【発明の詳細な説明】
ラパマイシン誘導体、その製造法および用途
本発明は、新規化合物およびその誘導体、それらの製造法、それらを含有する
医薬処方、医学的治療、特に微生物感染症の治療におけるそれらの使用、および
免疫調節剤としてのそれらの使用に関する。
ラパマイシンは公知化合物であり、真菌ストレプトミセス・ハイグロスコピク
ス(Streptomyces hygroscopicus)の抽出物として最初に単離され、抗真菌活性
を有することが報告されている(英国特許1436447)。その後、ラパマイ
シンは免疫抑制剤として示されている(マーテル,アール・アール(Martel R.R
.)ら、カナディアン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー・アンド・ファーマ
コロジー(Can.J.Physiol.Pharmacol.)55,48-51,1977)。
多数の微生物が種々の化合物を産生することが判明しており、これらはその後
単離され、有用な治療的性質を有することが示されている。また、公知化合物の
存在下での微生物のインキュベートまたは培養することにより新規化合物が得ら
れている。かかる新規化合物の1つに13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシ
ンがある。この新規化合物は有用な抗微生物および抗癌および免疫調節活性を有
することが判明している。
従って、本発明は、13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンおよびその誘
導体を提供する。
さらに本発明は第2の態様において、微生物をラパマイシンと接触させ、つい
で13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンまたはその誘導体をインキュベー
ションから単離することを特徴とする13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシ
ンの製造法を提供する。
13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンは式(I):
で示される構造を有すると考えられる。
この化合物は、ジェイ・フィンドレイ(J.Findlay)ら、カナディアン・ジャ
ーナル・オブ・ケミストリー(Can.J.Chem.)(1980)58,579の位置番号系
に従い、本明細書中で13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンと称する。し
かし、ジェイ・マック・アルピン(J.Mc Alpine)ら、J.Antibiotics(1991)44
,688のより最近の位置番号系によると、これは9−10−ビス(ジヒドロ)
ラパマイシンとして知られている。
ケミカル・アブストラクツ(Chemical Abstracts)(11版キュミュレイティ
ヴ・インデックス(11th Cumulative Index)1982-86頁60719CS)による位置番
号系に従えば、本発明の化合物は13,15−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンと
呼ばれる。
式(I)の化合物は以下の特徴を有する:
i)高速原子衝撃(FAB)質量分析により918の見掛け分子量を有する;
ii)ストレプトミセス属からの微生物をラパマイシン存在下で培養し、培養培
地からの13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンまたはその誘導体を回収す
ることにより得られる;
iii)13CNMR分光法により、該分子中に51個の炭素があることが示され
ている;
iv)抗真菌活性を示す;
v)免疫調節活性を示す。
本明細書中に用いる「培養」なる語(およびその語の派生語)は、同化し得る
炭素源、窒素源、硫黄源および無機塩源の存在下での生物の意図的好気的増殖を
意味する。かかる好気的増殖は、固体または半固体栄養培地中で、または栄養素
が溶解または懸濁している液体培地中で起こってもよい。培養は、好気的表面上
でまたは液内培養により行ってもよい。栄養培地は複合栄養素よりなるものであ
ってもよいし、あるいは化学的に規定されているものであってもよい。
本発明の製造法に用いる適当な微生物は、13,14−ビス(ジヒドロ)ラパ
マイシンを同化する能力を有するストレプトミセス(Streptomyces)属に属する
菌株を包含することが判明している。さらに、かかる株は例えば、天然より単離
