JPH08501568A - 炭水化物結合性蛋白質の抗炎症性、寛容原性および免疫刺激性特性 - Google Patents
炭水化物結合性蛋白質の抗炎症性、寛容原性および免疫刺激性特性Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体、特にα−2,6シアル酸構造および/またはα−2,3シアル酸構造に結合可能な蛋白質の投与による炎症性応答の抑制、抗原に対する耐性の誘発、抗原に対する免疫応答の剌激、および例えば転移に関連する細胞付着の抑制または増強の方法に向けられるものである。このようなα−2,6シアル酸およびα−2,6シアル酸結合性蛋白質または断片もしくは誘導体を含有する医薬も開示される。
Description
【発明の詳細な説明】
炭水化物結合性蛋白質の抗炎症性、寛容原性および免疫剌激性特性
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、炭水化物結合性蛋白質の投与による免疫応答または細胞相互作用の
増強または阻害に向けられるものである。特に、本発明は炭水化物結合性蛋白質
の投与による炎症性応答の抑制、抗原に対する耐性の誘発、抗原に対する免疫応
答誘発の調節、および細胞付着の阻害または増強に向けられる。
2.参考文献
全ての刊行物、特許および特許出願のこれらの開示を、ここに参考としてその
まま取り入れる。
3.技術状況
哺乳動物細胞に関わる重要な工程、例えば成長、移動、形態学的進化、および
分化等は、細胞表面に作用する細胞外信号により部分的に制御されている1-3。
ある種の外部刺激は、細胞外液体を介して細胞に到達するが、一方で他のシグナ
ルは隣接するかまたは接近する細胞表面から受け取られ、直接的細胞−細胞接触
を通してそれらの影響を及ぼす4,5。
特定の細胞表面レセプタは、特定の結合を介して付着する細胞の分子的シグナ
ルを感じとることができ、またその結合を細胞応答に翻訳する生化学的機構が存
在することを示唆する証拠がある。例えば、複雑な細胞表面の相互作用は、病原
の標的組織への結合6,7、精子−卵子結合8、免疫系における細胞間の相互作用9, 10
、および胚発達間の細胞認識11等の直接的過程を補助するものと考えられてい
る。加えて、細胞−細胞認識における欠陥は、新生物転換および転移を特徴づけ
る制御されない細胞成長および死の原因となるものと考えられている12,13。
別の証拠は、細胞認識工程が、糖複合体の炭水化物鎖またはグリカン部分に媒
介されることを示唆している4,14-16。例えば、一方の細胞の表面糖複合体の、
他の細胞の相補的炭水化物結合性蛋白質(レクチン)に対する結合は、特異的相
互作用の開始を引き起こし得る。
炭水化物結合性蛋白質の一つの重要な群は、セレクチン(LEC−CAM)蛋
白質(レクチン+EGF+相補的制御領域−細胞付着分子)である。これらの蛋
白もしくは機能的に類似する蛋白またはレクチンは、細胞−細胞接触の媒介によ
って、および白血球の管外遊出によって、免疫応答(炎症性応答を含む)におけ
る臨界適役割を演じるであろう17-22。特定の炭水化物リガンドは、セレクチン
蛋白質および他のレクチン類について、推定されるレセプタ構造の部分として同
定されている17-25。同定される構造は、α−2,6およびα−2,3シアル酸
構造を含む。
セレクチン蛋白質および/または他のレクチン類との相互作用による炎症の調
節、免疫抑制および抗原に対する耐性の誘導のためのオリゴ糖およびそれらの誘
導体の使用は、開示されている26-28。セレクチンGMP−140から誘導され
たペプチド類であって、GMP−140および他のセレクチン類の結合を阻害す
るものも記述されている29。
発明の要約
本発明は、ある種の炭水化物結合性蛋白質、例えばレクチンが、哺乳動物に投
与された場合に特定の免疫応答および細胞相互作用を増強あるいは阻害するとい
う発見に向けられるものである。特に本発明は、炭水化物結合性蛋白質が、炎症
性応答の阻害、抗原に対する免疫応答の調節、抗原に対する長期耐性の誘発およ
び細胞付着の抑制または増強のために、哺乳動物に対して投与され得るという発
見に向けられるものである。
本発明は、末端シアル酸基またはそのような末端シアル酸基を含む分子を結合
可能な炭水化物結合性蛋白質が、特定の免疫応答または細胞付着の阻害または増
強の手段として、哺乳動物に対して投与され得るという発見に特に向けられるも
のである。更に特定的には、本発明は、末端結合α−2,6シアル酸構造および
/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能なレクチン類が、炎症性応答、抗原
に対する免疫応答の誘発の調節、および抗原に対する長期耐性の誘発を含む種々
の免疫応答の増強または阻害のために哺乳動物に投与され得るという発見に向け
られるものである。加うるに、本発明は、α−2,6シアル酸構造および/また
はα−2,3シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白質が、細胞付着の抑
制または増強のために哺乳動物に投与され得るという発見に向けられるものであ
る。
従って、方法の側面の一つにおいて本発明は、末端α−2,6シアル酸構造お
よび/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能な、例えばレクチンまたはその
断片もしくは誘導体等の炭水化物結合性蛋白質の少なくとも1種の免疫調節に有
効な量との組合せにおいて、抗原を投与することによる、該抗原に対する免疫応
答の誘発の調節方法に向けられるものである。
方法の側面における他の一つでは、本発明は、抗原の投与、およびそれに続く
末端α−2,6シアル酸構造および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能
な、例えばレクチンまたはその断片もしくは誘導体等の炭水化物結合性蛋白質の
少なくとも1種の投与による、該抗原に対する長期耐性の誘発方法に向けられる
ものである。
方法の側面における更に別の1側面では、本発明は、末端α−2,6シアル酸
構造および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能な、例えばレクチンまた
はその断片もしくは誘導体等の炭水化物結合性蛋白質の少なくとも1種の投与に
よる、例えば腫瘍細胞の転移および炎症に関連する特定の細胞の付着現象の増強
または阻害方法に向けられるものである。
方法の側面におけるまた更に別の面では、本発明は、末端α−2,6シアル酸
構造および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能な、例えばレクチンまた
はその断片もしくは誘導体等の炭水化物結合性蛋白質の1種以上の投与による、
肺炎症および/または肺損傷の治療に向けられるものである。
図面の簡単な記述
図1aは、CD2マーカーを発現しているヒト末梢血白血球(PBL’s)(
E−ロゼッタ型T細胞)に対する百日咳トキシン(PT)のビオチニル化β−サ
ブユニットの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図1bは、CD11bマーカーを発現しているヒトPBL(顆粒球/単球)に
対する百日咳トキシン(PT)のビオチニル化β−サブユニットの結合のフロー
サイトメトリー分析を示す。
