JPH08510921A - Tpo活性を有するタンパク質 - Google Patents

Tpo活性を有するタンパク質

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JPH08510921A JP7521122A JP52112295A JPH08510921A JP H08510921 A JPH08510921 A JP H08510921A JP 7521122 A JP7521122 A JP 7521122A JP 52112295 A JP52112295 A JP 52112295A JP H08510921 A JPH08510921 A JP H08510921A
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Abstract

(57)【要約】 この発明は、血小板産生を特異的に刺激または増強する生物活性を有しかつ配列番号6のアミノ酸配列1〜332を有するトロンボポエチン(TPO)又はその誘導体、TPOポリペプチドをコードするDNA分子、TPOポリペプチドの製造方法、TPOポリペプチドと特異的に免疫反応性のある抗体、TPOポリペプチドを含有する医薬組成物、血小板減少症のような血小板障害の治療にTPOポリペプチドを使用する方法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】 TPO活性を有するタンパク質 この出願は、1995年1月31日出願の係属中の米国特許出願(出願番号不明)の 一部継続出願であり、該米国特許出願は、1994年12月22日出願の係属中の米国特 許出願第08/361,811号の一部継続出願であり、この後者の米国特許出願は、199 4年10月11日出願の係属中の米国特許出願第08/320,300号の一部継続出願であり 、この後者の米国特許出願は、1994年7月20日出願の係属中の米国特許出願第08 /278,083号の一部継続出願であり、この後者の米国特許出願は、1994年4月1 日に出願され現在放棄されている米国特許出願第08/221,020号の一部継続出願 であり、この後者の米国特許出願は、1994年3月14日に出願され現在放棄されて いる米国特許出願第08/212,164号の一部継続出願である。 [発明の分野] 本発明は巨核球前駆細胞の増殖および分化を促進するか、又は生体内で特異的 に血小板の産生を刺激、または増強する活性を有する新規タンパク質、そのよう なタンパク質をコードするDNA、およびそのようなタンパク質の製造方法、更に そのよう なタンパク質の用途に関する。 [発明の背景] 巨核球は主に骨髄中で観察される、多核で細胞質が豊富な大型の細胞であり、 血小板を産生する。巨核球の源は骨髄中の多能性造血系幹細胞である。多能性幹 細胞がある程度分化して、巨核球系だけに方向付けられた巨核球前駆細胞となり 、さらに増殖・分化して巨核球となる。巨核球はさらに核の倍数性の増加(poly ploidization)、細胞質の成熟(cytoplasmic maturation)を遂げて、最終的に 無核の細胞質断片である血小板を血液循環へ放出する。1個の成熟した巨核球か ら平均して2000〜4000個の血小板が生成される。血小板形成機構は多くの点で依 然として不明であるが、巨核球は骨髄中の静脈洞内皮表面に一般に局在し、血小 板の断片化を起こす類洞部内に広くゆきわたる細胞質過程を生じさせると考えら れている。 血小板の産生機序については不明な点が多いが、巨核球は骨髄の静脈洞の内皮 下に局在しており、その細胞質が、内皮を貫通して、静脈洞内壁にひも状の突起 を出し、血小板を放出すると考えられている。 このような巨核球造血、および血小板産生に関して、特異的な産生調節機構の 存在が示唆されてきた。健常人や正常な動物では、有効な血小板数が維持されて いるが、例えば、正常な動物へ抗血小板抗体を投与すると、短時間で急激に血小 板だけが減少し、その後増加し始め、さらに一過性に正常値を越えるが、最終的 には再び正常値に戻ることが知られている。また、臨床においても、赤血球数や 白血球数が正常であるにもかかわらず、血小板数の低下(血小板減少症)や血小 板増加症に陥ることが分かっている。 血小板の最も重要な機能は、止血機構における止血栓の形成である。血小板減 少により、止血機構が正常に作働しなくなると、出血傾向を示す。 巨核球形成や血小板形成に関して、特定の調節機構の存在が示唆されてきた。 血小板は、健常人や正常動物では有効数に維持されているが、正常動物に抗血小 板抗体を投与すると、血小板数だけが短時間に急激に減少し、その後、増加に転 じ、一般的に正常レベルを超えるが最終的に正常値に戻ることが知られている。 また、臨床分野において、血小板数の減少(血小板減少症)又は血小板数の増加 (血小板増加症)が赤血球数や白血 球数が正常であるときでさえ起こることも知られている。しかし、今日まで、( 例えば赤血球形成に関与するエリスロポエチンの場合のように)血小板産生に関 与する特異的調節因子の単離及び同定の成功例は報告されていない。 血小板の最も重要な機能は、止血機構における止血栓の形成である。止血機構 の正常な機能が血小板減少症のために損われるときには、出血傾向が起こる。 癌の放射線療法や化学療法では、骨髄抑制による血小板減少症は致命的な合併 症であり、そのような癌患者には出血傾向を防ぐための血小板輸血が施される。 また、血小板輸血は骨髄移植を受けた患者や再生不良性貧血の患者にも施される 。 そのような血小板輸血のための血小板は、健常な血液提供者の血液から血小板 フェレーシスによって調製されるが、輸血用血小板は貯蔵寿命が短く、細菌感染 による汚染の可能性がある。また患者をヒト免疫不全ウィルス(HIV)または各 種の肝炎ウィルスの様な危険なウィルスにさらしたり、患者に輸血血小板表面の 組織適合性抗原(HLA)に対する抗体を誘導したり、あるいは輸血用血小板に混 入するリンパ球により移植片対宿主病(GVHD)を引き起こしたりする危険性があ る。 従って、血小板減少症患者で、内在性の血小板産生を刺激し、同時に血小板輸 血依存を減らすことができれば、極めて有益である。また、癌の放射線療法や化 学療法を受けている患者で、血小板減少を是正または防止することができれば、 それらの治療を一層安全にし、治療の集中度を高めることが可能となり、さらに 一層の制癌効果が期待できるであろう。 そのような理由から、巨核球および血小板の産生調節に関与する特異的な調節 因子の分離、同定のための数多くの研究が熱心に行なわれてきた。試験管内の研 究によれば、巨核球系細胞の形成に関与する調節因子は次の二つに大別されると 考えられている(例えば、Williamsら、J.Cell.Physiol.、110巻、101-104頁 、(1982)参照)。巨核球コロニー刺激因子(Meg-CSF)はCFU-MKの増殖・分化 を促進する調節因子であり、半固形の培養液中で巨核球からなる集塊(コロニー )の形成を誘導する活性を有する。もう一つの調節因子は、巨核球増幅因子(Me g-Pot)、巨核球刺激因子、血小板生成刺激因子などと呼ばれ、主に未成熟又は 成熟巨核球に働き、分化・成熟を促進させる。ある場合には、Meg-CSF活性と一 緒に検出される。また、実験的に血小板減少症にした動物の血小板減少期の血清 や血漿 を別の正常動物に注入すると、血小板が増加することから、生体内で血小板増加 作用を有する体液性因子の存在が考えられており、スロンボポエチン(thrombop oietin:TPO)と呼ばれている。 近年遺伝子がクローニングされたサイトカインのいくつかについて、試験管内 での巨核球系細胞への作用および血小板増加作用が調べられている。ヒトIL-3は ヒト巨核球コロニーの形成を刺激し(Brunoら、Exp.Hematol.、16巻、371-377 頁、(1988))、少なくともサルでは血小板数の増加をもたらす(Donahueら、S cience、241巻、1820-頁、(1988))。しかし、IL-3はすべての造血細胞の増殖 、分化に影響を及ぼす因子であり、巨核球造血、および血小板産生の特異的調節 因子とは区別することができる。ヒトIL-6はMeg-CSF活性は示さないが、未熟な 巨核球に作用して成熟巨核球への分化を促進する(Williamsら、Exp.Hematol. 、18巻、69頁、(1990))。霊長目動物において、IL-6のin vivo投与は血小板 産生を誘起し、骨髄巨核球の成熟を促進し、および核の倍数性を増加させるが、 体重の減少や急性期蛋白質の誘導などの副作用も認められている(Asanoら、Blo od、75巻、1602-1605頁、(1990); Stahlら、Blood、78巻、1467-1475頁、(1991))。ヒトIL-11もMeg-CSF活性は 示さず、Meg-Pot活性を発揮し、マウスを用いて血小板増加作用が報告されてい る(Nebenら、Blood、81巻、901-908頁、(1993))。また、ヒトLIFは霊長目動 物において、有意に血小板数を増加させるが(Mayerら、Blood、81巻、3226-323 3頁、(1993))、試験管内での巨核球への作用は微弱である(Bursteinら、J. Cell.Physiol.、153巻、305-312頁、(1992))。 これらのサイトカインには血小板増加因子としての臨床応用の可能性が期待さ れているが、巨核球系だけに特異的に作用するものではなく、また、副作用も認 められる。従って、臨床においては、より副作用が少ない、巨核球‐血小板系に 特異的な血小板増加因子が待望されている。 古くから血小板減少症のヒトや動物の血清、血漿、尿あるいはある種のヒト培 養細胞株の上清中に、Meg-CSF、Meg-Pot、あるいはTPO活性の存在が報告され ているが、このような因子が単独で、あるいは複数存在して活性が発揮されるの か、また既知因子との異同など、ほとんど未解明のままである。 Hoffmanらは、再生不良性貧血や無巨核球性血小板減少性紫 斑病の患者の血清の中に、有意にヒト巨核球コロニー形成を増加させるMeg-CSF 活性を見いだし(Hoffmanら、N.Eng.J.Med.、305巻、533-538頁、(1981) )、Mazurらはさらに、再生不良性貧血患者の血清中のこのMeg-CSF活性はIL-3あ るいはGM-CSFとは異なることを示した(Mazurら、Blood、76巻、290-297頁、(1 990))。類似のMeg-CSF活性は、集中的に細胞毒性化学療法を施した癌患者や骨 髄移植を施した患者の血清中にも検出されている(Mazurら、Exp.Hematol.、1 2巻、624-628頁、(1984);de AlarconとSchmieder、Prog.Clin.Bio.Res. 、215巻、335-340頁、(1986))。Hoffmanらは、骨髄巨核球低形成の血小板減 少症患者の血漿から、見かけの分子量46000を有するMeg-CSFを精製したと報告し たが(Hoffmanら、J.Clin.Invest.、75巻、1174-1182頁、(1985))、その 後の研究で精製標品の純度がアミノ酸配列を決定するには不十分であることが判 明している(Hoffman、Blood、74巻、1196-1212頁、(1989))。血小板減少症 患者由来の血漿、あるいは特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者の尿から、マ ウスでの75Se-セレノメチオニン(75Se-selenomethionine)の新生血小板への取 り込みを促進させるTPO様活性が部分精 製され、血漿由来の活性については見かけの分子量40000を有することが示され ている(Grossiら、Hematologica、72巻、291-295頁、(1987);Vannucchiら、 Leukemia、2巻、236-240頁、(1988))。 再生不良性貧血や重症のITP患者の尿中にも、Meg-CSF活性やTPO様活性が検 出されている(Kawakitaら、Br.J.Haematol.、48巻、609-615頁、(1981);K awakitaら、Blood、61巻、556-560頁、(1983))。さらに、Kawakitaらは、再 生不良性貧血患者の尿抽出物に含まれるMeg-CSF活性は、解離条件下のゲル濾過 で見かけの分子量45000を有することを報告している(Kawakitaら、Br.J.Haem atol.、62巻、715-722頁、(1986))。Erikson-Millerらも、同様の尿試料から のMeg-CSFの精製を報告しているが、その構造は明らかにされていない(Erikson -Millerら、“Blood Cell Growth Factors:their present and future use in hematology and oncology”ed.by Murphy、AlphaMed Press、Dayton、Ohio、20 4-220頁、(1992))。Turnerらは、骨髄移植を施行された患者の尿からMeg-CSF 活性を有する巨核球刺激因子(MSF)を精製し、その遺伝子をクローニングした (Turnerら、Blood、78巻、1106頁 279a、(1991)(absir.、suppl.1))。このMSFは、分子量28000から35000を 有する。この因子が、これまで血小板減少症患者の血清や血漿中に検出されてき たMeg-CSFと同じ因子か否か、また生体内において血小板増加作用を有するか否 かは不明である。 また、ヒト胎児腎臓由来細胞株(HEK細胞)の培養上清から分子量32000のTP O様活性が精製され、その生物学的及び生化学的性状が調べられているが、いま だにその構造は明らかにされていない(McDonaldら、J.Lab.Clin.Med.、106 巻、162-174頁、(1985);McDonald、Int.J.Cell Cloning、7巻、139-155頁 、(1989))。一方で、別の研究者により、このHEK細胞のならし培養液中に存 在する、試験管内での巨核球の成熟を促進する主要な活性は、既知サイトカイン 、即ち、IL-6とEPOに依るという報告もある(Withyら、J.Cell.Physiol.、15 巻、3362-372頁、(1992))。 動物由来の因子について、Evattらは、抗血小板血清を注入したウサギの血小 板減少期の血漿中にウサギおよびマウスにおいて75Se-セレノメチオニンの新生 血小板への取り込みを促進させるTPO様活性を報告している(Evattら、J.La b.Clin. Med.、83巻、364-371頁、(1974))。その他にも1960年代から1970年代にかけ て類似の報告がいくつも見られる(例えば、Odellら、Proc.Soc.Biol.Med. 、108巻、428-431頁、(1961);EvattとLevin、J.Clin.Invest.、48巻、1615 -1626頁、(1969);Harker、Am.J.Physiol.、218巻、1376-1380頁、(1970 );ShreinerとLevin、J.Clin.Invest.、49巻、1709-1713頁、(1970);Peni ngton、Br.Med.J.、1巻、606-608頁、(1070))。Evattら、およびHillとL evinは、血小板減少期のウサギの血漿から、TPO様活性を部分精製し(Evatt ら、Blood、54巻、377-388頁、(1979);HillとLevin、Exp.Hematol.、14巻 、752-759頁、(1986))、その後さらに、試験管内において巨核球の分化、成 熟を促進させる活性、即ちMeg-Pot活性を指標にしてこの因子の精製を進め、ゲ ル濾過上で見かけの分子量40000〜46000を有することを明らかにした(Kellerら 、Exp.Hematol.、16巻、262-267頁、(1988);Hillら、Exp.Hematol.、20 巻、354-360頁、(1992))。抗血小板血清投与で誘導した重症の急性血小板減 少症のウサギの血漿中にはIL-6活性が検出されないことから、このTPO様活性 はIL-6とは異なる分子によって担われている ことが示されている(Hillら、Blood、80巻、346-351頁、(1992))。 TayrienとRosenbergも、血小板減少症ウサギの血漿、あるいはHEK細胞の培養 上清から、巨核球系のラット培養細胞株において血小板第4因子の産生を刺激す る見かけの分子量15000を有する因子を精製したが、その構造は明らかにされて いない(TayrienとRosenberg、J.Biol.Chem.、262巻、3262-3268頁、(1987) )。 また、Nakeffは、抗血小板抗体投与により血小板減少にしたマウスの血清中に Meg-CSF活性を見いだしている(Nakeff、“Experimental Hematology Today”ed .by Baum and Ledney、Springer-Verlag、NY、111-123頁、(1977))。一方、 血小板減少にしたウサギの血清中には、巨核球の成熟を促進したり(Kellerら、 Exp.Hematol.、16巻、262-267頁、(1988);Hillら、Exp.Hematol.、17巻 、903-907頁、(1989))、巨核球の血小板への形態変化(LevenとYee、Blood、 69巻、1046-1052頁、(1987))を刺激する活性は検出されているが、Meg-CSF活 性は認められていない。。 Miuraらは、亜致死線量の放射線を全身照射したラットの血 小板減少期の血漿中にMeg-CSF活性を検出し(Miuraら、Blood、63巻、1060-1066 頁、(1984))、この活性が血小板輸血によって変化しないことから、生体内で のMeg-CSF活性の誘導には、血小板の減少ではなく、巨核球の減少が必要である としている(Miuraら、Exp.Hematol.、16巻、139-144頁、(1988))。Mazur とSouthは、亜致死性放射線照射したイヌの血清中にMeg-CSF活性を検出し、ゲル 濾過上で見かけの分子量175000を有することを報告している(MazurとSouth、Ex p.Hematol.、13巻、1164-1172頁、(1985))。その他に、血清、血漿、ある いは尿に由来する因子が、Stranevaら(Stranevaら、Exp.Hematol.、15巻、657 -663頁、(1987))などによっても報告されている。 このように、血小板減少症のヒトや動物の生体試料の中に、巨核球造血、およ び血小板生成を促進する因子の存在が確認されているにもかかわらず、現在まで にそのような因子の単離、生化学的ならびに生物学的な同定、および特性決定は 、天然の供給源、例えば血液や尿の中にそのような因子が極端に微量でしか存在 しないために成功していない。 [発明の概要] そこで、本発明の目的は、巨核球前駆細胞の増殖および分化を促進するか、お よび/又は生体内で特異的に血小板の産生を刺激、または増強する活性(以下、 「TPO活性」と称する)を有するTPOタンパク質を天然の供給源から単離・ 同定し、更にはそのTPOタンパク質をコードする遺伝子を単離すること、組換 えDNA技術を用いて、該タンパク質を均質に大量生産する方法を提供することに ある。それが可能となれば、現在採用されている血小板輸血にとって代わるか、 頻度を減らすことができ、あるいは血小板障害の治療および診断にも使うことが できる。 したがって、本発明は、(i)TPO活性を有するタンパク質をコードする精 製、単離されたDNA配列に係わり、該DNA配列は下記の群から選択される。 (a)配列番号(SEQ ID NO)194、195及び196に示されるDNA配列、又はそ の相補鎖; (b)厳格な条件下で(a)に定義のDNA配列又はその断片とハイブリッド形 成するDNA配列;及び (c)遺伝コードの縮重がなければ(a)、(b)に定義のDNA 配列とハイブリッド形成しうるDNA配列。 本発明は、また、(ii)TPO活性を有するタンパク質の製造方法に係わり、 該方法は、適切な栄養条件下、該タンパク質の発現を可能にするように前記DN A配列で形質転換又はトランスフェクトした原核又は真核宿主細胞を増殖し、前 記DNA配列の発現により得られた目的のタンパク質産物を単離する工程を包含 する。 本発明はさらに、(iii)原核又は真核宿主細胞内での前記DNA配列の発現 により得られたタンパク質産物に係わる。 本発明はさらにまた、TPO活性を有する前記タンパク質を有効量で含有する 医薬組成物、並びに血小板障害特に血小板減少症をもつ患者に前記タンパク質を 投与することからなる血小板障害特に血小板減少症を治療するための方法に係わ る。 [図面の簡単な説明] 図1は、XRP由来のPhenyl Sepharose 6 FF/LS F2のSephacryl S-200HRゲル 濾過クロマトグラフィーを示す。 図2は、XRPの低分子量TPOサンプル(Sephacryl S-200HR F3)由来のYM C-pack CN-AP TPO活性フラクションのCapcell Pak C1逆相クロマトグラフイーを 示す。 図3は、XRPの低分子量TPOサンプル由来のCapcell Pak C1 TPO活性フラ クション(FA)のSDS-PAGE分析を示す。 図4は、SDS-PAGEにより単離されたラットTPOのC18逆相HPLC上のペプ チドマップを示す。ペプチド断片は3種のプロテアーゼによる系統的加水分解に よって得られた。 図5は、ラットCFU−MKアッセイ系におけるXRP由来のTPO活性を示 す。 図6は、発現ベクターpEF18Sの構築を示す。 図7は、ラットCFU−MKアッセイ系における、pEF18S−A2αが導入 されたCOS1細胞の培養上清中のTPO活性を示す。 図8は、ラットCFU−MKアッセイ系におけるpEF18S−HL34が導 入されたCOS1細胞の培養上清中のTPO活性を示す。 図9は、ラットCFU−MKアッセイ系におけるpHT1−231が導入され たCOS1細胞の培養上清中のTPO活性を示す。 図10aは、ラットCFU−MKアッセイ系におけるpHTF1が導入された COS1細胞の培養上清中のTPO活性を示 す。 図10bは、M−07eアッセイ系におけるpHTF1が導入されたCOS1 細胞の培養上清中のTPO活性を示す。 図11は、ファージクローンλHGT1の制限酵素地図、並びにpHGT1及 びpEFHGTEの構築を示す。 (図中、E:EcoRI、H:HindIII、S:Sal Iを示す。) 図12aは、ラットCFU−MKアッセイ系におけるpEFHGTEが導入さ れたCOS1細胞培養上清中のTPO活性を示す。 図12bは、M−07eアッセイ系におけるpEFHGTEが導入されたCO S1細胞培養上清中のTPO活性を示す。 図13aは、ラットCFU−MKアッセイ系における、pHT1−211#1 、pHT1−191#1、又はpHT1−171#2が導入されたCOS1細胞 培養上清中のTPO活性を示す。 図13bは、ラットCFU−MKアッセイ系におけるpHT1−163#2が 導入されたCOS1細胞培養上清中のTPO活性を示す。 図14は、M−07eアッセイ系におけるpHT1−211 #1、pHT1−191#1、pHT1−171#2、又はpHT1−163# 2が導入されたCOS1細胞培養上清中のTPO活性を示す。 図15は、pDEF202−hTPO−P1を導入・発現させたCHO細胞の 培養上清からのヒトTPO精製における、逆相クロマトグラフィー(Vydac C4カ ラム)のクロマトグラム。 図16は、pDEF202−hTPO−P1を導入・発現させたCHO細胞の 培養上清から精製されたヒトTPOのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 による分離を示す写真。 図17は、pCFM536/h6T(1−163)を導入・発現させた大腸菌 からのヒトTPOの精製における、逆相クロマトグラフィーのクロマトグラム。 図18は、pCFM536/h6T(1−163)を導入・発現させた大腸菌 から分離・精製された変異型ヒトTPO、h6T(1−163)のSDS−ポリ アクリルアミドゲル電気泳動による分離を示す写真。 図19は、ヒトTPO発現プラスミドpDEF202-hTPO163をCHO細胞に トランスフェクションして得られた培養上清を出発材料にしたhTPO163の精製 におけるSuperdex 75 pgカラムでのhTPO163の溶出パターンを示す。蛋白質は220nmで測定した 。 図20は、ヒトTPO発現プラスミドpDEF202-hTPO163をCHO細胞に トランスフェクションして得られた培養上清を出発材料にしたhTPO163の精製 において、Superdex 75pgカラムで得られたhTPO163標品のSDS−ポリアク リルアミドゲル電気泳動分析を示す。ゲル上の各hTPO163は銀染色された。 図21は、発現ベクターpSMT201の構造を示す。 図22は、M−07eアッセイにおけるβGL-TPO、N3/TPO、09/TP Oを導入・発現させたCOS7培養上清中のTPO活性を示すグラフ。 図23は、M−07eアッセイにおけるヒトTPO挿入・欠失誘導体を導入・ 発現させたCOS7細胞培養上清中のTPO活性を示すグラフ。 図24は、ヒトTPOをマウスに静脈内投与、または皮下投与した場合の血小 板数の上昇推移を示す。 図25は、ヒトTPOをマウスに皮下投与した場合の用量に依存した血小板数 の上昇推移を示す。 図26は、マウスに5-FUを投与して血小板減少症を誘起した後にヒトTPOを 投与した場合の血小板数の上昇推移を示す。 図27は、マウスに塩酸ニムスチンを投与して血小板減少症を誘起した後にヒ トTPOを投与した場合の血小板数の上昇推移を示す。 図28は、マウスにBMT(骨髄移植)を施行した後にヒトTPOを投与した 場合の血小板数の上昇推移を示す。 図29は、X線照射して血小板減少症を誘起した後のマウスにヒトTPOを投 与した場合の血小板数の推移を示す。 図30は、トランケーテッド(truncated)TPO(配列番号6中のアミノ酸1 -163)を投与した場合の血小板数の用量依然的上昇推移を示す。 図31は、塩酸ニムスチンを投与して血小板減少症を誘起した後にトランケー テッド(truncated)TPO(配列番号6中のアミノ酸1-163)を投与した場合の 血小板数の上昇推移を示すグラフ。 図32は、ヒト巨核球培養系に加えるMpl−Xの濃度を高めると、巨核球の 発生を増々ブロックすることを示す。 図33は、大腸菌で発現されたヒトTPO誘導体([Met-2,Lys-1,A la1,Val3,Alg133] TPO(1-163)、[Met-2,Lys-1,Ala1,Val3,Pro148]TP O(1-163)及び[Met-2,Lys-1,Ala1,Val3,Arg115]TPO (1-163))のM−07eアッセイにおけるTPO活性を示す。 図34は、大腸菌で発現されたヒトTPO誘導体([Met-2,Lys-1,A la1,Val3,Alg129]TPO(1−163)、[Met-2,Lys-1,Al a1,Val3,Arg143]TPO(1-163)、[Met-2,Lys-1,Ala1 ,Val3,Leu82]TPO(1-163)、[Met-2,Lys-1,Ala1,V al3,Leu146]TPO(1-163)及び[Met-2,Lys-1,Ala1,Va l3,Arg59]TPO(1-163))のM−07eアッセイにおけるTPO活性を 示す。 [発明の詳細な説明] 本発明は、血小板産生を特異的に刺激又は増大させる生物活性を有しかつ配列 番号6のアミノ酸配列1〜332を含むトロンボポエチン(TPO)ポリペプチド 又はその誘導体を提供する。ポリペプチドの例として、配列番号6のアミノ酸配 列1〜163、配列番号6のアミノ酸配列1〜232、配列番号6のアミノ酸配列1〜 151、配列番号2、4及び6の成熟アミノ 酸配列からなるポリペプチド類、並びに1〜6個のアミノ末端アミノ酸が欠損し たポリペプチド類が挙げられる。さらに、本発明のポリペプチドの例として、[ Thr33,Thr333,Ser334,Ile335,Gly336,Tyr337,Pro3 38 ,Tyr339,Asp340,Val341,Pro342,Asp343,Tyr344,A la345,Gly346,Val347,His348,His349,His350,His35 1 ,His352,His353]TPO,[Asn25,Lys231,Thr333,Se r334,Ile335,Gly336,Tyr337,Pro338,Tyr339,Asp340 ,Val341,Pro342,Asp343,Tyr344,Ala345,Gly346,Va l347,His348,His349,His350,His351,His352,His353 ]TPO,[Asn25]TPO及び[Thr33]TPOが挙げられる。本発明の 他のポリペプチドとしては、[ΔHis33]TPO(1-163),[ΔArg117] TPO(1-163),[ΔGly116]TPO(1-163),[His33,Thr33′ ,Pro34]TPO(1-163),[His33,Ala33′,Pro34]TPO(1 - 163),[His33,Gly33′,Pro34,Ser38]TPO(1-163),[G ly116,Asn116′,Arg117]TPO(1-163),[Gly116,Ala116 ′,Arg117]TPO(1-163),[Gly116,Gly116′,Arg117]T PO(1-163),[Ala1,Val3,Arg129]TPO(1-163),[Ala1 ,Val3,Arg133]TPO(1-163),[Ala1,Val3,Arg143]T PO(1-163),[Ala1,Val3,Leu82]TPO(1-163),[Ala1 ,Val3,Leu146]TPO(1-163),[Ala1,Val3,Pro148]T PO(1-163),[Ala1,Val3,Arg59]TPO(1-163),及び[Al a1,Val3,Arg115]TPO(1-163)のTPOポリペプチド誘導体が挙げ られる。 本発明のTPOポリペプチドにはさらに、ポリマー好ましくはポリエチレング リコールに共有結合されたものも包含される。さらに、本発明のTPOポリペプ チドには、アミノ酸[Met-2−Lys-1]、[Met-1]又は[Gly-1]を さらに含有してもよい。本発明によって提供されるDNAとしては、TPOポリ ペプチド又は上記誘導体をコードするものが挙 げられ、適切にはcDNA、ゲノムDNA及び合成DNAとして提供される。 本発明はまた、上記TPOポリペプチドの製造方法を提供し、この方法は、本 発明のDNAによりコードされるポリペプチドを適切な宿主中で発現させ、該T POポリペプチドを単離する工程を包含する。発現されるTPOポリペプチドが Met-2−Lys-1ポリペプチドである場合には、前記方法はさらに、前記単離 TPOポリペプチドからMet-2−Lys-1を切断する工程を含んでもよい。 本発明はさらに、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合ポリ ペプチドのようなTPOポリペプチドの製造方法を提供する。アミノ末端GST ポリペプチド、トロンビン認識ペプチド及びTPOポリペプチドをコードするD NAを適切な宿主中に導入し、融合ポリペプチドを単離し、そのGST部分をト ロンビン処理により除去する。これによって、[Gly-1]TPOポリペプチド 構造が得られる。 本発明はさらにまた、血小板産生を特異的に刺激又は増大する生物活性をもつ ポリペプチドを原核又は真核宿主細胞で発現可能なように、本発明のDNA配列 で形質転換又はトランスフ ェクトされた前記宿主細胞を提供する。 本発明の医薬組成物は、有効量のTPOポリペプチド又はその誘導体と医薬的 に許容可能な担体と組合わせて含有するものであり、血小板障害、特に、例えば 化学療法、放射線療法又は骨髄移植によって誘発される血小板減少症の治療に有 効に使用される。対応の治療法も本発明に含まれる。 最後に、本発明はまた、TPOポリペプチド又はその上記誘導体と特異的に免 疫学的に反応する抗体を提供する。この抗体は本発明のTPOポリペプチドの単 離や定量のための方法に有用である。 本発明によれば、TPO活性を有するタンパク質をコードする新規DNA配列( 以下、「本発明のDNA配列」と言う)が提供される。本発明のDNA配列としては、 後記配列表配列番号2、4又は6に示されたアミノ酸配列をコードするDNA配列 が挙げられる。 本発明のDNA配列には、TPO活性を保持する限りにおいて配列番号2、4又 は6に示される前記アミノ酸配列の一部が改変(置換、欠失、挿入、または付加 )されている変異体をコードするDNA配列が含まれる。すなわち、TPO誘導体 をコード するDNA配列もまた本発明に包含される。 別の言い方をすれば、本発明のDNA配列としては、アミノ酸配列が実質的に配 列番号2、4又は6に示されたアミノ酸配列であるタンパク質分子をコードする DNA配列が含まれる。ここで言う、「実質的に配列番号2、4又は6に示された アミノ酸配列」とは、配列番号2、4又は6に示されたアミノ酸配列」に加えて 、TPO活性を保持する限りにおいて、配列番号2、4又は6に示されたアミノ 酸配列の一部に置換、欠失、挿入又は付加などの改変があるアミノ酸配列を含む ことを意味する。 さらに、本発明のDNA配列は、TPO活性を有するタンパク質をコードするDNA 配列から本質的になる。 なお、ここで言う「アミノ酸配列をコードするDNA配列」には、ヌクレオチド 配列における縮重をもつすべてのDNA配列を包含する。 更に、本発明のDNA配列は、以下(a)〜(c)の配列を包含する。 (a)配列番号7、194、195及び196に示されたDNA配列またはそれらの相補鎖、 (b)(a)のDNA配列またはその断片と厳格な条件下でハイブリッド形成するD NA配列、 (c)遺伝コードの縮重がなければ(a)、(b)のDNA配列とハイブリッド形 成しうるDNA配列。 また、別の言い方をすれば、本発明のDNA配列は以下の(a)、(b)のいず れかに示された配列も包含する。 (a)大腸菌DH5に担持されたベクターpEF18S−A2α(受託番号FE RM BP−4565)に組込まれているTPO活性を有するタンパク質のアミ ノ酸配列をコードするDNA配列、大腸菌DH5に担持されたベクターpHT1− 231(受託番号FERM BP−4564)に組込まれているTPO活性を有 するタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列、大腸菌DH5に担持され たベクターpHTF1(受託番号FERM BP−4617)に組込まれているTP O活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列、大腸菌DH5 に担持されたベクターpHGT1(受託番号FERM BP−4616)に組み込ま れているTPO活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列、 (b)TPO活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコード するDNA配列であって、(a)のDNA配列またはその断片と(厳格な条件下で)ハ イブリッド形成するDNA配列。 ここで“厳格な”ハイブリダイゼーション条件という表現は、縮重配列の、お よび/または単一配列のオリゴヌクレオチドプライマー(プローブ)を用いるこ とにより行う、本発明においてDNAのPCR増幅をとりあげた一連の実施例に おいて使用されるものである。例として、Sambrookらの“Molecu lar Cloning”(Cold Spring Harbor Labo ratory Press,1989)の第11章および第14章、あるいは、 Ausubelら編“Current Protocols in Molec ular Biology”(Current Protocols,U.S. A.,1993)のユニット2.10を参照のこと。 本発明のDNAとしては、配列番号6に示されたアミノ酸配列のうち、1位か ら163位のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、かつTPO活 性を有するタンパク質をコードするDNA配列も含まれる。 このようなDNAは、制限酵素による切断部位の供与、および /または、発現を容易にするような発現ベクター構築のための開始部、終止部ま たは中間部へのDNA配列の付加的供与を含むことができる。また、非哺乳類宿主 を使用する場合には、それにおける発現に好ましいコドン(優先コドン)を組み 込んでも良い。 本発明のDNA配列の例としては、ヒトをはじめとする哺乳動物細胞などからmRN Aを調製した後、既知の方法で作製されたcDNAライブラリーから、既知の方法に よってスクリーニングすることによって得られたcDNAがある。この場合のmRNAの 供給源としては、ラット肝臓細胞由来の細胞株McA-RH8994細胞、HTC細胞、H4-II -E細胞、ラット肝臓、腎臓、脳、小腸、ヒト肝臓等が挙げられる。 また、本発明のDNA配列の他の例としては、ヒトをはじめとする哺乳動物細胞 から既知の方法で作製されたゲノムライブラリーから既知の方法でスクリーニン グされたゲノムDNA配列であってもよい。この場合のゲノムDNAの供給源としては 、ヒト、ラット、マウス等の染色体DNAが挙げられる。 また、このようにして得られた、TPO活性を有するタンパク質をコードする cDNAを周知の部位特異的突然変異法を用いて 修飾することによって、一部のアミノ酸配列が改変されたもの、即ちTPO誘導 体をコードするDNAを得ることができる。 また、本明細書中で開示されたTPO活性を有するタンパク質のアミノ酸配列 又はDNA配列に基づいて、その一部のアミノ酸配列が改変されたタンパク質をコ ードするDNAは、化学合成することによっても容易に得ることができる。 本発明のDNA配列は、種々の遺伝子組換え技術によってTPO活性を有するタ ンパク質を大量生産するために有用な物質である。 更に、本発明のDNA配列は、TPOの関連タンパク質をコードする遺伝子、並 びに他の哺乳動物のTPOのcDNA、およびゲノムDNAを単離する場合に標識化プ ローブとして用いるのに適した物質である。また、ヒトおよび他の哺乳類種にお ける遺伝子療法において有用である。本発明のDNAは、大量のTPO生産のため の真核宿主として用いることができるトランスジェニック哺乳類種の開発に有用 である(Palmiterら、Science、222、809-814、(1983))。 また、本発明によれば、上記TPO活性を有するタンパク質をコードするDNA を組み込んだベクター、該ベクターで形質転 換された宿主細胞、該宿主細胞を培養し、産生されたTPO活性を有するタンパ ク質を分離・精製することを特徴とするTPO活性を有するタンパク質の製造方 法が提供される。 この場合の宿主細胞としては、原核生物(例えば大腸菌)、真核生物(例えば 酵母、昆虫、あるいは哺乳動物)細胞等を用いることができる。哺乳動物細胞の 例としては、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovar y)細胞、C-127細胞、BHK(Baby Hamster Kidney)細胞、等があげられる。 酵母の例としては、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)やメタノール資化性 酵母(Pichia pastoris)等があげられる。昆虫細胞の例としては、蚕培養細胞 等があげられる。 これらの宿主細胞を形質転換させるために用いられるベクターには、大腸菌用 としてpKC30(Shimatake H.and M.Rosenberg、Nature、292、128-132、1981) 、pTrc99A(Amann E.ら、Gene6、69、301-315、1988)等があげられる。哺乳動 物細胞用としてはpSV2-neo(Southern and Berg;J.Mol.Appl.Genet.、1、32 7-341、1982)、pCAGGS(Niwaら; Gene、108、193-200、1991)、あるいはpcDL-SR α296(Takebeら;Mol.Cell. Biol.、8、466-472、1988)等がある。酵母用としてはpG-1(Schena M.and Ya mamoto K.R.;Science、241、965-967、1988)等がある。蚕細胞用としては、組 み換えウイルス作製用トランスファーベクターpAc373(Luckowら、Bio/Technolo gy、6、47-55、1988)等がある。 これらのベクターは必要に応じて複製起点、選択マーカー、プロモーターを含 み、さらに真核細胞用のベクターには、必要に応じてRNAスプライス部位、ポ リアデニル化シグナル等が付加される。 複製起点として、哺乳動物細胞用ベクターには、SV40、アデノウイルス、ウシ パピローマウイルス由来のもの等を用いることができる。大腸菌用ベクターとし ては、ColE1、R 因子、F因子由来のもの等を用いることができる。酵母用として は2μmDNA、ARS1由来のもの等を用いることができる。 遺伝子発現用プロモーターとして哺乳動物細胞用ベクターには、レトロウイル ス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40由来のもの等を用いることがで きる。大腸菌用ベク ターとしてはバクテリオファージλ由来のものや、trp、lpp、lac、tacプロモー ター等を用いることができる。パン酵母用としてはADH、PHO5、GPD、PGK、MAF αプロモーター、メタノール資化性酵母についてはAOX1プロモーター等を用いる ことができる。蚕細胞用ベクターとしては核多角体病ウイルス由来のもの等を用 いることができる。 選択マーカーとして、哺乳動物細胞用ベクターには、ネオマイシン(neo)耐 性遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝 子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺 伝子等を用いることができる。大腸菌用ベクターとしては、カナマイシン耐性遺 伝子、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等を用いることが できる。酵母用としてはLeu2、Trp1、Ura3遺伝子等を用いることができる。 以上の様な宿主−ベクター系を用いてTPO活性を有するタンパク質を得るた めには、上記ベクターの適当な部位に本発明の遺伝子を組み込んだ組み換えDN A体により、宿主細胞を形質転換させた後、得られた形質転換体を培養し、さら に細胞内あるいは培養液もしくはろ液から該ポリペプチドを分離・精製 すればよい。これらに用いられる手段・方法は公知のものを組み合わせて行なう ことができる。 目的の遺伝子を発現させる場合に、その発現産物のN末端を均一化するために 、本来のシグナル配列を改変したり、他のタンパク質のシグナル配列を用いても よい。また、N末端およびその近傍のアミノ酸残基を改変(置換、あるいは付加 )することによっても、N末端を均一化することが可能である。例えば、宿主細 胞として大腸菌を用いて発現させる場合にメチオニン残基に加え、リジン残基を 加えるなどしてもよい。 本発明のTPO活性を有する新規タンパク質(以下、「本発明のタンパク質」 と言う)としては、配列番号2、4又は6に示されたアミノ酸配列から成るタン パク質がある。また、本発明にはTPO活性を保持する限り、その一部のアミノ 酸配列が改変(置換、欠失、挿入、または付加)されたもの、即ちTPO誘導体 も含まれる。 別の言い方をすれば、本発明のタンパク質としては、アミノ酸配列が実質的に 配列番号2、4又は6に示されたアミノ酸配列であるようなタンパク質が含まれ る。 ここで言う、「実質的に配列番号2、4又は6に示されたア ミノ酸配列」とは、配列番号、4又は6に示されたアミノ酸配列に加えて、TP O活性を保持する限りにおいて、配列番号、4又は6に示されたアミノ酸配列の 一部に置換、欠失、挿入または付加などがあるアミノ酸配列を含むものである。 本発明のタンパク質としては、配列番号6に示されたアミノ酸配列の7位から 151位のアミノ酸配列を含み、かつTPO活性を有するタンパク質も含まれる 。本発明のタンパク質には、配列番号6に示されるアミノ酸配列の1位から 16 3位のアミノ酸配列を含み、かつTPO活性を有するタンパク質も含まれる。 本発明のTPO誘導体の他の例としては、例えば、アミノ酸の改変(置換、欠 失、挿入または付加)を行うことによって安定性や体内での持続性の向上を図っ たもの、糖鎖の付加する1つ以上の潜在的部位を欠失または付加して変化させた もの、1つ以上のシステイン残基を欠失させるか、またはシステインを他のアミ ノ酸残基(例えば、アラニンまたはセリン残基)で置換したものなどが挙げられ る。 好ましくは、本発明のタンパク質は、cDNA分子、ゲノムDNA分子、または化学 合成により得られるDNA断片を含む組換えベクターで形質転換された宿主細胞か ら分離・精製して得られた ものであることを特徴とする。 宿主として、細菌(例えば、大腸菌)を用いて菌体内発現を行う場合には、T PO活性を有するタンパク質のN末端側に開始メチオニン残基の付加されたタン パク質が得られるが、このようなタンパク質も本発明に含まれる。また、用いる 宿主によっては、産生されるTPO活性を有するタンパク質はグリコシル化され ている場合もあるし、あるいはグリコシル化されていない場合もあるがいずれも 、本発明のタンパク質に含まれる。 また、本発明のタンパク質としては、天然の供給源(例えば、TPO活性を含 むならし培地、またはヒト尿、血清、血漿)から精製および単離されたTPO活 性を有する天然のタンパク質も含まれる。 また、本発明によれば、そのような天然の供給源からTPOを精製する方法を 包含する。そのような精製法としては、一般にタンパク質の精製に用いる工程( イオン交換クロマトグラフィー、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、 トリアジン色素吸着クロマトグラフィー、疎水相互クロマトグラフィー、ゲル濾 過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヘパリンアフィニティークロ マトグラフィー、硫酸化ゲルクロマト グラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、等電点クロマトグ ラフィー、金属キレーティングクロマトグラフィー、分取電気泳動法、および等 電点電気泳動法など)の一つ以上を組み合わせた方法がある。また、後述の実施 例から推定しうるTPOの物理化学的な性質を利用して組み合わせることのでき る方法も本発明に含まれる。さらには、TPOを認識することのできる抗体を用 いた抗体アフィニティクロマトグラフィーをも用いることができる。また、TP OはMplのリガンドであることが判明したことから(de Sauvageら、Nature 3 69巻533-538頁(1994)、Bartleyら、Cell 77巻1117-1124頁(1994)、Kaushans kyら、Nature 369巻565-568頁(1994))、Mplを樹脂にカップリングさせる ことでアフィニティーゲルカラムを調製し、これを利用することによってもTP Oを精製することができる。より具体的には、Mplの細胞外領域(Mpl−X )をCHO細胞を宿主として用いた遺伝子組換え法により生産・調製し、樹脂に カップリングさせて調製されたMpl−Xカラムが挙げられる(前述のBartley ら(1994))。 本明細書で記載されるように、本発明のTPOポリペプチドはさらに、Mpl レセプター、特にその細胞外(可溶性)ドメ インに特異的に結合する能力によって特徴付けられる。 本発明は更に、TPO遺伝子のヒトcDNAまたはゲノムDNA配列の蛋白質コード 鎖と相補的なDNA部分によってコードされるタンパク質、即ちTramontanoら(Nuc l.Acids Res.、12、5049-5059(1984))が記載したような“相補的逆方向蛋白 質”を含む。 本発明には、固体組織および血液または尿のような液体試料中のTPOまたは その受容体保有細胞の検出および定量に有用な試薬を提供するために、検出可能 なマーカー物質で標識(例えば125Iで放射能標識するか、またはビオチニル化 する)された本発明のタンパク質も含まれる。 ビオチニル化された本発明のタンパク質は、自己骨髄移植において骨髄から巨 核芽球性細胞を除去するために固定化ストレプトアビジンと結合する場合に有用 である。更には、自己または同種異系骨髄移植の場合に自己または同種異系巨核 球系細胞を濃縮するために固定化ストレプトアビジンと結合する場合に有用であ る。リシン、ジフテリア毒素のような毒素とTPOとの毒素結合体、および放射 性同位元素は、抗癌療法に対して、または骨髄移植のコンディショニング養生法 として有用である。 また、本発明は、検出可能マーカー(例えば放射能標識、またはビオチンのよ うな非同位元素標識)で標識される場合や、染色体地図におけるヒトTPO遺伝 子位置および/または任意の関連遺伝子ファミリーの位置を突き止めるためのハ イブリダイゼーション法に用いるのに有用な核酸物質も提供する。それらは、DN AレベルでヒトTPO遺伝子障害を確認するためにも有用であって、隣接遺伝子 およびそれらの障害を確認するための遺伝子マーカーとしても用いられる。 さらに、本発明には、有用で好適な希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジ ュバントおよび/または担体とともに治療上有効量の本発明のタンパク質を含有 する医薬組成物も含まれる。本明細書中で用いる“治療上有効量”という用語は 、指定の条件および投与法に対して治療効果を提供する量を示す。このような組 成物は、液体であるか、あるいは凍結乾燥またはさもなくば乾燥された剤形であ って、種々のpH、およびイオン強度から成る緩衝剤(例えばトリス‐塩酸、酢酸 塩、燐酸塩)より選択した希釈剤、表面に吸着しないようにするためのアルブミ ンまたはゼラチンのような添加剤、界面活性剤(例えばTween 20、Tween 80、Pl uronic F68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えばグリ セロール、ポリエチレングリコール)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メ タ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えばチメロサール、ベンジルアルコール、 パラベン)、賦形剤または等張化剤(例えばラクトース、マンニトール)を配合 した製剤が含まれる。また、蛋白質に対するポリエチレングリコールのような重 合体との共有結合、金属イオンとの錯体化、あるいはポリ乳酸、ポリグリコール 酸、ヒドロゲルなどのような重合化合物の粒状製剤中またはその表面上への、あ るいはリポソーム、ミクロエマルジョン、ミセル、単層または多層小胞、赤血球 ゴースト、またはスフェロプラスト中への当該物質の取り込みを包含する。この ような組成物は、TPOの物理的状態、溶解性、安定性、in vivo放出速度、in vivoクリアランスに影響を及ぼすと思われるので、組成物の選択は、TPO活性 を有する蛋白質の物理的および化学的特性による。さらに、重合体(例えばポロ キサマーまたはポロキサミン)と、組織特異的受容体、配位子または抗原に対す る抗体に結合するか、あるいは組織特異的受容体の配位子に結合するTPOとで 被覆される粒状組成物も本発明に包含される。本発明の組成物の別の剤形として は、非経口、経肺、経鼻、および経口を含めた種々の投与経路のた め、粒状形態、保護被膜、プロテアーゼ阻害剤、または吸収促進剤を配合する。 本発明のタンパク質を含有する医薬組成物は、(TPOタンパク質として)通 常0.05μg/kg体重〜1mg/kg体重を、病状、性別及び投与経路等に 応じて、一日数回程度投与することができる。 本発明のタンパク質を含有する医薬組成物は、活性成分として後述のM−07 eアッセイにおける相対活性量通常25,000〜500,000,000/kg体重を、病状、性別 及び投与経路等に応じて、一日一回〜数回、1週間に1〜7日間程度投与するこ とができる。 本発明者らは、ヒトTPOのC末端部位に関して、配列番号6に示されるアミ ノ酸配列中C末端から152位までのアミノ酸残基が欠損する場合でさえTPO 活性が保持されること、またそのN末端部位に関して、該アミノ酸配列中N末端 から6位までのアミノ酸残基が欠損する場合でさえTPO活性が保持されること を確認している。 したがって、配列番号6の7〜151アミノ酸配列を含みかつ他の部分に改変 (置換、欠失、挿入又は付加)を有する TPO活性含有タンパク質もまた、本発明の有効成分として好適に使用しうる。 より好適なTPO誘導体は配列番号6の1〜163アミノ酸配列をもつものであ る。 更に本発明は、本発明のタンパク質に加えてEPO、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、IL- 1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、 IL-13、LIF、SCFのような因子の1つ以上を付加的造血因子として含有する組成 物を包含する。 本発明のタンパク質は、単独あるいは他の付加的造血因子との組み合わせても 、多数の血小板減少症の治療に有用である。他の付加的造血因子としては、EPO 、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、 IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、LIF、SCFを挙げることができる。 血小板障害、例えば、血小板産生障害や血小板の寿命短縮(血小板破壊の亢進 、あるいは血小板消費の亢進)による血小板減少を特徴とし、本発明のタンパク 質で治療可能な多数の疾患が存在する。例えば、先天性のファンコニ貧血、化学 療法や放射線療法に伴う再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性骨 髄性白血病、または骨髄移植のような骨髄形成不全による血小板減少症などが挙 げられ、このような患者の血小板の回復を促進するために用いることができる。 また、TPO産生異常による血小板減少症にも有用である。血小板や巨核球の寿 命短縮による血小板減少症としては例えば、特発性血小板減少性紫斑病、再生不 良性貧血、後天性免疫不全症候群(AIDS)、播種性血管内凝固症候群、血栓性血 小板減少症などがあり、このような患者の血小板回復促進にも有用である。更に 、外科手術前にTPOを投与して自分の血小板を増加させ、その血小板を自分の 手術時に輸血用血小板として用いる(自己血小板輸血)への用途としても有用で ある。 さらに本発明のタンパク質の別の用途は、例えば他の化学薬品または医薬品、 または治療的措置による一過性の血小板の欠損または損傷によってもたらされた 障害の処置である。TPOは、そのような患者で新しい“無傷の”血小板の放出 を促進するのに用いることができる。 本発明はさらにTPOに特異的に結合する抗体、およびそれを得るための抗原 を提供する。本発明のタンパク質または抗原決定基を有する該タンパク質の部分 断片が抗原として使い得る。そのような抗体は、モノクローナルおよびポリクロ ーナル抗体の双方、および既知の方法によって作製したキメラ抗体、即ち“組換 え”抗体などを含む。 抗TPO抗体を調製するためには、ヒトTPO自体を抗原として使用するか、 又はヒトTPOの部分ペプチドを抗原として使用することができる。そのような ペプチド抗原に対する抗体を利用する場合、エピトープは該抗原領域を特定する ことによって規定することができる。一方、抗原タンパク質(TPO)自体に対 する抗体を利用する場合、抗原領域は該抗原のエピトープを分析することによっ て明らかにすることができる。このような場合、明らかにされたエピトープを有 するこれらの抗体の各々を用いて、付加糖鎖の種類、ペプチド鎖の長さ等のよう な性質の異なる種種のTPO類を分画、検出、定量及び精製することができる。 このように選択されたアミノ酸配列を有するTPOペプチドを合成し、適当な 担体蛋白質(例えば、アルブミン、KLH (key hole limpethemocyanin)などと共有結合して 免疫反応性抗原を調製するか、あるいはTam(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85 ,5409-5413,1988)の方法によるMultiple Antigen Pep tide(MAP)型のペプチドを合成しこれを抗原として、ウサギ、マウス、 ラット、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ハムスター、ウマ、モルモットなど一般に抗 体を作らせるために利用される哺乳動物、鳥類などにアジュバンドなどとともに 投与する。これらの動物より抗血清、細胞を回収し、ポリクローナル抗体を得る ことができる。ペプチドを抗原とした場合では、抗原領域を特定することによっ て、エピトープは限定することができる。この場合、分子量の異なる様々なTP O分子の領域を免疫学的手法により選別、同定することができる。一例を挙げれ ば、ペプチド部分の欠損領域などを選別、同定することができる。さらには抗体 を発現している細胞から抗体遺伝子、またはその一部の遺伝子をクローニングす ることにより、遺伝子工学的に発現させた抗体分子を得ることもできる。 種々の抗原決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を一般に含有するポリク ローナル抗体に対比して、モノクローナル抗 体は抗原上の単一抗原決定基に対する抗体である。TPOに対する特異抗体は、 抗原‐抗体反応を用いる診断および分析的アッセイ法の選択性および特異性を改 良したり、TPOを分離・精製するのに有用である。さらに、それらは、血清か らTPOを中和または除去するのに用いられる。モノクローナル抗体はまた、た とえば全血の血清中のTPOの検出及び定量に有用である。 本発明の抗ヒトTPO抗体は、ヒトTPOの精製・単離のためのアフィニティ ークロマトグラフィー法におけるリガンドとして用いることが可能である。この アフィニティークロマトグラフィーにおいて有用な抗体の固定化は各種酵素の固 定化方法に準じて行うことができ、例えばCNBr活性化セファロース−4B( Pharmacia Fine Chemicals社製)などの担体を使用する方法が利用できる。この 固定化抗ヒトTPO抗体を用いて実際にヒトTPOを精製するためには、これを カラムに充填後、これにヒトTPOを含む溶液を通塔する。この操作で大量のヒ トTPOがカラム中の担体に吸着される。溶媒として、例えば、グリシン−HC l緩衝液(pH2.5)、塩化ナトリウム溶液、プロピオン酸、ジオキサン、エ チレングリコール、カオトロピ ック塩、塩酸グアニジンまたは尿素などで溶出することにより、吸着したヒトT POが高純度で溶出する。 本発明の抗体は、免疫化学的定量アッセイ、特に固相サンドイッチ法が採用さ れる酵素免疫アッセイによってヒトTPOを定量するために使用可能である。 