【発明の詳細な説明】
改良した特性を有する成形品
本願は、1992年10月9日に出願した米国出願07/958,630の一部継続出願である
。
関連出願
改良した引張り強度特性を有する不繊ウェッブについては、係属中であり、共
に譲渡した、発明者ロナルド・S・ノアー(Ronald S.Nohr)及びJ・ガビン・
マクドナルド(J.Gavin MacDonald)の出願(発明の名称『熱可塑性組成物及び
それから調製した不繊ウェッブ(THERMOPLASTIC COMPOSITIONS AND NONWOVEN WE
BS PREPARED THEREFROM)』 (出願日1991年10月25日))に記載され、かつ、請
求の範囲として記載されている。
発明の背景
本発明は、添加剤系を含む溶融−押出可能な熱可塑性組成物及びそれから製造
した成形品に関する。
熱可塑性組成物については、ロナルド・S・ノアー(Ronald S.Nohr)及びJ
・ガビン・マクドナルド(J.Gavin MacDonald)の米国特許第4,923,914号に記
載されている。これには、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び少なくとも1
つの定義した添加剤が含まれることが記載されているが、これらの内容は本発明
に含まれる。特に、添加剤として、含シロキサン化合物が挙げられている。組成
物は、特にメルトブローイング(meltblowing)、コフォーミング(coforming)
、及びスパンボンディング(spunbonding)のような溶融−押出法の不繊ウェッ
ブの形成に有用である。溶融−押出すると、そのような組成物から、ファイバー
の中心から表面に向けて添加剤の濃度が増加するという差を有するファイバーが
得られる。即ち、ファイバー表面に向けて添加剤の濃度が、ファイバーのより中
心
領域の添加剤の平均濃度より大きく、このようにならなければ存在しないであろ
う少なくとも1つの所望の特性をファイバー表面に付与するようなファイバーと
なる。添加剤は、溶融押出温度でポリマーと混和し、その条件下で添加剤とポリ
マーとは準安定溶液を形成する。新しく形成したファイバーの温度が溶融押出温
度より低くなると、添加剤はポリマーとの混和性が著しく低下する。混和性に関
するこの著しい変化と同時に、ポリマーは凝固し始める。両者の要因により、コ
ントロール可能な態様で生じる、添加剤の表面への迅速な移動又は偏析(segreg
ation)が生じる。
米国特許第 4,923,914号記載の、あるポリシロキサンポリエーテル添加剤を含
有する添加剤系及び疎水性表面を有する変性ヒュームドシリカを用いることによ
り、予期し得ない不繊ウェッブを得た。即ち、湿潤性はないが、疎水性ヒューム
ドシリカを有しない熱可塑性組成物から調製した不繊ウェッブと比較して改良し
た引張り強度特性を示す不繊ウェッブを得た。この発明は、関連米国出願07/783
,438の開示の一部である。しかし、関連米国出願07/783,438に教示された改良を
越える、引張り強度特性をさらに改良したものが本願において発明された。
シリカ及びその他の材料は、ポリプロピレンを含む熱可塑性ポリマーに配合さ
れる。例えば、ポリプロピレンに有機過酸化物及び成核剤を添加することについ
ては、特開昭 60-217207号に記載されている。成核剤は、有機塩、有機化合物、
又は、シリカ、ミョウバン、二酸化チタン、カーボンブラック、及びさまざまな
粘土鉱物のような無機材料であってもよい。
ポリプロピレン又はその他の熱可塑性ポリマーに有機材料を添加することにつ
いては次の文献に記載されている。即ち、ウィジャ(Wijga )の米国特許第3,20
7,735号(安息香酸、置換された安息香酸、それらのヘキサヒドロ類似体、及び
関連化合物)、ウェールズ(Wales)の米国特許第3,207,737号(安息香酸のアル
ミニウム塩及び関連化合物)、ウェールズ(Wales)の米国特許第3,207,739号(
あるモノカルボン酸及びポリカルボン酸の第I属及び第II属の金属塩)、ビンス
ベルゲン(Binsbergen)らの米国特許第3,299,029号(安息香酸のアルミニウム
塩及び関連化合物)、ヴォルフ(Wolfe)の米国特許第4,611,024号(アルジトー
ルのアセタール及びハイドロタルク石)、及び、チタス(Titus)
らの米国特許第 4,808,650号(フッ素化ジベンジリデンソルビトール添加剤)、
並びに特開昭51-22740号(ベンジリデンソルビトール)に挙げられている。
最後に、ポリマーの不均質核形成に関する研究が報告されている。そのような
研究の例として、シャトリエ及びプライス(Chatterjee and Price)の『溶融体
からの高分子の結晶化の不均一核形成I 物質−誘導形態』(“HeterogeneousN
ucleation of Crystallization of High Polymers from the Melt.I.Substrat
e-Induced Morphologies”),J.Polym.Sci.,13巻,2369頁(1975年);コリ
ントン(Collington)の『結晶化オレフィンの核形成』(“The Nucleationof C
rystalline Olefins”)、Polypropylene; The Way Ahead,a conferenceof the
Plastics and Rubber Institute,マドリッド、スペイン、1989年11月;及び、
ガーク及びシュタイン(Garg and Stein)の『核形成したポリマーの結晶化及び
形態』(“Crystallization and Morphology of Nucleated Polymers”)、Ante
c'88年、1021頁が挙げられる。
上述のことがあるにも関わらず、次のことを注記すべきである。即ち、シロキ
サン共重合体(ポリシロキサンポリエーテル又はアルキル置換されたポリシロキ
サンのいずれか)及び変性ヒュームドシリカは、単独で用いたとき、引張り強度
特性には全く改良を示さなかったということである。理由はいまだ十分には理解
されていないが、変性ヒュームドシリカを、米国出願07/783,438に教示されたポ
リシロキサンポリエーテル又は本願で教示するアルキル置換されたポリシロキサ
ンのいずれかと一緒に用いることにより相乗作用があらわれる。
理論に結び付けられたものではないが、アルキル置換されたポリシロキサンは
次の3つの作用を示すものと思われている。(1)変性ヒュームドシリカの分散薬
剤として働き、これによりシリカが大きな粒子となる凝集を、特に粉砕後に、抑
制又は防止する。(2)変性ヒュームドシリカの表面自由エネルギーを減少させる
のに寄与し、それによりコートしたシリカ表面を得、溶融ポリオレフィンによっ
て、より容易に『湿潤(wet)』となる。(3)溶融−押出法の際に全システムに対
し、加工助剤として働いている。
発明の要約
従って、本発明の目的は、熱可塑性ポリマー及び改良添加剤系を含む溶融−押