図1cは、CD19マーカーを発現しているヒトPBL(B細胞)に対する百
日咳トキシン(PT)のビオチニル化β−サブユニットの結合のフローサイトメ
トリー分析を示す。
図2aは、CD2マーカーを発現しているヒトPBL(E−ロゼッタ型T細胞
)に対する百日咳トキシン(PT)のビオチニル化Sambucus nigr a
アグルチニン(SNA)の結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図2bは、CD11bマーカーを発現しているヒトPBL(顆粒球/単球)に
対するビオチニル化SNAの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図2cは、CD19マーカーを発現しているヒトPBL(B細胞)に対するビ
オチニル化SNAの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図3aは、CD2マーカーを発現しているヒトPBL(E−ロゼッタ型T細胞
)に対するビオチニル化Maackia amarensisアグルチニン
(MAA)の結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図3bは、CD11bマーカーを発現しているヒトPBL(顆粒球/単球)に
対するビオチニル化MAAの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図3cは、CD19マーカーを発現しているヒトPBL(B細胞)に対するビ
オチニル化MAAの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図4は、ビオチニル化レクチン類、特にSNAおよびMAAの、シアリルルイ
スA SynsorbTM(Chembiomed Ltd)を用いた腫瘍細胞系
への結合の投与量依存的阻害を示す。
図5は、フィトヘマグルチニン(PHA)により活性化されたヒトPBLに対
するビオチニル化SNAの結合を研究するフローサイトメトリーアッセイの結果
を示す。
図6は、Super Carrier(商標)(SC)抗原により免疫され、
続いてSNAN百日咳トキシン(PT)のβ−オリゴマー、リン酸緩衝食塩水(
PBS)が投与されるか、または免疫されないBalb/cマウス群において観
察されたヒヅメ腫脹により測定されるDTH炎症応答を示す。
図7は、SCにより免疫され、次いで種々の投与量のSNA、PBSを投与さ
れるか、または免疫されずにSC抗原に攻撃されるBalb/cマウス群におい
て観察されたヒヅメ腫脹により測定されるDTH炎症応答を示す。
図8は、SNAとの組合せにおいてSCを投与されたBalb/cマウス群に
おいて観察されたヒヅメ腫脹により測定されるDTH炎症応答の発達を示す。
図9は、百日咳トキシンのβ−サブユニットとの組合せにおいてSCを投与さ
れたBalb/cマウス群において観察されたヒヅメ腫脹により測定されるDT
H応答の発達を示す。
図10は、SNA、百日咳トキシン(PT)のβ−オリゴマーもしくはPBS
により免疫されるか、または免疫されず、次いで4週間後にSC抗原にて再攻撃
されるBalb/cマウス群におけるヒヅメ腫脹により測定されるDTH応答に
対する長期効果を示す。
図11aは、種々の炭水化物結合性蛋白質が有するヒト腫瘍細胞(U937細
胞)のヒト膿帯静脈内皮細胞(HUVEC)への付着に対する効果の試験を表す
。
図11bは、種々の炭水化物結合性蛋白質が有する多形核細胞(PMN)のヒ
ト膿帯静脈内皮細胞(HUVEC)への付着に対する効果の試験を表す。
図12は、E.coliリポポリサッカライド(LPS)を鼻腔内的に投与さ
れ、続いてSNA、百日咳トキシンβ−オリゴマー(PT)、シアリルルイスA
(SLeA)、およびシアリルルイスX(SleX)を投与されたBalb/c
マウス群における肺重量の減少百分率を示す。
図13は、PBS中のOVA(アルブミン、鶏卵、Sigma)およびDDA
(ジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、Kodak)により免疫され
、続いてSleX、ノイラミニダーゼ、PBSの投与を受けるか、または免疫さ
れないBalb/cマウス群におけるヒヅメ腫脹応答を示す。
図14は、E.coliリポポリサッカライド(LPS)を鼻腔内的に投与さ
れ、続いてノイラミニダーゼ、サルファターゼ、ベーターグルクロニダーゼ、A
RC199、ARC200を投与されたBalb/cマウス群における肺重量の
減少百分率を示す。
図15は、E.coliリポポリサッカライド(LPS)を鼻腔内的に投与さ
れ、続いてノイラミニダーゼ、サルファターゼ、ベーターグルクロニダーゼ、A
RC199、ARC200を投与されたBalb/cマウス群における肺洗浄中
の顆粒球減少を示す。
好ましい実施態様の詳細な記述
本発明は、ある種の炭水化物結合性蛋白質が、哺乳動物に投与された場合に炎
症性応答の抑制、抗原に対する耐性の誘発、抗原に対する免疫応答の誘発の調節
および、例えば腫瘍細胞の転移に関与する細胞付着現象の阻害または増強におい
て有効であるという発見に向けられるものである。
1.定義
ここで使用されるように、以下の用語は下記の意味を有する:
“炎症性応答”または“炎症性疾患”は、特異的および非特異的防御系に関連
する免疫反応を指す。特異的防御反応は、抗原に対する特異的免疫系反応である
。特異的防御系反応の例は、ウイルス、アレルゲン等の抗原に対する抗体応答お
よび遅延型過敏症を含む。非特異的防御系反応は、一般に免疫学的記憶が不能な
白
血球により媒介される炎症性応答である。このような細胞は、マクロファージ、
好酸球および好中球を含む。非特異的反応の例は、蜂に剌された直後の腫脹、お
よび細菌感染部位のPMN白血球の集合(例えば細菌性肺炎における肺浸潤およ
び膿瘍における膿汁形成)を含む。
本発明の範囲内における他の“炎症性応答”または“炎症性疾患”は、例えば
リュウマチ性関節炎、狼瘡、多発性硬化症、虚血後白血球媒介組織損傷(再潅流
損傷)、凍傷または凍傷ショック、急性白血球媒介肺損傷(ARDS)、喘息、
外傷性ショック、敗血性ショック腎炎等の自己免疫疾患、ならびにアトピー性皮
膚炎、乾癖、および炎症性腸炎を含む急性および慢性の炎症を含む。アテローム
性動脈硬化症、および血栓等の種々の血小板−媒介病変も“炎症性応答”または
“炎症性疾患”の定義の包含される。加えて、“炎症性応答”または“炎症性疾
患”は、結腸癌、および黒色腫を含む特定の例を有する循環する腫瘍細胞の付着
を含んでもよい。
“シアル酸”は、5−アミノ−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラ
クト−ノヌロン酸(“Neu5Ac”)およびその誘導体を指す。ここにおける
シアル酸誘導体の誘導体を記述する命名法は、Reuterら34に示されている
。
サッカライド単位の化学修飾は、この技術で周知である。例えば、化学修飾さ
れたシアル酸誘導体は、9−アジド−Neu5Ac、9−アミノ−Neu5Ac
、9−デオキシ−Neu5Ac、9−フルオロ−Neu5Ac、9−ブロモ−N
eu5Ac、8−デオキシ−Neu5Ac、8−エピ−Neu5Ac、7−デオ
キシ−Neu5Ac、7−エピ−Neu5Ac、7−8−ビス−エピ−Neu5
Ac、4−O−メチル−Neu5Ac、4−N−アセチル−Neu5Ac、4,