されているエスピー(sp)NCIMB40535またはその突然変異体であるこ
とが判明している。
本明細書中で用いる「突然変異体」なる語は、自然にまたは外用剤(これが意
図的に適用されるか否かにかかわらず)の作用により生じるいずれかの突然変異
株を包含する。突然変異株の適当な製造法は、プロシーディングズ・オブ・ア・
シンポジウム,ビエンナ(Proceedings of a Symposium,Vienna)1973、241頁
、インターナショナル・アトミック・エネルギー・オーソリティー(Internatio
nalAtomic Energy Authority)「産業用微生物のための放射線および放射性同位
体(Radiation and Radioisotopes for Industrial Microorganisms)」中の「
微生物の発生のための技術(Techniques for the Development of Microorganis
ms)」中でエイチ・アイ・アドラー(H.I.Adler)により略述されている方法
を包含し、(i)電離放射線(例、X線およびγ線)、紫外線、紫外線と光増感
剤(例、8−メトキシプソラレン)との併用、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、ピ
リミジン塩基アナログ(例、5−ブロモウラシル)、アクリジン、アルキル化剤
(例、マスタードガス、エチル−メタンスルホナート)、過酸化水素、フェノー
ル類、ホルムアルデヒド、熱、および
(ii)例えば組換え、形質転換、形質導入、溶原化、溶原変換、プロトプラスト
融合および自然突然変異体のための選択的技術を含む遺伝子技術
を包含する。
ベッカービー(Becker B.)、レヒェバリアー エム・ピー(Lechevalier M.P
.)、ゴードン アール・イー(GordonR.E.)、レヒェバリアー エイチ・エイ
(Lechevalier H.A.)、1964、Appl.Microbiol.12,421-423およびウィリアム
ズ エス・ティー(Williams S.T.)、グッドフェロウ エム(Goodfellow M.)
、ウェリントン イー・エム・エイチ(Wellington E.M.H.)、ビッカーズ ジ
ェイ・シー(Vickers J.C.)、アルダーソン ジー(Alderson G.)、スニーズ
ピー・エイチ・エイ(Sneath P.H.A.)、サッキン エム・ジェイ(Sackin M.J.
)およびモーチマーエム(Mortimer M)1983 J.Gen.Microbiol.129,1815-18
30の方法を用い、エスピーNCIMBがまだ報告されていない非定型のストレプ
トミセスの株として同定されており、従って、特に生物学的に純粋な形態で本発
明の一部分を形成する。それはNCIMB40535号で1993年1月18日
にザ・ナショナル・コレクションズ・オブ・インダストリアル・アンド・マリー
ン・バクテリア・リミテイッド(the Nathional Collections of Industrial an
dMarine Bacteria Ltd.)(N.C.I.M.B.),アバディーン(Aberdeen)、スコッ
トランド(Scotland)に寄託されている。
エスピーNCIMB40535の培養用培地は、適切には、同化し得る炭素源
および同化し得る窒素源を無機塩と共に含有する。適当な窒素源としては、酵母
エキス、大豆粉、肉エキス、綿実粉、麦芽、蒸留乾燥溶解物、アミノ酸、タンパ
ク質加水分解産物およびアンモニウムおよび硝酸塩窒素などが挙げられる。適当
な炭素源としては、グルコース、ラクトース、マルトース、デンプン、グリセロ
ールなどが挙げられる。また適切には、培養培地はアルカリ金属イオン(例えば
ナトリウム)、ハロゲン化物イオン(例えば塩化物イオン)、およびアルカリ土
類金属イオン(例えばカルシウムおよびマグネシウム)、並びに鉄、コバルトの
ような微量元素を含む。
培養は適切には約20〜35℃の温度で行われてもよく、20〜30℃が有利
である。例えば下記の単離後に所望の生成物の最大収量を得るために、適切には
7日間以下、好ましくは約3〜5日間、培養をラパマイシンと接触させてもよい
。
所望の生成物またはその誘導体を、該化合物のための通常の技術を用いて、培
養培地から単離し、後処理し、精製してもよい。かかるすべての単離および精製
手法は、冷温から室温、例えば4〜400℃、便宜には20〜35℃の温度範囲
で便宜に行い得る。
所望の化合物は、生物学的活性について試験しおよび/またはh.p.l.c.保持時
