【発明の詳細な説明】
7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシン
本発明は新規化合物、その誘導体、その製造法、該化合物を含有する医薬処方
物、医学的療法、特に微生物感染症の治療におけるその使用、および免疫調節剤
としてのその使用に関する。
ラパマイシンは公知化合物であり、真菌であるストレプトマイセス・ハイグロ
スコピカス(Streptomyces hygroscopicus)の抽出物として初めて単離され、抗
真菌活性を有すると報告されている(英国特許第1436447号)。その後、
ラパマイシンは免疫抑制剤として関連付けられた(マーテル、アール・アール(
Martel R.R.)ら、カナディアン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー・アンド
・ファーマコロジー(Can.J.Physiol.Pharmacol.)55,48−51,1977
)。
多くの微生物が種々の化合物を産生することが判明しており、これらは単離さ
れ、有用な治療特性を有することが示されている。新規化合物は、また公知化合
物の存在下での微生物のインキュベーションまたは培養によりえられる。このよ
うな新規化合物の1つに7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンがある。
この新規化合物は有用な抗菌および抗癌および免疫調節活性を有することが判明
している。
したがって、本発明は7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンおよびぞ
の誘導体を提供する。
第二の態様において、さらに、本発明は7,42−ビス(O−デメチル)ラパ
マイシンの製法であって、微生物をラパマイシンと接触させ、次に7,42−ビ
ス(O−デメチル)ラパマイシンまたはその誘導体を培養物から単離することか
らなる製法を提供する。
7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンは、式(I):
で示される構造を有すると考えられる。
本明細書において、該化合物は、ジェイ・フィンドレイ(J.Findlay)らの番
号付けシステム(Can.J.Chem.(1980)58,579)によれば、7,42−
ビス(O−デメチル)ラパマイシンと称される。しかし、ジェイ・マッカルパイ
ン(J.Mc Alpine)らの最新の番号付けシステム(J.Antibiotics(1991)4
4,688)によれば、これは16,39−ビス(O−デメチル)ラパマイシンと
なる。
ケミカル・アブストラクツ(Chemical Abstructs(11th Cumultive Index1
982−96ページ、60719CS))による番号付けシステムに従えって、
本発明の化合物を7,41−ビス(O−デメチル)ラパマイシンと称する。
式(I)における化合物は以下の特性を有する:
i)高速原子衝撃(FAB)質量分析による見かけの分子量が886である;
ii)ラパマイシンの存在下でのストレプトマイセス属由来の微生物の培養および
培地からの7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンまたはその誘導体の回
収により得られる;
iii)13C NMR分光学は、分子中、49個の炭素の存在を明らかにする;
iv)抗真菌活性を示す;
v)免疫調節活性を示す。
本明細書において用いる「培養」なる語(およびこの語の派生語)は、炭素、
窒素、イオウおよび無機塩の同化源の存在下での生物の好気的成長を意味する。
このような好気的成長は、固体または半固体栄養培地、または栄養素が溶解また
は懸濁した液体培地中で起こる。培養は好気的表面または液内培養により起こる
。栄養培地は、複合栄養素からなっていてもよく、または化学的に限定されてい
てもよい。
本発明の方法において用いるのに適当な微生物は、7,42−ビス(O−デメ
チル)ラパマイシンの産生能を有するストレプトマイセス属に属する微生物株が
含まれることが見いだされた。このような株の一例はsp.NCIMB4053
7てあり、これは自然界から単離されるものおよびその変異株であることも見い
だされた。
本明細書において用いる「変異株」なる語は、自発的に、あるいは故意に投与
されるかそうでないかにかかわらず外部剤の効果により生まれる変異株を意味す
る。変異株を産生する適当な方法としては、国際原子力機関、ウィーン、197
3年、シンポジウムの議事録、「ラジエーション・アンド・ラジオアイソトープ
・フォー・インダストリアル・マイクロオーガニズムズ」、241頁における、
エイチ・アイ・アドラー(H.I.Adler)による「テクニックス・フォア・ザ・デ
ベロプメント・オブ・マイクロオーガニズムズ」にて概要が示されているものが
挙げられ、これは以下のものを含む:
(i)電離線(たとえばX線およびγ線)、紫外線、紫外線+光増感剤(例えば
8−メトキサレン)、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、ピリミジン塩基類似体(例
えば5−ブロモウラシル)、アクリジン、アルキル化剤(例えばマスタードガス
、メタンスルホン酸エチル)、過酸化水素、フェノール、ホルムアルデヒド、熱
、および
(ii)例えば組み換え、形質転換、形質導入、溶原化、溶原変換、プロトプラス
ト融合および自然変異体に関する選択的技術を含む遺伝子技術。
ベッカー・ビー、リーチェバリアー・エム・ピー、ゴードン・アール・イー、
リーチェバリアー・エイチ・エイ(Becker B.、Lechevalier M.P.、Gordon R.E.