7−ジ−デオキシ−Neu5Ac、4−ウノ−Neu5Ac、3−ヒドロキシ−
Neu5Ac、3−フルオロ−Neu5Ac酸を含み、ならびにNeu5Acの
6−チオ類似体がこの技術において知られている。このようなシアル酸誘導体の
調製方法は、1992年5月26日出願の通常に譲渡される処理番号00047
5−005、米国特許出願番号07/889,017に教示があり、この出願は
、ここに参考としてその全体を取り入れる。
“α−2,6シアル酸構造”は、末端Neu5Acα(2,6)ガラクトース
配列またはその誘導体を含む分子を指す。α−2,6シアル酸構造を含む分子は
、セレクチンおよび他のレクチンについての推定されるレセプタ構造の一部を含
むものとして同定される。
“α−2,3シアル酸構造”は、末端Neu5Acα(2,3)ガラクトース
配列またはその誘導体を含む分子を指す。α−2,3シアル酸構造を含む分子は
、同様にセレクチンおよび他のレクチンについての推定されるレセプタ構造の一
部を含むものとして同定される。
“炭水化物結合性蛋白質”は、哺乳動物細胞の表面に含まれる炭水化物構造に
対して結合しうる非免疫原の任意の蛋白質、特にレクチンまたはその断片もしく
は誘導体を指す。一般的には、本願においては“炭水化物結合性蛋白質”は、末
端のシアル酸構造、特にはα−2,6シアル酸構造および/またはα−2,3シ
アル酸構造またはその誘導体を結合可能な蛋白質を指す。
“レクチン類”は、しばしば植物から得られ、2個以上の炭水化物結合性部位
を有する非免疫原の炭水化物結合性蛋白質またはその誘導体もしくは断片を指す
。これらの結合蛋白質は、典型的には細胞を凝集させ、複合炭水化物を沈殿させ
る能力を有する。レクチン類は、それらの炭水化物結合特異性に基づいて分類さ
れ、この技術においては周知である。
“急性呼吸困難症候群”または“ARDS”は、白血球媒介肺損傷を有する炎
症症状を指す。
“再潅流損傷”は、白血球媒介組織損傷を有する炎症症状を指す。
本願における“百日咳トキシン”または“PT”は、百日咳の病因物質であるBordetella
pertussisにより産生されるビルレンス因子の
一つである百日咳トキシン(PT)のβサブユニットまたはβオリゴマーを指す
。この蛋白質は、α−2,6シアル酸構造およびα−2,3シアル酸構造の両者
に結合する。
“Sambucus nigraアグルチニン”または“SNA”は、ニワト
コのキナ皮から得られ、ガラクトースにα(2,6)−結合する末端シアル酸を
含むオリゴサッカライドに対して高い親和性をもって結合するが、末端α−2,
3シアル酸構造を含む分子を結合しないヘマグルチニン−型植物レクチンを指す
か、またはα−2,6シアル酸構造を結合可能な断片もしくは誘導体を指す。
“Maackia amurensisアグルチニン”または“MAA”は、
α−2,3シアル酸構造を含む分子を結合するMaackia amurens
isの種子に含まれる植物ロイコアグルチニン型レクチン、またはα−2,3シ
アル酸構造を結合可能な断片もしくは誘導体を指す。
“ノイラミニダーゼ”は、糖蛋白質および糖脂質のオリゴサッカライド鎖の末
端におけるガラクトース−N−アセチルノイラミン酸結合を加水分解し、これに
よってα−2,6シアル酸構造を含む分子を結合可能なN−アセチルノイラミン
酸、またはα−2,6シアル酸構造を結合可能な断片もしくは誘導体を遊離する
。
“フコシダーゼ”は、糖蛋白質および糖脂質のオリゴサッカライド鎖からフコ
ースを切断し、これはα−2,3シアル酸構造を含む分子、またはα−2,3シ
アル酸構造を結合可能な断片もしくは誘導体を結合可能である。
“β−ガラクトシダーゼ”は、GlcNAc骨格を破壊する酵素であり、これ
はα−2,3シアル酸構造を含む分子、またはα−2,3シアル酸構造を結合可
能な断片もしくは誘導体を結合可能である。
“サルファターゼ”は、炭水化物から硫酸基を切断する酵素である。
“細胞媒介免疫応答”は、細胞−細胞相互作用により媒介される哺乳動物免疫
応答を指す。この用語に含まれるものは、遅延型過敏症応答(DTH)等の抗原
に対する細胞媒介炎症性応答、ならびに心筋梗塞、ウイルス−誘発肺炎、ショッ
クおよび後遺症(例えば多器官不全)、急性呼吸困難症候群(ARDS)、アレ
ルギー性応答等の細胞媒介炎症性応答である。一般的に、細胞媒介免疫応答は、
白血球媒介応答である。
“液性免疫応答”は、抗原−抗体相互作用に関連する哺乳動物免疫応答を指す
。
“DTH炎症応答”または遅延型過敏症応答は、単核細胞−富有炎症および抗
原的攻撃後に起こる腫脹を生じるT細胞媒介反応である。
“耐性”または“免疫学的耐性”は、同様な条件(例えば投与量等)において
特定の抗原により引き出される最初の免疫応答に比較して、第2の、または引き
続く抗原的攻撃において前記抗原に対して哺乳動物に誘発される低減された免疫
応答を指す。本発明において“耐性”は、抗原の投与および引き続く、α−2,
6シアル酸構造および/またはα−2,3シアル酸構造に結合する炭水化物結合
性蛋白質の1種以上の投与により得られるであろう。
2.有用性
いずれの理論にも制限されることなく、主題の炭水化物結合性蛋白質は免疫応
答に多様に影響する。炭水化物結合性蛋白質は、それが免疫系の特定の抗原に対
する最初の曝露と同時に投与された場合に、哺乳動物が該抗原について“教育”
されることを阻害しうる。また、炭水化物結合性蛋白質は、免疫系の該抗原に対
する第2回または後の曝露の後に投与された場合に、細胞媒介免疫応答分泌期(
例えばDTH応答の炎症成分)を阻害しうる。さらに、主題の炭水化物結合性蛋
白質は、免疫系の該抗原に対する第2回または後の曝露の後に投与された場合に
、耐性を誘導し得る。
更に、α−2,6シアル酸構造を結合し、あるいはα2,3−シアル酸構造を
結合する炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体の投与は、α−2
,6およびα−2,3構造を含むLEC−CAM蛋白質および他のレクチンのそ
れに対する推定されるレセプタに対する結合に影響を与える。
本発明は、特に、例えばレクチン等の非免疫原の炭水化物結合性蛋白質または
α−2,6および/またはα−2,3シアル酸構造に結合可能な断片もしくは誘
導体の投与による、哺乳動物における特定の免疫応答または細胞相互作用の増強
または阻害方法を提供する。
α−2,6および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能なレクチン等の
蛋白質は、この技術で既知である。α−2,6および/またはα−2,3シアル
酸構造を結合可能な蛋白質は、例えば百日咳トキシン(PT)のβ−サブユニッ
ト、Sambucus nigraアグルチニン(SNA)、ノイラミニダーゼ
、サルファターゼ、フコシダーゼ、Maackia amurensisアグル
チニン(MAA)、β−ガラクトシダーゼ、およびα−2,6および/またはα
−2,3シアル酸構造を結合可能な断片または誘導体を含む。
しかしながら、本発明は特定の例示される炭水化物結合性蛋白質の使用に限定
されるものではなく、むしろα−2,6および/またはα−2,3シアル酸構造
を結合可能な任意の断片または誘導体の使用を包含するものであり、これは哺乳
動物に投与された場合に、免疫応答および細胞相互作用、特に炎症性応答または
症状、抗原に対する耐性、抗原に対する免疫応答の調節の増強または阻害、なら
びに例えば転移および炎症に関与する細胞付着現象の阻害または増強を生じる。