モノクローナル抗体の利点は、他の任意の免疫グロブリン分子を含有しない培 地中でハイブリドーマ細胞によって産生されうる点に存する。モノクローナル抗 体は、ハイブリドーマ細胞の培養上清又はハイブリドーマ細胞の腹腔内投与によ って誘導されるマウス腹水から調製される。KohlerとMilstein(Eur.J.Immuno l.6:511-519,1976)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術を広く用い て、多数の特異抗原に対するモノクローナル抗体を高レベルで保有するハイブリ ドーマ細胞系を作製することができる。 こうして得られた抗体含有材料(抗血清等)から目的の抗体を精製により単離 するために、一般にタンパク質の精製に用いる1つ以上の工程(プロテインAア フィニティークロマトグラフィー、プロテインGアフィニティークロマトグラフ ィー、Avidゲルクロマトグラフィー、抗イムノグロブリン固定化 ゲルクロマトグラフィーなどのアフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交 換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、レクチンアフィニテ ィークロマトグラフィー、色素吸着クロマトグラフィー、疎水相互クロマトグラ フィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ハイドロキシ ルアパタイトクロマトグラフィー、フルオロアパタイトクロマトグラフィー、金 属キレーティングクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、分取電気泳 動法、および等電点電気泳動法など)の一つ以上を組み合わせた方法がある。ま た、これらの方法以外にも、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトT POタンパク質そのものか、あるいは抗原となった領域を含む、あるいはその一 部の領域を含むペプチド、即ち目的抗体を認識可能な分子を化学的に結合させた ゲル担体あるいは膜を調製し、抗体を含む材料をこれに添加することにより、目 的の抗体を吸着させ、これを適当な条件にて溶離、回収する方法、即ち抗原アフ ィニティ精製を利用することもできる。 本発明はまた、TPOポリペプチドをコードする内因性DNA配列を用いて大 量のポリペプチド生成物の製造を可能に する。たとえば、in vitro又はex vivo相同組換え手法を用いて 宿主細胞を形質転換してポリペプチドの発現もしくは増強発現用に供することが できる。好適な宿主細胞にはヒト細胞(例えば、肝臓、骨髄等)が含まれるが、 結果的にTPOポリペプチド発現が達成又は増強されるように、細胞ゲノム内の 標的領域に相同なフランキング配列を用いて前記細胞中にプロモーター又はエン ハンサー配列が挿入される。例えば、U.S.Letters Patent 5,272,071、PCT公開WO 90/14092、WO 91/066 66及びWO 91/09955を参照のこと。 本発明はまた、上記TPOポリペプチドの製法を提供するが、この方法は、適 切な宿主中で本発明のDNAによってコードされるポリペプチドを発現する工程 と前記TPOポリペプチドを単離する工程を包含する。発現されたTPOポリペ プチドがMet-2−Lys-1ポリペプチドである場合、該方法はさらに前記単離 TPOポリペプチドからMet-2−Lys-1を切断する工程を含んでもよい。 本発明はさらにまた、[Gly-1]構造をもつTPOポリペプチドの製法を提 供するが、この方法は、適切な宿主細胞中に、 グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)コーディング配列とTPOポ リペプチドコーディング配列がトロンビン認識ポリペプチドコーディング配列を 介して分断されている、TPOポリペプチドコーディング配列の5′にGSTポ リペプチドコーディング配列を結合して含むDNAを導入する工程、GST−T PO発現産物を単離する工程、及びトロンビンで発現ポリペプチドを処理してG STアミノ酸配列を除去する工程を包含する。これによって得られるTPOポリ ペプチドは[Gly-1]構造を有する。 以下、本発明を更に詳細に説明する。 (A)ラットTPOの精製、ラット精製TPOの部分アミノ酸配列の分析及びラ ット精製TPOの生物学的特性の分析 本発明者らは、まずラットCFU-MKの増殖・分化促進活性を有するタンパク質( ラットTPO)の精製を試みた。本精製では、種々の天然の供給源の選択、更に は、クロマトグラフィー担体の選択、分離手段の選択など、精製の組立について 数々の試行錯誤を繰り返した。その結果、本発明者らは、X線、あるいはγ線照 射により誘導した血小板減少症ラットの血漿より、後述の〈参考例〉に記載した ラットCFU-MKアッセイに基づくTPO 活性を指標として、TPO活性を有するタンパク質を精製し、その部分アミノ酸 配列を決定した〈実施例1〜2〉。 また、その血漿由来ラットTPOの生物学的特性について試験した〈実施例3 〉。 なお、精製から、精製されたラットTPOの部分アミノ酸配列の決定までの概 要は以下の通りである。 (i) X線、あるいはγ線照射による血小板減少症ラット約1100匹分の血漿 を集め、Sephadex G-25クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー (Q-Sepharose FF)、更にレクチンクロマトグラフィー(WGA-Agarose)のステ ップまで進め、WGA-Agarose吸着TPO活性画分を得た。 (ii) 次に、このWGA-Agarose吸着TPO活性画分を色素吸着アフィニティ ークロマトグラフィー(TSK AF-BLUE 650MH)、疎水相互作用クロマトグラフィ ー(Phenyl Sepharose 6 FF/LS)、ゲル濾過クロマトグラフィー(Sephacryl S- 200 HR)までの処理を実施した。このSephacryl S-200 HRにおいては、TPO活 性は4つのピーク(分子量の大きいものから、F1、F2、F3、F4)に分か れたので、TPO活性画分F2とF3とをそれぞれ濃縮し、高分子TPO標品F 2、低分子TPO標 品F3として、それぞれ個別に次の精製ステップに進めた。 (iii) 低分子TPO標品F3を分取逆相クロマトグラフィー(YMC-Pack PR OTEIN-RP)、逆相クロマトグラフィー(YMC-Pack CN-AP)、更に逆相クロマトグ ラフィー(Capcell Pack C1)で分離した。得られたTPO活性画分を、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、電気泳動ゲルからTPO活性の抽出を 行ったところ、非還元下で見かけ上分子量約17000〜19000のバンドにTPO活性 が存在することが確認できた。 (iv) そこで、全てのTPO活性画分を非還元下でSDSゲル電気泳動にか け、PVDF膜に転写した。次いで、PVDF膜上タンパク質の系統的な限定酵素分解に よるペプチド断片化を実施し、ラットTPOタンパク質の部分アミノ酸配列を決 定することができた。2つのペプチド断片のアミノ酸配列情報を基にラットTP Oの遺伝子クローニングを実施した。 (v) 一方、Sephacryl S-200 HRからの高分子TPO標品F2についても、 低分子TPO標品F3と同様に精製を進め、最終ステップの逆相クロマトグラフ ィー(Capcell Pack C1)で得られたTPO活性画分をSDSゲル電気泳動にか け、TPO活性の抽出を行った。活性を調べてみると、F3由来のTP Oと同じく、非還元下で見かけ上分子量約17000〜22000のバンドにTPO活性が 存在することが確認できた。 (B)ラットTPO産生細胞の特定化、mRNAの調製及びラットcDNAライブラリー の構築 精製したラットTPOは血漿由来であるため、cDNAクローニングのためには、 mRNAの供給源となる臓器あるいは細胞を選抜する必要があった。そこでラット血 漿由来TPOの生化学的性質と生物学的性質に基づいて、種々の臓器、あるいは 細胞の培養上清中のTPO活性をスクリーニングした。その結果、ラット肝臓細 胞由来の細胞株であるMcA-RH8994細胞、HTC細胞、H4-II-E細胞の培養上清中、並 びにラットの初代肝臓細胞の培養上清中にもラット血漿由来TPOとほぼ同等の TPO活性を見いだした〈実施例4〉。 一方、発現ベクターpEF18Sを、2種類の発現ベクターpME18S並び にpEFBOSを組み合わせて構築した〈実施例5〉。このベクターの構築によ りインサートの組み込みに使用できる多種類のクローニング部位を持つ、発現効 率の高いベクターを用いてcDNAをクローニングすることが容易となった。 cDNAライブラリーの構築には上記の発現ベクターの他にpUC系やpBR系の プラスミドベクター、λ系のファージベクター等が主に使用される。 本発明者らは、McA-RH8994細胞を培養し、グアニジンチオシアナート溶液を加 えてホモジナイズ後、CsCl密度勾配遠心法により全RNAを得た〈実施例6〉。 RNAの調製は熱フェノール法や酸性グアニジンフェノールクロロホルム法等で も行なうことが出来る。 この全RNAからオリゴdT固定化ラテックス粒子によりポリ (A)+RNAを精製した 後、制限酵素NotI切断配列を付加したオリゴdTをプライマーとして逆転写酵素に より1本鎖cDNAを合成し、RNase H およびE.coli DNAポリメラーゼIを用いて、 2本鎖cDNAを得た。得られた2本鎖のcDNAにEcoRIリンカーを付加し、これを実 施例5で構築したcDNA発現ベクターpEF18SをNotIとEcoRIで切断したもの とつなぎ合わせて、コンピテントな大腸菌DH5株を形質転換させ、cDNAライブラ リーを構築した〈実施例7〉。 (C)PCR法によるラットTPOcDNA断片の取得(クローニング) ラット血漿より精製したラットTPOの部分アミノ酸配列をもとに、その配列 をコードすると考えられるDNA配列を予測し、ポリメラーゼチェインリアクショ ン(PCR)に使用する縮重プライマーを合成した。使用するプライマーは、本 発明で用いたプライマー以外の位置のアミノ酸配列に基づくものであってもよい 。また、イノシンを使わず縮重度の高いプライマーを用いることも出来る。更に 、ラットにおいて使用頻度の高いコドンを使用して縮重度を減らしたプライマー を設計することも出来る(WadaらNucleic Acids Res.、18、2367〜2411、1990 参照)。 先に作製したcDNAライブラリー全体よりプラスミドDNAを抽出し、このDNAを鋳 型としてPCRを実施したところ約330bpのバンドが検出され、ヌクレオチ ド基配列を決定したところ、ラットTPOの遺伝子の一部をコードするDNA断片 (A1断片)であることが分かった〈実施例8〉。 (D)PCR法によるラットTPOcDNAのスクリーニング、ラットTPOcDNAの シークエンス及びTPO活性の確認 先に構築したcDNAライブラリーを約1万クローンずつのプールに分け、それら のうち100プールからプラスミドDNAを抽 出した。これらDNAを鋳型とし、A1断片のヌクレオチド配列をもとに新たに合 成したプライマーを使用してPCRを行なったところ、100プール中3プール に特異的と考えられるバンドが検出された。そこで、これらのうち1プールを選 び、このプールをさらに約900クローンずつのサブプールに分け、それらのう ち100プールについて同様のPCRを行なったところ、3サブプールでバンド が検出された。これらのうち1プールを選択し、更に、40クローンずつのサブ プールに分け、最終的には1クローンづつ同様のPCRによる選別を行なった結 果、ラットTPO遺伝子cDNA断片を担持したプラスミドpEF18S‐A2 αを持つクローンの単離に成功した〈実施例9〜10〉。 このcDNA断片のヌクレオチド配列を決定したところ、ラット血漿中より精 製し部分的に決定したアミノ酸配列をコードしていることが明らかとなり、ラッ トTPO遺伝子であると考えられた〈実施例10〉。 上記のようにして得られたクローンよりプラスミドDNAを精製し、COS1細 胞にトランスフェクションしたところ、その培養上清中にTPO活性を検出する ことができた。この結果、 得られたpEF18S‐A2αはラットTPOをコードしているcDNAを担持して いることが確認できた〈実施例11〉。 (E)ラット各種組織でのTPOmRNAの検出 ラット体内におけるTPOmRNAの発現組織をPCRによって解析し、脳、肝臓 、小腸、並びに腎臓において特異的な発現を検出した〈実施例12〉。 (F)ヒトcDNAライブラリーの構築 実施例4および12の結果より、ヒトTPOcDNAクローニングのための出 発組織として肝臓を選択した。そこで、市販の正常ヒト肝臓由来のmRNAより、cD NAライブラリーを構築した。ベクターにはラットのライブラリーと同様にpEF 18Sを用い、ラットの場合と同じ操作でcDNAを合成し制限酵素NotIとEcoRI部 位を利用した方向性を持ったライブラリーとした。大腸菌株DH5に導入し作製 したライブラリーのクローンの数は約120万個であった〈実施例13〉。 (G)PCR法によるヒトTPOcDNA断片の取得(クローニング) pEF18S‐A2αに担持されたラットTPOをコードするcDNAのヌク レオチド配列をもとに、数種類のPCR用プ ライマーを合成した。市販の正常ヒト肝臓由来のmRNAよりcDNAを合成し、これら のプライマーを用いてPCRを実施したところ、620bp前後のバンドが観察 された。ヌクレオチド配列を決定したところ、ラットTPOと約86%の相同性 を有するDNA断片であることが明らかとなり、ヒトTPOをコードする遺伝子の 一部であると考えられた〈実施例14〉。 (H)PCR法によるヒトTPOcDNAのスクリーニング、ヒトTPOcDNAのシー クエンス及びTPO活性の確認 先に調製したヒトcDNAライブラリーを増幅し、約10万クローンずつのプール に分割し、90個のプールからプラスミドを抽出した。これらのDNAを鋳型とし 、実施例14で得られたヒトTPO断片のヌクレオチド配列を基に新たに合成し たプライマーを用いてPCRを行なったところ、3個のプールでバンドが観察さ れた。これらより1個のプールを選択し、5000個のクローンを1プールとす るサブプールに分け、それらのうちの90プールよりプラスミドDNAを精製した 。これらを鋳型として同様のPCRを実施したところ、5個のサブプールでバン ドが検出された。そこで、これらより1プールを選び250個のクローンを1プ ールとするサブプールに更に分割し、それら のうちの90プールよりプラスミドDNAを精製し再度PCRによる検出を行なっ たところ、3個のプールでバンドが観察された。そこで、このうち1プールを選 び、30個のクローンを1プールとするサブプールに分割し、それらのうちの9 0プールからプラスミドDNAを精製しPCRを実施した結果、3個のプールでバ ンドが観察された。これらのうち1プールより90個のコロニーを拾い、プラス ミドDNAを調製し、PCRを実施することで最終的にクローンHL34を得た〈 実施例15〉。 このクローンが持っプラスミドDNAのヌクレオチド配列を決定したところ、 ラットTPOのヌクレオチド配列と約84%程度の相同性を持つcDNAを担持 していることが明らかとなった〈実施例16〉。 このクローンのプラスミドDNAを精製し、COS1細胞にトランスフェクショ ンしたところ、培養上清中にTPO活性が検出され、このクローンが持つプラス ミドDNAはヒトTPOをコードする遺伝子cDNA断片を担持していることが 確認された〈実施例17〉。 しかしながら、このcDNA断片は終止コドンが無く、また、ポリA尾部様配 列を3’端に持っており、これはクローニング の際の人工産物であると考えられた。そこで、ポリA尾部様配列直前までのアミ ノ酸をコードする発現ベクターを構築し、COS1細胞での発現を行なったとこ ろ、培養上清中にTPO活性が検出された〈実施例18〉。 完全長cDNAの構造を解析するためにPCRを利用しヒトTPO3’末端側 のDNA断片を得た。 この断片のヌクレオチド配列を決定したところ、実施例15で得たクローンH L34のcDNAとオーバーラップすることがわかり、オープンリーディングフ レームも延び全体で353個のアミノ酸からなる蛋白質をコードすることが予想 された。すなわちヒトTPOタンパク質は21個のシグナル配列を含む353個 のアミノ酸からなることが示唆された〈実施例19〉。 ヒトTPOのcDNAクローニングは、上記のようなクローニング法以外にも、p UC系やpBR系のプラスミドベクター、λ系のファージベクター等を使用して 構築したライブラリーを利用し、ラットTPOcDNA断片をプローブとしたコロニ ーハイブリダイゼイションあるいはプラークハイブリダイゼイションによっても 行なうことができる。縮重プローブの設計にあたっては、縮重の度合いを減少さ せるためにイノシンを使うこともで きる。TPO活性を特異的に、また感度良く検出できるアッセイ法が利用できる 場合には、本発明で用いた様な発現ライブラリーを使用した発現クローニングも 行なうことができる。 しかしながら、実施例15で記載するように正常ヒト肝臓においてはヒトTP OをコードするRNAの含量は著しく低いと考えられるため(この実施例から算 出される含量は300万個に1個の割合であった)、合成したオリゴヌクレオチ ドプローブやラットやヒトTPOのcDNA断片をプローブとして用いるハイブリダ イゼイションによるスクリーニング方法では、処理するクローンやプラークの数 が膨大なものになり、また、ハイブリダイゼイションの感度や特異性がPCR法 に及ばないため困難を極めることが予想される。実際に本発明者らも実施例13 において作製した正常ヒト肝臓cDNAライブラリー200万クローンについて、ラ ットTPOcDNA断片をプローブとしたコロニーハイブリダイゼイションを実施し たが、ヒトTPOcDNAクローンを得ることは出来なかった。 (I)ヒト正常肝臓由来TPOcDNAライブラリーの再構築 実施例15で得られたクローンHL34は不完全なcDNAを含むクローンで あると考えられたため、完全長のヒトTPO cDNAを得る目的で、市販の正常ヒト肝臓由来のポリ(A)+RNAを用いてヒトTP OcDNAライブラリー(hTPO−F1)を構築し直した。大腸菌株DH5に導入 し作製したライブラリーのクローンの数は約100万個であった。〈実施例20 〉 (J)ヒトTPOcDNAのスクリーニング、ヒトTPOcDNAのシークエンス及び発 現、並びにTPO活性の確認 実施例14で得られた部分長のヒトTPOcDNAの塩基配列(配列番号3) 、および実施例19において推定された完全長のヒトTPOcDNAの塩基配列 (配列番号196)をもとに、PCR用プライマーを合成した。 実施例20で構築したcDNAライブラリー(hTPO−F1)を3つのプール( #1〜3)に分割し、それぞれのプールよりプラスミドDNAを調製し、これら のDNAを鋳型として合成したプライマーを用いてPCRを実施した。#3のプ ール由来のDNAを用いた場合に予想される大きさのDNAが増幅されたため、 #3のプールを15000個づつのサブプールに分割し、先の合成プライマーでPC Rを実施したところ、90プール中6プールで予想される大きさのDNAが増幅 された。これらより1個のプールを選択し、1000個のクローンを1プールと するサブプールに分け、プラスミドDNAを調製しPCRを行ったが、DNAの 増幅は観察されなかった。これは、求めるクローンの増殖が他のクローンより遅 いためにプラスミドDNAの回収率が悪くなったことが原因と考えられた。そこ で、#3のプールに戻り、LBプレート1枚あたり4100個のコロニーとなるよう にクローンをまき、100枚のプレート、並びにそれぞれのレプリカプレートを 作製した。プレートのコロニーから抽出したDNAについて先と同様にPCRを 行ったところ、100プール中1プールでバンドの増幅が観察された。 このプールのプレートより2枚のレプリカフィルターを作製し、放射標識プロ ーブ(プラスミドpEF18S−HL34のEcoRI/BamHI断片)を用いたコロ ニーハイブリダイゼーションを行った。その結果、陽性シグナルが1個観察され たため、元のプレートよりコロニーを拾い、LBプレートにまき直して得られた コロニー50個よりプラスミドDNAを調製し、PCRを実施することにより、 最終的にクローンpHTF1を得た。〈実施例21〉このようにDNAクローン のスクリーニングにおいては、ハイブリダイゼイション、PCR、発現クローニ ング等が主に用いられるが、これらを適宜組み合わせてス クリーニングの効率、感度を上昇させる、あるいは、労力を低減させることがで きる。ここで得られたクローンpHTF1のヌクレオチド配列を決定したところ 、オープンリーディングフレームが存在し、このオープンリーディングフレーム にコードされると考えられるタンパク質のアミノ酸配列は、ヒトTPOの推定ア ミノ酸配列(配列番号6)と完全に一致した。ヌクレオチド配列は推定されたも の(配列番号196)とは3箇所で異なっていたが、アミノ酸の変換は起こさな かった。これによりヒトTPOタンパク質は21残基のシグナル配列を含む35 3個のアミノ酸からなることが確認できた。上記のようにして得られたクローン pHTF1よりプラスミドDNAを調製し、COS1細胞にトランスフェクショ ンしたところ、その培養上清中にTPO活性を検出することができた。〈実施例 23〉 (K)プラークハイブリダイゼーションによるヒトTPO染色体DNAのスクリー ニング、ヒトTPO染色体DNAのシークエンス及び発現、並びにTPO活性の確 東北大学遺伝子実験施設 山本徳男教授より頂いたヒトゲノミックライブラリ ーより、NZYMプレート1枚あたり3万個となるようにファージをまき、18枚の プレート、並びにそれぞれ のプレートから2枚のレプリカフィルターを作製した。クローンpHTF1に含 まれるヒトTPOcDNA断片(配列番号7の塩基配列番号178-1025)をPCR で増幅後精製し、32P標識したものをプローブとして用いて、プラークハイブリ ダイゼーションを行った。その結果、13個の陽性シグナルが検出されたため、 それぞれ元のプレートよりプラークを拾い、NZYMプレート1枚あたり1000プラー クとなるようにまき直して、それぞれのプレートから作製した2枚のレプリカフ ィルターについて前記と同様の条件下で再度プラークハイブリダイゼーションを 実施した。その結果、13組すべてのフィルターで陽性シグナルが検出されたた め、プラークを単離し、ファージDNAを調製し、13クローンそれぞれについ てヒトTPOcDNAのコーディング領域を含んでいるかどうかをPCRにより チェックした。 13クローン中5クローンは、cDNAから予想されるコーディング領域を全 て含んでいると考えられたため、1クローン(λHGT1)を選択し、Southern blot解析(用いたプローブは先と同じ)を行った。制限酵素HindIIIで消化した 場合に約10kbpの単一バンドが観察されたので、クローンλHGT1のDN Aを制限酵素HindIIIで消化後アガロースゲ ルで泳動し、10kbpのバンドを切り出して精製し、クローニングベクターp UC13にサブクローニングし、最終的にクローンpHGT1を得た。〈実施例 24〉 このクローンのヌクレオチド配列を決定したところ、担持されている染色体D NAは、実施例19において推定されたヒトTPOタンパク質のコーディング領 域をすべて含み、その領域に関してはヌクレオチド配列はその推定されたヌクレ オチド配列と完全に一致した(配列番号196)。 また、エクソンに相当する領域は4つのイントロンで分断されており、実施例 21で取得したクローンpHTF1に担持されている完全長のヒトTPOcDN Aのヌクレオチド配列とは異なることが判明した(配列番号7)。 最終的に選択された5クローンのうち残りの4クローンについてもヌクレオチ ド配列の決定を行ったところ、2箇所はクローンpHGT1と一致し、残りの2 クローンがpHGT1と一致するがクローンpHTF1で観察されるように3′ 非コーディング領域内に異なる1個のヌクレオチドを有していた〈実施例25〉 上記のようにして得られたプラスミドクローンpHGT1のEcoRI断片を発現 ベクターpEF18Sにつなぎ、ヒトTPO 発現プラスミドpEFHGTEを調製し、COS1細胞にトランスフェクション したところ、その培養上清中にTPO活性を検出することができた。〈実施例2 6〉 (L)ヒトTPO欠失誘導体の作製、COS1細胞での発現及びTPO活性確認 実施例18並びに22の結果よりヒトTPOタンパク質はそのカルボキシ末端 側の除去後でさえも生物活性を示すことが明らかになった。そこでヒトTPOタ ンパク質の活性発現に必要な領域を解析する目的で欠失誘導体実験を実施した。 実施例18で得たクローンpHT1−231のプラスミドDNAを鋳型とし、合 成したプライマーでPCRを行うことにより一連の発現プラスミドを調製した。 ヒトTPOタンパク質のC末端側を欠失させた発現プラスミド、即ち、アミノ 酸1−211位、1−191位、1−171位、および1−163位をコードす る欠失誘導体のプラスミドDNAを得た。得られたそれぞれのプラスミドDNA をCOS1細胞へトランスフェクションしたところ、いずれの培養上清中におい てもTPO活性が検出された。〈実施例27〉 TPO活性を担う領域をさらに詳細に検討するために、C末 側より151番目のアミノ酸まで順次欠失させた誘導体並びに、N末側6、7、 12番目のアミノ酸まで欠失させた誘導体を作製し、COS1細胞で発現させ活 性を検出したところ、N末側では7番目のアミノ酸まで欠失させた場合に、C末 側では151番目のアミノ酸まで欠失させた場合に活性が検出できなくなった。 〈実施例28、29〉 このように得られたcDNAをもとに誘導体(欠失、置換、挿入、付加等)を 作製することにより、本来のタンパク質の活性を担う改変型タンパク質を得るこ とができる。この場合に用いる手法としては、PCR法、部位特異的突然変異誘 発法、化学合成法等がある。 (M)ヒトTPOcDNAのCHO細胞での発現及びTPOの精製 配列番号6に示されるヒトTPOの推定アミノ酸配列をコードするcDNAを 動物細胞中で発現可能な発現プラスミド、pHTP1を構築した。〈実施例30 〉 このpHTP1中のTPOcDNA領域を用い、CHO細胞発現用ベクターp DEF202−hTPO−P1を構築した。 〈実施例31〉 このベクターをCHO細胞にトランスフェクションし選択を行った結果、染色 体中にヒトTPOを保有する発現ベクターが組み込まれた形質転換細胞が得られ た。〈実施例32〉 実施例32において、ヒトTPO発現プラスミドpDEF202‐hTPO‐ P1をCHO細胞にトランスフェクションして得られたヒトTPO産生CHO細 胞株(CHO28-30細胞、25nM MTX耐性)を大量培養した〈実施例55〉。 その培養上清100LからヒトTPOを精製した。〈実施例56〉 また、別法により実施例55で得られた培養上清からTPOを精製した。〈実 施例57〉 (N)ヒトTPOcDNAのX63.6.5.3.細胞での発現及び活性確認 実施例30で調製されたプラスミド、pBLTENのTPOcDNA領域を用 い、X63.6.5.3細胞用発現ベクター、BMCGSneo−hTPO−P 1を構築した。〈実施例33〉 このベクターをX63.6.5.3細胞にトランスフェクションしたところ、 染色体中にヒトTPOをコードする発現ベク ターを組み込んだ、形質転換細胞が得られた。この細胞を培養したところ、培養 上清中にTPO活性が検出された。〈実施例34〉 (O)ヒトTPOのCOS1細胞での大量発現並びにその精製、分子量測定及び 生物学的特性 実施例30で調製された発現ベクター、pHTP1をCOS1細胞にトランス フェクションし発現させた培養上清を大量(合計約401)に調製した。〈実施 例35〉 実施例35の方法で調製された発現ベクター、pHTP1由来TPOを含むC OS1細胞無血清培養上清約71から、TPOの精製を行った。疎水相互作用ク ロマトグラフィー、陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、WGAカラムクロ マトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーの各段階を経て、高活性のTP Oを得ることができた。〈実施例36〉 このようにCOS1細胞培養上清より部分精製されたTPOについて、分子量 測定、および生物学的特性の分析を行った。〈実施例37、38〉 (P)ヒトTPOの大腸菌における発現 グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼとヒトTPO(アミ ノ酸1−174位)の融合タンパク質(「GST−TPO(1-174)」)の大腸 菌発現用ベクター、pGEX−2T/hT(1-174)を構築した。この際のヒト TPOcDNAのヌクレオチド配列の一部(5’側およそ半分の領域)は大腸菌 優先コドンに変換した。〈実施例39〉 GST−TP0(1-174)を大腸菌で発現させ、菌体を破砕後、沈殿画分に含 まれるGST−TPO(1-174)の可溶化を行った。次に、TPOの巻き戻し( リフォールディング)条件の検討、精製条件の検討(グルタチオンアフィニティ ーカラム、陽イオン交換カラム等)、トロンビン消化によるGST蛋白質領域の 切断などの段階を組み合わせた結果、設計通りのTPOのアミノ酸配列を含む蛋 白質が部分精製できた。この蛋白質はラットCFU−MKアッセイ系にてTPO 活性を有することが確認できた。〈実施例40、41〉 また、ヒトTPO(アミノ酸1−163位)の1位のSer残基をAla残基 に、かつ3位のAla残基をVal残基に変換し、さらに−1位にLys残基、 −2位にMet残基を付加した変異型ヒトTPOタンパク質(「h6T(1-163 )」と称す)の大腸菌発現用ベクター、pCFM536/h6T(1- 163)を構築した。このベクターが担持するヒトTPOcDNAによってコード されるアミノ酸(1-163)のヌクレオチド配列は全て大腸菌での優先コドンに変 換した。〈実施例42〉 h6T(1-163)を大腸菌で発現させ、菌体を破砕後、沈殿画分に含まれるh 6T(1-163)の可溶化を検討、リフォールディング条件の検討を実施した結果 、設計通りのTPOのアミノ酸配列を含むタンパク質が部分精製できた。このタ ンパク質はラットCFU−MKアッセイ系にてTPO活性を有することが確認で きた。〈実施例43、44〉 さらに、ヒトTPOタンパク質(アミノ酸1−163)の−1位にLys残基 、−2位にMet残基を付加した変異型ヒトTPOタンパク質(「hMKT(1- 163)」と称す)の大腸菌発現用ベクターpCFM536/hMKT(1-163)を 構築した。hMKT(1-163)を実施例43と同様に大腸菌で発現させ、得られ た発現タンパク質をSDS−PAGE後PVDF膜に転写し、N末端アミノ酸配 列分析を行った結果、設計通りのアミノ酸配列を含むことが確認できた。〈実施 例52〉 また、ヒトTPO(アミノ酸1−332位)の−1位にLys残基、−2位に Met残基を付加した変異型ヒトTPOタン パク質(「hMKT(1-332)」と称す)の大腸菌発現用ベクターpCFM53 6/hMKT(1-332)を構築した。hMKT(1-332)を実施例42と同様に大 腸菌で発現させ、後述の実施例45で作製した抗ヒトTPOペプチド抗体を用い たウェスタンブロッティングにより発現を確認した。〈実施例66〉 (Q)抗TPOペプチド抗体の作製及び抗TPOペプチド抗体カラムの調製 実施例10にて判明されているラットTPOのアミノ酸配列のうち、3箇所の 部分領域に相当するペプチドを合成し、ウサギポリクローナル抗TPOペプチド 抗体を作製した。これらの抗体がラット及びヒトTPOを認識することを確認し た。また、配列番号6(もしくは配列番号7)に示されるヒトTPOのアミノ酸 配列のうち、6箇所の部分領域に相当するペプチドを合成し、ウサギポリクロナ ール抗TPOペプチド抗体を作製した。これらの抗体がヒトTPOを認識するこ とを確認した。〈実施例45〉 TPOに対して結合親和性を持つような分子、即ち、抗TPO抗体、TPO受 容体などをカラム担体に結合させ、アフィニティーカラムクロマトグラフィーに よりTPOを精製する方法 が考えられる。そこでまず実施例45で得られた抗TPOペプチド抗体をゲル担 体に結合させた抗TPO抗体カラムを調製した。〈実施例46〉 (R)COS1細胞で発現させたヒトTPOの抗TPOペプチド抗体カラムを用 いた精製並びにその分子量及び生物学的特性 発現ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクションした培養上清 を材料として部分精製TPOを得て、これを抗TPO抗体カラムにかけた。吸着 画分にTPO活性を有することが確認できたので、これをさらに逆相カラムクロ マトグラフィーにかけ精製し、その分子量と生物学的活性を調べた。〈実施例4 7〉 (S)COS1細胞で発現させたヒトTPOの部分精製標品の活性確認 実施例36で精製されたTPO活性画分、すなわち、発現ベクターpHTP1 をCOS1細胞にトランスフェクションして得られた培養上清由来で、Capcell Pak C1 300Aカラムの段階まで精製されたTPOサンプルの生物学的活性を調べ た結果、生体内において血小板増加作用を有することがわかった。〈実 施例48〉 また、発現ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクションして得 られた、培養上清33Lを出発材料にし、陽イオン交換カラムで得られた粗精製 TPO画分の生物学的活性を調べた結果、生体内において血小板増加作用を有す ることがわかった。〈実施例49〉 (T)ヒトTPO染色体DNAのCHO細胞での発現及び活性確認 CHO細胞でのヒトTPO染色体発現ベクター、pDEF202−ghTPO を構築した。〈実施例50〉 このベクターをCHO細胞に導入したところ、染色体中にヒトTPO染色体D NAを担持する発現ベクターが組み込まれた形質転換細胞が得られた。この細胞 を培養したところ、培養上清中にTPO活性が検出された。〈実施例51〉 (U)大腸菌で発現させた変異型ヒトTPOの部分精製及び活性確認 大腸菌で発現した、ヒトTPOヌクレオチド配列をコードするクローンpCFM53 6/h6T(1-163)由来変異型ヒトTPOについて、塩酸グアニジンとグルタチオンを 用いたリフォールディング操 作を行い、ここで得たh6T(1-163)が、生体内において血小板増加作用を有 することを確認した。〈実施例53〉 大腸菌で発現した、ヒトTPO塩基配列をコードするクローンpCFM536/h6T(1- 163)由来変異型ヒトTPOについて、N‐ラウロイルサルコシンナトリウムと硫 酸銅を用いたリフォールディング操作を行い、さらに陽イオン交換クロマトグラ フィーを用いて精製したh6T(1-163)が、生体内において血小板増加作用を 有することを確認した。〈実施例54〉 また、更に別法を用いて、変異型ヒトTPO、h6T(1-163)のリフォール ディング及び精製を行った。〈実施例60、61〉 (V)ヒトTPOcDNAの昆虫細胞での発現及びTPO活性確認 ヒトTPOの昆虫細胞での発現用組換えウィルスを作製し〈実施例58〉、昆虫 細胞Sf21で発現させ、培養上清中の活性を確認した。〈実施例59〉 (W)ヒトTPO(アミノ酸1−163位)のCHO細胞での発現及び精製 配列番号6に示したヒトTPOのアミノ酸配列のうち、1−1 63位のアミノ酸配列を有するヒトTPOタンパク質(「hTPO163」と称す) のCHO細胞発現用ベクターpDEF202-hTPO163を構築した。発現ベクターp DEF202-hTPO163をCHO細胞にトランスフェクションして得られたhTPO1 63産生CHO細胞株を大量培養し、その培養上清からhTPO163を精製した。 〈実施例62〜65〉 (X)ヒトTPO誘導体の作成 ヒトTPOの25位のArg残基がAsn残基に、231位のGlu残基がLy s残基にそれぞれ置換された誘導体(「N3/TPO」と称す)、および33位 のHis残基がThr残基に置換された誘導体(「O9/TPO」と称す)をコ ードするプラスミドでトランスフェクションしたCOS7細胞培養上清中にTP O活性が検出された。 各誘導体をコードするプラスミドをCOS7細胞中にトランスフェクトした後 、培養した。培養上清中にTPO活性が検出された。〈実施例67〉 h6T(1-163)のアミノ酸の1つを他のアミノ酸で置換した誘導体を、大腸 菌の発現系を用いて調製し、各誘導体につい てTPO活性を見出した。〈実施例94〉 (Y)ヒトTPOの挿入又は欠失誘導体の調製 hTPO163にアミノ酸を挿入した誘導体またはhTPO163のアミノ酸の一部を 欠失させた誘導体をコードするプラスミドでトランスフェクションしたCOS7 細胞培養上清中にTPO活性が検出された。〈実施例68〉 なお、本発明において用いたTPO活性の測定方法(in vitroアッセイ系)を 〈参考例〉として以下に説明する。 (z)抗ヒトTPO抗体の調製と精製 ヒトTPOのペプチド断片を用いてポリクローナル抗体を調製し〈実施例69 〉、次いでウェスターンブロット分析〈実施例70〉及び抗TPO抗体アフィニ ティカラムの作製〈実施例71〉に使用した。 (AA)ヒトTPOのin vivo活性 精製ヒトTPOを血小板減少症を誘導されたマウスに投与し、コントロール群 に対して血小板数の変化をモニターした。〈実施例72〉〜〈実施例79〉 血小板減少症の治療に有用な医薬組成物も記載される。〈実施例80〉〜〈実 施例89〉 (BB)MLP受容体結合作用に基づくTPO活性 Mpl受容体との特異的結合相互作用に基づいてTPO活性を定義するアッセ イ法が提供される。〈実施例90〉〜〈実施例93〉参考例 A.ラット巨核球前駆細胞アッセイ(ラットCFU−MKアッセイ)系(液体培 養系) 巨核球は、エネルギー依存性に細胞外のセロトニン(serotonin)を取り込ん で、濃染顆粒に蓄積する(Fedorko、Lab.Invest.、36巻、310-320頁、(1977) )。この現象は、少なくともCFU-MKと認識可能な巨核球の間に位置する小型で単 核のアセチルコリン陽性細胞においてすでに認められ(BrickerとZuckerman、Ex p.Hematol.、12巻、672-675頁、(1984))、その後、巨核球サイズの増大に 応じてセロトニンの取り込み量が増加する(SchickとWeinstein、J.Lab.Clin .Med.、98巻、607-615頁、(1981))。しかも、骨髄細胞の中では巨核球系細 胞だけに特異的である(SchickとWeinstein、J.Lab.Clin.Med.、98巻、607-6 15頁、(1981))ことが知られている。本アッセイ系は、高度に濃縮されたラッ トCFU-MK(GpIIb/IIIa+ CFU-MK画分;後述)を被検検体の存在下に培養し、CFU−MKから成長した巨 核球への14C-セロトニン(14C-5-hydroxy tryptamine creatinine sulphate;14 C-5HT))の取り込みを測定法する。 本アッセイ系の利点は、用いる細胞に含まれるCFU-MKの割合が極めて高く(後 述の「アッセイ方法」参照)、これに反して混入するTPOの標的細胞以外の細 胞が少ないので、混入細胞による間接的影響(例えば、本因子以外の何らかの物 質が混入細胞に作用してMeg-CSF活性を誘導させたり、混入細胞が本因子と協同 作用する何らかの因子を産生したりするなど)を軽減することができ、また、1 つのウエルの中で培養する全細胞数が少なくてすむために、比較的長い期間良好 な培養環境を維持することができることにある。さらに、培養期間中に活性標品 によってCFU-MKから生成した数多くのサイズの大きい成熟巨核球を位相差顕微鏡 下に観察することができ、活性の有無や程度を定性的に判定できることも利点で ある。この定性判定の結果は14C-セロトニンの取り込みによる定量結果と良く対 応している。従って、定性判定を併用することにより、定量結果の信頼性を高め ることができる。アッセイ方法 まず、アッセイに用いる高度に濃縮されたラットCFU-MK(「GpIIb/IIIa+CFU-M K画分」)を既に報告している方法(Miyazakiら、Exp.Hematol.、20巻、855〜86 1頁、(1992年))を若干改良した方法に従って調製した。その概略は次のとお りである。 Wistar系ラット(♂、8〜12週齢)の大腿骨、および脛骨を摘出し、常法に従 い、骨髄細胞浮遊液を調製する。骨髄細胞浮遊液の調製には、LevineとFedorko が報告した巨核球分離用媒体(LevineとFedorko、Blood、50巻、713-725頁、(1 977))を若干改良した媒体(13.6mMクエン酸三ナトリウム、11.1mMグルコース 、1mMアデノシン、1mMテオフィリン、10mM HEPES(pH 7.25)、0.5%ウシ血清 アルブミン(以下、BSAと略す)(Path-O-Cyte 4;生化学工業)、およびCa2+と Mg2+を含まないHanks平衡塩類溶液からなる溶液:以下、HATCH溶液と略す)を用 いる。骨髄細胞浮遊液を、Percoll原液(Pharmacia社製)をHATCH溶液で希釈し て調製したPercoll不連続密度勾配溶液(密度;1.050g/ml/1.063g/ml/1.082g/ ml)の上に重層し、20℃にて、400×gで20分間遠心する。遠心後、密度1.063g/m l と1.082g/mlの界面に集まった細胞を回収する。細胞を洗滌後、10%ウシ胎仔血清 (以下FCSと略す)を含むIscove改変Dulbecco培養液(以下IMDM培養液と略す) で浮遊させ、直径100mmの組織培養用プラスティックディッシュに入れて、5%炭 酸ガス培養器中にて37℃で1時間培養する。培養後、非付着性細胞画分を回収し 、再び直径100mmのプラスティックディッシュに入れ、さらに37℃で1時間培養 した後、非付着性細胞画分を集める。回収した細胞をHATCH溶液に再浮遊させ、 予めマウスモノクローナル抗ラット血小板GpIIb/IIIa抗体であるP55抗体(Miyaz akiら、Thromb.Res.、59巻、941-953頁、(1990))を吸着させておいた細菌検 査用100mmペトリディッシュ(Falcon1005;Becton-Dickinson社製)に入れ、室 温で1時間静置する。その後、非吸着細胞をHATCH溶液で十分に洗滌、除去した 後、固相化P55抗体に吸着した細胞をピペッティングにてはがし、回収する。通 常、ラット1匹から3〜4×105個の細胞が得られる。得られた細胞画分にはラ ットCFU-MKが高度に濃縮されており(以下、「GpIIb/IIIa+CFU-MK画分」と言う )、後述するコロニーアッセイ系における飽和濃度のラットIL-3存在下の検定に より通常5〜10%程度のCFU-MKが含まれることが 分かっている。なお、上記P55抗体を産生するハイブリドーマ(p55細胞)は、 1994年2月14日付で通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託 番号FERM BP−4563として寄託されている。 次に、得られたGpIIb/IIIa+CFU-MK画分を10%FCSを含むIMDM培養液で再浮遊さ せ、組織培養用96ウエル平底プレートへ1ウエル当たり104個の細胞が入るよう に分配し、さらにIMDM培養液に対して十分に透析した標準品(後に詳述する)や 、被検検体を加え、最終培養液量を200μl/ウエルにする。プレートを炭酸ガ ス培養器に入れ、37℃で4日間培養する。4日目の培養終了3時間前に1ウエル 当たり0.1μCi(3.7KBq)の14C-セロトニンを添加し、引き続き37℃で培養する 。培養終了後、プレートを1000rpmにて、3分間遠心し、上清を吸引除去する。 続いて、0.05%EDTAを含むPBSを1ウエル当たり200μl加えて遠心し、上清を吸 引除去し、細胞を洗滌する。この洗滌操作をもう一度繰り返す。得られた細胞ペ レットへ2%Triton X-100を1ウエル当たり200μl加え、プレートをプレートミ キサーで5〜10分程度振蕩し、細胞を十分に溶解する。得られた細胞溶解液のう ちの150μlを市販のカップ状の固体シンチレータ ー(Ready Cap;Beckman社製)の中へ移し、一晩50℃の乾燥器中に静置して、乾 固させる。翌日、Ready Capをガラスバイアルに入れ、液体シンチレーションカ ウンターにて14Cの放射活性を測定する。 なお、上述の細胞溶解液中のアセチルコリンエステラーゼ活性をIshibashiとB ursteinの方法(IshibashiとBurstein、Blood、67巻、1512-1514頁、(1986)) に従って測定しても、14C-セロトニンの取り込みによる定量結果と極めて類似し た結果が得られる。標準品 まず、標準品の作製に用いる血小板減少症ラット血漿を以下の方法で調製した 。 7〜8週齢のWistar系正常ラット(♂)へ、前述したP55抗体を1回の投与量 を0.5mgとして、約24時間間隔で2回、静脈注射し、2回目の投与の約24時間後 の血小板減少期にエーテル麻酔下に開腹し、予め抗凝固剤として1mlの3.8%(v/ v)クエン酸三ナトリウム溶液を吸い上げておいた10ml用注射筒を用いて腹大動 脈から採血した。血液をプラスティック製の遠心チューブに移し、1200×gで、1 0分間遠心し、血漿画分を回収し た。この血漿画分を再度1200×gで、10分間遠心し、遠心後、細胞や血小板など からなるペレットを吸い上げないように十分に気をつけながら血漿画分を回収し 、プールした(以下、このようにして得られた血漿を「TRP」と言う)。続い て、TRPから実施例1に記載する方法に従って調製したCa処理TRP(標準品 C)、WGA-Agaroseカラム活性画分(標準品W)、あるいはPhenyl Sepharose 6 FF /LSカラム活性画分(標準品P)を、十分量のIMDM培養液に対して徹底的に透析し 、活性検定用の標準品とした。 なお、実施例1に示したラットTPO精製過程においては、初期は標準品Cを 用いたが、途中から標準品W、さらにその後は標準品Pを用いた。恣意的に標準品 Cの活性を1と定義し、それを基に標準品Wおよび標準品Pの相対活性を求めた。 被検検体の相対活性の求め方は、標準品と被検検体との用量反応曲線を描き、被 検検体の活性が標準品Cの活性のn倍であったとき、その検体の相対活性をnと した。 B.コロニーアッセイ系 骨髄細胞を半固型の培養液中で被検検体の存在下に培養し、CFU-MKが増殖・分 化して形成される巨核球コロニーの数を算定 することによりMeg-CSF活性を測定するアッセイ法である。アッセイ法 (a)ラット非分離骨髄細胞などを用いる場合 ラット非分離骨髄細胞、前記A.のGpIIb/IIIa+CFU-MKの分離・濃縮操作の各 段階で得られる細胞、あるいはGpIIb/IIIa+CFU-MK画分、10%FCS、2mMグルタミ ン、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2-メルカプトエタノール、0.3%の寒天( AGAR NOBLE、DIFCO社製)を含む最終液量1mlのIMDM培養液を直径35mmの組織培 養用プラスチックディッシュに入れて室温で固化させた後、炭酸ガス培養器中に て37℃で培養する。通常、1つのディッシュ当たりのまき込み細胞数を、非分離 骨髄細胞、Percoll遠心分離段階およびプラスティックディッシュ付着性細胞除 去段階の細胞、およびGpIIb/IIIa+CFU-MK画分で、それぞれ、2〜4×105、2〜 5×104、0.5〜2×103個とする。6〜7日目に寒天ゲルをディッシュから取り 出してスライドガラス(76mm×52mm)に受け、孔径50μmのナイロンメッシュ、 続いて濾紙をのせて水分を吸収し、それらを除いてから室温で十分に乾燥させる 。50℃のホットプレート上で5分間熱固定した後、Jacksonの方法(Jackson、Bl ood、42巻、413-421頁、 (1973))に従って調製したアセチルコリンエステラーゼ染色液に2〜4時間浸 し、巨核球が十分に染色されているのを確認してから取りだして水洗し、乾燥後 Harrisヘマトキシリン液にて30秒間、後染色を施し、水洗、風乾させる。アセチ ルコリンエステラーゼ陽性の巨核球3個以上から成る集塊を一つのコロニーとし て巨核球コロニー数を算定する。 (b)マウスの非分離骨髄細胞を用いる場合 1つのディッシュ当たりのまき込み細胞数を2〜4×105個として、上記(a )と同様の方法で行なうことができる。 (c)ヒト骨髄細胞やヒト臍帯血細胞を用いる場合 ヒト骨髄細胞やヒト臍帯血細胞をそのまま用いることもできるが、以下のよう にそれらから濃縮したCFU-MK画分を用いることができる。 まず骨髄液、あるいは臍帯血をLymphoprep(第一化学社製)上に重層し、遠心 後、界面に集まった白血球画分を回収する。この細胞画分から、ビオチン化した ヒトの細胞表面抗原(CD2、CD11c、およびCD19)に対するビオチン化したモノク ローナル抗体が結合する細胞を、アビジンを結合させた磁気ビーズを用いて除去 する。この磁気ビーズ法で除去できる細胞は、主にB 細胞、T細胞、マクロファージ、および一部の顆粒球である。残った細胞を、FIT C標識された抗CD34抗体、およびPE標識された抗HLA-DR抗体で染色し、続いてセ ルソーター(例えば、ELITE;COULTER社製)を用いて、CD34陽性、かつHLA-DR陽 性の細胞画分を回収する。この画分にCFU-MKが濃縮されている(CD34+DR+CFU-MK 画分と略す)。ヒトのコロニーアッセイは、上記のラットの骨髄細胞を用いたコ ロニーアッセイとほぼ同様の方法で行なうが、1つのプラスティックディッシュ 当たりのCD34+DR+CFU-MK画分のまき込み数を3〜5×103個とし、10%FCSの代わ りに12.5%ヒトAB血漿と12.5%FCSの混合物を用いる。また、巨核球コロニーを形 成させるまでの培養期間は12日間から14日間である。ヒト巨核球の検出には、巨 核球の表面抗原であるヒトGpIIb/IIIaに対するマウスモノクローナル抗体を用い たアルカリフォスファターゼ‐抗アルカリフオスファターゼ抗体法で巨核球を免 疫染色し(例えば、Teramuraら、Exp.Hematol.16巻、843-848頁、(1988)) 、3個以上の巨核球からなるコロニーを巨核球コロニーとして算定する。 C.ヒト巨核芽球性細胞株を用いたアッセイ系(M−07eアッセイ) ヒト巨核芽球性細胞株であるM-07e細胞は、GM-CSF、IL-3、SCF、IL-2などに応 答して増殖する細胞株であることが知られているが(Avanziら、J.Cell.Physi ol.、145巻、458-464頁、(1990)、Kissら、Leukemia、7巻、)、TPOにも 応答することが判明し、ラットCFU-MKアッセイ系の代替アッセイ法として使うこ とができる。アッセイ法 GM-CSF存在下に継代培養されたM-07e細胞を回収し、十分に洗滌後、10%FCSを 含むIMDM培養液に再浮遊させる。組織培養用96ウエル平底プレートへ1ウエル当 たりの細胞数が104個になるようにM-07e細胞を入れ、さらに標準品、および被検 検体を加えて、最終液量を200μl/ウエルにする。プレートを5%炭酸ガス培養器 に入れ、37℃で、3日間培養する。3日目の培養終了4時間前に1μCi(37 KBq )/ウエルの3H-thymidineを添加し、培養終了後、セルハーベスターで細胞をガ ラス繊維フィルター上に集め、3Hの放射活性を液体シンチレーションカウンタ ー(例えば、ベータプレート;Pharmacia社製)にて測定する。 D.マウスプロB細胞株を用いたアッセイ系(Ba/F3アッセイ) マウスプロB細胞株Ba/F3細胞は、IL-3やIL-4などに応答して増殖する細胞株 であることが知られている(Palaciosら、Cell、41巻、727−734頁)。 その亜株であるBF-TE22細胞はIL-3やIL-4ばかりでなくTPOに応答し、細胞増 殖する事が判明し、ラットCFU−MKアッセイやヒト巨核芽球性細胞株を用い たアッセイ(M−07eアッセイ)の代替アッセイ法として用いることができる 。このアッセイ系の概要は以下の通りである。まず、1ng/mlのマウスIL-3存在 下に継代培養しているBF-TE22細胞を回収し、イスコフ改変DME培地(IMDM;GIBC O社)で3回洗浄したのちに、10%FCSを含むIMDM培地に再懸濁させる。次に、 組織培養用96ウエル平底プレートに1ウエルあたり細胞数が1×104個にな るように細胞を接種し、さらにTPO標準品あるいは被検検体を加えて、最終液 量を200ml/ウエルとなるようにし、プレートを5%炭酸ガス培養器中で2〜 3日間培養する。2または3日目の培養終了4時間前に1μCi(37KBq)/ウ エルの3H-チミジンを添加し、さらに培養を継続する。培養終了後、セルハーベ スターを用い て細胞をガラス繊維フィルター上に回収し、細胞に取り込まれた3Hの放射活性を 液体シンチレーションカウンターにて測定する。本アッセイ系ではTPO活性を 含まない被検検体では、細胞はほぼ死滅し3H-チミジンをほとんど取り込まない のに対し、TPO活性を含む被検検体では、細胞はTPO濃度依存的に活発な増 殖を示し3H-チミジンの取り込みが認められる。また、本アッセイは、M−07 eアッセイやCFU−MKアッセイとパラレルな結果を示す。 以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。 〈実施例1−1〉 抗血小板抗体投与による血小板減少症ラットの血漿からのラットTPO精製抗血小板抗体投与による血小板減少症ラットの血漿の調製 前述の〈参考例〉A.ラット巨核球前駆細胞(CFU-MK)アッセイ系に記載の方 法でラット約1000匹分のTRPを調製し、精製の供給源とした。TRPからのラットTPOの精製 当初、TRP中のTPO含有量は多くとも300万分の1程度であろうとの推 定に基づき、ラット約1000匹分のTRPを材 料に精製を進めた結果、1pmole弱のラットTPOの部分精製標品を得た。次に この標品の部分アミノ酸配列の分析を試行し、3種の部分アミノ酸配列の結果を 得た。これらは肝臓でつくられるセリンプロテアーゼインヒビター(SPI)の アミノ酸配列と一致しているか、類似したものであった。従って、TPOがセリ ンプロテアーゼインヒビターと類似した構造をもつものであるという可能性、及 びTPO以外の混入タンパク質由来の配列である可能性のいずれについても否定 はできなかった。これらの不確定な配列をもとにラットcDNAライブラリーか らのTPO遺伝子クローニングを実施したが、結局、候補遺伝子を得ることはで きなかった。これは、分析した標品の純度と量に不足があったためと考え、あら ためて鋭意研究を重ねることとなった。アミノ酸配列分析のために必要な最終精 製標品を得るため、次の〈実施例1−2〉に述べる精製を行った。尚、特筆すべ きことは、本〈実施例1−2〉による結果より、TRPあるいはXRP(後述) に存在するTPO量は、驚くべきことに全血漿蛋白質の1億分の1から10億分 の1と推定され、これを精製することが通常は極めて困難であるほど、微量の含 有量であることが判明した。実施例1−2 X線、あるいはγ線照射による血小板減少症ラットの血漿からのラットTPOの 精製X線、あるいはγ線照射による血小板減少症ラットの血漿の調製 亜致死線量(6〜7Gy)のX線、あるいはγ線を7〜8週齢のWistar系正常ラ ット(♂)へ全身照射し、血小板減少期の14日目に採血し、前述のTRPと同様 の操作で血漿画分を調製した(以下、この血漿を「XRP」と言う。)。 ここでは、合計してラット約1100匹分のXRP(約8L)を精製の供給源とした 。XRPからのラットTPOの精製 ラット約1100匹分の血漿の総蛋白質量は493000mgにも達するため、一度に処理 することができなかった。そこで、以下に述べる精製ステップのうち、(1)〜 (4)では約100匹ずつ11のロットに分けて実施した。次いで(5)〜(7)で は6つのバッチに分けて実施した。(8)以降は約1100匹分から粗精製されたも のをまとめて実施した。 このうち、あるひとつのロット(XW9)、バッチ(XB6) における精製例を代表として説明のために挙げ、併せて精製の各ステップについ て述べる。 尚、精製の全ステップに於いて、TPO活性は前述の〈参考例〉に記載したラ ットCFU−MKアッセイ系を用いて測定した。 逆相クロマトグラフィー及び界面活性剤の存在下でのSuperdex 75pgゲルろ過 を室温で実施した以外は、特に記載しない限り4℃で精製を行った。また、蛋白 質の定量は、クーマジー色素結合法(PIERCE社製試薬、カタログ番号23236X) 、または、ビシンコニン酸法(PIERCE社製試薬、カタログ番号23225)を用いて 実施した。 精製の概要を、表1に示した。 (1)ラット血漿の場合カルシウム処理・遠心処理・蛋白質分解酵素阻害剤処理 ロット番号XW9の場合 −80℃で保存した約100匹分のXRP(742ml,蛋白濃度54.8mg/ml,総蛋白 質量40686mg)を解凍し、ポリプロピレン製遠心チューブ(ナルゲン社製)に移 した。これに各々最終濃度100mMになるように塩化カルシウム粉末を加え、4℃ で一晩静置した。次に8000RPMで60分遠心後、上清を回収した。TPO活性を含 むこの上清(742ml,蛋白濃度54.9mg/ml,総蛋白質量40740mg)に、最終濃度1m Mの蛋白質分解酵素阻害剤であるp-APMSF(p-アミノジフェニルメタンスルホニル フルオリド 塩酸塩、和光純薬工業、カタログ番号010-10393)を加え、次に述 べるSephadex G-25カラムによるバッファー交換のステップへ進めた。 このようにして、約100匹分ごとにひとつのロットにまとめ、塩化カルシウ ム・p-APMSF処理し、合計11ロット、約1100匹分のXRP(総体積818 4ml)総蛋白質量493007mg)の処理を繰り返し、それぞれSephadex G-25 カラムへ進めた。 (2)Sephadex G-25〈バッファー交換〉 ロット番号XW9の場合 (1)で得られた塩化カルシウム処理後の上清(742ml,蛋白濃度54.9mg/ml、 総蛋白質量40740mg)を、20mM Tris-HCl,pH 8で予め平衡化してあったSephadex G-25Mカラム(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17-0033-03;直径 11.3cm、ベッド高47cm)に流速40〜70ml/minで添加し、蛋白質が溶出してくるま での1300mlを捨てた。次に、紫外吸収が立ち上がってきた時点から、電気伝導度 が500μS/cmに達するまでを集め、20mM Tris-HCl pH 8溶液に置換されたTPO 活性を含む蛋白質画分(1377ml,蛋白濃度27.56mg/ml)を回収した。TPO活性 画分の総蛋白質量は、37882mg、このステップでの蛋白収量は、93%であった。ま た、TPOの相対活性は、2.3であった。 このようにして、全ロットについてそれぞれSephadex G-25カラムを実施した 結果、合計すると、総体積21117ml、総蛋白質量480306mg、平均 相対活性1.8、相対活性量864600のSephadex G-25のTPO活性画分を 得た。 (3)Q-Sepharose FF〈強陰イオン交換クロマトグラフィー〉 ロット番号XW9の場合 (2)で得られたSephadex G-25MのTPO活性画分(1375ml,蛋白濃度27.5mg /ml、総蛋白質量37841mg、相対活性2.3)を流速40ml/minで、Q-Sepharose FF( ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17-0510-01;直径5cm、ベッド高 27cm)に添加し、20mM Tris-HCl,pH 8で素通り画分F1(3949ml,蛋白濃度0.9 8mg/ml,総蛋白質量3870mg,相対活性0)を溶出した。 次に、175mM NaClを含む20mM Tris-HCl,pH 8緩衝液に換えて、TPO活性画 分F2(4375ml,蛋白濃度5.36mg/ml)を溶出した。 最後に、1000mM NaClを含む20mM Tris-HCl pH 8緩衝液で、F3(1221ml,蛋 白濃度3.9mg/ml,総蛋白質量4783mg,相対活性3.8)を溶出した。TPO活性画 分F2の総蛋白質量は、23440mg、このステップでのF2の蛋白収量は、61.9%で あった。また、TPOの相対活性は、6.8に上昇した。 このようにして、Sephadex G-25のTPO活性画分の全ロットをQ-Sepharose F Fにかけた結果、合計すると総体積 35842ml、総蛋白質量314384mg、平均相対活性8.6、総活性量 2704000のQ-Sepharose FFのTPO活性画分F2を得た。 (4)小麦胚芽アグルチニン(WGA)-Agarose〈レクチンアフィニティークロマ トグラフィー〉 ロット番号XW9の場合 (3)で得られたQ-Sepharose FFのTPO活性画分F2を3回に分けて、WGA- Agarose(ホーネン社製、カタログ番号800273;直径5cm、ベッド高22.5cm)に 流速5ml/minで添加し、ダルベッコ氏リン酸等張緩衝液(DPBS)で素通る画分F 1(9336ml,蛋白濃度2.30mg/ml,総蛋白質量21407mg,相対活性6.9)を得た。 次に、0.2M N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc、ナカライ社製、カタログ番 号005-20)、150mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウムを含む20mM Na Phosphate,pH 7.2緩衝液により溶出されたプールを、限外濾過ユニット(フィルトロン社製、 オメガウルトラセット分子量8000カット)で濃縮し、WGA-Agarose吸着TPO活 性画分F2(2993ml,蛋白濃度0.376mg/ml)を得た。 このTPO活性画分F2の総蛋白質量は、1125mg、このステ ップでのF2の蛋白収量は、4.8%であった。また、TPOの相対活性は、101に 上昇した。ここで得られたF2は-80℃で保存した。 このようにして、Q-Sepharose FFのTPO活性画分F2の全ロットについて、 繰り返しWGA-Agaroseにかけた結果、総体積33094ml、総蛋白質量150 30mg、平均相対活性132、総活性量1987000のWGA-AgaroseのTP O活性画分F2を得た。 (5)TSK-gel AF-BLUE 650 MH〈色素吸着アフィニティークロマトグラフィー〉 バッチ番号XB6の場合 (4)で得られた、合計215匹分のXRPから出発したロットXW8のWGA- Agarose吸着TPO活性画分とロットXW9のWGA-Agarose吸着TPO活性画分F 2をバッチXB6としてまとめた(5974ml,蛋白濃度0.388mg/ml、総蛋白質量23 19mg、相対活性150)。 この体積5974mlに対し、0.85molesのNaCl(296.76g)を加え、最終濃度0.822 M NaCl,6132mlの溶液とした後、1M NaCl,20mM Na Phosphate,pH7.2で予め平 衡化してあったTSK-gel AF-BLUE 650 MHカラム(トーソー社製、カタログ番号08705;直径5cm、ベッド 高23cm)に、流速7ml/minで添加した。 添加終了後、流速10ml/minにて、20mM Na Phosphate,1M NaCl,pH7.2で溶出 される素通り(約8470ml)を集め、これを限外濾過ユニット(フィルトロン社製 、オメガウルトラセット分子量8000カット)で濃縮し、素通り画分F1(543ml ,蛋白濃度2.05mg/ml,総蛋白質量1112mg,相対活性31)を得た。 次に、溶出液を2M NaSCNにかえ、溶出されたTSK-gel AF-BLUE 650MH吸着TP O活性画分F2(1427ml,蛋白濃度0.447mg/ml)を得た。 このTPO活性画分F2の総蛋白質量は638mg、このステップでのF2の蛋白 収量は27.5%であった。また、TPOの相対活性は、1500に上昇した。 このようにして、WGA-Agarose吸着TPO活性画分F2の全バッチについて、 各々TSK AF-BLUE 650MHにかけた結果、総体積10655ml、総蛋白質量42 36mg、平均相対活性905、総活性量3834000のTSK-gel AF-BLUE 65 0MHのTPO活性画分F2を得た。 (6)Phenyl Sepharose 6 FF/LS〈疎水相互作用クロマトグラ フイー〉 (5)で得られたTSK-gel AF-BLUE 650 MHのTPO活性画分F2(1424ml,蛋 白濃度0.447mg/ml、総蛋白質量638mg、相対活性1500)の体積1424mlに対し、1.5 molesのAmmonium Sulfate(282.2g)の粉末を加え、最終濃度1.35M Ammonium S ulfate,1581mlの溶液とした。 これを1.5M Ammonium Sulfate,50mM Na Phosphate,pH7.2で予め平衡化して あったPhenyl Sepharose 6 FF(Low Sub)カラム(ファルマシアバイオテク社製 、カタログ番号17-0965-05;直径5cm、ベッド高10cm)に、流速7ml/minにて添 加し、添加終了後、溶出液を0.8M Ammonium Sulfate,36mM Na Phosphateにかえ 、流速10ml/minにて溶出される画分(約3160ml)までを集め、これを限外濾過ユ ニット(フィルトロン社製、オメガウルトラセット分子量8000カット)で濃縮し 、F1(485ml,蛋白濃度0.194mg/ml,総蛋白質量94.2mg,相対活性0)を得た。 次に、溶出液を20mM Na Phosphate,pH7.2にかえ、溶出されたTPO活性画分 F2(約3500ml)を得た。これを限外濾過ユニット(フィルトロン社製、オメガ ウルトラセット分子量8000 カット)で濃縮し、一旦サンプリングした。この段階のTPO活性画分F2(22 0ml)の蛋白濃度は1.45mg/ml,総蛋白質量319mg、このステップでのF2の蛋白 収量は、50.0%であった。また、TPOの相対活性は、1230であった。 このようにして、TSK-gel AF-BLUE 650MHのTPO活性画分F2の全バッチに ついて、繰り返しPhenyl Sepharose FF/LSにかけた結果、総体積1966ml、 総蛋白質量2762mg、平均相対活性847、総活性量2339000のPhen yl Sepharose FF/LSのTPO活性画分F2を得た。 (7)Sephacryl S-200 HR〈ゲル濾過クロマトグラフィー〉 バッチ番号XB6の場合(例えば図1) (6)で得られたPhenyl Sepharose 6 FF/LSのTPO活性画分F2(217ml, 蛋白濃度1.45mg/ml、総蛋白質量315mg、相対活性1230)に、144.8mlの5M NaCl 溶液を加えて362mlの2M NaClとした後、さらに限外濾過ユニット(アミコン社 製;YM3膜、直径76mm)で約50mlまで濃縮した。 これに8M尿素を等量体積(50ml)加え、最終濃度1MNaCl、4M尿素の溶 液約100mlにした。さらに約80mlまで濃縮し、最終的に88.78ml のサンプルにし、 Sephacryl S-200 HRカラム(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17-0 584-01;直径7.5cm、ベッド高100cm)に、注入した。 その後3ml/minの流速にてDPBSで展開し、ボイド体積(1200ml) 以降45mlずつ60本のポリプロピレン製チューブに集めた。この溶出パター ンを図1に示した。2本ごとにアッセイにかけ、残りは1100匹分の全てのSe phacryl S-200 HRのプロセスを終えるまで、-85℃にて凍結保存した。アッセ イの結果よりXB6では以下のようにフラクションをまとめた(図1)。 (F1)チューブ番号 1〜15 (ボイド体積付近の分子量94000以上の画分) (F2)チューブ番号 16〜26 (分子量94000〜33000) (F3)チューブ番号 27〜44 (分子量33000〜3000) (F4)チューブ番号 45〜55 (分子量3000以下) このようにして、Phenyl Sepharose 6 FF/LSで得たTPO活 性画分F2の全バッチについて、各々Sephacryl S-200 HRにかけ、それぞれのフ ラクションについてアッセイを行ない、-85℃にて凍結保存をした。すべての バッチについてSephacryl S-200 HR終了後、次の逆相クロマトグラフィー(YMC- Pack PROTEIN-RP)を実施する直前に解凍をし、限外濾過ユニット(アミコン社 製;YM3膜、直径76mm)で濃縮し、下記の2つの標品を得た。以下、このSe phacryl S-200 HRのTPO活性画分F2の濃縮標品を「高分子TPO標品F2」 、Sephacryl S-200 HRのTPO活性画分F3の濃縮標品を「低分子TPO標品F 3」と言う。ここで述べる高分子TPO標品F2、低分子TPO標品F3とは便 宜上、ゲル濾過クロマトグラフィーで溶出位置の異なった画分をまとめたものを 称するのであって、必ずしも真の分子量を表現したものではない。 Sephacryl S-200HRにおけるTPO活性画分 以降、低分子TPO標品F3と高分子TPO標品F2とをそれぞれ次の精製ス テップに進めた。 以下(8)〜(11)に低分子TPO標品F3の精製の各ステップについて述 べる。 (8)YMC-Pack PROTEIN-RP〈逆相クロマトグラフィー〉 (7)で得られた低分子TPO標品F3(総蛋白質量50.3mg,蛋白濃度0.184m g/ml,相対活性20000,総活性量1007000、総体積274ml)に展開溶媒A(0.025% トリフルオロ酢酸(TFA))および展開溶媒B(0.025%TFAを含む1-プロパノー ル)を加え、最終体積508.63ml、最終プロパノール濃度約 20%、TFA濃度0.012%、蛋白濃度0.0989mg/mlに調製した。ここで不溶物の発生 があったので、これを遠心し、上清のみを254.3ml(25.2mg)ずつ2回に分けて 、予め30%Bで平衡化してあったYMC-Pack PROTEIN-RP(YMC社、カタログ番 号A-PRRP-33-03-15;直径3cm、ベッド高7.5cm)カラムに流速2ml/minで添加し た。沈殿物は5mMのCHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]- 1-プロパンスルフオナート;同仁化学研究所製、カタログ番号75621-03-3)を含 む20mM酢酸ナトリウム、pH5.5を20ml加えて可溶化し、合わせてカラムに送り込 んだ。 サンプルを添加した後、約50mlの溶媒(展開溶媒A:展開溶媒B=3:1)を 通液し、まず素通り画分を集めた。次に展開プログラム(120分の30%B〜45% Bの直線濃度勾配)を開始して、10mlずつ合計36本のフラクションをポリプロピ レン製チューブに集め取った。これを繰り返して同じチューブに集めたため、最 終的に20mlずつ、合計36本フラクションとなった。素通り画分はそのまま限外濾 過ユニット(アミコン社製;YM3膜、直径76mm)で20mlまで濃縮した。 素通り画分及びチューブ番号1〜36の各20mlのフラクション より0.1ml取り、20μlの5%BSAを添加後遠心エバポレーションで乾固し、最終 的に0.25mlのIMDMアッセイ培養液に溶解し、アッセイにかけ、TPO活性画分を 特定した。この結果、チューブ番号17〜27(プロパノール濃度で36.0〜43.0%の 範囲)にTPOの活性があり、これを低分子TPO標品F3由来のYMC-Pack PRO TEIN-RPのTPO活性画分F2とした。次のYMC-Pack CN-APに進める直前まで-85 ℃で保存した。 低分子TPO標品F3由来のYMC-Pack PROTEIN-RPのTPO活性画分F2 総体積 220ml 蛋白濃度 0.0130mg/ml 総蛋白質量 2.85mg 相対活性 130000 総活性量 371000 (9)YMC-Pack CN-AP〈逆相クロマトグラフィー〉 (8)で得られた低分子TPO標品F3由来のYMC-Pack PROTEIN-RPのTPO 活性画分F2のうち214.9ml(総蛋白質量2.79mg,蛋白濃度0.0130mg/ml,相対活 性130000,総活性量36300)に、50%グリセロールを0.6ml加え、1.8mlまで濃縮 した。最終的に体積5mlで、プロパノール濃度は20%以下、グリセロールは約6% であった。 これを5回(各回の注入蛋白質量0.555mg,体積1ml)に分けて実施した。毎 回ごとに、展開溶媒Aに0.1%TFA、展開溶媒Bに0.05%TFAを含む1-プロパノー ルを用い、15%Bで平衡化したYMC-Pack CN-AP(YMC社製、カタログ番号AP-5 13;直径6mm、ベッド高250mm)カラムに、流速0.6ml/minで注入した。注入終了 後、15%Bから25%Bにプロパノール濃度を上げ、さらに25%Bから50%Bまで 65分の直線濃度勾配で展開した。最後の回に、蛋白を含まない同じ組成の溶液1 mlを注入、展開し、カラム内に残存するTPO活性の回収を行った。合計6回分 同じポリプロピレン製チューブに集めたため、各フラクションは、7.2mlずつ44 本となった。 このうち30μl(240分の1フラクション)を取り20μlの5%BSAを加え、 遠心エバポレーションで乾固し、最終的に0.24mlのIMDMアッセイ培養液に溶解し 、アッセイにかけ、TPO活性画分を特定した。この結果、チューブ番号28〜33 (プロパノール濃度で37.0〜42.0%の範囲)に強いTPOの活性があったため、 これを低分子TPO標品F3由来YMC-Pack CN-APのメ インのTPO活性画分FAとした。 低分子TPO標品F3由来のYMC-Pack CN-APのTPO活性画分FA 総体積 43.20ml 蛋白濃度 0.00863mg/ml 総蛋白質量 0.373mg 相対活性 800000 総活性量 298400 (10)Capcell Pak C1 300A〈最終の逆相クロマトグラフィー〉 (9)で得られた低分子TPO標品F3由来のTPO活性画分FA43.20mlの うち43.12ml(総蛋白質量0.372mg,蛋白濃度0.00863mg/ml,相対活性800000,相 対活性量297600)に、0.2mlの50%グリセロールを加え、0.1mlのグリセロール溶 液となるまで濃縮した。 これに展開溶媒A(0.1%TFA):展開溶媒B(0.05%TFAを含む1-プロパノー ル)=85.15(15%B)の溶液2mlを加えて、最終的に、体積2.1ml、プロパノール 濃度が約14%、グリセロールが約4.8%、蛋白濃度0.177mg/mlのサンプルに調製し た。 これを15%Bで平衡化したCapcell Pak C1 300A(資生堂製、カタログ番号C1 TY PE:SG300A;直径4.6mm、ベッド高250mm)カラムに注入し、27%Bから38%Bま で65分の直線濃度勾配で流速0.4ml/minで展開し、ポリプロピレン製チューブ72 本に0.6mlずつ集めた。 各フラクションから、3μl(200分の1フラクション)を取り20μlの5 %BSAを加え、最終的に225μlのIMDMアッセイ培養液に置換し、オリジナル体積 から75倍希釈したものをアッセイにかけた。 各フラクションから、電気泳動のために1μl(600分の1フラクション) を取り、遠心エバポレーションし、還元剤を含まないSDSゲル電気泳動サンプ ルバッファーを10μl加え、95℃で5分処理した。これを15-25%SDS−ポリア クリルアミドプレキャストゲル(第一化学薬品社製)を用いてSDSゲル電気泳 動し、2D‐銀染色試薬・「第一」銀染色キット(第一化学薬品社製、カタログ番 号167997、以下「銀染色キット」と言う)で染色した。分子量マーカーには「第 一」・III低分子量マーカー(第一化学薬品社製、カタログ番号181061、以下「D PCIII」と言う)を用いた。 以上の分析の結果、チューブ番号35〜43(プロパノール濃度で30.0〜32.5%の 範囲)に明らかにTPOの活性があった。このうちチューブ番号36〜42(プロパ ノール濃度で30.5〜32.0%の範囲)をメインのTPO活性画分FAとした。以上 の結果を図2に示した。 蛋白質量をクロマトグラムから推定し、アッセィの結果と合わせて評価すると 、総蛋白質量39.6μg,蛋白濃度9.4μg/ml,相対活性4890000,相対活性量1936 00となった。TPO活性画分チューブ番号36〜42のSDSゲル電気泳動像を調べ てみると、活性の強さと、染色された濃さが相関するバンドが存在することが明 らかとなった。しかもこのバンドの分子量は、見かけ上、即ち還元状態での標準 分子量蛋白に対し、17000〜19000の位置にあり、TPOの候補となる有力なバン ドであることがわかった。 (11)電気泳動ゲルからのTPO活性の抽出〈15%SDSポリアクリルアミド ゲル電気泳動〉 TPO活性画分FAの分析例 (10)で得られた低分子TPO標品F3由来のTPO活性画分FA4200μl (総蛋白質量39.6μg,蛋白濃度9.4μg/ ml,相対活性4890000,総活性量193600)の内、5.5μl(764分の1フラ クション)を活性抽出のため、2.5μl(1680分の1フラクション)を銀 染色のためにそれぞれサンプルチューブに取り、遠心エバポレーションし、還元 剤不含のSDSゲル電気泳動サンプルバッファー10μlを加え、37℃1時間処 理後、室温で18時間放置することによりSDS化した。 分子量マーカーには、プレステインド・ローレンジマーカー(Bio-Rad社161-0 305)、及びDPCIIIマーカーを用いた。これらのサンプルを常法(Laemmli、Natu re、227巻、680-685頁、(1970))に従って、マイクロスラブゲルを用いた15 %SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を4℃にて実施した。泳動終了後、直 ちに銀染色に付す部分をナイフで切断し固定液に入れ、銀染色キットを用いて銀 染色した。 一方、活性を切り出すべき部分を、分子量の全域に渡って、ナイフを用いて幅 1.5〜2.5mmの34本のゲルにスライスし、小林の方法(小林幹彦、生化学 、第59巻、第9号(1987))を改良した方法でゲルの破砕を行った。微細 な断片に破砕されたゲルに各々0.3mlの抽出バッファー(20mM Tris-HCl,pH8,500mM NaCl,0.05%BSA)を加え、4℃で6時間振とうし、抽出 を行った。 次に最終濃度20mMの500mMリン酸カリウム、pH6.8を加え、4℃で1時間振とう し、沈殿したSDSを除くためウルトラフリーC3GV 0.22μmフィルター付濾過ユ ニット(ミリポア社製、型番UFC3 OGV 0S)に移し、1000xg(4000RPM)で15分 間遠心し、濾液を回収した。これをウルトラフリーC3-LGC分子量10000カット限 外濾過ユニット(ミリポア社製、型番UFC3 LGC 00)に移し3000xg(7000RPM)で 遠心した。濃縮液が約50μlに達した時点で、300μlの20mM Na Phosphate,pH 7.2のバッファーを加え、再び限外濾過を行った。 これを2回繰り返し、残存するSDSを除去した。さらにアッセイ培養液に対 し同様な操作を繰り返し、最終的に300μlに調製した。これを滅菌し、TPO 活性を測定した。 このような実験の結果、銀染色で明瞭に検出できた蛋白質は、DPCIIIマーカー に対し、見かけ上の分子量約17000〜19000、14000、11000の3種であった。 Capcell Pak C1カラムのTPO活性画分の電気泳動で、前記ステップ(10)の 実験において活性の強さと、染色されたバン ドの濃さが相関する見かけ上の分子量が約17000〜19000のバンドが観察できたが 、本ステップ(11)の実験においてもTPO活性が検出された見かけ上の分子量 は約17000〜19000であった。(図3参照) 以上の結果、TPO活性を示す蛋白質は、最終的に電気泳動ゲル上で確認可能 なまでにCapcell Pak C1 300Aカラムの活性画分中に精製されたと確認できた。 このサンプルを15%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(非還元下)して 銀染色されたバンドの濃さから、全TPO活性画分中の見かけ上の分子量約1700 0〜19000のTPO候補蛋白質の量は、約1.7μgであった。 以下(12)〜(15)に高分子TPO標品F2の精製の各ステップについて 述べる。 (12)YMC-Pack PROTEIN-RP〈逆相クロマトグラフィー〉 (7)で得られた高分子TPO標品F2(総蛋白質量257mg,蛋白濃度0.894mg /ml,相対活性7840,総活性量2015000、総体積287ml)に展開溶媒A(0.025%TF A)およびサンプルの3分の1容の95.8mlの展開溶媒B(0.025%TFAを含む1-プ ロパノール)を加え、最終体積383ml、最終プロパノール濃度約 25%、TFA濃度0.006%、蛋白濃度0.671mg/mlとした。ここで不溶物の発生があっ たので、遠心後の上清のみを62.3ml(42.8mg)ずつ6回に分けて、予め30%Bで 平衡化してあったYMC-Pack PROTEIN-RP(YMC社製、カタログ番号A-PRRP-33-0 3-15;直径3cm、ベッド高7.5cm)カラムに流速2ml/minで注入した。沈殿物は 5mMのCHAPSを含む20mM酢酸ナトリウム、pH5.5を10ml加えて可溶化できたので、 合わせてカラムに送り込んだ。 それぞれサンプルを注入した後、約50mlの溶媒(展開溶媒A:展開溶媒B=3 :1)を通液し、素通り画分を集めた後、展開プログラム(120分の30%Bから4 5%Bの直線濃度勾配)を開始し、15mlずつ合計24本のフラクションをポリプロ ピレン製チューブに集め取った。1回目から6回目まで同じ様に繰り返し、最終 的に90mlずつのフラクションが24本となった。素通り画分とチューブ番号1はそ のまま限外濾過ユニット(アミコン社製;YM3膜、直径76mm)で90mlまで濃 縮した。 素通りを含むチューブ番号1から24までのフラクションより0.3ml取り、10μ lの5%BSAを添加後遠心エバポレーションで乾固し、最終的に0.3mlのIMDMアッ セイ培養液に溶解し、アッ セイにかけ、TPO活性画分を特定した。この結果、チューブ番号10〜15(プロ パノール濃度で34.0〜39.5%の範囲)にTPOの活性があり、これを高分子TP O標品F2由来のYMC-Pack PROTEIN-RPのTPO活性画分F2とした。次のYMC-P ack CN-APに進める直前まで、-85℃で保存した。 高分子TPO標品F2由来のYMC-Pack PROTEIN-RPのTPO活性画分F2 総体積 540ml 蛋白濃度 0.021mg/ml 総蛋白質量 11.4mg 相対活性 227000 総活性量 2588000 (13)Superdex 75 pg〈CHAPS存在下でのゲル濾過クロマトグラフィー〉 (12)で得られた高分子TPO標品F2由来のYMC-Pack PROTEIN-RPのTP O活性画分F2のうち、538.2ml(総蛋白質量11.3mg,蛋白濃度0.021mg/ml,相 対活性227000,総活性量2565000)に50%グリセロールを0.6ml添加後、遠心エバ ポレーション濃縮した。次に、6mlの20mM CHAPSを加えた。さら に、18mlの20mM CHAPSを加え攪拌し、4℃に移し、41時間後に最初のサンプル をHiLoad 26/60 Superdex 75 pg(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番 号17-1070-01;直径2.6cm、ベッド高60cm)カラムに注入し、流速1ml/minで、 5mMCHAPSを含むDPBSで展開した。一回に4ml(蛋白濃度0.466mg/ml,蛋白質量1 .86mg)のサンプルをカラムに注入した。 6回目に分けてカラムで展開し、全てのYMC-Pack PROTEIN-RPのTPO活性画 分をSuperdex 75 pgカラムで分取した。フラクションは5mlずつ6回分、即ち合 計30mlのフラクションが45本となった。 それぞれのフラクションより0.1ml取り、10μlの5%BSAを添加後、遠心エバ ポレーションで乾固し、最終的に0.25mlのIMDMアッセイ培養液に溶解し、アッセ イにかけ、TPO活性画分を特定した。この結果、チューブ番号13〜31(分子量 で78000〜3000の範囲)にTPOの活性があったため、これを高分子TPO標品 F2由来のSuperdex 75 pgのTPO活性画分F2とした。 高分子TPO標品F2由来のSuperdex 75 pgのTPO活性画分F2 総体積 540ml 蛋白濃度 0.00216mg/ml 総蛋白質量 1.17mg 相対活性 1750000 総活性量 2041000 (14)YMC-Pack CN-AP〈逆相クロマトグラフィー〉 (13)で得られた高分子TPO標品F2由来のSuperdex 75 pgのTPO活性 画分F2(分子量78000〜3000)540mlのうち、513.2ml(総蛋白質量1.11mg,蛋 白濃度0.00216mg/ml,相対活性1750000,相対活性量1943000)に10分の1容の 展開液B(0.05%TFAを含む1-プロパノール)を加えた後、展開溶媒A(0.1%TF A)と展開液Bを用いて15%Bで平衡化したYMC-Pack CN-AP(YMC社製、カタ ログ番号AP-513;直径6mm、ベッド高250mm)カラムに、流速0.6ml/minで注入し た。注入終了後、15%Bから25%Bにプロパノール濃度を上げ、さらに25%Bか ら50%Bまでの65分の直線濃度勾配で展開した。 YMC-Pack CN-APカラムに進めるにあたり、全インプットサンプルの20分の1 をまずパイロット的に進め、活性が良好に回収できることを確認できた。そこで 、残りの20分の19を2 回に分けて分取した。つまり合計3回の展開をおこなった。計3回分で分取され た各フラクションを同じポリプロピレン製チューブ44本に集めたので、合計3.6m lずつとなった。 このうち 5μl(720分の1フラクション)を取り、最終的に0.25mlのIM DMアッセイ培養液に置換した。アッセイの結果、チューブ番号24〜30(プロパノ ール濃度で36.0〜42.0%の範囲)に極めて強いTPOの活性があったため、これ を高分子TPO標品F2由来のYMC-Pack CN-APのメインのTPO活性画分FAと した。 高分子TPO標品F2由来のSuperdex 75 pgのTPO活性画分FA 総体積 25.20ml 蛋白濃度 0.0246mg/ml 総蛋白質量 0.620mg 相対活性 700000 総活性量 434000 (15)Capcell Pak C1 300A〈最終の逆相クロマトグラフィー〉 (14)で得られた高分子TPO標品F2由来のYMC-Pack C N-APのTPO活性画分FA25.20mlのうち、24.66ml(総蛋白質量0.606mg,蛋白 濃度0.0246mg/ml,相対活性700000,総活性量424000)に、0.4mlの50%グリセロ ールを加え、遠心エバポレーションで濃縮した。 最終的に、プロパノール濃度は数%、グリセロールは10%、蛋白濃度0.303mg/ml の2mlのサンプルとなった。展開溶媒A(0.1%TFA)、展開溶媒B(0,05%TFA を含む1-プロパノール)を用いて、15%Bで平衡化したCapcell Pak C1 300A( 資生堂 カタログ番号C1 TYPE:SG300A;直径4.6mm、ベッド高250mm)カラムに 注入し、27%Bから38%Bまで65分の直線濃度勾配で流速0.4ml/minで展開し、 ポリプロピレン製チューブ72本に0.6mlずつ集めた。 各フラクションから、0.75μl(800分の1フラクション)を取り、20μl の5%BSAを加え、最終的に225μlのIMDMアッセイ培養液に置換し、オリジナル 体積から300倍希釈したものをアッセイにかけた。 各フラクションから、電気泳動のために2μl(300分の1フラクション) を取り、遠心エバポレーションし、10μlの還元剤を含まないSDS電気泳動サ ンプルバッファーを加え、 95℃で5分処理した。これを15〜25%SDS‐ポリアクリルアミドプレキャスト ゲル(第一化学薬品製)を用いてSDSゲル電気泳動し、銀染色キットで染色し た。分子量マーカーにはDPCIIIマーカーを用いた。 以上の分析の結果、チューブ番号33〜39(プロパノール濃度で29.5〜31.5%の 範囲)に明らかにTPOの活性があった。このうち、チューブ番号34〜39(プロ パノール濃度で30.0〜31.5%の範囲)をメインのTPO活性画分FAとした。メ インのTPO活性画分のSDSゲル電気泳動像を調べてみると、(10)に述べた 低分子TPO標品F3から出発したものと同じく見かけ上17000〜22000の分子量 範囲に、活性の強さと、染色された濃さが相関するバンドが存在することが明ら かとなった。 〈実施例2〉ラット精製TPOの部分アミノ酸配列の分析 岩松の方法(岩松ら、新基礎生化学実験法、第4巻、33〜84頁(丸善刊);岩 松明彦、生化学、第63巻、第2号、139-143頁、(1991);Akihiro Iwamastu、E lectorophoresis、第13巻、142-147頁、(1992))により、実施例1の(10) で得られたCapcell Pak C1 300AカラムのTPO画分FA中のラット TPO候補タンパク質のアミノ酸配列の分析を行った。即ち、サンプルをSDS ゲル電気泳動し、電気的にポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写し た。次いで、PVDF膜上の蛋白質を還元S‐アルキル化した後、系統的、段階 的に3種のプロテアーゼでin situ限定酵素分解し、ペプチドフラグメント化し 、これを逆相クロマトグラフィーで分離精製し、得られたペプチドを高感度アミ ノ酸配列決定法により分析した。以下にその詳細を述べる。 低分子TPO標品F3由来のCapcell Pak C1 300AのTPO画分FAのTPO 候補蛋白質の分析例 (1)Capcell Pak C1 300AカラムのTPO画分FA(チューブ番号36〜42)の 濃縮 実施例1の(10)で得られた低分子TPO標品F3由来の、Capcell Pak C1 300AカラムのTPO活性画分FA(チューブ番号36〜42)4200μl(総蛋白質 量39.6μg,蛋白濃度9.4μg/ml,相対活性4890000,相活性量193600)のうち、4 151μl(全フラクションの98.8%)をアミノ酸配列のための分析に進めた。クロ マトグラムから推定される蛋白質量は39.1μgであるが、このうちSDSゲル電 気泳動で銀染色された見かけ 上の分子量約17000〜19000のTPO候補蛋白質の量は、約1.6μgであった。 このサンプルにグリセロールを添加し、遠心エバポレーションで濃縮し、5μ lのグリセロール溶液とした。これに還元剤を含まないSDS電気泳動サンプル バッファー、及びpHを調整するために1M Tris-HCl,pH8を加え、最終的に、20 0mM Tris-HCl,pH8.0,50mM Tris-HCl,pH6.8,1.1%SDS,2mM EDTA,0.02%B PB,30%グリセロールを含む約25μlのサンプルにした。 このサンプルを過度に加熱することなく十分にSDS化するために、まず室温 に14時間置き、次に60℃で5分処理した。 (2)電気泳動 常法に従って、マイクロスラブゲル(4.0%アクリルアミド濃縮ゲル、15 %アクリルアミド分離ゲル)を調製し、SDSゲル電気泳動を室温下で12.5 mA、次いで17.5mAの一定電流にて2時間かけて実施した。分子量マーカ ーには、プレステインド・ローレンジマーカー(Bio-Rad社161-305)、及びDPCI IIマーカーを用いた。泳動終了後直ちPVDF膜に転写した(次項)。 また、分析に付したサンプルの一部を、非還元のまま、及びジチオスレイトール (DTT)で還元化し、15〜25%ポリアクリルアミドプレキャストゲル(第 一化学薬品社製;マルチゲル15/25、カタログ番号211072)で電気泳動した。こ れを銀染色キットを用いて銀染色したところ、TPOと期待されたバンドは、還 元下において分子量約19000であり、Capcell Pak C1 300AカラムでのTPO活性 画分中のTPO候補蛋白質の純度が、数%程度であることが確認できた。また非 還元・還元それぞれの移動度が異なるため、分子内部に少なくとも一つ以上のS ‐S結合を持つことが示唆された。 (3)PVDF膜へのエレクトロブロット法による転写・バンドの検出 セミドライ転写装置(マリソル社製、ウエットフォー転写装置モデルKS‐84 60)を用いて、常法に従い、160mA(11〜17V)の一定電流で1時間か けてPVDF膜(アプライドバイオシステムズ社製ProBlott、カタログ番号4009 94)に転写を行った。陽極液に、0.3M Tris,20%メタノール,pH10.4、転写膜液 に、25mM Tris,20%メタノール,pH10.4、陰極液に、25mM Tris,40mMアミノカ プロン酸,20%メタノール, pH10.4を用いた。 転写された膜をポンソーS染色液(100ml中0.1gのポンソーSと1m lの酢酸を含む)で染色したところ、複数のバンドが染色され、この中にTPO と期待された分子量約19000のバンドを確認することができた。これを切り出し 、ペプチドの断片化に進めた。(次項) (4)ペプチドフラグメント化とペプチドマッピング・アミノ酸配列分析 PVDF膜上に転写・還元S‐アルキル化されたTPO候補蛋白質の断片化を 系統的に行うために、次の三つのプロテアーゼにより、段階的に限定的酵素分解 を行った。 一次消化 リシルエンドペプチダーゼ(Achromobacter lyticusm497-1、和光純 薬工業製、カタログ番号129-02541) 二次消化 エンドプロテイナーゼAsp-N(ベーリンガー・マンハイム社製、カタ ログ番号1054 589) 三次消化 トリプシン-TPCK(Worthington Biochemical社製、カタログ番号3740 ) 各々の酵素消化で得られたペプチド断片を回収し、展開溶媒Aに0.05%TFA、展 開溶媒Bに0.02%TFAを含むイソプロパノ ール:アセトニトリル=7:3の混液を用いて、Wakosil-II 5C18 C18逆相カラ ム(和光純薬工業製;直径2.0mm、長さ150mm)で、カラム温度30℃、流速0.25 ml/分、1%Bから50%Bを30分の直線濃度勾配にて展開することによりマ ッピング(図4)し、得られたペプチドフラグメントを回収した。それぞれのペ プチドフラグメントを気相アミノ酸シークエンサー(島津製作所製、PPSQ− 2)にてエドマン分解後、順次回収されたN末端のPTHアミノ酸を、アイソク ラティック溶出法によるC18逆相カラムクロマトグラフィーにて同定を行った 。この結果を次にまとめた。 以上の配列のうち、()付きで示したものは、系統的酵素消化から演繹推定し うるアミノ酸残基である。 (5)得られたアミノ酸配列の類似性分析〈ホモロジーサーチ〉 得られたアミノ酸配列が、すでに報告されている既知の蛋白質に含まれている かどうか、あるいは、類似配列をもつ蛋白質があるかどうかについて、配列解析 ソフトウェアであるマック ベクター(Kodak International Biotechnologies,Inc.)を用いて分析した。 既知蛋白質あるいは既知遺伝子の情報は、Entrez Release 6データベース(米国 National Center for Biotechnology Information,National Library of Medic ine,National Institutes of Health、1993年8月15日発行)を利用した。こ れに含まれる各種データベースは以下の通りである。 Entrez Release 6データベース NCBI-GenBank,August 15,1993(Release 78.0) EMBL,July15,1993(Release 35.0 plus updates) DDBJ,July 15,1993 SWISS-PROT,April,1993(Release 25.0) PIR,June 30,1993(Release 37.0) PDB,April,1993 PRF,May,1993 dbEST,July 15,1993(Release 1.10) U.S.and Europian Patents この結果、AP12の配列(K)DSFLADVKは、ラットのCorticostero id-binding globulin(CBG)precursor [PIRデータベース登録番号 A40066;Smith and Hammond;“Rat corticostero id-binding globulin:primary structure and messenger ribonucleic acid le vels in the liver under different physiological conditions.”Mol.Endoc rinol.,(1989),3,420-426,]の内部配列KDSFLADVKと完全一致した 。 さらによく調べてみると、AP3の配列(K)XYYESZ((XはA、S、 G、M、Qのどれか)、(ZはEまたはK))と類似性の高いKQYYESE( 配列番号193)という配列が、ラットCBGのアミノ酸配列に含まれているこ とが判明した。これらのAP12、AP3に相当する配列はラットCBGでは連 続しており、KDSFLADVKQYYESE(配列番号190)という内部ア ミノ酸配列に相当する。 しかしながら、AP12、AP3以外のフラグメントのアミノ酸配列に関して は、類似性を考慮すべき既知の蛋白質や遺伝子は見つからなかった。 〈実施例3〉血小板減少症ラット血漿由来TPOの生物学的特性分析 (1) ラットCFU-MKアッセイ系(液体培養系)において 代表例として、血小板減少症ラット血漿からのTPO部分精製標品(実施例1 −2の(8)に記載したYMC Pack Protein-RPカラムTPO活性画分F2)を用 いた場合の用量反応曲線を図5に示した。培養を経時的に顕微鏡下で観察したと ころ、日を追って巨核球の分化、成熟の進行、即ち細胞サイズの増大が認められ 、おそらく、細胞の増加も起こっていることと思われた。特に顕著な変化として 、培養最終日の4日目に数多くの巨核球による突起形成が認められた(培養3日 目ではほとんど認められない)。この突起形成は、cytoplasmic process format ion(LevenとYee、Blood、69巻、1046-1052頁、(1987))、あるいは、proplatel et process formation(Toppら、Blood7、76巻、912-924頁、(1990))などと呼 ばれ、巨核球からさらに分化の進んだ血小板の前駆構造体であり、現在までのと ころin vitroで観察できる巨核球分化の最終形態と考えられている。TPO標品 単独でこのような形態変化が高い頻度で認められたことから、本因子は単独でCF U-MKの増殖・分化を促進し、成熟 巨核球を生成させ、さらに最終的に血小板産生まで進行させる可能性が考えられ る。 (2) コロニーアッセイ系において 血小板減少症ラット血漿からのTPO部分精製標品について、ラットの非分離 骨髄細胞、分離・濃縮各段階の細胞、あるいはGpIIb/IIIa+ CFU-MK画分を用いた コロニーアッセイ系で検定したところ、ラット血漿由来のTPOは、巨核球コロ ニーを形成させた。TPOによって形成される巨核球コロニーと他の既知サイト カイン、即ち、ラットIL-3、マウスGM-CSF、あるいはヒトEPOによって形成され る巨核球コロニーを比較すると、TPOによって形成される巨核球コロニーには 、個々のコロニーを構成する巨核球数は少ないが、各々の巨核球のサイズが大き い、即ち成熟度が進んでいるという特徴がある。さらに、他の細胞系統のコロニ ーはほとんど形成されず、TPOが示すMeg-CSF活性は巨核球特異的な活性と考 えられる。これらのことから、TPOは、本コロニーアッセイ系においてMeg-CS F活性を発揮する他の既知サイトカイン、即ち、ラットIL-3、マウスGM-CSF、あ るいはヒトEPOとは、生物学的特性を異にし、ユニークなMeg-CSF活性を発揮する ことが明白となった。 ヒト骨髄細胞、あるいはヒト臍帯血細胞由来のCD34+DR+細胞画分に対しても血 小板減少症ラット血漿からのTPO部分精製標品はMeg-CSF活性を示し、有意な 数のヒト巨核球コロニーを形成させた。このことは本因子に種特異性のないこと を示している。 〈実施例4〉ラットTPO産生細胞の特定化 (1) ラットTPO産生臓器の探索 まず、ラットTPOの部分アミノ酸配列に基づくラットTPO遺伝子のクロー ニング、あるいは発現クローニングのためのmRNA供給源を確保する目的で、ラッ トTPO産生臓器の探索、特定化を行った。当初、P55抗体投与により血小板減 少症にしたラットから経時的に骨髄、肺、肝臓、脾臓を摘出し、その細胞(肺、 肝臓の場合は臓器切片)の培養上清を採取し、ラットCFU-MKアッセイ系にて上清 中の活性を評価したが、明確な結果は得られなかった。続いて、ラットにおける 肝臓とTPO産生との関連性を示唆する報告(Siemensmaら、J.Lab.Clin.Med .、86巻、817-833頁、(1975))を考慮して、P55抗体投与により血小板減少症に したラットの肝臓からコラゲナーゼか ん流法にて調製した肝細胞を培養し、その上清からWGA-Agaroseカラムに吸着し た画分をVydac phenyl逆相カラムに展開したところ、ラットCFU-MKアッセイ系に てラット血漿由来TPO活性と同じ位置に極めて類似した活性が認められた。正 常ラット肝細胞の培養上清からも弱いながらも活性が認められた。これらの結果 から、肝臓がTPO産生臓器の1つである可能性が強く示唆された。 (2) ラットTPO産生細胞株のスクリーニング 上記の結果を基に、ラットTPO産生細胞株のスクリーニングを行った。まず 、20種類のラット肝臓由来細胞株をそれぞれの継代培養用の培養液中でほぼコン フルエントになるまで培養した後、培養液に含まれる血清を5%FCSに統一したそ れぞれの培養液で置換して、さらに3日間培養を継続し、それぞれの培養上清を 採取した。その上清を(1)に記した方法で部分精製して、TPO産生の有無を 調べたところ、3種類のラット肝実質細胞由来細胞株、即ち、McA-RH8994細胞( ATCC寄託番号CRL1602、Beckerら、“Oncodevelopmental Gene Expression”ed. by Fishman and Sell、Academic Press、NY、259-270頁、(1976)、大日本製薬 より購入)、H4-II-E細胞(ATCC寄 託番号CRL1548、Pitotら、Nat.Cancer Inst.Monogr.、13巻、229-245頁、(1 964)、大日本製薬より購入)、およびHTC細胞(Thompsonら、Proc.Natl.Acad .Sci.USA、56巻、296-303頁、(1966)、大日本製薬より購入)から明らかに TPO活性の産生が確認された。 (3) McA-RH8994細胞、H4-II-E細胞、およびHTC細胞が産生するTPO活性の 詳細な分析 これらの3種類のラット細胞株から分泌されるTPO活性と平行して精製を進 めていたラット血漿由来のTPO活性を、生化学的性質と生物学的性質の両面か らさらに詳細に比較検討した。 McA-RH8994細胞を10%FCSを含むalpha-MEM(-)培養液に浮遊させて、底面積17 5cm2の組織培養用培養プラスティックフラスコに1×106個/フラスコになるよ うに入れ、5%炭酸ガス培養器中にて37℃で3日間培養した後、5%FCSを含むIMD M培養液に置き換え、さらに3日間培養し、上清を回収した。H4-II-E細胞を10%F CSを含むDulbecco改変Eagle培養液(グルコース4.5g/l含有)(以下、DMEM培養 液)に浮遊させて、底面積175cm2の組織培養用プラスティックフラスコに5×105 個/ フラスコになるように入れ、5%炭酸ガス培養器中にて37℃で3日間培養した後 、5%FCSを含むIMDM培養液に置き換え、さらに3日間培養し、上清を回収した。 また、HTC細胞を5%FCSを含むDMEM培養液に浮遊させて、底面積175cm2の組織培 養用プラスティックフラスコに2.5×105個/フラスコになるように入れ、5%炭 酸ガス培養器中にて37℃で3日間培養した後、5%FCSを含むIMDM培養液に置き換 え、さらに3日間培養し、上清を回収した。 このようにして得た3種類の細胞株の培養上清それぞれ2リットルから、実施 例1−2に記載したXRPからのTPOの精製法に従って、細胞株由来TPOの 部分精製を行った。以下に概略を述べる。 まず、限外濾過器により培養上清を約6倍に濃縮した後、Sephadex G-25カラ ムで20mM Tris-HCl(pH 8.0)にバッファー交換した。溶出液をQ-Sepharose FF カラムに添加し、20mM Tris-HCl(pH 8.0)で洗滌後、吸着画分を175mM NaClを 含む20mM Tris-HCl(pH 8.0)で溶出した。この画分をWGA-Agaroseカラムに添加 し、PBSで洗った後、吸着画分を0.2M GlcNAcと0.15M NaClを含む20mM Na Phosph ate(pH 7.2)により溶出 した。この溶出液をTSK-gel AF-BLUE 650MHカラムに添加し、1M NaClを含む20mM Na Phosphate(pH7.2)で洗った後、2M NaSCNにより溶出した。これをPhenyl-S epharose 6 FF/LSカラムに添加し、1.5M硫酸アンモニウム(Ammonium Sul1ate) を含む50mM Na Phosphate(pH7.2)、次いで0.8M硫酸アンモニウムを含む36mM N a Phosphateで洗った後、20mM Na Phosphate(pH 7.2)により溶出した。この吸 着画分を、濃縮後、逆相Vydac Protein C4カラム(The Separations Group社製 カタログ番号214TP51015;直径1cm、ベッド高15cm)で分画した。展開溶媒 Aに0.1%TFA、展開溶媒Bに0.05%TFAを含む1−プロパノールを用い、 予めカラムを20%Bで平衡化し、サンプルを注入後、流速1ml/minで20%Bか ら40%Bまで90分の直線濃度勾配により溶出した。この結果、どの細胞株由来の TPO活性も、30%から43%濃度の1‐プロパノールで溶出された。 各精製段階の標品をラットCFU-MKアッセイ系にて活性測定した結果、3種類の 細胞株由来のTPO活性はいずれもXRP由来のTPO活性と極めて類似した挙 動を示した(実施例1−2を参照)(表2に、ラットCFU-MKアッセイ系での各段 階におけ る相対比活性、活性収率などを記載)。さらに、最終段階の逆相カラムからの溶 出画分をラットCFU-MKアッセイ系にて活性測定した結果、3種類の細胞株由来の TPO活性とXRP由来のTPO活性は同じピーク位置に溶出されていた。この 逆相カラムの活性画分を中心に、ラットGpIIb/IIIa+CFU-MKの分離・濃縮過程の 付着細胞除去段階で得られる非付着性細胞を用いてコロニーアッセイを行ったと ころ、いずれもラットCFU-MKアッセイ系での活性の溶出パターンにほぼ一致して 巨核球コロニーの形成が認められ(表3)、また、XRP由来のTPO活性と同 様に、3種類の細胞株由来の活性はいずれも専ら巨核球コロニーを形成させ、他 の系統のコロニーはほとんど形成させなかった。 実施例1−2に記載した方法に従って、プールした逆相カラムの活性画分をSD Sポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、泳動後にゲルから蛋白質を抽出して 、ラットCFU-MKアッセイ系にて活性測定したところ、XRP由来のTPOは見か けの分子量17000〜22000、McA-RH8994細胞由来のTPOは見かけの分子量33000 〜39000、H4-II-E細胞由来のTPOは見かけの分子量31000〜38000、HTC細胞由 来のTPOは見かけの分子量 17000〜22000、および分子量28000〜35000を有していた。 以上のように、McA-RH8994細胞、H4-II-E細胞、およびHTC細胞が産生するTP O活性は、XRP由来のTPOと比べて、見かけ上の分子量の点で生化学的性質 を若干異にするものの、生物学的性質において同等であることが明らかとなった 。本発明において、ここで特筆すべきことは、血液中に存在するTPO活性を持 つ分子が、産生細胞において、あるいは産生細胞から分泌後に、分子内の特定な 、あるいは不特定な位置で切断されたものである可能性を示唆する。また、TP O遺伝子(mRNAやcDNA)においても様々な長さのものが存在する可能性をも示し たものである。 〈実施例5〉cDNAライブラリー作製用発現ベクター(pEF18S)の構築 ベクターへのcDNA断片の組み込みが容易で、クローニングしたcDNAの 発現効率が高いベクターを作製し、TPOcDNAのクローニングと発現に備え た。すなわち、発現効率が高いプロモーターとして知られるエロンゲーションフ ァクター1α(EF1α)のプロモーターを、扱いやすい発現ベクターpME1 8SのSRαプロモーターと入れ替え、発現ベクターpEF18Sを構築した( 図6参照)。エロンゲーションファクター1αのプロモーターは発現ベクターp EF‐BOS(Mizushimaら、Nucleic Acids Res.、18、5322、1990)1μgを 制限酵素HindIIIとEcoRIで部分的に消化した後、2%アガロースゲル(FMC BioP roducts社製)を用いた電気泳動にかけ、約1200bpのDNA断片を分離し、プレップ ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製;Willisら、BioTechniques、 9 、92-99、1990の方法にもとづいたもので、多孔性シリカベースのマトリックス を利用した吸着により選択的にDNAを精製するキット)を用いて精製した。こ のDNA断 片100ngを同様にHindIIIとEcoRIで消化した50ngの発現ベクターpME 18S(Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90、8957-8961、1993)につなぎ こんだ。宿主菌にはコンピテント・ハイE.coli DH5(東洋紡績社製;Hanahanら 、J.Mol.Biol.、166、557-580、1983の方法の変法により作製したコンピテン トな宿主菌)を用い、得られたコロニー12個をランダムに選びプラスミドDN Aを精製し、それらDNAの制限酵素での消化パターンにより目的のプラスミド (pEF18S)を含む10クローンの中から1個を選択し、大量にプラスミド DNAを調製した。 プラスミドDNAの精製は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Sprin g Harbor Laboratory Press (1989)]に記載されているようにして実施した。す なわち、上記のようにして得られたクローンpME18Sを50μg/mlのAmpicili nを含む50mlのLB培地(1%Bacto-tryptone、0.5%Bacto-yeast extract、 0.5 %NaCl)で一夜培養した後、遠心分離により得た菌体を4mlのTEG-lysozyme(25 mM Tris・Cl(pH8)、10mM EDTA、50mM Glucose、0.5%lysozyme)溶液に懸濁 し、8mlの0.2N NaOH/1%SDS溶液を加えてよく懸濁する。さらに3 M potassium/5M acetate溶液を6ml加えてよく懸濁した後遠心し、上清を得る 。上清はフェノール‐クロロホルム(1:1)処理後、等量のイソプロパノール を加えて遠心し、ペレットを得た。ペレットはTE溶液(10mMトリス‐塩酸(pH7, 5)、1mM EDTA)に溶解後、RNase処理、フェノール‐クロロホルム(11)処 理を施し、エタノール沈殿を行なう。ペレットを再度TE溶液に溶解し、NaCl、ポ リエチレングリコール3000をそれぞれ0.63M、7.5%になるように加えて遠心する 。最後に、ペレットはTE溶液に溶解後エタノール沈殿を行なう。これにより約30 0μgのプラスミドDNAを得た。このDNA100μgを制限酵素EcoRIおよびNot Iで完全に消化後、0.8%のアガロースゲル(FMC BioProducts社製)で泳動し 、ベクター断片を回収後プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社 製)で精製しおよそ55μgのプラスミドDNAを得た。このDNAを以下のc DNAライブラリー作製に使用した。 〈実施例6〉McA-RH8994細胞からのmRNAの精製 実施例4のコロニーアッセイの結果より比較的活性の高かったMcA-RH8994細胞 をラットTPOcDNAクローニングの材料 に選び以下の実験に供した。 全RNAの単離は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されているようにして実施した。McA-RH8994 細胞を直径90mmのシャーレ15枚に完全に密に増殖させた後、シャーレから培養液 を除き、1枚のシャーレ当り0.8mlの5Mグアニジン溶液(5Mグアニジンチオシ アナート、5mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)、0.1Mβ−メルカプトエタノール 、0.5%ザルコシル硫酸ナトリウム)を加え、よく懸濁した後1本のチューブに 混合液を集め、グアニジン溶液を加えて全量を20mlとした。この細胞が壊れて粘 稠になった混合液は、18Gさらに21Gの注射針を装填した20ml容の注射器を用い、 粘性がほとんどなくなるまでおよそ20回吸入排出を繰り返した。ベックマン社 製SW28ローターに合うポリアロマー製の遠心チューブに18mlの5.7M CsCl-0.1M E DTA(pH7.5)をクッションとして先に加えておき、チューブがほぼ満たされるよ うに上述の混合液約20mlを層が乱れないように静かに重層した。このようにして 調製された遠心チューブを20℃で25000r.p.m.、20時間遠心した後、得られたペ レットを少量の80%エタノールを用いて2回洗浄した。ペレットはTE溶液に 溶解せしめ、フェノール‐クロロホルム(1:1)にて抽出後、1/10量の3M 酢酸ナトリウムと2,5倍量のエタノールを加えてエタノール沈殿を行い全RNAを得 た(約108個の細胞より全RNA約2,5mgを得た)。 全RNAからのポリ(A)+RNAの精製はOligotexTM-dT30(Super)(日本合成ゴム/ 日本ロッシュ社製;ラテックス粒子の表面にオリゴdTが共有結合で固定してあ り、ポリ(A)+RNA精製に使われるオリゴdTカラムと同様にポリ(A)+RNAの精製が できる)を用いて行った。全RNA約500μgより20μgのポリ(A)+RNAを得た。 〈実施例7〉ラットcDNAライブラリーの構築 実施例6で得られた5μgのポリ(A)+RNAからTimeSaverTMcDNA Synthesis Kit (Pharmacia社製;Okayama-Berg法:Mol.Cell.Biol.、 2、161-170、1982、の 変法によるcDNA合成法のキット)およびDIRECTIONAL CLONING TOOLBOX(Pha rmacia社製;NotI配列を含むcDNA合成のためのプライマー:5′-AACTGGAAGA ATTCGCGGCCGCAGGAA(T)18-3′(配列番号15)並びにEcoRI配列付加用アダプター : 5′-AATTCGGCACGAG-3′(配列番号16)および5′-CTCGTGCCG-3′(配列番号17) のセット)を用いて、5’端にEcoRI、3’端にNotI認識部位を持つ2本鎖cDNA を合成した。合成したcDNAは1.2μgの予めEcoRIおよびNotIで処理した発現ベク ターpEF18S(実施例5参照)と連結させ、8.4mlのコンピテント・ハイE.c oli DH5(東洋紡績社製)を形質転換した。その結果、5.3×105 個の形質転換 体が得られた。 〈実施例8〉PCR法によるラットTPOcDNA断片の取得(クローニング) 実施例7で作製したMcA-RH8994cDNAライブラリー53万クローンを50μg/mlの Ampicilinを含む50mlのLB培地で一夜培養した後、遠心分離により得た菌体からQ IAGEN-tip100(DIAGEN社製;DNA精製用シリカゲルベースの陰イオン交換カラ ム)を用いてMcA-RH8994cDNAライブラリープラスミドを精製し、約200μgの プラスミドDNAを得た。 実施例2に記載のペプチド断片AP8のアミノ酸配列に対応する2種類のアン チセンスヌクレオチドプライマーAP8-1R,AP8-2R、及びcDNAライブラリー作製に 用いた図6に示したプラスミドベクターpEF18Sのヒトエロンゲーションフ ァクタ ー1αの第1イントロンに対応するセンスヌクレオチドプライマーEF1α-1,EF1 α-2を合成した。合成にはアプライドバイオシステムズ社製394DNA/RN Aシンセサイザー(β‐シアノエチルアミダイト法にもとづく合成機)を使用し 、同社製の合成DNA精製用OPCカラム(逆相シリカゲルを充填したカラムでト リチル基を持つ合成DNAを精製するカラム)を用いて精製した。精製した合成 DNAはTE溶液に50μMとなるように溶解し、使用時まで−20℃に保存した 。以下用いる合成オリゴヌクレオチドは全て同様に合成並びに精製して使用した 。 プライマーAP8-1R,AP8-2Rは、連続した17個のヌクレオチドからなる混合型プ ライマーであり、タカハシらの研究にあるようにデオキシイノシンを使用した( Takahashi,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82,1931-1935(1985))。 