【発明の詳細な説明】アミンイミド含有分子および分子認識剤としての物質
1.発明の分野
本発明は、生化学剤、生物薬剤、および線維、ビーズ、フィルムならびにゲル
等の機能性素材(fabricated material)素材を含む新素材の論理的開発に関す
る。特に、本発明はアミンイミドおよび関連構造体を基礎とする分子モジュール
の開発、ならびに整った特性(tailored properties)を有する分子および機能
性素材の作製に上記の分子モジュールを使用することに関する。この整った特性
は、個々の構築用モジュールの寄与によって決定される。
本発明の分子モジュールは、好ましくはキラルで、生物学的レセプター、酵素、
遺伝子物質、および他のキラル分子を認識することができる新規化合物および機
能性素材の合成に使用可能であり、したがって生物薬剤、分離科学および材料科
学の分野において非常に興味深いものである。
2.発明の背景
新しい分子の発見は、伝統的に2つの大きな領域に集中してきた。すなわち、
生命を脅かす病気の治療薬として使用される生物学的に活性な分子と、商業的な
、特に高度に技術的な用途に使用される新素材である。両方の領域において、新
規分子を発見するために使われる戦略は、2つの基本的操作を含んできた。すな
わち、(i)化学的合成または天然資源からの単離により調製した分子候補の、多
かれ少なかれランダムな選択、および(ii)その分子候補の興味のある特性または
諸特性についての試験である。こ
の発見サイクルは、所望の特性をもつ分子が発見されるまで無限に繰り返される
。大多数の場合、試験用に選択される分子タイプは、かなり狭く規定された化学
的クラスに属していた。例えば、新規ペプチドホルモンの発見は、ペプチドの研
究を包含した;新規な治療的ステロイドの発見は、ステロイド核の研究を包含し
た;コンピューターチップまたはセンサーの構築に使われる新規表面の発見は、
無機素材の研究を包含した、等である。その結果、新しい機能性分子の発見は、
本質においてその場限りのもので、主として偶然発見する才能に依存するので、
極めて時間がかかり、労力を要し、予測不可能で、かつコストの高い事業であっ
た。
以下に新規分子の発見に使用された戦略と計画について簡単に述べる。生物学
的に興味深い分子に重点を置いている。しかし、ここに要旨を述べる生物学的に
活性な分子の発見において遭遇する技術上の問題は、高度に技術的な用途のため
の新素材として役立つ分子の発見において遭遇する問題をも説明する。さらに、
下記に論ずるように、これらの問題は高度に技術的な用途のための機能性素材の
開発において遭遇する問題をも説明する。
2.1 薬剤の設計
生物学的活性に関する現代の諸学説は、生物学的活性およびそれによる生理学
的状態は、分子の認識イベント(event)の結果であるとしている。例えば、ヌ
クレオチドは複数の相補的1本鎖分子がハイブリッド形成し、遺伝子発現の制御
に関与すると思われる二重または三重らせん構造となるように相補的塩基対を形
成することが可能である。別な例としては、リガンドと呼ばれる生物学的に活性
な分子は別な分子、[通常はリガンド−アクセプター
(例えばレセプターまたは酵素)と呼ばれる巨大分子であるが]と結合する。そ
して、この結合は最終的に下記のような生理学的状態をもたらす一連の分子的イ
ベントを引き起こす。すなわち、正常な細胞増殖および分化、発ガンにいたる異
常な細胞増殖、血圧調節、神経インパルスの発生および増殖、などである。リガ
ンドとリガンド−アクセプターとの結合は、幾何学的特徴がありまた極めて特異
的であり、適切な3次元構造配置および化学的相互作用を包含する。
2.1.1 ヌクレオチドの設計および合成
遺伝子治療および遺伝子発現操作への最近の興味は、遺伝子発現をアンチセン
ス、リボザイム、または三重らせんメカニズムによって阻止または抑制するのに
使用可能な合成オリゴヌクレオチドの設計に集中してきた。この目的のため、天
然の標的DNAまたはRNA分子の配列が特徴づけられ、所望の標的配列の相補
物を表すオリゴヌクレオチドを合成するため標準的方法が用いられている(S. C
rooke, The FASEB Journal, Vol. 7, Apr. 1993, p.533およびその引用文献を参
照されたい)。in vivo で使用するため、より安定した形のこのようなオリゴヌ
クレオチドを設計する試みは、典型的には種々の官能基(例えばハロゲン類、ア
ジド、ニトロ、メチル、ケト等)のリボースまたはデオキシリボースサブユニッ
トの様々な位置への付加を包含した。The Organic Chemistry of Nucleic Acids
, Y. Mizuno, Elsevier Science Publishers BV, Amsterdam, The Netherlands,
1987 参照。
2.1.2 グリコペプチド
最近の生物学的炭水化物化学の進歩の結果、炭水化物はますま
す、生命の諸過程(例えば、細胞認識、免疫、胚発生、発ガンおよび細胞死など
)を調和を保ちつつ総合するのに必要な莫大な量の情報をコードするために要求
される極めて複雑な構造を有する生体系成分、としてとらえられている。このよ
うに、2個の天然に存在するアミノ酸は本来2つの基本的分子メッセージを伝え
る(すなわち2つの可能なジペプチド構造物の形成により)のに使用でき、また
4個の異なるヌクレオチドは24個の分子メッセージを伝えるのに使用できる一
方、2個の異なる単糖サブユニットは、11個のユニークな二糖を作り出すこと
ができ、また4個のそれぞれ似ていない単糖は与えられた生理学的系において各
自が1つの基本的分子メッセージとして機能できる35、560個までのユニー
クな四量体を作り出すことが可能である。
ガングリオシド類は、それをもって生体が糖構造物を使用できるところの多能
性と効果の例である。これらの分子は糖脂質(糖−脂質複合体)で、細胞壁上の
戦略的位置に自分を置くことができる。これら分子の脂質成分は細胞壁の疎水性
内部に該分子を固定することが可能で、その親水性成分を水性細胞外環境に位置
させる。したがって、ガングリオシド類は(他の多くの糖類と同様)細胞の番兵
として働くよう選択されたのである。それらは細菌性毒素の不活性化および接触
阻止の両方に関与する。後者は、正常な細胞が隣接細胞の増殖を阻害するという
複雑でほとんど解明されていない過程で、ほとんどの腫瘍細胞では失われた特性
である。コレラ菌によって分泌される毒素の強力なインヒビターであるガングリ
オシドGMの構造は、5部分に枝別れした複合体構造を特徴とし、以下に示す通
りである。
ヒト血液型抗原(A、BおよびO血液型)の原因となる糖タンパク質(糖−タ
ンパク質複合体)のオリゴ糖成分を以下に示す。
不適合血液型に属する赤血球上の相補的タンパク質および糖タンパク質を巻き
込む相互作用は、凝固物またはクラスター(cluster)の形成を引き起こし、こ
れはヒト血液の輸血失敗の原因である。
他の多くの生物学的過程および巨大分子がグリコシル化(すなわち、糖と糖の
共有結合)によって制御されている。このようにして、エリスロポエチンのグリ
コシル化は、ホルモンの生物学的活性の喪失を引き起こす。ヒト性腺刺激ホルモ
ンの脱グリコシル化は、レセプター結合を増大させるが、生物学的活性のほぼ完
全な喪失に帰着する[Rademacherら、Ann.Rev.Biochem. 57,785(1988)参照]
。また、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)の3つの部位のグリコシル
化は、2つの部位をグリコシル化したポリペプチドにくらべ30%より活性なグ
リコポリペプチドを生ずる。
2.1.3 生物学的リガンド模倣物の設計および合成
病気の治療に使用しうる作用剤の開発にあたって現在好まれている戦略は、生
物学的レセプター、酵素、または関連巨大分子のリガンドのある形態を発見する
ことである。その形態とは、これらのリガンドを模倣し、その活性を高める(つ
まりアゴナイズする)か、または抑制する(つまりアンタゴナイズする)もので
ある。これら所望のリガンド形態の発見は、伝統的に、分子(化学的に合成され
たもの、または天然資源から単離されたもの)のランダムなスクリーニング、ま
たは構造再設計と生物学的試験の無数の繰返しによる、リード(lead)構造(通
常は天然のリガンドの構造)の同定およびその特性の最適化を含むいわゆる「合
理的」
アプローチによって実施されてきた。最も有用な薬剤は、この「合理的」アプロ
ーチからではなく、ランダムに選択された化合物のスクリーニングから発見され
たので、最近薬剤発見への混合的アプローチが出現した。このアプローチは、ラ
ンダムに築かれた化学的構造体(これらは特異的生物学的活性についてスクリー
ニングされる)の巨大なライブラリーを構築するための組み合わせ化学の使用に
基づくものである(S.BrennerおよびR.A.Lerner, 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.US A
89:5381)。
「合理的」薬剤設計に使用されてきたほとんどのリ−ド構造は、レセプターま
たは酵素の天然のポリペプチドリガンドである。ポリペプチドリガンドの大多数
、特に小さいものは、酸性媒体中またはペプチダーゼの存在下ではそのペプチド
結合が容易に加水分解を受けるため、生理的流体中で比較的不安定である。した
がって、このようなリガンドは薬物動態学的な意味で、決定的に非ペプチド化合
物より劣っており、薬剤として好ましくない。薬剤としての小さいペプチドのさ
らなる制限は、リガンドアクセプターにたいする低いアフィニティーである。こ
の現象は、特異的アクセプター(例えばレセプターまたは酵素)に対する大きな
、折り畳まれたペプチド(例えばタンパク質)によって示されるアフィニティー