リガンド間の結合の慣用のアッセイ方法により、α−2,6シアル酸構造およ
び/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能な他の蛋白質を同定することは、
十分に通常の技術水準にある。このような方法は、例えば競合結合アッセイおよ
びレセプタ結合アッセイを含む。本発明は、特に、Pearce−Prattら31
に記述される結合を使用して炭水化物結合特異性を測定する。
従って、本発明は更に、種々の免疫応答および細胞相互作用、例えば炎症、抗
原耐性、抗原応答の調節または細胞付着を誘発または抑制し得る蛋白質が、それ
らのα−2,6および/またはα−2,3シアル酸構造を結合する能力に基づい
て推定的に同定され得る方法を提供する。
本発明において使用するために好適な蛋白質は、α−2,6シアル酸構造およ
び/またはα−2,3シアル酸構造を結合しうるであろう。しかしながら、有効
な蛋白質の付加的な必須条件は、インビボ投与について適切であることを含むで
あろう。特に、該炭水化物結合性蛋白質は、毒性であってはならず、また典型的
には約0.5−50mg/kg体重の範囲である所望の投与量において十分に溶
解性でなければならない。
これに関連して、試験を行った炭水化物結合性蛋白質の一つ、特定的にはMA
Aが毒性を有することが見い出された。しかしながら、例えば化学的誘導、変異
生成、または組換え技術により、毒性を有さず、しかもα−2,3シアル酸構造
を結合可能なMAAの誘導体を生成させることが可能であろう。従って、本発明
は、例えばレクチン等のα−2,6シアル酸構造および/またはα−2,3シア
ル酸構造を結合する能力を維持しつつそれらが非毒性となるように修飾された、
α−2,6シアル酸構造および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能な蛋
白質の断片または誘導体をも意図するものである。
同様にして、所望の投与量において充分に溶解しない炭水化物結合性蛋白質は
、例えば親水性残基の付加または変異生成により可溶化され得る。蛋白質の可溶
化方法はこの技術において既知である。
本発明は、特に、好−炎症的に有効量の、α−2,6および/またはα−2,
3シアル酸構造またはそのようなシアル酸構造を含む分子を結合可能なレクチン
等の1種以上の蛋白質を投与することによる、炎症性応答または疾患の抑制方法
を提供するものである。
本発明により治療可能な炎症性応答または疾患は、特異的および非特異的防御
系が関与する炎症性免疫反応を含む。上記に議論したように、そのような症状は
、ウイルスアレルゲン等の抗原に対する抗体応答、遅延型過敏症、リュウマチ性
関節炎、狼瘡、虚血後白血球媒介組織損傷(再潅流損傷)、凍傷または凍傷ショ
ック、急性白血球媒介肺損傷(例えば、急性呼吸困難症候群)、喘息、外傷性シ
ョック、敗血性ショック腎炎等の自己免疫疾患、ならびにアトピー性皮膚炎、乾
癬、および炎症性腸炎を含む急性および慢性の炎症を含む。更に本発明により治
療されうる炎症性疾患は、アテローム性動脈硬化症、および血栓等の血小板−媒
介病変も包含されうる。
特に興味ある炎症性症状は、遅延型炎症性反応、再潅流損傷、および急性−白
血球媒介肺損傷(ARDS)を含む。
本発明は、炎症性応答または疾患が、α−2,6および/またはα−2,3シ
アル酸構造に結合可能な例えばレクチン等の蛋白質またはその断片もしくは誘導
体の1種以上の有効量を投与することにより抑制されうる一般的方法を提供する
ものである。しかしながら、特に本発明は、炎症性応答または疾患が、百日咳ト
キシンのβ−サブユニット(PT)、Sambucus nigraアグルチニ
ン(SNA)、Maackia amurensisの非毒性誘導体、フコシダ
ーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼならびにα−2,6シアル酸構
造および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能なそれらの誘導体または断
片から選択される1種以上の蛋白質の有効量投与することにより治療または抑制
されうる方法を提供するものである。
更に本発明は、α−2,6および/またはα−2,3シアル酸構造を結合可能
な蛋白質または断片もしくは誘導体の1種以上の有効量を投与することによる、
哺乳動物における免疫応答および細胞付着現象の剌激または阻害のための一般的
方法を提供するものである。
このような免疫応答は、細胞媒介および液性免疫応答を含む。既に論じたよう
に、このような免疫応答は、特に炎症性応答または炎症性疾患を含む。本発明は
、更にα−2,6シアル酸構造および/またはα−2,3シアル酸構造に結合可
能な例えばレクチン等の炭水化物結合性蛋白質の1種以上のとの組合せにおいて
、哺乳動物に抗原を投与することを含む抗原に対する免疫応答の誘発に影響を与
える方法を提供するものである。
例えば、SNAは抗原と共に投与された場合に、該抗原に対する免疫応答の誘
発を調節することが見い出された。従って、主題の炭水化物結合性蛋白質は、ワ
クチン、人工器官または組織移植物、同種異系器官および組織移植物と共に、そ
れに含まれる外来性抗原に対する免疫応答を調節する手段として投与され得る免
疫調節剤としての利用可能性を有するであろう。
更に、主題のα−2,6および/またはα−2,3結合蛋白質は、特定の抗原
により免疫された哺乳動物に投与された場合に前記抗原に対して長期耐性を誘導
することが見い出された。
特に、抗原により免疫された哺乳動物に対するSNAの投与は、同抗原による
引き続く攻撃に対して前記動物の低減された免疫応答を示すことが見い出された
。従って、主題の炭水化物結合性蛋白質、特にSNAは、免疫寛容剤としての利
用性を有する。このような性質が与えられた場合に、このような炭水化物結合性
蛋白質、またはその断片もしくは誘導体、特にSNAは、“免疫寛容性”誘導ア
レルゲンの投与はアレルギー性疾患の治療手段として知られていることから、ア
レルギー性疾患の治療に特に好適であろう。
本発明は更に、ある種の細胞型、特に腫瘍細胞および多形核細胞(PMN)の
内皮細胞に対する付着、の阻害あまたは増強方法を提供するものである。これに
関連して、SNA蛋白質が、インビトロにおいて表面にE−セレクチン(ELA
M−1)を発現する内皮細胞に対するPMNおよび腫瘍細胞の結合を増強するこ
とが見い出された。
これと対照的に、百日咳トキシン(PT)のβ−オリゴマーは、ELAM−1
を発現する内皮細胞に対するPMNおよび腫瘍細胞の結合を阻害する。腫瘍転移
は、腫瘍細胞のセレクチン保有細胞に対する付着に関連すると考えられている。
従って、α−2,6および/またはα−2,3シアル酸構造の哺乳動物に対する
投与は、転移阻害方法を提供する。例えば、主題の炭水化物結合性蛋白質または
その断片もしくは誘導体は、外科処置の間に循環系に放出され得る腫瘍細胞の転
移の阻害方法として、腫瘍の外科処置または生検の前、間または後に投与され得
る。
炎症性反応または疾患の抑制に関連する方法において、主題の炭水化物結合性
蛋白質または断片もしくは誘導体は、一般に炎症性応答の開始後、1−15時間
にて投与され、または好ましくは炎症の始まりから約1−10時間で投与される
。
抗原に対する免疫応答の誘発の調節に関する方法において、主題の炭水化物結