プライマーEF1α-1,EF1α-2は、Uetsuki,et al.,J.Bio1.Chem.264,5791 -5798(1989)にあるゲノム配列の1491−1512、1513−1532に相当するヌクレオ チド配列を基にして合成したそれぞれ21、20個のヌクレオチドからなるプライマ ーである。 McA-RH8994cDNAライブラリープラスミド3μgを鋳型とし、AP8-1R(500pmol) 、EF1 α-1(100pmol)をプライマーとして、GeneAmpTMPCR Reagent Kit with A mpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製;PCR用耐熱性Taqlポリメラーゼ、反 応バッファー、dNTPのセット)を用いて、GeneAmpTM PCR System 9600(PERKIN-ELMER社製;PCR用反応機)により100μlの容量で PCR反応(95℃で2分間加熱後、95℃で1分間の変性条件、40℃で1分間のアニ ール条件、72℃で1分間の合成条件で35回の反応を行い、さらに7分間72℃でイ ンキュベート)を行った。増幅されたDNA断片の特異性を上げるために、得ら れたPCR反応液1μlを鋳型とし、EF1 α-2(100pmol)、AP8-2R(500pmol) をプライマーとして、同様に100μlの容量でPCR反応(95℃で2分間加熱後、95 ℃で1分間の変性条件、45℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件 で35回の反応を行い、さらに7分間72℃でインキュベート)を行った。 ここで得られた反応液を、2%アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用 いた電気泳動にかけ、このPCR反応の主要産物である約330bpのDNA断片を分離 し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)を用いて精製し た。このDNA断片をT4DNAリガーゼ(ライフテクノロジー社製)を用いてpCRTMII (Invitrogen社製;PCR産物TAクローニング用ベクター:PCRに使用する 耐熱性ポリメラーゼが末端トランスフェラーゼ活性を有するために、PCRで増 幅した DNAの3’末端にデオキシアデニル酸を1個付加する性質を利用し、5’‐d T突出末端を持つベクタ−pCRTMIIにそのままサブクローニングする方法)ベク ターにサブクローンした。任意に選択した28クローンについてQIAGEN‐t ip100(DIAGEN社製)を使用してプラスミドDNAを精製し、これをTaq Dy e DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit(アプライドバイオシステムズ社製 ;PCRを利用した、蛍光色素で行なうジデオキシ法:Sangerら、Proc.Natl. Acad.Sci.USA、74、5463-5467、1977)を用いて、アプライドバイオシステム ズ社製373ADNAシークエンサー(蛍光シークエンサー)によりシークエンスし、 各クローンの塩基配列を決定した。 得られたDNA断片の中で、AP8のアミノ酸のN末端側3個(Ile/Thr /Ser)‐Val‐ProをAP8-2Rのプライマーに隣接してコードするものを 選択し、全長をシークエンスしたところ、261bpを有するcDNAを含んでいた。 このcDNA断片の173〜175の塩基配列はメチオニンをコードするものであり コーディングのフレームはAP8のアミノ酸のフレームと一致した。またこの配 列の前後はKozakの配列(Kozak,M.,Cell,44,283-292、1986)に適合すること から翻訳の開始部 位と推定され、ラットTPOタンパク質のN末部分をコードするcDNA断片と考え られた。このcDNA断片をA1と命名した。ベクターの配列を除いたA1断片の塩 基配列およびそれから演繹されるアミノ酸配列を配列表(配列番号1)に示した 。 〈実施例9〉PCR法によるラットTPOcDNAのスクリーニング 前述のcDNAライブラリーを約1万クローンづつのプールに分け、50μg/mlのAm picilinを含む1mlのLB培地中で一夜培養した後、プラスミド自動分離装置PI-10 0(倉敷紡績社製、VER-3.0;アルカリSDS法:Molecular Cloning[Sambrook ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989]:の変法にもとづくプラス ミドDNA自動抽出機)を用いてプラスミドDNAを抽出した。その1/30量を鋳型 としてフラグメントA1をもとに設計した2種の合成オリゴヌクレオチド 5’CGAGGGTGTACCTGGGTCCTG3’(配列番号31)(配列 番号1の配列の1-17のセンス配列;CGAGはアダプターの配列)および 5’CAGAGTTAGTCTTGCGGTGAG3’(配列番号32)(配列 番号1の配列の212-232のアンチセンス配列) をプライマーとして合成・精製し、GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTM DNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System9600(PERKIN-EL MER社製)によりPCR反応(94℃で30秒間の変性条件、66℃で30秒間のアニール条 件、72℃で1分間の合成条件で30回の反応)を行った結果、100プール中3プー ルに236bpの特異的バンドが検出された。このうちの1プールを約900クローンづ つのプールに分けプラスミドDNAを抽出し、同様のPCR反応を行ったところ、1 00プール中3プールにバンドが検出された。さらにこのうちの1プールを40クロ ーンづつのプールに分け、同様の選別を行なった結果100プール中3プールで特 異的と考えられるバンドが観察された。これらのうち1プールを選び50μg/mlの Ampicilinを含むLBプレート(15%アガーを含むLB培地)上に蒔き、出現した 1つ1つのコロニーについてプラスミドDNAを抽出し同様のPCR反応を行った 結果、100クローン中2クローンで陽性バンドを検出した。 〈実施例10〉ラットTPOcDNAのシークエンス プラスミドDNAの精製は本質的にMolecular Cloning [Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されてい るようにして実施した。実施例9で最終的に得られた2個のクローンを50μg/ml のAmpicilinを含む50mlのLB培地で一夜培養した後、実施例6と同様に精製し、 最終的に約300μgのプラスミドDNAを得た。 ここで得られたプラスミドDNAをTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、実施例8と同様にシークエ ンスし、cDNA全長の塩基配列を決定した。その結果、2個のクローンの塩基 配列は完全に一致し同一のクローンであることが明かとなった。この中から1ク ローンを選び該cDNAを担持したプラスミドクローンをpEF18S‐A2α と命名した。塩基配列およびそれから演繹されるアミノ酸配列を配列表(配列番 号2)に示した。 配列表(配列番号2)に示す配列の特徴は顕著である。172bpの5’非翻訳領域 後の配列は、メチオニンに始まる21個のタンパク質から成る分泌のためのシグナ ル配列と推定される、疎水性に富むアミノ酸をコードしている。このタンパク質 は126個のアミノ酸残基を有し、停止コドン(TAA)の後に1025ヌ クレオチドの3’非翻訳配列及びポリA尾部の多数のアデニンが続く。このタン パク質中には、実施例2で解析された部分アミノ酸配列AP8に対応する配列の みが含まれていた(配列番号2におけるアミノ酸番号1〜12)。N−グリコシ ル化のための配列部位は存在しない。また、3’非翻訳配列末端近くの1624〜162 9のヌクレオチド配列は、コンセンサス配列とは異なるが、潜在的ポリアデニル 化配列と考えられる。 大腸菌DH5に担持されたベクターpEF18S‐A2αは1994年2月1 4日付で通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM B P−4565として寄託した。 〈実施例11〉ラットTPOcDNAのCOS1細胞での発現及びTPO活性の確認 プラスミドpEF18S−A2αのCoS1細胞へのトランスフェクションは、ク ロロキン処理を含むDEAE‐デキストラン法(Sompayracら、Proc.Natl.Acad.S ci.USA 78巻、7575-7578頁、(1981);Luthmanら、Nucl.Acids Res.、11巻、 1295-1308頁、(1983))に若干の改変を加えた以下の方法に 従い実施した。10%FCSを含むDMEM培養液に浮遊させたCOS1細胞(ATCC CRL1650) を直径100mmの組織培養用プラスティックシャーレに入れ、5%炭酸ガス培養器中 にて37℃で約40%コンフルエントになるまで培養した。一方、500μg/mlのDEAE ‐デキストラン(ファルマシア社)、80μMのクロロキン(シグマ社)、8%(v /v)のHBS(21mM HEPES‐145mM NaCl、pH7.1)及び9%(v/v)のNu-Serum(コ ラボレイティブ社)を含む4mlのDMEM培養液に30μlのHBSに溶解したプラスミ ドpEF18S−A2α(10μg)を混和し、トランスフェクション直前にDMEM 培養液で2度洗浄した上記のCOS1細胞に添加した後、5%炭酸ガス培養器中にて 37℃で5時間培養した。その後、培養上清を吸引除去しDMEM培養液でシャーレを 2度洗浄した後、10%FCSを含むDMEM培養液を15ml加え、5%炭酸ガス培養器中 にて37℃で3日ないしは5日間培養し、培養上清を回収した。 得られた培養上清をIMDM培養液に対して十分に透析後、ラットCFU‐M Kアッセイ系で評価した。その結果、プラスミドpEF18S−A2αをトラン スフェクションして発現させたCOS1細胞の培養上清中に用量依存的にTPO活性が 認められ(図7)、また、ラットTPOの場合と同様に培養4日目に多数 のcytoplasmic process formation形成が認められた。一方、インサートを含ま ないプラスミドpEF18SをトランスフェクションしたCOS1細胞培養上清では TPO活性は検出されなかった(図7)。また、M‐07eアッセイ系においても 、プラスミドpEF18S−A2αをトランスフェクションして発現させたCOS1 細胞の培養上清中に用量依存的にM-07e細胞増殖促進活性が認められ、インサー トを含まないプラスミドpEF18SをトランスフェクションしたCOS1細胞培養 上清では活性が認められなかった。これらの結果から、pEF18S−A2αが TPO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を担持していることが確認され た。 次に、このTPO活性のin vivo血小板増加作用を調べるため、部分精製品を調製 した。調製過程でのTPO活性測定には、ラットCFU-MKアッセイ系を用いた。まず 、プラスミドpEF18S−A2αをトランスフェクションしたCOS1細胞を 、0.2mgのBSAを含む無血清培養液で3日間培養し、約5.8Lの無血清 培養上清を得た。その無血清培養上清に、p−APMSFを最終濃度1mM加え 、0.22μmの濾過フィルターで通過する濾液をとった。この体積5793ml (蛋白質濃 度0.229mg/ml、総蛋白質量1326mg、相対活性1000、総活性 量1326080)に対し1000ml当り0.85molesのNaCl(合計288g)を加 え、最終濃度0.822M NaCl,5849mlの溶液とした後、1M NaCl,20mM Na Phospha te pH7.2で予め平衡化してあったTSK-gel AF-BLUE 650MHカラム(トーソー社製 、カタログ番号08705;直径5cm、ベッド高6cm)に、流速7ml/minで添加した 。添加終了後、20mMNa Phosphate,1M NaCl,pH7.2で溶出される素通り(約790 0ml)を集め、これを限外濾過ユニット(フィルトロン社・オメガウルトラセッ ト 分子量8000カット)で濃縮し、素通り画分F1(460ml,蛋白質濃度2.11mg/m l,総蛋白質量973mg,相対活性16.3)を得た。次に、溶出液を2M NaSCNにかえ、 溶出されたTSK-gel AF-BLUE 650MH吸着TPO活性画分F2(2840ml)を限外濾 過ユニット(アミコン社製;YM3膜、直径76mm)を用いて、6.81mlまで濃縮 した。このTPO活性画分F2の総蛋白質量は12.5mg、このステップでのF2の 蛋白質収量は0.62%であった。また、TPOの相対活性は、240であった。次に、 HiLoad 26/60 Superdex200pg(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17 -1071-01;直径2.6cm、ベッド高60cm) カラムに注入し、流速1ml/minで、50mMのNaClを含む20mM Na Acetate,pH5.5 で展開した。展開開始後に溶出した194mlから260mlまでの範囲の画分にTPO活 性が確認できた。そこで、これをまとめて、Superdex200pgのTPO活性画分F 2(66ml,蛋白質濃度0.112mg/ml,総蛋白質量7.41mg,相対活性142860、総活性 量1058600)とした。次に、展開溶媒A(20mM Na Acetate,pH5.5)および展開 溶媒B(500mMのNaClを含む20mM Na Phophate,pH7.2)を用意し、100%Aで 平衡化した強陽イオン交換カラムのRESOURCE S(ファルマシア バイオテク社製 、カタログ番号17-1178-01;直径0.64cm、ベッド高3cm)カラムに、流速1ml/ minで、注入した。次いで、流速0.3ml/minで、40分かけて100%Aから100% Bまでの直線濃度勾配にて展開した。アッセイの結果、広い範囲(5%Bから3 2%Bの範囲)にTPO活性が溶出されていることが分かった。このTPO活性画 分をまとめて、限外濾過ユニット(アミコン社製;YM3膜、直径25mm)で濃 縮し、RESOURCE SのTPO活性画分F2(1.65ml,蛋白質濃度4.74mg/ml,総蛋白 質量7.82mg,相対活性71400、総活性量558600)を得ることができた。 得られた標品は純粋なTPO標品ではなかったが、ラットCFU-MKアッセイ系に おいて、十分に高い活性が確認されたので、マウスへの投与実験を実施した。即 ち、投与前日に血小板数を測定しておいたICR系マウス(9週齢;♂)の皮下 へ、TPO部分精製品(474μg(100μl)/マウス/日)、対照としてBSA(200 μg(100μl)/マウス/日)、あるいは対照としてTPO部分精製品が溶解され ている緩衝液と同じ組成の緩衝液(100μl/マウス/日)を5日間連日投与し 、6日目に心臓より採血して血小板数を測定した(F800;東亜医用電子)。TP O部分精製品投与マウスでは投与前に比べて平均して約2.14倍の血小板数の増加 を認めた。また、投与群の間で比較すると、TPO部分精製品投与マウスでは、 BSA投与マウスに比べて約1.74倍、あるいは緩衝液のみを投与したマウスに比べ て約1.90倍の血小板数の増加を認めた。この結果から、TPOが生体内において血 小板増加作用を有することが明らかとなった。なお、TPO部分精製品投与マウ スにおいて、マウスの急性期蛋白質の1種であるimmunosuppresive acidic prot ein(IAP)の増加が認められなかったことから、TPOは急性期蛋白質の誘導に関 してIL-6やIL-11とは性格を異にすることが強く示唆さ れた。 〈実施例12〉ラット各種組織でのTPOmRNAの検出 ラットTPOmRNAがラット体内においてどの組織で発現しているかを確認 するために、ラットの各種組織よりRNAを抽出した。実施例1に記載されてい るものと同様にX線照射を行なった11日目ないし14日目のラット6匹より各 種組織(脳、胸腺、肺、肝臓、心臓、脾臓、小腸、腎臓、精巣および骨髄細胞) を摘出し速やかに液体窒素で凍結した。全RNAの抽出にはRNA単離用試薬I SOGEN(和光純薬)を使用した。凍結した組織の重量に応じた量のISOG EN試薬を加え、ホモジナイザー(ヒスコトロン;日音医理科器械製作所;NS ‐60)により、組織が完全に破砕されるまで(およそ10000RPMで45〜6 0秒)処理した後、全RNA抽出操作を行なった(ChomczynskiらのAcid Guanid ium Phenol Chroloform法にもとづく抽出法:Anal.Biochem.、162:156-159、1 987を参照)。その結果、それぞれの組織より1.1mg〜5.6mgの全RNAが得 られた。 全RNAからポリ(A)+RNAの精製はOligotexTM-dT30(Super) (日本合成ゴム/日本ロッシュ社製)を用いて行い全RNA約500μgより20μgの ポリ(A)+RNAを得た。 得られた各種組織のポリ(A)+RNAそれぞれ1μgよりランダムプライマーを使 用してcDNAの1本鎖目を合成した。ポリ(A)+RNA1μgを10μlの滅菌水に 溶かし70℃で15分間加温後急冷し、75pmoleランダムプライマー(宝酒造 社製)、10U RNase Inhibitor(ベーリンガーマンハイム社製)、50mM Tr is-HCl(pH8.3)、75mM KCl、3mMMgCl2、200U superScriptTMII( ライフテクノロジー社製逆転写酵素)となるようにそれぞれの試薬を加え(全量 20μl)、37℃で1時間保温した。反応液を70℃で10分間加熱し酵素を 失活させた後−20℃で使用時まで保存した。 実施例10で得られたラットTPOのcDNA配列より新たにPCR用プライ マーを合成した。合成したプライマーの配列は以下の通り。 rTPO‐I:5’‐CCTGTCCTGCTGCCTGCTGTG‐3’( 配列番号33)(配列番号2の347〜367) rTPO‐N:5’‐TGAAGTTCGTCTCCAACAATC‐3’( 配列番号34)(配列番号2の1005〜1025に対 応するアンチセンス) 合成したcDNA反応液のそれぞれ0.1容を鋳型に用いここで合成したプライマー (rTPO‐I、rTPO‐N)をそれぞれ1μM使用してPCRを実施した。 GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用 いて、GeneAmpTMPCR System9600(PERKIN-ELMER社製)により100μlの容量でPC R反応(95℃で2分間加熱後、95℃で1分間の変性条件、57℃で1分間のアニー ル条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反応を行い、さらに7分間72℃でイン キュベート)を行った。ここで得られた反応液を、2%アガロースゲル(FMC Bi oProducts社製)を用いた電気泳動にかけ増幅されたバンドを観察したところ、 脳、肝臓、小腸並びに腎臓で特異的と考えられるバンドが観察された。この結果 より、発現量の多少は判断できないがラットにおいてはこれらの組織でTPOm RNAが発現していると考えられた。人においても同様な発現様式を示すことが 示唆されるが実施例4の結果と合わせて考えると、肝臓がヒトTPOcDNA取 得のための出発材料としては適当であると判断された。 〈実施例13〉ヒト正常肝臓由来cDNAライブラリーの構築 実施例12の結果より、肝臓をヒトTPOcDNAクローニングのための材料 に選び、市販の正常ヒト肝臓由来ポリ(A)+RNA(Clontech社製:Chomczynskiら のAcid Guanidium Phenol Chroloform法にもとづいて抽出したもの)5μgを用 い実施例7と同様にTimeSaverTMcDNA Synthesis Kit(Pharmacia社製)およびDI RECTIONAL CLONING TOOLBOX(Pharmacia社製)を使用して、5’端にEcoRI、3 ’端にNotI認識部位を持つ2本鎖cDNΛを合成した。合成したcDNAは1.2μgの予 めEcoRIおよびNotIで処理した発現ベクターpEF18Sと連結させ、8.4mlのコ ンピテント・ハイE.coli DH5(東洋紡績社製)を形質転換した。その結果、1.2 ×106個の形質転換体が得られた。 〈実施例14〉PCRによるヒトTPOcDNA断片の取得(クローニング) 市販の正常ヒト肝臓由来ポリ(A)+RNA(Clontech社製)1μgよりランダム プライマーを使用してcDNAの1本鎖目を合成した。ポリ(A)+RNA1μgを10 μlの滅菌水に溶かし70 ℃で15分間加温後急冷し、75pmoleランダムプライマー(宝酒造社製)、1 0U RNase Inhibitor(ベーリンガーマンハイム社製)、50mM Tris-HCl(pH8. 3)、75mM KCl、3mM MgCl2、200U SuperScriptTMII(ライフテク ノロジー社製)となるようにそれぞれの試薬を加え(全量20μl)、37℃で 1時間保温した。反応液を70℃で10分間加熱し酵素を失活させた後−20℃ で使用時まで保存した。 ラットTPOcDNA配列(配列番号2)よりPCR用プライマーを合成した。プ ライマーの配列は以下の通り。 rTPO‐AIN:5’‐ATGGAGCTGACTGATTTGCTC−3 ’(配列番号35)(配列番号2の173〜193) rTPO‐N:5’‐TGAAGTTCGTCTCCAACAATC‐3’( 配列番号36)(配列番号2の1005〜1025に対応するアンチセンス) 合成したcDNA反応液の0.1容を鋳型に用いここで合成したプライマー(rTP O‐AIN、rTPO‐N)をそれぞれ1μM使用してPCRを実施した。Gene AmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて 、GeneAmpTMPCR System9600(PERKIN-ELMER社製)により 100μlの容量でPCR反応(95℃で2分間加熱後、95℃で1分間の変性条件、40℃ で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件で35回の反応を行い、さらに 7分間72℃でインキュベート)を行った。 ここで得られた反応液を、2%アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用 いた電気泳動にかけ、このPCR反応の主要産物である約620bpのDNA断片を分離し 、プレップ−A−ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)を用いて精製した 。この精製したDNA断片をTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit(ア プライドバイオシステムズ社製)を用いて、アプライドバイオシステムズ社製37 3ADNAシークエンサーにより直接シークエンスしヌクレオチド配列を決定した。 プライマー部分を除く塩基配列およびそれから演繹されるアミノ酸配列を配列表 (配列番号3)に示した。 このDNA断片はプライマー配列を除くと580bpの長さを有し、ラットcDNA 塩基配列との比較を行なった結果、86%の相同性を持つことが明かとなり、ヒ トTPOcDNAの一部をコードするDNA断片であると考えられた。 〈実施例15〉PCR法によるヒトTPOcDNAのスクリ−ニング 配列番号3をもとにヒトTPOに対応するPCR用プライマーを合成した。配 列は以下の通り。 hTPO‐I:5’‐TTGTGACCTCCGAGTCCTCAG‐3’( 配列番号37)(配列番号3の60-80) hTPO‐J:5’‐TGACGCAGAGGGTGGACCCTC‐3’( 配列番号38)(配列番号3の479-499に対応するアンチセンス) 実施例13において構築したヒトcDNAライブラリーを増幅し約10万個のクロ ーンを1個の集団とするプールに分割し、50μg/mlのAmpicilinを含む1mlの LB培地中で一夜培養した後、プラスミド自動分離装置PI-100(倉敷紡績社製、 VER-3.0)を用いてプラスミドDNAを抽出した。抽出したDNAはTE溶液に溶解した 。 抽出したDNAの5%を鋳型として使用し、合成したプライマー(hTPO‐I 、hTPO‐J)をそれぞれ1μM使ってPCRを実施した。GeneAmpTMPCR Rea gent Kli with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて、 GeneAmpTMPCR System9600(PERKIN-ELMER社製)により20μlの容量でPCR反応( 95℃で1分間の変性条件、59℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条 件で35回の反応を行い、さらに7分間72℃でインキュベート)を行った結果、9 0プール中3プールで特異的と考えられるバンドが検出された。これらのうち1 プールを選び、約5000クローンづつのプールに分け90プールよりプラスミ ドDNAを精製し、再度同一の条件でPCRを実施した。その結果、5個のプール でバンドが検出された。これらより1プールを選択し250個のクローンを1プ ールとするサブプールに分け、90プールについてプラスミドDNAを抽出した。 これらについて同様にPCRを行なった処、3個のプールでバンドが観察された 。これらより1プールを選択し30個のクローンを1プールとしてサブプールを 作り、90プールからプラスミドDNAを精製しPCRを実施した結果3個のプ ールでバンドが観察された。これらのうち1プールを選び50μg/mlのAmpicili nを含むLBプレート上にまき、90個のコロニーについて同様にプラスミドDNA を抽出しPCRによる確認を行なった結果、最終的にクローンHL34を得た。 〈実施例16〉ヒトTPOcDNAのシークエンス プラスミドDNAの精製は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Sprin g Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されているようにして実施した。ク ローンHL34を50μg/mlのAmpicilinを含む50mlのLB培地で一夜培養した後、 遠心分離により得た菌体を4mlのTEG-lysozyme溶液に懸濁し、8mlの0.2N NaOH/ 1%SDS溶液を加えてよく懸濁する。さらに3M potassium/5M acetate溶液を6m l加えてよく懸濁した後遠心し、上清を得る。上清はフェノールークロロホルム (1:1)処理後、等量のイソプロパノールを加えて遠心し、ペレットを得た。 ペレットはTE溶液に溶解後、RNAse処理、フェノール−クロロホルム(1:1) 処理を施し、エタノール沈殿を行なう。ペレットを再度TE溶液に溶解し、NaCl、 ポリエチレングリコール3000をそれぞれ0.63M、7.5%になるように加えて遠心す る。最後に、ペレットはTE溶液に溶解後エタノール沈殿を行なう。これにより約 300μgのプラスミドDNA pEF18S−HL34を得た。 精製したプラスミドDNAについてTaq Dye DeoxyTM Terminater Cycle Sequening Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、 アプライドバイオシステムズ社製373ADNAシークエンサーによりシークエンスし 、全長のヌクレオチド配列を決定した。ヌクレオチド配列およびそれから演繹さ れるアミノ酸配列を配列表(配列番号4)に示した。ヌクレオチド配列決定に必 要なプライマーは配列番号3の配列をもとに合成したプライマー並びに、それら のプライマーによるシークエンス反応で解析された内部配列をもとに設計した合 成プライマーを使用した。 その結果、得られたプラスミドクローンpEF18S−HL34は861塩基 対のcDNA断片を含み、実施例2で分析されたラットTPOの部分アミノ酸配 列AP8(配列番号4:アミノ酸番号1〜12)及びTP2/TP3(配列番号 4:アミノ酸番号157〜162)と相同性の高い配列が確認された。このDN A断片は、25塩基目から始まるオープンリーディングフレームをコードしてい ると考えられたが、終止コドンは無く3’端には76塩基からなるポリA尾部様 配列を持っていた。ポリA尾部様配列直前までの253個のアミノ酸配列はラッ トTPOcDNAのもの(配列番号2の147残基のアミノ酸配 列部分)と比較すると84%の相同性を持っておりラットTPOに対応するヒト のcDNAの一部をコードするDNA断片と考えられた。終止コドンが無く3’ 端にポリA尾部様配列を持っていたことから、このクローンは完全なcDNAを 反映するものではなく、cDNAライブラリー作製時の人工産物であることが示 唆された。 〈実施例17〉ヒトTPOcDNAのCOS1細胞での発現及びTPO活性の確認 得られたプラスミドクローンpEF18−HL34のCOS1細胞へのトランス フェクションは、実施例11に従って行なった。すなわちプラスミDNA10μ gを使用しクロロキン処理を含むDEAE‐デキストラン法を用いたトランスフ ェクションを行ない、3日ないし5日後に培養上清を回収した。 得られた培養上清をIMDM培養液に対して十分に透析後、ラットCFU‐M Kアッセイ系で評価した。その結果、pEF18S−HL34をトランスフェク ションして発現させたCOS1細胞培養上清では用量依存的にTPO活性が認め られ(図8)、また、培養4日目に多数の巨核球による突起形成が観察された。 一方、インサートを含まない発現プラスミドをト ランスフェクションしたCOS1細胞培養上清では活性が認められなかった(図 8)。また、M‐07eアッセイ系においてもpEF18S−HL34をトラン スフェクションして発現させたCOS1細胞培養上清にのみM‐07e細胞増殖 促進活性が認められた。これらの結果から、pEF18S−HL34がTPO活 性を有するタンパク質をコードする遺伝子cDNA断片を担持していることが判 明した。また、ヒトTPOがラットにも作用する(種特異性がない)ことも明ら かとなった。 〈実施例18〉ヒトTPO欠失型cDNAの発現及びTPO活性の確認 実施例15で得られたクローンHL34のヒトTPOcDNAは、その3’側 にポリA尾部様の連続配列を持っていたが、この配列はラットTPOcDNAに は観られず実験上の人工産物である可能性が示唆された。そこで、このポリA尾 部様配列を欠失させたcDNAを作製し、発現させた蛋白質がTPOとしての活 性を示すか検討した。欠失体の作製にはPCRを利用した。PCR用プライマー の配列を下記に示す。それぞれの5’端には制限酵素認識配列を付加してある( hTPO5にはEcoRI、hTPO3にはNotI並びに2つのス トップコドンTAATGAを付加した)。 実施例16で得られたプラスミドクローンpEF18S−HL34のプラスミ ドDNA1μgを鋳型として使用し、合成したプライマー(hTPO5、hTP O3)各10μMを使ってPCRを実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System9600 (PERKIN-ELMER社製)により100μlの容量でPCR反応(95℃で1分間の変性条件 、65℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件で15回の反応を行い、 さらに7分間72℃でインキュベート)を行った。得られた約800bpのバンドを 制限酵素EcoRI並びにNotIで消化後精製し、同様に制限酵素処理した発現ベクタ ーpEF18Sにサブクローニングした。得られた形質転換体より約800bpの DNA断片を含むクローンを5個選択しプラスミドDNAを大 量調製した(方法は実施例5参照)。それぞれのプラスミドについては、PCR で増幅した部分の約800bp全領域に関してヌクレオチド配列の決定を行ない実 施例16で解析したヌクレオチド配列(配列番号4の1-780)と完全に一致して いることを確認した。 このプラスミドクローンをpHT1‐231と命名した。大腸菌DH5に担持 されたベクターpHT1‐231は1994年2月14日付で通商産業省工業技 術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP−4564として寄託し た。 得られたプラスミドのCOS1細胞での発現は実施例11に従って行なった。 すなわちプラスミドDNA各10μgを使用しクロロキン処理を含むDEAE‐ デキストラン法を用いたトランスフェクションを行ない、3日ないし5日後に培 養上清を回収した。 得られた培養上清をIMDM培養液に対して透析後、ラットCFU‐MKアッ セイ系で評価した。その結果、pHT1−231をトランスフェクションして発 現させたCOS1細胞培養上清ではTPO活性が認められ(図9)、また、培養 4日目に多数の巨核球による突起形成が観察された。一方、cDNA インサートを含まない発現プラスミドをトランスフェクションしたCOS1細胞 培養上清では活性が認められなかった(図9)。また、M‐07eアッセイ系に おいてもpHT1−231をトランスフェクションして発現させたCOS1細胞 培養上清にのみM‐07e細胞増殖促進活性が認められた。これらの結果から、 pHT1−231に含まれるcDNA断片はPO活性を有するタンパク質をコー ドする遺伝子であることが明らかとなった。 〈実施例19〉PCRによるヒトTPOC末側領域のクローニング 実施例15で得られたクローンHL34のヒトTPOcDNAはその3’末端 にポリA尾部様配列を持っており、3’部分は不完全なクローンであることが示 唆された。そこで、PCRにより完全長の3’領域を取得することを試みた。実 施例16で決定した塩基配列よりPCR用5’側プライマーを4種類合成した。 また、3’側プライマーとしてはポリA部分直後からの増幅を期待して3’端 にミックスのヌクレオチドを4ベース含む以下のプライマーを合成した。また、 ミックス部分を含まないアンカープライマーも合成した。 実施例14と同様にヒト正常肝臓由来ポリ(A)+RNA(Clontech社製)1μg よりcDNAの1本鎖目を合成した。 ただし、プライマーとしてはオリゴdTプライマー(Pharmacia社製のTimeSaverTM cDNA Synthesis Kitに添付のものを0.5μg)を使用した。cDNA合成の反 応液の0.1容を鋳型として1回目のPCRを実施した。PCRにはGeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)並びに、GeneAmpT M PCR System9600(PERKIN-ELMER社製)を用いた。プライマーにはhTPO‐H (20μM)及びhTPO3mix(10μM)を使用し50μlの容量で反応を行なっ た(96℃2分間の後に、96℃1分間/48℃1分間/72℃1分間を10サイクル反応 し、さらに72℃7分間)。 1回目の反応液の0.1容を鋳型として2回目のPCRを行なった。プライマー にはhTPO‐K(20μM)及びhTPO3mix(10μM)を使用し50μlの容 量で反応を行なった(96℃2分間の後に、96℃1分間/63℃1分間/72℃1分間 を10サイクル反応し、さらに72℃7分間)。 2回目の反応液の0.1容を鋳型として3回目のPCRを行なった。プライマー にはhTPO‐N(20μM)及びhTPO3mix(10μM)を使用し50μlの容 量で反応を行なった(96℃2分間の後に、96℃1分間/63℃1分間/72℃1分間 を10サ イクル反応し、さらに72℃7分間)。 3回目の反応液の0.1容を鋳型として4回目のPCRを行なった。プライマー にはhTPO−O(20μM)及びhTPO3mix(10μM)を使用し50μlの容 量で反応を行なった(96℃2分間の後に、96℃1分間/63℃1分間/72℃1分間 を10サイクル反応し、さらに72℃7分間)。 4回目の反応液の0.1容を鋳型として5回目のPCRを行なった。プライマー にはhTPO‐O(20μM)及びhTPO3anchor(20μM)を使用し50μlの 容量で反応を行なった(96℃2分間の後に、96℃1分間/58℃1分間/72℃1分 間を10サイクル反応し、さらに72℃7分間)。 ここで得られた反応液を、2%アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用 いた電気泳動にかけ、このPCR反応の主要産物である約600bpのDNA断片を分離 し、プレップ−A−ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)を用いて精製し た。この精製したDNA断片をTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit( アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、アプライドバイオシステムズ社製 373ADNAシークエンサーにより直接シークエンスし塩基配列を決定した。塩基配 列 およびそれから演繹されるアミノ酸配列を配列表(配列番号5)に示した。 このDNA断片はプライマーhTPO‐Oに始まる130個のアミノ酸をコー ドするヌクレオチド配列を持っており、さらに3’側に180塩基以上の配列が 続いていた(577塩基目以降は解読できなかった)。このDNA断片にコードさ れるグリシンに始まる30個のアミノ酸配列は配列番号4で記載したアミノ酸番 号203〜232のアミノ酸配列と一致した。同時に1番から94番目までの塩 基配列も配列番号4の692〜785のものと一致していた。 実施例17のcDNA断片の解析及び本例のPCR増幅断片の解析の結果より 、配列番号6に記載するように、ヒトTPOタンパク質は21残基のシグナル配 列を含む353個のアミノ酸からなると推定される。 〈実施例20〉ヒト正常肝臓由来cDNAライブラリーの再構築 実施例15で得られたクローンHL34は、オープンリーディングフレームに 終止コドンを持たず、その3’末端にポリA尾部様配列を持っておりcDNA合 成の際の人工産物であるこ とが考えられたため、新たに市販の正常ヒト肝臓由来ポリ(A)+RNA(Clontech 社製)5μgを用い、cDNAライブラリーを構築し直した。cDNAの合成に はSuperScriptTMLambda System for cDNA Synthesis and λCloning Kit並びにS uperScriptTMII RNaseH-(ともにLIFE TECHNOLOGIES社製)を使用した。ポリ(A )+RNAを熱変性後、Kitに付属のNotI配列付きオリゴdTをプライマーと して含む20μlの反応液(50mM Tris-HCl、pH8.3/75mM KCl/3mM MgCl2/1mM DTT/1mM dNTP/200U SuperScriptTMII RNaseH-)に加え、37℃で60分間 保温した。cDNAの2本鎖目を合成(25mMTris-HCl、pH8.3、100mM KCl、5mM MgCl2、各250μM dNTPs、5mM DTT、40U E.coli DNA polymeraseI、2U E.co li RNaseH、10U E.coli DNA ligaseを含む150μlの反応液中で16℃2時間保温 )後、10U T4 DNA polymaraseを加えさらに16℃で5分間保温した。反応液を65 ℃で10分間加熱後等量のフェノールークロロホルムで1回抽出し、SizeSepTM400 spun column(Pharmacia社製のTimeSaverTMcDNA Synthesis Kitに付属の低分子 量DNA除去用スパンカラム)により400bpより小さいcDNAを除いた。このサ ンプルにEcoRI Adaptor(Pharmacia社製のTimeSaverTMcDNA Synlhesis Kitに付属のもの)を付 加後制限酵素NotIで消化したものを、再度SizeSepTM400spun columnにかけ、低 分子量のDNAを除去した。これによって得られた、5’端にEcoRI、3’端にN otI認識配列を持つ2本鎖cDNAはそれぞれ1.3μgであり、予めEcoRIおよびNotI で処理した発現ベクターpEF18Sと連結させ、9.2mlのコンピテント・ハイE .coli DH5(東洋紡績社製)を形質転換した。その結果、得られたヒト肝臓cD NAライブラリー(hTPO‐F1)は1.0×106個の形質転換体を含むものであ った。 〈実施例21〉ヒト肝臓cDNAライブラリ−hTPO‐F1からのTPOcDNAクローンのスク リーニング 配列表中の配列番号3及び6をもとにヒトTPOcDNAに対応するPCR用プラ イマーを合成した。配列は以下の通り。 hTPO‐I:5’‐TTGTGACCTCCGAGTCCTCAG‐3’( 配列番号48)(配列番号3の60-80) hTPO‐KU:5’‐AGGATGGGTTGGGGAAGGAGA‐3’ (配列番号49)(配列番号6の901-921に対 応するアンチセンス) 実施例20において構築したヒト肝臓cDNAライブラリーhTPO‐F1( 1.0×106個)を3つのプール(#1〜3)に分割し凍結保存した。それぞれのプ ールよりプラスミドDNAを調製し、その1%を鋳型として、合成したプライマ ー(hTPO‐I及びhTPO‐KU)各1μMを用いてPCRを行なった。Gen eAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTM DNA Polymerase(宝酒造社製)を使用 して、GeneAmpTMPCR System9600(PERKIN-ELMER社製)により100μlの容量でP CR(95℃で1分間の変性条件、59℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の 合成条件で35回の反応を行い、さらに7分間72℃でインキュベート)を行った結 果、#3のプール由来のプラスミドDNAを用いた場合に予想される大きさのD NAが増幅された。そこで、この#3のプールを15000個のサブプールに分割し 、50μg/mlのAmpicillinを含む1mlのLB培地中で1夜培養した後、プラスミド 自動分離装置PI-100を用いてプラスミドDNAを抽出した。抽出したDNAはTE 溶液に溶解し、その5%を鋳型としてPCRを実施した(使用したプライマー、 反応条件は上記と同一である)。その結果、90プール中6プ ールで予想される大きさのDNAが増幅された。これらのうち1プールを選択し 1000個のクローンを1つの集団とするサブプールに分割し、上記と同様にプラス ミドDNAを調製しPCRを行なったがDNAの増幅は観察されなかった。一連 のPCRで増幅されるDNAの電気泳動上のバンドの濃さは、サブプールを細か くして行くに連れ、薄くなってきた。そのため、求めるクローンの増殖が良くな いためプラスミドDNAの回収が悪く、PCRによる増幅が弱くなり最終的に増 幅されなくなったことが考えられた。そこで#3のプールに戻り、コロニーハイ ブリダイゼイションによるスクリーニングを行なうことにした。 #3のプールより、15cmのLBプレートあたり4100個のコロニーとなるように クローンをまき、100枚のプレートを作製した。それぞれのプレートについて1 枚づつレプリカプレートを作製し、それらのうち片方のプレートを37℃でさら に6時間培養してからコロニーを回収しプラスミドDNAを抽出した。これらの DNAについて上記と同様のPCRを実施したところ、100プール中1プールで 予想される大きさのバンドの増幅が観察された。そこでこのプールのプレートよ り2枚のレプリカフ ィルターを作製した(PALL社製BIODYNETMA TRANSFER MEMBRANEを使用)。フィル ターの変性は10%SDS10分間、0.5N NaOH/1.5M NaCl10分間、0.5M Tris-HCl(pH8 .0)/1.5M NaCl10分間行ない、30分間風乾後80℃の真空オーブン中で1時間ベー キングした。ベーキングしたフィルターは6×SSC(20×SSCは1l中に175.3g N aCl)88.2gを含みpH7.0の溶液)/1%SDSで軽く洗浄後、プレハイブリダイゼイ ションを行なった。反応液の組成は50%ホルムアミド、5×SSC、5×Denhardt ’s solution(50×Denhardt’s solutionは500ml中に5g Ficoll、5g polyvin ylpyrrolidone、5g bovine serum albumin fraction Vを含む溶液)、1%SDS 、20μg/mlサケ精子DNAを含むもので、30mlの溶液中で42℃30分間振盪しなが ら保温した。プレハイブリダイゼイションを行なった後、同組成のハイブリダイ ゼイション溶液30mlと交換後、[α‐32P]dCTP(アマシャム社製)で放射標識 したプローブ(プラスミドpEF18S‐HL34のEcoRI/BamHI断片:配列番 号4の5’末端から458塩基目までを精製し、ランダムプライマー法で標識し たもの;Anal.Biochem.、132、6-13、1983に記載の方法を利用したアマシャム 社製キットMegaprime DNA labelling systemを使用)を加え、42℃で20時間振盪しながら保温した。フ ィルターは2×SSC/0.1%SDS溶液中で42℃30分間洗浄後、さらに0.2×SSC/0 .1%SDS溶液中で42℃30分間洗浄した。フィルターを増強スクリーン及びX-O MATTMAR5フィルム(イーストマンコダック社製)により−70℃16時間オー トラジオグラフィーを行なった。その結果、陽性と考えられるシグナルが1個観 察された。そこで、もとのプレートよりシグナル周辺のコロニーをかきとり、1 0cmのLBプレートにまきなおした。得られたコロニー50個を培養しDNAを調製 後プライマーhTPO‐I及びhTPO‐KUを用いてPCRを実施した(条件 等は上記と同一)。その結果、1クローンのみ予想通りのバンドが増幅された。 このクローンをpHTF1と命名した。 〈実施例22〉ヒトTPOcDNAクローンpHTF1のシークエンス プラスミドDNAの精製は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Sp ring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されているようにして実施した。 クローンpHTF1を50μg/mlのAmpicillinを含む50mlのLB培地で一夜培養した 後、 遠心分離により得た菌体を4mlのTEG-lysozyme溶液に懸濁し、8mlの0.2N NaOH/ 1%SDS溶液を加えてよく懸濁する。さらに3M potassium/5M acetate溶液を6m l加えてよく懸濁した後遠心し、上清を得る。上清はフェノール−クロロホルム (1:1)処理後、等量のイソプロパノールを加えて遠心し、ペレットを得た。 ペレットはTE溶液に溶解後、RNAse処理、フェノールークロロホルム(1:1) 処理を施し、エタノール沈殿を行なう。ペレットを再度TE溶液に溶解し、NaCl、 ポリエチレングリコール3000をそれぞれ0.63M、7.5%になるように加えて遠心す る。最後に、ペレットはTE溶液に溶解後エタノール沈殿を行なう。これにより約 300μgのプラスミドDNApHTF1を得た。 精製したプラスミドDNAについてTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequen ing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステ ムズ社製373ADNAシークエンサーによりシークエンスし、全長のヌクレオチド配 列を決定した。ヌクレオチド配列およびそれから演繹されるアミノ酸配列を配列 表(配列番号7)に示した。ヌクレオチド配列決定に必要なプライマーは配列番 号6の配列をもとに合成したプライマヌクレオチドびに、それらのプライマーに よるシー クエンス反応で解析された内部配列をもとに設計した合成プライマーを使用した 。 その結果、得られたクローンpHTF1は1721塩基対のcDNA断片から なり、実施例2で分析されたアミノ酸配列AP8(配列番号7:アミノ酸番号1 〜12)及びTP2/TP3(配列番号7:アミノ酸番号157〜162)と相 同性の高い配列が確認された。このDNA断片は、101塩基目までの5’ノン コーディング領域に続く、102〜104塩基目にコードされるメチオニンに始 まり1158〜1160塩基目にコードされるグリシンまで続く353個のアミ ノ酸からなるオープンリーディングフレームをコードしていると考えられ、それ に続く停止コドン(TAA)以降の3’ノンコーディング領域を531塩基と3 0個のポリA尾部配列を持っていた。このオープンリーディングフレームにコー ドされると考えられるタンパク質のアミノ酸配列は配列番号6に記載の、ヒトT POの予想されるアミノ酸配列と完全に一致した。ヌクレオチド配列は配列番号 6の配列より5’側で77塩基分、3’側のポリA尾部配列直前までの領域で3 47塩基分長いcDNAをコードしていた。またヌクレオチド配列は、配列番号 6と3箇所で 異なっていた。異なるヌクレオチド配列は配列番号7のA(84塩基目)が配列 番号6ではC、A(740塩基目)がT、G(1198塩基目)がAであった。 2番目の塩基(740塩基目)のみ、タンパク質のコーディング領域内の変異で あったが、スレオニンの3番目のコドンであり、アミノ酸の変換は起こさなかっ た。この塩基配列の置換が何に起因するのかはこの時点では明らかでなかったが 、得られたクローンpHTF1の解析より、ヒトTPOタンパク質は21残基の シグナル配列を含む353個のアミノ酸からなることが確認できた。シグナル配 列を除いたタンパク質の推定分子量は35466であった。 大腸菌DH5に担持されたベクターpHTF1は1994年3月24日付けで 通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP‐46 17として寄託した。 〈実施例23〉ヒトTPOcDNAクローンpHTF1のCOS1細胞での発現及びTPO活性の確 得られたクローンpHTF1のCOS1細胞へのトランスフェクションは、実 施例11に従って行なった。すなわちプラスミドDNA10μgを使用しクロロ キン処理を含むDEAE‐ デキストラン法を用いたトランスフェクションを行ない、3日後に培養上清を回 収した。 得られた培養上清をIMDM培養液に対して透析後、ラットCFU‐MKアッ セイ系で評価した。その結果、pHTF1を発現させたCOS1細胞培養上清で は用量依存的にTPO活性が認められたが、cDNAインサートを含まない発現 プラスミドをトランスフェクションしたCOS1培養上清では活性が認められな かった(図10a)。類似の結果は、M‐07eアッセイ系においても得られ、 pHTF1を発現させたCOS1細胞培養上清中に有意なM‐07e細胞増殖促 進活性を認めた(図10b)。 これらの結果から、pHTF1に含まれるcDNAはTPO活性を有するタン パク質をコードする遺伝子であることが明確になった。 〈実施例24〉ヒトTPO染色体DNAのクローニング ヒトTPOcDNAをプローブとしてヒトTPO染色体DNAのクローニング を行なった。クローニングに使用したゲノミックライブラリーは東北大学 遺伝 子実験施設山本徳男教 授よりいただいた(Sakaiら、J.Biol.Chem.、269、2173-2182、1994に記載の ライブラリーで、ヒト染色体DNAを制限酵素Sau3AIによって部分分解したもの をStratagene社製ファージベクターLambda EMBL3のBamHI部位につないで構築し たライブラリー)。このライブラリーよりヒトTPOcDNAをプローブとして スクリーニングを実施したが、用いた手法はすべて本質的にMolecular Cloning [Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されてい るようにして実施した。大腸菌LE392を宿主菌として、15cmのNZYMプレー ト(1l中に10g NZamine、5g NaCl、5g bacto yeast extract、2g MgCl4 7H2O 、15%agarを含むPH7.0のもの)1枚あたり3万個となるようにファージをまき 、18枚のプレートを作製した。それぞれのプレートより各2枚のレプリカフィ ルターを作製した(PALL社製BIODYNETMA TRANSFER MEMBRANEを使用)。フィルタ ーの変性は0.5N NaOH/1.5M NaCl10分間、0.5M Tris-HCl(pH8.0)/1.5M NaCl10 分間行ない、30分間風乾し80℃の真空オーブン中で1.5時間ベーキングした。プ レハイブリダイゼイションは50%ホルムアミド、5×SSC、5×Denhardt’s sol ution、1%SDS、20μg/mlサ ケ精子DNAを含む500mlの溶液中で42℃1時間行なった。プローブはヒト TPOcDNA断片(配列番号7の塩基配列番号178-1025)をPCRで増幅後精 製したものをRandom Primer DNA labelling kit(宝酒造社製;Anal.Biochem. 、132、6-13、1983に記載のランダムプライマー法を利用したDNA標識キット )を用いて32P標識したものを用いた。PCRに使用したプライマーの配列は以 下の通り。 hTPO‐I:5’‐TTGTGACCTCCGAGTCCTCAG‐3’( 配列番号50)(配列番号7の178-198) hTPO‐N:5’‐AGGGAAGAGCGTATACTGTCC‐3’( 配列番号51)(配列番号7の1005-1025に対応するアンチセンス) ハイブリダイゼイションはプレハイブリダイゼイションと同じ組成の溶液を5 00ml使用し、放射標識したプローブを加え42℃で20時間行なった。フィル ターは2×SSC/0.1%SDS溶液中室温で5分間づつ3回洗浄後、0.1×SSC/0.1%SD S溶液中で68℃1時間の洗浄を行なったのち、増強スクリーン及びX-OMATTMAR 5フィルム(イーストマンコダック社製)により−70℃16時間オートラジオ グラフィーを行なった。その 結果、13個の陽性シグナルが得られた。もとのプレートより13個の陽性シグ ナル周辺のプラークを拾い上げ、15cmのNZY Mプレート1枚あたり1000プ ラークとなるようにまき直した。それぞれのプレートから各2枚のレプリカフィ ルターを作製し、上記と同じ条件でハイブリダイゼイションを実施した。その結 果、13組全てのフィルターで陽性シグナルが検出された。各プレートより1個 づつプラークを単離し、Molecular Cloningに記載のPlate Lysate法でファージ DNAを調製した。13クローンのファージDNAについてcDNAのコーディ ング領域を含んでいるかどうかをPCRによってチェックした。チェックに使用 したプライマーの配列は以下の通り。 hTPO‐L:5’‐GGCCAGCCAGACACCCCGGCC‐3’( 配列番号52)(配列番号6の1-21) hTPO‐F:5’‐ATGGGAGTCACGAAGCAGTTT‐3’( 配列番号53)(配列番号6の127-147に対応するアンチセンス) hTPO‐P:5’‐TGCGTTTCCTGATGCTTGTAG‐3’( 配列番号54)(配列番号6の503-523) hTPO‐V:5’‐AACCTTACCCTTCCTGAGACA‐3’( 配列番号55)(配列番号6の1070-1090に対応するアンチセンス) これらのプライマーの組み合わせにてPCRを実施したところ、13クローン のうち5クローンはcDNAから予測されるアミノ酸のコーディング領域を全て 含んでいると考えられた。これら5クローンに含まれる染色体DNAの長さは約 20kbpとそろっており、予備的に検討した制限酵素解析でもほぼ同一のパター ンを示した。そこでこれらのクローンのうち1個(クローンλHGT1)を選択 し、Southern blot解析を行なった。すなわち、クローンλHGT1のDNA各 1μgを制限酵素EcoRIまたはHindIIIで完全に消化し、0.8%アガロースゲルで 泳動後、PALL社製BIODYNETMA TRANSFER MEMBRANEに転写した。フィルターは30 分間風乾後80℃の真空オーブン中で2時間ベーキングした。プレハイブリダイゼ イションは50%ホルムアミド、5×SSC、5×Denhardt’s solution、1%SDS、 20μg/mlサケ精子DNAを含む50mlの溶液中で42℃1時間行なった。プロー ブはヒトTPOcDNA断片(配列番号7の 塩基配列番号178-1025)をPCRで増幅後精製したものをRandom Primer DNA la belling kit(宝酒造社製)を使用して32P標識したものを用いた。ハイブリダ イゼイションはプレハイブリダイゼイションと同じ組成の溶液を50ml使用し、 放射標識したプローブを加え42℃で20時間行なった。フィルターは2×SSC/ 0.1%SDS溶液中室温で5分間づつ3回洗浄後、0.1×SSC/0.1%SDS溶液中で68 ℃1時間の洗浄を行なったのち、増強スクリーン及びX-OMATTMAR5フィルム(イ ーストマンコダック社製)により−70℃16時間オートラジオグラフィーを行 なった。その結果、制限酵素HindIIIで消化した場合に約10kbpの単一のバンド が観察された。そこで、クローンλHGT1のDNA10μgを制限酵素HindII Iで消化後0.8%アガロースゲルで泳動し、10kbpのバンドを切り出して、プレッ プ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)で精製し、同様にHidIII で消化したクローニングベクターpUC13(Pharmacia社製)にサブクローニ ングした(宿主菌は東洋紡績社製コンピテント・ハイE.coli DH5を使用した)。 得られたクローンのうち、10kbpのHindIII断片を含むク ローンを選択しpHGT1と命名した。 ファージクローンλHGT1のおおまかな制限酵素地図を図11に示す。 〈実施例25〉ヒトTPO染色体クローンpHGT1のシークエンス pHGT1クローンを培養しプラスミドDNAの精製を行なった。方法は本質 的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1 989)]に記載されているようにして実施した。クローンpHGT1を50μg/mlの Ampicillinを含む50mlのLB培地で一夜培養した後、遠心分離により得た菌体を4 mlのTEG-lysozyme溶液に懸濁し、8mlの0.2N NaOH/1%SDS溶液を加えてよく懸濁 する。さらに3M potassium/5M acetate溶液を6ml加えてよく懸濁した後遠心 し、上清を得る。上清はフェノールークロロホルム(1:1)処理後、等量のイ ソプロパノールを加えて遠心し、ペレットを得た。