と鋭い対照をなす。この現象はナノモル下の領域のものである。ペプチドが効果
的な薬剤となるためには、好ましくはナノモルの領域で固く結合し、また生物学
的流体との共存という化学的および生化学的厳しさに耐えることのできる非ペプ
チド性有機構造体、例えばペプチド模倣物などに転換されねばならない。
ペプチド模倣物設計技術における多数の、増え続ける改良にも
かかわらず、ポリペプチド−リガンド構造物をペプチド模倣物に転換する問題へ
の一般解は何ら示されていない。現在、「合理的」ペプチド模倣物設計が、その
場限りの基礎の上で行われている。無数の再設計−合成−スクリーニングという
サイクルを費して、ある生化学的クラスに属するペプチドのリガンドが、有機化
学者および薬学者のグループによって特異的ペプチド模倣物に転換された。しか
し、大多数の場合、1つの生化学領域における結果[例えば酵素基質をリ−ド(
lead)として用いたペプチダーゼインヒビターの設計]は、別な領域での使
用(例えばキナーゼ基質をリ−ドとして用いるチロシンキナーゼインヒビターの
設計)に転用できない。
多くの場合、「合理的アプローチ」を用いたペプチドの構造的リ−ドに由来す
るペプチド模倣物は、天然のものではないα−アミノ酸を含有する。これら模倣
物の多くは、天然ペプチド(これもα−アミノ酸を含有する)の厄介な特徴のい
くつかを示し、したがって、薬剤としての使用には好ましくない。最近、固定さ
れた幾何学的関係において特異的レセプター結合基を固定するための非ペプチド
性骨格、例えばステロイダルまたは糖構造体などの使用に関する基礎的研究が記
述されている(例えば、Hirschmann,R.ら、1992, J.Am.Chem.Soc.,114:9699-
9701; Hirschmann,R.ら、1992 J. Am.Chem.Soc.,114:9217-9218 参照);し
かし、このアプローチが成功するかどうかはまだ分からない。
リ−ド構造の同定、およびランダムに選択された化合物のスクリーニングによ
る有効な薬剤候補の同定を早めるための試みで、研究者らは、ペプチドならびに
「ペプトイド」(peptoid)と呼ば
れるある種のペプチド模造物の大きな組み合わせライブラリーを創出するための
自動化された方法を開発した。これらペプチドおよびペプトイドは、所望の生物
学的活性についてスクリーニングされる。例えば、H.M.Geysenの方法(1984 Pro c.Natl.Acad.Sci.USA
81:3998)は、合成されるべきペプチドのC末端アミノ酸
残基をポリエチレンピン(pin)として成形された固体担体粒子に結合する、メ
リフィールド(Merrifield)ペプチド合成法の変法を採用している。これらのピ
ンは、個々にまたはまとめて順次に、所望のペプチドを形成する付加的アミノ酸
残基を導入すべく処理される。次に、このペプチドをピンから外さずに、活性に
ついてスクリーニングする。Houghton(1985, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131
; および米国特許第4,631,211 号)は、固体担体に結合したC末端アミノ酸を含
有する個々のポリエチレンバッグ(「ティーバッグ」)を活用している。これら
は、固相合成技術を用いて必要なアミノ酸と混合され、結合される。次に、生成
するペプチドを回収し、個別に試験する。Foder ら(1991, Science 251:767)
は、生物学的標的との結合を直接試験することが可能なアドレッサブル(addres
sable)ペプチドの大きいアレイ(array)を作り出すための、シリコンウェーフ
ァー上の、光によって制御される空間的にアドレッサブルな平行−ペプチド合成
を記述した。これらの研究者はまた組換え体DNA/巨大なペプチドライブラリ
ーをファージの表面に発現するための遺伝子工学的方法をも開発した(Cwirlaら
、1990, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6378)。
別の組み合わせアプローチでは、V.D.Huebner およびD.V.Santi(米国特許第5
,182,366 号)は、各々が所望のアミノ酸でアシル
化された部分に分割されている官能化ポリスチレンビーズを活用した。そのビー
ズ部分は一緒に混合され、次に各々がジペプチドを生ずる第2の所望アミノ酸と
のアシル化に付される部分に分割される。ここでは固相ペプチド合成技術が使用
される。この合成計画によって、指数関数的に増加する数のペプチドが均一な量
で生成され、次にこれらは別個に興味のある生物学的活性についてスクリーニン
グされる。
Zuckerman ら(1992, Int.J.Peptide Protein Res. 91:1)もまた同様のペプ
チドライブラリーの合成方法を開発し、その方法を「ペプトイド」と呼ばれるN
−アルキルグリシンペプチド誘導体のライブラリー作製のためのモジュール合成
化学に適用した。この誘導体は、多様な生化学的標的に対する活性についてスク
リーニングされる。(Symonら、1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367 も参照
されたい)。コード化された組み合わせ化学合成が最近記述されている(S.Bren
ner およびR.A.Lerner, 1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381)。
リ−ド構造に加え、好ましい「合理的」薬剤発見の実現にとって非常に有用な
情報源は、生物学的リガンドアクセプターの構造である。このアクセプターの構
造は、しばしば分子模型化計算と組み合わせて、リガンドがそのアクセプターと
結合する際の結合モードのシミュレーションをするのに使用される。この結合モ
ードに関する情報は、リード構造の結合特性を最適化するのに有用である。しか
し、リガンドアクセプター、または好ましくはアクセプターと高アフィニティー
リガンドとの複合体の構造を発見することは、純粋な結晶状態でそのアクセプタ
ーまたは複合体を単
離し、次にX線結晶学的分析を行なう必要がある。生物学的レセプター、酵素、
およびそのポリペプチド基質を単離し、精製することは時間がかかり、労力を要
し、かつ費用が高い。生物化学のこの重要な領域での成功は進歩した分離技術の
効果的な活用にかかっている。
結晶化は分離技術として有益であり得るが、大多数の場合、特に生物分子を複
雑な生物学的環境から単離することを含む場合は、成功する分離法はクロマトグ
ラフィーによるものである。クロマトグラフィーによる分離は、混合物が活性な
、天然、合成または半合成の表面を移動するにつれての、混合物成分の可逆的示
差的結合の結果である。移動する混合物中の固く結合する諸成分は、最後にひと
まとまりとなって表面を去り、その結果分離される。
分離に使用される基質または担体の開発は、様々な条件下で単量体分子を重合
架橋してビーズ、ゲル、またはフィルム等の機能性素材を作製すること、または
種々の市販されている機能性素材を化学修飾し(例えば、ポリスチレンビーズの
スルホン化)所望の新素材を作製することを含んだ。大多数の場合、先行技術の
担体素材は特定の分離または特定タイプの分離を実施するために開発されたもの
で、したがってその有用性は制限されている。これらの素材の多くは生物学的巨
大分子と不適合である。例えば、高速液体クロマトグラフィーの実施に頻繁に使
用される逆相シリカは、疎水性タンパク質および他のポリペプチドを変性させる
可能性がある。さらに、多くの担体が、容易に変性し、また極端なpHに敏感な
鋭敏な生物分子(例えばタンパク質、酵素、糖タンパク質、等)とは適合しない
条件の下で使用されている。これらの
担体を用いて実施される分離におけるもう一つの困難は、分離の結果がしばしば
担体のバッチに依存することである。つまり、分離結果は再現性がない。
最近、種々の塗料および複合体形成素材が、市販の機能性素材を修飾して改善
された特性を有する物品にするのに使用されている。しかし、このアプローチが
成功するかどうかはまだ分からない。
もしクロマトグラフィーの表面が、複雑な混合物のある成分と特異的に結合す
る分子を備えているならば、その成分は混合物から分離され、次に実験条件(例
えば、緩衝液、条件の厳しさ、等)を変えることによって解放されるであろう。
この種の分離は適切にもアフィニティークロマトグラフィーと呼ばれ、極めて効
果的で広く使用される分離技術として残っている。これは伝統的なクロマトグラ
フィー技術よりもはるかに選択的であることが確かである。伝統的なクロマトグ
ラフィー技術とは、例えば、最大の分離効率を達成するためには、生物分子を害
する条件下(例えば、高圧、有機溶剤または他の変性剤の使用、等を伴なう条件
)で使う必要のあるシリカ、アルミナ、ならびに長鎖炭化水素、多糖および他の
種類のビーズまたはゲルをコーティングしたシリカまたはアルミナを用いてのク
ロマトグラフィーをいう。
より強力な分離技術の開発は、意味深くも材料科学の分野における大躍進にか
かっている。特に、生理的媒体中に見出される条件と似ている実験条件下(つま
り、これらの実験条件は、温度とpHが生理的レベルに近く、また生物分子を害
するまたは変性することが知られている作用剤は一切含まない水性媒体を含有し
な
ければならない)で特異的分子形状を認識する力のある素材の設計および構築に
おける大躍進にかかっている。これら「インテリジェント」素材の構築はしばし
ば、特異的に他の分子を認識できる小さい分子を、例えば表面、フィルム、ゲル
、ビーズ、等の既存の素材に種々の化学的修飾によって導入することを含む。あ
るいはまた、認識可能な分子が単量体に転換され、重合反応をへて「インテリジ