合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体は、抗原と共に投与されるであろう。
抗原に対する長期耐性の誘発に関する方法において、主題の炭水化物結合性蛋
白質またはその断片もしくは誘導体は、一般的に抗原に対して免疫されている哺
乳動物に投与されるであろう。好ましくは炭水化物結合性蛋白質またはその断片
もしくは誘導体は、抗原の曝露後約1−15時間、更に好ましくは抗原の曝露後
1−10時間で投与される。しかしながら、これらの時間は、特定の抗原、およ
び投与される炭水化物結合性蛋白質に依存して変化しうる。
転移阻害に関連する方法において、主題の炭水化物結合性蛋白質またはその断
片もしくは誘導体は、一般的に腫瘍外科処置または生検の約5時間前から腫瘍外
科処置または生検の約15時間後までの範囲内において、または腫瘍外科処置も
しくは生検の間に投与されるであろう。
一般的に、主題の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体は、例
えば筋肉内または脈管内経路等、非経口的に投与されるであろう。しかしながら
、例えば、経口、経皮、直腸的、気管内的、鼻腔内的剤型を含む他の剤型も好適
である。例えば、鼻腔内的および気管内的剤型は、治療される炎症症状が急性呼
吸困難性症候群(ARDS)等の肺炎症に関連する場合に好ましいであろう。対
照的に経口剤型は、治療される炎症症状が例えば炎症性腸疾患等の消化管に関連
する場合に好ましいであろう。
本発明において使用される医薬組成物は、一般的に、α−2,6シアル酸構造
および/またはα−2,3シアル酸構造に結合可能な蛋白質またはその断片もし
くは誘導体の1種以上の有効量を、医薬的に許容される担体および/または賦形
剤との組合せにおいて含む。特定の医薬的に許容される担体および賦形剤は、投
与剤型に依存して変化するであろう。
例えば、非経口的投与形態はリン酸緩衝食塩水を含んでよく、一方鼻腔内的剤
型は吸入剤を含み、経口投与剤は、腸陽性被覆を有するであろう。適当な担体お
よび賦形剤、ならびに異なる投与形態の剤型の選択は、医薬技術において充分に
通常の技術水準にある。
主題の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体は、好ましくは約
0.5から50mg/kg体重まで、最も好ましくは5−10mg/kgの範囲
の投与量をもって投与される。一般的に本発明の方法は、主題の炭水化物結合性
蛋白質の単独投与の投与に関連する。しかしながら、本発明は、主題の炭水化物
結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体の反復投与も包含する。主題の炭水
化物結合性蛋白質の反復投与は、リュウマチ性関節炎等の慢性または持続的炎症
性疾患、急性または慢性炎症、乾癬、炎症性腸炎、ならびに狼瘡、多発性硬化症
またはリュウマチ性関節炎等の炎症性応答を伴う自己免疫疾患の治療において望
ましいものである。
3.例
本発明およびその優位点を完全に例示するために、以下の例が示され、これら
の例は例示のみを意図するものであって、本発明の範囲を限定することを意図す
るものではない。
例1−11は数種の炭水化物結合性蛋白質の炭水化物結合性、抗炎症的性質お
よび免疫調節的性質を例示する。これらの例において使用される蛋白質は、百日
咳トキシンのβ−サブユニット、ニワトコの木の樹皮から単離されたSambucus
nigraレクチン、Maackia amurensis
からのレクチンおよびノイラミニダーゼである。例1
−−百日咳トキシンのβ−サブユニット、Sambucus nigraア
グルチニンおよびMaackia amurensisアグルチニンの
炭水化物結合特性
百日咳トキシン(PT)のβ−サブユニットは以前に記述されているようにし
てビオチニル化され30、一方ビオチニル化Sambucus nigraアグル
チニン(SNA)およびビオチニル化Maackia amurensisアグ
ルチニン(MAA)は、商業的に入手された(Boehringer Mann
heim)。結合アッセイは、先に報告されているようにして行われた31。要約
すれば、マイクロタイタープレートのウエルを5mMのMgCl2および15m
MのNaN3を含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH6.8)中の5
0μlのBSA接合体(50μg/ml)にて、4℃で16時間被覆した。該溶
液を吸引除去し、0.05パーセントのTween20を含むPBS(PBST
)中の1パーセントBSA、10μlにて置換した。室温(RT)にて2−3時
間インキュベートした後、該マイクロタイターウエルを300μlのPBSTに
て4回洗浄した。次いで、PTβ−サブユニット−ビオチン、SNA−ビオチン
またはMAA−ビオチン(1/200希釈)をマイクロタイターウエルに加えた
。RTにて1時間インキュベート後、プレートをPBSTにて4回洗浄した。ア
ビジン−パーオキシダーゼ(PBST中の1mg/ml溶液の1/3000希釈
物を100μl)を加え、次いで0.1パーセントH2O2 v/vを含む5mM
クエン酸緩衝溶液、pH4.2中の1mMABTSからなる酵素基質溶液をプレ
ートに加えた。30分間発色せしめ、次いでTitertek Multisk
anTMプレート読取装置にて405nmで測定した。結果は、表1−3に記述さ
れ、結合は骨格αNeuAc(2−3)βGal(1−4)βGlcNAc−B
SAまたはαNeuAc(2−6)βGal(1−4)βGlcNAc−BSA
のいずれかに相対的な百分率で示されている。表1から分かるように、PTβ−
オリゴマー−ビオチンは、シアリルルイスXおよびシアリルルイスAの両者と結
合する。更に興味深いことに、PTβ−オリゴマー−ビオチンが、αNeuAc
(2−6)βGal(1−4)βGlcNAc−BSA骨格に最も高い親和性を
もって結合することが観察された。
例2−−ヒト白血球母集団上の炭水化物結合領域の発現
末梢血白血球(PBL’s)を健常の提供者から得た。PBL’sをlx106
の細胞を含むサンプルに分別し、次いでこれらを、赤色蛍光色素にて標識され
た細胞特異的マーカーに対するモノクローナル抗体の飽和濃度と混合し、氷上に
1時間置いた。次いで、これらの細胞を洗浄し、ビオチニル化炭水化物結合性蛋
白質にて着色した。次いで、ビオチニル化レクチンに特異的に結合する緑色蛍光
標識アビジンを、細胞に添加した。該細胞を、フローサイトメーター(Coul
terTM ProfileII)にて分析した。この実験の結果は、図1−3に
示されている。図1は、百日咳トキシンのビオチニル化B−サブユニットが、ヒ
トPBL’sに弱く結合することを例示しており、更に特定的には、CD2マー
カーを発現する細胞(E−ロゼッタ型T細胞)に6.6パーセント
(図1a)、CD11bマーカーを発現する細胞(顆粒級/単球)に4.4パー
セント(図1b)、およびCD19マーカーを発現する細胞(B細胞)にはより
低く3.5パーセント(図1c)である。図2は、ビオチニル化SNAが、ヒト
PBL’sに強く結合することを例示しており、更に特定的には、CD2マーカ
ーを発現する細胞(E−ロゼッタ型T細胞)に51.9パーセント(図2a)、
CD11bマーカーを発現する細胞(顆粒級/単球)に39.7パーセント(図
2b)、およびCD19マーカーを発現する細胞(B細胞)にはより低く11.