ペレットはTE溶液に溶解後、 RNase処理、フェノールークロロホルム(1:1)処理を施し、エタノール沈殿 を行なう。ペレットを再度TE溶液に溶解し、NaCl、ポリエチレングリコール3000 をそれぞれ0.63M、7.5%になるように加えて遠心する。最後に、 ペレットはTE溶液に溶解後エタノール沈殿を行なう。これにより約300μgのプ ラスミドDNApHGT1を得た。 精製したプラスミドDNAについてTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequen ing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステ ムズ社製373ADNAシークエンサーによりシークエンスし、cDNAのヌクレオチ ド配列から予想される、タンパク質コーディング領域周辺のヌクレオチド配列を 決定した。ヌクレオチド配列およびそれから演繹されるアミノ酸配列を配列表( 配列番号8)に示した。ヌクレオチド配列決定に必要なプライマーは実施例22 で使用した、cDNAのヌクレオチド配列解析に用いたもの並びに、それらのプ ライマーによるシークエンス反応で解析された内部配列をもとに設計した合成プ ライマーを使用した。 その結果、プラスミドクローンpHGT1が担持する染色体DNAは、配列番 号6で予想されたアミノ酸のコーディング領域を全て含みその領域に関しては、 ヌクレオチド配列は完全に一致していた。また、アミノ酸をコードするエクソン に相当する領域は4つのイントロンによって分断されており、イントロンの長さ は5’側から順に231bp、286bp、1932bp、236bpで あった。配列番号7に記載のcDNAヌクレオチド配列とは3箇所で異なってい た(図11)。異なるヌクレオチド配列は実施例22で記載した箇所(配列番号6 と7の相違点)と同一であり、配列番号7のA(84塩基目)がC、A(740 塩基目)がT、G(1198塩基目)がAであった。すなわち、実施例21で取 得したヒトTPOcDNAクローンpHTF1のヌクレオチド配列は、ヒト染色 体のヌクレオチド配列と3箇所で異なることが明かとなった。そこで、このヌク レオチド配列の変異が本来の配列を反映するものであるか解析するために、スク リーニングで最終的に選択された5個の染色体DNAクローンのうち、ヌクレオ チド配列を決定していない残りの4クローンについて、配列の決定を行なった。 配列の解析はMolecular Cloningに記載のPlate Lysate法で調製したファージD NAを使用した直接ヌクレオチド配列決定法で行なった。反応には上記3箇所の ヌクレオチド配列変異点を解析できる位置の実施例22で合成したシークエンス プライマー並びに、Taq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit(アプラ イドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステムズ社製373ADNA シークエンサーによりシークエンスした。その結果、 4個全てのクローンで配列番号7の84塩基目がC、740塩基目がTであり、 配列番号7のcDNAとは異なり、配列番号6のものと一致した。1198塩基 目についてはGのクローンが2個、Aのクローンが2個であった。すなわち、染 色体DNA本来のヌクレオチド配列が2種類あることが明かとなった。この配列 の違いが相同染色体に由来するものか、複数存在する遺伝子に由来するものかは 、現時点では不明である。また、購入したClontech社製ポリ(A)+RNAがCaucasi an由来であるのに対し、染色体DNAの由来が日本人であることから、ヌクレオ チド配列の変異は人種の違いに起因する可能性も示唆される。 大腸菌DH5に担持されたベクターpHGT1は1994年3月24日付けで 通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP‐46 16として寄託した。 〈実施例26〉ヒトTPO染色体DNAのCOS1細胞での発現と活性確認 サブクローニングして得られたプラスミドクローンpHGT1には、インサー ト部分に3箇所、ベクター内に1箇所、合計4箇所のEcoRI認識配列が存在する が、インサート内の一番5’側のEcoRI認識配列とベクター内のEcoRI認識配列に はさまれる約4.3kbpのDNA断片に、ヒトTPOタンパク質のコーディング領域 が全て含まれることが、ヌクレオチド配列の解析から明らかになった。そこで、 この断片をEcoRI処理した発現ベクターpEF18Sにつなぎ、4個のヒトTP O発現プラスミドpEFHGTE#1‐4を得た(前述の図11)。これらのプ ラスミドDNAを調製し発現実験を行なった。プラスミドDNAの精製は本質的 にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(198 9)]に記載されているようにして実施し、約250μgのプラスミドDNAを得た 。 得られたクローンpEFHGTE#1‐4のCOS1細胞へのトランスフェク ションは、実施例11に従って行なった。すなわちプラスミドDNA10μgを 使用しクロロキン処理を含むDEAE‐デキストラン法を用いたトランスフェク ションを 行ない、3日後に培養上清を回収した。 得られた培養上清をIMDM培養液に対して透析後、ラットCFU‐MKアッ セイ系で評価した。その結果、pEFHGTEを発現させたCOS1細胞培養上 清中に用量依存的にTPO活性が認められ、一方、DNAインサートを含まない 発現プラスミドをトランスフェクションしたCOS1細胞培養上清では活性が認 められなかった。クローン#1〜4のいずれでもほぼ同様の結果が得られたが、 代表例としてpEFHGTE#1における結果を図12aに示した。また、M‐ 07eアッセイ系においても、pEFHGTEを発現させたCOS1細胞培養上 清にて用量依存的に有意なM‐07e細胞増殖促進活性が認められた。代表例と して、pEFHGTE#1における結果を図12bに示した。 これらの結果より、得られたクローンpEFHGTE#1〜4が担持するDNA はヒトTPOの機能的染色体DNAであることが、明らかとなった。 〈実施例27〉ヒトTPO欠失型DNAの作製、COS1細胞での発現及びTPO活性の確認 実施例18の結果より、ヒトTPOはそのカルボキシル側の除去後でさえ生物 活性を発現しうることが明かとなったが、その活性発現に必要な領域を解析する 目的で、欠失誘導体の作製並びに発現を行なった。この実施例で、pHT1−2 31によってコードされるTPOタンパク質(アミノ酸1-231)のカルボキシル 末端から20、40、60又は68アミノ酸を欠失したTPO欠失誘導体について、TP O in vitro生物活性能を調べた。最も短い誘導体(アミノ酸1〜163)は、実施 例2に記載されるラット血漿TPOのTP2/3に対応するアミノ酸配列を依然と して含んでいた。 実施例18で得たプラスミドクローンpHT1−231のDNAを鋳型として用 いかつ合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRにより欠失プラ スミドを作製した。PCR用に作製したプライマーの配列は以下の通り。 hTPO−5:5’−TTTGAATTCGGCCAGCCAGACACCC CGGCC−3’(配列番号56)(配列番号4の1−21にEcoRI配列を付 加したもの;表9に記載のものと同一) hTPO−S:5’−TTTGCGGCCGCTCATTAGCTGGGGA CAGCTGTGGTGGGT−3’(配列番号57)(配列番号4の555−5 76のアンチセンス;2個の終止コドンTAATGA及びNotI配列を付加; アミノ酸1−163をコードする欠失誘導体作製用) hTPO−4:5’−TTTGCGGCCGCTCATTACAGTGTGA GGACTAGAGAGGTTCTG−3’(配列番号58)(配列番号4の57 6−600のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識 配列を付加;アミノ酸1−171をコードする欠失誘導体作製用) hTPO−30:5’−TTTGCGGCCGCTCATTATCTGGCT GAGGCAGTGAAGTTTGTC−3’(配列番号59)(配列番号4の6 36−660のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI配 列を付加;アミノ酸1−191をコードする欠失誘導体作製用) hTPO−2:5’−TTTGCGGCCGCTCATTACAGACCAG GAATCTTGGCTCTGAAT−3’(配列番号60)(配列番号4の69 6−720のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI配列 を付加;ア ミノ酸1−211をコードする欠失誘導体作製用) 実施例18で得たクローンpHT1−231のプラスミドDNA1μgを鋳型 として使用し、合成したプライマー(hTPO‐5を5’側として使用、hTP O−2、−3、4、−Sを3’側として使用)をそれぞれ10μM使ってPCR を実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒 造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System9600(PERKIN-ELMER社製)により10 0μlの容量でPCR(95℃で1分間の変性条件、66℃で1分間のアニール条件 、72℃で1分間の合成条件で20回の反応を行い、さらに7分間72℃でインキュベ ート)を行った。それぞれのPCRで得られたバンドを制限酵素EcoRI及び NotIで消化後、1%アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用いた電気 泳動にかけ、それぞれのPCR反応の予想される大きさの主要なDNA断片を分 離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)で精製し、 同様に制限酵素処理した発現ベクターpEF18Sにサブクローニングした(宿 主菌としては東洋紡績社製コンピテント・ハイE.coliDH5を使用)。得られた 形質転換体のうち、それぞれ予想される長さのインサ ートを含むクローンをそれぞれ4個ないし5個づつ選択し、プラスミドDNAを 調製した。方法は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Spring Harbo r Laboratory Press(1989)]に記載されているようにして実施した。一連の操作 によってアミノ酸1−163をコードする欠失誘導体(pHT1−163#1− 5)、アミノ酸1−171をコードする欠失誘導体(pHT1−171#1−4 )、アミノ酸1−191をコードする欠失誘導体(pHT1−191#1−4) 、アミノ酸1−211をコードする欠失誘導体(pHT1−211#1−4)の プラスミドDNAを得た。各プラスミドDNAの全長増幅領域をヌクレオチド配 列分析に掛けた結果、配列番号4に示されるヌクレオチド配列と完全に一致する ことが判明した。 得られたそれぞれのクローンのCOS1細胞へのトランスフェクションは、実 施例11に従って行なった。すなわちプラスミドDNA各10μgを使用しクロ ロキン処理を含むDEAE‐デキストラン法を用いたトランスフェクションを行 ない、3日後に培養上清を回収した。 培養上清をIMDM培養液に対して透析後、ラットCFU‐ MKアッセイ系で評価した。その結果、pHT1−211、pHT1−191、 pHT1−171、およびpHT1−163を発現させたいずれのCOS1細胞 培養上清でも用量依存的にTPO活性を認めた。代表例としてpHT1−211 #1、pHT1−191#1、およびpHT1−171#2における結果を図1 3aに、pHT1−163#2における結果を図13bに示した。類似の結果は 、M‐07eアッセイ系においても得られ、pHT1−211、pHT1−19 1、pHT1−171、およびpHT1−163を発現させたいずれのCOS1 細胞培養上清でも用量依存的に有意なM‐07e細胞増殖促進活性を認めた。代 表例として、pHT1−211#1、pHT1−191#1、pHT1−171 #2、およびpHT1−163#2における結果を図14に示した。 これらの結果より、ヒトTPOタンパク質は、163位のSerの後のカルボ キシル末端側部分を欠失させても、in vitroにおける生物活性が保持されること が明らかとなり、163位のSerまでのアミノ末端側部分の中に、ヒトTPO の生物活性領域が含まれていることが示唆された。 〈実施例28〉ヒトTPO C末側欠失体の作製、COS1細胞での発現及び活性確認 ヒトTPO蛋白質の活性発現に必須な領域の解析を行なう目的で、実施例27 で得られた欠失体よりもさらにC末側アミノ酸を欠失させた誘導体を作製しCO S1細胞内でTPO活性を発現しうるかどうか検討した。実施例16で得たプラ スミドクローンpEF18S‐HL34をもとに、163番目のセリンを基準に C末端側から順次アミノ酸を欠失させた発現プラスミドを構築した。これら欠失 プラスミドの構築にはPCRを利用した。PCR用に作製したプライマーの配列 は、次の通りである。 hTPO−5:5’−TTTGAATTCGGCCAGCCAGACACCC CGGCC−3’(配列番号61)(配列番号4の1−21にEcoRI認識配列 を付加したもの;実施例18に記載のものと同一) hTPO−150:5’−TTTGCGGCCGCTCATTAGAGGGT GGACCCTCCTACAAGCAT−3’(配列番号62)(配列番号4の5 14−537のアンチセンス; 2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列を付加;アミノ酸1−1 50をコードする欠失体作製用) hTPO−151:5’−TTTGCGGCCGCTCATTAGCAGAG GGTGGACCCTCCTACAA−3’(配列番号63)(配列番号4の51 8−540のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識 配列を付加;アミノ酸1−151をコードする欠失体作製用) hTPO−153:5’−TTTGCGGCCGCTCATTACCTGAC GCAGAGGGTGGACCC−3’(配列番号64)(配列番号4の526− 546のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列 を付加;アミノ酸1−153をコードする欠失体作製用) hTPO−154:5’−TTTGCGGCCGCTCATTACCGCCT GACGCAGAGGGTGGA−3’(配列番号65)(配列番号4の529− 549のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列 を付加;アミノ酸1−154をコードする欠失体作製用) hTPO−155:5’−TTTGCGGCCGCTCATTAGGCCCG CCTGACGCAGAGGGT−3’ (配列番号66)(配列番号4の532−552のアンチセンス;2個の終止コド ンTAAとTGA及びNotI認識を付加;アミノ酸1−155をコードする欠 失体作製用) hTPO−156:5’−TTTGCGGCCGCTCATTATGGGGC CCGCCTGACGCAGAG−3’(配列番号67)(配列番号4の535− 555のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列 を付加;アミノ酸1−156をコードする欠失体作製用) hTPO−157:5’−TTTGCGGCCGCTCATTAGGGTGG GGCCCGCCTGACGCA−3’(配列番号68)(配列番号4の538− 558のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列 を付加;アミノ酸1−157をコードする欠失体作製用)。 実施例16で得たクローンpEF18S‐HL34のプラスミドDNA1μg を鋳型として使用し、合成したプライマー(hTPO−5を5’側として使用、 hTPO−150、−151、−153、−154、−155、−156、−1 57を3’側として使用)をそれぞれ10μM使ってPCRを実施し た。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製) を用いて、GeneAmpTMPCR System 9600(PERKIN-ELMER社製)により100μlの 容量でPCR反応(95℃で1分間の変性条件、66℃で1分間のアニール条件、72℃ で1分間の合成条件で20回の反応を行い、さらに7分間72℃でインキュベート) を行った。それぞれのPCRで得られたバンドを制限酵素EcoRI及びNot Iで消化後、1%アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用いた電気泳動に かけ、それぞれのPCR反応の予想される大きさの主要なDNA断片を分離し、 プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)で精製し、同様に 制限酵素処理した発現ベクターpEF18Sにサブクローニングした(宿主菌と しては東洋紡績社製コンピテント・ハイE.coliDH5を使用)。得られた形質転 換体のうち、それぞれ予想される長さのインサートを含むクローンをそれぞれ3 個ないし5個づつ選択し、プラスミドDNAを調製した。方法は本質的にMolecu lar Cloning[Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記 載されているようにして実施した。一連の操作によってアミノ酸番号1−150 をコードする欠失体(pHT1−150#21、 22、25)、アミノ酸番号1−151をコードする欠失体(pHT1−151#16 、17、18)、アミノ酸番号1−153をコードする欠失体(pHT1−153# 1−5)、アミノ酸番号1−154をコードする欠失体(pHT1−154#1 −5)、アミノ酸番号1−155をコードする欠失体(pHT1−155#1− 5)、アミノ酸番号1−156をコードする欠失体(pHT1−156#1−5 )、アミノ酸番号1−157をコードする欠失体(pHT1−157#1−5) のプラスミドDNAを得た。 精製したプラスミドDNApHT1−150#21、22、25並びにpHT1−15 1#16、17、18についてはTaq Dye DeoxyTMTerminater CycleSequening Kit( アプライドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステムズ社製37 3ADNAシークエンサーによりシークエンスし、全長にわたり塩基配列の置換がな く、予想通りのTPOcDNA配列を持つことを確認した。 得られたそれぞれのクローンのCOS1細胞へのトランスフェクションは、実施 例11に従って行なった。すなわちプラスミドDNA各10μgを使用しクロロ キン処理を含むDEAE‐デキストラン法を用いたトランスフェクションを行な い、3日 後に培養上清を回収した。培養上清をIMDM培養液に対して十分に透析後、M -07eアッセイ系で評価した。その結果、151位のアミノ酸であるシステインを 含む、それぞれアミノ酸1−151位、1−153位、1−154位、1−15 5位、1−156位、1−157位からなるC末側欠失誘導体をコードするクロ ーンをトランスフェクションしたC0S1細胞培養上清中には用量依存的にTPO活 性が検出された。しかしながら、151個目のシステインまでを欠失させたアミ ノ酸1−150位のC末側欠失誘導体をコードするクローンをトランスフェクシ ョンしたC0S1細胞培養上清中にはTPO活性が検出されなかった。 〈実施例29〉ヒトTPO N末側欠失体の作製、COS1細胞での発現及び活性確認 ヒトTPO蛋白質の活性発現に必須な領域の解析を行なう目的で、実施例28 で得られた欠失体をもとに、N末側アミノ酸を欠失させた誘導体を作製しTPO 活性を発現しうるかどうか検討した。実施例16で得たプラスミドクローンpE F18S‐HL34並びに、実施例27で得たプラスミドクローンpH T1−163をもとに、シグナル配列に続くN末端側アミノ酸を欠失させた発現 プラスミドを構築した。構築にはPCRを利用した。PCR用に作製したプライ マーの配列は、次の通りである。 hTPO−5:5’−TTTGAATTCGGCCAGCCAGACACCC CGGCC−3’(配列番号69)(配列番号4の1−21にEcoRI認識配列 を付加したもの;実施例18に記載のものと同一) hTPO3:5’−TTTGCGGCCGCTCATTATTCGTGTAT CCTGTTCAGGTATCC−3’(配列番号70)(配列番号4の757− 780のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列 を付加;アミノ酸1−231をコードする欠失体作製用に合成したものと同一) hTPO−S:5’−TTTGCGGCCGCTCATTAGCTGGGGA CAGCTGTGGTGGGT−3’(配列番号71)(配列番号4の555−5 76のアンチセンス;2個の終止コドンTAAとTGA及びNotI認識配列を 付加;アミノ酸1−163をコードする欠失体作製用) hTPO−13:5’−AGTAAACTGCTTCGTGACTCCCAT GTCCTTCACAGCAGACTGAGCCAGTG−3’(配列番号72) (配列番号4の124−173;アミノ酸番号1−12を欠失する誘導体作製用 ) hTPO−13R:5’−CATGGGAGTCACGAAGCAGTTTA CTGGACAGCGTTAGCCTTGCAGTTAG−3’(配列番号73) (配列番号4の64−87並びに124−148のアンチセンス;アミノ酸番号 1−12を欠失する誘導体作製用) hTPO−7:5’−TGTGACCTCCGAGTCCTCAGTAAAC TGCTTCGTGACTCCCATGTCCTTC−3’(配列番号74)(配 列番号4の106−154;アミノ酸番号1−6を欠失する誘導体作製用) hTPO−7R:5’−TTTACTGAGGACTCGGAGGTCACA GGACAGCGTTAGCCTTGCAGTTAG−3’ (配列番号75)(配列番号4の64−87並びに106−129のアンチセンス ;アミノ酸番号1−6を失する誘導体作製用) hTPO−8:5’−GACCTCCGAGTCCTCAGTAAACTGC TTCGTGACTCCCATGTCCTTCACA−3’ (配列番号76)(配列番号4の109−157;アミノ酸番号1−7を欠失する 誘導体作製用) hTPO−8R:5’−CAGTTTACTGAGGACTCGGAGGTC GGACAGCGTTAGCCTTGCAGTTAG−3’(配列番号77)(配 列番号4の64−87並びに109−132のアンチセンス;アミノ酸番号1− 7を欠失する誘導体作製用)。 (1)アミノ酸番号1−12を欠失する誘導体(pHT13‐231)作製 実施例18で得たクローンpEF18S‐HL34のプラスミドDNA1.4 μgを鋳型として使用し、合成したプライマー(hTPO−13及びhTPO3 を組で使用:hTPO−5並びにhTPO−13Rを組で使用)をそれぞれ5μ M使って PCRを実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase (宝酒造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System 9600(PERKIN-ELMER社製)によ り100μlの容量でPCR反応(95℃で5分間変性後、95℃で1分間の変性条件 、65℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反応を行い、 さらに7分間72℃でインキュベート)を行った。それぞれのPCR産物を1.2 %アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用いた電気泳動にかけ、各々予想 される大きさの主要なDNA断片を分離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キ ット(バイオラッド社製)で精製し、15μlのTEバッファーに溶解した。こ の溶液各1μlを鋳型として用い2回目のPCRを実施した。 合成したプライマー(hTPO−5並びにhTPO3を使用)をそれぞれ5μ M使ってPCRを実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Po lymerase(宝酒造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System 9600(PERKIN-ELMER社 製)により100μlの容量でPCR反応(95℃で5分間変性後、95℃で1分間の 変性条件、60℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反応 を行い、さらに7分間72℃でイ ンキュベート)を行った。PCR産物を1.2%アガロースゲル(FMC BioProdu cts社製)を用いた電気泳動にかけ、予想される大きさの主要なDNA断片を分 離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)で精製し、 15μlのTEバッファーに溶解した。制限酵素EcoRI並びにNotIで消化後、等 量のフェノール/クロロホルムで1回抽出後エタノール沈殿を行なった。遠心で 得られた沈殿を15μlのTEバッファーに溶解後、同様に制限酵素処理した発 現ベクターpEF18Sにサブクローニングした(宿主菌としては東洋紡績社製 コンピテント・ハイE.coliDH5を使用)。得られた形質転換体のうち、予想さ れる長さのインサートを含むクローンを45個選択し、プラスミドDNAを調製 した。方法は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Spring HarborLab oratory Press(1989)]に記載されているようにして実施した。アミノ酸番号1 −231をコードする蛋白質のうち1−12を欠失する欠失誘導体(pHT13 −231)のプラスミドDNAを得た。これらについてhTPO‐5並びにhT PO3のプライマーを用いたPCRを行ない、45クローンのうち8クローンで 予想される大きさ程度のインサートが確認 された。それらのうち3クローンついてはTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Se quening Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシ ステムズ社製373ADNAシークエンサーによりシークエンスし、1クローンで、予 想通りの欠失が起こっており、またその他の部分も含めて全長にわたりヌクレオ チド配列の置換等がなく、設計通りのTPOcDNA配列を持つクローンpHT13− 231#3が得られた。 (2)アミノ酸番号1−6を欠失する誘導体(pHT7−163)の作製 上記(1)の欠失誘導体作製においては、TPO蛋白質のC末端を231番目 のアミノ酸として設計したが、C末端側はさらに欠失させてもTPO活性を発現 しうることが確認されたため、今回の欠失体作製にあたってはC末端を163番 目のアミノ酸までとして設計した。下記(3)においても同様に163番目のア ミノ酸をC末端として設計した。実施例27で得たクローンpHT1−163の プラスミドDNA1.4μgを鋳型として使用し、合成したプライマー(hTP O−7及びhTPO−Sを組で使用:hTPO−5並びにhTPO−7Rを組で 使用)をそれぞれ5μM使ってPCRを実施した。 GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を 用いて、GeneAmpTM CR System 9600(PERKIN-ELMER社製)により100μlの容 量でPCR反応(95℃で5分間変性後、95℃で1分間の変性条件、65℃で1分間の アニール条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反応を行い、さらに7分間72℃ でインキュベート)を行った。それぞれのPCR産物を1.2%アガロースゲル (FMC BioProducts社製)を用いた電気泳動にかけ、各々予想される大きさの主 要なDNA断片を分離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッ ド社製)で精製し、15μlのTEバッファーに溶解した。この溶液各1μlを 鋳型として用い2回目のPCRを実施した。 合成したプライマー(hTPO−5並びにhTPO−Sを使用)をそれぞれ5 μM使ってPCRを実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System 9600(PERKIN-ELMER 社製)により100μlの容量でPCR反応(95℃で5分間変性後、95℃で1分間 の変性条件、60℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反 応を行い、さらに7分間72 ℃でインキュベート)を行った。PCR産物を1.2%アガロースゲル(FMC Bi oProducts社製)を用いた電気泳動にかけ、予想される大きさの主要なDNA断 片を分離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)で精 製し、15μlのTEバッファーに溶解した。制限酵素EcoRI並びにNotIで消化 後、等量のフェノール/クロロホルムで1回抽出後エタノール沈殿を行なった。 遠心で得られた沈殿を15μlのTEバッファーに溶解後、同様に制限酵素処理 した発現ベクターpEF18Sにサブクローニングした(宿主菌としては東洋紡 績社製コンピテント・ハイE.coliDH5を使用)。得られた形質転換体のうち、 予想される長さのインサートを含むクローンを30個選択し、プラスミドDNA を調製した。方法は本質的にMolecular Cloning[Sambrookら、Cold Spring Har bor Laboratory Press(1989)]に記載されているようにして実施した。配列番号 4において、アミノ酸番号1−163をコードする蛋白質のうち1−6を欠失す る欠失誘導体(pHT7−163)のプラスミドDNAを得た。これらのクロー ンにつてはhTPO‐5並びにhTPO‐Sをプライマーとして用いたPCRを 実施し、全てのクローンで予想される大きさ程度のイ ンサートを含むことが確認された。これらのクローンより3個を選択し、Taq Dy e DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit(アプライドバイオシステムズ社製 )を用い、アプライドバイオシステムズ社製373ADNAシークエンサーによりシー クエンスし、2クローンで、予想通りの欠失が起こっており、またその他の部分 も含めて全長にわたり塩基配列の置換等がなく、設計通りのTP0cDNA配列を持つ 2個のクローンpHT7−163#4、#29が得られた。 (3)アミノ酸番号1−7を欠失する誘導体(pHT8−163)作製 アミノ酸番号1−7を欠失する誘導体(pHT8−163)の作製方法は上記 、アミノ酸番号1−6を欠失する誘導体(pHT7−163)の作製と本質的に は同様の方法で行なった。実施例27で得たクローンpHT1−163のプラス ミドDNA1.4μgを鋳型として使用し、合成したプライマー(hTPO−8 及びhTPO−Sを組で使用:hTPO−5並びにhTPO−8Rを組で使用) をそれぞれ5μM使ってPCRを実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with Am pliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて、 GeneAmpTMPCR System 9600(PERKIN-ELMER社製)により100μlの容量でPCR 反応(95℃で5分間変性後、95℃で1分間の変性条件、65℃で1分間のアニール 条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反応を行い、さらに7分間72℃でインキ ュベート)を行った。それぞれのPCR産物を1.2%アガロースゲル(FMC Bi oProducts社製)を用いた電気泳動にかけ、各々予想される大きさの主要なDN A断片を分離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製) で精製し、15μlのTEバッファーに溶解した。この溶液各1μlを鋳型とし て用い2回目のPCRを実施した。 合成したプライマー(hTPO−5並びにhTPO−Sを使用)をそれぞれ5 μM使ってPCRを実施した。GeneAmpTMPCR Reagent Kit with AmpliTaqTMDNA Polymerase(宝酒造社製)を用いて、GeneAmpTMPCR System 9600(PERKIN-ELMER 社製)により100μlの容量でPCR反応(95℃で5分間変性後、95℃で1分間 の変性条件、60℃で1分間のアニール条件、72℃で1分間の合成条件で30回の反 応を行い、さらに7分間72℃でインキュベート)を行った。PCR産物を1.2 %アガロースゲル(FMC BioProducts社製)を用いた電気泳動にかけ、予想 される大きさの主要なDNA断片を分離し、プレップ‐A‐ジーンDNA精製キ ット(バイオラッド社製)で精製し、15μlのTEバッファーに溶解した。制 限酵素EcoRI並びにNotIで消化後、等量のフェノール/クロロホルムで1回抽出 後エタノール沈殿を行なった。遠心で得られた沈殿を15μlのTEバッファー に溶解後、同様に制限酵素処理した発現ベクターpEF18Sにサブクローニン グした(宿主菌としては東洋紡績社製コンピテント・ハイE.coliDH5を使用) 。得られた形質転換体のうち、予想される長さのインサートを含むクローンを3 0個選択し、プラスミドDNAを調製した。方法は本質的にMolecular Cloning [Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されてい るようにして実施した。配列番号4において、アミノ酸番号1−163をコード する蛋白質のうち1−7を欠失する欠失誘導体(pHT8−163)のプラスミ ドDNAを得た。これらのクローンについてはhTPO‐5並びにhTPO‐S をプライマーとして用いたPCRを実施し、全てのクローンで予想される大きさ 程度のインサートを含むことが確認された。これらのクローンより3個を選択し 、Taq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステムズ 社製373ADNAシークエンサーによりシークエンスし、2クローンで、予想通りの 欠失が起こって起こっており、またその他の部分も含めて全長にわたり塩基配列 の置換等がなく、設計通りのTPOcDNA配列を持つ2個のクローンpHT8−16 3#33、#48が得られた。 (4)欠失誘導体のCOS1細胞での発現とTPO活性の確認 得られたそれぞれの欠失体クローンのCOS1細胞へのトランスフェクションは 、実施例11に従って行なった。すなわちプラスミドDNA各10μgを使用し クロロキン処理を含むDEAE‐デキストラン法を用いたトランスフェクション を行ない、3日後に培養上清を回収した。培養上清をIMDM培養液に対して十 分に透析後、M-07eアッセイ系で評価した。 その結果、アミノ酸7−163位の欠失誘導体をコードするクローンをトラン スフェクションしたCOS1細胞培養上清中に弱いながらも用量依存的にTPO活性を 認めた。一方、アミノ酸8−163位、13−231位の欠失誘導体をコードす るクローンをトランスフェクションしたCOS1細胞培養上清中にはTPO活性が認め られなかった。 〈実施例30〉ヒトTPO完全長cDNAプラスミド(pHTP1)の作製 配列番号6のように予想されたヒトTPOcDNAのアミノ酸コーディング領 域を全て持つ、動物細胞発現ベクターの構築を行なった。 PCRによりヒトTPOcDNAコーディング領域を全てカバーするDNA断 片を以下の様に作製した。 用いたプライマーのヌクレオチド配列は次の通りである。 hTPO‐I:5’‐TTGTGACCTCCGAGTCCTCAG‐3’( 配列番号78)(配列番号6の105〜125) SA:5’‐CAGGTATCCGGGGATTTGGTC‐3’(配列番号 79)(配列番号6の745〜765に対応するアンチセンス) hTPO‐P:5’‐TGCGTTTCCTGATGCTTGTAG‐3’( 配列番号80)(配列番号6の503〜523) hTPO‐KO:5’‐GAGAGAGCGGCCGCTT ACCCTTCCTGAGACAGATT‐3’(配列番号81)(配列番号6の 1066〜1086に対応するアンチセンス配列に制限酵素NotIの認識配列並びにGAG AGA配列(配列番号82)を付加したもの)。 実施例16で得られたクローンpEF18S‐HL34の300ngを鋳型とし て1回目のPCRを行なった。プライマーhTPO−I並びにSA各0.5μMを 用い、Vent RTMDNA polymerase(New England BioLabs社製)1ユニットを使用 して反応(96℃1分間、62℃1分間、72℃1分間という反応を30サイクル行なっ た後72℃7分間)を行なった。反応溶液の組成は以下の通り。最終濃度で10mM K Cl、10mM(NH4)2SO4、20mM Tris-HCl(pH8.8)、2mM MgSO4、0.1%Triton X-100、2 00μM dNTP mix。 市販のヒト正常肝臓由来ポリ(A)+RNA(Clontech社製)1μgを70℃で1 0分間加熱後氷上で急冷し、10mM DTT、500μM dNTP mix、25ng random primer( 宝酒造社製)、10ユニット RNase Inhibitor(ベーリンガーマンハイム社製) 、200ユニットSuperScriptTMII RNaseH-(LIFE TECHNOLOGIES社製)を加え、37 ℃で1時間保温しcDNAを合成した。合成した cDNA反応液の20分の1量を鋳型として使用して2回目のPCRを行なった。 プライマーhTPO‐P並びにhTPO‐KO各2.5μM、2.5ユニットのAmpliT aqTMDNA polymerase(宝酒造社製)を用いて反応(95℃1分間、58℃1分間、72 ℃1分間の反応を30サイクル)を行なった。 第1及び第2回のPCR溶液を1%アガロースゲル電気泳動にかけ、それぞれ 予想された大きさの主要なバンドをプレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイ オラッド社製)を用いて精製した。それぞれの精製量のうち各20分の1量を鋳型 として3回目のPCRを実施した。Vent RTMDNA polymerase(New England BioL abs社製)1ユニットを使用して反応(96℃2分間加熱後、96℃2分間、72℃2 分間、という反応を3サイクル行なった後72℃7分間)を行なった。この反応液 にそれぞれ1μMとなるようにhTPO‐I並びにhTPO‐KOを加えた後、 96℃2分間の加熱を行ない、そののち96℃1分間、62℃1分間、72℃1分間の反 応を25サイクル行なったあと72℃でさらに7分間反応させた。反応液を等量の水 飽和フェノール‐クロロホルムで1回抽出後、さらに等量のクロロホルムで1回 抽出したのち、エタノール沈殿(0.3M酢酸ナトリウム、0.5μlベ ーリンガーマンハイム社製グリコーゲン、2.5倍量エタノール存在下)を行なっ てDNAを回収した。回収したDNAを制限酵素BamHI並びにNotIで消化後1% アガロースゲル電気泳動にかけ、予想された大きさの主要なバンドをプレップ‐ A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッド社製)を用いて精製したのち、予め同 様に制限酵素BamHI並びにNotIで消化したpBluescriptII SK+ベクター(Stratage ne社)に連結後、コンピテントハイE.coli DH5(東洋紡績社製)を形質転換した 。得られたコロニーより4クローンを選びプラスミドDNAを調製した。精製し たプラスミドDNAについてはTaq Dye DeoxyTMTerminater Cycle Sequening Kit( アプライドバイオシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステムズ社製37 3ADNAシークエンサーによりシークエンスし、BamHIからNotIにかけての領域に塩 基配列の置換がなく、予想通りのTPOcDNA配列を持つことが確認できたクローン pBLTPを得た。 pBLTPを制限酵素EcoRI並びにBamHIで消化後1%アガロースゲル電気泳動 にかけ、高分子量のバンドをプレップ‐A‐ジーンDNA精製キット(バイオラッ ド社製)を用いて精製した。同様にpEF18S‐HL34も制限酵素処理し4 50 bpのバンドを精製した。それぞれのDNAをLigationしコンピテントハイE.coli DH5(東洋紡績社製)を形質転換した。得られたコロニーよりプラスミドDNA を調製し、ヒトTPOcDNAのインサートを含むクローンpBLTENを得た 。得られたpBLTENを制限酵素EcoRI並びにNotIで消化後、1%アガロース ゲル電気泳動にかけ、約1200bpのバンドをプレップ‐A‐ジーンDNA精製キット (バイオラッド社製)を用いて精製した後、同様に制限酵素処理した発現ベクタ ーpEF18Sに連結しコンピテントハィE.coli DH5(東洋紡績社製)を形質転 換した。得られたコロニーよりプラスミドDNAを調製し、ヒトTPOcDNA のコーディング領域を全て含むクローンpHTP1を得た。このクローンのプラ スミドDNAを大量に調製し以下の実験に使用した。プラスミドDNAの調製は 本質的にMolecular Cloning(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Pre ss、1989)に記載されているようにして実施した。 〈実施例31〉CHO細胞内でのヒトTPO発現用の哺乳動物発現プラスミド、pDEF202-hTP O-P1の構築 マウスDHFRミニ遺伝子を含むプラスミドpMG1、1μgを制限酵素EcoRIとBamHI で処理した後、アガロースゲル電気泳動しマウスDHFRミニ遺伝子を含む断片(約 2.5kbp)を回収した。回収した断片を50mM Tris-HCl(pH7.5)、7mM MgCl2、1m Mmercaptoethnol、0.2mM dNTPからなる反応液25μl中に溶解し、Klenowフラグ メント2単位を加え、室温で30分間反応させ、DNAの末端を平滑化した。次い で、フェノール/クロロホルム処理、エタノール沈殿後、10mM Tri-HCl(pH8.0 )、1mM EDTAからなる TE溶液10μlに溶解した。 次に、得られたマウスDHFRミニ遺伝子を含む断片と動物細胞用発現ベクターpE F18Sを制限酵素SmaIで処理した後、アルカリフォスファターゼ(宝酒造製)で 脱リン酸化してえられたベクターDNAをT 4DNAリガーゼ(宝酒造製)で結合させ 、発現ベクターpDEF202を得た。 次に、このベクターpDEF202を制限酵素EcoRIとSpeIで処理し、アガロース ゲル電気泳動で大きい方のベクターフラグメントを回収したのち、このフラグメ ントとヒトTPOcDNA(P1クローン)を含むプラスミドpHTP1を制限酵素EcoRI とSpeIで処理して得られたヒトTPOcDNA(P1クローン)とをT 4DNA リガーゼ(宝酒造製)で結合させ、発現ベクターpDEF202-hTPO-P1得た。この プラスミドはSV40の複製開始領域、ヒトエロンゲーションファクタ−1−アル ファプロモーター、SV40初期ポリアデニル部位、マウスDHFRミニ遺伝子、pUC 18の複製開始領域、β‐ラクタマーゼ遺伝子(Ampr)を含み、ヒトエロンゲー ションファクタ−1−アルファプロモーター下流にヒトTPOcDNAが接続されてい る。 〈実施例32〉CHO細胞でのヒトTPOの発現 CHO細胞(dhtr‐株、UrlaubとChasin;Proc.Natl.Acad.Sci.USA;77巻4 216頁、1980)を6cm径のプレート(Falcon社製)中10%牛胎児血清を 含むα最小必須培地(α-MEM(−)、チミジン、ヒポキサンチン添加)で培養増 殖させ、これをリン酸カルシウム法(CellPhect、ファルマシア社製)によって 形質転換した。すなわち、実施例31で調製したpDEF202-hTPO-P1プラスミド 10μgにバッファ−A:120μlおよびH2O:120μlを加え混合したの ち、室温で10分間放置した。つぎに、この溶液にバッファーB:120μlを 加え、再度混合したのち、室温で30分間放置した。こ のDNA溶液をプレートに滴下したのち、CO2インキュベーター中で6時間培養した 。プレートから培地を除去し、α-MEM(−)にて2回洗浄後、10%ジメチルス ルフォオキシド含有α-MEM(−)を添加し、室温で2分間処理した。次いで、1 0%透析牛胎児血清含有非選択培地(前出α-MEM(−)、ヒポキサンチン、チミ ジン添加)を添加して2日間培養したのち、10%透析牛胎児血清含有選択培地 (α-MEM(−)、ヒポキサンチン、チミジン無添加)での選択をおこなった。選 択は細胞をトリプシン処理した後、6cm径プレート1枚あたりを、10cm径プレ ート5枚あるいは24ウエルプレート20枚に分割したのち、2日ごとに選択培 地にて培地交換を行いながら培養を続行する事により実施した。細胞が増殖して きたプレートあるいはウエルについてはその培養上清中のヒトTPO活性をM−0 7eアッセイ及びBa/F3アッセイを用いて測定したところ、いずれのアッセ イ系においても活性が認められた。培養培地中にヒトTPOを分泌する細胞を、2 5nMのメソトレキセートを含む選択培地でさらに選択し、高レベルのヒトTPO を産生する細胞クローンを単離した。 なお、CHO細胞の形質転換はCHO細胞に対しpHTP1とpM G1を同時形質転換(co-transfection)することによっても行うことができる。 プラスミドpDEF202−hTPO−P1によって形質転換されたCHO細 胞株(CHO-DUKXB11)は1995年1月31日付で通商産業省工業技術院生命工 学工業技術研究所に受託番号FERM BP−4988として寄託されている。 〈実施例33〉X 63.6.5.3.細胞用組換えベクター、BMCGSneo-hTPO-P1の構築 動物細胞用発現ベクターBMCGSneo1μgを制限酵素XhoIとNotIで処理した後、 アガロースゲル電気ゲル電気泳動し、ベクターDNA部分を回収した。次いで得ら れたDNA断片とヒトTPOcDNAを含むプラスミドpBLTENを制限酵素XhoIとNotIで処理 して得られたヒトTPO cDNA(P1クローン)とをT 4DNAリガーゼで結合させ、発 現プラスミドBMCGSneo-hTPO-P1を得た。この発現プラスミドはサイトメガロウイ ルス初期プロモーター、ウサギβグロビン遺伝子由来のイントロンおよびポリア デニル部位ヒトβグロビン遺伝子の一部、ウシパピローマウイルス1遺伝子の6 9%、チミジンキナーゼプロモーターおよびポリアデニ ル部位、ホスホトランスフェラーゼI(ネオマイシン耐性遺伝子)、pBR322 の複製開始領域およびβ‐ラクタマーゼ遺伝子(Ampr)を含みサイトメガロウイ ルスプロモーター下流にヒトTPO cDNAが接続されている。 〈実施例34〉X 63.6.5.3.細胞での発現 X 63.6.5,3.細胞は10%牛胎児血清を含むDulbecco′s minimal e ssential(DME)培地中で培養増殖させ、これをエレクトロポレーション法によ って形質転換した。 すなわち、実施例33で調製したBMCGSneo-hTPO-P1プラスミド20μgを107 個の細胞を含むDME培地750μlに加え、エレクトロポレーション用の4mmギ ャップのキュベットにセットし、4℃で10分間放置した。このキュベットをエ レクトロポレーション装置(BTX600、BTX社製)にセットし、380V、25m F、24オングストロームの条件で遺伝子導入した。遺伝子導入後、キュベット を再び4℃で15分間放置したのち、細胞を10%牛胎児血清を含むDMEで一回 洗浄した。次に細胞を50mlの10%牛胎児血清を含むDMEに懸濁し、96ウエ ルプレート5枚に分割したのち、CO2インキュベータ ー中で2日間培養した。その後、培養液を1mg/mlのG418(GIBC0社)、10%牛 胎児血清を含むDMEに交換し、以後3日ごとに培地交換した。細胞が増殖してき たウエルについてはその培養上清中のヒトTPO活性をCFU−MKアッセイ、M −07eアッセイ及びBa/F3アッセイを用いて測定したところ、いずれのア ッセイ系においても活性が認められた。培養培地中にヒトTPOを分泌する形質転 換体を限界希釈法により2回クローニングし、ヒトTPO産生細胞株を樹立した。 〈実施例35〉ヒトTPOのCOS1細胞での大量発現 COS1細胞へのトランスフェクションは、実施例11に記載のクロロキン処 理を含むDEAE‐デキストラン法で実施した。COS1細胞(ATCC CRL1650)をコラー ゲンコート処理した175cm2の培養フラスコ中で、10%(v/v)のFCSを含むIMDMを 用いて、37℃の5%炭酸ガスインキュベーター内で約100%コンフルエントになる まで培養した。培養フラスコのコラーゲンコート処理は、1mM HClで0.3mg/mlに 調製したコラーゲン溶液(イワキ社製Cellmatrix typeI-C)を175cm2の培養フラ スコあたり25ml加え、室温で1時間放置後コラーゲン溶液を回収し、20〜50 mlのPBSで1回洗浄することで行なった。トランスフェクションは175cm2の培 養フラスコ1枚あたり、250μg/mlのDEAE‐デキストラン(ファルマシア社)、6 0μMのクロロキン(シグマ社)、および10%(v/v)のNu-Serum(コラボレイテ ィブ社)を含む20mlのIMDM溶液に500μlのHBSに溶解したプラスミドpHTP1(40 μg)を混和し、トランスフェクション直前にIMDMで1回洗浄した上記のCOS1細 胞に添加した後、37℃の5%炭酸ガスインキュベーター内で3時間培養した。そ の後、培養上清を吸引除去しIMDMで1回洗浄した後、50mlの無血清培地を添加し 、37℃の5%炭酸ガスインキュベーター内で培養し、5日後に培養上清を回収し た。1回の操作には175cm2の培養フラスコ100から260枚を使用し、5〜131の培 養上清を回収した。無血清培地の組成は、5μg/ml Insulin(シグマ社製)、5 μg/ml Transferrin(シグマ社製)、10μM monoethanolamine(和光純薬)、25 nM Sodium selenite(シグマ社製)、200μg/mlのBSA(ニチレイ社製脂肪酸フリ ー高純度ウシアルブミン)を含むIMDMである。 〈実施例36〉 COS1細胞で発現したヒト完全長TPO(発現プラスミド pHTP1,P1クローン由来)の精製と活性確認 COS1細胞で発現したヒト完全長TPO(発現プラスミドpHTP1由来) の活性と精製の実施例を以下に述べる。TPOの血小板増加作用を調べるため、部 分精製品をまず調製し、かつ高純度のTPO標品を得るための精製を行った。以 下の調製過程でのTPO活性測定には、M‐07eアッセイ系を主に用いたが、ラ ットCFU-MKアッセイ系においても同様のTPO活性が示された。またこれらのア ッセイに際し、最終濃度0.02〜0.05%のヒト血清アルブミン(HSA)を標品に添 加した。 まず、プラスミドpHTP1を大橋、須藤の方法(Hideya Ohashi and Tadash i Sudo,Biosci.Biotech.Biochem.,58(4),758-759,1994)を用いてトラン スフェクションしたCOS1細胞を、1000ml当たり0.2gのBSA、5mgの牛イン シュリン、5mgのヒトトランスフェリンを含みかつ、0.02mMのモノエタノールア ミン、25nMのSodium Seleniteを含む無血清IMDM培養液で5日間、5%炭酸 ガス培養器中にて37℃で培養し、約7Lの無血清培養上清を得た。その無血清培 養上清に、蛋白質分解酵素阻害剤であるp-APMSF及びPefabloc SC(4-(2-Aminoet hyl)-benzenesulfonyl fluoride hydrochloride, Merk社製、カタログ番号24839)を最終濃度約1mM加え、0.22μ mの濾過フィルターの濾液をとった。これを限外濾過ユニット(フィルトロン社 製・オメガウルトラセット 分子量8000カット、またはミリポア社製・PLGC ペリコンカセット 分子量10000カット)で約10倍濃縮し、体積723ml(蛋 白質濃度3.38mg/ml)総蛋白質量2445mg、相対活性43000、総活 性量105100000)に対し1000ml当り1.6molesのAmmonium Sulfate (合計288g)を加え、最終濃度1.5M Ammonium Sulfateを含む804mlの溶液とし た後、1.25M Ammonium Sulfateを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.2) で予め平衡化してあったMacro-Prep Methyl HICカラム(Bio-Rad社製、カタログ 番号156-0080;直径5cm、ベッド高9cm)に、流速10ml/minで添加した。添加終 了後、1.25M Ammonium Sulfateを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.2) で溶出された素通り画分F1(2384ml,蛋白質濃度0.864mg/ml,総蛋白質量2061 mg,相対活性6000)を得た。 次に、溶出液を20mM Na Citrate,pH5.8にかえ、溶出された画分F2(1092mI ,蛋白質濃度0.776mg/ml,総蛋白質量847mg, 相対活性150000)を集めた。 さらに、Macro-Prep Melhyl HICカラムF2(1081ml)を、20mMクエン酸ナト リウム緩衝液(pH5.8)で予め平衡化したSP Sepharose Fast Flow(ファルマシ ア バイオテク社製、カタログ番号17-0729-01;直径3cm、ベッド高10cm)カラ ムに注入し、流速10ml/minで添加した。添加終了後、さらに110mM NaClを含む20 mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)で溶出されたものをまとめた画分F1(2 262ml,蛋白質濃度0.270mg/ml,総蛋白質量610mg,相対活性30000)を得た。次 に、溶出液を400mM NaClを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.4)にかえ 、溶出された画分F2(856ml,蛋白質濃度0.189mg/ml,総蛋白質量162mg,相対 活性300000)を集めた。次に、溶出液を1000mM NaClを含む20mMクエン酸ナトリ ウム緩衝液(pH5.2)にかえ、溶出された画分F3(370ml,蛋白質濃度0.034mg/ ml,総蛋白質量12.6mg,相対活性150000)を集めた。 さらに、SP Sepharose Fast Flowカラムにおいて主たるTPO活性画分F2( 845ml)に、最終濃度約10%の1−プロパノールを加え、400mMのNaClを含む20mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.4)で予め平衡化したLA-WGAカラム(ホーネン 社 製、カタログ番号WG-007;直径2cm、ベッド高14cm)カラムに注入し、流速3ml /minで添加した。添加終了後、400mMのNaClを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝 液(pH5.4)と1−プロパノールの混液(9:1)で溶出されたものをまとめた 画分F1(64.4ml,蛋白質濃度0.0178mg/ml,総蛋白質量1.15mg,相対活性17220 )を得た。次に、溶出液を0.4M GIcNac,10%1−プロパノールを含む20mMクエン 酸ナトリウム緩衝液(pH6.1)にかえ、溶出された画分F2(45ml,蛋白質濃度0 .0104mg/ml,総蛋白質量0.470mg,相対活性675000)を集めた。 そこで、LA-WGAカラムにおいて主たるTPO活性画分F2(340ml)に、最終 濃度約0.005%のTFAを加えた後、YMC-Pack CN-AP(YMC社製、カタログ番号AP- 513;直径6mm、ベッド高250mm)カラムにて展開した。即ち、展開溶媒Aに0.1% TFA、展開溶媒Bに0,05%TFAを含む1-プロパノールを用い、15%Bで平衡化し たYMC-Pack CN-APカラムに、流速0.6ml/minで注入した。注入終了後、15%Bか ら25%Bにプロパノール濃度を上げ、さらに25%Bから50%Bまで65分の直線濃 度勾配で展開し、1.5ml(2.5min)ずつポリプロピレン製チューブに集めた。 それぞれ0.5μl(3000分の1フラクション)を取りHSAを加え、限外濾過 濃縮し、最終的に0.05%HSAを含む0.25mlのIMDMアッセイ培養液溶液とし、これ をアッセイにかけ、TPO活性画分を特定した。この結果、チューブ番号24〜30 (プロパノール濃度で35.0〜42.0%の範囲)に強いTPOの活性(相対活性約63 0000〜4800000)があったため、TPO活性画分FA(13.5ml)とした。 そこでさらに、YMC-Pack CN-APで得られたFAを、展開溶媒Aに0.1%TFA、展 開溶媒Bに0.05%TFAを含む1-プロパノールを用いたCapcell Pak C1 300A(資生 堂製、カタログ番号C1 TYPE:SG300A;直径4.6mm、ベッド高150mmに加え、直径4 .6mm、ベッド高 35mmのプレカラムを接続したもの)カラムにて展開した。即ち 、YMC-Pack CN-APで得られたFAの一部(8.9ml)をとり、0.3mlのグリセロール を添加後、遠心エバポレーションで濃縮後、約2.5mlの10%B液を加え、20%B で平衡化したCapcell Pak C1 300Aカラムに流速0.4ml/minで注入した。注入終了 後、20%Bにて5分溶出した後、20%Bから40%Bまで50分の直線濃度勾配で展 開し、1ml(2.5min)ずつポリプロピレン製チューブに集めた。 それぞれ1μl(1000分の1フラクション)を取りHSAを加え、限外濾過 濃縮し、最終的に0.05%HSAを含む0.25mlのIMDMアッセイ培養液溶液とし、これ をアッセイにかけ、TPO活性画分を特定した。