出可能な熱可塑性組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、熱可塑性ポリオレフィン、並びに、第1成分及び第2
成分を含む改良添加剤系を含む溶融−押出可能な熱可塑性組成物を提供すること
にある。
本発明の他の目的は、熱可塑性ポリマーのための改良添加剤系を提供すること
にある。
本発明の他の目的は、熱可塑性ポリオレフィンのための改良添加剤系を提供す
ることにあり、改良添加剤系には第1成分及び第2成分が含まれる。
また、本発明の目的は、改良した物理特性を有する成形品の調製方法を提供す
ることにある。
さらに、本発明の目的は、溶融−押出したファイバー又はフィルム、ファイバ
ー又はフィルム以外の溶融−押出した製品、低温プレス製品、不繊ウェッブ、使
い捨て吸収性製品、及び使い捨て製品のような成形品を提供することにある。
これらの目的及び他の目的は、以下の記載及び請求の範囲を考慮すれば、当業
者にとって明らかであろう。
よって、本発明は、熱可塑性ポリマ-及び改良添加剤系を含む溶融−押出可能
な熱可塑性組成物を提供する。このシステムの最も基本的な形態として、固体材
料の粒子が含まれる。この固体材料において、実質的に全ての粒子が、最も長い
方向で約0.001から約1マイクロメーターの範囲にあるものであり、その粒
子が親ポリマー性表面(後に定義する。)を有するものである。粒子が親ポリマ
ー性表面を有しないとき、粒子を親ポリマー性のコート表面となる材料でコート
してもよい。この場合、コート材料が改良添加剤系の第1成分と呼んだものであ
り、粒子が改良添加剤系の第2成分と呼んだものである。
本発明は、また、熱可塑性ポリオレフィン、並びに、第1成分及び第2成分を
有する改良添加剤系を含む溶融−押出可能な熱可塑性組成物を提供する。
ここで、
(A) 第1成分が、次の一般式を有するアルキル置換されたポリシロキサン
であり、
(式中、
(1)R1-R9は1価のC1-C3のアルキル基から独立に選択されるものであ
る;
(2)R10は1価のC6-C30のアルキル基である;
(3)mは約5から約50の整数である;
(4)nは0から約200の整数である;
(5)第1成分は約3000から約36000の数平均分子量を有する;
(6)第1成分は約1.1から約2.5の多分散性を有する;である。)
(B) 第2成分が疎水性ヒュームドシリカであり(ここで、第1成分:第2
成分の重量比が約10から約70の範囲であり、第2成分の実質的に全てが、最
も長い方向で約0.001から約1マイクロメーターの範囲である粒子として存
在する。)、及び、
(C) 改良添加剤系が、熱可塑性ポリオレフィンの量をベースとして、約0
.01から約3の重量パーセントの量で存在する
ものである。
本発明は、また、著しく改良した引張り強度特性を有する不繊ウェッブの調製
方法を提供するものである。この方法には、次のものが含まれる。
(A) 熱可塑性ポリオレフィン、並びに、第1成分及び第2成分を有する改
良添加剤系を含む熱可塑性組成物を溶融する工程、
(B) 得られた溶融物をダイを通して押出すことによってファイバーを形成
する工程、
(C) ファイバーを延伸する工程、
(D) 動いている(moving)有孔(foraminous)表面上にあるファイバーを
からまったファイバーのウェッブとして集積する工程。
ここで、
(1)第1成分が次の一般式を有するアルキル置換されたポリシロキサンであり、
(式中、
(a)R1−R9は1価のC1−C3のアルキル基から独立に選択されるものであ
る;
(b)R10は1価のC6−C30のアルキル基である;
(c)mは約5から約50の整数である;
(d)nは0から約200の整数である;
(e)第1成分が約3000から約36000の数平均分子量を有する;
(f)第1成分が約1.1から約2.5の多分散性を有する;ものである。)
(2)第2成分が疎水性ヒュームドシリカであり(ここで、第1成分:第2成分の
重量比が約10から約70の範囲であり、第2成分の実質的に全てが、最も長い
方向で約0.001から約1マイクロメーターの範囲の粒子として存在する。)
、及び、
(3)改良添加剤系が、熱可塑性ポリオレフィンの量をベースとして、約0.01
から約3の重量パーセントの量で存在する
である。
ある所望の態様として、R1−R9がメチル基であることがよい。他の所望の態
様として、R10が1価のC15−C22のアルキル基であることがよい。さらに他の
所望の態様として、mが約15から約25の整数であることがよい。また、さら
に他の態様として、第1成分が約8000から約15000の数平均分子量を有
するものであることがよい。
本発明の溶融−押出可能な熱可塑性組成物は、特に、おむつ、失禁用製品(in
continent products)、衛生ナプキン、タンポン、及びワイプ(wipe)などのよ
うな使い捨て吸収性製品、並びに、外科手術ガウン、靴カバー、及び仕事着など
のような使い捨て製品の製造に有用な不繊ウェッブの調製に好適である。また、
そのような組成物は、ファイバー及びフィルム以外の溶融−押出フィルム及び製
品、並びに低温プレス製品などの調製に有用である。
図面の簡単な説明
図1−図7は、すべて、本発明により調製した不繊ウェッブの引張り強度特性
を、コントロールウェッブのその特性と比較した棒グラフである。
図8−図10は、すべて、本発明により調製したファイバーの靭性の特性を、
コントロールファイバーのその特性と比較した棒グラフである。
図11は、本発明により調製したファイバーと、コントロールファイバーとの
代表的な応力−歪曲線を示すものである。
発明の詳細な説明
『物理的特性』の語は、本明細書で広く用いられており、本発明により調製し
た成形品の1以上の物理的特性を意味する。また、この語は、押出の際の成形品
の特性、特に、工程での変数又はパラメータに影響する特性を包含することを意
図する。例示すれば、ファイバーの物理的特性には、以下で定義する引張り強度
特性が挙げられる。中空又は多孔性のファイバーにとって、物理的特性には、引
張り強度特性の他に、気孔サイズ分雛及び平均気孔サイズも含まれる。不繊ウェ
ッブの物理的特性には、引張り強度特性(横方向/縦方向バランスを含む)、耐
摩擦性、並びに、靭性(toughness)及び伸び率が挙げられる。フィルムの物理
的特性には、フィルム厚(即ち、薄いフィルムの製造能)、透明度、強度、及び
ポリマーバッチ変量が含まれる。微孔性フィルムはこれまで不適とされていたポ
リマーで可能であり、一般に、より単一の気孔分散を有し、またより小さな気孔
サイズで狭い気孔サイズ分散を有する。射出成形により調製した成形品に関する
物理的特性には、耐衝撃性、そり(即ち、そりがないものへと減少させた。)、
及び他の低温特性の中から低温柔軟性が含まれる。低温プレス又は常温成形の場
合でも、多くのポリマーについて改良されている。
本明細書で用いられる、『ファイバー』の語は、直径と比較して連続であると
みなすことができるような長さを有する、実質的に連続なファイバーが含まれる
。そのようなものには、メルトブローイング法により製造されたものでもよい。