9パーセント(図2c)である。図3は、ビオチニル化MAAが、ヒトPBL’
sに強く結合することを例示しており、更に特定的には、CD2マーカーを発現
する細胞(E−ロゼッタ型T細胞)に43.5パーセント(図3a)、CD11
bマーカーを発現する細胞(顆粒級/単球)に31.3パーセント(図3b)、
およびCD19マーカーを発現する細胞(B細胞)にはより低く19.2パーセ
ント(図3c)である。例3
−−標識炭水化物結合性蛋白質のsynsorbに結合されたシアリルルイ
スAによる着色の阻害
腫瘍細胞系HL60ヒトおよびU937マウス由来の細胞を、例2に略述した
と同様に特異的ビオチニル化レクチンSNAおよびMAAについて着色した。細
胞の分別量を、シアリルルイスA SynsorbTM(Chembiomed
Ltd)または非標識SynsorbTM(Chembiomed Ltd)の存
在下でも着色した。図4は、シアリルルイスA SynsorbTM(Chemb
iomed Ltd)が、投与量に依存して両細胞系に対するSNAおよびMA
Aの結合を阻害しうることを示している。結果は、SNAおよびMAAの対照結
合の百分率で表されている。従って、この結果はこれらの炭水化物結合性蛋白質
が炭水化物構造シアリルルイスAに結合可能であることを示している。例4
−−PHAによる活性化前後におけるヒト白血球母集団上の炭水化物結合領
域の発現
末梢血白血球(PBL)を健常の提供者から得た。次いで、PBLを10パー
セントのAB血清を追加したRPMI1640(Gibco)中で、PHA10
μg/mlの存在下、または不存在下で5パーセントCO2内、37℃にて24
時間培養した。次いで、刺激を受けた細胞および休止細胞の分別量を、赤色蛍光
色素−1(RD−1)により標識された細胞特異的マーカーに対するモノクロー
ナル抗体の飽和濃度によって着色し、氷上に1時間置いた。次いでこれらの細胞
を洗浄し、ビオチニル化SNAに特異的に結合する緑色蛍光標識アビジンを、細
胞に加えた。次いでこれらの細胞を、フローサイトメーター(CoulterTM
ProfileII)にて分析した。この実験の結果は、ビオチニル化SNAが種
種のヒトPBL母集団に結合し、またこれらの細胞のPHAによる活性化が、S
NAが結合可能な炭水化物の発現に影響を与えることを例示している(図5)。例5
−−DTH炎症性応答の阻害
DTH炎症性応答を、SmithおよびZiola32により記述されているよ
うにしてマウスヒヅメ腫脹アッセイを使用して測定した。要約すれば、Balb
/cマウス群を、強い哺乳動物炎症性DTH応答を誘発することが示されている
Super Carrier(商標)(Pierce Rockford,Il
,USA61105)、10μgを用いて免疫した。7日後に、マウスの各群に
対して10または20μgのSuper Carrier(商標)を用いてヒヅ
メに攻撃を加えた。生じた炎症性ヒヅメ腫脹を、攻撃から24時間後に、Mit
utoyo Engineeringマイクロメーターにて測定した。
炎症性DTH応答に対する炭水化物結合性蛋白質の影響を評価するために、マ
ウスの群はヒヅメへの攻撃から5時間後に、尾部静脈に注射された10μgの蛋
白質を投与された。対照群は、未処置のままであるか、または100μLのリン
酸緩衝食塩水(PBS)を投与された。この実験の結果は、図6に示されている
。百日咳トキシンのβ−サブユニットは、炎症を対照マウスに比べて76パーセ
ント低減し、一方においてSNAは炎症を対照マウスに比べて61.5パーセン
ト低減した。例6
−−炭水化物結合性蛋白質SNAの抗−炎症性の投与量依存性
4群のマウスを、上記例5に記述したのと同様にしてSuper Carri
er(商標)(SC)を用いて初期免疫および攻撃に付した。ヒヅメに対する攻
撃から5時間後に、群に対してPBS中に0.0g、1.0、5.0
または10.0μgのSNAを含む100μlの溶液を静脈内的に注射した。各
投与群についてのDTH応答を、攻撃から24時間後に測定し、図7に示した。
PBSまたは1.0μgのレクチンを投与された群は、実質的に正の対照群と同
程度のヒヅメ腫脹を示したが、5.0または10.0μgのSNAを投与された
群はそれぞれPBS対照の61%および40%のヒヅメ腫脹の低減を示した。例7
−−免疫応答の誘発に対する炭水化物結合性蛋白質の効果
免疫応答の誘発に対して該炭水化物結合性蛋白質が有する効果を試験するため
に、免疫の時点(ヒヅメ攻撃の前)においてSNAまたは百日咳トキシンのB−
サブユニットのいずれかを添加して例5に概略を記したようにマウスを免疫し、
また攻撃した。図8は、炭水化物結合性蛋白質が免疫応答の誘発を調節する能力
を有すると考えられることを示している。しかしながら図9は、百日咳トキシン
のB−サブユニットがこの性質を有さず、SCに対する免疫応答の誘発について
影響しないことを示している。このことは、従来の研究において、百日咳トキシ
ン全体が、免疫剌激性を有することを示唆する事実を無視するものである。例8
−−炭水化物結合性蛋白質による長期耐性の誘発
例5において炭水化物結合性蛋白質を用いて処置されたマウスと同じ群を、初
期免疫から4週間後にSCにて攻撃した。未処置の対照は、通常の程度のヒヅメ
腫脹をもって応答したが、一方では、SNAにより処置された群は、PBS対照
群に比べて52パーセントのヒヅメ腫脹の低減を示した(図10)。しかしなが
ら、百日咳トキシンのB−サブユニットにて処置された群は、対照より100パ
ーセント増大した応答を有した。細胞媒介免疫応答の抑制を与えることに加えて
、上記のデータは、この発明の炭水化物結合性蛋白質SNAを用いた処置が、同
じ抗原による更なる攻撃に対する耐性を付与することを示している。例9
−−ELAM−1依存性細胞の活性化脈管内皮への付着に対する炭水化物結
合性蛋白質の効果
この例は、炭水化物結合性蛋白質が、活性化脈管内皮へのELAM−1依存性
細胞の付着を阻害しうるか否かを試験するものである。特定的には、インビトロ
細胞結合アッセイは、Loweら18により記述されている様にして行われた。概
略を記述すると、臍帯静脈内皮細胞(Cell Systems,
Seattle,WA,USAから購入したHUVECs)を、ELAM−1を
発現させるためにTNF(10μg/ml)にて剌激した。HUVECに対して
ELAM−1依存性の様式で結合することが示されているヒト腫瘍細胞系、ヒト
多形核細胞(PMN)またはHL60を、HUVECに対するELAM−1依存
性結合に対してSNAが有する効果を測定するために使用した。図11aおよび
bは、これらの化合物がHUVECに対するELAM−1依存性結合に対して有
する効果を例示するこの例の結果を示している。百日咳トキシンのB−オリゴマ
ーは、HUVECに対するPNMおよびHL60の両者の結合を阻害する。この
ことは、刊行されている技術に一致する。しかしながら、SNAは、HUVEC
に対するPNMおよびHL60の両者の結合を改善する。この結合の増強が与え
られた場合に、SNAが細胞交差結合剤として機能する多機能性レクチンである
ことが要求される。これと同じ型の活性化は、細胞付着を増強し、しかもインビ
ボにおいて炎症を阻止することができるPMN上のシアリルルイスX決定基に対
する抗体についても報告されている。例10
−−E.coli LPSに起因する肺損傷に対する炭水化物結合性蛋白
質および他の化合物の効果
E.coli LPS(リポポリサッカライド)に起因する肺損傷を、マウス
にE.coli LPSを鼻腔内的に与えてから24時間後に切開したマウスの
肺重量を計測することにより測定した。特定的には、8−10週令のBalb/
cマウスの群を50μlのPBS中の5μg/マウスのE.coli LPSを
用いて軽い麻酔下で鼻腔内的に感作させた。5時間後に、200μlのPBS中
の50μg/マウスのSNA、100μg/マウスのSNA、10μg/マウス
の百日咳トキシンβサブユニット、20μg/マウスの百日咳トキシンのβサブ
ユニット(List Biological Laboratories,In
c.USA)、200μg/マウスのSleX、または200μg/マウスのS
leAを静脈内に投与した。24時間後にマウスを犠牲にし、肺を取り出して重
量を測定した。
この実験の結果を図12に表してある。これらの結果は、SNA化合物がDT
H肺炎症性応答において約37%の低減を与え、百日咳トキシン(PT)が
DTH炎症性応答において約22%の低減を与えることを示している。SleX
およびSleAの投与は、DTH炎症性応答において約30%の低減をもたらし
た。
従って、これらの結果は主題の炭水化物結合性蛋白質が、肺炎症の低減に好適
であること、特に急性呼吸困難症候群(ARDS)等の抗原の曝露に起因する肺
炎症に好適であることを示している。例11
−−OVA誘発DTH炎症応答に対するノイラミニダーゼ投与の効果
この例は、OVA(アルブミン、鶏卵、SIGMA)により誘発されるDTH
炎症性応答に対する他のα−2,6シアル酸結合蛋白質、ノイラミニダーゼの効
果を試験するものである。DTH炎症性応答は、Smithら32により記述され
ているヒヅメ腫脹アッセイを使用して再度測定された。特に、8−10週令の約
20−25グラムの体重のBalb/cマウス、10匹の群を、マウスあたり1
00μlのPBS(リン酸緩衝食塩水)中の、100μgのOVA(アルブミン
、鶏卵、SIGMA)およびDDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロ
マイド、KODAK)にて免疫し、ここにおいて投与は、後足筋肉に筋内的に行
われた。7日後に、各群のマウスは20μlのPBS中の20μgのOVAを用
いてヒヅメへの攻撃を受けた。生じた炎症性ヒヅメ腫脹を、Mitutoyo
Engineeringマイクロメーターにて再度測定した。
炎症性DTH応答に対する主題の炭水化物結合性蛋白質の効果を評価するため
に、マウス群は200μlのPBS中の100μg/マウスのSleX/マウス
、0.5単位/マウスのノイラミニダーゼ、または1.0単位/マウスのノイラ
ミニダーゼを投与された。対照群は未処置のままであるか、200μlのリン酸
緩衝食塩水(PBS)の投与を受けた。
得られた結果は、図13に示されている。ノイラミニダーゼにより処置された
群においては、DTH炎症応答は対照群に比較して1.0単位のノイラミニダー
ゼを投与された群で約20%、対照群と比較して0.5単位のノイラミニダーゼ
を投与された群で約55.6%であった。
従って、これらの結果はDTH炎症性応答における低減は、投与されたノイラ
ミニダーゼの量に対して比例的であり、またノイラミニダーゼはインビボで投与
された場合に抗原により誘発されるDTH炎症性応答を阻害することを示してい
る。例12
−−E.coliLPSに起因する肺損傷に対するノイラミニダーゼ、サ
ルファターゼおよびβ−グルクロニダーゼの効果