間を監視することにより通常方法で容易に同定し得る。
適切には、分離方法には、好ましくは最終工程として、高速液体クロマトグラ
フィー工程が含まれていてもよい。水性メタノールを用いて溶出を行ってもよい
。
13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンおよびその誘導体は結晶性であっ
ても非結晶性であってもよく、結晶性であれば所望により水和させても溶媒和さ
せてもよい。
該誘導体は、好ましくは、医薬上許容される誘導体である。誘導体としては、
医薬上許容される対イオンとの塩が含まれてもよい。
本発明の化合物は適切には実質的に純粋な形態、例えば少なくとも50%の純
度、適切には少なくとも60%の純度、有利には少なくとも75%の純度、好ま
しくは少なくとも85%の純度、より好ましくは少なくとも95%の純度、特に
少なくとも98%の純度(%はすべて重量/重量として算出されている)で提供
される。本発明の化合物の不純なまたはそれほど純粋でない形態を、例えば、医
薬用途に適した同じ化合物または関連化合物(例えば対応する誘導体)のより純
粋な形態の調製に使用してもよい。
13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンおよびその医薬上許容される誘導
体は抗真菌活性を有し、動物、特にヒトを含む哺乳動物、なかでもヒトおよび家
畜動物(農場動物を含む)における真菌感染症の予防的および治療的処理に有用
である。該化合物は、とりわけカンジダ(Candida)(例、カンジダ・アルビカ
ンス(Candida Albicans))、トリコフィトン(Trichophyton)(例、トリコフ
ィ
トン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes))、ミクロスポル
ム(Microsporum)(例、ミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)
)またはエピデルモフィトン(Epidermophyton)の種により起こされるヒトにお
ける局所的真菌感染症、またはカンジダ・アルビカンス(Candida Albicans)(
例、口腔および膣カンジダ症)により起こされる粘膜感染症の治療に用いてもよ
い。また、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida Albicans)、クリプトコッ
カス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・フミ
ガツス(Aspergillus fumigatus)、コクシディオイデス(Coccidiodes)、パラ
コクシジオイデス(Paracocciciodes)、ヒストプラスマ(Histoplasma)または
ブラストミセス(Blastomyces)スピーシーズ(spp)によって起こされる全身真
菌感染症の治療に用いてもよい。また、真菌腫(eumycotic mycetoma)、クロモ
ブラストミコーシスおよびムコール症の治療に有用であるかもしれない。
また、13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンおよびその医薬上許容され
る誘導体は免疫調節剤としても活性である。本明細書中で用いる「免疫調節剤」
なる語は、本発明化合物が、インビトロでT(およびB)細胞応答を阻害するこ
とにより、および/または、アジュバント誘導関節炎における炎症系応答仲介二
次障害の統計学的に有意な減少を生じさせることにより免疫抑制を誘導する能力
を有することを意味する。治療の適応症には以下の病的状態の治療が含まれるが
、これらに限定されるものではない:慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデ
ス、多発性硬化症、急性移植/グラフト拒絶、重症筋無力症、全身性進行性硬化
症、多発性骨髄症、アトピー性皮膚炎、過度免疫グロブリンE、B型肝炎抗原陰
性慢性急性肝炎、橋本甲状腺炎、家族性地中海熱、バセドウ病、自己免疫性溶血
性貧血、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病。
また、13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンおよびその医薬上許容され
る誘導体は、発癌性腫瘍に対して活性を有するはずである。より詳しくは、該化