また、この語には、スパンボンディング法又は典型的な溶融−紡糸法により製造
されたような、連続なファイバーも含まれる。よって、『連続なファイバー』の
語は、実質的に連続なファイバーを除外する意図がある。さらに、この語は、そ
の他にもある中から、円形及び非円形クロスセクションの双方を有するファイバ
ー、中空ファイバー、並びに微孔性ファイバーを含むことを意味する。
本明細書で用いられる『引張り強度特性』の語は、主として、連邦試験法51
00(標準 No.191A)(Federal Test Method 5100(Standard No. 191
A))により測定したピークエネルギー、ピーク荷重、ピーク伸び率、及びピー
ク歪の値に関するものである。しかし、トラップ引裂試験(trap tear test)の
ような他の方法を用いることもできる。
『溶融−押出可能な』、『溶融−押出した』などのような語は、不繊ウェッブ
を形成する、ある溶融−押出法に関する又は関連する。そこでは、ファイバーを
形成する溶融−押出は、その次に(典型的には同時に有孔支持部上で)ウェッブ
形成工程が続く。この語には、その他にもある中から、メルトブローイング、コ
フォーミング、及びスパンボンディングなどのような周知の方法が含まれる。こ
の語は、また、ウェッブ形成がファイバー形成後の分離した、独立の工程でなさ
れる方法に関する又は関連する。そのような方法により調製した不繊ウェッブに
は結合カードウェッブ(bonded carded webs)などが含まれる。
本明細書で用いられる『重量比』の語は、改良添加剤系の第1成分の量と第2
成分の量との重量のおおよその関係を意味する。特に、重量比は、第1成分の量
を第2成分の量で割った商である。よって、重量比は、(第1成分の重量)/(
第2成分の単位重量)で表される整数で表現される。結局、重量比は単位を有さ
ない。
『粉砕した』及びその変形の語は、第2成分の粒子サイズの減少を意味する。
『添加剤系』の語は、一般に、第1成分及び第2成分の組合せに関するものであ
る。『改良添加剤系』の語は、特に、第1成分及び第2成分の組合せに関するも
のであり、そこにおいて、第2成分が粉砕した、即ち、第2成分の粒子が本明細
書で特定した範囲内にあるものに関するものである。
熱可塑性ポリマーの例としては、単に例示すれば、次のものが挙げられる。ポ
リ(オキシメチレン)又はポリホルムアルデヒド、ポリ(トリクロロアセトアル
デヒド)、ポリ(n−バレロアルデヒド)、ポリ(アセトアルデヒド)、及びポ
リ(プロピオンアルデヒド)のような末端をキャップしたポリアセタール;ポリ
アクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ (メタクリル酸)、ポリ(アクリ
ル酸エチル)、及びポリ(メタクリル酸メチル)のようなアクリルポリマー;ポ
リ(テトラフルオロエチレン)、過フッ化エチレン−プロピレン共重合体、エチ
レン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)
、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリ(フッ化ビニリデン)
、及びポリ(フッ化ビニル)のようなフルオロカーボン・ポリマー;ポリ(6−
アミノカプロン酸)又はポリ(−カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンアジ
パミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、及びポリ(11−アミノウンデ
カン酸)のようなポリアミド;ポリ(イミノ−1,3−フェニレンイミノイソフ
タロイル)又はポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)のようなポリアラミド
;ポリ−p−キシレン及びポリ(クロロ−p−キシレン)のようなパリレン;ポ
リ(オキシ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)又はポリ(p−フェニレ
ンオキシド)のようなポリアリールエーテル;ポリ(オキシ−1,4−フェニレ
ンスルフォニル−1,4−フェニレンすキシ−1,4−フェニレンーイソプロピ
リデン−1,4−フェニレン)及びポリ(スルフォニル−1,4−フェニレンオ
キシ−1,4−フェニレンスルフォニル−4,4’−ビフェニレン)のようなポ
リアリールスルホン;ポリ(ビスフェノールA)又はポリ(カルボニルジオキシ
−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン)のようなポリカ
ーボネート;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタ
レート)、及びポリ(シクロヘキシレン−1,4−ジメチレンテレフタレート)
又はポリ(オキシメチレン−1,4−シクロヘキシレンメチレンオキシテレフタ
ロイル)のようなポリエステル;ポリ(p−フェニレンスルフィド)又はポリ(
チ
オ−1,4−フェニレン)のようなポリアリールスルフィド;ポリ(ピロメリッ
トイミド−1,4−フェニレン)のようなポリイミド;ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポ
リ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−
1−ペンテン)、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ−1,3−
ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリアクリロニトリル、ポリ
(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、及びポリスチレンのようなポリオレ
フィン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体のような
先述のものの共重合体;及び先述のもののいずれかの混合物(その成分はおなじ
タイプのポリマーの場合又は2以上の違うタイプのポリマーの場合がある)であ
る。
一般に、『熱可塑性ポリオレフィン』の語が本明細書で用いられているが、こ
れは、溶融−押出による不繊ウェッブの調製に用いることができる、ある熱可塑
性ポリオレフィンを意味する。熱可塑性ポリオレフィンの例として、上記したも
のが含まれる。ある態様では、ポリオレフィンは水素と炭素原子のみを含むもの
であり、1以上の不飽和モノマーを付加重合することにより調製するものである
。そのようなポリオレフィンの例として、その他にもある中から、ポリエチレン
、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペン
テン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4