ェント」素材の創製に使用される。
3.要旨
新規分子の構築への新しいアプローチが記述される。このアプローチは、適切
な原子と官能基を含有するアミンイミドを基礎とする分子構築用ブロックを包含
する。この分子構築用ブロックは、キラルであることも可能で、また整った特性
を有する分子のモジュール組立てに使用される。各モジュールは組立てられたモ
ジュールの総合的特性に寄与する。本発明のアミンイミド構築用ブロックは、天
然リガンドの3次元構造と機能を模倣し、および/または天然レセプターの結合
部位と相互作用するように設計された新規分子の合成に使用可能である。この分
子構築への論理的アプローチは、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、
炭水化物、脂質およびポリマーの模倣物、ならびに材料科学に有用な機能性素材
を含むがそれらだけに限定されないあらゆるタイプの分子の合成に適用できる。
このアプローチは、特定の作業を遂行する機械的装置(ここで各モジュールは装
置の総合的作業に寄与する特定の仕事を遂行する)のモジュール構築に類似して
いる。
本発明は、部分的に、本発明者らの以下の洞察に基づいている。(1)すべて
のリガンドは、ある1つの普遍的建築的特徴を共有
する:リガンドは、例えばアミドで作られた骨格構造、および数個の官能基を精
密なそして比較的不動の幾何学的配置で支持する炭素−炭素またはホスホジエス
テル結合からなる。(2)リガンドとレセプターの結合モードもまた1つの普遍
的特徴を共有する:結合モードはすべて相補的構造エレメント間の引力相互作用
を包含する。例えば、電荷−またはπ−型相互作用、疎水性力およびファンデル
ワールス力、水素結合などである。(3)機能性素材の連続体は、直径100オン
グストロームから1cmの範囲にわたって、様々な構造、幾何学的配列、形態お
よび機能をもつ種々の物質を包含して存在する。これらの物質のすべては、機能
的表面という共通の特徴を有する。この表面は、生物学的に活性な分子または分
子混合物に提示され、該分子(または分子混合物中の所望の分子)とその表面と
間で認識が達成される。および(4)生物学的に活性な化合物、特に薬剤の設計お
よび合成において比較的探求されずに残ってきたアミンイミド構造体は、所望の
リガンドを模倣し、そして/または適切なレセプター結合部位と相互作用する適
切な官能基をもつ骨格を構築するための理想的な構築用ブロックとなるであろう
;さらに、アミンイミドモジュールは様々な方法で、上記の機能性素材の連続体
の向こう側に、特異的分子認識が可能な新素材を作製するために活用し得る。こ
れらアミンイミド構築用ブロックは、キラルの点で純粋であることが可能で、多
数の生物学的に活性な分子を模倣した分子の合成に使用できる。ここで生物学的
に活性な分子とは以下のものを含むがそれらだけに限定されない。すなわち、ペ
プチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質
、およ
び新素材として有用な多様なポリマーならびに機能性素材(これらには、カラム
クロマトグラフィーに有用な固体担体、触媒、固相イムノアッセイ、薬物送達媒
体、フィルム、および複雑な混合物の種々の成分を選択的に分離するために設計
された「インテリジェント」素材が含まれるが、それらだけに限定されない)。
種々の分子構造体のモジュール組立てにおける、アミンイミドを基礎とするモ
ジュールの使用を説明する実施例があげられている。これら分子構造体には、ラ
セミ混合物の光学分割に有用な機能化シリカ表面;ヒトエラスターゼ、プロテイ
ンキナーゼおよびHIVプロテアーゼを阻害するペプチド模倣物;遊離基、また
はアミンイミド含有単量体の縮合重合によって形成されたポリマー;および種々
のレセプターの検出、単離および精製に有用な脂質模倣物が含まれる。
本発明の目的にしたがって、興味のあるアミンイミドを基礎とする分子は所望
の立体化学を有し、また必要であれば、光学的に純粋な形で得られる。単一の分
子統一体の合成に加えて、ここに記述する技術およびその変法(これらは組み合
わせ化学を実施する上で当分野では周知である)を用いての、アミンイミドを基
礎とする分子ライブラリーの合成もまた本発明の範囲内にある。さらに、アミン
イミド含有分子は増強された加水分解および酵素安定性を有し、生物学的活性物
質の場合は、in vivo で深刻な副作用を何ら引き起こすことなく標的のリガンド
アクセプター巨大分子に運ばれる。
4.発明の詳細な説明
詳細な説明の任意の部分を理解するのに必要な範囲において、以下の先に出願
された米国特許出願を、特に引用により本明細書の一部とする:アミンイミド組
成物及び生物学的に有用なその誘導体、出願番号07/906,770、 1992年6月30日出
願;アミンイミドをベースとする支持体材料及び官能化された表面、出願番号07
/906,769、 1992年6月30日出願;不斉中心を有する置換アミンイミド及びその誘
導体からの、指向された純粋なキラル異性体リガンド、認識剤及び官能的に有用
な材料、出願番号08/041,559、 1993年4月2日出願。
4.1 アミンイミド官能基の物理的及び化学的性質
アミンイミドは、以下に示すエネルギー的に同等な2つのルイス構造の共鳴ハ
イブリッドにより示される両性イオン構造である。
アミンイミド基の四置換窒素は不斉であり得、これによりアミンイミドは下記
の2つのエナンシオマーによって示されるようにキラルとなる。
その構造の極性と、それらが正味の電荷を有していないことの結果、単純なア
ミンイミドは、水及び(特に)有機溶媒に自由に溶解する。
アミンイミドの希釈した水性溶液は、中性であり非常に低い伝導度を有し、ア
ミンイミド共役酸は弱酸性である(pKa≒4.5)。アミンイミドの特に目立つ性質
は、酸性、塩基性、あるいは酵素的条件下での加水分解に対する安定性である。
例えば、6N NaOH中でトリメチルアミンベンズアミドを24時間煮沸してもアミン
イミドは変化しないままである。180℃を越える熱分解処理においては、下記の
ようにアミンイミドは分解してイソシアネートを生成する。
4.1.1 アミド基の類似物としてのアミンイミド基の使用
アミンイミド基は、アミド基の幾つかの重要な構造的特徴を模倣するものであ
り、例えば全体的な幾何学的配置(例えば、両方の官能基とも平面的なカルボニ
ル単位を含んでおり、四面体原子がアシル化された窒素に結合している)及び電
荷分布の形態(両方の官能基ともカルボニルを含み、酸素における有意な陰電荷
の発生を有する)等である。これらの構造的な関係は下記に示されるが、ここで
は2つの基の共鳴ハイブリッドが描かれている。
加水分解的及び酵素的にアミドよりも安定であり、その両性イオン構造により
新規な溶解特性を有しているので、アミンイミドは優れた薬理学的性質を有する
生物学的に活性な分子の類似物(mimetics)を構築するための価値ある構築ブロ
ックである。このような類似物を構築するには、アミンイミドバックボーンを、
所望の立体化学的及び電子的特徴を有する構造的単位(例えば適当なキラル原子
、水素結合中心、疎水性及び荷電基、πシステム等)を幾何学的に正確に結合す
るための骨格として使用する。さらに、異なる構造のリンカーを使用して複数の
アミンイミド単位を種々の方法で結合し、非常に多様な構造のポリマーを生成す
ることができる。いくつかの基準を用いて、スクリーニングあるいは別の研究の
ための特定の分子形態を選択することができる。1つの場合においては、それが
新規であり、生物薬剤あるいはデバイス構築のための材料としての活性について
試験されたことがないという理由で、ある種のアミンイミド構造が選択される。
好ましくは、それがある種の生化学的メカニズムにおいて示唆されている構造的
特徴及び性質を有しているという理由により、あるアミンイミ
ドリガンドが選択される。また別の好ましい場合においては、アミンイミド構造
は、それぞれがそのアミンイミド含有分子の全体的な性質に対して特定の望まし
い貢献をしている分子モジュールを組み立てた結果得られるものである。
要するに、アミンイミドは、通常では得られない非常に望ましい物理化学的性
質を有する官能基であり、これらは、生物薬剤及び高度な技術的応用のための新
規な材料として有用な分子構造の構築のための分子モジュールとして使用できる
ものである。
4.2 アミンイミドの全体的合成経路
4.2.1 N,N-二置換ヒドラゾンのアルキル化を経由したアミンイミド
アシルヒドラジド(ヒドラゾン)のアルキル化とその後の塩基による中和によ
りアミンイミドが生成される。
このアルキル化は、適当な溶媒、例えば水、エタノール、イソプロパノールの
ようなヒドロキシル溶媒、DMF、DMSO、アセトニトリルのような双極性非
プロトン性溶媒中で、通常は加熱しながら実施する。
上記アシルヒドラジドは、1,1-二置換ヒドラジンと、活性化アシル誘導体ある
いはイソシアネートとを、適当な有機溶媒、例えばメチレンクロリド、トルエン
、エーテル等中で、アシル化の間
に生成するハロ酸を中和するための塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下に
反応させることにより生成される。
活性化アシル誘導体は、酸塩化物、クロロカーボネート、クロロチオカーボネー
ト等を含み、アシル誘導体は、適当なカルボン酸、及びジシクロヘキシルカルボ
ジイミド(DCC)のような縮合剤によって置換されていてもよい。
ヒドラゾンアルキル化において使用されるアルキル化剤R3 Xは、アルキルハ
ライド(X=Cl、Br、I)、トシレート(X=OTs)、あるいはその他の適当な反応
種(例えばエポキシド)であってよい。市販の1,1-ジメチルヒドラジン及びヒド
ラゾンアルキル化剤としてのエチレンオキシドを使用したフェニルイソシアネー