合物は、腫瘍の大きさを減少させ、腫瘍増殖を阻害し、および/または、腫瘍担
持動物の生存時間を延長させるのに有用であるはずである。
したがって、本発明は、医学的治療において、特に抗真菌剤または免疫調節剤
または発癌性腫瘍に対する薬剤として使用するための13,14−ビス(ジヒド
ロ)ラパマイシンまたはその誘導体を提供する。
さらに、本発明は、有効量の13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンまた
はその誘導体を投与することによる、真菌感染症に罹ったヒトまたは動物を治療
する方法を提供する。
さらに本発明は、有効量の13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンまたは
その誘導体を投与することによる、免疫調節を必要とするヒトまたは動物を治療
する方法を提供する。
また、本発明は、有効量かつ非毒性量の13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマ
イシンまたはその誘導体をヒトまたは動物に投与することを特徴とする、かかる
ヒトまたは動物における発癌性腫瘍の治療方法を提供する。
さらに、本発明は、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩および医
薬上許容される希釈剤または担体よりなる医薬組成物を提供する。該組成物は、
好ましくはヒト用の錠剤、カプセル剤、注射剤またはクリーム剤の形態である。
ヒトに対する使用では、13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンまたはそ
の誘導体を単独で投与することができるが、一般には、意図する投与経路および
標準的な医薬プラクチスを考慮して選択される医薬担体と混合して投与する。例
えば、それらは、デンプンまたは乳糖のような賦形剤を含有する錠剤の形態で、
またはカプセルまたは膣坐剤として単独でまたは賦形剤と混合して、または香味
剤または着色剤を含有するエリキシル剤または懸濁剤の形態で経口投与してもよ
い。それらは、例えば静脈内、筋内または皮下に非経口的に注射投与してもよい
。非経口投与には、それらは、他の物質、例えば溶液を等張にするのに十分な塩
またはグルコースを含有していてもよい無菌溶液の形態で最良に使用される。
真菌感染症に罹ったヒトの患者に対する経口および非経口投与には、経口また
は非経口経路のいずれかで投与する場合、式(I)の抗真菌性化合物の1日投与
量は0.05〜100、好ましくは0.1〜10mg/kg(分割で)であると予想
される。したがって、該化合物の錠剤またはカプセル剤は、1回または2回以上
の適当な回数の投与では活性化合物の5mg〜0.5gを含有すると予想される。
いず
れの場合においても、個々の患者に最も適切である実際の投与量は医師により決
定され、個々の患者の年齢、体重および反応に応じて変化する。上記投与量は平
均的な場合の例示である。勿論、個々の場合によっては、より多い又はより少な
い投与量範囲が良い場合があり、かかる場合も本発明の範囲内にある。
免疫調節を要するヒトの患者についても同等に、該化合物またはその誘導体に
ついての1日の非経口または経口投与計画は、好ましくは0.1mg/kg〜30mg
/kgである。
発癌性腫瘍の治療のための化合物またはその誘導体の有効かつ非毒性な量がど
れほどであるかは、当業者であれば通常の実験により決定することができる。し
かしながら、一般には、有効な投与量は約0.05〜100mg/kg体重/日であ
ると予想される。
該化合物を上記投与量範囲で投与する場合、許容できない毒物学的効果は全く
予想されない。
本発明の化合物および組成物は、他の抗真菌剤、抗癌剤または免疫調節剤から
類推して、ヒトまたは獣医薬に使用するためにいずれかの便宜な方法で投与用に
処方してもよい。
経口投与用の化合物および錠剤およびカプセル剤は、単位投与形であってもよ
く、例えば結合剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、
トラガントまたはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば乳糖、糖、トウモロコ
シデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;打錠滑沢剤、例
えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ
;崩壊剤、例えばジャガイモデンプン;および医薬上許容される湿潤剤、例えば
ラウリル硫酸ナトリウムを包含する通常の賦形剤を含有していてもよい。該錠剤
は、通常の医薬プラクチスにおいてよく知られている方法によりコーティングさ
れていてもよい。
経口液体製剤は、例えば、水性または油性の懸濁剤、溶液剤、乳剤、シロップ
剤またはエリキシル剤の形態であってもよく、使用前に水または他の適当なビヒ
クルでで再構成するための乾燥品として提供されてもよい。かかる液体製剤は、
例えば、懸濁化剤、例えばソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロッ
プ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ス
テアリン酸マグネシウムゲルまたは水素化食用脂肪;乳化剤、例えばレシチン、
ソルビタン、モノオレアートまたはアラビアゴム;非水性ビヒクル(食用油を含
んでもよい)、例えばアーモンド油、油性エステル類(例えばグリセリン)、プ
ロピレングリコールまたはエチルアルコール;保存剤、例えばパラオキシ安息香
酸メチルまたはプロピルエステルまたはソルビン酸;および所望により用いる通
常の香味剤および着色剤を包含する通常の添加剤を含有していてもよい。
局所投与用に意図される本発明の組成物は、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ロ
ーション剤、眼軟膏剤、点眼剤、点耳剤、含浸包帯剤およびエアゾール剤の形態
であってもよく、例えば保存剤、薬物浸透を助ける溶剤、および軟膏剤およびク
リーム剤中の緩和薬を包含する適当な通常の添加物を含有していてもよい。また
、かかる局所処方は、適合性のある通常の担体、例えばクリームまたは軟膏基剤
、およびローション剤用のエタノールまたはオレイルアルコールを含有していて
もよい。かかる担体は、処方に対して約1重量%〜約98重量%を構成していて
もよい。担体が担体処方に対して約80重量%以下を構成するのがより普通であ
る。
本発明の組成物は、通常の坐剤基剤、例えばカカオ脂または他のグリセリドを
含有してもよい坐剤として処方されてもよい。
非経口投与用に意図される本発明の組成物は、便宜には、該化合物および無菌
ビヒクル、ポリエチレングリコールを用いて製造される流体単位投与形であって
もよい。化合物は、用いるビヒクルおよび濃縮物に応じて、ビヒクル中に懸濁さ
れても溶解されてもよい。非経口懸濁剤は、該化合物をビヒクルに溶解させるか
わりに懸濁させること、および濾過滅菌を行い得ないいこと以外は実質的に同じ
方法で調製してもよい。その代わりに、該化合物は無菌ビヒクルに懸濁させる前
にエチレンオキシドにさらすことにより滅菌してもよい。該化合物の均一な分散
を促進するために、かかる懸濁剤に界面活性剤または湿潤剤を含ませると有利で
ある。
また、本発明の組成物は、吸入により投与してもよい。「吸入」は、経鼻およ
び経口吸入投与を意味する。通常の技術により、エアゾール処方、ミータードド
ーズ吸入器(metered dose inhaler)のようなかかる投与のための適当な投与形
を調製してもよい。
以下、実施例により本発明を例示する。
実施例113,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンの製造
ラパマイシンから13,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンを生産する能力
を有する培養をストレプトミセス・エスピー(Streptomyces sp.)と分類し、受
託番号NCIMB40535号でザ・ナショナル・コレクション・オブ・インダ
ストリアル・アンド・マリーン・バクテリア(the National Collectionof Indu
strial and Marine Bacteria)、23、マチャー・ドライブ・ストリート、アバ
ーディーンAB2 1RY、スコットランド、英国(23,St.Machar Drive,Ab
erdeen AB2 1RY,Scotland,UK.)に寄託した。培養
100ml M2培地[アーカソイ(arkasoy),10g/l;グリセロール,2
0g/l;CoCl2・6H2O,0.005g/l;MgCl2・2H2O,0.1g/
l;FeCl3,0.03g/l;ZnCl2,0.005g/l;CuCl2・2H2O,
0.005g/l;MnSO4・4H2O,0.005g/l、pH6.6、未調整
]を含有する5本の500mlフラスコのそれぞれに、ペトリ皿中のA3寒天[酵