E.coli LPS(リポポリサッカライド)に起因する肺損傷を、マウス
にE.coli LPSを鼻腔内的に与えてから24時間後に切開したマウスの
肺重量を計測することにより測定した。特定的には、8−10週令のBalb/
cマウスの群を50μlのPBS中の10μg/マウスのE.coli LPS
を用いて軽い麻酔下で鼻腔内的に感作させた。4時間後に、200μlのPBS
中の100μg/マウスのARCl99、100μg/マウスのARC200、
0.5U/マウスのノイラミニダーゼ(タイプII、Sigma)、1.0U/マ
ウスのサルファターゼ(カサガイ由来のタイプIV、Sigma)、または1.0
U/マウスのベータ−グルクロニダーゼ(E.coli由来のタイプX−A、S
igma)を静脈内に投与した。24時間後にマウスを犠牲にし、肺を取り出し
て重量を測定した。
この実験の結果を図14に表してある。これらの結果は、ノイラミニダーゼが
DTH肺炎症性応答において約58%の低減を与え、サルファターゼがDTH炎
症性応答において約40%の低減を与え、ベータ−グルクロニダーゼがDTH炎
症性応答において22%の低減を与えることを示している。ARC199および
ARC200の投与は、DTH炎症性応答においてそれぞれ約20%および47
%の低減をもたらした。
これらのマウスからの肺洗浄中の顆粒球移動に対するこれらの酵素の効果を図
15に表してある。ノイラミニダーゼは肺洗浄中の顆粒球を約67%低減し、サ
ルファターゼは顆粒球を約25%低減し、またベータ−グルクロニダーゼは顆粒
球を約18%低減した。ARC199およびARC200の投与は、それぞれ顆
粒球の約50%および45%の低減を生じた。
従って、これらの結果は主題の酵素が、肺炎症の低減に好適であること、特に
急性呼吸困難症候群(ARDS)等の抗原の曝露に起因する肺炎症に好適である
ことを示している。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年9月29日
【補正内容】
請求の範囲
1.哺乳動物における炎症性応答抑制用の医薬組成物の調製のための、α−2
,6シアル酸構造を結合する炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導
体の少なくとも1種の使用。
2.前記炎症性応答が、遅延型過敏症(DTH)炎症性応答、急性呼吸困難症
候群(ARDS)、再潅流損傷または敗血性ショックに関連する請求の範囲第1
項に記載の使用。
3.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導
体が、前記炎症性応答の開始後約1−15時間で投与される請求の範囲第1項に
記載の使用。
4.該炭水化物結合性蛋白質が、百日咳β−サブユニット(PT)、Sambucus
nigraアグルチニン(SNA)、ノイラミニダーゼ、サ
ルファターゼ、フコシダーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼならびにそれらの断
片または誘導体からなる群から選択される請求の範囲第1項に記載の使用。
5.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導
体が、α−2,3シアル酸構造に対しても結合可能である請求の範囲第1項に記
載の使用。
6.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、約0.5−
50mg/kg体重の範囲の投与量をもって投与される請求の範囲第1項に記載
の使用。
7.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的、
経口的、鼻腔内的、気管内的または経皮的に投与される請求の範囲第1項に記載
の使用。
8.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、脈管内的ま
たは筋内的に投与される請求の範囲第1項に記載の使用。
9.該抗原に対する免疫応答の誘発の調節のための医薬組成物の調製のための
、α−2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白質またはその断片も
しくは誘導体の少なくとも1種の使用であって、哺乳動物が該蛋白質との組合せ
に
おいて該抗原により免疫されることを含む使用。
10.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘
導体が、α−2,3シアル酸構造に対しても結合可能である請求の範囲第9項に
記載の使用。
11.前記免疫応答が、液性または細胞媒介免疫応答を含む請求の範囲第9項
に記載の使用。
12.前記抗原がアレルゲンを含む請求の範囲第9項に記載の使用。
13.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、Sambucus
nigraレクチン(SNA)を含む請求の範囲第9項に記
載の使用。
14.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘
導体が、更にα−2,3シアル酸構造に対しても結合可能である請求の範囲第9
項に記載の使用。
15.免疫が、非経口的、経口的、鼻腔内的、気管内的または経皮的に行われ
る請求の範囲第9項に記載の使用。
16.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘
導体の投与量が、約0.5−50mg/kg体重の範囲である請求の範囲第9項
に記載の使用。
17.免疫が脈管内的または筋内的に行われる請求の範囲第9項に記載の使用
。
18.哺乳動物における抗原に対する耐性誘発用の医薬組成物調製のための、
α−2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白質またはその断片もし
くは誘導体の少なくとも1種の使用であって、該蛋白質が既に抗原に曝露された
哺乳動物に投与される使用。
19.該抗原がアレルゲンを含む請求の範囲第18項に記載の使用。
20.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘
導体が、前記抗原への曝露から約1−15時間後に投与される請求の範囲第18
項に記載の使用。
21.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘
導体が、α−2,3シアル酸構造にも結合可能である請求の範囲第18項に記載
の使用。
22.該炭水化物結合性蛋白質が、百日咳β−サブユニット(PT)、Sambucus
nigraアグルチニン(SNA)、ノイラミニダーゼ、サ
ルファターゼ、フコシダーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼならびにそれらの断
片または誘導体からなる群から選択される請求の範囲第18項に記載の使用。
23.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体の投与量が、
約0.5−50mg/kg体重の範囲で投与される請求の範囲第18項に記載の
使用。
24.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的
、鼻腔内的、気管内的、経皮的または経口的に投与される請求の範囲第18項に
記載の使用。
25.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的
に投与される請求の範囲第24項に記載の方法。
26.肺炎症または敗炎症性疾患の治療または阻害用の医薬組成物調製のため
の、α−2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白質またはその断片
もしくは誘導体の少なくとも1種の使用。
27.該哺乳動物が、急性呼吸困難症候群(ARDS)を有する請求の範囲第
26項に記載の使用。
28.前記蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的、気管内的、鼻
腔内的、経口的または経皮的に投与される請求の範囲第26項に記載の使用。
29.該炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、百日咳β−
サブユニット(PT)、SNA、ノイラミニダーゼ、サルファターゼ、フコシダ
ーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼからなる群から選択される請求の範囲第26
項に記載の使用。
30.該炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、更にα−2
,3シアル酸構造に結合可能である請求の範囲第26項に記載の使用。
31.哺乳動物に、α−2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白
質またはその断片もしくは誘導体の少なくとも1種の、抗転移的に有効な量を投
与することを含んでなる転移阻止使用。
32.該炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、α−2,3
シアル酸構造にも結合可能である請求の範囲第31項に記載の使用。
33.投与が、腫瘍の外科処置または生検の前、間または後に行われる請求の
範囲第31項に記載の使用。
34.投与が、腫瘍の外科処置または生検の前約5時間から腫瘍の外科処置ま
たは生検後約15時間までの範囲において行われる請求の範囲第31項に記載の
使用。
35.哺乳動物が、結腸癌または黒色腫を有する請求の範囲第31項に記載の
使用。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
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39/39 ADU 9284−4C
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DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
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,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,CA,
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P,KR,LK,LU,MG,MN,MW,NL,NO
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(72)発明者 アームストロング,グレン ディー.