トのアミンイミドへの変換を下記に示す。
所望の1,1-二置換ヒドラジンは、当分野においてよく知られている多くの方法
により容易に調製することができ、その1つは、不活性有機溶媒中における2級
アミンとNH2Cl との反応である。
上記のアミンイミドへの経路は、広範に適用することができ、広範な種類の脂
肪族、芳香族及びヘテロ環式基を、アミンイミド構造中の種々の位置に導入する
ことを可能とするものである。
4.2.2 1,1,1-トリアルキルヒドラジニウム塩のアシル化を経由するアミン イミ
ド
例えばジオキサン、エーテル、アセトニトリル等の適当な有機溶媒中において
、強塩基の存在下でのアシル誘導体あるいはイソシアネートによる適当なトリア
ルキルヒドラジニウム塩のアシル化により、良好な収率でアミンイミドを生成す
る。
このアシル化反応のためのアシル誘導体は、上記に概略を示したヒドラゾンの合
成に必要とされるものと同じである。
必要なヒドラジニウム塩は、1,1-二置換ヒトラジンの通常のアルキル化、ある
いは3級アミンのハロアミンによる処理(78 J.Am. Chem. Soc. 1211(1956)を
参照)により得られる。
窒素においてキラルであるヒドラジニウム塩は、例えばキラル
酸による処理とその後のジアステレオマーの分離(例えばクロマトグラフィーあ
るいは分別結晶を使用した)により分割することができ、得られたエナンシオマ
ーはアミンイミドの立体選択的合成に使用することができる。
ヒドラジニウム塩のアルキル基の1つがエステル基である場合は、そのエステ
ルは、メタノール及び水の混合物中でLiOHを使用して効率的に鹸化し、酸による
反応混合物の中和の後、有用なα−ヒドラジニウム酸を生成することができる。
適当に保護されたヒドラジニウムカルボキシレートを縮合反応に使用してアミン
イミドを生成することができる。ペプチド結合形成を行うのに有用なものとして
知られたものに類似の方法が有用であると考えられ、例えばDCC、あるいはそ
の他のカルボジイミドを、DMFのような溶媒中で、縮合剤として使用できる。
あるいは、ヒドラジニウムカルボキシレート単位を、標準的な方法を用いて、α
−アミノ酸あるいはその他の求核剤、例えばアミ
ン、チオール、アルコール等と結合し、リガンド類似物及び高度な技術的応用の
ための新規な材料として広範な有用性を有する分子を生成することができる。
α−ヒドラジニウムエステルについては、例えば上記にヒドラゾンのアルキル
化のためのものとして示したような標準的な反応条件下における、1,1-二置換ヒ
ドラジンのハロエステルによるアルキル化により生成することができる。
あるいは、これらのヒドラジニウムエステルは、適当なα−ヒドラジノエステル
の標準的なアルキル化により生成することができる。
上記の反応のために必要な1,1-二置換ヒドラジンは、対応するヒドラゾンの酸
または塩基加水分解(108 J. Am. Chem. Soc. 6394(1986)参照)により得るこ
とができ、アルキル化ヒドラゾンは一置換ヒドラゾンからHinman及びFloresの方
法(24 J. Org. Chem. 660(1958))により生成される。
上記で必要な一置換ヒドラゾンは、α−ケトエステル及び適当なヒドラゾンから
形成されたシッフ塩基の還元により得ることができる。この還元はまた、立体選
択的に行うことができ、所望により、示すようにDuPHOS- ロジウム触媒反応を使
用して行うことができる(114 J. Am. Chem. Soc. 6266(1992); 259 Science
479(1993))。
上記の合成の変形では、α−ハロアミンイミドは、α−ハロアシルハライドを使
用して調製される。
これらのハロアミンイミドは、反応性ヒドロキシル、チオ、あるいはアミノ基を
含む求核剤と反応させて複合アミンイミド構造を生成することができる。
4.2.3 ヒドラジン−エポキシド−エステル反応を経由したアミンイミド
非常に有用で用途の広いアミンイミドの合成は、通常は水またはアルコールで
あるヒドロキシル溶媒中での、エポキシド、非対称二置換ヒドラジン、及びエス
テルのワンポット反応を含むものであり、この反応は通常室温で数時間から数日
進行させることができる。
上記式において、R1 、R2 及びR3 は多様な構造の種類のセット(例えば、ア
ルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、あるいはそれ
らの多数の置換されたもの)から選
ばれ、R4 及びR5 はアルキルまたはシクロアルキルである。
上記の反応の速度は、エステル成分の求電子性の増加に従って増加する。一般
に、適当な溶媒50〜100ml 中の各反応体の0.1 mol の混合物を必要な時間室温で
攪拌する(反応は薄層クロマトグラフィーにより監視することができる)。この
時間の終了時に溶媒を減圧下に除去し、粗生成物を得る。
上記のアミンイミド形成におけるエステル成分の置換基R4 が二重結合を含ん
でいる場合は、末端が二重結合を有するアミンイミドが得られ、これは例えば標
準的な反応条件下に過酸を使用してエポキシド化することができ、得られたエポ
キシドは新たなアミンイミド形成の出発材料として使用することができ、このよ
うにして2つのアミンイミドサブユニットを含む構造を得る。アミンイミド形成
及びエポキシ化の連続をn回繰り返せば、n個のアミンイミドサブユニットを含
む構造が得られ、R4 =プロペンで、n回の連続の繰り返しは下記の構造を与え
る。
ここで、R2 及びR3 の記号は、ヒドラジン置換基R2 及びR3 を各重合段階で
変化させ、多様な構造のオリゴマーまたはポリマーを生成することができる方法
を示すために使用されているものである。
関連するアミンイミド重合の連続はエポキシド基に直接結合し
たエステル部分を使用するものである。
さらに別の関連する重合の連続は、二官能エポキシド及び下記の形態のエステ
ル
の使用を含み、下記の構造(ジメチルヒドラジンとの反応の場合について示した
)のポリマーを生成する。
ここでX及びYは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはア
ルカリールリンカーである。
4.2.4 鏡像体的に純粋なアミンイミドの合成
鏡像体的に純粋なアミンイミドは、下記の例に示すようにキラルヒドラジニウ
ム塩のアシル化により生成できる。
キラル的に純粋なヒドラジニウム塩は、ラセミ体の分割により得られる。分割
は、光学的に純粋な酸(例えば酒石酸との塩)を形成し、得られるジアステレオ
マーをクロマトグラフィーあるいは分別結晶で分離することにより行うことがで
き(例えば103 J.Chem. Soc. 604(1913)を参照)、あるいは、キラル固定クロ
マトグラフィー支持体を使用したクロマトグラフィー分離にかけラセミ改変物を
分割することができ、あるいは、可能であれば、適当な酵素系を用いて分離する
ことができる。
あるいは、鏡像体的に純粋なアミンイミドは、ラセミ体ヒドラジニウム塩の分
割について上記した方法の1つを使用してラセミ改変物を分割することにより得
られる(例えば、28 J. Org. Chem. 2376(1963)参照)。
キラルアミンイミドを合成するための別の方法は、キラル合成を使用するもの
である。1つの例は、(S)-(-)-プロピレンオキシドを、1,1-ジメチルヒドラジン
及びメチル-(R)-3- ヒドロキシブチレートと反応させることにより得られ、これ
らは全て市販されている。
種々のキラルエポキシド、例えばSharpless(Asynn. Syn., J.D. Morrison ed
., Vol. 5, Ch. 7 + 8, Acad. Press, New York,N.Y., 1985)により開発された
ものの如きキラルエポキシ化により得られたもの、及び標準的な方法により得ら
れたキラルエステルを、種々のキラルアミンイミドの製造に使用することができ
る。
キラル的に純粋な分子構築ブロックは、高度な技術応用のための新材料として
、及び、分子認識剤として有用な膨大な一連の分子を製造するのに使用されるこ
とから、特に好ましいものであり、これらは薬剤、診断剤及び分離剤として使用
される生物学的リガンド類似物を含む。
4.4 特定の種類のアミンイミドの合成
4.4.1 キラルアミンイミド含有結合体の合成
上記に概略を示した合成経路を、下記の一般構造の広範な種類のキラルアミン
イミド結合体を製造するのに使用することができる。
示した置換基A及びBは種々の構造を有するものであり得、またそれらの物理
的あるいは機能的性質は全く異なっていてもよくまた同じでもよく、キラルある
いは対称であってもよい。A及びBは好ましくは以下のものから選ばれる。
1) (AA)n の形態のアミノ酸誘導体で、天然及び合成アミ
ノ酸残基(n=1)、ペプチド(n=2〜30)、ポリペプチド(n=31〜70)及
びタンパク質(n>70)を含むもの。
2) (NUCL)n の形態のヌクレオチド誘導体で、デオキシリボース(DN
A)及びリボース(RNA)変異体の両方を含み、天然及び合成ヌクレオチド(
n=1)、ヌクレオチドプローブ(n=2〜25)及びオリゴヌクレオチド(n>
25)を含むもの。
3) (CH)n の形態の炭水化物誘導体。これは、シアル酸(n=1)等の関
連する化合物を含む天然の生理学的に活性な炭水化物(グルコース、ガラクトー
ス等)、合成の炭水化物残基及びこれらの誘導体(n=1)及び天然に見られる
これらの複合体オリゴマー配列の全て(n>1)を含む。Scientific American
1993年1月、p.82参照。
4) 天然または合成の有機構造モチーフ。この用語は、ファーマコホア(phar
macophore)及びその代謝物を含む、よく知られた薬理学的化合物の基本構造の