、Lechevalier H.A.)、1964、アップル・マイクロバイオール(Appl.Micro
biol.)12、421−423)およびウィリアムズ・エス・ティー、グッドフ
ェロー・エム、ウェリントン・イー・エム・エイチ、ビッカーズ・ジェイ・シー
、アルダーソン・ジー、スネス・ピー・エイチ・エイ、サキン・エム・ジェイお
よびモータイマー・エム(Williams S.T.、Goodfellow M、Wellington E.M.H.、
Vickers J.C.、Alderson.G.、Sneath P.H.A.、Sackin M.J.およびMortimer M.)
1983 ジャーナル・オブ・ゼネラル・マイクロバイオロジー(J.Gen.Microb
iol.)129,1815−1830)の方法を用いて、Sp.NCIMB4053
7は未報告の非定型ストレプトマイセス株と確認され、したがって、該株は特に
生物学的に純粋な形態にて本発明の一部を形成する。これはナショナル・コレク
ションズ・オブ・インダストリアル・アンド・マリン・バクテリア社(National
Collections of Industrial and Marine Bacteria Ltd.(N.C.I.M.B.)、
スコットランド、アバディーン)にNCIMB40537の番号で1993年1
月18日に寄託されている。
sp.NCIMB40537を培養するための培地は、適当には、同化炭素お
よび同化窒素源を無機塩と共に含有する。適当な窒素源としては、酵母エキス、
大豆粉、肉エキス、綿実、小麦粉、麦芽、蒸留乾燥溶解物、アミノ酸、蛋白加水
分解物およびアンモニウムおよび硝酸塩窒素が含まれる。適当な炭素源としては
、グルコース、ラクトース、マルトース、デンプンおよびグリセロールが含まれ
る。適当には、培地は、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウム)、ハロゲン
イオン(例えば、クロリド)、およびアルカリ土類金属イオン(例えばカルシウ
ムおよびマグネシウム)ならびに鉄およびコバルトなどの微量元素も含む。
培養は適当には、約20〜35℃、有利には20〜30℃で行い、例えば以下
に記載するような単離の後に所望の生成物を最適の収率で得るためには培養物を
ラパマイシンと7日まで、有利には3〜5日接触させる。
所望の生成物またはその誘導体を培地から単離し、後処理し、このような化合
物に関する通常の技術を用いて精製する。このような単離および精製法はすべて
低温から周囲温度、例えば4〜40℃、好都合には20〜35℃の範囲内の温度
で行うのが都合よい。
所望の化合物は生物学的活性の試験および/またはhplc保持時間をモニタ
ーすることによる通常の方法で容易に同定できる。
適当には、分離法は高性能液体クロマトグラフィー工程を、好ましくは最終工
程として含む。溶出を行ってもよい。
7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンおよびその誘導体は、結晶また
は非結晶性であってもよく、もし結晶である場合、所望により水和または溶媒和
されてもよい。
誘導体は、好ましくは医薬上許容される誘導体である。誘導体は、医薬上許容
される対イオンとの塩を包含する。
本発明の化合物は、適当には、実質的に純粋な形態、例えば少なくとも50%
の純度、適当には少なくとも60%の純度、有利には少なくとも75%の純度、
好ましくは、少なくとも85%の純度、より好ましくは少なくとも95%の純度
、とくに少なくとも98%の純度である(すべての%は重量/重量で計算する)
。本発明の化合物の不純またはあまり純粋でない形態は、例えば医薬的用途に適
したより純粋な形態の化合物またはその関連化合物(例えば対応する誘導体)の
調製に用いられる。
7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンおよびその医薬上許容される誘
導体は抗真菌活性を有し、動物、とくにヒトを含む噛乳動物、とくにヒトおよび
家畜(飼養場の動物を含む)における真菌感染症の予防および治療に有用である
。化合物はヒトにおいて、他の微生物の中でも、カンジダ属(例えばカンジダ・
アルビカンス(Candida Albicans))、トリコフィトン属(例えばトリコフィト
ン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes))、マイクロスポラ
ム属(例えばマイクロスポラム・ジプセウム(Microsporum gypseum))または
エピデルモフィトン属(Epidermophyton)により起こる局所性真菌感染症または
カンジダ・アルビカンスにより起こる粘膜感染症(例えば口腔および膣カンジダ
症)の治療に用いられる。これらはまた、例えばカンジダ・アルビカンス、クリ
プト
コッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・