母エキス,5g/l;麦芽エキス,10g/l;グリセロール,10g/l;ペプ
トンソヤ,5g/l;寒天No.3,20g/l;pH6.5]上で良く成長した培
養からの2プラグ(plugs)の寒天を接種した。あるいは、ペトリ皿からのよく
成長した培養の大白金匙量を3mlのツイーン(Tween)80と混合し、全含量を
500mlフラスコ中の100ml M2培地に加え、28℃、240rpmで3日間増
殖させ、ついで培養ブロスの1mlを用いて100ml M2培地を上記5本のフラ
スコのそれぞれに接種した。ついで該フラスコを28℃、240rpmで増殖させ
た。インキュベーション
5日後、アセトン(3.5ml)中の溶液としてのラパマイシン(20mg)を
各
フラスコに加えた。ラパマイシンは、1990年9月14日に寄託されたラパマ
イシン生成培養NCIMB40319から、またはラパマイシン生成生物、例え
ば1975年12月30日発行の米国特許第3,929,992号(その全開示
を出典明示により本明細書の一部とする)に開示されているNRRL5491を
培養することにより得られる。フラスコを28℃、240rpmで約20時間イン
キュベートした。単離方法 溶媒抽出
フラスコの内容物をバルキングし、希硫酸でpH4に調整した。500mlのジ
クロロメタンを加え、混合物を2時間攪拌し、遠心分離により層を分離させて有
機溶媒層を回収し、さらに200mlのジクロロメタンを加え、1時間攪拌した。
有機溶媒層を合わせ、真空中で濃縮して油状物を得た。該油状物に100mlのメ
タノールを加え、該メタノール抽出物を濾過し、該濾液を真空中で濃縮して油状
物を得た。シリカクロマトグラフィー
該油状物を、アセトン:ヘキサン(15:85)中に充填したキーゼルゲル(
Kieselgel)60(70〜230メッシュ)カラム(25×50mm)上に載せた
。載せた後、該カラムをアセトン−ヘキサンの段階グラジエントにより溶出した
。35:65アセトン:ヘキサン後に溶出した画分に13,14−ビス(ジヒド
ロ)ラパマイシンが含有されていた。これらを集め、真空中で濃縮乾固し、−2
0℃で保存した。分取hplc
保存固体を500μlメタノールに溶解し、100μl部分を逆相ミクロソルブ
(Microsorb)C−18カラムおよびプレカラム(21.4mm×25cmおよび2
1.4×5cm)(ライニン・インスツルメンツ(Rainin Instruments、米国))
上に別々に注入した。注入後、78:22メタノール:H2Oで6ml/分で溶出
を続け、278nmにおけるUV吸収について監視した。5回の注入の合計からの
目的化合物を含有する画分をプールし、真空中で濃縮してメタノールを除き、凍
結乾燥し
た。スフェリソルブ(Spherisorb)S100DS2(フェイズ・セプ(PhaseSep
))カラム(25cm×4.6mm)およびウォーターズプレカラム(Waters preco
lumn)を用いる逆相hplcにより、目的化合物を含有する画分を分析した。該カラ
ムを278nmにおけるUV吸収により監視し、78:22メタノールー水で2ml
/分で溶出した。これらの条件下、目的化合物は6.8分の保持時間を有してい
た(ラパマイシンの保持時間8.4分と相違する)。分光データ
質量分析(FAB1NaCl)[M+Na]+=940およびプロトン核磁気共
鳴分光法(下記表1参照)により、得られた化合物を特徴づけした。UV分光法
はアセトン中でのUV1maxを示す。
実施例213,14−ビス(ジヒドロ)ラパマイシンの生物活性
以下のバイオアッセイにより、該化合物を抗真菌および免疫抑制活性について
分析した。A.抗真菌活性についての検定
対数成長にある酵母生物(サッカロミセス・セレビシアエ(SaccharomycesCer
evisiae))を完全寒天培地(YPD)上で平板培養した。適当な水性または有
機溶媒に溶解した化合物を寒天中に穴をあけたウェルに入れた。平板を48時間
インキュベートし、阻止帯を測定した。薬物濃度の対数に対する阻止帯のプロッ
トの退縮分析により化合物の効力を定量した。B.免疫抑制活性についての有糸分裂誘発検定
RPMIおよび10%ウシ胎児血清中、5×106/mlでBDFI雌マウスの
牌臓細胞を樹立した。この懸濁液の100mlアリコート(5×105細胞)を9
6ウェルの丸底マイクロタイタープレート(リンブロ(Linbro)、フロウ・ラボ
ラトリーズ(Flow Laboratories))に分注した。コンカナバリンA(5μg/ml
)をマイトジェン剌激剤として加え、マイクロタイターウェル中の最終容量をR
PMIで200μlに調整した。細胞培養を5%CO2雰囲気中37℃で72時間