いずれをも含む。これらの構造モチーフは、所望のリガンド受容体に対する所望
の特異的な結合性を有していることが一般に知られているものであり、上記の1)
、2)及び3)に挙げたもの以外のものを含む。
5) 天然あるいは合成の染料あるいは写真的増幅の可能な残基のようなリポー
ター要素であって、反応性基を有するものであり、これは合成的にオキサゾロン
構造中に導入されてもよくあるいは反応式中に導入されてもよく、また該グルー
プのリポート機能を不利に阻害することなくその基を介して結合してもよい。好
ましい反応性基は、アミノ、チオ、ヒドロキシ、カルボン酸、酸塩化物、イソシ
アネートアルキルハライド、アリールハライド及び
オキシラン基である。
6) 重合可能な基、例えば二重結合あるいは縮重合もしくは共重合可能なその
他の官能性基を含む有機成分。適当な基としては、ビニル基、オキシラン基、カ
ルボン酸、酸塩化物、エステル、アミド、ラクトン及びラクタムが挙げられる。
7) 巨大分子成分、例えば、上記に概略を示した種々の反応性基を介して、オ
キサゾロンモジュールに結合でき、結合種のリガンド−受容体分子に対する結合
が不利な影響を受けず、結合した官能価の相互作用活性が前記巨大分子により決
定されるかあるいは制限されるような形で結合できる巨大分子表面あるいは構造
。これらの巨大分子の分子量は、約1000ダルトンから可能な限り高い範囲にあっ
てよい。これらは、ナノ粒子(dp=100〜1000Å)、ラテックス粒子(dp=1000Å
〜5000Å)、多孔質あるいは非多孔質ビーズ(dp=0.5μ〜1000μ)、膜、ゲル、
巨視的(macroscopic)表面、あるいはこれらの官能化されたもしくは被覆され
たものもしくは複合体の形態をとる。
ある種の環境下においては、A及び/またはBは、適当な有機部分への化学結
合、水素原子、適当な求電子基(例えばアルデヒド、エステル、アルキルハライ
ド、ケトン、ニトリル、エポキシド等)、適当な求核基(例えばヒドロキシル、
アミノ、カルボキシレート、アミド、カルボアニオン、尿素等)を含む有機成分
、あるいは下記に定義するR基の一つであつてよい。さらに、A及びBは結合し
て環もしくは先の式により定義された化合物の繰り返し単位の末端に結合する構
造を形成してもよく、または他の部分に別々に結合してもよい。
本発明の組成物のより一般化した表示は、構造
により定義される。ここで、
a. A及びBの少なくとも1つは上記に定義した通りであり、A及びBは任意
に互いにあるいは他の化合物に結合している。
b. X及びYは、同一でも異なってもよく、それぞれ化学結合または炭素、窒
素、硫黄、酸素もしくはそれらの組み合わせの1以上の原子を表す。
c. R及びR’は、同一でも異なってもよく、それぞれアルキル、シクロアル
キル、アリール、アラルキルもしくはアルカリール基またはそれらの置換もしく
は複素環式誘導体を表し、ここでR及びR’は、隣接したn個の単位内で異なっ
てもよく、それらが結合する炭素原子について選択された立体化学的配置を有し
ていてもよい。
d. Gは、化学結合または4級窒素に対する結合のための末端炭素原子を含む
連結基であり、Gは隣接したn個の単位内で異なっていてもよい。
e. n≧1である。
好ましくは、Gが化学結合の場合は、Yは4級窒素に対する結合のための末端
炭素原子を含んでおり、nが1であり、X及びYが化学結合であり、R及びR’
が同一である場合は、A及びBは
異なり、1つはHまたはR以外のものである。
本発明の1つの態様においては、A及びBの少なくとも1は有機または無機の
巨大分子表面を表す。好ましい巨大分子表面の例としては、シリカ及びアルミナ
のようなセラミック、多孔質及び非多孔質ビーズ、ビーズ、膜、ゲルの形態にあ
るラテックスのようなポリマー、巨視的表面あるいはこれらの被覆されたものあ
るいは複合体あるいはハイブリッドが挙げられる。この官能化表面は、下記のよ
うに表される。
本発明のさらに別の態様においては、A及びBの役割が逆になっており、下記
に示すようにBは前記のリストから選択される置換基であり、Aは官能化された
表面である。
本発明の第3の好ましい態様においては、A及びBのいずれか、あるいは両方
が、フリーラジカル重合または共重合してアキラルもしくはキラルのオリゴマー
、ポリマー、コポリマー等を生成することができる1以上の二重結合を含んでい
る。
本発明の別の態様は構造
を有する組成物に関する。ここでA、Y、R、R1 及びGは上記に定義したとお
りであり、Wは−Hであるかまたは−H2 X- であり、X- は例えばハロゲンま
たはトシルアニオンのようなアニオンである。
本発明のさらに別の形態は、構造
を有する脂質類似組成物に関する。ここでQは、化学結合、求電子基、求核基、
R、アミノ酸誘導体、ヌクレオチド誘導体、炭水化物誘導体、有機構造モチーフ
、リポーター要素、重合可能な基を含む有機成分、巨大分子成分、あるいは置換
基X(T)もしくはX(T)2 であり、ここでRは、アルキル、シクロアルキル
、アリール、アラルキルもしくはアルカリール基またはその置換もしくは複素環
式誘導体であり、Tは12〜20の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素であ
り、その炭素原子のいくつかは任意に酸素、窒素あるいは硫黄原子あるいは芳香
族環により置換されていてもよく、但し少なくとも2つのT置換基が組成物の構
造中に存在するものである。
以下の記載において、Rn(nは整数)をR及びR1 の定義からの基を示すの
に使用する。
本発明の他の形態は、構造
を有する官能化されたポリマーに関する。ここで、
a. X及びYは連結基である。
b. Rn またはR’n (n=整数)はそれぞれアルキル、シクロアルキル、ア
リール、アラルキル及びアルカリールを表す。
c. (構造)は巨大分子成分を表す。
および
d. n≧1である。
本発明はさらに、アミンイミド官能化支持体の種々の製造方法も意図するもの
である。1つの方法は、OH、NHまたはSHのペンダント成分を有するポリマ
ーまたはオリゴマーを、式
(式中、R1 及びR2 は、それぞれアルキル、シクロアルキル、アリール、アラ
ルキルまたはアルカリールを表し、R3 はアミノ酸誘導体、ヌクレオチド誘導体
、炭水化物誘導体、有機構造モチ
ーフ、リポーター要素、重合可能な基を含む有機成分または巨大分子成分を表す
)の化合物と反応させ、反応したポリマーまたはオリゴマーを支持体上に被覆し
てその上に薄膜を形成させ、そして被覆された支持体を加熱してフィルムを架橋
させる段階を含む。
もう1つの方法は、多官能エステル及び多官能エポキシドの混合物を支持体上
に被覆してその上に薄膜を形成させ、被覆された支持体を1,1-ジアルキルヒドラ
ジンと反応させて薄膜を架橋する段階を含む。
第3の方法は、アミンイミド官能ビニルモノマー、二官能ビニルモノマー及び
ビニル重合開始剤の混合物を支持体上に被覆してその上に薄膜を形成させ、被覆
された支持体を加熱して架橋薄膜を形成する段階を含む。
前記の方法により製造されたアミンイミド官能化支持体は、本発明のもう1つ
の形態である。
上記に概略した合成技術及び以下に記載する合成技術を用いてアミンイミド骨
格を多数の方法で誘導化する能力は、結合相互作用の特異的なタイプを創出する
ことにより特異的な分子体を認識することができるところの、膨大な数の構造を
提供する。このように、下記に示したアミンイミドは原則として下記の相互作用
、即ち、フェニル基が関与するπ−スタッキング、水素結合、アニオン性窒素が
関与する酸−塩基相互作用、4級窒素が関与する塩架橋、多量のイソプロピル基
による立体相互作用、及び炭化水素鎖が関与する疎水相互作用を創出する。
さらに別の例として、認識の標的及び特異的に支持されたアミンイミド間の可
能な相互作用を下記に示す。特定のキラルアミンイミドの合成のための実験手順
は以下に示す。
4.4.2 種々のサイズの配列を生成するアミンイミドサブユニットの連続 的連鎖化
標的分子を伴う予測可能な結合相互作用を創出することができる官能基を有す
るアミンイミド構築ブロックを選択することにより、及び、上記に広範に記載し
たような合成法を使用して構築ブロックの連鎖化(結合)を行うことにより、選
択された本来のオ
リゴマーあるいはポリマー(例えばペプチドあるいはポリペプチド)に類似する
アミンイミドサブユニット配列を構築することができる。その配列は、本来の配
列よりも優れた安定性と薬物動態学的性質を有する。マルチサブユニットアミン
イミドの特定の合成を以下に概説する。
4.4.2.1 アルキル化/アシル化サイクルを介したアミンイミドサブユ ニットの連鎖化
以下の段階がこの合成に含まれる。
1. 上記のようにして調製されたキラルヒドラジニウム塩の、アミンイミド
を生成するアシル化剤及びアルキル化剤として両方の機能が可能な分子によるア
シル化。BrCH2COCl 及びその他の二官能種(例えばブロモアルキルイソシアネー
ト、2-ブロモアルキルオキサゾロン等)を、上記した反応条件下にアシル化剤と
して使用することができる。
2. 上記の反応の生成物の、不斉二置換ヒドラジンとの反応により、上記の
条件と同様の反応条件化で、アミンイミドヒドラジニウム塩のジアステレオマー
混合物を生成する。
3. 上記のように段階2で生成したジアステレオマーを、例えば、分別結晶
あるいは当業者に周知の方法を用いたクロマトグラフィーにより単離する。
4. 段階3からの所望のジアステレオマーを、上記段階1に挙げたものと同
様の二官能アシル誘導体によりアシル化してダイマータイプの構造を生成する。
5. 段階2、3及び4を必要な回数繰り返して所望のアミンイミドサブユニ
ット配列を構築する。
6. 所望により、例えば、アセチルクロリドの如きアシル化剤との反応によ