この結果、チューブ番号20〜23 (プロパノール濃度で28.5〜32.5%の範囲)に強いTPOの活性(相対活性約30 00000〜22500000)を示す高活性標品を得ることができた。 〈実施例37〉COS1細胞で発現したヒトTPOの分子量測定 COS1細胞で発現したヒト完全長TPO(発現プラスミドpHTF1、F1 クローン由来)の分子量は、糖鎖が付加された結果、ペプチド鎖の大きさから推 定しうる分子量よりも大きいことが考えられた。そこでまず、COS1細胞で発 現したヒト完全長TPO(発現プラスミドpHTF1、F1クローン由来)を含 む培養上清から部分精製TPO画分を以下のように調製した。即ち、展開溶媒A (0.1%トリフルオロ酢酸(TFA))および展開溶媒B(0.05%TFAを含む1-プロ パノール)を用いて、25%Bで予め平衡化したYMC-Pack PROTEIN-RP(YMC 社、カタログ番号A-PRRP-33-46-25;直径0.46 cm、ベッド高15cm)カラムに、培養上清0.3mlを注入し、流速0.4ml/minで5分2 5%Bを通液した後、50分間の25%Bから50%Bまでの直線濃度勾配にて 分画した。TPO活性は34.5%〜43.5%1-プロパノールの範囲に溶出され、これ を遠心エバポレーションで乾固し、部分精製標品を得た。 次に、実施例1に述べた非還元下SDS−PAGEのゲルから蛋白質抽出操作 後、M‐07eアッセイ系にてTPO活性を調べ、あるいは実施例45に述べる ウエスターン分析により、還元処理されたDPCIIIマーカーに対する分子量 を測定した。この結果、見かけ上の分子量約69000〜94000の広い範囲 にTPO活性が存在し、分子量の不均一性を確認できた。さらにこれと同様にし て、N−Glycanase(ジェンザイム社製、カタログ番号1472-00)によ るN結合型糖鎖切断後のTPOについて、還元処理されたDPCIIIマーカー に対する見かけ上の分子量を調べてみると、36000〜40000となり、ペ プチド鎖の大きさから推定しうる分子量約35000よりもなおも大きいことが 判明し、O結合型糖鎖をも含むことが強く示唆された。 これらと同様、COS1細胞で発現したヒト完全長TPO (発現プラスミドpHTP1、P1クローン由来)の見かけ上の分子量について も調べたところ、63000〜83000であった。 〈実施例38〉ヒトTPOの生物学的特性 主に発現プラスミドpHTF1をCOS1細胞へトランスフェクションして得 られたTPO活性を含有する培養上清を用いて、ヒトTPOのヒト、およびラッ ト血液系細胞に対する作用を調べた。 ヒト臍帯血から調製したCD34+、DR+細胞画分を用いたコロニーアッセイ 系で検定したところ、ヒトTPOにより有意な数の巨核球コロニーが形成された 。例えば、発現プラスミドpHT1−231をトランスフェクション、発現させ たCOS1細胞培養上清を10%添加した条件下で、6000個のCD34+、DR+細 胞から平均11.5個の巨核球コロニーが形成された。ヒト抹消血からFicoll-Paque を用いた比重遠心法にて得られた白血球画分からプラスティック付着性細胞を除 去し、さらにSBA(ダイズアグルチニン)に親和性を有する細胞をAISマイ クロセレクターCD34(旭メディカル株)を用い たパニング法にて除去し、最終的にAISマイクロセレクターCD34(旭メデ ィカル株)を用いたパニング法にてCD34+細胞画分を得た。この細胞画分に ヒトTPO(発現プラスミドpHTF1をトランスフェクション、発現させたC OS1細胞培養上清)を添加し、10日間液体培養したところ、サイズの大きいG pIIb/IIIa+細胞の選択的増殖が認められ、さらにこのGpIIb/IIIa+細胞 では核の倍数性(ploidy)が増加していた。このことから、ヒトTPOがヒト巨 核球系前駆細胞に特異的に作用し、その増殖・分化を促進することが強く示唆さ れた。 ラット骨髄細胞から分離・精製したGpIIb/IIIa+細胞画分、及びGpIIb /IIIa+細胞画分を得る前段階のプラスティック非付着性細胞画分を用いたコロ ニーアッセイ系で検定したところ、ヒトTPOにより有意な数の巨核球コロニー が形成された。例えば、発現プラスミドpHTF1をトランスフェクション、発 現させたCOS1細胞培養上清を20%添加した条件下で、培養5日目に1000個の GpIIb/IIIa+細胞から平均34.5個の巨核球コロニー、また20000個のプラス ティック非付着性細胞から平均28.5個の巨核球コロニーが形成された。さ らに、プラスチック非付着細胞画分には巨核球系以外の様々な系統の前駆細胞が 存在するが、ヒトTPOの添加では巨核球コロニーしか形成されず、ヒトTPO が巨核球系前駆細胞に特異的に作用することが強く示唆された。また、ラット骨 髄由来のGpIIb/IIIa+細胞画分をヒトTPO(発現プラスミドpHTF1を トランスフェクション、発現させたCOS1細胞培養上清を20%添加)の存在下 に3〜5日間液体培養し、核の倍数性(ploidy)を調べたところ、培養5日目に 明らかにploidyが増加していた。 〈実施例39〉グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)とヒトTPO(アミノ酸1−174 )の融合タンパク質(以下、この融合タンパク質を「GST−TPO(1-174) 」と称す)の大腸菌発現用ベクターの構築 大腸菌でのヒトTPOの発現を容易にするために、ヒトTPOをコードしかつ大腸菌 優先コドンを含有する人工遺伝子を作製した。なお、このDNAヌクレオチド配列 は大腸菌翻訳開始用のアミノ末端メチオニンコドン(ATG)を‐1の位置に有す る。下記に示した1−12の合成オリゴヌクレオチド: を作製し、2−11の合成オリゴヌクレオチドをT4キナーゼ(ファルマシア社製 )により1mM ATP,10mM Tris-acetate,10mM Mg-acetate,50 mM K-acetateの溶 液中でリン酸化した。これらの合成オリゴヌクレオチドを6本の二本鎖DNAにす るために1及び2;3及び4;5及び6;7及び8;9及び10;11及び12 それぞれの組み合わせの一本鎖DNAを10mM Tris/HCl(pH7.5),10mM MgCl2,50m M NaClの溶液中でアニールした。次に1及び2;3及び4;5及び6の三組の二 本鎖DNAと、7及び8;9及び10;11及び12の三組の二本鎖DNAをそれぞれ T4リガーゼ(ライフテクノロジー社製)を用いて反応し、更にこれら二種の反応 液を同様にしてT4リガーゼを用いて反応した。このライゲーション反応で得られ たDNAをBamHI(ベーリンガーマンハイム社製)で消化後、2%のアガロースゲル で泳動し、約390−400bpの大きさのフラグメントを回収してプレップ−A−ジー ンDNA精製キットで精製し、XbaI,BamHIで消化したpUC18にサブクローニングし た(宿主はE.coli DH5αを使用した)。得られたクローンのうち、ヒトTPOをコ ードしかつ次に示したコドンを含有する人工遺伝子をもつクローンを、ヌクレオ チド配列の解析により選択し、これをpUC18(XB)(1-123)とした。コーディン グ鎖のDNA配列を配列表(配列番号9)に示した。 ヒト正常肝臓由来ポリ(A)+RNA1μgよりcDNAの1本鎖目をオリゴdTプラ イマーをプライマーとして合成し、cDNA合成の反応液の0.1容を鋳型としてPC Rを行った。プライマーにはhTPO-C及びhTPO-こ(EcoRI)を使用し、100μlの 容量で反応を行った(96℃2分間の後に、95℃1分間/58℃1分間/72℃1分間 を30サイクル反応し、さらに72℃7分間)。これによって得られた、ヒトTPOcDN A断片をBamHIとEcoRIで消化後2%のアガロースゲルで泳動し、約600bpの大きさ のフラグメントを回収してプレップ−A−ジーンDNA精製キットで精製し、EcoRI ,BamHIで消化したpUC18にサブクローニングした(宿主はE,coli DH5αを使用し た)。正しいヒトTPO塩基配列をコードするクローンを、塩基配列の解析により 選択し、pUC18(BE)(124-332)とした。ここで用いたPCR用プライマーの配 列は以下の通りである。 hTPO−C:5’−GGAGGAGACCAAGGCACAGGA−3’( 配列番号95)(pHTF1クローンの329-349) hTPO−Z(EcoRI):5’−CCGGAATTCTTACCCTTC CTGAGACAGATT−3’ (配列番号96)(pHTF1クローンの1143-1163に対応するアンチセンスにEcoRI配 列を付加)。 pUC18(BE)(124-332)をBamHIとEcoRIで消化後2%のアガロースゲルで泳動 し、約600bpの大きさのヒトTPOcDNAのC末端側フラグメントを回収してプレップ −A−ジーンDNA精製キットで精製し、EcoRI,BamHIで消化したpUC18(XB)(1- 123)にサブクローニングした(宿主はE.coli DH5αを使用した)。ここで得ら れたクローンをpUC18(XE)(1-332)とした。 ヒトTPOcDNAのC末端側の種々のデリーションコンストラクトを作製し、それ を発現させインビトロのヒトTPO活性の測定を行った実施例より、ヒトTPOアミノ 酸1−163はヒトTPO活性を保持することが明らかになったので、このペプチ ド断片を含んだ発現ベクターを構築することにした。ここでは、GST−TPO (1-174)の発現を行った。 pHTF1クローンの681−686(アミノ酸173−174)に相当する塩基配列は、制限 酵素SacIにより認識されるので、この制限酵素認識部位を利用して2本の合成オ リゴヌクレオチドにより終止コドンを導入した。具体的には、2本の合成オリゴ ヌクレオチドSSE1,SSE2を10mM Tris/HCl(pH7.5),10mM MgCl2, 50mM NaClの溶液中でアニールし、ここで得られた二本鎖DNAを、SacI,EcoRIで 消化してヒトTPOcDNAのC末端側約480bpを除いたpUC18(XE)(1-332)にDNA Li gation Kit(宝酒造社製)を用いて導入し、クローンpUC18(XS)(1-174)を得 ることができた(宿主はE.coli DH5αを使用した)。ここで用いた合成オリゴヌ クレオチドの配列を下記に示した。 pUC18(XS)(1-174)をXbaI,EcoRIで消化後、2%のアガロースゲルで泳動 し、ヒトTPOアミノ酸1−174をコードする約600bpの大きさのフラグメントを 回収してプレップ‐A‐ジーンDNA精製キットで精製し、XbaI,EcoRIで消化したp Bluescript IISK+(ストラタジーン社製)にサブクローニングした(宿主 はE.coli DH5αを使用した)。ここで得られたクローンをpBL(XS)(1-174)と した。さらに、これと同様にしてpBL(XS)(1-174)をXbaI,HindIIIで消化後 、ヒトTPOアミノ酸1−174をコードする約550bpの大きさのフラグメントを回 収してプレップ−A−ジーンDNA精製キットで精製し、XbaI,HindIIIで消化した pCFM536(特表示昭60-501988)にクローニングした(宿主はE.coli DH5αを使 用した)。ここで得られたクローンをpCFM536/hT(1-174)とした。 グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク発現ベクター であるpGEX-2T(ファルマシア社製)によって、GST−TPO(1-174)を発現 させるために、次のことを行った。pCFM536/hT(1-174)を鋳型として、2本の PCR用プライマーGEXI,GEX3を用いてPCRを行った(96℃2分間の後に、95 ℃1分間/41℃1分間/72℃1分間を22サイクル反応し、さらに72℃7分間)。 これによって得られた、ヒトTPOをコードする断片をNaeIとEcoRIで消化後2%の アガロースゲルで泳動し、約550bpの大きさのフラグメントを回収してプレップ −A−ジーンDNA精製キットで精製し、EcoRI,SmaIで消化したpGEX-2Tにクローニ ングし(宿主はE.coli DH5を使用し た)、正しいヒトTPO塩基配列をコードするクローンpGEX-2T/hT(1-174)を、塩 基配列の解析により選択し、これをGST−TPO(1-174)発現用の形質転換 体とした。ここで用いたPCR用プライマーの配列は以下の通りである。 GEX1:5′‐ATCGCCGGCTCCGCCAGCTTGTGAC‐3 ′(配列番号101)(配列番号10の21-39にNaeI配列を付加) GEX3:5′‐GCCGAATTCTCATTAGAGCTCGTTCAG TGT‐3′(配列番号102)(配列番号10の523-549のアンチセンス)。 またこの発現プラスミドは、GSTタンパクに続いてトロンビン認識ペプチド、 及びヒトTPO(アミノ酸1−174)をコードする配列を含んでいる。トロン ビン認識ペプチド、及びヒトTPO(アミノ酸1−174)をコードする配列を 配列表(配列番号10)に示した。 〈実施例40〉GST−TPO(1-174)の大腸菌での発現 実施例39で得られた形質転換株を、アンピシリン50μg/mlを含むLB培地60 mlに37℃で一晩振盪培養し、この培養液25 mlをアンピシリン50μg/mlを含むLB培地1000mlに加えて、ODはA600が0.7− 0.8に至るまで37℃で振盪培養した。次いで最終濃度が、0.1mMになるようにIP TGを添加し、さらに3時間振盪培養して、GST−TPO(1-174)の発現を 誘導した。 〈実施例41〉大腸菌で発現したGST−TPO(1-174)の精製と活性確認 ヒトTPOヌクレオチド配列をコードするクローンpGEX-2T/hT(1-174)由来GS T−TPO(1-174)生産組換体凍結菌体5.9gに水10mlを加えてけん濁 し、高圧破砕機で菌体を破砕した。遠心分離により、GST-TPO(1-174)を沈殿画分 に回収し、大部分の混在蛋白質、菌体成分等を除去した。次に、回収されたGST- TPO(1-174)を含む沈殿画分に水5mlを加えてけん濁した後、攪拌しながら1M Tris緩衝液pH8.5を6ml、10M尿素120ml、水16mlを加えた。 室温にて5分間攪拌可溶化後、溶液を4等分し、各々、以下のとおり(1)〜( 4)の4種の操作を行った。 (1)20mMTris緩衝液pH8.5で10倍希釈した。これに還元型グルタ チオンと酸化型グルタチオンを加えて、各々、 最終濃度5mM及び0.5mMとし、4℃で一晩静置した。遠心分離により、上 清中にGST-TPO(1-174)を回収し、これに20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH 5.5で2倍希釈した後、酢酸を用いてpH5.5に調整した。20mMクエン 酸ナトリウム緩衝液pH5.5で平衡化したSP Sepharose Fast Flow(ファルマ シア バイオテク社製、カタログ番号17-0729-01)陽イオン交換カラムにGST-TP O(1-174)を吸着させた。同樹脂を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5 で洗浄した後、500mM塩化ナトリウムを含む20mMクエン酸ナトリウム緩 衝液pH5.5を用いてGST-TPO(1-174)を溶出させた。溶出液129mlに2. 6mlの1MTris緩衝液pH8.5を加えて、pHを8.1にした後、グルタチ オンセファロース4B(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17-0756- 01)カラムに添加しGST-TPO(1-174)を吸着させた。PBSで洗浄した後、10m M還元型グルタチオンを含む20mMTris緩衝液pH8.5でGST-TPO(1-174)を 溶出させた。溶出液にトロンビン37NIH Unitを加えて室温で4時間静置した後 、PBSで10倍希釈し、グルタチオンセファロース4Bカラムに添加し切断さ れたGSTを吸着させ、非吸着画分にTPO(1-174)を回収し た。回収した非吸着画分を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5で3倍 希釈し、同緩衝液で平衡化したSP Sepharose Fast Flow陽イオン交換カラムに添 加し、同緩衝液中で塩化ナトリウム濃度0Mから500mMまでの直線濃度勾配 法によって溶出を行なった。 (2)(1)の操作を全て0.1%ポリソルベート80存在下で行った。 (3)20mMTris緩衝液pH8.5で10倍希釈した。これに還元型グルタ チオンと酸化型グルタチオンを加えて、各々、最終濃度5mM及び0.5mMと し、4℃で一晩静置した。遠心分離により、上清中にGST-TPO(1-174)を回収し、 これに20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5で2倍希釈した後、酢酸を 用いてpH5.5に調整した。20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5で 平衡化したSP Sepharose Fast Flow陽イオン交換樹脂にGST-TPO(1-174)を吸着さ せた。同樹脂を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5で洗浄した後、5 00mM塩化ナトリウムを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5を 用いてGST-TPO(1-174)を溶出させた。溶出液に1MTris緩衝液pH8.5を加え てpHを約8とし、トロ ンビン320NIH Unitを加えて室温で4時間静置した後、20mMクエン酸ナト リウム緩衝液pH5.5で5倍希釈し、同緩衝液で平衡化したSP Sepharose Fas t Flow陽イオン交換カラムに添加し、同緩衝液中で塩化ナトリウム濃度0Mから 500mMまでの直線濃度勾配法によって溶出を行なった。 (4)(3)の操作を全て0.1%ポリソルベート80存在下で行った。 SP Sepharose Fast Flow陽イオン交換クロマトグラフィーの塩化ナトリウム濃 度約200mMから400mMで溶出された画分を、各々、IMDM培養液に対して 十分に透析後、ラットCFU-MK系で評価した結果、容量依存的にTPO活性を認めた 。同画分を還元剤存在下でのSDS-PAGEで分析した結果、この画分の主タンパク質 バンドの一つとして分子量19Kダルトンのバンドが検出された(純度1−20 %)。このバンドについて実施例1に記載された方法により、SDS-PAGE後、PV DF膜に転写しN末端シークエンス分析を行なった結果、このpGEX-2T/hT(1-17 4)由来の融合蛋白質として発現されるべきTPOの配列を含むことが確認できた。 得られたTPOの推定アミノ酸配列は[Gly-1]TPOであり、トロンビン認 識ペプチドリンカー 配列と共にリンカー上に公知のトロンビン活性が付与される。 〈実施例42〉アミノ酸1(Ser→Ala)、アミノ酸3(Ala→Val)に置換をもっヒ トTPO(アミノ酸1−163)の大腸菌用発現ベクターの構築 実施例39で作製したpUC18(XE)(1-332)をXbaI,EcoRIで消化後、2%のアガロ ースゲルで泳動し、ヒトTPOアミノ酸1−332をコードする約1000bpの大きさ のフラグメントを回収してプレップ−A−ジーンDNA精製キットで精製し、XbaI, EcoRIで消化したpBluescript II SK+(ストラタジーン社製)にサブクローニン グした(宿主はE.coli DH5αを使用した)。ここで得られたクローンをpBL(XE)( 1-332)とした。 次にこのクローンpBL(XE)(1-332)のBamHI認識配列からアミノ酸163(366-4 89)までを大腸菌優先コドンに変更することとした。後記の13−20の合成オ リゴヌクレオチドを作成し、13及び14;15及び16;17及び18の合成 オリゴヌクレオチドを同チューブ中でT4キナーゼ(ファルマシア社製)を用いて 0.1mM ATP,10mM Tris-acetate,10mM Mg -acetate,50mM K-acetateの溶液中でリン酸化した。さらに1/10量の100mM Tris /HCl(pH7.5),100mM MgCl,500mM NaClの溶液を加え、水浴中で3分間煮沸し た後、放置することにより2本鎖DNAとした。次に13及び14;15及び16 ;17及び18の三組の二本鎖DNAをDNAライゲーションキット(宝酒造社製)を 用いて連結し、これを鋳型として19及び20の合成オリゴヌクレオチドをプラ イマーとしてPCR反応を行った。これによって得られたPCR産物をBamHIとH idIIIで消化後2%のアガロースゲルで泳動し、約130bpの断片をプレップ −A−ジーンDNA精製キットにより回収した。これをBamHIとHidIIIで消化したpB L(XE)(1-332)にサブクローニングした(宿主はE.coli DH5を使用した)。得 られたクローンのうち以下に示した塩基配列を有するものをシークエンシングに より選択し、これをpBL(XH)(1-163)とした。 さらに、ヒトTPO(アミノ酸1−163)の発現量を増すこと、またN末端の プロテアーゼによる分解を防ぐことを目的として、ヒトTPO(アミノ酸1−16 3)の1位のアミノ酸をSer→Alaに、3位のアミノ酸をAla→Valに 変換し([Ala1、Val3]TPO(1-163))、更に‐1位にLys、‐2 位にMetをコードするような変異型ヒトTPO(アミノ酸1−163)([Me t-2、Lys-1,、Ala1、Val3]TPO(1-163))(以下、このような タンパク質を「h6T(1-163)」と称す)を発現させるための発現ベクターの 構築を行った。後記の4種の合成オリゴヌクレオチドを作製し、2‐9、3‐3 の合成オリゴヌクレオチドをT4キ ナーゼ(ファルマシア社製)により1mM ATP,10mM Tris-acetate,10mM Mg-aceta te,50mM K-acetateの溶液中でリン酸化した。これらの合成オリゴヌクレオチド を2本の二本鎖DNAにするために1‐9及び2‐9;3‐3及び4‐3それぞれ の組み合わせの一本鎖DNAを10mM Tris/HCl(pH7.5),10mM MgCl2,50mM NaCl の溶液中でアニールした。次に1‐9及び2‐9;3‐3及び4‐3の二組の二 本鎖DNAをDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて反応した。このライゲーシ ョン反応で得られたDNAを、XbaI,NruIで消化したpBL(XH)(1-163)にサブクローニ ングし、塩基配列の解析により以下に示した合成オリゴヌクレオチドにより正し く置換されたクローンを選択し(宿主はE.coli DH5αを使用した)、これをpBL( XH)h6T(1-163)とした。 pBL(XH)h6T(1-163)をXbaI,HindIIIで消化後、変異型のヒトTPOアミノ酸1−1 63をコードする約500bpの大きさのフラグメントを回収してプレップ−A−ジ ーンDNA精製キットで精製し、XbaI,HindIIIで消化したpCFM536(特表昭60-50198 8) にクローニングした(宿主はpMW1(ATCC No.39933)で予め形質転換されたE.col i JM109を使用した)。ここで得られたクローンをpCFM536/h6T(1-163)とし、こ の発現ベクターを有する大腸菌株を変異型のヒトTPO、すなわちh6T(1-163) 発現用の形質転換体とした。この発現プラスミドは、配列表(配列番号11)に 示されたDNA配列を含んでいる。 〈実施例43〉h6T(1-163)の大腸菌での発現 発現プラスミドpCFM536の発現制御は、λPLプロモーターによるが、これ自体 が、cI857リプレッサー遺伝子の制御下にある。〈実施例42〉で得られた形質 転換株を、アンピシリン50μg/ml、テトラサイクリン12.5μg/mlを含むLB培地 60mlに30℃で一晩振盪培養し、この培養液25mlをアンピシリン50μg/mlを含むL B培地1000mlに加えて、ODはA600が1.0-1.2に至るまで30℃で振盪培養した。 次いで最終温度が、42℃になるように65℃の約330mlLB培地を添加し、さらに 3時間42℃で振盪培養してh6T(1-163)の発現を誘導した。 〈実施例44〉大腸菌で発現したh6T(1-163)の精製と活性確認 h6T(1-163)生産組換体凍結菌体3.6gに水10mlを加えてけん濁し、高圧 破砕機で菌体を破砕した。遠心分離により沈殿画分を回収し、大部分の混在蛋白 質、菌体成分等を除去する。回収されたh6T(1-163)を含む沈殿画分に水7mlを 加えてけん濁した後、攪拌しながら1M Tris緩衝液pH8.5を3mlを加え た後、尿素(終濃度8M)、塩酸グアニジン(終濃度6M)、N−ラウロイルサ ルコシンナトリウム(終濃度2%)を各々加えて室温にて5−20分間攪拌して 可溶化した。これを20mM Tris緩衝液pH8.5で10倍希釈し、4℃中に て一晩でタンパク質の巻き戻し(リフォールディング)操作を行なった。この際 に、空気酸化の他、添加物としてグルタチオン及び硫酸銅を各々添加した。遠心 分離により、上清中にh6T(1-163)を回収した。各々の回収画分について還元剤存 在下でのSDS-PAGEで分析した結果、どの方法に於ても、この画分の主タンパク質 バンドとして分子量約18Kダルトンのバンドが検出された(純度30−40% )。このバンドについて実施例1に記載された方法により、SDS-PAGE後、PVD F膜に転写しN末 端シークエンス分析を行なった結果、このpCFM536/h6T(1-163)由来の変異型TP Oとして発現されるべきTPOの配列を含むことが確認できた。各々の画分をIMDM 培養液に対して十分に透析後、ラットCFU-MK系で評価した結果、全ての画分に於 て用量依存的にTPO活性を認めた。 〈実施例45〉抗TPOペプチド抗体の作製と、SDS−PAGE→ウエスターン分析によるT POの検出 抗TPO抗体が作製できれば、免疫学的手法によりTPOの蛋白質を検出する ことができる。そこで、最初に判明したラットTPOのアミノ酸配列のうち、比 較的抗原として適していると考えられた3カ所の領域(以下に示す)を選び、Ta m(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,5409-5413,1988)の方法により4本鎖の Multiple Antigen Peptide(MAP)型のペプチドを 合成し、100μgずつ8回にわたってそれぞれウサギ2把に免疫した結果、こ れらの抗血清を得ることができた。合成ペプチド抗原に含まれるアミノ酸配列 (a)ラットTPO(9-28)(ペブチドRT1領域): PRLLNKLLRDSYLLH R RLSQ(配列番号116) (ただし24番目のは本来、遺伝子から決定されたアミノ酸残基はSである) (b)ラットTPO(46-66)(ペプチドRT2領域): FSLGEWKTQTEQSKAQDILGA(配列番号117) (c)ラットTPO(163-180)(ペプチドRT4領域): SRTSQLLTLNKFPNRL L D(配列番号118) (ただし178番目〜180番目のLLDは本来、遺伝子から決定されたアミノ酸残基 ではTSGである) 次いで、これらの抗血清のうち、まず抗RT1ペプチド、抗RT2ペプチド抗 体について、プロテインAカラム(PROSEP-A;Bioprocessing Ltd社製、カタロ グ番号8427)を用いて、IgG画分(それぞれ2344mg、1920mg)を得、これらの うちそれぞれ54mg、32mgをとり活性型ビオチン(NHS-LC-Biotin II、PIERCE社製 、カタログ番号21336)とカップリングすることにより、ビオチン化した。。実 施例1に述べた方法と同様に、組み換え体TPOを含む標品をSDS−PAGE にかけ、次いで PVDFあるいは、ニトロセルロース膜にエレクトロブロティングし、定法によ りこれらのビオチン化抗体を一次抗体として用いてウェスタン分析を行った。 即ち、ブロッティング後の膜を20mM Tris-HCl、0.5M NaCl(pH7.5)(TBS )で5分洗浄し、0.1%Tween 20入りTBS(TTBS)で5分2回洗浄後、ブ ロッキング剤(BlockAce、大日本製薬社製、カタログ番号uk-B25)で60分処理し た。次に10μg/mlの濃度のビオチン化抗TPOペプチド抗体、0.05%BSA、10% BlockAceを含むTTBS溶液で60分後処理後、TTBSで5分2回洗浄した。次 にアルカリフォスファターゼ標識アビジン(Leinco Technologies社製、カタロ グ番号A108)を10%BlockAce、TTBS溶液で5000倍希釈したものを含む溶 液で30分処理し、5分2回のTTBS洗浄、5分間のTBS洗浄を行った後、 アルカリフォスファターゼ基質(Bio-Rad社製、カタログ番号170-6432)により 発色させた。以上のウエスタン分析は室温にて実施した。 この結果、COS1細胞で発現した各種組み換えラットTPOのみならず、C OS1細胞及び大腸菌で発現した各種組み換えヒトTPO(具体的には、これま での実施例に述べた COS1細胞で発現したプラスミドpHTP1あるいはプラスミドpHTF1由 来ヒトTPOとそのN結合型糖鎖切断後のTPO、大腸菌で発現したGST−T PO(1-174)及びそのトロンビン消化後のTPO、大腸菌で発現した変異型T POであるh6T(1-163))をも認識することができた。そして、これら各種組 み換えヒトTPOの分析に用いることが可能となった。 以上の手法と同様にして、抗ヒトTPOペプチド抗体の作製が可能であること が示された。これらの手法で得た抗体により、ウェスタン分析のみならず、抗体 カラムによるTPOの精製をはじめ、通常考えられる抗体を用いたあらゆる免疫 学的手法への応用が可能となる。 また、配列番号7に示されるヒトTPOのアミノ酸配列のうち、比較的抗原と して適していると考えられた6カ所の領域(表4に示す)を選び、4本鎖のMu ltiple Antigen Peptide(MAP)型のペプチドを合成 し、100μgずつ8回にわたってそれぞれウサギ2把に免疫した。 表4で示された各ペプチド領域のC末端にシステイン残基を結合させた1本鎖 ペプチドを別途合成し、これを試験抗原とし て酵素免疫測定法を用いて抗体価を調べたところ、いずれの血清についても抗体 価の上昇が確認されたので、これらを抗血清とした。 抗体は、1種の抗原ペプチドにつきウサギ抗血清2把ずつ免疫したため、それ ぞれのウサギごとに抗体を分けて調製した。具体的には、これら由来するウサギ の個体ごとに区別して、抗HT1ペプチド抗体では、それぞれ、抗HT1−1ペ プチド抗体、抗HT1−2ペプチド抗体の様に称する。 以下に抗HT1−1ペプチド抗体についての精製を例として示す。 まず、システイン残基を結合したHT1の1本鎖ペプチド30mgを12mlの SulfoLinkカップリングゲル(Pierce社製、カタログ番号448 95)に結合させた。即ち、ゲル体積の6倍容のカップリングバッファー(50mM Tris、5mM EDTA-Na pH8.5)で平衡化したゲルに、抗原の含まれるペプチド溶液 を15分間カップリングさせた。次に30分間静置した後、ゲル体積の3倍容のカッ プリングバッファーでゲルを洗浄した。次に0.05M L-Cystein-HClを含むカップ リングバッファーを、1ml/mlゲルの割合で添加し、15分間未反応基をブロック した。次に30分間静置した後、ゲル体積の8倍容のカップリングバッファーでゲ ルを洗浄した。以上のカップリングは室温で行った。このようにして、抗原領域 を含むペプチドをカップリング効率28.3%にてゲルに共有結合させ、1ml ゲル当たりに結合したペプチドが0.8mgである抗原ペプチド抗原カラムを調 製した。 次に、全採血後の抗HT1−1ペプチド抗体を含む抗血清78.4mlのうち 76.7ml(蛋白質量3620mg)を予め150mMのNaCl、0.05 %アジ化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH8)で平衡化した抗原カ ラムに添加し、さらに同緩衝液で洗浄後105.9mlの素通り画分(蛋白質量 3680mg)を得た。次に0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で吸着画分 を溶出し、ただちに21.1mlの0.1M炭酸緩衝液(pH9.9)を加えて 中和後、限外濾過(アミコン社製YM30膜)にて濃縮し、11.2ml(蛋白 質量77.7mg)の150mMのNaCl、0.05%アジ化ナトリウムを含 む50mMリン酸緩衝液(pH8)の溶液中に精製された抗HT1−1ペプチド 抗体を得ることができた。 同様にして、抗HT1−2ペプチド抗体(60.0mg)、抗HT2−1ペプ チド抗体(18.8mg)、抗HT2−2ペプチド抗体(8.2mg)などを得 ることができた。抗HT3〜6ペプチド抗体も同様にして得ることができる。 アフィニティ精製した抗HT1−1ペプチド抗体、抗HT1−2ペプチド抗体 、抗HT2−1ペプチド抗体、抗HT2−2ペプチド抗体をそれぞれ3mgをとり 活性型ビオチン(NHS-LC-Biotin II、PIERCE社製、カタログ番号21336)とカッ プリングすることにより、ビオチン化した。 下記のアミノ酸配列: をコードする遺伝子を導入・発現させたCHO細胞の培養上清から部分精製され た組換えヒトTPO標品を定法に従い、SDS−PAGEにかけ、次いでPVD Fあるいはニトロセルロース膜にエレクトロブロティングし、上述の抗RTペプ チド抗体の場合と同様にウェスタン分析を行ったところ、それぞれの精製された 抗体により、ヒトTPOが認識、検出されることが確認できた。 〈実施例46〉抗TPOペプチド抗体カラムの調製 実施例45で得られた抗ラットTPOペプチド抗体は、ラット及びヒトTPO を認識することができたため、抗RT1ペプチド抗体、抗RT2ペプチド抗体の 免疫グロブリン(IgG)画分を以下のようにして、クロマトグラフィー担体に 結合させ、抗TPOペプチド抗体カラムを作製した。材料となった抗体は、それ ぞれの抗原ペプチドにつきウサギ抗血清2把ずつから由来し、それぞれのウサギ ごとに抗体を分けて調製した。具体的には、抗RT1ペプチド抗体では、それぞ れ、抗RT1−1ペプチド抗体と抗RT1−2ペプチド抗体と称し、抗RT2ペ プチド抗体では、抗RT2−1ペプチド抗体と抗RT2−2ペプチ ド抗体と称す。これらを別々にして抗体カラムを調製したため、抗RT1ペプチ ド抗体カラムは2種(それぞれ抗RT1−1抗体カラム、抗RT1−2抗体カラ ムと称す)、抗RT2ペプチド抗体カラムは2種(それぞれ抗RT2−1抗体カ ラム、抗RT2−2抗体カラムと称す)、さらに抗RT1−2ペプチド抗体と抗 RT2−1ペプチド抗体を混合してゲルにカップリングした抗体カラム(抗RT 1−2+2−1混合抗体カラム)、の5種類を調製した。 各々の抗体を5mg/ml(抗RT1+2mix抗体カラムでは抗RT1−2ペプ チド抗体と抗RT2−1ペプチド抗体を等量混合した2.5mg/ml)の濃度で含む50 mM Na Phosphate,0.15M NaCl(pH8.0)の溶液とし、これを2.31mlとり、1.54m 体積の膨潤したホルミル活性化ゲル(Formyl-Cellulofine、チッソ株式会社製) と合わせ、4℃で2時間カップリング反応させた。次いで、10mg/mlの濃度の還 元剤溶液(Trimethylamine borane(TMAB)、生化学工業製、カタログ番号680246 )を1.1ml加え、さらに6時間カップリング反応させた後、遠心分離によりゲル 部分のみを回収した。これに10mlの精製水を加え、遠心分離でゲル部分のみの回 収といった操作を4回繰り返し、未反応の抗 体を取り除いた。次に4.6mlのブロッキング緩衝液(0.2M Na Phosphate,1M et hanol amine(pH7.0))と 1.1mlの還元剤溶液を加え、4℃で2時間以上処理す ることにより、未反応のゲルの活性基をブロックした。最後にゲルを遠心分離を 用いて精製水、DPBSで洗浄し、小カラムチューブに充填し、3Mチオシアン 酸カリウム溶液、0.1Mグリシン-HCl(pH2.5)溶液で洗浄後、再度DPBSで再 平衡化して保存した。 抗RT1−1抗体カラム、抗RT1−2抗体カラム、抗RT2−1抗体カラム 、抗RT2−2抗体カラム、抗RT1−2+2−1混合抗体カラムの5種類それ ぞれの抗TPOペプチド抗体ゲルでは、各IgG画分のカップリング効率は順に 97.4%、95.4%、98.4%、98.3%、99.4%に達した。また 、それぞれのゲル体積当たりにカップリングしたIgG画分量は、5.6mg/ mlゲル、5.8mg/mlゲル、5.7mg/mlゲル、5.7mg/mlゲ ル、2.9mg/mlゲルであった。従って、抗体の由来や抗原の違いによって 、カップリング効率やカップリング量に大きな差がないことが確認できたため、 これらの抗体カラムを利用して、以下、実施例47に示す実験を行った。 〈実施例47〉発現ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクションして得られた培 養上清由来TPOの抗TPO抗体カラム→逆相カラムクロマトグラフィーでの精 製及び生物学的活性の確認 以下の精製サンプルの評価のためのin vitroアッセイ方法は、M−07eアッ セイ系を用いた。発現ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクショ ンして得られた、実施例35の培養上清由来TPOの部分精製標品(TPOが回 収された主たる画分ではない画分、即ち、Macro-Prep Methyl HICカラムの素通 り画分F1と、F2の後に20mM Na Citrate,pH5.8でカラム洗浄し溶出したF3 、SP Sepharose Fast FlowカラムのF1とF3をまとめてTPOサブプール画分 (5463.79ml,蛋白質濃度0.490mg/ml,総蛋白質量2676mg,相対活性12100,総活 性量32380000)とし、限外濾過ユニット(フィルトロン社製・オメガウルトラセ ット分子量8000カット)でまず濃縮し、さらに溶媒をDPBSに置換し、小体積 になってからはYM−10膜付き限外濾過ユニット(アミコン社製)を用いて最 終的に120.2mlの0.05%アジ化ナトリウムを含むDPBS溶液にした。次に実施 例46で調製した5種類の抗TPOペプチド抗体 ゲルを全て混合し、1本の抗体カラム(直径1.6cm,ベッド高4.8cm,抗RT1+2 混合抗体カラムと称す)にまとめ、室温にて流速0.033ml/minでTPOサブプー ル画分を添加した。添加終了後、DPBSで溶出液の紫外線吸収が十分下がるま でを集め、さらにYM−10膜付き限外濾過ユニット(アミコン社製)で濃縮し た素通り画分F1(82.62ml,蛋白質濃度14.3mg/ml,総蛋白質量1184mg,相対活 性67500,相対活性量79900000)を集めた。次に酸性溶離液(0.1Mグリシン-HCl( pH2.5))で溶出されるカラム吸着画分F2(92.97ml,蛋白質濃度0.12mg/ml,総蛋 白質量11.1mg,総活性257100,総活性量2860000)を溶出した。素通り画分F1に は相当量のTPO活性があったが、抗体カラムに吸着したTPOについては約2 0倍の相対活性の上昇が認められたため、さらに精製を行った。即ち、展開溶媒 Aに0.1%TFA、展開溶媒Bに0.05%TFAを含む1-プロパノールを用いたCapcell P ak C1 300A(資生堂製、カタログ番号C1 TYPE:SG300A;直径4.6mm、ベッド高15 0mmに加え、直径4.6mm、ベッド高35mmのプレカラムを接続したもの)カラムにて 、抗体カラムで得られたF2に10分の1体積の展開溶媒Bを加え、20%Bで平 衡化したCapcell Pak C1 300Aカラ ムに流速0.4ml/minで注入した。注入終了後、20%Bにて5分溶出した後、20% Bから40%Bまで50分の直線濃度勾配で展開し、1ml(2.5min)ずつポリプロピ レン製チューブに集めた。 それぞれ2μl(500分の1フラクション)を取りHSAを加え、限外濾過濃 縮し、最終的に0.02%HSAを含む0.25mlのIMDMアッセイ培養液溶液とし、これを アッセイにかけ、TPO活性画分を特定した。この結果、チューブ番号20〜23( プロパノール濃度で28.5〜32.5%の範囲)に強いTPOの活性を示す標品を得る ことができた。またこれらの標品を〈実施例45〉に述べた方法によりウエスタ ーン分析をしたところ、DPCIII分子量マーカーに対し、還元下において見 かけ上の分子量が60000〜70000のTPOが確かに存在し、これとは別 に、32000〜43000、20000〜30000の分子量をもつ分子も存 在していることが判明した。 〈実施例48〉発現ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクションして得られた培 養上清由来で、Capcell Pak C1 300Aカラムの段階まで精製されたTPOの生物 学的活性の確認 実施例36で精製されたTPO活性画分、即ちCapcell Pak C1 300Aカラムのチューブ番号20〜23(プロパノール濃度で28.5〜32.5%の範囲 )までを集め、0.21mlのグリセロールを添加後遠心エバポレーションで濃縮した 。これに6M塩酸グアニジン溶液0.21mlを加えたものをDPBSで1mlに希釈 後、Sephadex G25カラム(NAP-10,ファルマシア バイオテック社製、カタログ 番号17-0854-01)で0.01%HSAを含むDPBS溶液に置換し、さらに1.1mlの0 .01%HSAを含むDPBSを加えて、最終的にTPO活性画分FA(2.6ml)を 調製した。この標品の生物学的TPO活性をについて調べるために、in vivoア ッセイを行った。即ち、1群4匹のICR系雄性マウス(8週齢)に、活性画分100 μl(M−07eアッセイ系での相対活性量87400を含む)を1日1回、5 日間連日皮下投与した。対照として、0.01%HSAを含むDPBS100μlを同様の スケジュールで皮下投与した。採血は、投与開始直前及び投与終了翌日に眼底よ り行い、血球測定装置(東亜医用電子製、F800)を用いて血小板数を測定した。 TPO投与群では、投与終了後において投与前と比較して平均で1.42倍の血 小板の増加を認め、対照群の血小板数と比較しても1.23倍の高値を示し、両 者の間に有意差(p<0.05,Student t-test)を認め た。この結果から、動物細胞で生産された上記のヒトTPOが、生体内において 血小板増加作用を有することが明らかとなった。 〈実施例49〉発現ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクションして得られた、 培養上清33Lを出発材料にし、陽イオン交換カラムで得た粗精製TPO画分の 生物学的活性の確認 (1)以下の精製サンプルの評価のためのin vitroアッセイ方法は、M−07e アッセイ系を用いた。実施例36で記載された方法と同様にして、33Lの発現 ベクターpHTP1をCOS1細胞にトランスフェクションして得られた無血清 培養上清を得て、0.22μmの濾過フィルターの濾液をとった。これを限外濾 過ユニット(ミリポア社製・PLGCペリコンカセット 分子量10000カット) で約10倍濃縮し、蛋白質分解酵素阻害剤であるp-APMSFを最終濃度約1mM加 え、体積2018ml(蛋白質濃度3.22mg/ml、総蛋白質量6502mg 、相対活性66000、総活性量429100000)を得た。次に、限外濾過 ユニット(フィルトロン社製・オメガウルトラセット 分子量30000カット)で 濃縮工程を繰り返し、分子量30000以上の画分(体積1190ml)蛋白 質濃度2.54mg/ml、総蛋白質量3020mg、相対活性82500、総 活性量249000000)と、分子量30000以下の画分(体積2975ml 、蛋白質濃度0.471mg/ml、総蛋白質量1402mg、相対活性450 0、相対活性量6310000)を得ることができた。分子量30000以下の 画分にTPO活性が存在することは、TPOの動物細胞での発現・分泌の過程に おいて、最終的に培養上清中に、低分子化したTPOが含まれている可能性を示 す。一方、分子量30000以上の画分をさらに20mMクエン酸ナトリウム緩衝液 (pH6.1)に置換し、20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.1)で予め平衡化した SP Sepharose Fast Flow(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17-072 9-01;直径2.6cm、ベッド高29cm)カラムに注入し、流速5ml/minで添加した。 添加終了後、さらに20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.1)で洗浄溶出した。 次に展開溶媒Aに20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.1)、展開溶媒A中に1M NaClを含む溶液を展開溶媒Bとして用い、流速3ml/minで0%Bから50%Bま で215分間、さらに50%Bから100%Bまで20分の直線濃度勾配で展開し、30ml( 10min)ずつポリプロピレン製チューブに集めた。これ らの一部を取り、M−07eアッセイ系で活性の分布を調べたところ、広範囲に わたりTPO活性が溶出されたことが判明した。そこで素通りを含め、50mM以下 のNaClで溶出された画分をF1、TPOの主画分として50〜1000mMのNaCl で溶出された画分をF2としてまとめた。F1は体積1951ml(蛋白質濃度2 .05mg/ml、総蛋白質量3994mg、相対活性13500、総活性量5 3900000)、F2は体積649.8ml(蛋白質濃度1.11mg/ml、 総蛋白質量721mg、相対活性268000、総活性量193000000) であった。 (2)SP Sepharose Fast Flow F2の生物学的活性の確認 (1)で分取したSP Sepharose Fast FlowのF2を2.5ml取り、Sephadex G 25カラム(NAP-25,ファルマシア バイオテック社製、カタログ番号17-0852--0 1)で0.01%HSAを含むDPBS溶液3.5mlに置換し、このサンプル(蛋白 質濃度1.46mg/ml)の生物学的TPO活性について調べるために、in vivo アッセイを行った。即ち、1群4匹のICR系雄性マウス(8週齢)に、活性 画分100μl(M−07eアッセイ系での総活性量123000を含む)を1日 1回、5日間連日皮下 投与した。対照として、0.01%HSAを含むDPBS100μlを同様のスケジュールで 皮下投与した。採血は、投与開始直前及び投与終了翌日に眼底より行い、血球測 定装置(東亜医用電子製、F800)を用いて血小板数を測定した。TPO投与群で は、投与終了後において投与前と比較して平均で1.29倍の血小板の増加を認 め、対照群の血小板数と比較しても1.12倍の高値を示し、両者の間に有意差 (p<0.05,Student t-test)を認めた。この結果から、哺乳動物細胞で生産され た上記のヒトTPOが、生体内において血小板増加作用を有することが明らかと なった。 〈実施例50〉ヒトTPO染色体DNAのCHO細胞用組換え発現ベクター、pDEF202-ghTPO の構築 ベクターpDEF202を制限酵素KpnIとSpeIで処理し、アガロースゲル電気泳動 で小さい方のマウスDHFRミニ遺伝子とSV40ポリアデニル化シグナルを含むフラ グメントを回収したのち、このフラグメントとヒトTPO染色体DNAを含むプ ラスミドpEFHGTEを制限酵素KpnIとSpeIで処理しSV40ポリアデニル化シグナル を含む領域を除去したベクターDNAとをT 4DNAリガ ーゼ(宝酒造製)で結合させ、発現ベクターpDEF202-ghTPOを得た。このプラ スミドはSV40の複製開始領域、ヒトエロンゲーションファクタ−1−アルファ プロモーター、SV40初期ポリアデニル部位、マウスDHFRミニ遺伝子、pUC18 の複製開始領域、β−ラクタマーゼ遺伝子(Ampr)を含み、ヒトエロンゲーショ ンファクタ−1−アルファプロモーター下流にヒトTPO染色体DNAが接続さ れている。 〈実施例51〉CHO細胞によるヒトTPO染色体DNAの発現 CHO細胞(dhfr−株、UrlaubとChasin;Proc.Natl.Acad.Sci.USA;77巻4 216頁、1980)を6cm径のプレート(Falcon社製)中10%牛胎児血清を 含むα最小必須培地(α-MEM(−)、チミジン、ヒポキサンチン添加)で培養増 殖させ、これをリン酸カルシウム法(CellPhect、ファルマシア社製)によって 形質転換した。 すなわち、実施例50で調製したpDEF202-ghTPOプラスミド10μgにバッ ファーA:120μlおよびH20:120μlを加え混合したのち、室温で10分 間インキュベートした。つぎに、この溶液にバッファーB:120μlを加え、 再度混 合したのち、室温で30分間放置した。このDNA溶液をプレートに滴下したのち 、CO2インキュベーター中で6時間培養した。プレートから培地を除去し、α-ME M(−)にて2回洗浄後、10%ジメチルスルフォオキシド含有α-MEM(−)を 添加し、室温で2分間処理した。次いで、10%透析牛胎児血清含有非選択培地 (前出α-MEM(−)、ヒポキサンチン、チミジン添加)を添加して2日間培養し たのち、10%透析牛胎児血清含有選択培地(α-MEM(−)、ヒポキサンチン、 チミジン無添加)での選択をおこなった。選択は細胞をトリプシン処理した後、 6cm径プレート1枚あたりを、10cm径プレート5枚あるいは24ウエルプレー ト20枚に分割したのち、2日ごとに選択培地にて培地交換を行いながら培養を 続行する事により実施した。細胞が増殖してきたプレートあるいはウエルについ てその培養上清中のヒトTPO活性をBa/F3アッセイを用いて測定した結果 、ヒトTPO活性が認められた。 なお、CHO細胞の形質転換はCHO細胞に対しpEFHGTEとpMG1を同時形質転 換(co-transfection)することによっても行うことができる。 〈実施例52〉−1位にLys、−2位にMetが付加されたヒトTPO(アミノ酸1−163 )(以下、このタンパク質を「hMKT(1-163)」と称す)の大腸菌用発現ベ クターの構築及び発現の確認 配列番号6のアミノ酸配列(1−163位)の−1位にLys、−2位にMe tが付加されたタンパク質を発現するため、実施例42と同様にして、以下に示 した1−13、2−13、3−3、4−3の合成オリゴヌクレオチドを用いて、 hMKT(1-163)([Met-2、Lys-1]TPO(1-163)とも称する)の大 腸菌用発現ベクターpCFM536/hMKT(1-163)を構築した。 この発現プラスミドは、配列表(配列番号12)に示されたDNA配列を含んで いる。さらに、実施例43と同様にして、hMKT(1-163)の発現を誘導した 。 ここで得られた発現タンパクをSDS−PAGE後PVDF膜に転写し、N末 端アミノ酸配列分析を行った結果、発現されるべきhMKT(1-163)のアミノ 酸配列を含むことが確認で きた。 〈実施例53〉大腸菌で発現した、ヒトTPO由来変異型ヒトTPO、h6T(1-163)の塩酸 グアニジンとグルタチオンを用いたリフォールディング、精製及び生物学的活性 の確認 実施例43で調製されたh6T(1-163)生産組換体凍結菌体1.2gに水3 mlを加えてけん濁し、高圧破砕機で菌体を破砕した。遠心分離により沈殿画分 を回収し、大部分の混在蛋白質、菌体成分等を除去する。回収されたh6T(1- 163)を含む沈殿画分に水を加えてけん濁し、最終4mlとした。攪拌しながら 1mlの1MTris緩衝液pH8.5を加えた後、20mlの8M塩酸グアニジン を加えて室温にて5分間攪拌して可溶化した。これを20mMTris緩衝液pH8 .5で10倍希釈し、5mM還元型グルタチオンと0.5mMの酸化型グルタチ オンを加えて攪拌し溶かした後、4℃中にて一晩静置した。遠心分離により、上 清中にh6T(1-163)を回収した。得られた上清のうち160mlをYM10 限外濾過膜(アミコン社製)を用いて濃縮し、DPBSにて緩衝液を置換して最 終容量3.4mlとした(蛋白濃度2.18mg/ml)。この画分 をIMDM培養液に対して十分に透析後、ラットCFU-MKアッセイ系で評価した結果、 強いTPOの活性(相対活性58000)を示した。 上記の方法により調製したTPO活性画分についてin vivoアッセイを行った 。1群4匹のICR系雄性マウス(7週齢)に、活性画分170μl(ラットCFU-MKア ッセイ系での総活性量22000を含む)を1日1回、5日間連日皮下投与した 。対照として、1群6匹の同様のマウスにDPBS170μlを同様のスケジュー ルで皮下投与した。採血は、投与開始直前及び投与終了翌日、終了3日後に眼底 より行い、血球測定装置(東亜医用電子製、F800)を用いて血小板数を測定した 。TPO投与群では、投与終了翌日において投与前と比較して平均で2.15倍 の血小板の増加を認め、また投与終了3日後においてもその効果は持続しており 2.13倍の高値を維持した。投与終了翌日及び3日後のいずれの日においても 、血小板数は、それぞれの日の対照群のそれと比較して1.73倍、1.80倍 と高値を示し、両者の間に有意差(p<0.001,Student t-test)を認めた。この 結果から、大腸菌より生産され、上記の方法で調製したヒトTPOが、生体内に おいて血小板増加作用 を有することが明らかとなった。 〈実施例54〉大腸菌で発現した変異型ヒトTPO、h6T(1-163)のN−ラウロイルサルコ シンナトリウムと硫酸銅を用いたリフォールディング、精製及び生物学的活性の 確認 実施例43で調製されたh6T(1-163)生産組換体凍結菌体0.6gに水3 mlを加えてけん濁し、高圧破砕機で菌体を破砕した後、遠心分離により沈殿画 分を回収した。沈殿画分に3.1mlの水を加えて懸濁した後、0.19mlの 1MTris緩衝液pH9.2、11.25μlの1M DTT、38μlの0.5ME DTA、0.38mlの10%デオキシコール酸ナトリウムを攪拌しながら加え、 室温にて40分間攪拌した。遠心分離により沈殿画分を回収し、大部分の混在蛋 白質、菌体成分等を除去した。沈殿に水4mlを加えてけん濁した後、遠心分離 によってh6T(1-163)を含む沈殿画分を回収した。得られた沈殿画分に水3 .0mlを加え懸濁した後、攪拌しながら0.2mlの1MTris緩衝液pH8と 1mlの10%N−ラウロイルサルコシンナトリウムを加えて室温にて20分間 攪拌して可溶化した。これに5μlの1%硫酸銅を加え、室温にて一 晩(約20時間)攪拌した。遠心分離によりh6T(1-163)を含む上清画分を 回収した後、上清5mlに5mlの水、10mlの20mMTris緩衝液pH7. 7加えた後、2.6gのDowex 1-x4,20-50mesh,chloride formイオン交換樹脂 を加え、90分間撹拌した。グラスフィルターを用いてイオン交換樹脂非吸着画 分を回収した後、遠心分離によって上清を回収した。得られた上清を20mMTr is緩衝液pH7.7で平衡化したSP Sepharose Fast Flow陽イオン交換カラムに 添加し、同緩衝液中でNaCl濃度0Mから500mMまでの直線濃度勾配法によっ て溶出を行なった。溶出画分をIMDM培養液に対して十分に透析後、ラットCFU-MK アッセイ系で評価した結果、SP Sepharose Fast Flow陽イオン交換クロマトグラ フィーのNaCl濃度約100mM付近で溶出された画分に強いTPOの活性(相対 活性約19000000)を示した。この画分をウルトラフリーCL分画分子量 5000限外濾過ユニット(ミリポア社製、型番UFC4LCC25)を用いて1.6倍 濃縮した(2.5ml、蛋白濃度25μg/ml)。同画分を還元剤存在下でSD S-PAGEで分析した結果、TPOのバンドが主バンドとして検出された(純度70 −80%)。 上記の方法により調製したTPO活性画分についてin vivoアッセイを行った 。1群4匹のICR系雄性マウス(8週齢)に、活性画分100μl(ラットCFU-MKア ッセイ系での総活性量47500を含む)を1日1回、5日間連日皮下投与した 。対照として、100mMNaClを含む20mMTris緩衝液pH7.7 100μl を同様のスケジュールで皮下投与した。採血は、投与開始直前及び投与終了翌日 に眼底より行い、血球測定装置(東亜医用電子製、F800)を用いて血小板数を測 定した。TPO投与群では、投与終了後において投与前と比較して平均で1.7 3倍の血小板の増加を認め、対照群の血小板数と比較しても1.59倍の高値を 示し、両者の間に有意差(p<0.01,Student t-test)を認めた。この結果から、 大腸菌より生産され、上記の方法で調製したヒトTPOが、生体内において血小 板増加作用を有することが明らかとなった。 〈実施例55〉CHO細胞の大量培養 実施例32においてヒトTPO発現プラスミドpDEF202-hTPO-P1をCHO細胞にト ランスフェクションして得られたヒトTPO産生CHO細胞株(CHO28-30細胞、 25nM MTX耐性)の大 量培養は以下のようにして実施した。細胞を25nM MTXおよび10%FCSを含むDMEM/F -12培地(GIBCO社)を用いて培養増殖させた。この細胞をトリプシン溶液を用い て剥離したのち、200mlの同培地を含むFalcon社製ローラーボトル(Falcon30 00)に1×107個の細胞を接種し、37℃で1rpmの回転速度で3日間培養した。 3日後、培養液を吸引除去し、100mlのPBSで細胞培養表面をリンスしたの ち、25nM MTXおよび10%FCSを含まないDMEM/F-12培地(GIBCO社)を200ml加え、 37℃、1rpmの回転速度で7日間培養し、7日後その培養上清を回収し、次の 精製操作の出発材料にした。上記の操作をローラーボトル500本分実施し、培 養上清100Lを得た。 〈実施例56〉ヒトTPO産生CHO細胞株からヒトTPOの精製 (1)実施例55より無血清培養上清約100Lを得て、0.22μmの濾過 フィルターの濾液をとった。これを限外濾過ユニット(ミリポア社製・PLTK ペリコンカセット 分子量30000カット)で濃縮かつ溶媒を精製水に置換し 、蛋白質分解酵素阻害剤であるp-APMSF(和光純薬社製)を最終濃度1mM及びP efabloc SC(Merk社製)を最終濃度0.35mM 加え、体積3628ml(蛋白質濃度1.60mg/ml、総蛋白質量5805m g、相対活性1230000、総活性量7149000000)の分子量300 00以上の画分を得た。この画分を実施例45で述べたウエスターン分析で調べ たところ、分子量66000〜100000の範囲にTPO蛋白質が存在するこ とが明らかとなった。さらによく調べてみると、これとは別に、より低分子のT POをも含まれていることが判明した。