−メチル−1−ペンテン)、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ
−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、及びポリスチレンなどのものが挙げら
れる。
商業上の重要性から、ポリエチレン及びポリプロピレンが最も一般的に用いら
れる。例えば、ポリプロピレンは、さまざまな使い捨て製品に用いられる不繊ウ
ェッブの調製のためのポリマーとして、しばしば選択される。あるポリプロピレ
ンの態様として、ポリプロピレンは、ゆがんだ分子量分布を有し、z平均分子量
:重量平均分子量の比(z平均分子量/重量平均分子量の比)が、約2以上で約
5未満のものがよい。そのようなゆがんだ分子量分布のポリプロピレンは、広い
分子量分布を有するポリプロピレンを分解する(crack)ことにより得ることが
できる。
また、『熱可塑性ポリオレフィン』の語は、2以上のポリオレフィンの配合物
、並びに、2以上の異なる不飽和モノマーから調製したランダム及びブロック共
重合体も含むことを意味する。2以上のポリオレフィンの配合物は、あるケース
では、引張り強度特性について顕著で、期待し得なかった改良点を示すことがあ
る。そのような例として、異なるメルトフローレート(melt flow rate)を有す
る2つのプロピレンの配合物が挙げられる。特に、そのような配合物は、(1)メ
ルトフローレートが約30から約45のポリプロピレンを重量比で約60から約
40パーセントのものと、(2)メルトフローレートが約2から約10のポリプロ
ピレンを重量比で約40から約60パーセントのものとから成るものである。そ
のような配合物は、代表的には、約18から約30のメルトフローレートを有す
るであろう。
本発明の最も基本的な態様は、熱可塑性ポリマー及び改良添加剤系を含む溶融
−押出可能な熱可塑性組成物によって表される。その添加剤系は、実質的に全て
の粒子が、最も長い方向で約0.001から約1マイクロメーターの範囲にある
ものであり、その粒子が親ポリマー性の表面を有する固体材料の粒子を包含する
ものである。
そのような粒子に関して本明細書で用いられている『親ポリマー性』の語は、
粒子表面が、ポリマーの表面自由エネルギー以下である表面自由エネルギーを有
することを意味している。換言すれば、溶融ポリマーが粒子表面を『ぬらし(we
t)』、その粒子を成分とする熱可塑性組成物から調製された成形品の1以上の
物理的特性を十分な程度にまで改良することを意味する。粒子が親ポリマー性を
有しないとき、粒子をある材料でコートし、それにより親ポリマー性のコート表
面とすることもできる。その場合、コート材料が第1成分と呼んだものであり、
粒子が第2成分と呼んだものである。
本発明の組成物及び添加剤系には、典型的に、第1成分及び第2成分の双方が
含まれる。例示すれば、第1成分は次の一般式を有するアルキル置換されたポリ
シロキサンとなし得る。
(式中、
(1)R1−R9は1価のC1−C3のアルキル基から独立に選択されるものであ
る;
(2)R10は1価のC6−C30のアルキル基である;
(3)mは約5から約50の整数である;
(4)nは0から約200の整数である;
(5)第1成分は約3000から約36000の数平均分子量を有する;
(6)第1成分は約1.1から約2.5の多分散性を有する。)
記載したように、R1−R9は1価のC1−C3のアルキル基から独立に選択され
るものである。特に、R1−R9はメチル基又はエチル基から独立に選択されるも
のであることがよい。さらに、R1−R9はメチル基であることがよい。R10は、
一般に1価のC6−C30のアルキル基であるが、特に、R10は1価のC15−C22
のアルキル基であることがよい。
一般に、mは約5から約50の整数であり、nは0から約200の整数である
。特に、mは約15から約25の整数であり、nは約40から約80の整数であ
ることがよい。
第1成分は、数平均分子量が約3000から約36000の範囲であることが
よい。特に、第1成分は、数平均分子量が約8000から約15000の数平均
分子量の範囲を有するものであってもよい。第1成分の多分散性は一般に、約1
.1から約2.5の範囲であることがよく、特に、多分散性が約1.1から約1
.5の範囲であることがよい。
第1成分は、一般に、液体又は固体のいずれかであることがよい。そのタイプ
に関わらず、液体の第1成分が好ましい。液体の第1成分を用いると、後述する
請求の範囲の改良添加剤系及び組成物の調製を単純化するのである。
『第1成分』の語は、本明細書で広く用いられており、ある組成物又は改良添
加剤系中で1以上の第1成分を用いることを包含する。即ち、2以上の第1成分
すなわちアルキル置換されたポリシロキサンの混合物などである。また、本明細
書で代表的に定義した第1成分は、純粋な化合物として入手できないことは、当
業者により認められているべきである。よって、第1成分にとって、上記の一般
式に入らないかもしれない不純物又は関連材料が存在することによっては、ある
材料を本発明の精神及び範囲から排除することとはならない。
本発明の組成物及び改良添加剤系の第2成分には、例えば、疎水性ヒュームド
シリカを挙げることができる。疎水性シリカの表面の性質が、重要であることは
知られていない。第1成分と同じように、所望であれば、1以上の第2成分すな
わちヒュームドシリカを用いることができる。
一般に、ヒュームドシリカは、典型的には約80m2/gから約410m2 /
gの範囲の表面積を有する。ヒュームドシリカは既知の方法により容易に調製で
きる。例えば、例示するだけであるが、アントワープ(Antwerp)の米国特許第2
,863,738号、ビーグラー(Biegler)らの米国特許第3,423,184号、チルトン(Ch
ilton)らの米国特許第3,642,453号、リー(Lee)の米国特許第4,048,290号、及
びツニソン(Tunison,III)の米国特許第4,292,290号を参照のこと。
ヒュームドシリカ表面には、3つの化学基を有している。(1)孤立したヒドロ
キシ基、(2)水素結合したヒドロキシ基、及び(3)シロキサン基である。よって、
シロキサン基は疎水性であるが、一般に、表面は親水性である。しかし、ヒュー
ムドシリカの親水性シリカ表面は、表面のヒドロキシ基を疎水性試薬と反応させ
ることにより、疎水性にすることができる。好適な試薬としては、ポリジメチル
シロキサン、ジメチルジクロロシラン、及びヘキサメチルジシラザンなどが挙げ
られる。実際、これらの3つの試薬は、商業上疎水性ヒュームドシリカを製造す
るのに用いられ、それらは、キャボット・コーポレーションのキャブ−オ−シル
・ディビジョン、タソラ、イリノイ(Cab-O-Sil Division of Cabot Corporatio
n,Tascola,Illinois)から、それぞれ、CAB-O-SIL(登録商標)TS-720)TS-61
0及びTS-530として入手可能である。しかし、用いる試薬の性質が重要であるこ
と
は知られていない。ヒュームドシリカ表面を疎水性にするいかなる試薬も用いる