フミガタス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオデス(Coccidiodes)、パラ
コクシシオデス(Paracocciciodes)、ヒストプラズマ(Histoplasma)またはブ
ラストマイセス(Blastomyces)属により起こる全身性真菌感染症の治療に用い
られる。これらはまた真菌腫、色素酵母菌症およびムコール菌症の治療にも有用
である。
7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンおよびその医薬上許容される誘
導体は免疫調節剤としても活性である。本明細書において用いる「免疫調節剤」
なる語は、in vitroでのT(およびB)細胞応答の抑制および/またはアジュバ
ント誘起性関節炎におけ炎症系応答処理二次病変において統計的に有意な減少を
起こすことによる免疫抑制誘発能を有する本発明の化合物を意味する。治療の適
応症としては、以下の病状の治療が挙げられるが、これに限定されるわけではな
い:慢性関節リウマチ、全身性紅斑狼瘡、多発性硬化症、急性移植片拒絶反応、
重症筋無力症、全身性進行性硬化症、多発性骨髄腫、アトピー性皮膚炎、高イム
ノグロブリンE、B型肝炎抗原陰性慢性活動性肝炎、ハシモト甲状腺炎、家族性
地中海熱、グレイブス病、自己免疫性溶血性貧血、原発性胆汁性肝硬変、炎症性
腸炎、インシュリン依存性糖尿病。
7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンおよびその医薬上許容される誘
導体は発癌性腫瘍に対する活性も有する。とくに、化合物は腫瘍の大きさの減少
、腫瘍の増殖の抑制および/または腫瘍を有する動物の生存期間を延長するのに
有用である。
したがって、本発明は医学的療法、とくに抗真菌剤または免疫調節剤、あるい
は発癌性腫瘍に対する薬剤として用いる7,42−ビス(O−デメチル)ラパマ
イシンまたはその医薬上許容される誘導体を提供する。
本発明はさらに、有効量の7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンまた
はその医薬上許容される誘導体を投与することにより真菌感染症にかかっている
ヒトまたは動物を治療する方法を提供する。
さらに、本発明は、有効量の7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンま
たはその医薬上許容される誘導体を投与することにより免疫調節を必要とするヒ
トまたは動物を治療する方法を提供する。
本発明はまた、ヒトまたは動物において発癌性腫瘍を治療する方法であって、
このようなヒトまたは動物に有効かつ非毒性量の7,42−ビス(O−デメチル
)ラパマイシンまたはその医薬上許容される誘導体を投与することからなる方法
を提供する。
本発明はさらに、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を医薬上許
容される希釈剤または担体と共に含有する医薬組成物を提供する。組成物は好ま
しくはヒトに用いる場合、錠剤、カプセル、または注射可能なまたはクリーム状
の形態である。
ヒトに用いる場合、7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンまたはその
医薬上許容される誘導体は単独で投与できるが、一般には意図する投与経路およ
び標準的調剤実施例に関して選択された医薬担体との混合物として投与される。
例えば、これらはデンプンまたはラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態
、またはカプセルまたは単独または賦形剤と混合した膣坐剤、またはエリキシル
の形態または矯味矯臭剤または着色料を含有する懸濁液の形態で経口投与される
。これらは非経口的に、例えば静脈内、筋肉内または皮下注射してもよい。非経
口投与の場合、これらは他の物質、例えば溶液を等張にするのに十分な塩または
グルコースを含んでもよい滅菌溶液の形態で用いるのが最適である。
真菌感染症のヒト患者に経口および非経口投与する場合、式(I)の抗真菌化
合物の一日の投与レベルは、経口または非経口経路により投与する場合には、0
.05〜100、好ましくは0.1〜10mg/kg(分割用量)である。このよ
うに、化合物の錠剤またはカプセルは、適当ならば1個でまたは一度に2個以上
投与する場合、5mg〜0.5gの活性化合物を含有すると考えることができる
。医師はどのような場合にも各患者に関してもっとも適当で、特定の患者の年令
、体重および反応により変わる実際の投与量を決定する。前記した投与量は平均
的なケースの例である。もちろん、より高または低用量がよい場合もありえるが
、これも本発明の範囲に含まれる。
免疫調節を必要とするヒト患者についても同様に、該化合物またはその誘導体
