5−リポキシゲナ−ゼの抑制活性を
有する。抑制活性は、以下に記載する1以上の標準法を用いて説明することがで
きる。
a)カルシウムイオノフォアA23187をチャレンジする前に、ヘパリン化
したヒト血液とともに試験化合物をインキュベ−トし、カ−リ−(F.Care
y)とフォ−ダ−(R.A.Forder),Prostaglandins,
Leukotriens Med.,1986年22巻57頁、Prostag
landins,1984年28巻666頁、Brit.J.Pharmaco
l.1985年84巻34頁に記載される特定の放射線免疫検定法を用いてLT
B4量を測定することによって5−リポキシゲナ−ゼ抑制効果を間接的に検定す
ることを含むインビトロ検定法を用いる。放射線免疫検定法には、ヤング(Yo
ung)らのProstaglandins,1983年26巻4号605−6
13頁の方法を用いて調製したタンパク質−LTB4複合体を使用する。酵素で
あるシクロオキシゲナ−ゼに対する試験化合物の効果も、上記のカ−リ−とフォ
−ダ−が記載するトロンボキサンB2(TxB2)の特定の放射線免疫検定法を用
いて同時に検定することができる。シクロオキシゲナ−ゼは、アラキドン酸の代
替的代謝経路に関与し、プロスタグランジン、トロンボキサンや関連する代謝生
成物を生成する。この試験は、血液細胞とタンパク質の存在下における5−リポ
キシゲナ−ゼとシクロオキシゲナ−ゼに対する試験化合物の効果を示すものであ
る。この試験よって、5−リポキシゲナ−ゼまたはシクロオキシゲナ−ゼに対す
る抑制活性の選択性を評価することができる。
b)試験化合物をラットの一群に投与し(通常は試験化合物のジメチルスルホ
キシド溶液をカルボキシメチルセルロ−スに添加して得られる乳濁液を経口投与
する)、血液採取し、ヘパリン化し、A23187をチャレンジして、LTB4
とTxB2の放射線免疫検定をすることを含む、上記試験a)に類する半ビボ検
定法を用いる。この試験は、5−リポキシゲナ−ゼまたはシクロオキシゲナ−ゼ
に対する抑制剤としての試験化合物の生物学的利用可能性を示すものである。
c)オスラットの一群に試験化合物を経口投与して、オスラット背面皮下細胞
内に形成した空気小袋内のチモサンによって誘導されるLTB4放出に対する試
験化合物の効果を検定することを含むインビボ検定法を用いる。ラットを麻酔し
て、無菌空気(20ml)を注射することによって空気小袋を形成し、同様にし
て空気(10ml)を3日後にさらに注射する。最初の空気注射後6日目に試験
化合物を投与して(通常は試験化合物のジメチルスルホキシド溶液をヒドロキシ
プロピルメチルセルロ−スに添加して得られる懸濁液を経口投与する)、チモサ
ンを小袋内に注射する(1%生理食塩水懸濁液1ml)。3時間後にラットを殺
して、空気小袋を生理食塩水を用いて洗浄し、上記の特定の放射線免疫検定を用
いて洗浄液中のLTB4を検定した。この試験は、炎症状態における5−リポキ
シゲナ−ゼ抑制効果を示すものである。
式Iの化合物の薬剤学的性質は予期される構造変化によって変わるものである
が、一般に式Iの化合物は1以上の上記試験a)−c)にて以下の濃度または投
与量で5−リポキシゲナ−ゼ抑制効果を示す。
試験a):IC50(LTB4)は例えば0.01−40μM
IC50(TxB2)は例えば40−200μM
試験b):経口ED50(LTB4)は例えば0.1−100mg/kg
試験c):経口ED50(LTB4)は例えば0.1−100mg/kg
式Iの化合物を最小抑制投与量または濃度で数回投与しても、試験b)および
/またはc)において明らかな毒性その他の悪影響はなかった。
例えば、(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキ
ソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル]
−4−メトキシ−2−メチルテトラヒドロピランは、試験a)のLTB4に対す
るIC50が0.07μMであり、試験c)のLTB4に対するED50が約0.2
5mg/kgであった。
これらの化合物は、シクロオキシゲナ−ゼではなく5−リポキシゲナ−ゼの抑
制特性を選択的に示す本発明の化合物の例示である。この選択的特性は、インド
メタシンなどのシクロオキシゲナ−ゼ抑制剤に頻繁に伴う胃腸への副作用を緩和
したり無くしたりするなどするために、優れた治療特性を与えるものと期待され
る。
さらに別の本発明の特徴によれば、式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テト
ラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩(ただし、4−[5
−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは除く)
を薬剤学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせて含有する医薬組成物が
提供される。
この医薬組成物は、経口用に例えば錠剤、カプセル剤、水溶液、油性溶液、懸
濁液、乳濁液にしたり;局所用に例えばクリ−ム、軟膏、ゲル、水溶液、油性溶
液、懸濁液にしたり;鼻用に例えば鼻用吸入剤、鼻用スプレ−、鼻用ドロップに
したり;膣用または直腸用に例えば座剤にしたり;吸入用に例えば乾燥粉末など
の微粉砕粉末、微小結晶、液体エ−ロゾルにしたり;舌下または口腔用に例えば
錠剤、カプセル剤にしたり;非経口用(動脈、静脈、筋肉内、皮膚、注入などを
含む)に例えば無菌水性または油性の水溶液または懸濁液などにしたりすること