ことができるであろうと予想される。例えば、コバヤシ(Kobayashi)及びオー
ニシ(Ohnishi)の米国特許第4,849,022号を参照のこと。
米国出願07/783,438に記載されているように、ヒュームドシリカはその極端に
小さい粒子サイズ及び大表面積によって特徴づけられる。シリカの溶融球面及び
初期の粒子は、4塩化シリコンの蒸気を水素及び酸素の火炎中で加水分解するこ
とにより製造される。そのようなシリカ初期粒子は、典型的には約0.007か
ら約0.027マイクロメーターの範囲の粒径を有する。しかし、その形成にお
いて、そのような初期粒子はそれぞれ衝突し、溶融し、分岐した、3次元の鎖状
集合物を形成する。集合物がシリカの溶融温度以下に冷却すると、ある可逆性の
機械的凝集又はからまり(entanglement)が発生する。よって、市販のヒューム
ドシリカは、約1からおよそ80マイクロメーターの粒子サイズを有するが、粒
子の大半は40−60マイクロメーターの範囲にある。米国出願07/783,438での
使用において、機械的にサイズを減少させることは、押出機内で発生し、かつダ
イ通過の押出で発生するせん断力と溶融押出温度との組合せによる結果として、
生じるものであると推量された。そのようなサイズの減少は、約1から約20マ
イクロメーターか、その辺りの範囲の粒子サイズ分布となると思われた。粒子の
大半は、範囲の上方のサイズを有する、即ち、およそ10−20マイクロメータ
ーであると思われた。
市販の変性ヒュームドシリカの継続研究によると、顕微鏡分析により、凝集し
た粒子の大半は、約70から約80マイクロメーターの範囲内にあると、現在思
われている。また、溶融押出によるサイズの減少は、元来思われていたものより
は小さいものと思われる。結局、本発明の特に所望の態様は、著しく減少した第
2成分の粒子サイズにより、引張り強度特性に大きな改良点をもたらすという発
明に基づくものである。便宜上、『改良添加剤系』の語は、既に記載したように
、第2成分の粒子サイズが減少している添加剤系に関するものである。
一般に、第2成分の粒子サイズを減少するために行う方法が、重要であること
は知られていない。しかし、粒子サイズの減少は、著しい凝集が生じない条件下
で、所望に行うことができる。第1成分及び第2成分を含む添加剤系の有利な点
は、第1成分が第2成分の粒子をコートし、凝集を防ぐ手助けとなる点である。
第2成分の凝集を防ぐのに加えて、第1成分は第2成分を分散することを手助け
することにも作用し、改良添加剤系を含む組成物を溶融押出するのを進行させる
手助けにも作用し得る。
第2成分は、当業者に既知の方法により適当な粒子サイズに減少させることが
できる。既述したように、第2成分の粒子は、約0.001から約1マイクロメ
ーターの範囲内であることが望ましい。ある態様として、粒子サイズの範囲を約
0.2から約0.8マイクロメーターとしてもよい。また、他の態様として、粒
子サイズの範囲を約0.4から約0.6マイクロメーターとしてもよい。実務上
は、第2成分の粒子サイズを減少させる特に効果的な方法には、超音波エネルギ
ーのようなものを用いることが挙げられる。超音波エネルギーは、実験室から製
品モデルまでの範囲のサイズで市販されている既知の超音波プローブを用い供給
することができる。
第2成分を第1成分に加える前又は加えた後のいずれでも、第2成分の粒子サ
イズの減少を遂行することができる。もし、そのような減少が超音波エネルギー
を用いることによりなされるならば、一般に、第2成分を好適な液体(溶媒又は
第1成分でもよい。)に懸濁させる必要があるであろう。好適な液体には、例示
するのみであるが、水、並びに、メタノール、エタノール、及びプロパノールの
ような低分子量アルコール、並びに、アセトン及びメチルエチルケトンのような
低分子量ケトンなどが挙げられる。第2成分が疎水性ヒュームドシリカのとき、
エタノールが特に好適な溶媒であることが見出された。所望であれば、高分子量
の溶媒を用いることもできるが、低沸点の溶媒は、粒子サイズ減少工程が終わり
次第、より容易に除去することができる。
第1成分及び第2成分の双方が用いられるとき、第2成分はある既知の方法で
第1成分中に分散する。但し、通常は、第2成分の粒子サイズの範囲を所望のも
のにした後に分散を行う。湿式粉砕モーターミル(wet-grinding motormill)(
市販されている。)は、粒子サイズをさらに減少させるのに、及び所望の分散を
得るのに有効である。
改良添加剤系の第1成分:第2成分の重量比は、一般に、約10から約70の
範囲であることがよい。改良添加剤系の第1成分:第2成分の重量比は、特に、
約10から約30の範囲であることがよい。第1成分が不要のとき、即ち、粒子
が既に親ポリマー性の表面を有するとき、用いる粒子の量は、一般に、熱可塑性
ポリマーの量をベースとして、約0.0002から約0.3パーセントの重量比
で変化させてもよい。
改良添加剤系は、代表的には、熱可塑性ポリオレフィンの量をベースとして、
約0.01から約3パーセントの重量比の範囲の量で熱可塑性ポリオレフィンに
加えられる。改良添加剤系は、特に、約0.1から約1パーセントの重量比レベ
ルで存在するのがよく、約0.1から約0.5パーセントの重量比レベルで存在
するのがさらによい。
本発明の熱可塑性組成物は、当業者に既知の多くの方法により調製することが
できる。例えば、チップ又はペレット状のポリマー及び改良添加剤系を機械的に
混合し、ポリマーの粒子を改良添加剤系でコートすることができる。所望であれ
ば、コートする工程において手助けする好適な溶媒(但し、溶媒の使用は好まし
くない)に改良添加剤系を分散させ、又は、第1成分が溶媒に可溶であれば、改
良添加剤系を溶解及び分散させてもよい。その後、コートしたポリマーをその押
出機からファイバーが現れるであろう押出機の供給ホッパーに加えてもよい。し
かし、押出の際、ポリマーのバルクを通して、改良添加剤系を完全に分散するこ
とを確実に行うことに注意しなければならない。
また、ポリマーのバルクを通して改良添加剤系を分散させるために、コートし
たポリマーを、加熱したツインースクリュー配合機のような加熱した配合機に詰
めてもよい。得られた熱可塑性組成物は、典型的にはロッドとして押出され、そ
のロッドはチッパーに供給される。得られたチップ(又はペレット)をその後、
供給原料として溶融工程押出機に供給する。この工程の変形として、ポリマー中
に存在する改良添加剤系のレベルをファイバーとして押出されるポリマーに必要
な量より多くする。ポリマーチップを含む改良添加剤系(しばしば濃縮ペレット
と呼ばれる)をその後、ポリマー供給原料と混合するか、ポリマー供給原料に添
加する。
他の方法として、特定の形態のポリマーを含み、押出機に提供するホッパーの
出口に改良添加剤系を提供することにしてもよい。また、他の方法として、添加
剤系を直接押出機のバレルへ提供することとしてもよく、そこでは、添加剤系は
溶融ポリマーと配合され、得られた混合物がダイへと移動する。