の一日の非経口または経口投与量は、好ましくは、0.1mg/kg〜30mg
/kgである。
当業者は、慣用的実験により、どの有効かつ非毒性量の化合物またはその誘導
体が発癌性腫瘍の治療の目的に合うか決定できる。しかし、一般的には、有効量
は1日に付き体重1kg当たり約0.05〜100ミリグラムの範囲である。
化合物を前記投与量範囲で投与した場合、許容できない毒学的効果はないと考
えられる。
本発明の化合物および組成物は、他の抗真菌、抗癌または免疫調節剤と同様に
ヒトまたは獣医学的医薬において用いるためのいかなる都合のよい方法で投与す
るようにも処方できる。
経口投与用化合物および錠剤およびカプセルは、単位投与形態であり、例えば
、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガントまたはポリビニル
ピロリドンなどの結合剤;例えばラクトース、砂糖、トウモロコシデンプン、リ
ン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシンなどの増量剤;例えばステアリン
酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカなどの錠剤成型
滑沢剤;例えばジャガイモデンプンなどの崩壊剤;およびラウリル硫酸ナトリウ
ムなどの医薬上許容される湿潤剤などの通常の賦形剤を含んでもよい。錠剤は通
常の医薬実施例において周知の方法により被覆してもよい。
経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、乳剤、シロップまた
はエリキシルの形態であってもよく、あるいは使用前に水または他の適当なビヒ
クルで復元する乾燥製品にしてもよい。このような液体製剤は、例えばソルビト
ール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセ
ルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは
水素化食用油脂などの懸濁化剤;例えばレシチン、ソルビタンモノオレアートま
たはアカシアなどの乳化剤;例えばアーモンド油、油性エステル(例えばグリセ
リン)、プロピレングリコール、またはエチルアルコールなどの非水性ビヒクル
(食用油を含んでもよい);例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピ
ルまたはソルビン酸などの防腐剤、および所望により通常の矯味矯臭剤または着
色剤等の通常の添加剤を含んでもよい。
局所投与用の本発明の組成物は、例えば、軟膏、クリーム、ローション、眼軟
膏剤および点眼剤または点耳剤、含浸包帯剤およびエアゾルなどの形態にしても
よく、防腐剤、薬物の浸透を助ける溶媒、および軟膏およびクリームにおける皮
膚軟化薬などの適当な通常の添加剤を含んでもよい。このような局所処方はまた
、通常の適合性担体、例えばクリームまたは軟膏基剤およびローション用エタノ
ールまたはオレイルアルコールを含んでもよい。このような担体は、処方の約1
%〜約98重量%を構成する。より一般的には、処方の約80重量%までを構成
する。
本発明の組成物は通常の坐剤基剤、例えばカカオ脂または他のグリセリドを含
む坐剤に処方してもよい。
非経口投与用の本発明の組成物は、流体単位投与形態であるのが好都合で、こ
れは化合物および滅菌ビヒクル、プロピレングリコールを用いて調製できる。化
合物は、用いたビヒクルおよび濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁または溶解でき
る。非経口懸濁液は、化合物を溶解するかわりにビヒクル中に懸濁し、滅菌をろ
過により行うことができない以外は実質的に同様の方法で調製される。化合物は
、滅菌ビヒクル中に懸濁する前に、酸化エチレンに接触させて滅菌してもよい。
有利には、界面活性剤または湿潤剤をこのような懸濁液中に配合して、化合物の
均一な分散を促進する。
本発明の組成物は、吸入により投与してもよい。「吸入」とは、鼻腔内または
経口吸入投与を意味する。エアゾル処方物または計量吸入器などのこのような投
与に関して適当な投与形態は通常の技術により調製できる。
以下の実施例を用いて本発明を説明する。
実施例17,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンの調製
ラパマイシンから7,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンを産生できる
培養物は、ストレプトマイセス属と分類され、ナショナル・コレクション・オブ
・
インダストリアル・アンド・マリン・バクテリア(National Collection of Ind
ustrial and Marine Bacteria)、スコットランド、アバディーン・エイ・ビー