ができる。
1以上の賦形剤と組み合わせて単一の投与形態にする際の活性成分の量(式I
の2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学
的に許容される塩)は、治療する検体や特定の投与経路によって変化させる必要
があろう。例えば、ヒトへ経口投与するときは、0.5−2gの活性成分と、製
剤全量の約5から約98重量%の適当で簡便な量の賦形剤を含有するのが一般的
である。各投与形態は一般に約1mgから約500mgの活性成分を含有するの
が一般的である。
本発明のさらに別の特徴によれば、ヒトまたは動物の体を治療する方法に使用
するための、式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体
(ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,
4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒ
ドロピランは除く)またはその薬剤学的に許容される塩が提供される。
本発明はさらに、1以上のロイコトリエンが単独または部分的に介在する疾患
または状態を治療する方法をも含む。この方法は、この治療が必要な温血動物に
効果量の上記定義の活性成分を投与することを含む。本発明は、このような活性
成分を、ロイコトリエンが介在する疾患または状態に用いる新しい薬剤の製造に
使用することをも示す。
治療または予防のための式Iの化合物の投与量は、周知の薬剤原理にしたがっ
て、動物や患者の性状、状態の重さ、年齢、性別や、投与経路によって変えるの
が自然である。上記のとおり、式Iの化合物は、線状経路(5−リポキシゲナ−
ゼ触媒)ととくに生成に5−ロイコトリエンが介在するロイコトリエンによって
生じるアラキドン酸代謝効果単独または部分的に起因するアレルギ−および炎症
状態、骨代謝障害の治療に有用である。上記のとおり、喘息状態、アレルギ−反
応、アレルギ−性鼻炎、アレルギ−性ショック、乾癬,アトピ−性皮膚炎,心臓
血管または脳血管障害、関節炎および炎症性関節障害、炎症性腸疾患、結膜炎、
ショックまたは外傷性症状および骨代謝のさまざまな障害などの治療に有用であ
る。
治療または予防のために式Iの化合物を分割服用させるときは、1日あたり0
.5−0.75mg/kg体重となるように投与するのが一般的であろう。一般
に、非経口投与するときは投与量を少なめにするであろう。静脈投与するときは
例えば0.5−30mg/kg体重にし、吸入の場合は例えば0.5−25mg
/kg体重にするであろう。
式Iの化合物は、ヒトを含む温血動物の治療剤として主たる価値があるが、酵
素である5−リポキシゲナ−ゼ抑制が必要とされる場合にも常に有用である。し
たがって、式Iの化合物は、新しい生物学的試験を発展させたり新しい薬剤学的
試薬の研究に使用する薬剤学的標準として有用である。
ロイコトリエン生成への作用により、式Iの化合物はある種の細胞保護効果を
示す。例えば、式Iの化合物は、インドメタシン、アセチルサリチル酸、イブプ
ロフェン、サリンダック、トルメチンおよびピロキシカムなどのシクロオキシゲ
ナ−ゼ抑制非ステロイド系抗炎症剤(NSAIA)が胃腸に及ぼすある種の副作
用を減じたり抑制したりするのに有用である。さらに、式Iの5−リポキシゲナ
−ゼ抑制剤とNSAIAを並行投与することによって、治療効果発現に必要なN
SAIA量を減らし、それによって予測される副作用を減ずることができる。本
発明のさらに別の特徴によると、上記定義の式Iの2−オキソ−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン誘導体(ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチ
ル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェ
ニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは除く)またはその薬剤学的に許容さ
れる塩を、上記例のようなシクロオキシゲナ−ゼ抑制非ステロイド抗炎症剤と共
奏または混合して、薬剤学的に許容される希釈剤または担体とともに含有する医
薬組成物が提供される。
式Iの化合物の細胞保護効果は、例えばラットの胃腸管におけるインドメタシ
ン誘導またはエタノ−ル誘導の抗潰瘍化検定をする標準的実験モデルで説明する
ことができる。
本発明の医薬組成物は、疾患治療に有用であるものとして知られている1以上
の治療または予防剤をさらに含んでもよい。例えば、既知の血小板凝集抑制剤、
抗脂肪欠乏血症剤、抗高血圧剤、β−アドレナリン産生遮断剤または血管拡張剤
を、心臓または血管障害または状態の治療用の本発明の医薬組成物に共存させる
と有用である。同様に、抗ヒスタミン剤、ステロイド(ジプロピオン酸ベクロメ
タゾンなど)、クロモリンナトリウム、ホスホジエステラーゼ抑制剤またはβ−
アドレナリン産生剌激剤を、肺疾患または状態の治療用の本発明の医薬組成物に
共存させると有用である。
以下に非制限的な実施例を記載して本発明を説明する。これらの実施例におい
ては、他に断りのない限り以下の条件に従う。
(i)蒸留は減圧下で回転式蒸溜器を用いて行った。後処理はろ過して残留固体
を除去した後に行った。
(ii)操作はアルゴンなどの不活性気体下にて室温(すなわち18−25℃)で
行った。
(iii)フラッシュカラムクロマトグラフィ−と中圧液体クロマトグラフィ−(