インキュベートし、72時間の培養の最後の18時間、0.5μCi3H−チミ
ジン(比活性2.00Ci/モル)でパルスした。自動マルチプル・サンプル・
ハーベスター上で該細胞を収穫し、ベックマン液体シンチレーション・カウンタ
ー中で細胞結合放射活性を計数した。4重の測定から導出された平均値として結
果を示す。72時間のインキュベーション後、トリパン・ブルー・エクスクルー
ジョン(trypan blue exclusion)により細胞成長能を測定した。細胞の添加前
に、試験化合物を適当な希釈にてマイクロタイタープレートに加えた。
本発明の化合物についてのこれら2個の検定の結果を表2に示す。
実施例3
組成物実施例A−H
A−カプセル組成物
カプセル形態の本発明の医薬組成物は、標準的な2片の硬ゼラチンカプセルに
50mgの粉末状の本発明化合物、100mgの乳糖、32mgのタルクおよび8mgの
ステアリン酸マグネシウムを充填することにより製造する。
B−注射非経口組成物
注射投与に適切な形態の本発明の医薬組成物は、10%容量%のプロピレング
リコールおよび水中の1.5重量%の本発明化合物を攪拌することにより製造す
る。該溶液は濾過滅菌する。
C−軟膏組成物
本発明化合物1.0g
白色軟パラフィンで100.0gにする。
本発明化合物を小容量のビヒクルに分散させ、ビヒクルのバルク中に顆粒状に
取り込ませて滑らかで均一な生成物を得る。折り畳み式の金属チューブにその分
散液を充填する。
D−局所クリーム組成物
本発明化合物1.0g
ポラワックス(Polawax)GP 200 20.0g
無水ラノリン2.0g
白色蜜ろう2.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル0.1g
蒸留水で100.0gにする
ポラワックス、蜜ろうおよびラノリンを一緒に60℃で加熱する。ついで本発
明化合物を加え、分散させ、該組成物をゆっくり攪拌しながら冷却する。
E−局所ローション組成物
本発明化合物1.0g
モノラウリン酸ソルビタン0.6g
ポリソルベート20 0.6g
セトステアリルアルコール1.2g
グリセリン6.0g
ヒドロキシ安息香酸メチル0.2g
蒸留水BPで100.00mlにする。
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびグリセリンを70mlの水に75で溶解する。
モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート20およびセトステアリルアルコー
ルを一緒に75℃で溶融し、該水溶液に加えた。得られた乳濁液を均一化し、連
続的に攪拌しながら冷却し、残りの水中の懸濁液として本発明化合物を加える。
均一になるまで全懸濁液を攪拌する。
F−点滴組成物
本発明化合物0.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル0.01g
ヒドロキシ安息香酸プロピル0.04g
蒸留水B.P.で100.00ml(B.P.=英国薬局方)
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルを75℃で70mlの精製水に溶解し
、得られた溶液を冷却する。ついで本発明化合物を加え、該溶液をメンブランフ
ィルター(0.22μm細孔径)で濾過滅菌し、適当な無菌容器に無菌的に充填
した。
G−吸入投与用組成物
15〜20ml容量のエアゾール容器では、本発明化合物10mgをポリソルベー
ト85またはオレイン酸のような滑沢剤0.2〜0.2%と混合し、該混合物を
フレオンのような噴射剤、好ましくは(1,2ジクロロテトラフルオロエタン)
とジフルオロクロロメタンとを合わせたものの中に分散し、経鼻または経口吸入
投与用の適当なエアゾール容器アダプター中に入れる。
H−吸入投与用組成物
15〜20ml容量のエアゾール容器では、本発明化合物10mgをエタノール(
6〜8ml)に溶解し、ポリソルベート85またはオレイン酸のような滑沢剤0.
1〜0.2%を加え、これをフレオンのような噴射剤、好ましくは(1,2ジク
ロロテトラフルオロエタン)とジフルオロクロロメタンとを合わせたものの中に
分散し、経鼻または経口吸入投与用の適当なエアゾール容器アダプター中に入れ
る。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12P 17/18 A 7432−4B
//(C12N 1/20
C12R 1:465)
(C12P 17/18
C12R 1:465)