2 1アール・ワイ、マチャー・ドライブ・ストリート、23番に受入番号NC
IMB40537で寄託されている。培養
100ml M2培地[アルカソイ:10g/l;グリセロール:20g/l
;CoCl2・6H2O:0.005g/l;MgCl2・2H2O:0.1g/l;
FeCl3;0.03g/l;ZnCl2:0.005g/l;CuCl2・2H2O
:0.005g/l;MnSO4・4H2O:0.005g/l pH6.6未調整
]を入れた5個の500mlフラスコの各々に、ペトリ皿中よく成長させたA3
寒天上培養物[酵母エキス:5g/l;麦芽エキス:10g/l;グリセロール
:10g/l;大豆ペプトン:5g/l;寒天No.3:20g/l;pH6.5
]から2プラグの寒天を接種した。別法として、ペトリ皿からのおおきな白金耳
のよく成長させた培養物を3mlのツィーン(Tween)80と混合し、28℃、
240rpmで3日間成長させた500mlフラスコ中100mlのM2培地に
全内容物を添加し、1mlの培養ブロスに用いて、5個の500mlフラスコの
各々の100mlのM2培地に接種する。ついで、フラスコを28℃、240r
pmで成長させた。インキュベーション
5日後、ラパマイシン(20mg)をアセトン(3.5ml)中溶液として各
フラスコに添加する。ラパマイシンは、1990年9月14日に寄託されたラパ
マイシン産生培地、例えばNCIMB40319から得られるか、または米国特
許第3929992号(1975年12月30日)に開示されているラパマイシ
ン産生微生物NRRL5491の培養により得ることができる。フラスコを28
℃、240rpmで約20時間インキュベートした。単離操作
溶媒抽出
フラスコの内容物を希硫酸で増量させ、pH4に調節した。500mlのジク
ロロメタンを添加し、混合物を2時間攪拌し、遠心分離により相を分離して有機
溶媒相を回収し、さらに200mlのジクロロメタンを添加し、1時間攪拌した
。有機溶媒相を合し、真空下に濃縮して油状物にした。該油状物に、100ml
のメタノールを添加し、メタノール抽出物を濾過し、濾液を真空下で濃縮して油
状物を得た。シリカクロマトグラフィー
該油状物をアセトン:ヘキサン(15:85)中充填したKiselgel 60(7
0〜230メッシュ)カラム(25×50mm)に添加した。該添加後、カラム
をアセトン−ヘキサンの段階勾配で溶出した。7,42−ビス(O−デメチル)
ラパマイシンを含有するフラクションを合し、真空下で濃縮乾固し、−20℃で
保存した。分取用hplc
貯蔵した固体をメタノール中に溶解し、100μl部を別々に逆相ミクロソル
ブC−18カラムおよびプレカラム(21.4mm×25cmおよび21.4×5
cm)(米国、ライニン・インストラメンツ(Rainin Instruments))に注入し
た。注入後、メタノール:H2O(78:22)、6ml/分で溶出を続け、2
78nmでのUV吸収に関してモニター観察した。目的化合物を含有するフラク
ションをプールし、真空下で濃縮してメタノールを除去し、凍結乾燥した。
目的化合物含有のフラクションを、Spherisorb S100DS2(PhaseSep)
カラム(25cm×4.6mm)およびWatersプレカラムを用いて逆相hplc
により分析した。カラムを278nmでのUV吸収によりモニター観察し、メタ
ノール:水(78:22)で2ml/分で溶出した。これらの条件下で、目的化
合物の保持時間は4.0分であった(ラパマイシン(保持時間10.6分)と異
なる)。分光分析データ
表1に示す。
実施例27,42−ビス(O−デメチル)ラパマイシンの生物活性
化合物を以下のバイオアッセイを用いて抗真菌活性および免疫抑制活性に関し
て分析した。A.抗真菌活性の分析
対数的増殖の酵母生物(サツカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevi
siae)を完全寒天培地(YPD)上にプレートした。適当な水性または有機溶媒
中に溶解した化合物を寒天上に穿孔したウェル中に入れた。プレートを48時間
インキュベートし、抑制領域を測定した。化合物の効力を、抑制領域vs.薬剤
濃度の対数のプロットを回帰分析することにより定量した。B.免疫抑制活性の有糸分裂誘起分析
BDFI雌マウスの脾臓細胞を10%ウシ胎児血清(5×106/mL)を含
むRPMI中にて確立した。この懸濁液(5×105細胞)の100mLアリコ
ートを96ウェル丸底マイクロタイタープレート(リンブロ(Linbro)、フロー
・ラボラトリース(Flow Laboratories))中に分配した。コンカナバリンA(
5μg/ml)を有糸分裂生起刺激として添加し、マイクロタイターウェル中の
最終容積をRPMIで200μLに調節した。細胞培養物を72時間37℃で5
%CO2雰囲気下でインキュベートし、0,5μCi 3H−チミジン(比活性2.