カナダ国ティー6シー 1ピー9 アルバ
ータ,エドモントン,91 アベニュー
7951
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.哺乳動物に、α2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白質ま たはその断片もしくは誘導体の少なくとも1種の、炎症性応答抑制に有効な量を 投与することを含んでなる哺乳動物における炎症性応答の抑制方法。 2.前記炎症性応答が、遅延型過敏症(DTH)炎症性応答、急性呼吸困難症 候群(ARDS)、再潅流損傷または敗血性ショックに関連する請求の範囲第1 項に記載の方法。 3.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導 体が、前記炎症性応答の開始後約1−15時間で投与される請求の範囲第1項に 記載の方法。 4.該炭水化物結合性蛋白質が、百日咳β−サブユニット(PT)、Sambucus nigraアグルチニン(SNA)、ノイラミニダーゼ、サ ルファターゼ、フコシダーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼならびにそれらの断 片または誘導体からなる群から選択される請求の範囲第1項に記載の方法。 5.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導 体が、α−2,3シアル酸構造に対しても結合可能である請求の範囲第1項に記 載の方法。 6.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、約0.5− 50mg/kg体重の範囲の投与量をもって投与される請求の範囲第1項に記載 の方法。 7.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的、 経口的、鼻腔内的、気管内的または経皮的に投与される請求の範囲第1項に記載 の方法。 8.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、脈管内的ま たは筋内的に投与される請求の範囲第1項に記載の方法。 9.哺乳動物を、α−2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白質 またはその断片もしくは誘導体の少なくとも1種の、抗体に対する免疫応答の誘 発を調節するために有効な量との組合せにおいて該抗原により免疫することを含 んでなる該抗原に対する免疫応答の誘発の調節方法。 10.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘 導体が、α−2,3シアル酸構造に対しても結合可能である請求の範囲第9項に 記載の方法。 11.前記免疫応答が、液性または細胞媒介免疫応答を含む請求の範囲第9項 に記載の方法。 12.前記抗原がアレルゲンを含む請求の範囲第9項に記載の方法。 13.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、Sambucus nigraレクチン(SNA)を含む請求の範囲第9項に記 載の方法。 14.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘 導体が、更にα−2,3シアル酸構造に対しても結合可能である請求の範囲第9 項に記載の方法。 15.免疫が、非経口的、経口的、鼻腔内的、気管内的または経皮的に行われ る請求の範囲第9項に記載の方法。 16.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘 導体の投与量が、約0.5−50mg/kg体重の範囲である請求の範囲第9項 に記載の方法。 17.免疫が脈管内的または筋内的に行われる請求の範囲第9項に記載の方法 。 18.抗原に既に曝露された哺乳動物に、α−2,6シアル酸構造を結合可能 な炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体の少なくとも1種の、抗 体に対する抗原性耐性の誘発をするために有効な量を投与することを含んでなる 該抗原に対する耐性の誘発方法。 19.該抗原がアレルゲンを含む請求の範囲第18項に記載の方法。 20.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘 導体が、前記抗原への曝露から約1−15時間後に投与される請求の範囲第18 項に記載の方法。 21.前記少なくとも1種の炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘 導体が、α−2,3シアル酸構造にも結合可能である請求の範囲第18項に記載 の方法。 22.該炭水化物結合性蛋白質が、百日咳β−サブユニット(PT)、Sambucus nigraアグルチニン(SNA)、ノイラミニダーゼ、サ ルファターゼ、フコシダーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼならびにそれらの断 片または誘導体からなる群から選択される請求の範囲第18項に記載の方法。 23.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体の投与量が、 約0.5−50mg/kg体重の範囲で投与される請求の範囲第18項に記載の 方法。 24.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的 、鼻腔内的、気管内的、経皮的または経口的に投与される請求の範囲第18項に 記載の方法。 25.前記炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的 に投与される請求の範囲第24項に記載の方法。 26.肺炎症または敗炎症性疾患をもつ哺乳動物に、α−2,6シアル酸構造 を結合可能な炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体の少なくとも 1種の、抗炎症的に有効な量を投与することを含んでなる肺炎症の治療または阻 止方法。 27.該哺乳動物が、急性呼吸困難症候群(ARDS)を有する請求の範囲第 26項に記載の方法。 28.前記蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、非経口的、気管内的、鼻 腔内的、経口的または経皮的に投与される請求の範囲第26項に記載の方法。 29.該炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、百日咳β− サブユニット(PT)、SNA、ノイラミニダーゼ、サルファターゼ、フコシダ ーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼからなる群から選択される請求の範囲第26 項に記載の方法。 30.該炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、更にα−2 ,3シアル酸構造に結合可能である請求の範囲第26項に記載の方法。 31.哺乳動物に、α−2,6シアル酸構造を結合可能な炭水化物結合性蛋白 質またはその断片もしくは誘導体の少なくとも1種の、抗転移的に有効な量を投 与することを含んでなる転移阻止方法。 32.該炭水化物結合性蛋白質またはその断片もしくは誘導体が、α−2,3 シアル酸構造にも結合可能である請求の範囲第31項に記載の方法。 33.投与が、腫瘍の外科処置または生検の前、間または後に行われる請求の 範囲第31項に記載の方法。 34.投与が、腫瘍の外科処置または生検の前約5時間から腫瘍の外科処置ま たは生検後約15時間までの範囲において行われる請求の範囲第31項に記載の 方法。 35.哺乳動物が、結腸癌または黒色腫を有する請求の範囲第31項に記載の 方法。
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