MPLC)は、ドイツのダ−ムシュタットのE.メルクから入手したメルクキ−
ゼルゲル(Kieselgel)シリカ(Art.9385またはメルクリクロ
プレプ(Lichroprep)RB−18(Art.9303)逆相シリカに
より行った。
(iv)収率は説明のためにだけ記載したものであり、達成可能な最大収率を必ず
しも示したものはない。
(v)式Iの最終生成物の微量分析結果は満足のゆくものであり、構造は核磁器
共鳴(NMR)と質量分析法によって確認した。他に断りのない限り、式Iの最
終生成物のCDCl3溶液を用いてNMRスペクトルデ−タを取得した。化学シ
フト値はデルタ値で示し、以下の略号を用いた。
s=シングレット d=ダブレット t=トリプレット
q=カルテット m=マルチプレット
(vi)一般に中間体は十分に分析していない。薄層クロマトフラフィ−、赤外線
吸収(IR)、NMR分析によって、純度を評価した。
(vii)融点は補正していない。メトラ−(Mettler)SP62自動融点
測定機または湯浴装置を用いて測定した。式Iの最終生成物の融点は、エタノ−
ル、メタノ−ル、アセトン、エ−テルまたはヘキサンなどの通常の有機溶媒を単
独または混合して用いて再結晶した後に行った。
(viii)以下の略号を用いた。
NMP=N−メチルピロリジン−2−オン
DMP=N,N−ジメチルホルムアミド
THF=テトラヒドロフラン
(差替用紙25頁〜29頁の和訳文)
(翻訳文25頁〜29頁に対応)
請求の範囲
1.式I:
(上式において、
Qは1位の窒素原子上にC1-4アルキルを有する2−オキソ−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン−6−イルであり、
X1はチオ、スルフィニルまたはスルホニルであり、
Arは1または2のハロゲンを有していてもよい1,3−フェニレンであり、
R1はC1-4アルキル、C3-4アルケニルまたはC3-4アルキニルであり、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
1または2のC1-4アルキルを有していてもよい5または6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であり、A2およびA3は同一または異なっていてもよく各々C1-3アルキレンで
あり、X2はオキシである)
で表される2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはそ
の薬剤学的に許容される塩(ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル− 2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル ]−4−メトキシテトラヒドロピランは除く)
。
2.Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−
6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレンまたは5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
X2のα位にメチルを有していてもよい6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であり、A2およびA3は各々エチレンであり、X2はオキシである、請求項1の
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩(ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2− オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]− 4−メトキシテトラヒドロピランは除く)
。
3.Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−
6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが1,3−フェニレン、5−フルオロ−1,3−フェニレンまたは2,5
−ジフルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、A2およびA3が結合している炭素原子とともに
X2のα位にメチルを有していてもよい6員環を形成する式:
−A2−X2−A3−
であり、A2およびA3は各々エチレンであり、X2はオキシである、請求項1の
式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬
剤学的に許容される塩(ただし、4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2− オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]− 4−メトキシテトラヒドロピランは除く)
。
4.Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−
6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが5−フルオロ−1,3−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、−CH2CH2OCH(CH3)CH2−である、
請求項1の式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体ま