り、組み立てられた配列をキャップする。
上記の全ての反応についての実験条件(例えば、反応溶媒、温
度及び時間、及び生成物の精製方法)は、上記の通りであり、当分野でよく知ら
れ、実施されているものである。非常に小さい分子量の生成物をうまく与えた条
件下において反応させた場合、生成物の分子量が増すにつれて(例えば上記段階
5において)、溶解度及び反応速度の問題が起こり得る。ペプチド合成の分野か
らよく知られているように、これはおそらくコンフォーメーションによる(折り
畳み)効果及び凝集現象によるものであり、関連したペプチドの場合にうまく働
くことが見出されている方法が、アミンイミド連鎖化の場合において非常に有用
であると考えられる。例えば、DMF、あるいはN−メチルピロリドンのような
反応溶媒、尿素のようなカオトロピック(凝集分解)剤の使用が、生成物の分子
量の増加に伴う反応性の問題を低減するのに役立つと考えられる。
4.4.2.2 アシル化/アルキル化サイクルを介したアミンイミドサブユ ニットの連鎖化
以下の段階がこの合成に含まれる。反応を実施するための実験条件は上記した
ものである。
1. 上記に概略を示したように調製された不斉二置換アシルヒドラジドを、
アシル化剤及びアルキル化剤として両方機能できる分子でアルキル化することに
より、アミンイミドのラセミ混合物
を生成する。前と同様に、BrCH2COCl の使用を下記に示したが、その他の二官能
種、例えばブロモアルキルイソシアネート、2-ブロモアルキルオキサゾロン等も
使用することができる。
2. 上記からのラセミ体を不斉二置換ヒドラジンと反応させてヒドラゾンを
形成する。
3. 上記のようにして前の段階からのラセミ改変物を分割する。
4. 段階3からの生成物をアルキル化及びアシル化できる二官能分子により
アルキル化し、ジアステレオマーアミンイミドの混合物を形成する。二官能性分
子は、段階1で使用したものと同じでも異なっていてもよい。
5. 段階4からのジアステレオマーを、適当な不斉二置換ヒドラジンと反応
させて、示すように、ジアステレオマーヒドラゾンを生成する。
6. 上記のようにしてジアステレオマーを分離する。
7. 段階4、5及び6を繰り返して所望のアミンイミドサブユニット配列を
構築する。
8. 所望により、例えば、メチルブロミドを使用して配列をキャップし、下
記に示したような配列を生成する。
4.4.2.3 エポキシドの存在下におけるエステルのヒドラジン分解を使 用したアミンイミドサブユニットの連鎖化
この合成は以下の段階を含む。反応を実施するための実験条件は上記に示した
ものである。
1. 1,1-不斉二置換ヒドラジンとエポキシドとの反応によりアミンイミンを
形成する。下記にキラルエポキシドについての反応
を示す(キラルエポキシドは、例えばSharplesエポキシ化により得られる)。
上記アミンイミンは通常は単離されないが、次の反応に直接使用する。
2. 上記アミンイミンをエステル−エポキシドと反応させてアミンイミンを
生成する。上記のジアステレオマーアミンイミドと下記に示したエステル−エポ
キシドとを混合することにより、以下のものが得られる。
3. 上記のようにしてジアステレオマーアミンイミドを分離する。
4. 所望のジアステレオマーアミンイミドを不斉二置換ヒドラジンと反応さ
せてジアステレオマーアミンイミド−アミンイミン
を形成する。
5. 適当なヒドラジン及びエポキシ−エステルを各段階に使用し、上記段階
2、3及び4を繰り返して所望のアミンイミド配列を生成する。
6. 所望により、単純なエステル(例えば酢酸メチル)を使用したアシル化
により最終配列を「キャップ」し、示される設計されたアミンイミドリガンドを
生成する。
4.4.2.4 α−ヒドラジニウムエステルまたはカルボン酸の連鎖化
この合成は以下の段階を含む。反応を実施するための実験条件
は上記に示したものである。
1. キラル的に純粋なヒドラジニウム塩(上記のようにして製造)を、強塩
基(例えばアルコール溶媒中のNaOMe )により処理してイミノアニオンを形成す
る。
2. 段階1からの適当にブロックされたイミノアニオン含有混合物にα−ヒ
ドラジニウムエステル(やはり上記のようにして製造)を加え、示す通り、ヒド
ラジニウム−アミンイミドを形成する。
上記式中、B1 はBOC(t-ブトキシカルボニル)の如き適当な保護基である
。
3. B1 の除去の後、段階1及び2を必要な回数繰り返して所望のアミンイ
ミド配列を得、単純なエステルをアシル化剤として用いて「キャップ」段階を行
う。
あるいは、上記したように前記エステルを、室温で、MeOH/H2O中のLiOHで処理
することによりα−ヒドラジニウムカルボン酸を得ることができ、そして、DC
Cあるいは他の試薬により促進される縮合反応により互いに結合させることがで
きる。慣用のペプチド合成において使用される保護基がここでも有用であると考
えられる。
4.4.3 アミンイミドを含有するペプチド及びタンパク質の合成
高分子量種の問題となる反応を処理する方法を含め、上記に概略を示した方法
の1つを用いて、化学合成によりアミンイミドサブユニットをポリペプチドの任
意の位置に導入することができる。得られるハイブリッド分子は、本来の分子に
対して改良された性質を有していると考えられる。例えば、アミンイミド基は、
ハイブリッド分子にその本来の対応物よりも高い加水分解及び酵素的安定性を与
えることができる。
アミンイミド改変ペプチドの合成の例として、アミンイミド含有分子でアルキ
ル化することによりメリーフィールド固相合成支持体に結合したペプチドの改変
を下記に示す。
部分Bが、例えばアシル化反応を介して、別のアミンイミド及び天然または非
天然のアミノ酸サブユニットと結合するのに用いることができる官能基を含む場
合は、上記に概略を示した実験方法を使用して複合ハイブリッド構造を得ること
ができる。
4.4.4 キラルアミンイミド含有モノマーの合成と重合
種々の高度な技術的応用に有用な新規巨大分子を与えるために重合することが
できるモノマー構築ブロックに、上記のアミンイ
ミド構造の多くを転換することが企図される。以下の合成方法は新規な材料の製
造に極めて有用であると考えられる。
(a) ビニルアミンイミドのフリーラジカル重合
下記に示した一般構造のキラル(並びにアキラル)ビニルアミンイミドモノマ
ーは、上記に概略を示した方法により容易に調製することができ、当分野でよく
知られた実験方法に従ってフリーラジカル重合に使用し、膨大な数の新規なポリ
マー材料を生成することができる。
好ましいフリーラジカル重合に有用な別のモノマー構造としては以下に示すもの
が挙げられる。これらはより剛性の構造へ架橋されることができるポリマー鎖を
生成する。下記に示したモノマーは上記に概略を示した合成方法を使用して調製
することができ、重合/架橋反応は標準的な重合法を使用して行うことができる
。例えば、Practical Macromolecular Organic Chemistry, Braun,Cherdron and
Kern, trans. by K. Ivin, 3ed., Vol Z, Harwood Academic Publishers, New
York, N.Y. 1984を参照されたい。
上記に示したモノマーは、市販されているかまたは標準的な合成反応及び方法
により容易に調製できる他のアルケンあるいはジエンと重合して、新規な構造と
分子認識特性を有するコポリマーを与えることができる。
(b) アミンイミド含有巨大分子を生成する縮合重合
アミンイミド形成分子の連続的な縮合は、制御されたサイズの種々の新規なポ
リマーを生成するのに使用することができる。ダイマーエポキシド及びエステル
を使用する例を下記に示す。トリマー及びさらに複雑なエポキシド及びエステル
を使用する方法も企図される。これらの重合を実施するための実験条件(生成物
の分子量が増えるに従って起こる実験上の困難を解決する方法を含む)は上記し
た。
重合反応を、支持体、例えばシリカ上に固定された分子を用いて行うと、特定の
分子を認識することができる支持体が得られる。このような支持体の例を下記に
示す。
4.4.5 脂肪擬似物
二重層膜構造を生成できる、2つの長鎖アルキル基を含むアミンイミド結合体
構造は本発明の好ましい態様である。これらの両親媒性の表面活性化合物は多く
の用途が考えられる。これらは生物学的に活性な分子を細胞壁から単離し安定化
するのに使用し得る。これらは、両親媒性高分子、例えばレセプター、酵素等の
単離及び精製のためのアフィニティクロマトグラフィー支持体の製造に有用であ
る。またこれらは薬剤の投与のための有効なデリバリーシステムとなり得る。
1つの好ましい脂質擬似物の構造を下記に示す。置換基Rは、生物学的レセプ
ターのリガンド及び酵素の構造を含む種々のサイズの種々の構造から選択し得、
置換基の好ましい組み合わせは、R1 及びR2 についての立体的に小さいもと、
例えば上記にR3 について記載したA及びBのような基とを含む。長鎖アルキル
基は4〜20の炭素長である。基Xは、C、H、N、O及びSからなる群から選択
される原子からなるリンカーである。
上記に示した表面活性構造の別の望ましい変形は下記のものである。
上記構造において、Xはリンカー基(例えばCH)であり、1以上の置換基R
は、上記の構造A及びBの群から選択され、残りの置換基は好ましくは立体的に
小さい基、例えばHまたはCH3 である。別の望ましい両親媒性構造を下記に示
す。置換基構造は上記に挙げたものと同様である。
脂質擬似物の合成の例を以下に示す。以下の反応のために必要な実験条件は、
関連する変換について上記したものと同様である。
と結合してCH3(CH2)14CH2CH(OH)CH2N(CH3)2NCOCH3 を生成し、これを次にアルカ
リ条件下でCH3(CH2)14CH2Br と結合して、