00Ci/モル)で72時間の培養の最後の18時間パルス処理した。細胞を自
動式複数試料収穫装置で収穫し、細胞関連の放射活性をベックマン液体シンチレ
ーションカウンターで計数した。結果を4回の測定の平均値で表わした。細胞生
存能をインキュベーションの72時間後トライパンブルー排除により測定した。
試験すべき化合物を細胞の添加の前に適当な希釈度でマイクロタイタープレート
に添加した。
本発明の化合物に関するこれらの2つの分析の結果を表2に示す。
実施例3
組成物例A〜H
A カプセル組成物
カプセルの形態の本発明の医薬組成物を、標準的ツーピースハードゼラチンカ
プセルに50mgの粉末形態の本発明の化合物、100mgのラクトース、32
mのタルクおよび8mgのステアリン酸マグネシウムを充填することにより調製
する。
B 注射可能な非経口組成物
注射による投与に適した形態の本発明の医薬組成物を、1.5重量%の本発明
の化合物を10重量%のポリエチレングリコールおよび水中攪拌することにより
調製する。溶液を濾過により滅菌する。
C 軟膏組成物
本発明の化合物 1.0g
白色軟パラフィン 100.0gまで適量
本発明の化合物を少量のビヒクル中に分散させ、徐々に多量のビヒクル中に配
合して、滑らかで均質な製品を得る。次に折り畳み可能なの金属管に分散液を充
填する。
D 局所クリーム組成物
本発明の化合物 1.0g
ポーラワックスGP200 20.0g
ラノリン無水物 2.0g
白ミツロウ 2.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.1g
蒸留水 100.0gまで適量
ポーラワックス、ミツロウおよびラノリンを一緒に60℃で加熱する。ついで
本発明の化合物を添加し、よく分散させ、組成物をゆっくり攪拌しながら冷却す
る。
E 局所ローション組成物
本発明の化合物 1.0g
ソルビタンモノラウレート 0.6g
ポリソルベート20 0.6g
セトステアリルアルコール 1.2g
グリセリン 6.0g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.2g
純水B.P. 100.00mlまで適量
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびグリセリンを70mlの水中に75℃で溶解
する。ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート20およびセトステアリルア
ルコールを一緒に75℃で融解させ、該水溶液に添加する。得られた乳濁液を均
質化し、一定して攪拌しながら冷却し、本発明の化合物を水中に残存する懸濁液
として添加する。全懸濁液を均質化するまで攪拌する。
F 点眼組成物
本発明の化合物 0.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.01g
ヒドロキシ安息香酸プロピル 0.04g
純水B.P.(B.P.=英国薬局方) 100.00mlまで適量
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルを70mlの純水中に75℃で溶解
させ、得られた溶液を冷却する。本発明の化合物を添加し、溶液を膜フィルター
(0.22mu m孔径)を通して濾過することにより滅菌し、滅菌的に適当な
滅菌容器中に充填する。
G 吸入による投与用組成物
15〜20mlの容積のエアゾル容器に関して:10mgの本発明の化合物を
0.2〜0.2%のポリソルベート85またはオレイン酸などの滑沢剤と混合し、
このような混合物をフレオンなどの噴射剤中に、好ましくは(1,2ジクロロテ
トラフルオロエタン)およびジクロロメタンとの組合せで分散させ、経鼻または
経口吸入投与のいずれかのエアゾル容器アダプターに入れる。
H 吸入による投与用組成物
15〜20mlの容積のエアゾル容器に関して:10mgの本発明の化合物を
エタノール(6〜8ml)中に溶解し、0.1〜0.2%のポリソルベート85ま
たはオレイン酸などの滑沢剤を添加し、これをフレオンなどの噴射剤中に、好ま
しくは(1.2ジクロロテトラフルオロエタン)およびジクロロメタンとの組合
せで分散させ、経鼻または経口吸入投与のいずれかのエアゾル容器アダプターに
入れる。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12P 17/18 C 7432−4B
//(C12N 1/20
C12R 1:465)
(C12P 17/18
C12R 1:465)