本発明の方法に戻って、引張り強度特性が著しく改良した不繊ウェッブは次の
工程を含む方法により調製される。
(A) 熱可塑性ポリオレフィン並びに第1成分及び第2成分を有する改良添
加剤系を含む熱可塑性組成物を溶融する工程、
(B) 得られた溶融物をダイを通して押出すことによりファイバーを形成す
る工程、
(C) ファイバーを延伸する工程、
(D) 動いている有孔表面上にあるファイバーをからまったファイバーのウ
ェッブとして集積する工程。
ここで、
(1)第1成分が次の一般式を有するアルキル置換されたポリシロキサンであり、
(式中、
(a)R1−R9は、1価のC1−C3のアルキル基から独立に選択されるもので
ある;
(b)R10は、1価のC6−C30のアルキル基である;
(c)mは、約5から約50の整数である;
(d)nは、0から約200の整数である;
(e)第1成分が、約3000から約36000の数平均分子量を有する;
(f)第1成分が、約1.1から約2.5の多分散性を有する。)
(2)第2成分が疎水性ヒュームドシリカであり(ここで、第1成分:第2成分の
重量比が約10から約70の範囲であり、第2成分の実質的に全てが、最も長い
方向で約0.001から約1マイクロメーターの範囲である粒子として存在する
。)、及び、
(3)改良添加剤系が、熱可塑性ポリオレフィンの量をベースとして、約0.01
から約3の重量パーセントの量で存在する
ものである。
本発明の方法の第1工程では、熱可塑性ポリオレフィン並びに第1成分及び第
2成分を有する改良添加剤系を含む熱可塑性組成物(既に定義した)を溶融する
。これは、典型的にはファイバーを形成するのに用いられる装置の必須の部分で
ある押出機内でなされる。押出機内の温度及び滞留時間は、用いる熱可塑性ポリ
オレフィンに主として依存する。よって、そのようなパラメータは過度の実験に
よらずとも、当業者によって容易に決定することができる。ファイバーはその後
ダイを通り溶融混合物を押出することにより形成する。ダイの性質が重要である
ことは知られていないが、ダイは、機械の幅いっばいに広がっている1以上の列
を配置した複数のオリフィスを有していることがしばしばあってもよい。そのよ
うなオリフィスは円形又はクロスセクションの非円形であってもよい。
その後ファイバーは、典型的には十分高速の流動流にファイバーを流すことに
より延伸される。連続なファイバーを製造するとき、ファイバーをまず急冷流動
体で冷却する。この流動体は通例低圧空気である。ファイバーを延伸する流動流
(通例空気である)は、急冷流動体とは分けて、高速の空気の流体とすることが
できる。又は、ファイバーを延伸する流動流は急冷流動体の一部とすることがで
き、この場合、狭いノズルへの通路により加速される。これに反し、実質的に連
続なファイバーの製造において、流動流は通例加熱した高速の空気の流体であり
、その空気の流体により、少なくとも一部において溶融又は軟化状態であるファ
イバーを延伸する。
延伸されたファイバーは、その後動いている有孔表面上でからまったファイバ
ーのウェッブとして集積する。有孔表面としては、例を挙げるにとどまるが、回
転ドラム又は連続したベルトもしくは連続したワイヤスクリーンとすることがで
きる。後者、即ち、ワイヤスクリーンは、一般に、商業規模の設備として用いら
れる。
一般に、溶融、形成、延伸、及び集積の工程は、メルトブローイング、コフォ
ーミング、及びスパンボンディングなどのような方法に記載されたように行われ
る。例示するのみであるが、そのような方法は、以下の参考文献に例示されてお
り、この参考文献の内容は本明細書に含まれる。
(a)メルトブローイングの参考文献には、例えば、次のものが挙げられる。ペ
リー・ジュニア(R.W.Perry,Jr.)の米国特許第3,016,599号、プレンチス(
J.S.Prentice)の米国特許第3,704,198号、ケラー(J.P.Keller)らの米国
特許第3,755,527号、ブタン(R.R.Butin)らの米国特許第3,849,241号、ブタ
ン(R.R.Butin)らの米国特許第3,978,185号、ウィネスキー(T.J.Wisneski
)の米国特許第4,663,220号である。
また、次のものも参照のこと。ヴェンテ(V.A.Wente)の『超微細熱可塑性フ
ァイバー』(“Superfine Thermoplastic Fibers”)、Industrial and Enginee ring Chemistry
)48巻、No.8、1342頁-1346頁(1956年)、ヴェンテ(V.A.Wen
te)らの『超微細有機ファイバーの製造』(“Manufacture of Superfine Organ
ic Fibers”)、Navy Research Laboratory)ワシントンD.C.、NRL Report4364
(111437)、1954年5月25日付、United States Department of Commerce,Offic
e of Technical Services、並びに、ブタン(Robert R.Butin)及びローキャン
プ(Dwight T.Lohkamp)の『メルトブローイング−新しい不繊製品のための1
ステップウェッブ工程』(“Melt Blowing-A One-Step Web Process for NewNon
woven Products”)、Journal of the Technical Association of the Pulpand Paper Industry
、56巻、No.4、74頁−77頁(1973年)である。
(b)スパンボンディングの参考文献には、その他にもある中から、次のものが
挙げられる。キニー(Kinney)の米国特許第3,341,394号、ドルシュナー(Dorsc
hner)らの米国特許第3,655,862号、ドルシュナー(Dorschner)らの米国特許第
3,692,618号、ドウボ(Dobo)らの米国特許第3,705,068号、マツキ(Matsuki)
らの米国特許第3,802,817号、ポルテ(Porte)の米国特許第3,853,651号、アキ
ヤマ(Akiyama)らの米国特許第4,064,605号、ハーモン(Harmon)の米国特許第
4,091,140号、シュワルツ(Schwartz)の米国特許第4,100,319号、アピール及び
モーマン(Appel and Morman)の米国特許第4,340,563号、アピー
ル及びモーマン(Appel and Morman)の米国特許第4,405,297号、ハートマン(H
artman)らの米国特許第4,434,204号、グレイザー及びワグナー(Greiserand Wa
gner)の米国特許第4,627,811号、フォーウェル(Fowells)の米国特許第4,644,
045号である。
スパンボンディング法のようなものにより連続なファイバーを形成するならば
、不繊ウェッブが改良した引張り強度特性を示すためには、得られたウェッブに
熱及び圧力を加えてパターン結合しなければならない。そのように加える熱及び