を生成する。
4.4.6 特定の分子を認識することができるアミンイミド含有巨大分子構 造の製造
本発明の1つの態様においては、アミンイミド分子構築ブロックは、特定の分
子を認識することができる新規な巨大分子構造(「インテリジェント巨大分子」
)の構築に使用することができる。「インテリジェント巨大分子」は、下記の一
般式で表すことができる。
P−C−L−R
ここで、Rは分子を認識することができる構造であり、Lはリンカーであり、
Pは支持プラットフォームとなる巨大分子構造であり、CはPを取りまく被覆と
なるポリマー構造である。
構造Rは、例えば上記したような、本来のリガンドもしくは生物学的リガンド
受容体またはその擬似物であり得る。
リンカーLは、化学結合もしくは上記に挙げたようなリンカー構造の1つ、あ
るいはアミノ酸、アミンイミドモノマー、オキサゾロン誘導原子鎖等のようなサ
ブユニットの配列であり得る。
ポリマー被覆Cは、共有結合、あるいは「シュリンクラッピング」、即ち、表
面を当業者によく知られた被覆重合にかけたときに得られる結合のいずれかを介
して支持プラットフォームに結合することができる。この被覆エレメントは、
1) 厚さ10〜50Åの薄い架橋ポリマーフィルム、
2) 制御された微孔性及び変化し得る厚さを有する架橋ポリマ
ー層、あるいは、
3) 制御された微孔性のゲルであることができる。支持プラットフォームが微
孔性粒子または膜である場合、以下に記載するように、制御された微孔性のゲル
は支持プラットフォームの多孔構造を完全に充填するように作製することができ
る。ポリマー被覆は、種々の反応パラメーター、例えば、被覆架橋の性質及び程
度、重合開始剤、溶媒、反応体濃度、及び他の反応条件、例えば、温度、攪拌等
を、当業者によく知られた方法で注意深く制御することによって、制御された形
で製造することができる。
支持プラットフォームPは、直径(dp)100Å〜1000μを有する薄膜物質、ラ
テックス粒子(dp 0.1 〜0.2 μ)、微孔性ビーズ(dp 1〜1000μ)、多孔質膜
、ゲル、繊維、あるいは連続的な肉眼で見える表面であることができる。これら
は市販のポリマー材料であってよく、例えばシリカ、ポリスチレン、ポリアクリ
レート、ポリスルホン、アガロース、セルロース等、あるいは例えば以下に記載
するもののような合成アミンイミド含有ポリマーであることができる。
アミンイミドをベースとする構造を含むエレメントP、C、L及びRはいずれ
も、アミンイミドをベースとする構造への前駆体を含むエレメントの形態から誘
導される。上記のマルチサブユニット認識剤は、標的を設定された治療剤、薬剤
デリバリーシステム、アジュバント、診断剤、キラル選択剤、分離システム及び
用途の定められた触媒の開発において非常に有用であると期待される。
本明細書において、「表面」、「支持体」及び「構造」の用語は、上記に定義
したように、P、Cに結合したP、C及びLに結
合したPのいずれかを示すものである。
このように、本発明のもう1つの形態は、3次元架橋ランダムコポリマーに関
し、該コポリマーは、共重合された形態で、1〜99部のアミンイミド基を含む遊
離基重合可能なモノマー、98部までの遊離基付加重合可能なコモノマー、及び約
1〜50部の少なくとも1種の架橋モノマーを含む。
このコポリマーに使用されるコモノマーは、水溶性あるいは非水溶性であって
よく、コポリマーは非水溶性ビーズ、非水溶性膜あるいはラテックス粒子の形態
に形成され、あるいは電気泳動ゲルとしての使用に適した膨潤水性ゲルであって
もよい。
このコポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも3つのエポキシ基、(2)少なく
とも3つのエステル基、(3)少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも2つの
エステル基、及び(4)少なくとも1つのエステル基及び少なくとも2つのエポキ
シ基からなる群から選択される部分クラスターを含む縮合重合可能なモノマーを
約1〜99部、(1)少なくとも2つのエステル基、(2)少なくとも2つのエポキシ基
、及び(3)少なくとも1つのエステル基及び少なくとも1つのエポキシ基からな
る群から選択される部分クラスターを含む第2の縮合重合可能なモノマーを約1
〜99部、及びエポキシ基の全含有量にモルベースで実質的に等しい量の1,1-ジア
ルキルヒドラジン等価物の反応生成物である。
4.4.6.1 アミンイミド含有支持体物質
市販の、あるいは容易に得られるクロマトグラフィー及びその他の用途のため
のクロマトグラフィー支持体材料、並びにその他
の製造された材料を、化学的改変により目的に合わせたアミンイミド部分で誘導
化し、特定の分子構造を認識できる新規な材料を生成することができる。
下記の一般構造が意図される。
上記の構造において、Aは、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド及びタン
パク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、治
療剤と関連した分子構造、代謝物、染料、写真的に活性な化学物質、及び所望の
立体、電荷、水素結合また疎水性エレメントを有する有機構造からなる群から選
択され、X及びYは、化学結合またはC、H、N、O、Sの群から選択された原
子からなる基であり、R1 及びR2 は、アルキル、シクロアルキル、アリール、
アラルキル、アルカリール、及び好ましくは天然のアミノ酸の側鎖に類似した構
造の群から選択される。
複数のアミンイミドサブユニットにより官能化された表面及びその他の構造も
好ましい。一般的構造を以下に示す。
上記の構造において、R1…n及びR’1…nは、ヒドラジン置換基R1 及びR2 が
上記の機能的な支持オリゴマーあるいはポリマーを生成するための各重合段階に
おいて異なっていてもよいという形態を示すものである。
下記の化学的改変は、アミンイミド官能化表面を製造するのに使用できる。
4.4.6.1.1 エステル及びエポキシ表面の官能化
エステル基を有する表面を、所望の基Bを含むエポキシド、及びジ置換ヒドラ
ジンで処理して、以下のようにアミンイミド表面を形成することができる。
上記の反応を実施するためには、表面を、10モル%過剰のエポキシド(表面の
反応性エステル基の計算された数に基づいて)、及び化学量論量のヒドラジン(
エポキシドの量に対して)の適当な溶媒、例えばアルコール中の溶液で、震盪し
て処理する。この混合物を、その後時折震盪して室温に1週間静置する。この期
間の終了時に、デカンテーションにより溶媒を除去し、表面を新しい溶媒で完全
に洗浄し、風乾する。
この方法により、エステル基を含む、容易に入手できる支持体の官能化が可能
となる。
上記の一連の反応は、エポキシ官能化表面にも使用できる。
上記の反応を実施するためには、表面を、10モル%過剰のエステル(支持体の
反応性エポキシド基の計算された数に基づいて)、及び化学量論量のヒドラジン
(使用したエステルの量に対して)の適当な溶媒、例えばアルコール中の溶液で
、震盪して処理する。この混合物を、その後時折震盪して室温に1週間静置する
。この期間の終了時に、デカンテーションにより溶媒を除去し、表面を新しい溶
媒で完全に洗浄し、風乾する。
上記の反応は、その置換基Bが二重結合を含んでいるエステルを使用して改変
することができる。上記の反応の終了後、Sharples
の不斉エポキシ化を含む種々の反応の1つ(例えば、当分野でよく知られた適当
な反応条件下で過酸を使用した)を用いて前記エステルの二重結合をエポキシド
化することができ、生成物は新たなアミンイミド形成反応の繰り返しにおいてエ
ポキシドとして使用される。全体の工程を繰り返してオリゴマー及びポリマーを
形成することができる。
例えば、β,γ−ブテン酸メチルエステルをエステルとして用いて、上記の一
連の反応をn回繰り返すことにより、形態
(ここで、R1…n及びR’1…nの表示は、ヒドラジン置換基R2 及びR3 が所望
によりオリゴマーまたはポリマーを生成する各重合段階において異なるという形
態を示すものである)の化合物が生成される。
上記の反応を、ROOC-X-COOR'(ここでXはリンカーであり、R及びR’は上記
に定義したようにアルキル基である)の2官能性エステル、及び/または下記に
示した形態の2官能性エポキシド
(ここで、Yは上記に定義したようなリンカーである)を使用して行い、所望の
ポリマーを形成することができる。エステル官能
化表面を2官能性エステル及びエポキシドと反応させた場合、得られる表面は下
記の一般構造を有する。
エポキシド官能化表面を上記のように反応させた場合、誘導化された表面は下
記の一般構造を有する。
4.4.6.1.2 アミン表面の官能化
アミン官能化表面は、下記経路(a)に示したように、アクリルエステルとの反
応によりエステル担持表面に変換することができる。この反応の後に、経路(b)
に示したようにヒドラジン及びエポキシドとの反応を行う。
反応(a)のためには、10モル%過剰のメチルアクリレート(酸による滴定で測
定した表面の反応性アミノ基の数に基づいて)を適当な溶媒、例えばアルコール
に溶解して、表面に添加する。添加の終了後、混合物を室温で2日間震盪する。
その後デカンテーションにより溶媒を除去し、次の段階の準備において表面を新
しい溶媒で完全に洗浄する。
反応(b)のためには、化学量論量のヒドラジンとエポキシドとの1:1混合物を適
当な溶媒、例えばアルコール中で合わせ、反応(a)からの溶媒で濡れた表面に手
早く添加する。混合物を室温で3日間震盪する。その後デカンテーションにより
溶媒を除去し、表面を新しい溶媒で完全に洗浄し乾燥する。