分子量30000以下の限外濾液はこれ とは別に限外濾過ユニット(ミリポア社製・PLGCペリコンカセット 分子量 10000カット)で濃縮したところ、体積1901ml(蛋白質濃度0.36m g/ml、総蛋白質量684mg)相対活性245500、総活性量16790 0000)であったため、低分子化したTPO分子が培養工程において生じたこ とが確認された。 次に、分子量30000以上の画分3614mlに764gの硫酸アンモニウ ム、及び144.5mlの0.5Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加 え、最終濃度1.41M硫酸アンモニウム、17.7mMのクエン酸ナトリウム 緩衝液を含む4089mlの溶液とし、生じた不溶物を遠心分離後可溶物を得た 。 これを1.2M硫酸アンモニウムを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(p H5.5)で予め平衡化してあったMacro-Prep Methyl HICカラム(Bio-Rad社製、カ タログ番号156-0080;直径5cm、ベッド高24.5cm)に、流速約25ml/minで添加 した。添加終了後、1.2M硫酸アンモニウムを含む20mMクエン酸ナトリウ ム緩衝液(pH5.5)で溶出されたものを限外濾過ユニット(フィルトロン社製・ オメガウルトラセット 分子量8000カット)で濃縮し、素通り画分F1(4455ml ,蛋白質濃度0.400mg/ml,総蛋白質量1780mg,相対活性1831000)を得た。 次に、溶出液を20mM Na Citrate,pH6.0にかえ、溶出されたものを限外濾過ユ ニット(フィルトロン社製・オメガウルトラセット 分子量8000カット)で濃縮 し、画分F2(1457ml,蛋白質濃度0.969mg/ml,総蛋白質量1411mg,相対活性17 15000)を集めた。SDS−PAGEにより、このF2には分子量66000〜 100000の蛋白質が存在することが確認された。さらにウエスターン分析に より、この蛋白質がTPOであることが明らかとなった。 次に、Macro-Prep Methyl HICカラム F2(1443ml)を、20mMクエン酸ナト リウム緩衝液(pH6.0)で予め平衡化したSP Sepharose Fast Flow(ファルマシア バイオテク社製、カタログ番号17-0729-0 1;直径5cm、ベッド高12cm)カラムに注入し、流速15ml/minで添加した。添加 終了後、さらに50mM NaClを含む20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で溶出 されたものまでをまとめ、画分F1(3007ml,蛋白質濃度0.226mg/ml,総蛋白質 量679mg,相対活性88830)を得た。次に、溶出液を750mM NaClを含む20mMクエン 酸ナトリウム緩衝液(pH5.4)にかえ、溶出された画分F2(931ml,蛋白質濃度 0.763mg/ml,総蛋白質量710mg,相対活性5558000)を集めた。これを限外濾過ユ ニット(フィルトロン社製・オメガウルトラセット 分子量8000カット、及びア ミコン社製YM3膜)で202mlまで濃縮した。 次に、SP Sepharose Fast FlowカラムのTPO活性画分F2の濃縮液(197ml )をSephacryl S-200HRカラム(ファルマシア・バイオテク社製、カタログ番号1 7-0584-05;直径7.5cm、ベッド高100cm)に注入し、流速3ml/minでゲル濾過を行 った。溶離液体積1200〜1785ml、1785〜2010ml、2010 〜2280ml、2280〜3000mlの各範囲をまとめ、それぞれ画分F1 (585ml,蛋白質濃度100mg/ ml,総蛋白質量589mg,相対活性4118000)、画分F2(225ml,蛋白質濃度0.263 /ml,総蛋白質量59.2mg,相対活性2509000)、画分F3(270ml,蛋白質濃度0.1 19/ml,総蛋白質量32.1mg,相対活性2535000)、画分F4(720ml,蛋白質濃度0 .0467/ml,総蛋白質量33.6mg,相対活性1155000)を得た。このように、分画さ れたTPO活性はゲル濾過法での分子量範囲が広いことが判明したため、SDS −PAGE後、ウエスターン分析を実施したところ、F1ではほとんどが分子量 66000〜100000のTPOであったのに対し、F2、F3ではそれぞれ 分子量32000〜60000、分子量32000〜42000のTPO分子種 が存在していた。いずれの分子量のTPO分子も全てTPO活性をもっていた。 なお、分子量66000〜100000のTPO分子についてN末端アミノ酸 配列分析を実施したところ、ヒトTPO遺伝子でコードされるタンパク質のアミ ノ酸配列を含むことが確認できた。 また、分子量66000〜100000のTPO分子について、N‐グリカナ ーゼ(N-glycanase:Genzyme社製、カタログ番号1472-00)、ノイラミニダーゼ (Neuraminidase: ナカライテスク社製、カタログ番号242-29 SP)、エンド−α−N−アセチルガ ラクトサミニダーゼ(Endo-α-N-acetylgalactosaminidase:生化学工業製、カ タログ番号100453)、およびO‐グリコシダーゼ(O-Glycosidase:Boehringer Mannheim Biochemica社製、カタログ番号1347101)の糖鎖切断酵素を単独あるい は組み合わせて酵素消化実験を行いSDS−PAGEで調べたところ、TPOの ポリペプチド部分は理論値から推定される分子量約36000であり、N結合型 糖鎖とO結合型糖鎖の両方を持つ糖タンパク質であることが判明した。 〈実施例57〉ヒトTPO産生CHO細胞株からヒトTPOの精製 (1)実施例55と同様にして得られたCHO細胞無血清培養上清1Lに211.4g の硫酸アンモニウムを加え、0.2μmフィルター(Gelman Science社製、カタログ 番号12992)で濾過し、予め1.2M硫酸アンモニウム,20mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH5.6)で平衡化しておいたMacro-Prep Methyl HICカラム(Bio-Rad社製,カ タログ番号156-0081,直径50mm、ベッド高90mm)に流速15ml/minで添加した。添 加終了後、20mM酢酸ナトリウム緩 衝液(pH5.6)450mlで溶出した。この溶出液をVydac 逆相C4カラム(The Separations Group社製、カタログ番号214BTP54,直径4.6mm,ベッド高250mm) に流速0.75ml/minで添加した。添加終了後、15分間5%エタノールを含む10mM トリス緩衝液(pH6.4)(展開溶媒A)で洗浄後、展開溶媒Aから10mMトリス緩 衝液(pH6.4)を含む94%エタノール(展開溶媒B)まで66分間の直線グラ ジエントで溶出した。このクロマトグラムを図15に示した。TPOと思われる 分子量約65000-100000の分子は、SDS-PAGEによる分析の結果、サンプル添加後の 保持時間68-72分付近の画分に得ることができ、単一なバンドであることが確認 できた(図16参照)。さらにウエスターン分析により、このタンパク質がTP Oであることを確認した。 このサンプルの一部を取り、N末端アミノ酸分析を行った結果、ヒトTPO遺 伝子でコードされるタンパク質のアミノ酸配列を含むことが確認できた。 〈実施例58〉ヒトTPOの昆虫細胞での発現用組換えウイルスの作製 実施例30で作製したpHTP1を制限酵素EcoRI並びに NotIで消化後1%アガロースゲル電気泳動にかけ、約1200bpのバンドをプレップ -A-ジーンDNA精製キットを用いて精製した後、同様に制限酵素処理したトランス ファーベクターpVL1393(インビトローゲン社製)に連結しコンピテント ハイE.coli DH5(東洋紡績社製)を形質転換した。得られたコロニーよりプラス ミドDNAを調製し、ヒトTPOcDNAのコーディング領域を全て含むクロー ンpVL1393/hTPOを得た。このクローンのプラスミドDNAをMolecu lar Cloning(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記 載されているようにして調製し、BaculoGold TM Transfection Kit(ファーミン ゲン社製)を用いて昆虫細胞Sf21(インビトローゲン社製)にトランスフェ クション後、Sf‐900培地(ライフテクノロジー社製)中で27℃で4日間 培養し、そのウイルスを含んだ上清を回収した。この上清を109〜105倍に希 釈してその1mlを用いて、35mm径のシャーレ中で約7×105個のSf21 細胞に27℃で1時間感染させた。上清を抜きとりSf‐900培地を含む1% アガロースを流し込みアガロースが固まった後、加湿下で27℃で6日間培養し た。ここで形成されたシングルプラークをピック アップし、200μlのSf−900培地中でウイルスを溶出させた。このウイ ルスクローンを24ウエルプレート中でSf21細胞に感染させウイルスの増幅 を行った。得られたシングルプラーク由来のウイルス液の一部をフェノール/ク ロロホルム処理後、エタノール沈殿してウイルスDNAを回収した。このウイル スDNAを鋳型としてヒトTPOcDNAに特異的なプライマーを用いてPCR を行い、特異的なDNA断片が増幅されるか否かにより、ヒトTPOcDNAを 含む組換え体ウイルスを選択した。ここで得られたヒトTPOcDNAを含む組 換え体ウイルスを含む上清を用いてSf21細胞に感染させ、さらにウイルスの 増幅を行った。 〈実施例59〉Sf21昆虫細胞でのヒトTPOの発現と活性確認 175cm2の培養フラスコ中に、Sf21細胞を約80%コンフルエントにな るまで培養し、実施例58で作製したヒトTPOcDNAを含む組換え体ウイル スを27℃で1時間感染させた後、Sf−900培地中で27℃で4日間培養し 、その上清を回収した。得られた培養上清をNAPTM‐5カラム(ファルマシア 社製)を用いてIMDM培養液に置換し、これをラ ットCFU‐MKアッセイ系及びM‐07eアッセイ系にかけたところ、用量依 存的に有意なTPO活性及びM‐07e細胞増殖促進活性が認められた。また、 実施例45に記載したのと同様のウエスタン分析により、Sf21細胞で発現し た組み換えヒトTPOが確認された。 〈実施例60〉大腸菌で発現した、ヒトTPO塩基配列を保有するクローンpCFM536/h6T(1- 163)由来の変異型ヒトTPO、h6T(1-163)のN‐ラウロイルサルコシンナ トリウムと硫酸銅を用いたリフォールディングとh6T(1-163)精製 実施例43で調製されたh6T(1-163)生産組換体凍結菌体30gに水30 0mlを加えてけん濁し、高圧破砕機(10000psi、Rannie High Pressure Laboratory)で菌体を破砕した後、遠心分離により沈殿画分を回収した。沈殿画 分に90mlの水を加えて懸濁し、さらに撹拌しながら水を加えて液量を150 mlにした後、9mlの1MTris緩衝液pH9.2、540μlの1MDTT、1 .8mlの0.5MEDTA、18mlの10%デオキシコール酸ナトリウムを攪拌 しながら加え、室温にて30分間攪拌した。遠心分離により沈殿画分を 回収し、大部分の混在蛋白質、菌体成分等を除去した。沈殿に180mlの5m MDTTを加えてけん濁した後、遠心分離によってh6T(1-163)を含む沈殿画分 を回収した。得られた沈殿画分に水300mlを加え懸濁し、さらに撹拌しなが ら水を加えて液量を570mlにした後、攪拌しながら30mlの1MTris緩衝 液pH8と150mlの10%N‐ラウロイルサルコシンナトリウムを加えて室 温にて20分間攪拌して可溶化した。これに750μlの1%硫酸銅を加え、室 温にて一晩(約20時間)攪拌した。遠心分離によりh6T(1-163)を含む上 清画分を回収した後、上清750mlに750mlの水、1500mlの20m MTris緩衝液pH7.7加えた後、撹拌しながら3mlのポリソルベート80( 日光ケミカルズ)を加えた。同溶液に600gのDowex 1-x4,20-50 mesh,chlo ride formイオン交換樹脂を加え、室温にて90分間撹拌した。グラスフィルタ ーを用いてイオン交換樹脂非吸着画分を回収した後、750mlの20mMTris 緩衝液pH7.7でイオン交換樹脂を洗浄した。イオン交換樹脂非吸着画分と洗 浄液を合わせた溶液に2N水酸化ナトリウム加えてpHを9.2に調整し、0. 1%ポリソルベート80を含む20mMTris緩衝液pH 9.2で平衡化したQ Sepharose Fast Flow陰イオン交換カラム(内径5cm x 10cm)に添加し、非吸着画分を回収した。塩酸を用いて得られた非吸 着画分のpHを7.2に調整し、0.1%ポリソルベート80を含む20mMTr is緩衝液pH7.2で平衡化したSP Sepharose Fast Flow陽イオン交換カラム( 内径5cm x 10cm)に添加し、同緩衝液中で塩化ナトリウム濃度0Mか ら500mMまでの直線濃度勾配法によって溶出を行なった。溶出液についてSD S-PAGEによって分析を行い、TPO溶出画分を集めた。TPO溶出画分にトリフ ルオロ酢酸を0.1%になる様に加え、カプセルパック5μm300A C1カラ ム(内径2.1cm x 5cm x 2本、資生堂)に添加した後、0.1% トリフルオロ酢酸中で1−プロパノール濃度を上昇させる直線濃度勾配溶離法に よって逆相HPLCを行なった。溶出液について還元剤非存在下でのSDS-PAGEに より分析した結果及び逆相HPLCでの溶出位置によって、3画分に分画し、各 々について0.1%トリフルオロ酢酸を用いて3倍希釈した後、上記の逆相HP LCカラムに添加し、同様の方法で再クロマトグラフィーを行なった。得られた TPO3画分を逆相HPLCの溶出順にFr.S-a、Fr.S-b、 Fr.S-c(図17参照)として還元剤非存在下でのSDS-PAGEで分析した結果、各々 、分子量18Kダルトン(FT.S-a)、19Kダルトン(Fr.S-b)、18Kダルト ン(Fr.S-c)付近に単一のバンドとして検出された(図18参照)。各々につい てアミノ酸組成分析を行った結果、得られたアミノ酸組成はシークエンス情報か らの理論値とほぼ一致し,またN末端アミノ酸配列分析の結果、予想される配列 のみが得られた。またアミノ酸分析の結果から得られた各画分の蛋白質量は、各 々、0.64mg(Fr.S-a)1.81mg(Fr.S-b)、3.49mg(Fr.S-c) であった。各画分をIMDM培養液に対して十分に透析後、M−07eアッセイを行 った結果、相対活性約1620000(Fr.S-a)、相対活性約23500000 (Fr.S-b)、相対活性約746000000(Fr.S-c)のTPO活性を示した。 〈実施例61〉大腸菌で発現した、ヒトTPO塩基配列を保有するクローンpCFM536/h6T(1- 163)由来の変異型ヒトTPO、h6T(1-163)の塩酸グアニジンとシステイン ‐シスチンを用いたリフオールディング及びh6T(1-163)の精製 実施例43で調製されたh6T(1-163)生産組換体凍結菌 体50gに水500mlを加えてけん濁し、高圧破砕機(10000psi、Ranni e High Pressure Laboratory)で菌体を破砕した後、遠心分離により沈殿画分を 回収した。沈殿画分に水を加えて懸濁し、さらに撹拌しながら水を加えて液量を 250mlにした後、15mlの1MTris緩衝液pH9.2、900μlの1M DTT、3mlの0.5MEDTA、30mlの10%デオキシコール酸ナトリウムを 攪拌しながら加え、室温にて30分間攪拌した。遠心分離により沈殿画分を回収 し、大部分の混在蛋白質、菌体成分等を除去した。沈殿に300mlの5mMDT Tを加えてけん濁した後、遠心分離によってh6T(1-163)を含む沈殿画分を回 収した。回収されたh6T(1-163)を含む沈殿画分に水を加えてけん濁し、最 終104mlとした。攪拌しながら20mlの1MTris緩衝液pH8.5を加え た後、376mlの8M塩酸グアニジンを加えて室温にて10分間攪拌して可溶 化した。これに撹拌しながら2500mlの0.1%ポリソルベート80を含む 20mMTris緩衝液pH8.5を加え、さらに1M塩酸グアニジンを含む20m MTris緩衝液pH8.5を2000ml加えた後、5mMシステインと0.5m Mシスチンを加えて攪拌し溶かした。4℃中に て一晩静置した後、遠心分離によって上清中にh6T(1-163)を回収した。得 られた上清をプレップスケールUFカートリッジPLDC限外濾過膜(ミリポア)を用 いて濃縮し、0.1%ポリソルベート80を含む20mMTris緩衝液pH9.2 にて緩衝液を置換して最終容量約1000mLとした。これを0.1%ポリソル ベート80を含む20mMTris緩衝液pH9.2で平衡化したQ Sepharose Fa st Flow陰イオン交換カラム(内径5cm x 10cm)に添加し、同緩衝液 中で塩化ナトリウム濃度0Mから500mMまでの直線濃度勾配法によって溶出 を行ない、塩化ナトリウム濃度20mMから150mM付近までの塩濃度で溶出 された画分240mLを回収した。得られた画分を20mMTris緩衝液pH7. 2で4倍に希釈して960mLとし、酢酸を用いてpHを7.2に調整した。こ れを0.1%ポリソルベート80を含む20mMTris緩衝液pH7.2で平衡化 したSP Sepharose Fast Flow陽イオン交換カラム(内径5cm x 10cm) に添加し、同緩衝液中で塩化ナトリウム濃度0Mから500mMまでの直線濃度 勾配法によって溶出を行なった。溶出液についてSDS-PAGEによって分析を行い、 TPO溶出画分を集めた。TPO溶出画分にトリフルオ ロ酢酸を0.1%になる様に加え、カプセルパック5μm300A C1カラム( 内径2.1cm x 5cm x 2本、資生堂)に添加した後、0.1%トリ フルオロ酢酸中で1−プロパノール濃度を上昇させる直線濃度勾配溶離法によっ て逆相HPLCを行なった。溶出液について還元剤非存在下のSDS-PAGEにより分 析した結果及び逆相HPLCでの溶出位置によって2画分に分画した。得られた TPO溶出2画分を逆相HPLCの溶出順にFr.G-a、Fr.G-d(図17参照) として各々について還元剤非存在下でのSDS-PAGEで分析した結果、各々、分子量 18Kダルトン(Fr.G-a)、32Kダルトン(Fr.G-d)付近に単一のバンドとし て検出された(図18参照)。また、還元剤存在下でのSDS-PAGE分析を行った結 果、どちらの画分も分子量20Kダルトン付近に単一のバンドとして検出された 。各々についてアミノ酸組成分析を行った結果、得られたアミノ酸組成はシーク エンス情報からの理論値とほぼ一致し,またN末端アミノ酸配列分析の結果、予 想される配列のみが得られた。またアミノ酸分析の結果から得られた各画分の蛋 白質量は、各々、2.56mg(Fr.G-a)、1.16mg(Fr.G-d)であった。 各画分をIMDM培養液に対して十分に透析後、M−07eア ッセイを行った結果、相対活性約3960000(Fr.G-a)、相対活性約776 0000(Fr.G-d)のTPO活性を示した。 〈実施例62〉部分長ヒトTPO(アミノ酸1−163)(以下、このタンパク質を「hTPO16 3」と称す)のCHO細胞用組換えベクター、pDEF202-hTPO163の構築 実施例31で得られたベクターpDEF202を制限酵素EcoRIとSpeIで処理し、 アガロースゲル電気泳動で大きい方のベクターフラグメントを回収したのち、こ のフラグメントと−21から163位のアミノ酸までをコードするhTPO163 c DNA(配列番号13参照)を含むプラスミドpEF18S-hTPO163を制限酵素EcoRI とSpeIで処理して得られたhTPO163 cDNAとをT 4 DNAリガーゼ(宝酒造製) で結合させ、発現ベクターpDEF202-hTPO163を得た。このプラスミドはSV 40の複製開始領域、ヒトエロンゲーションファクター1−アルファプロモータ ー、SV40初期ポリアデニル部位、マウスDHFRミニ遺伝子、pUC 18の複製開始 領域、β‐ラクタマーゼ遺伝子(Ampr)を含み、ヒトエロンゲーションファクタ ー1−アルファプロモーター下流にhTPO163 cDNAが接続されている。 〈実施例63〉CHO細胞によるhTPO163の発現 CHO細胞(dhfr‐株、UrlaubとChasin;Proc.Natl.Acad.Sci.USA;77巻4 216頁、1980)を6cm径のプレート(Falcon社製)中10%牛胎児血清を 含むα最小必須培地(α-MEM(−)、チミジン、ヒポキサンチン添加)で培養増 殖させ、これをトランスフェクタム法(生化学工業社製)によって形質転換した 。 すなわち、実施例62で調製したpDEF202-hTPO163プラスミド10μgに 0.3M NaCl240μlを加え混合したのち、トランスフェクタム20μlとH2O 220μlとの混合液を加え、再度混合した。このDNA溶液をプレートに滴下した のち、CO2インキュベーター中で6時間培養した。プレートから培地を除去し、 α-MEM(−)にて2回洗浄後、10%ジメチルスルフォオキシド含有α-MEM(− )を添加し、室温で2分間処理した。次いで、10%透析牛胎児血清含有非選択 培地(前出α-MEM(−)、ヒポキサンチン、チミジン添加)を添加して2日間培 養したのち、10%透析牛胎児血清含有選択培地(α-MEM(−)、ヒポキサンチ ン、チミジン無添加)での選択をお こなった。選択は細胞をトリプシン処理した後、6cm径プレート1枚あたりを、 10cm径プレート5枚あるいは24ウエルプレート20枚に分割したのち、2日 ごとに選択培地にて培地交換を行いながら培養を続行する事により実施した。細 胞が増殖してきたプレートあるいはウエルについてはその培養上清中のTPO活 性をBa/F3アッセイ法を用いて測定したところ、TPO活性が認められた。 培養上清中にTPO活性の認められたものについては新しいプレートあるいはウ エルに25nMのメソトレキセートを含む選択培地で1:15に細胞を分割し、培 養を続行することによりメソトレキセートに耐性の細胞を増殖させてクローニン グを行った。 なお、CHO細胞の形質転換はCHO細胞に対しpEF18S-hTPO163とpMG1を 同時形質転換(co-transfection)することによっても行うことができる。 プラスミドpDEF202−hTPO163によって形質転換されたCHO細 胞株(CHO-DUKXB11)は1995年1月31日付で通商産業省工業技術院生命工 学工業技術研究所に受託番号FERM BP−4989として寄託されている。 〈実施例64〉CHO細胞の大量培養 実施例63においてhTPO163発現プラスミドpDEF202-hTPO163をCH O細胞にトランスフェクションして得られたhTPO163産生CHO細胞株(CH O109細胞、10%透析牛胎仔血清含有選択培地[ヒポキサンチンとチミジンを含 まないα−MEM-]中で上述のように選択して得られた細胞)の大量培養は以 下のようにして実施した。細胞を10%FCSを含むDMEM/F-12培地(GIBCO社)を用 いて培養増殖させた。この細胞をトリプシン溶液を用いて剥離したのち、200 mlの同培地を含むFalcon社製ローラーボトル(Falcon3000)に1000万個の細胞を 接種し、37℃で1rpmの回転速度で3日間培養した。3日後、培養液を吸引除 去し、100mlのPBSで細胞培養表面をリンスしたのち、10%FCSを含まないDME M/F-12培地(GIBCO社)を200ml加え、37℃、1rpmの回転速度で7日間培養し 、7日後その培養上清を回収し、次の精製操作の出発材料にした。上記の操作を ローラーボトル300本分実施し、無血清培養上清60Lを得た。 〈実施例65〉hTPO163産生CHO細胞株からhTPO163の精製 (1)実施例64より得られた無血清培養上清60Lを得て、0.22μmの 濾過フィルターの濾液をとった。さらに限外濾過ユニット(フィルトロン社製・ 分子量10000カット)を用いて濃縮画分(600ml、蛋白質濃度11.2mg /ml、総蛋白質量6430mg)を得た。この画分を抗HT1ペプチド抗体を 用いてウエスターン分析で調べたところ、見かけの分子量20000〜2600 0の範囲に発現されたhTPO163蛋白質が存在することが明らかとなった。 この濃縮培養上清573mlを流速約20ml/minにて、10mMリン酸ナトリウ ム緩衝液(pH6.8)で予め平衡化してあったSephadex G-25 Fineカラム(ファル マシア・バイオテク社製、カタログ番号17-0032-02;直径10cm、ベッド高30cm) にて処理することにより、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)溶液とな った蛋白質画分F1(938ml,蛋白質濃度4.9mg/ml,総蛋白質量4594mg)を得た 。 このSephadex G-25 Fineカラム蛋白質画分929mlを、予め10mMリン酸 ナトリウム緩衝液(pH6.8)平衡化したSP Sepharose Fast Flow(ファルマシア・バイオテク社製、カタログ番号17-0729-0 1;直径5cm、ベッド高12cm)カラムに流速15ml/minで添加した。添加終了後、 さらに10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)、次いで10%エタノールを 含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)で溶出されたものまでをまとめ 、画分F1(1608ml,蛋白質濃度2.13mg/ml,総蛋白質量3426mg)を得た。次に 、溶出液を10mMリン酸ナトリウム(pH6.8)中に750mM NaCl、25%エタ ノールを含む緩衝液にかえ、溶出されたhTPO163の主たる溶出画分F2(651m l,蛋白質濃度1.67mg/ml,総蛋白質量1087mg)を集めた。 SP Sepharose Fast FlowカラムのTPO活性画分F2のうち200mlをとり 、エタノール及び精製水を加え、最終エタノール濃度45%の溶液300mlを 調製した。ここでエタノール添加の結果生じた不溶物を遠心分離により取り除い た後、展開溶媒A(10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.7))、展開溶媒B( 90%エタノールを含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.7))を用意し、 予め50%B液にて平衡化したSOURCE 15RPCカラム(ファルマシア・バイオテク 社製、カタロ グ番号17-0727-02;直径2cm、ベッド高20cm)に流速2ml/minで注入した。注入 後、カラム非吸着物質がほぼ溶出するまで45%B液にて洗浄した後、流速を1. 5ml/minにし、まず5分間50%B、次いで50%Bから100%Bまで140 分の直線濃度勾配の後、100%B液にて35分間展開した。この間5分(7. 5ml)ごとに集められた溶出画分をSDS−PAGE及びウエスターン分析に かけ、hTPO163の溶出範囲を調べたところ、エタノール濃度66%〜87%の 範囲に見かけの分子量約20000から26000の高度に精製されたhTPO16 3が溶出されていることが判明した。これらのhTPO163のうち分子量の高いも のほどより早く逆相カラムから溶出したことから、糖鎖がより多く結合したhTPO 163分子ほど親水性が増していることが示唆された。 SOURCE 15RPCカラムのhTPO163溶出画分(エタノール濃度68%〜86.5 %の範囲に溶出したhTPO163画分90ml)のうち、88.8mlにCHAP Sを添加後、限外濾過法(アミコン社製、YM−3膜付き限外濾過ユニット)に より濃縮、洗浄を行い、最終的に約5%エタノール、4mMCHAPSを含む2 .5mlの濃縮標品とした。この標品を予め10%エタ ノールを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)で平衡化したSuperdex 75pgカラム(ファルマシア・バイオテク社製、カタログ番号17-1070-01;直径2. 6cm、ベッド高60cm)に流速1.5ml/minで注入した。注入後60分後から、6ml (4分)ごとに溶出画分を集めたところ、SDS−PAGEにより試験管番号1 6番以降の画分にhTPO163が溶出しはじめ、少なくとも31番目までの広い範 囲にhTPO163が溶出していることを確認した。これは、ゲルろ過の標準分子量 マーカー(Bio-Rad社製Gel Filtration Standard;カタログ番号151-1901及びCa lbiochem社製インシュリン;カタログ番号407696の混合物)に対して、分子量約 44000から6000の範囲に相当する。しかもこれらのhTPO163は糖がよ り多く付加された分子量の大きいものから順に溶出していると考えられた。試験 管番号16〜31(溶出体積180〜276ml)の溶出範囲にあるすべてのhT PO163の分子種をまとめたものとして画分FAを調製した。画分FAとは別に 、試験管番号16〜18(溶出体積180〜198ml)、試験管番号19〜2 4(溶出体積198〜234ml)、試験管番号25〜31(溶出体積234〜 276ml)の各々の一部をとり、それぞれ画分 FH、FM、FLとした。つまり画分FAは、実質的に画分FH、FM、FLを 合わせたものとなる。以上、図19に示す。 (2)次に(1)で述べたSuperdex 75pgカラムのhTPO163溶出画分FH、 FM、FL及びFAについて詳細に述べる。このようにして得られたhTPO163 のN末端側のアミノ酸配列を実施例1に述べた方法と同様にして調べたところ、 N末端のセリンの大部分は同定不能であったことより、N末端のセリンにO結合 型糖鎖が付加されていることが強く示唆された。また、N末端のセリンに続く配 列は遺伝子配列から期待されたアミノ酸配列であることが確認できた。アミノ酸 組成分析(AccQ.Tag法、ウォターズ社)の結果、FH、FM、FL及び FAのhTPO163蛋白質(糖鎖を含まないペプチド部分)の濃度がそれぞれ10 .2ng/ml、6.2ng/ml、0.84ng/ml、3.2ng/mlで あった。これらの画分100ngをマルチゲル15/25(第一化学薬品社製1 5〜25%プレキャストポリアクリルアミドゲル)を用いて非還元条件或いはD TTにより還元後、SDS−PAGEを実施し銀染色(第一化学薬品社製)した ところ、それぞれ極めて高純度なhTPO163標品であることが確認できた。還元 条件下において はDPCIII分子量マーカー(第一化学薬品社製)を標準として算出されたF H、FM、FL及びFAのhTPO163の見かけの分子量はそれぞれ24000〜 21500、23000〜21000、23000〜20500、23500〜 20500であった(図20を参照)。またウエスターン分析により還元条件下 においてはビオチン標識SDS−PAGEスタンダード(Bio-Rad社製Biotynyla ted SDS-PAGE Standards,Broad Range;カタログ番号161-0319)を標準として 算出されたFH、FM、FL及びFAのhTPO163の見かけの分子量はそれぞれ 26000〜22000、25500〜22000、26000〜21000、 26000〜21000であった。FH、FM、FL及びFAの分子量の不均一 性は、付加されたO結合型糖鎖の不均一性によることと推定できる。そこでFH 、FM、FL及びFAの各画分をノイラミニダーゼ(Neuraminidase:ナカライ テスク社製、カタログ番号242-29 SP)で酵素消化し、DTTで還元後SDS− PAGEで分析したところ、いずれの画分も見かけの分子量が19000付近と なったことから、hTPO163蛋白質に付加された糖鎖のシアル酸の量の不均一性 が確認されたのと同時に、ここで得られたhTPO163が糖蛋白 質としてCHO細胞で発現されたものであることが明らかとなった。 (3)(2)で得られたFH、FM、FL及びFAの各画分をM−07eアッ セイ系でin vitro活性を調べたところ、相対比活性は1mghTPO163蛋白質( 糖鎖重量を含まないペプチド部分の重量)当たり、それぞれ511000000 、775000000、1150000000、715000000であった。 〈実施例66〉−1位にLys、−2位にMetが付加されたヒトTPO(アミノ酸1−332 )(以下「hMKT(1-332)」と称す)の大腸菌用発現ベクターの構築及び発 ヒトTPO全長アミノ酸を大腸菌で発現させるためアミノ酸164以降のアミ ノ酸332までの使用コドンを以下に述べるように大腸菌優先コドンに変更した 。 21及び22;23及び24;25及び26;27及び28;29及び30; 31及び32;33及び34;35及び36;37及び38;39および40の 合成オリゴヌクレオチドを同チューブ中でT4キナーゼ(ファルマシア社製)を用 いて0.1mM ATP,10mMTris-acetate,10mM Mg-acetate,50mM K-acetateの溶液中 でリン酸化した。さらに1/10量の100mM Tris/HCl(pH7.5),100mM MgCl2,500m M NaClの溶液を加え、水浴中で3分間煮沸した後、放置することにより二本鎖DN Aとした。次に21及び22;23及び24(組合わせA)、25及び26;2 7及び28;29及び30(組合わせB)、31及び32;33及び34(組合 わせC)、35及び36;37及び38;39及び40(組合わせD)の四組の 二本鎖DNAをDNAライゲーションキット(宝酒造社製)を用いて連結後、さらに( 組合わせA)及び(組合わせB)、(組合わせC)及び(組合わせD)をそれぞれ同 様に連結し、得られた反応液を連結1及び連結2とした。これらの反応液を鋳型 として、連結1については41および42、連結2については43及び44の合 成オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応を行った。連結1のPCR 反応で得られたPCR産物についてはSacI,EcoRV、連 結2のPCR反応で得られたPCR産物についてはEcoRV,HindIIIで消化後2% のアガロースゲルで泳動し、それぞれ約240bp及び250bpの断片をプレ ップ−A−ジーンDNA精製キットにより回収した。これら二本の断片ををSacIとHi ndIIIで消化したpBluescript II KS+(ストラタジーン社製)にサブクローニン グした(宿主はE.coli DH5を使用した)。得られたクローンのうち表6に示した ヌクレオチド配列を有するものをシークエンシングにより選択し、ここで得られ たクローンをpBL(SH)(174-332)(配列番号154)とした。 次に実施例42で作成したpBL(XH)h6T(1-163)を鋳型とし、以下の45及び4 6の合成オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR反応を行い、ここで得ら れたPCR産物についてはBamHI,SacIで消化後6%のポリアクリルアミドゲルで 泳動し、約160bpの断片をゲルより回収した。またpBL(SH)(174-332)をSacI ,HindIIIで消化して得られた約480bpの断片をプレップ−A−ジーンDNA精製 キットにより回収し、これら二本の断片をBamHIとHindIIIで消化したpBluescrip t II KS+(ストラタジーン社製)にサブクローニングした(宿主はE.coli DH5を 使用した)。 得られたクローンのうち表7に示した塩基配列を有するものをシークエンシン グにより選択し、ここで得られたクローンをpBL(BH)(123-332)(配列番号157 参照)とした。 実施例42で作成したpBL(XH)h6T(1-163)をBamHIとHindIIIで消化し、pBL(BH) (123-332)を同じ制限酵素で消化して得られた約640bpの断片を連結してク ローンpBL(XH)h6T(1-334)を作成した。さらに実施例52で作成したPCFM536/hMK T(1-163)をXbaI,SfiIで消化して得られた約270bpの断片を、同じ制限酵素 で消化したpBL(XH)h6T(1-334)に連結してクローンpBL(XH)hMKT(1-334)を作成し た。pBL(XH)hMKT(1-334)を XbaI,HindIIIで消化後、変異型のヒトTPOアミノ酸1−332をコードする約104 0bpの大きさのフラグメントを回収して精製後、XbaI,HindIIIで消化したpCFM536 (特表昭60-501988)にクローニングした(宿主はpMW1(ATCC No.39933)で予め 形質転換されたE.coli JM109を使用した)。ここで得られたクローンをpCFM536/ hMKT(1-332)とし、この発現ベクターを有する大腸菌株を変異型のhMKT(1-3 32)タンパク発現用の形質転換体とした。この発現プラスミドは、配列表(配列 番号14)に示されたDNA配列を含んでいる。 ここで得られた形質転換株を、アンピシリン50μg/ml、テトラサイクリン12.5 μg/mlを含むLB培地60mlに30℃で一晩振盪培養し、この培養液25mlをアンピシ リン50μg/mlを含むLB培地1000mlに加えて、ODはA600が1.0-1.2に至るまで 30℃で振盪培養した。次いで最終温度が、42℃になるように65℃の約330mlLB 培地を添加し、さらに3時間42℃で振盪培養して変異型のヒトTPO、hMKT(1 -332)([Met-2、Lys-1]TPO(1-332)とも称する)タンパクの発現 を誘導した。 この培養菌体を直接SDS−PAGEにかけた。SDS− PAGEには第一化学社製のマルチゲル15/25を用い、泳動後にクマシーブ ルー染色を行ったところhMKT(1-332)タンパク質の発現を誘導したものに 関しては、分子量約35kDのところに発現誘導に特異的なタンパク質が検出さ れた。一方、SDS−PAGE後にゲル上のタンパク質をニトロセルロース膜に エレクトロブロッティングし、実施例45で作製した抗HT1ペプチド抗体と反 応させ発色させたところ、分子量約35kDのところにバンドが検出されたこと から、hMKT(1-332)の発現が確認された。 〈実施例67〉ヒトTPO置換誘導体の作製、COS7細胞での発現及び活性確認 ヒトTPOのアミノ酸の一部を置換した誘導体がTPO活性を有するかどうか を以下のとおり検討した。 本実施例で用いた動物細胞発現ベクターpSMT201は以下のように作製した。 まず、マウスエリスロポエチンレセプターcDNAを含む発現プラスミドpXM-mEPO Rn(Dana Farbor癌研究所D'Andrea博士より入手、Cell:57巻、277-285頁(1989) )を制限酵素KpnIおよび EcoRIで処理した後、アガロースゲル電気泳動しマウスエリスロポエチンレセプ ターcDNA部分を除くpXMベクター断片を回収した。次に回収したpXM発現ベクター に種々のクローニング用制限酵素部位を導入するための2本の合成オリゴヌクレ オチドをABI社製DNA合成機を用いて作製した。合成したオリゴヌクレオチドの塩 基配列を以下に示す。 プライマー1: プライマー2: この2本のオリゴヌクレオチドを混合し、アニーリングさせ2本鎖オリゴヌク レオチドとした後、上記で回収したpXMベクター断片とをT 4DNAリガーゼ(宝酒 造製)で結合させ、発現ベクターpDMT201を得た。次にこの発現ベクターpDMT201 に含まれるマウスDHFR cDNAを除去するためにpDMT201ベクター及 びpEF18Sベクターを制限酵素NotIおよびHpa Iで処理後アガロースゲル電気泳 動し、pDMT201ベクターDNA由来の大きい方の断片とpEF18SベクターDNA由来の小 さい方の断片を回収し、T 4DNAリガーゼ(宝酒造製)で結合させることにより 発現ベクターpSMT201を得た。このベクターは、図21に示したとおりSV40の 複製開始領域およびエンハンサー配列、アデノウィルス主要後期プロモーター配 列、アデノウィルストリパータイトリーダー配列、スプライス信号配列、SV40 初期ポリアデニル部位配列、アデノウィルスVA RNA遺伝子配列、pUC18の複製 開始領域、β‐ラクタマーゼ遺伝子(Ampr)を含み、目的とする遺伝子を連結す るための制限酵素配列として、Bgl II、Pst I、Kpn I、Xho I、EcoRI、Sma I、S pe I、およびNot I部位を有する。実施例30で示した完全長ヒトTPO cDNAを含 むpHTP1を制限酵素EcoRIおよびSpeIを用いて酵素消化し得られた完全長ヒ トTPO cDNA断片を、同様に制限酵素消化したベクターpSMT201にサブクローニン グすることによりプラスミドpSMT201-hTPOを得た。 以上のようにして得たプラスミドpSMT201-hTPOを鋳型にして、まず誘導体作製 用の鋳型となるプラスミドβGL-TPO/pBlueを以 下のように作製した。 βGL-TPO/pBlueではヒトTPOの5′非翻訳側に、Annweilerらの方法に従いウ サギのβ‐グロビンリーダー配列の付加を試みた(Annweilerら、Nucleic Acids Research、19巻、3750頁)。まず以下に示す化学合成した2本のDNA鎖、そして ベクターBluescriptIISK+(東洋紡績社製)を制限酵素EcoRI及びSmaIで消化した 断片とをライゲーションすることによりリーダー配列が挿入されたベクターβGL /pBlueを作製した。 PRに用いたプライマーの配列は以下の通り。 Sma-ATG:5′-GGCCCGGGATGGAGCTGACTGAATTGCTC-3′(配列番号162)(配列番号 7の102-122にSmaI配列を付加したもの) end:5′-TCAAGCTTACTAGTCCCTTCCTGAGACAGATTCTG-3′(配列番号163)(配列番 号7の1140-1160のアンチセンス、SpeI及びHindIII配列を付加) PCRはプラスミドpSMT201-hTPO DNA1ngを鋳型として使用し、合成したプラ イマーをそれぞれ10μM使って実施した。TaKaRa PCR Amplification Kit(宝酒 造社製)を用いて、Programmable Thermal Controller(MJ Research社製)によ り100μlの容量でPCR(94℃1分間、55℃2分間、72℃2分間を3サイクル 、続けて94℃45秒間、55℃1分間、72℃1分間を20サイクル)を行った。PCR 産物をクロロホルム抽出し、エタノール沈殿を2回行った後100μlのTEバッフ ァーに溶解した。 これを制限酵素SmaI、HindIIIで消化後、フェノール/クロロホルム抽出、エ タノール沈殿を行った。得られた沈殿を10μlのTEバッファーに溶解後、同様に 制限酵素消化したベクターβGL/pBlueにサブクローニングした(宿主菌は東洋紡 績社製コンピテント・ハイE.coli JM109を使用)。得られた形質転換体のうち20 クローン選択し、プラスミドDNAを調製した。方法は本質的にMolecular Cloning [Sambookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されている ようにして実施した。精製したプラスミドDNAについてはTaq Dye Deoxy TM Term inater Cycle Sequencing Kit(アプライドバイ オシステムズ社製)を用い、アプライドバイオシステムズ社製373ADNAシークエ ンサーにより塩基配列の確認を行った。13GL-TPO/pBlueをコードするプラスミド は全長にわたり塩基配列の置換がなく予想通りのTPOcDNA配列を持つことを確認 した。さらにβGL-TPO/pBlueを制限酵素BglII、SpeIで消化後、フェノール/ク ロロホルム抽出、エタノール沈殿を行った。得られた沈殿を10μlのTEバッファ ーに溶解し、同様に制限酵素消化したベクターpSMT201にサブクローニングした (宿主菌は東洋紡績社製コンピテント・ハイE.coli JM109を使用)。本質的にMo lecular Cloning[Sambookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)] に記載されている方法に従い、形質転換体からプラスミドDNAを調製した。得ら れた発現ベクターpSMT/βGL-TPOは、図21に示したpSMT201ベクターのスプライ ス信号配列の下流にある制限酵素配列Bgl II/SpeI部位にβ‐グロビンリーダ ー配列及びヒトTPOcDNAが接続された構造を有している。このpSMT/βGL-TPOベ クターをCOS7細胞へのトランスフェクション実験に用いた。 ヒトTPO置換誘導体の作製にはPCRを利用し、Itoらの方法に従った(Ito ら、Gene、102巻、67-70頁1991年)。 ここでは、ヒトTPOの25位のArg残基をAsn残基に置換した誘導体、並 びに33位のHis残基をThr残基に置換した誘導体の作製を試みた。これら の誘導体の各々を[Asn25]TPO、[Thr33]TPOと称する。PCRに 用いたプライマーの配列は以下の通り。 T7:5′-TAATACGACTCACTATAGGGCG-3′(配列番号164)(BluescriptIISK+のT7プ ロモーター領域に対応) ΔBglII:5′-AATTCCAAGATCACACACTTGC-3′(配列番号165)(制限酵素Bg1II認 識配列置換用) end:5′-TCAAGCTTACTAGTCCCTTCCTGAGACAGATTCTG-3′(配列番号166)(配列 番号7の1140-1160のアンチセンス、SpeI及びHindIII配列を付加) N3:5′-TGGGCACTGGCTCAGGTTGCTGTGAAGGACATGGG-3′(配列番号167)(配列番号 7のArg25→Asn) 09:5′-TGTAGGCAAAGGGGTAACCTCTGGGCA-3′(配列番号168)(配列番号7のHis33 →Thr) 第1段階のPCRはプラスミドβGL-TPO/pB1ue DNA1ngを鋳型として使用し、 合成したプライマーをそれぞれ10μM使って 実施した。プライマーの組み合わせは[1]ΔBglIIとend、[2]T7とN3、[3]T 7と09である。TaKaRa PCR Amplification Kit(宝酒造社製)を用いて、Program mable Thermal Controller(MJ Research社製)により100μlの容量でPCR(9 4℃1分間、55℃2分間、72℃2分間を3サイクル、続けて94℃45秒間、55℃1 分間、72℃1分間を17サイクル)を行った。それぞれのPCR産物をクロロホル ム抽出し、エタノール沈殿を2度行った後100μlのTEバッファーに溶解した。こ のPCR産物を2種類1μlずつ用いて第2段階のPCRを行った。鋳型の組み 合わせは[1]と[2]のPCR産物、[1]と[3]のPCR産物である。用いたプライ マーはすべてT7とendの組み合わせである。94℃で10分間インキュベートした後T aKaRa Taqを加え、94℃1分間、55℃2分間、72℃2分間を3サイクル、続けて9 4℃45秒間、55℃1分間、72℃1分間を9サイクル行った。それぞれのPCR産 物に5mg/ml proteinase Kを1μl、0.5M EDTAを2μl、20%SDSを2μl加え37℃ で30分間保温しTaqを失活させた後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノー ル沈殿し20μlの滅菌水に溶解した。これを制限酵素BglII、SpeIで消化後、フェ ノール/クロロホルム抽出、エタ ノール沈殿を行った。得られた沈殿を10μlのTEバッファーに溶解後、同様に制 限酵素消化しアルカリホスファターゼ(仔ウシ腸、ベーリンガー・マンハイム社 製)処理した発現ベクターpSMT201にサブクローニングした(宿主菌は東洋紡績 社製コンピテント・ハイE.coli JM109を使用)。得られた形質転換体のうち、そ れぞれ2クローンずつ選択し、プラスミドDNAを調製した。方法は本質的にMolec ular Cloning[Sambookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記 載されているようにして実施した。精製したプラスミドDNAについてはTaq Dye D eoxy TMTerminater Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ社製) を用い、アプライドバイオシステムズ社製373ADNAシークエンサーにより塩基配 列の確認を行った。 プライマー[1]と[3]を用いるPCRによって作成されたプラスミドはアミ ノ酸置換[His33(CAC)→Thr(ACC)]をもち、かつ元のC末端 (Gly332)に以下のアミノ酸配列TSIGYPYDVPDYAGVHHH HHH(配列番号169)が付加されたTPO置換誘導体(09/TPO)をコー ドするcDNAが含まれていることが確認された。この誘導体は[Thr33,T hr333,Ser334, Ile335,Gly336,Tyr337,Pro338,Tyr339,Asp340,Val341 ,Pro342,Asp343,Tyr344,Ala345,Gly346,Val347, His348,His349,His350,His351,His352,His353]TPO と称する。 一方、プライマー[1]と[2]を用いるPCRによって作成されたプラスミド はアミノ酸置換[Arg25(AGA)→Asn(AAC)]以外に更に1カ所 のアミノ酸置換[Glu231(GAA)→Lys(AAA)]もち、かつC末 端(Gly332)に以下のアミノ酸配列TSIGYPYDVPDYAGVHH HHHHが付加されたTPO置換誘導体(N3/TPO)をコードするcDNA を含んでいることが判明した。この誘導体は[Asn25,Lys231,Thr333 ,Ser334,Ile335,Gly336,Tyr337,Pro338,Tyr339,As p340,Val341,Pro342,Asp343,Tyr344,Ala345,Gly346 ,Val347,His348,His349,His350,His351,His352,Hi s353]TPOと称する。 得られたそれぞれのクローンのCOS7細胞へのトランスフェクションは、実 施例35に従いクロロキン処理を含むDEAE-デキストラン法で行った。すなわち プラスミドDNA40μgを使用し、トランスフェクション5日後に培養上清を回収し た。回収した培養上清をセントリコン-30(アミコン社製)で20倍に濃縮しM− 07eアッセイ系で評価した。その結果、ヒトTPO置換誘導体N3/TPO、 09/TPOをコードするプラスミドでトランスフェクトしたCOS7細胞培養 上清中に、いずれも用量依存的にTPO活性が検出された(図22参照)。 〈実施例68〉ヒトTPO挿入・欠失誘導体の作製とCOS7細胞での発現及びTPO活性の確 hTPO163にアミノ酸を挿入した誘導体またはhTPO163からアミノ酸を欠失 した誘導体がTPO活性を有するかどうか検討した。 作製した誘導体は配列番号13のHis33欠失体([ΔHis33]TPO(1-163) 、dH33)、Gly116欠失体([ΔGly116]TPO(1-163)、dG 116)、Arg117 欠失体([ΔArg117]TPO(1-163)]、dR117)、His33とPro34の間 への Thr挿入体([His33,Thr33′,Pro34]TPO(1-163)、T33’) 、Ala挿入体([His33,Ala33′,Pro34]TPO(1-163)、A33’ )、Gly挿入体([His33,Gly33′,Pro34,Ser38]TPO(1−163 )、G33’)およびGly116とArg117の間へのAsn挿入体([Gly116,Asn116 ′,Arg117]TPO(1-163)、N116’)、Ala挿入体([Gly116 ,Ala116′,Arg117]TPO(1-163)、A116’)、Gly挿入体([G ly116,Gly116′,Arg117]TPO(1-163)、G116’)である。こ れらの配列の全ては配列番号13に基づく。これらのうちT33’、N116’は それぞれムチン型糖鎖、Asn結合型糖鎖の導入を意図した誘導体である。 誘導体の作製にはPCRを利用し、Itoらの方法に従った(Itoら、Gene、102 巻、67-70頁、1991)。PCRに用いたプライマーの配列は以下の通り。 dH33:5′-TGTAGGCAAAGGAACCTCTGGGCA-3′(配列番号172)(配列番号7のHis33 欠失体作製用) T33′:5′-TGTAGGCAAAGGAGTGTGAACCTCTGG-3′(配列番号173)(配列番号7のH is33とPro34の間へのThr挿入体作製用) A33′:5′-TGTAGGCAAAGGAGCGTGAACCTCTGG-3′(配列番号174)(配列番号7のH is33とPro34の間へのAla挿入体作製用) G33′:5′-TGTAGGCAAAGGTCCGTGAACCTCTGG-3′(配列番号175)(配列番号7のH is33とPro34の間へのGly挿入体作製用) dG116:5′-AGCTGTGGTCCTCTGTGGAGGAAG-3′(配列番号176)(配列番号7のGly1 16欠失体作製用) dR117:5′-GTGAGCTGTGGTGCCCTGTGGAGG-3′(配列番号177)(配列番号7のArg1 17欠失体作製用) N116′:5′-AGCTGTGGTCCTGTTGCCCTGTGGAGG-3′(配列番号178)(配列番号7の Gly116とArg117の間へのAsn挿入体作製用) A116′:5′-AGCTGTGGTCCTAGCGCCCTGTGGAGG-3′(配列番号179)(配列番号7の Gly116とArg117の間へのAla挿入体作製用) G116′:5′-AGCTGTGGTCCTTCCGCCCTGTGGAGG-3′(配列番号180)(配列番号7の Gly116とArg117の間へのGly挿入体作製用) dRI:5′-CGGGCTGCAGGATATCCAAGATCTCA-3′(配列番号181)(制限酵素EcoRI認 識配列置換用) T7:5′-TAATACGACTCACTATAGGGCG-3′(配列番号182)(BluescriptIISK+のT7プ ロモーター領域に対応) endNotI:5′-GGGCGGCCGCTCAGCTGGGGACAGCTGTGGTGGG-3′(配列 番号183)(配列番号7の633-653のアンチセンス、終止コドンとNotI認識配列を 付加) 第1段階のPCRは実施例67で作製したプラスミドβGL-TPO/pBlue DNA 1n gを鋳型として使用し、合成したプライマーをそれぞれ10μM使って実施した。プ ライマーの組み合わせは[1]dRIとendNotI、[2]T7と変異導入プライマー(dH 33,A33′,G33′,T33′,dG116,dR117,A116′,G116′,N116′)である。TaKaRa PC R Amplification Kit(宝酒造社製)を用いて、Programmable Thermal Controll er(MJ Reserch社製)により100μlの容量でPCRを行った。[1]の第1PC R反応は、94℃1分間、45℃2分間、72℃2分間を3サイクル、続けて94℃45秒 間、45℃1分間、72℃1分間を17サイクル。[2]の第1PCR反応は、94℃1 分間、55℃2分間、72℃2分間を3サイクル、続けて94℃45秒間、55℃1分間、 72℃1分間を17サイクル。それぞれのPCR産物をクロロホルム抽出し、エタノ ール沈殿を2度行った後100μlのTEバッファーに溶解した。 次に、[1]と[2]のPCR産物をそれぞれ1μlずつ用いて第2段階のPC Rを行った。用いたプライマーはすべてT7とendNotIの組み合わせである。94℃ で10分間インキュベートし た後TaKaRa Taqを加え、94℃1分間、55℃2分間、72℃2分間を3サイクル、続 けて94℃45秒間、55℃1分間、72℃1分間を9サイクル行った。それぞれのPC R産物に5mg/ml proteinase Kを1μl、0.5M EDTAを2μl、20%SDSを2μl加え3 7℃で30分間保温しTaqを失活させた後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノ ール沈殿し20μlの滅菌水に溶解した。これを制限酵素EcoRI、NotIで消化後、フ ェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行った。得られた沈殿を10μl のTEバッファーに溶解後、同様に制限酵素消化しアルカリホスファターゼ(仔ウ シ腸、ベーリンガー・マンハイム社製)処理した発現ベクターpEF18Sにサブクロ ーニングした(宿主菌は東洋紡績社製コンピテント・ハイE.coli JM109を使用) 。得られた形質転換体からプラスミドDNAを調製した。方法は本質的にMolecular Cloning[Sambookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載さ れているようにして実施した。精製したプラスミドDNAについてはTaq Dye DeoxyTM Terminater Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用 い、アプライドバイオシステムズ社製373ADNAシークエンサーにより塩基配列の 確認を行った。その結果、dH33、A 33’、T33’、dG116、dR117、A116’、G116’、N11 6’をコードするプラスミドは全長にわたり意図した部位以外に塩基配列の置換 がなく予想通りのTPOcDNA配列を持つことを確認した。また、G33’では意図 した部位以外に1カ所のアミノ酸置換をもたらす塩基置換[Pro38(CCT)→Ser(TC T)]が認められた。 得られたそれぞれのクローンのCOS7細胞へのトランスフェクションは、実 施例11に従って行った。すなわちプラスミドDNA10μgを使用し、クロロキン処 理を含むDEAE-デキストラン法を用いたトランスフェクションを行い、4-5日後 に培養上清を回収した。回収した培養上清をM−07eアッセイ系で評価した。 その結果、アミノ酸挿入・欠失誘導体をコードするプラスミドでトランスフェク トしたCOS7細胞培養上清中に、いずれも用量依存的にTPO活性が検出され た(図23参照)。TPO誘導体をコードするcDNAを含まない発現プラスミ ドpEF18SをトランスフェクションしたCOS7細胞培養上清には活性が認 められなかった。 〈実施例69〉抗ヒトTPOペプチド抗体の作製と精製 (1)配列番号191に示されるヒトTPOのアミノ酸配列のうち、比較的抗原 として適していると考えられた6ヵ所の領域(表8に示す)を選び、Tam(Proc .Natl,Acad.Sci.USA,85,5409-5413,1988)の方法により4本鎖のMul tiple Antigen Peptide(MAP)型のペプチドを合成し 、100μgずつ8回にわたってそれぞれウサギ2把に免疫した。 