圧力としては、それぞれ、約80℃から約180℃、約59kg/cmから約1
78kg/cm(約150−約1000ポンド/インチ)の範囲であることが好
ましい。より好ましくは、パターンは不繊ウェッブの表面積の約5%から約30
%をカバーする、約1結合/cm2から約40結合/cm2(約10−約250ボ
ンド/インチ2)を有するものを用いることがよい。
そのようなパターン結合は、既知の方法によりなされる。例えば、結合パター
ンの例及び結合方法の考察について、フォグト(vogt)の米国意匠特許第239,56
6号、ロジャース(Rogers)の米国意匠特許第264,512号、ハンセン(Hansen)ら
の米国特許第3,855,046号、ハンセン(Hansen)らの米国特許第4,493,868号を参
照のこと。
改良した引張り強度特性を有する不繊ウェッブは、また、次の方法により調製
する。これには、次の工程が含まれる。
(A) 熱可塑性ポリオレフィン、並びに、第1成分及び第2成分を有する改
良添加剤系を含む熱可塑性組成物を溶融する工程、
(B) 得られた溶融物をダイを通して押出すことによって連続なファイバー
を形成する工程、
(C) 連続なファイバーを延伸する工程、
(D) 連続なファイバーを集積しトウ(tow)にする工程、
(E) トウを切断しステープルファイバー(staple fiber)とする工程、
(F) ステープルファイバーを動いている有孔表面上におき、からまったフ
ァイバーのウェッブとする工程、。
(G) 得られた、からまったファイバーのウェッブに熱及び圧力を加え、パ
ターン結合する工程である。
ここで、第1成分及び第2成分は既に定義されたものである。
上記の工程の各々は、記述のように、又は当業者に周知のいくつかの手段のい
ずれかによって行われる。所望であれば、各々の連続なファイバーは、それらを
トウとして集積する前に仮撚り(false twist)してもよい。さらに、トウはス
テープル長さのファイバーに切断する前に、けん縮(crimp)させてもよい。ス
テープルファイバーは既知の方法で動いている有孔支持部上へおくことができる
が、ファイバーはエアーレイド(air-laid)又はウェットーレイド(wet-laid)
とすることが好ましい。結局、得られた不繊ウェッブのパターン結合は既に上述
の既知の方法によりなされ得る。
ファイバー及び不繊ウェッブの他にフィルム、射出成形製品、及び低温プレス
技術も本発明の組成物から当業者に周知の方法により調製することができる。
理論に結び付けられたものではないが、本明細書で記載した粒子及び第2成分
を用いることにより達成されるすぐれた結果は、予期し得ない熱可塑性ポリマー
の迅速な核形成によるものであると思われている。本発明の熱可塑性組成物のこ
のような迅速な核形成の作用及び観測された形態学的変化により、予期し得ない
ラメラ・ロー(lamellar row)形態及び高強度比での著しい弾性回復率をもたら
す。結局、このような熱可塑性組成物により高い弾性特性を有するファイバーの
ような溶融−押出成形品を得る。また、このような熱可塑性組成物は微孔性膜、
例えば、中空ファイバー又はフィルムを加工するのに好適である。
本発明を以下の実施例でさらに説明する。しかし、この実施例は本発明の精神
及び範囲を決して限定するものではない。実施例において特記しない限り、すべ
ての部分は重量で示す。
実施例
スパンボンド・ウェッブの調製
スパンボンド不繊ウェッブは、本質的に米国特許第4,340,563号に記載された
パイロット規模の装置で調製されたが、この参考文献の内容は本明細書に含まれ
る。
使用した熱可塑性ポリオレフィンは、エスコレン3445(Escorene3445)ポリプ
ロピレン(エクソン・ケミカル・アメリカズ、ヒューストン、テキサス 77079
(Exxon Chemical Americas,Houston,Texas 77079))である。製造者によれ
ば、このポリマーは0.90g/ccの密度及び35g/10分のメルトフローレ
ートである。
改良添加剤系の第1成分は、次の式により表すことができるアルキル置換され
たポリシロキサンであった。
このポリシロキサン第1成分は数平均分子量が約11000で、かつ多分散性が
約1.3であった。
改良添加剤系の第2成分はCAB-O-SIL(登録商標)TS-720で、キャブーオーシ
ル・ディビジョン、キャボット・コーポレーション、タソラ、イリノイ(Cab-O-
Sil Division,Cabot Corporation,Tascola,Illinois)から購入した疎水性ヒ
ュームドシリカであった。購入したこの材料は、約0.1から約10マイクロメ
ーターの範囲の粒子サイズを有していた。
第2成分を重量比20の第1成分(即ち、第1成分が20で、第2成分が1の
割合で)に分散させた。第1成分と第2成分の混合物(総量2500g)を5リ
ットルの湿式粉砕モーターミルに入れ、第2成分が第1成分中に完全に分散する
ように3回混合を行った。ミル総時間は約2時間であった。第2成分の粒子サイ
ズが所望のものに達成したか否かを目視及び粘度測定により定性的に確認した。
スパンボンディング供給ペレットを調製するために、押出機供給ホッパーから
ツイン−スクリュー押出機の下流に向けて、ポリプロピレンの量をベースとして
0.3重量パーセントと当量の速度で添加剤系を供給した(注入した)。ポリマ
ー中の添加剤系のレベルを制御するために、添加剤系の注入速度、添加剤系内容
物の量、及びポリマー供給速度をモニターした。得られたポリマー及び添加剤系
の溶融配合物は、直径2−3mmの複数のロッドとして押出された。ロッドを水
浴に通し、空気乾燥し、ペレットとした。得られたペレットの添加剤系のレベル
をシリコンの元素分析により確認した。ペレットをプラスチックで裏打ちした(
plastic-lined)箱に貯蔵した。
スパンボンディング工程でより重要な工程変数は、一般に次のものであった。
押出機温度 182℃−238℃、
溶融入口温度 182℃−238℃)
押出量 25kg/時(0.7g/ホール/分)、
スピンヘッド温度 238℃、
パック温度 231℃、
パック圧 490psig)及び
溶融温度 238℃である。
次の(1)及び(2)の2つのウェッブを形成した。その各々のベースとなる重量は
約38グラム/m2(gsm)であった。(1)未使用のポリプロピレンから調製した
コントロール・ウェッブ、及び、(2)0.3重量パーセントの改良添加剤系を含
むポリプロピレン供給ペレット(即ち、添加剤系の第2成分が粉砕されたもの)
から調製したウェッブ、の2つである。各々のウェッブを約138−140℃及
び約12psiで熱的パターン結合を行った。使用したパターンはウェッブ表面積
の約16.9パーセントをカバーする19結合/cm2(123結合/(インチ
)2)を有した。
各々のウェッブの平均ピークエネルギー、ピーク荷重、及び伸び百分率値を連
邦試験法5100(標準 No.191A)により測定した。使用した装置は、イ
ンストロン・マイクロIIデスクトップ・コンソール・インテグレーター(Inst