たはその薬剤学的に許容される塩。
5.Qが1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−
6−イルであり、
X1がチオまたはスルホニルであり、
Arが5−フルオロ−1,3−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,3
−フェニレンであり、
R1がメチルであり、そして、
R2およびR3は一緒になって、−CH2CH2OCH(CH3)CH2−である、
請求項1の式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン誘導体ま
たはその薬剤学的に許容される塩。
6.(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン、
(2S,4R)−4−[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2
,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルスルホニル)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン、および
(2S,4R)−4−[2,5−ジフルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−
1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メト
キシ−2−メチルテトラヒドロピラン、
から選択される請求項1の式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキ
ノリン誘導体。
7.請求項1−6のいずれかに記載される式Iの2−オキソ−1,2,3,4
−テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩(ただし、4 −[5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒ ドロキノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは 除く)
の製造方法であって、この製造方法は、
(a)式:Q−X1−Hの化合物を、式II:
(上式において、Zは置換可能な基である)の化合物とカップリングさせ、
(b)式:Q−Z(ここにおいて、Zは置換可能な基である)と、式III:
の化合物とをカップリングさせ、
(c)式:Q−X1−Z(ここにおいて、Zが置換可能な基であるか、X1がチオ
であるときはZは式:Q−X1−でありうる)の化合物と、式IV:
(上式において、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であるか、Mは通常
のグリニヤ試薬のハロゲン化マグネシウム部分である)の有機金属試薬をカップ
リングさせ、
(d)式V:
の化合物を、式:R1−Z(ここにおいて、Zは置換可能な基である)の化合物
を用いてアルキル化し、
(e)Qにある窒素がアルキルを有する式Iの化合物を製造するときは、その窒
素に水素が結合している式Iの化合物をアルキル化するか、あるいは、
(f)X1がスルフィニルまたはスルホニルである式Iの化合物を製造するとき
は、X1がチオである式Iの化合物を酸化する工程を含み、そして、
式Iの新規化合物の薬剤学的に許容される塩を製造するときは、得られた化合
物を通常法により適当な酸または塩基と反応させ、
式Iの化合物の光学活性体を製造するときは、光学活性な出発物質を用いて上
記工程のいずれか1つを行うか、または、得られたラセミ化合物を通常法により
分割することによって製造する、製造方法。
8.請求項1−6のいずれかの式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒ
ドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩(ただし、4−[5−フ ルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリ ン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは除く)
を、
薬剤学的に許容される希釈剤または担体とともに含有する医薬組成物。
9.ロイコトリエンが介在する疾患または状態に使用する新しい薬剤を製造す
ることへの、請求項1−6のいずれかの式Iの2−オキソ−1,2,3,4−テ
トラヒドロキノリン誘導体またはその薬剤学的に許容される塩(ただし、4−[ 5−フルオロ−3−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ キノリン−6−イルチオ)フェニル]−4−メトキシテトラヒドロピランは除く )
の使用。
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フロントページの続き
(72)発明者 ブリュノー,ピエール・アンドレ・レイモ
ン
フランス共和国エフ―95022 セルジ・セ
デックス,ボアット・ポスタル 127,リ
ュ・デ・ショフール 1,“ル・ガリア
ン”,ゼネカ―ファルマ・ソシエテ・アノ
ニム
(72)発明者 エドワーズ,フィリップ・ニール
イギリス国チェシャー エスケイ10 4テ
ィージー,マックレスフィールド,オール
ダーリー・パーク,ミアサイド,ゼネカ・
ファーマシューティカルズ(番地なし)