配列番号119〜124に示される各ペプチド領域(これらはそれぞれペプチ ド領域HT1〜6領域と称し、配列番号191の配列の8〜28、47〜62、 108〜126、172〜190、262〜284及び306〜332に相当す る部分ペプチドである)のC末端にシステイン残基を結合させた1本鎖ペプチド を別途合成し、これを試験抗原として酵素免疫測定法を用いて抗体価を調べたと ころ、いずれの血清についても抗体価の上昇が確認されたので、これらを抗血清 とした。 なお、前述のC末端にシステイン残基を結合させた1本鎖合成ペプチドは、後 述(2)の抗血清からのアフィニティ精製の ための抗原としても用いた。 (2)抗体は、1種の抗原ペプチドにつきウサギ2把ずつ免疫したため、それぞ れのウサギごとに抗体を分けて調製した。具体的には、これら由来するウサギの 個体ごとに区別して、抗HT1ペプチド抗体では、それぞれ、抗HT1−1ペプ チド抗体、抗HT1−2ペプチド抗体の様に称する。 以下に抗HT1−1ペプチド抗体についての精製を例として示す。 まず、システイン残基を結合したHT1の1本鎖ペプチド30mgを12ml のSulfoLinkカップリングゲル(Pierce社製、カタログ番号44 895)に結合させた。即ち、ゲル体積の6倍容のカップリングバッファー(50 mM Tris、5mM EDTA-Na pH8.5)で平衡化したゲルに、抗原の含まれるペプチド溶 液を15分間カップリングさせる。次に30分間静置した後、ゲル体積の3倍容のカ ップリングバッファーでゲルを洗浄する。次に0.05M L-Cystein-HClを含むカッ プリングバッファーを、1ml/mlゲルの割合で添加し、15分間未反応基をブロッ クする。次に30分間静置した後、ゲル体積の8倍容のカップリングバッファーで ゲルを洗浄する。以上のカップリング は室温で行った。このようにして、抗原領域を含むペプチドをカップリング効率 28.3%にてゲルに共有結合させ、1mlゲル当たりに結合したペプチドが0 .8mgである抗原ペプチド抗原カラムを調製した。次に、全採血後の抗HT1 −1ペプチド抗体を含む抗血清78.4mlのうち76.7ml(蛋白質量36 20mg)を予め150mMのNaCl、0.05%アジ化ナトリウムを含む5 0mMリン酸緩衝液(pH8)で平衡化した抗原カラムに添加し、さらに同緩衝 液で洗浄後105.9mlの素通り画分(蛋白質量3680mg)を得た。次に 0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で吸着画分を溶出し、ただちに21.1 mlの0.1M炭酸緩衝液(pH9.9)を加えて中和後、限外濾過(アミコン 社製YM30膜)にて濃縮し、11.2ml(蛋白質量77.7mg)の150 mMのNaCl、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(p H8)の溶液中に精製された抗HT1−1ペプチド抗体を得ることができた。同 様にして、抗HT1−2ペプチド抗体(60.0mg)、抗HT2−1ペプチド 抗体(18.8mg)、抗HT2−2ペプチド抗体(8.2mg)などを得るこ とができた。 抗HT3〜6ペプチド抗体も同様にして得ることができる。 〈実施例70〉ウエスターン分析によるTPOの検出 (1)実施例69で得られた抗血清の評価をするために、以下のような試験を行 った。 配列番号6のアミノ酸配列−21〜332をコードする遺伝子を導入・発現さ せたCHO細胞の培養上清から部分精製された組換えヒトTPO標品を常法に従 い、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)にかけ、次いで PVDFあるいは、ニトロセルロース膜にエレクトロブロティングした。ブロッ ティング後の膜を20mM Tris-HCl、0.5M NaCl(pH7.5)(TBS)で5分洗浄 し、0.1%Tween 20入りTBS(TTBS)で5分2回洗浄後、ブロッキング剤 (BlockAce、大日本製薬社製、カタログ番号UK−B25)で60分処理した。抗 HT1−1ペプチド抗体、抗HT2−1ペプチド抗体、抗HT3−2ペプチド抗 体、抗HT4−1ペプチド抗体、抗HT5−2ペプチド抗体、抗HT6−1ペプ チド抗体を含む抗血清を、それぞれ0.05%BSA、10%BlockAceを含むTTBS溶 液で1000倍希釈した抗体を一次抗体として用いてウェスタン分析を 行った。即ち、抗TPOペプチド抗体、0.05%BSA、10%BlockAceを含むTTB S溶液で60分後処理後、TTBSで5分間洗浄した。次に抗ウサギF(ab′) ヤギビオチン化抗体(CALTAG社製,カタログ番号L43015)、0.05%BSA、10%Blo ckAceを含むTTBS溶液を二次抗体として60分処理後、TTBSで5分2回洗 浄した。次にアルカリフォスファターゼ標識アビジン(Leinco Technologies社 製、カタログ番号A108)を10%BlockAce、TTBS溶液で5000倍希釈したも のを含む溶液で30分処理し、5分2回のTTBS洗浄、5分間のTBS洗浄を 行った後、アルカリフォスファターゼ基質(Bio-Rad社製、カタログ番号170 643 2)により発色させた。以上のウエスタン分析は室温にて実施した。その結果、 それぞれの抗血清により、ヒトTPOが認識、検出されることが確認できた。 (2)実施例69でアフィニティ精製した抗HT1−1ペプチド抗体、抗HT1 −2ペプチド抗体、抗HT2−1ペプチド抗体、抗HT2−2ペプチド抗体をそ れぞれ3mgをとり活性型ビオチン(NHS-LC-Biotin II、PIERCE社製、カタログ番 号21336)とカップリングすることにより、ビオチン化した。上記(1)の組換 えヒトTPO標品をSDS−PAGEにかけ、次いで PVDFあるいは、ニトロセルロース膜にエレクトロブロティングし、常法によ りこれらのビオチン化抗体を一次抗体として用いてウェスタン分析を行った。即 ち、ブロッティング後の膜をTBSで5分洗浄し、TTBSで5分2回洗浄後、 ブロッキング剤(BlockAce)で60分処理した。次に1μg/mlの濃度のビオチン 化抗TPOペプチド抗体、0.05%BSA、10%BlockAceを含むTTBS溶液で60分 後処理後、TTBSで5分2回洗浄した。次にアルカリフォスファターゼ標識ア ビジン(Leinco Technologies社製、カタログ番号A108)を10%BlockAce、TT BS溶液で5000倍希釈したものを含む溶液で30分処理し、5分2回のTT BS洗浄、5分間のTBS洗浄を行った後、アルカリフォスファターゼ基質(Bi o-Rad社製、カタログ番号170 6432)により発色させた。以上のウエスタン分析 は室温にて実施した。その結果、それぞれの精製された抗体により、ヒトTPO が認識、検出されることが確認できた。 〈実施例71〉抗TPOペプチド抗体カラムの調製とヒトTPOの検出 実施例69で得られた抗ヒトTPOペプチド抗体は、ヒトTPOを認識するこ とが確認されたため、これらを以下のよう にして、クロマトグラフィー担体に結合させ、抗TPOペプチド抗体カラムを作 製した。以下、抗HT1−2ペプチド抗体で実施した例を示す。 (1)抗体を5mg/mlの濃度で含む50mM Na Phosphate,0.15M NaCl(pH8.0)の溶 液とし、これを0.8mlとり、1.54m体積の膨潤したホルミル活性化ゲル(Formyl-C ellulofine、チッソ株式会社製)と合わせ、4℃で2時間カップリング反応させ た。次いで、10mg/mlの濃度の還元剤溶液(Trimethylamine borane(TMAB)、生 化学工業製、カタログ番号680246)を1.1ml加え、さらに4時間カップリング反 応させた後、遠心分離によりゲル部分のみを回収した。これに10mlの精製水を加 え、遠心分離でゲル部分のみの回収といった操作を4回繰り返し、未反応の抗体 を取り除いた。次に3.1mlのブロッキング緩衝液(0.2M NaPhosphate,1M ethano l amine(pH7.0))と1.1mlの還元剤溶液を加え、4℃で2時間以上処理するこ とにより、未反応のゲルの活性基をブロックした。最後にゲルを遠心分離を用い て精製水、20mM Tris-HCl、0.15M NaCl(pH8.0)で洗浄し、小カラムチューブに 充填し、3Mチオシアン酸ナトリウム溶液、0.1Mグリシン-HCl(pH2.5)溶液で洗 浄後、再度20mM Tris-HCl、0.15 M NaCl(pH8.0)で再平衡化して保存した。 抗HT1−2抗体カラムの抗TPOペプチド抗体ゲルでは、各IgG画分のカ ップリング効率は94.2%、に達した。また、ゲル体積当たりにカップリング したIgG画分量は、1.9mg/mlゲル、であった。同様に、TPOを抗原 としないIgGを1mlゲル当たり21.8mg結合させたゲルを調製し、これを(2 )に述べるように、TPO抗体カラムの非特異的結合分子の除去を目的としたプレ カラム(以下プレ抗体カラムと称す)として用いた。 (2)以下に抗HT1−2抗体カラムでの別の例を説明する。 配列番号119〜124のアミノ酸配列をコードする遺伝子を導入・発現させ たCHO細胞の培養上清から部分精製された組換えヒトTPO標品を(1)で調 製したプレ抗体カラム(1mlゲル)に添加し、この後ゲル体積の10倍容の20 mM Tris-HCl pH8.0、0.15MNaClで素通り画分を集めた。次にゲル体積の10倍 容の酸性溶離液(0.1M Glycine-HCl(pH2.5))でプレ抗体カラム吸着画分を溶 出させた。次にプレ抗体カラム素通り画分を(1)で調製した抗HT1−2抗体 カラム(2mlゲル)に添加後、ゲル体積の10倍容の20mM Tr1s-HCl pH8.0、0 ,15 M NaClで洗浄し、抗HT1−2抗体カラム素通り画分を集めた。次にゲル体積の 8倍容の酸性溶離液(0.1M Glycine-HCl(pH2.5))で抗HT1−2抗体カラム吸 着画分を溶出させた。SDS−PAGEでこれらの画分を調べたところ、TPO はプレ抗体カラムには吸着することがなく、かつ抗HT1−2抗体カラムには特 異的に結合し、添加標品中のほとんどすべてのTPOが結合したことが判明した ので、1mlゲル当たり少なくとも200〜300μgのTPOが結合したことが 確認できた。 〈実施例72〉TPOによる血小板増加作用 あらかじめ眼窩静脈より採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、 F-800)にて血小板数を測定した正常な8週齢のICR系雄性マウス20匹を無作為 に4群に分けた。そのうちの1群(コントロール−iv群)には100μlのPBSを1 日1回5日間連続で静脈内に投与し、他の1群(TPO−iv群)には実施例56 で得られたSP Sepharose Fast FlowのヒトTPO活性画分F2の濃縮液をNAP-25カ ラム(ファルマシア・バイオテク社製、カタログ番号17-0852-02)でPBSに置換 し、さらにPBSで希釈したもののうち100μl(M−07eアッセイ 系での相対活性量211,900を含む)を1日1回5日間連続で静脈内に投与した。 また、別の1群(コントロール−sc群)には100μlのPBSを1日1回5日間連続 で皮下に投与し、他の1群(TPO−sc群)にはTPO-iv群と同様に100μlを 1日1回5日間連続で皮下に投与した。投与開始後6、8、10、13、15日 目にそれぞれのマウスの眼窩静脈より経日的に採血し、マイクロセルカウンター (東亜医用電子製、F-800)にて血小板数を測定した。血小板数の推移を図24 に示した。すなわち、コントロール−iv群では血小板数は最も増加した6日目( 0日目は投与した日である)においても投与前と比較して44%の増加であり、コ ントロール−sc群では最も増加した8日目において47%増加が観察されたにすぎ なかった。その一方で、TPO−iv群では6日目には投与前と比較して177%の 増加がみられ、その後も増加を続け10日目には469%という最大の増加が観察さ れた。また、TPO−sc群では6日目にすでに347%の増加が見られ、8日後に は最大の493%の増加が観察された。 以上の結果より、ヒトTPOは種差、投与ルートに関係なく血小板の増加作用を 有することが確認された。 〈実施例73〉TPOによる血小板増加作用 あらかじめ眼窩静脈より採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、 F-800)にて血小板数を測定した正常な11週齢のC3H/HeJ系雄性マウス16匹を無 作為に4群に分けた。そのうちの1群(コントロール群)には100μlのPBSを1 日1回5日間連続で皮下に投与した。他の1群(TPO−1群)には実施例56 で得られたSephacryl S-200HRのヒトTPO活性画分をNAP-25でPBSに置換し、さ らにPBSで希釈したもののうち100μl(M−07eアッセイ系での相対活性量83, 000を含む)を1日1回5日間連続で皮下に投与した。別の1群(TPO−2群 )にはTPO−1群で投与したTPO活性画分をさらにPBSで2倍に希釈したも ののうち100μl(M−07eアッセイ系での相対活性量41,500を含む)を1日1 回5日間連続で皮下に投与した。また最後の1群(TPO−3群)にはTPO− 2群で投与したTPO活性画分をさらにPBSで2倍に希釈したもののうち100μl (M−07eアッセイ系での相対活性量20,750を含む)を1日1回5日間連続で 皮下に投与した。 投与開始後6、8、10、12日目にそれぞれのマウスの眼窩静脈より経日的 に採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、F-800)にて血小板数を 測定した。 血小板数の推移を図25に示した。すなわち、コントロール群では血小板数に ほとんど変動が見られなかった。TPO投与群では、いずれの群においても投与 開始8日目に最大となるような血小板数の増加が認められた。また、各投与群の 間には用量依存性が認められた。すなわち、TPO−1群では、6日目に既に約 200%の増加が見られ、8日目には約270%にまで増加した。その後減少したが、 12日目においても約65の増加が見られコントロール群との間に有意差(p<0.01 :ダネットの多重比較検定:Dunnet multiple comparison test)が認められた 。TPO−2群においても同様に増加が見られたが、増加作用はTPO−1群に は及ばないものの6、8日目にはそれぞれ約140%、約160%の増加を認めた。ま た、12日目にはコントロール群とほぼ同様のレベルにまで減少した。TPO− 3群における増加作用はTPO−2群よりもさらに弱かったが、最高値に達した 8日目には約110%の増加が見られており、コントロール群との間に有意差(p<0 .01)も認められた。 以上の結果より、ヒトTPOは、マウスの系統に関係なく血小板数を増加させ ること、またその作用には用量依存性があることが確認された。 〈実施例74〉TPOによる制がん剤投与による血小板減少症阻止効果 8週齢のICR雄性マウス30匹に5-FUを200mg/kg体重の割合で静脈内投与した後 、無作為に各々15匹の2群に分け、その翌日(Day 1)より一方の群(コントロ ール群)には100μlのPBSを1日1回5日間連続で皮下に投与した。またもう 一方の群(TPO群)には、実施例72で用いたヒトTPO活性画分100μl(M −07eアッセイ系での相対活性量211,900を含む)を1日1回5日間連続で皮 下に投与した。 投与開始後Day4、6、8にそれぞれの群より各々5匹のマウスを無作為に抽 出し、眼窩静脈より採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、E-2500 )にて血小板数を測定した。血小板数の推移を図26に示した。すなわち、コン トロール群では5-FU投与後血小板数は経日的に減少し、Day6には最低値(5-FU 投与前値の約28%)に達したが、Day8には減少の反動で約1.3倍にまで増加した 。TPO群においても5-FU投与後血 小板数は経日的に減少し、Day6には最低値(5-FU投与前値の約52%)に達した がDay4と6の血小板数にほとんど差はなく、また、Day6においてはコントロー ル群に比して有意(p<0.05:ダネットの多重比較検定)に高値を維持した。Day 8においては、5-FU投与前値の約200%にまで増加した。 以上の結果より、ヒトTPOには、制がん剤による血小板減少を阻止する効果 があることが確認された。 〈実施例75〉TPOによる血小板減少症治療効果 7週齢のICR雄性マウス36匹に塩酸ニムスチン(ACNU)を50mg/kg体重の割 合で静脈内投与した後、無作為に各々18匹の2群に分け、その翌日(Day 1)よ り一方の群(コントロール群)には200μlのPBSを1日2回連日皮下投与し、ま たもう一方の群(TPO群)には、実施例73で用いたTPO活性画分にPBSで 希釈せずに0.04%の割合でTween-80を添加したもの200μl(M−07eアッセイ 系での相対活性量380,000を含む)を1日2回連日皮下投与した。 投与開始後各々の群でマウスを無作為に3群に分け、それぞれをDay5、12に 採血する群、Day8、14に採血する群そして Day10に採血する群とした。採血は眼窩静脈より行い、マイクロセルカウンター (東亜医用電子製、F-800)にて血小板数を測定した。血小板数の推移を図27 に示した。すなわち、コントロール群ではACNU投与後に血小板数は経日的に 減少し、Day8〜10で最低(各々ACNU投与前値の約29%)となり、Day12に約 49%、Day14に約74%に回復したにすぎなかった。一方TPO群では、Day5には ACNU投与前値の約38%にまで減少した。その後は増加に転じ、ACNU投与 前値に比してDay8では約63%にまで回復し、Day10以降はACNU投与前値以上 の血小板数を示し、Day12では約300%、Day14では約400%にまで増加した。 以上のように、コントロール群では減少の過程にあるDay8〜10において既に TPO群では増加に転じており、Day10で既にACNU投与前値以上の血小板数 まで増加していることから、ヒトTPOは制ガン剤により惹起される血小板減少 からの回復を促進する効果を有することが確認された。 なお、実施例74の結果を併せてもヒトTPOには制ガン剤の種類に関係なく 血小板数の減少を阻止する効果および血小板減少からの回復を促進する効果を有 することが期待される。 〈実施例76〉TPOによるBMT施行後の血小板減少症治療効果 7週齢のC3H/HeN系の雄性マウス48匹に10Gyの放射線を全身照射した後、同系 のマウスの骨髄細胞1×106個を直ちに静脈内投与した。そこで無作為に2群に 分け、翌日(Day 1)より一方の群(コントロール群)にはPBSを、他方の群( TPO群)には実施例73で用いたTPO活性画分(M−07eアッセイ系での 相対活性量44,000を含む)をそれぞれ1日1回100μlずつ20日間連日で皮下投与 した。 投与開始後Day5、10、14、21にそれぞれの群より各々6匹のマウスを無作為 に抽出し、眼窩静脈より採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、E- 2500)にて血小板数を測定した。 血小板数の推移を図28に示した。すなわち、いずれの群においてもBMT施 行後に血小板数は経日的に減少し、Day10に最低(BMT施行前の約3%)とな った。その後は徐々に回復し、Day14にはコントロール群で約11%、TPO群で 約13%となった。Day21にはコントロール群では37%に回復したにすぎなかった が、TPO群では約65%にまで回復し有意な回復促進 効果が認められた。 以上の結果より、実施例56で調製されたヒトTPOには、BMT施行後の血 小板数の回復を促進する効果があることが確認された。 〈実施例77〉TPOによる放射線照射後の血小板減少症治療効果 8週齢のICR系の雄性マウス36匹に5GyのX線を全身照射した後、無作為に2 群に分け、翌日(Day 1)より一方の群(コントロール群)にはPBSを、他方の 群(TPO群)には実施例73で用いたTPO活性画分(M−07eアッセイ系 での相対活性量1,440,000を含む)をそれぞれ1日1回3日間連日で皮下投与し 、翌日よりM−07eアッセイ系での相対活性量360,000を1日1回7日間連日 で皮下投与した。投与開始後各々の群でマウスを無作為に3群に分け、それぞれ をDay4、11、21に採血する群、Day7、13に採血する群そしてDay9、15に採血 する群とした。採血は眼窩静脈より行い、マイクロセルカウンター(東亜医用電 子製、F-800)にて血小板数を測定した。図29に血小板数の推移を示した。す なわち、コントロール群ではX線照射後に血小板数は経日的に減少し、Day9で 最低 (X線照射前値の約25%)となり、Day11に約38%、Day13に約67%に回復し、Da y15にX線照射前値にまで回復した。一方TPO群では、Day7にはX線照射前値 の約24%にまで減少した。その後は増加に転じ、X線照射前値に比してDay9で は約82%にまで回復し、Day11以降はX線照射前値以上の血小板数を示し、Day21 までその傾向は維持された。 以上のように、コントロール群では減少の過程にあるDay9において既にTP O群では増加に転じており、Day11で既にX線照射前値以上の血小板数まで増加 し、その後も高値を維持した。一方、コントロール群ではX線照射前値以上の血 小板数まで回復するために15日を要している。この結果より、実施例56で産生 されたヒトTPOは放射線照射後の血小板減少からの回復期間を短縮することが 認められ、放射線照射後の血小板減少症治療効果が認められた。 〈実施例78〉hTPO163による血小板増加作用 あらかじめ眼窩静脈より採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、 F-800)にて血小板数を測定した正常なC3H/HeN系雄性マウス15匹を無作為に4 群(コントロール群、 A,B,C群)に分けた。1群(コントロール群)には0.1%のマウス血清を 含むPBSを1日1回5日間連続で皮下に投与した。A群には、実施例65で得ら れたSP Sepharose Fast FlowのTPO活性画分を0.1%のマウス血清を含むPB Sで希釈しhTPO163を1日あたり、M−07eアッセイ系での相対活性量とし て約40,000,000/kg体重、B群には同様にM−07eアッセイ系での相対活性量 として約8,000,000/kg体重、そしてC群にも同様にM−07eアッセイ系として の相対活性量として約1,600,000/kg体重の割合で5日間連続で皮下に投与した。 投与開始後6、8、10、12日目にそれぞれのマウスの眼窩静脈より経日的 に採血し、マイクロセルカウンター(東亜医用電子製、F-800)にて血小板数を 測定した。血小板数の推移を図30に示した。 すなわち、コントロール群では血小板数にほとんど変動が見られなかった。T PO投与群では、いずれの群においても投与開始8日目に最大となるような血小 板数の増加が認められた。また、各投与群の間には用量依存性が認められた。す なわち、A群では、6日目に約88%、8日目に約100%の増加が見られ、 10日目においても約97%の増加を維持し、いずれもコントロール群との間に有 意差(p<0.01:ダネットの多重比較検定)が認められた。B群においても同様に 増加が見られたが、増加作用はA群には及ばないものの6、8日目にはそれぞれ 約65%、約84%の増加を認め、コントロール群との間に有意差(p<0.01もしくは p<0.05:ダネットの多重比較検定)が認められた。C群における増加作用はB群 よりもさらに弱かったが、最高値に達した8日目には約31%の増加が見られた。 以上の結果より、実施例65で産生されたhTPO163には、血小板数を増加き せること、またその作用には用量依存性があることが確認された。 〈実施例79〉hTPO163による血小板減少症治療効果 8週齢のC3H/HeN雄性マウス100匹に塩酸ニムスチン(ACNU)を50mg/kg体 重の割合で静脈内投与した後、無作為に各々25匹の4群(コントロール,A,B ,C群)に分け、その翌日(Day 1)よりコントロール群にはPBSを5ml/kg体重 の割合で1日1回連日皮下投与し、A群には実施例65で得られたSP Sepharose Fast FlowのTPO活性画分をPBSで 希釈し、hTPO163をM−07eアッセイ系における相対活性量として約16,000 ,000/kg体重の割合で1日1回連日皮下投与した。B群には同様にM−07eア ッセイ系における相対活性量として約48,000,000/kg体重の割合で、またC群に はM−07eアッセイ系における相対活性量として約160,000,000/kg体重の割合 で1日1回連日皮下投与した。 投与開始後各々の群でマウスを無作為に5群に分け、それぞれをDay5、8、1 0、12そして14に採血した。採血は眼窩静脈より行い、マイクロセルカウンター (東亜医用電子製、E-2500)にて血小板数を測定した。血小板数の推移を図31 に示した。 すなわち、コントロール群ではACNU投与後に血小板数は経日的に減少し、 Day8〜10で最低(ACNU投与前値の約15〜16%)となり、Day12に約28%、Da y14に約51%に回復したにすぎなかった。一方A群では、Day8にはACNU投与 前値の約25%にまで減少したが、その後は増加に転じ、Day10には約34%に、Day 12には約89%に、そしてDay14にはACNU投与前値以上にまで回復した。 以上のように、いずれの群においても血小板数の最低値はDay8に観察された が、ヒトTPO投与群ではコントロール群 に比して減少が緩やかであり、最低値の底上げが見られた。また、コントロール 群ではDay10においても血小板数の回復はほとんど見られなかったが、ヒトTP O投与群ではDay10には程度の差はあるが全ての群で血小板数の回復が観察され 、50μg/kg投与群ではDay12にはすでにACNU投与前置以上にまで回復した。 コントロール群ではDay14においてもACNU投与前置の約51%に回復したにす ぎなかったことと比較すると、実施例65で生産されたhTPO163は、血小板減 少からの回復を促進する効果を有することが明らかとなった。以上、hTPO163 は制ガン剤により惹起される血小板減少症に対する治療効果が認められた。 以下、製剤例を示す。 〈実施例80〉 実施例56で得られたヒトTPO画分を濃縮し、無菌処理した後−20℃で凍 結された凍結物を用いて注射剤とした。 〈実施例81〉 実施例56で得られたヒトTPO画分を濃縮し、これを無菌操作で10mlバ イアル瓶に5ml充填し、−20℃で凍結乾燥後、ゴム栓に施栓した凍結乾燥物 を用いて注射剤とした。 〈実施例82〉 実施例56で得られたヒトTPO画分を濃縮し、これを無菌濾過した後10m lバイアル瓶に充填し注射剤とした。 〈実施例83〉 実施例65で得られたhTPO163画分を濃縮し、これを無菌処理した後−20 ℃で凍結された凍結物を用いて注射剤とした。 〈実施例84〉 実施例56で得られたhTPO163画分を濃縮し、これを無菌操作で10mlバ イアル瓶に5ml充填し、−20℃で凍結乾燥後、ゴム栓に施栓した凍結乾燥物 を用いて注射剤とした。 〈実施例85〉 実施例65で得られたhTPO163画分を濃縮し、これを無菌濾過した後10m lバイアル瓶に充填し注射剤とした。 〈実施例86〉 実施例57で得られたヒトTPO画分を濃縮し、これを無菌処理した後−20 ℃で凍結された凍結物を用いて注射剤とした。 〈実施例87〉 実施例57で得られたヒトTPO画分を濃縮し、これを無菌操作で10mlバ イアル瓶に5ml充填し、−20℃で凍結乾 燥後、ゴム栓に施栓した凍結乾燥物を用いて注射剤とした。 〈実施例88〉 実施例57で得られたヒトTPO画分を濃縮し、これを無菌濾過した後10m lバイアル瓶に充填し注射剤とした。 〈実施例89〉再生不良性イヌ血漿 Mazur,E.とSouth,K.,Exp.Hematol.13:1164-1172(1985)、Arriaga,M. ,South K.,Cohen J.L.及びMazur,E.M.,Blood 69:486-492(1987)、Mazur ,E.,Basilico,D.,Newton,J.L.,Cohen,J.L.,Charland,C.,Sohl,P. A.及びNarendran,A.,Blood 76:1771-1782(1990)の記載に準じて、但し総線量 450ラドの照射を施すことによってヘパリン処理再生不良性イヌ血漿(「APK 9」)又は正常イヌ血漿(「NK9」)を調製した。 〈実施例90〉ヒト巨核球アッセイ 下記の実施例に記載の多くの手順又は適切な代替手順に関する標準方法は、広 く認知されている分子生物学マニュアル、例えばSambrookら編、Molecular Clon ing、2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1987)及びAusubelら編、Currenl Protocols in Molec uler Biology, Green associates/Wiley Interscieuce,New York(1990)に提供 されている。 APK9及び分画APK9を、CD34+前駆細胞からのヒト巨核球の発生を刺 激する能力について、アッセイした。CD34選択細胞は、Hokom,M.H.,Choi, E.,Nichol,J.L.,Hornkohl,A.,Arakawa,T.及びHunt,P.,Molecular Bio logy of Haematopoiesis 3:15-31,1994の記載に準じて末梢血から得て、1% G lutamine Pen-strep(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)と10%ヘパリン処理ヒ トAB血漿(血小板数少ない)を補充したIscoveの改良Dulbecco培地(IMDM;GI BCO,Grand Island,NY)中でインキュベートした。この培地中にはさらに、2 −メルカプトエタノール(10-4M)、ピルビン酸(110μg/ml)、コレステロー ル(7.8μg/ml)、アデノシン、グアニン、シチジン、ウリジン、チミジン、2 −デオキシシトシン、2−デオキシアデノシン、2−デオキシグアノシン(各10 μg/ml、Sigma)、ヒト組換えインスリン(10μg/ml)、ヒトトランスフェリ ン(300μg/ml)、ダイズ脂質(1%、Boehringer Mannheim,Indianapolis,I N)、ヒト組換え塩基 性線維芽細胞増殖因子(2ng/ml、Genzyme,Cambridge,MA)、ヒト組換え上皮 細胞成長因子(15ng/ml)、血小板由来増殖因子(10ng/ml、Amgen,Inc.,Tho usand Oaks,CA)を含有させた。CD34選択細胞を、Terasaki式マイクロタイタ ープレート(Vanguard,Inc.,Neptune,NJ)のウェル中に培地1mlあたり2×1 05細胞、最終容量15μlとなるように入れた。細胞を37℃8日間5%CO2含有空 気の存在下加湿箱中でインキュベートし、1%グルタルアルデヒドを用いて培養 ウェルに直接固定し、モノクローナル抗体カクテル(抗GPIb、抗GPIIB( Boidesign)及び抗GPIb(Dako,Carpinteria,CA))と一緒にインキュベー トした。免疫反応は、ストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ検出系(Hist o Mark,Kirgegaard及びPerry)を用いて発色させた。青色(blue color)によ って識別される巨核球を、逆相顕微鏡下、倍率×100で計数した。結果は、ウェ ルあたりの巨核球平均数±平均標準誤差(SEM)で示した。ある場合には、デ ータは「巨核球ユニット/ml」で表わされ、この場合、ある与えられたサンプル が巨核球発生を誘起する度合がこの実験の陽性APK9コントロールに対して標 準化された。1ユニットは、APK9標準1μlと同数の巨 核球を生じさせる物質の量として定義される。活性は、5〜10μg/ml MPL −X(可溶性Mpl受容体)でブロックされうる場合、MPLリガンドによるも のとして受入れられた。 APK9は、この系でヒト巨核球発生を刺激する因子を含むことが実証されて いる。CD34選択細胞を10%NK9と8日間インキュベートすると、青色染色さ れた巨核球をほとんど示さないが、該細胞を10%APK9と一緒にインキュベー トすると青色染色巨核球が極めて多数認められた。 図32から、ヒト巨核球培養系に添加するMpl−Xの濃度を上げていくと、巨 核球の発生が増々ブロックされることが判る。5μg/ml以上のMpl−X濃度 では、完全な阻害が起こる。この実験では、CD34選択細胞は5%APK9で刺 激を受けたが、これは、Mpl−X(多分Mplリガンド)と相互作用する活性 がヒト巨核球発生に必要であることを示すと共に、MplリガンドがAPK9自 体に存在していることを示している。 さらに、この実験から、ヒト巨核球発生に必要なMplリガンド活性がAPK 9中に存在することが立証された。APK9(135ml)をIscove培地で6倍に希 釈し、Mpl−Xアフィニティカラムに載せた。素通りする未結合物質を集めて 、アッ セイ前の元の容量まで濃縮した。結合物質は10mlの1M NaCl中に溶出し、そのプ ールの20%を透析ろ過し、アッセイのため4倍に濃縮した。培地単独でインキュ ベートしたCD34選択細胞では、巨核球への発生がみられなかった。5%APK 9(カラムに載置したのと同じプール)中でインキュベートした細胞は、ウェル あたり48±8個の巨核球の発生がみられた。10%の未結合物質中でインキュベー トした細胞では巨核球の発生はみられなかった。10%の前記溶出プール中でイン キュベートした細胞はウェルあたり 120±44個の巨核球細胞を発生させた。カ ラムロード(column load)、溶出プールの活性のいずれもこのアッセイにおい て5μg/ml Mpl−Xにより実質的に完全に阻害された。 〈実施例91〉マウス又はヒトMpl受容体のマウス細胞系へのトランスフェクション A.マウスMpl受容体 完全長のマウスMpl受容体cDNAを、モロニーマウスザルコーマウィルス のLTR由来の転写プロモーターを含有する発現ベクター中にサブクローニング した。この組換え体5μgと選択マーカープラスミドpWLNeo(Stratagene )1μg を、IL3依存性マウス細胞株(32D,クローン23;(Greenbergerら,PNAS80 :2931-2936(1983))中にコエレクトロポレート(co-electroporate)した。細 胞を5日間培養し回収後、800μg/ml Geneticin(G418,Sigma)と1ng/mlマ ウスIL−3を含有する選択培地中でインキュベートした。次いで、生存する細 胞を2×105細胞からなるプールに分割し、分析可能な細胞集団に増殖するまで 培養を実施した。6個の細胞集団についてポリクローナルウサギ抗ペプチド血清 を用いるFACS分析によりMpl受容体の細胞表面発現を調べた。先と同様の 抗ペプチド血清を用いるFACSによる分類のために1つの細胞集団を選択した 。親細胞株の単一細胞クローンを10%APK9及びGeneticin中での増殖によっ て選抜した。35日間APK9中で選択後、細胞を1ng/mlマウスIL−3中に維 持した。サブクローンのうち1個(1A6.1)を今回の試験に使用した。 B.ヒトMpl受容体 完全長のヒトMpl受容体配列(Vigon,I.ら、PNAS 89:5640-5644(1992)) を、モロニーマウスザルコーマウイルスの転写プロモーターを含有する発現ベク ター(マウス受容体におけるのと同一のベクター)中にサブクローニングした。 この組換 え体6μgとアンフォトロフィック レトロウィルス パッケージングコンスト ラクト(amphotrophic retroviral packaging construct)(Landan,N.R.とL itiman,D.R.,J.Virology66:5110-5113(1992))6μgを、CaPO4哺乳動 物トランスフェクションキット(Stratagene社製)を用いて3×106個の293細胞 中にトランスフェクトした。この同じ細胞を2日後、また4日後に再びトランス フェクトした。最後のトランスフェクションの翌日に、293細胞をIL−3依存 性マウス細胞株(32D,クローン23;Greenbergerら、PNAS 80:2931-2936(1983 ))と一緒に培養した。24時間後、32D細胞を取り出し、BSAグラジェント(P ath-o-cyte;Mills Inc.)によって分離した。細胞を、1ng/mlマウスIL−3 中で増やし、20%APK9中での増殖によって選抜した。ポリクローナルウサギ 抗ペプチド血清を用いるFACSによって、受容体を細胞表面に発現している細 胞を選抜した。これらの細胞は、アッセイに使用された。 〈実施例92〉Mplリガンドの1A6.1アッセイ 1A6.1細胞を培養液中のIL−3を除くために洗浄し、Terasaki式マイク ロタイタープレート中、10%牛胎仔血清 (FCS)、Geneticin(800μg/ml)及び1%pen/strep(Gibco)を含むたα −MEM(Gibco)中に1ウェルあたり、15μl、1000個の細胞となるように入れ 、テストサンプルを2倍希釈を繰り返して添加した。48時間後、ウェルあたりの 生存細胞数を光顕的に測定した。1ユニットの活性は、ウェルあたり200個の生 存細胞を生じさせる活性量として定義された。活性がアッセイの間に5〜10μg/ ml Mpl−Xを含むことによって完全にブロックされうる場合には、該活性は Mplリガンドによるものであるとして定義された。APK9中のMplリガン ド活性は、再生不良性血漿1mlあたり平均4400±539ユニットであった。特に断 わらない限り、Mplリガンド活性のユニットは1A6.1アッセイにおける定 義とする。 ヒトMpl受容体遺伝子でトランスフェクトされた細胞を用いたアッセイは、 1A6.1細胞におけるのと実質的に同一の方法で行なわれた。 〈実施例93〉Mplリガンドが、マウス、イヌ、ブタ及びヒト由来の再生不良性血漿又は血清 中に存在することの証明 Mplリガンドは、マウス、イヌ、ブタ及びヒト由来の再生不良性血漿又は血 清中に存在する(表9)。血漿は、照射前及 び12日間照射(500ラド)後のBDF1マウスから集められた。血漿を1A6. 1アッセイでテストした結果、2000ユニット/ml活性の存在が証明され、この活 性はMpl−X(10μg/ml)で実質的に完全に阻害された。照射マウス血漿は また、ヒト巨核球アッセイで陽性であり、1833ユニット/mlの活性を示した。次 に、照射前及び10日間照射(450ラド)後のイヌから血漿を集めた。1A6.1 アッセイ及びヒト巨核球アッセイの両方で血漿をテストし、活性を検出すると共 に、該活性は両アッセイにおいてMpl−X(10μg/ml)で完全に阻害された 。次に、照射前及び10日間照射(650ラド)後のブタから血漿を集めた。1A6 .1アッセイ及びヒト巨核球アッセイの両方で血漿をテストした。両アッセイで 、Mplリガンド活性(10μg/ml Mpl−Xで阻害可能)を示し、これは再 生不良性イヌ血漿で見出された活性に相当していた。再生不良性ヒトから血清を 得たが、この材料は骨髄移植患者から集められた。6人の患者からの血清を、1 A6.1アッセイで分析したところ、903ユニット/mlの活性を示し、その88% がMplリガンドに起因するものであった(10μg/ml Mpl−Xで阻害可能 )。14人の再生不良性患者由来の血清をさらに、ヒト巨核球アッセイでテストし た。該血清は、941megユニット/mlの実質的活性 を示し、これは10μg/ml Mpl−Xで完全に阻害された。マウスIL−3に する関するデータは、1A6.1アッセイの特異性を実証するために包含される 。この組換えサイトカインは該細胞系の増殖を誘発するが、10μg/ml Mpl −Xによってブロックされない。 〈実施例94〉ヒトTPO誘導体の大腸菌における作製 大腸菌で発現されるTPOの生物活性、安定性、および溶解性の向上を試みて 、TPO誘導体を設計した。作製した誘導体は、配列番号11のLeu129のArg置 換体([Met-2,Lys-1,Ala1,Val3,Arg129]TPO(1-163) 、L129R)、His133のArg置換体([Met-2,Lys-1,Ala1,Val3 ,Arg133]TPO(1-163)、H133R)、Met143のArg置換体([Met-2 ,Lys-1,Ala1,Val3,Arg143]TPO(1-163)、M143R) 、Gly82のLeu置換体([Met-2,Lys-1,Ala1,Val3, Leu82] TPO(1-163)、G82L)、Gly146のLeu置換体([Met-2,Lys-1,A la1,Val3,Leu146]TPO(1-163)、G146L)、Ser148のpro置 換体([Met-2,Lys-1,Ala1,Val3,Pro148]TPO(1-163) 、S148P)、Lys59のArg置換体([Met-2,Lys-1,Ala1,Val3 ,Arg59]TPO(1-163)、K59R)およびGln115のArg置換体([Met-2 ,Lys-1,Ala1, Val3,Arg115]TPO(1-163)、Q115R)である。 TPO誘導体作製のための鋳型としては、実施例42に記載のh6T(1-163 )を用い、以下に示すオリゴDNAを合成した。 L129R;5′-ATCTTC CGT TCTTTCCAGCACCT-3′(配列番号11のLeu129のArg置 換体作製用) H133R;5′-TCTTTCCAGCGT CTGCTGCGT-3′(配列番号11のHis133のArg置換体 作製用) M143R;5′-CGTTTCCTGCGT CTGGTTGGC-3′(配列番号11のMet143のArg置換体 作製用) G82L;5′-GGCCAGCTTCTG CCGACCTGCCT-3′(配列番号11のGly82のLeu置換体 作製用) G146L;5′-ATGCTGGTTCTG GGTTCTACCCT-3′(配列番号11のGly146のLeu置換 体作製用) S148P;5′-GTTGGCGGTCCG ACCCTGTGCG-3′(配列番号11のSer148のPro置換 体作製用) K59R;5′-GAAGAGACCCGC GCTCAGGACATCC-3′(配列番号11のLys59のArg置換 体作製用) Q115R;5′-CTGCCGCCACGT GGCCGTACCAC-3'′配列番号11のGln115のArg置換 体作製用) 以下に示す変異プラスミドはすべてSculptorインビトロミュータジェネシスキ ット(Amersham社製)を用いて作製した。実施例42に記載のプラスミドpCFM53 6/h6T(1-163)から得られるXba I-Hind III断片をBluescript II SK(-)(東洋紡 績社製)のXba I-Hind III切断部位間に挿入して、プラスミドpSKTPOを作製した 。プラスミドpSKTPOは大腸菌JM109に保持させた。ヘルパーファージM13KO7(宝 酒造社製)を用いてpSKTPOから一本鎖DNAを調製し、上記の変異用合成オリゴDNA を用いて、キットに添付のプロトコールに従い、TPO遺伝子に変異を導入した 。供給者のプロトコールに従ってDNA配列決定キット(Applied Biosystems,USA )を用いて配列分析を行ない、TPOが変異を受けていることを確認した。 上記で作製したすべてのpSKTPOの誘導体よりXba I-Hind III断片を抽出し、プ ラスミドpCFM536のXba I-Hind III切断部位間に挿入した後、大腸菌261に形質転 換し、目的とするTPO誘導体遺伝子を発現させる形質転換体を得た。 変異体pCFM536で形質転換された大腸菌#261の培養は、実施例43に従っ て実施した。形質転換体の細胞ペレットを集め、少なくとも1日間冷凍庫中に保 存した。得られた凍結菌 体(約3g)に、10 mM EDTA、10 mM DTT、1mM PMSFを含む20mMトリス緩衝液( pH8.5)を約30mL加え、懸濁した後、氷冷下1分間の間隔をおいて1分間のソニ ケーション(超音波破砕機を使用)を5回行なった。破砕した菌体を15000rpmで 10分間遠心し、ペレットを集めた。 このペレットに、8Mグアニジン塩酸塩、5mM EDTA、1mM PMSFを含む10mMト リス緩衝液(pH8.7)約30mLを加えて懸濁し、さらに約50mgのDTTを加え、室温に て1〜1.5時間攪拌し、蛋白質試料を還元した。還元後、希塩酸溶液を用いて試 料のpHを5に調整し、希釈前4℃に放置した。 還元した蛋白質試料を、30%グリセロール、3M尿素、3mMシスタミン、1mM L -システインを含む10mM CAPS緩衝液(pH10.5、約1.5L)に対して希釈した。希 釈は、一晩かけて実施した。希釈後の試料溶液を少なくとも2日間攪拌し、8000 rpmで45分間遠心し、不溶物を除去した。遠心後の上澄みを6Mリン酸を用いて pH6.8に調整し、イオン交換水で2倍に希釈した後、不溶物をフィルターペーパ ー(東洋濾紙製、#2、直径90mm)2枚を用いてろ過した。ろ液をイオン交換樹脂 (CM-Sepharose fast flow、Pharmacia製)のカラム(2.6x 10cm)に吸着さ せた後、15%グリセロール、1M尿素を含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)約400mLで 洗った後、15%グリセロールを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.2)でカラムを平衡化 した。目的試料の溶出には、15%グリセロールを含む10mMリン酸緩衝液から0.5M 食塩を含む同緩衝液までの直線濃度勾配を用い、流速1mL/minで行なった。カラ ムからの蛋白質の溶出を280nmにおける紫外吸収で追跡し、目的蛋白質を含むフ ラクションをSDS−PAGEで確認し集めた。 このフラクションを遠心濃縮器(Centriprep 10、Amicon社製)を用いて約2m Lに濃縮した後、逆相HPLC(Waters社製)を用いて精製した。この時、カラムに はWaters社製(Bondasphere C4(3.9x150mm)を用い、蛋白質の溶出には、0,05 %TFA水溶液と、70%2-Propanol,30%CH3 CNおよび0.02%TFAを含む液を用い、4 0分間で0.5ml/minの流速で目的蛋白質を溶出させた。TPO誘導体は、この条 件では、いずれも約30分の位置に溶出された。 精製されたTPO誘導体の活性測定を行なうため、精製した誘導体を1Lの10m Mリン酸緩衝液に対して2日間透析した後、遠心濃縮器(Centriprep 10、Amicon 社製)を用いて約0.1mg/ mlまで濃縮し、M−07eアッセイに供した。TPO誘導体は、いずれも対照T POとして用いたh6T(1-163)とほぼ同様の生物活性を示した(図33、図 34参照)。寄託物のリスト Escherichia coli(pHT1-231/DH5): FERM BP-4564及びCCTCC-M95001 Escherichia coli(pEF18S-A2α/DH5): FERM BP-4565及びCCTCC-M95002 Escherichia coli(pHGT1/DH5): FERM BP-4616及びCCTCC-M95003 Escherichia coli(pHTF1/DH5): FERM BP-4617及びCCTCC-M95004 Mouse-Mouse hybridoma P55: FERM BP-4563及びCCTCC-C95001 CHO28/1/1/3-C6: FERM BP-4988及びCCTCC-C95004 CHO163T-63-79-C1: FERM BP-4989及びCCTCC-C95005
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI C07K 16/26 9452−4B C12P 21/02 C C12N 1/21 9281−4B C12N 5/00 B 5/10 9455−4C A61K 37/24 ACA C12P 21/02 9455−4C 37/02 ABY //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:91) (31)優先権主張番号 特願平6−155126 (32)優先日 平6(1994)6月1日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−167328 (32)優先日 平6(1994)6月15日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−193169 (32)優先日 平6(1994)8月17日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−227159 (32)優先日 平6(1994)8月17日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−193916 (32)優先日 平6(1994)8月18日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−304167 (32)優先日 平6(1994)11月1日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−298669 (32)優先日 平6(1994)12月1日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−341200 (32)優先日 平6(1994)12月28日 (33)優先権主張国 日本(JP) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG), AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB ,GE,HU,JP,KE,KG,KR,KZ,LK, LR,LT,LU,LV,MD,MG,MN,MW,M X,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SI,SK,TJ,TT,UA,US,UZ, VN (72)発明者 赤堀 弘典 群馬県高崎市石原町3439―78―2 (72)発明者 黒木 良太 神奈川県横浜市金沢区能見台5―13―20― 2 (72)発明者 清水 敏之 神奈川県横浜市金沢区能見台6―35―6― 101 (72)発明者 武藤 隆則 神奈川県横浜市金沢区寺前2―8―4 金 沢八景寮102

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 血小板産生を特異的に刺激または増強する生物活性を有しかつ配列番号6 のアミノ酸配列1〜332を有するトロンボポエチン(TPO)ポリペプチド又は その誘導体。 2. 配列番号6のアミノ酸配列1〜163からなる請求項1に記載のTPOポリ ペプチド誘導体。 3. 配列番号6のアミノ酸配列1〜232からなる請求項1に記載のTPOポリ ペプチド誘導体。 4. 配列番号6のアミノ酸配列1〜151からなる請求項1に記載のTPOポリ ペプチド誘導体。 5. 1〜6個のアミノ末端アミノ酸が欠失された請求項1、2又は3に記載の TPOポリペプチド誘導体。 6. [ΔHis33]TPO(1-163)、[ΔArg117]TPO(1-163)及び [ΔGly116]TPO(1-163)からなる群から選択される請求項2記載のTP Oポリペプチド誘導体。 7. [His33,Thr33′,Pro34]TPO(1-163)、[His33,A la33′,Pro34]TPO(1-163)、 [His33,Gly33′,Pro34,Ser38]TPO(1-163)、[Gly116 ,Asn116′,Arg117]TPO(1-163)、[Gly116,Ala116′,A rg117]TPO(1-163)、[Gly116,Gly116′,Arg117]TPO(1 -163)及び[Ala1,Val3]TPO(1-163)からなる群から選択される請 求項2に記載のTPOポリペプチド誘導体。 8. [Thr33,Thr333,Ser334,Ile335,Gly336,Tyr337, Pro338,Tyr339,Asp340,Val341,Pro342,Asp343,Tyr344 ,Ala345,Gly346,Val437,His348,His349,His350, His351,His352,His353]TPO及び[Asn25,Lys231,Thr333 ,Ser334,Ile335,Gly336,Tyr337,Pro338,Tyr339,A sp340,Val341,Pro342,Asp343,Tyr344,Ala345,Gly34 6 ,Val347,His348,His349,His350,His351,His352,H is353]TPOからなる群から選択される請求項1に記載のTPOポリペプチ ド誘導体。 9. [Asn25]TPO及び[Thr33]TPOからなる群から選択される請 求項1に記載のTPOポリペプチド誘導体。 10. [Ala1,Val3,Arg129]TPO(1-163)、[Ala1,Val3 ,Arg133]TPO(1-163)、[Ala1,Val3,Arg143]TPO(1-1 63)、[Ala1,Val3,Leu82]TPO(1-163)、[Ala1,Val3 ,Leu146]TPO(1-163)、[Ala1,Val3,Pro148]TPO(1-1 63)、[Ala1,Val3,Arg59]TPO(1-163)及び[Ala1,Val3 ,Arg115]TPO(1-163)からなる群から選択される請求項2に記載のT POポリペプチド誘導体。 11. [Arg129]TPO(1-163)、[Arg133]TPO(1-163)、[Ar g143]TPO(1-163)、[Leu82]TPO(1-163)、[Leu146]TPO (1-163)、[Pro148]TPO(1-163)、[Arg59]TPO(1-163)及び [Arg115]TPO(1-163)からなる群から選択される請求項2に記載のTP Oポリペプチド誘導体。 12. ポリマーに共有結合されている請求項1に記載のTPOポリペプチド。 13. 前記ポリマーがポリエチレングリコールである請求項12に記載のTPOポ リペプチド。 14. さらにアミノ酸Met-2−Lys-1を有する請求項1〜13のいずれかに記 載のTPOポリペプチド。 15. さらにMet-1を有する請求項1〜13のいずれかに記載のTPOポリペプ チド。 16. さらにGly-1を有する請求項1〜13のいずれかに記載のTPOポリペプ チド。 17. 請求項2、4又は6の成熟アミノ酸配列からなるポリペプチド。 18. 請求項1〜11、14、15及び17のいずれかに記載のTPOポリペプチドをコ ードするDNA。 19. 血小板産生を特異的に刺激または増強する生物活性を有するTPOポリペ プチドの発現を確実化するためのDNA配列であって、 (a)配列番号194、195又は196に示されるDNA配列又はその相補鎖; (b)厳格な条件下で(a)のDNA配列又はその断片とハイブリット形成する DNA配列;及び (c)遺伝コードの縮重がなければ(a)及び(b)のDNA配列とハイブリッ ド形成しうるDNA配列 からなる群から選択される前記DNA配列。 20. 請求項19に記載のcDNA配列。 21. 請求項19に記載のゲノムDNA配列。 22. 請求項19に記載の合成DNA配列。 23. TPOポリペプチドの製造方法であって、 a)請求項18、19、20、21又は22に記載のDNAによってコードされるポリペプ チドを適切な宿主中で発現させ、及び b)前記TPOポリペプチドを単離する工程を包含する前記方法。 24. 発現されるTPOポリペプチドがMet-2−Lys-1ポリペプチドであり 、かつ前記単離TPOポリペプチドからMet-2−Lys-1を切断する工程をさ らに含む請求項23に記載の方法。 25. 血小板産生を特異的に刺激または増強する生物活性を有するTPOポリペ プチドの発現を確実化するために使用す るDNA配列であり、TPOポリペプチドコーディング配列のビン認識ペプチド をコードし、また該トロンビン認識ペプチドの5′側にグルタチオン−S−トラ ンスフェラーゼ(GST)をさらにコードすることを特徴とするDNA配列。 26. 配列番号6のアミノ酸配列1〜174からなるTPOポリペプチドの発現を 確実化するために使用する請求項25に記載のDNA配列。 27. 血小板産生を特異的に刺激または増強する生物活性を有するTPOポリペ プチドの製造方法であって、 a)請求項25又は26に記載のDNAによってコードされるポリペプチドを適切な 宿主中で発現し、 b)前記GST−(トロンビン認識ペプチド)−TPOポリペプチドを単離し、 c)単離されたGST−(トロンビン認識ペプチド)−TPOポリペプチドをト ロンビンで処理し、及び d)Gly-1−TPOポリペプチドを単離する 工程を包含する前記方法。 28. Gly-1−TPOポリペプチドが[Gly-1]TPO(1-174)である請 求項27に記載の方法。 29. 単離されたGly-1−TPOポリペプチドが配列番号6のアミノ酸配列1 〜174からなるTPO誘導体である請求項27又は28に記載の方法。 30. 請求項23、24、27、28又は29に記載の方法によって得られるタンパク質生 成物。 31. 血小板産生を特異的に刺激または増強する生物活性を有するポリペプチド の発現を可能にするように、請求項18、19、20、21、22、25又は26に記載のDN A配列で形質転換又はトランスフェクションされた原核又は真核宿主細胞。 32. 請求項1〜16及び30のいずれかに記載の有効量のポリペプチドを、医薬的 に許容可能な担体と組合わせ含有する医薬組成物。 33. 血小板障害の治療に使用するための請求項32に記載の医薬組成物。 34. 血小板減少症の治療に使用するための請求項32に記載の医薬組成物。 35. 化学療法、放射線療法又は骨髄移植によって誘発された血小板減少症の治 療に使用するための請求項34に記載の医薬組成物。 36. 請求項1〜16及び30のいずれかに記載の有効量のポリペプチドを、血小板 障害をもつ患者に投与することからなる血小板障害を治療するための方法。 37. 請求項1〜16及び30のいずれかに記載の有効量のポリペプチドを、血小板 減少症をもつ患者に投与することからなる血小板減少症を治療するための方法。 38. 化学療法、放射線療法又は骨髄移植によって誘発された血小板減少症を治 療するための請求項37に記載の方法。 39. 請求項1〜16及び30のいずれかに記載のポリペプチドと特異的に免疫反応 性のある抗体。 40. 請求項1〜16及び30のいずれかに記載のポリペプチドを単離するための、 請求項39に記載の抗体の使用。 41. 請求項1〜16及び30のいずれかに記載のポリペプチドを定量するための、 請求項39に記載の抗体の使用。
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