ron Micro II Desk Top Console Integrator)を有するインストロン・モデル1
122ユニバーサル・テスティング・インストルメント(Instron Model 1122Un
iversal Testing Instrument)(インストロン・コーポレーション、キャントン
、マサチューセッツ(Instron Corporation,Canton,Massachusetts))で
あった。ジョー・スパン・ギャップ(jaw span gap)は7.6cm(3インチ)
であり、ウェッブ試料の寸法は7.62cm×15.2cm(3インチ×6イン
チ)であった。一般に、各々のウェッブから少なくとも10個の試料を試験した
。各々のウェッブの縦方向(MD)(machine direction)及び横方向(CD)
(cross direction)の双方について試験した。表1及び表2にデータをまとめ
て示す。
改良添加剤系の存在下で得られた各々の試験パラメータの改良又は増加の程度
を評価する手助けとして、表1及び表2には『増加率(パーセント)』の欄を各
々の試験パラメータの後に加えた。各々のケースにおいて、増加率(PI)は、
ポリマーに添加剤系を加えて調製したウェッブから得られた値からコントロール
値を引いて、その差を最初のコントロール値で割り、その割った商に100を掛
けることにより計算された。即ち、PI=100×(改良値−コントロール値)
/コントロール値である。
表1及び表2から次のことがわかる。本発明による改良添加剤系を用いること
により、不繊ウェッブの引張り強度特性が著しく増加することがわかる。一般に
、ピークエネルギーの改良は本質的に縦方向及び横方向の双方で同じであった。
ピーク荷重の改良は横方向より縦方向において顕著であったが、伸び百分率の改
良に関してはその逆であった。
表1及び表2でデータとして示された改良を視覚的に表すために、データをす
べて図1−図3に示す棒グラフにプロットした。各々のウェッブの縦方向の値及
び横方向の値の双方を各々の図に含めている。
実施例2
スパンボンド・ウェッブの調製
実施例1の方法を繰り返した。但し、熱可塑性ポリマーとして、実施例1で使
用したエスコレン3445ポリプロピレンを50重量パーセント、及びエスコレン10
52(エクソン・ケミカル・アメリカズ、ヒューストン、テキサス 77079)を5
0重量パーセントからなるものを用いた。製造者によれば、エスコレン1052は5
g/10分のメルトフローレートである。配合物のメルトフローレートは22g
/10分であった。
ベースの重量約38gsmの次の3つの異なるスパンボンド・ウェッブを調製し
た。
(1)ポリプロピレン配合物のみから調製した第1コントロール・ウェッブ、
(2)0.3重量パーセントの添加剤混合物(添加剤混合物で第2成分は粉砕され
ていない)を含むポリプロピレン配合物から調製した第2コントロール・ウェッ
ブ、及び、
(3)0.3重量パーセントの添加剤混合物(添加剤混合物で第2成分は粉砕され
ている)を含むポリプロピレン配合物から調製したウェッブ、の3つである。
各々のウェッブは、実施例1で記載した熱的パターン結合を行った。実施例1
のように、さまざまな引張り強度特性を連邦試験法5100(標準 No.191
A)により測定した。この場合、測定した引張り強度特性は平均ピークエネルギ
ー、ピーク荷重、ピーク伸び率、及びピーク歪であった。表3及び表4にその結
果を示す。実施例1と同じように、表には各々の性質に増加率の欄を加えている
。
表3及び表4から明らかなことは、本発明による改良添加剤系により不繊ウェ
ッブの引張り強度特性が著しく増加したことである。一般に、改良は縦方向に顕
著であるが、横方向においても実質的に改良がなされている。表3及び表4では
第1コントロール又はウェッブ1との相対的な改良をパーセントで示しているが
、表5ではウェッブ3の各々の引張り強度特性をウェッブ2、即ち第2コントロ
ールとの相対的な改良をパーセントで記載する。この表において、『PI』は『
増加率』を表す。表5は本発明の改良添加剤系の第2成分の粒子サイズ限定の態
様の重要性を強調する。
表5.第2コントロールウェッブ2と比較したウェッブ3の改良パーセント
PI PI PI PIウェッブ
方向 ピークエネルギー ピーク荷重 ピーク伸び率 ピーク歪
3 MD 212 97 57 54
CD 190 79 58 60
表3及び表4でデータとして示された改良を視覚的に表すために、引張り強度
特性のデータをすべて図4−図7に示す棒グラフにプロットした。各々のウェッ
ブの縦方向の値及び横方向の値の双方を各々の図に含めている。図4−図7から
明らかなことは、ポリマーへの添加剤系の添加においては、ピークエネルギーが
より敏感なことである。即ち、ピークエネルギー値は、他の3つの引張り強度特
性の値が増加した以上に著しく増加した。
個々のファイバーについての改良添加剤系の効果を評価するために、靭性測定
を行った。測定は、スパンボンディング工程で、動いている有孔支持部上へおく
前に分離したファイバーについて行った。そのファイバーを第1コントロールの
ファイバー、即ちポリプロピレン配合物のみから調製したファイバーと比較した
。2つのタイプのファイバーをそれぞれ『ウェッブ3のファイバー』及び『ウェ
ッブ1のファイバー』と、呼ぶことにする。この測定の結果を表6にまとめた(
25回の測定の平均を記載)。また、表には3行目に改良パーセント(PI)デ
ータを含め、分離した欄とはしなかった。しかし、各々のケースにおいて、改良
パーセントは既述のように計算した。
表6.単一ファイバーの靭性測定
試 料 弾性率(GPa) 応力(MPa) 歪(E%)
ウェッブ1のファイバー 2.2 183.7 174.8
ウェッブ2のファイバー 5.2 293.7 527.4
PI 136 60 202
前記したのと同様に、表6でデータとして示された改良を視覚的に表すために
、靭性データを図8−図10に示すように棒グラフにプロットした。代表的な応
力
−歪曲線を図11に示す。ここで、曲線Aはウェッブ1のファイバーであり、曲
線Bはウェッブ3のファイバーである。
以上本発明を記載したが、本発明の多くの変形及び修飾が本発明の精神及び範
囲から離れることなく、当業者にとって容易に明らかになるであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C08L 101/00 LSY 7242−4J
(72)発明者 コビリヴカー ピーター マイクロヴィッ
チ
アメリカ合衆国 ジョージア州 30068
マリエッタ リローズ コート 920
(72)発明者 ギルベルイ ラ フォルス グニラ エル
サ
アメリカ合衆国 ジョージア州 30076
ロズウェル ミスティー モーニング レ
ーン 2715
【要約の続き】
所望の態様として、第2成分の粒子は、約0.001か
ら約1マイクロメーターであることがよい。組成物から
溶融押出により不繊ウェッブを得、該不繊ウェッブは熱
可塑性ポリオレフィンのみから調製した不繊ウェッブと
比較して著しく増加した引張り強度を有する。