上記の一連の反応はエポキシド官能化表面にも使用することができ、その場合
には上記構造中の置換基Bは表面を表し、所望の官能基がアミン部分を担持する
ものである。そのような表面を得る1つの方法は、下記に示すように、シリカ表
面をエポキシドを含むケイ酸エステルと反応させ、いわゆる「エポキシシリカ」
を形成することである。
4.4.6.1.3 カルボン酸含有表面の官能化
カルボン酸基で官能化された表面は、下記段階(a)に示したように、1,1-ジア
ルキルヒドラジン及び結合剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC
)と反応させて、ヒドラゾン含有表面を形成することができる。この表面はその
後、段階(b)に示したように、ヒドラゾンをアルキル化できる置換基を担持する
所望の基Bと結合して(塩基での処理の後に)アミンイミド構造を与えることが
できる。
置換基Bは、ヒドラゾンと反応できるアルキル化剤により官能化された表面で
ある。
上記のカルボキシル担持表面の化学的改変を行うためには、表面を、適当な溶
媒、例えばメチレンクロリド中の10モル%過剰の等モル量のN,N-ジメチルヒドラ
ジン及びDCCで処理し、混合物を2時間室温で震盪する。その後デカンテーシ
ョンによりスラリーを除去し、表面を新しい溶媒で完全に洗浄して沈殿したジシ
クロヘキシル尿素残留物を全て除去する。次に表面を、70℃に温め
た適当な溶媒中の化学量論量のアルキル化剤で処理し、この温度に6時間維持す
る。次に混合物を冷却し、デカンテーションにより溶媒を除去し、表面を新しい
溶媒で洗浄し、乾燥する。
4.4.6.1.4 ヒドラジドアルキル化が可能な表面の官能化
アシルヒドラゾンをアルキル化することができる基を担持する表面は、下記の
ように、官能化してアミンイミド基を含むようにすることができる。
上記式において、Z及びWは、C、N、H、O、Sの群から選択された原子か
らなるリンカーであり、Xは例えばハロゲンあるいはトシレートのような適当な
脱離基である。
所望の基Bを担持するヒドラゾンは、適当な1,1'-ジアルキルヒドラジンを、
当分野でよく知られた反応により、Bを含む種々の誘導体のいずれかと反応させ
ることにより生成される。これらの誘導体は、酸ハライド、アズラクトン(オキ
サゾロン)、イソシアネート、クロロホルメート、あるいはクロロチオホルメー
トであることができる。
4.4.6.1.5 -NH2、-SH または-OH 基を担持する表面のクロロメチル アミンイミドによる官能化
-NH2、-SH 、あるいは-OH 基で官能化された表面は、これらを、強塩基の存在
下、上記に概略を示した実験条件を使用して、クロロメチルアミンイミドで処理
することにより官能化することができる。
必要なクロロメチルアミンイミドは、公知の文献記載の方法(例えば、21 J.
Polymer Sci., Polymer Chem. Ed. 1159 (1983)を参照)、あるいは上記した方
法を使用して得られる。
4.4.6.1.6 オキサゾロン含有表面の官能化
オキサゾロン含有表面は、下記段階(a)に示したように、最初にそれらを1,1'-
ジアルキルヒドラジンと反応させ、次に段階(b)に示したように、得られるヒド
ラゾンをアルキル化剤B-CH2-Xによりアルキル化することにより官能化できる。
これらの改変を実施するにあたっては、上記したものと同様の反応条件が有効で
あると考えられる。
上記の構造中、R3 及びR4 はAzで示される5員アズラクトン環から誘導される
。
これまでの説明は特に表面の官能化についてのものであったが、これらの反応
は、本出願に記載されたA及びBのその他の種に対してアミンイミド結合を構築
するのにも使用できる。
4.4.7 支持体材料用のアミンイミドベース被覆の調製
種々の可溶性アミンイミド配合物を存在する支持体の表面上に被覆し、次に得
られた被覆をその場で架橋して機械的に安定な表面を形成することにより、アミ
ンイミド官能化複合支持体材料を製造することが可能である。被覆は、工程の条
件、モノマー使用量、架橋のメカニズム及び架橋剤の量を注意深く選択すること
により、特定の用途のためのものとして作製することができる(例えば、薄い非
多孔質フィルムの形態をとるように、あるいは表面積を増加させるために局所的
な微孔性を有するように)。
例えば、前記の反応はいずれも、選択した表面に接触するビニ
ルアミンイミドを使用して行うことができ、これはよく知られた方法で重合され
る(例えば米国特許第4,737,560 号を参照)。重合により、アミンイミド側鎖を
含むポリマーにより被覆された表面が得られる。アミンイミド官能基を用いたそ
の他の被覆方法を以下にさらに詳細に説明する。
4.4.8 アミンイミドベース分子の重合によるアミンイミド含有材料の合 成
市販のあるいは容易に得られる表面の化学的改変にアミンイミド化学を使用す
ることに加えて、重合可能な基を担持するアミンイミド前駆体から、架橋剤の存
在下あるいは不存在下の重合及び/または共重合により、新規な表面及び/また
はその他の材料を新たに製造することができる。所望の材料のための性質に応じ
て、モノマー、架橋剤、及びその比率の種々の組み合わせが使用できる。得られ
る支持体材料は、ラテックス粒子、多孔質あるいは非多孔質ビーズ、膜、繊維、
ゲル、電気泳動ゲル、あるいはこれらのハイブリッドであり得る。さらに、モノ
マー及び架橋剤は、すべてがアミンイミドであってもよくすべてがアミンイミド
でなくてもよい。
ビニル重合あるいは縮合重合は、所望のアミンイミド含有材料を調製するのに
有利に使用し得る。ビニル重合は、アミンイミドと共重合可能な形態CH2=CH-Xの
1種以上のモノマーを使用する。適する例としては、スチレン、酢酸ビニル、及
びアクリルモノマーが挙げられる。所望により、相溶性の非アミンイミド架橋剤
、例えばジビニルベンゼン等を(単独またはその他のそのような試薬との組み合
わせで)使用することができる。
縮合重合は、多官能エポキシド及び多官能エステルを適当な量の1,1-ジアルキ
ルヒドラジンとともに使用し、上記の反応条件を使用することにより行うことが
できる。3次元架橋したポリマー構造を得るためには、エステル成分あるいはエ
ポキシド成分のいずれかが少なくとも3官能性でなければならず、好ましくは両
者が3官能性である。
工程の性質及び条件、種々のモノマーの比率及び全モノマー含量に対する架橋
剤の比率を変化させて種々の生成物構造を生成することができ(例えば、ビーズ
、繊維、膜、ゲル、これらのもののハイブリッド)、また目的に応じた最終生成
物の機械的性質及び表面の性質を与えることができる(例えば、粒子直径及び形
状、多孔度及び表面積)。特定の用途に対する適当なパラメーターは、当業者に
より容易に選択することができる。
4.4.9 アミンイミドモジュールから誘導されたペプチド擬似物の組み合 わせライブラリー
上記に概略を示したアミンイミドの合成変換は、Merrifield及びその他の者に
より記載された固相ペプチド合成を行う方法(例
えば、Barany, G., Merrifield, R.B., Solid Phase Peptide Synthesis, in Th
e Peptides Vol. 2, Gross E., Meienhofer, J.eds., p. 1-284, Acad. Press,
New York 1980; Stewart, J.M.Yang, J.D., Solid Phase Peptide Synthesis, 2
nd ed., PierceChemical Co., Rockford, Illinois 1984; Atherton, E., Shepp
ard, R.C., Solid Phase Peptide Synthesis, D. Rickwood & B.D. Hames eds.,
IRL Press ed. Oxford U. Press, 1989 を参照)に類似した方法により、固体
支持体上で容易に行うことができる。アミンイミド誘導構造のアセンブリーはモ
ジュール方式、即ち、分子サブユニットの一連の組み合わせの結果得られたもの
であるため、適当な固相化学合成法、例えばLam(K.S. Lam, et al. Nature 354
, 82 (1991))及びZuckermann (R.N. Zuckermann,et al Proc. Natl. Acad. Se
r. USA, 89, 4505 (1992); J.M. Kerr, et al., J. Am. Chem. Soc. 115, 2529
(1993))により記載されたような方法を使用して、アミンイミドをベースとする
オリゴマー構造の巨大な組み合わせライブラリーを容易に作製することができる
。所望の生物学的活性、例えば、レセプターとの結合あるいは酵素との相互作用
等についてのこれらの化合物のライブラリーのスクリーニングは、当分野におい
てよく知られた種々の方法を用いて実施することができる。「固相」ライブラリ
ー(即ち、リガンドの候補がその合成に用いた固体支持粒子に結合したままであ
るライブラリー)を使用して、Lam のビーズ染色法を使用することができる。前
記方法では、その活性により色素を生じさせる酵素(例えばアルカリホスファタ
ーゼ)によりリガンド候補受容体(例えば所望の酵素あるいは細胞レセプター)
を標識し、
これにより活性リガンド候補を含むライブラリー支持体粒子を染色し、不活性リ
ガンド候補を含む支持体粒子を無色のままに残すものである。染色された支持体
粒子は、ライブラリーから物理的に(例えば、顕微鏡を使用しマイクロマニピュ
レーターに結合した微小なピンセットを使用して)除去され、例えば8Mグアニジ
ン塩酸塩による洗浄によりリガンド受容体を複合体から除去した後に、ライブラ
リー中の生物学的に活性なリガンドを構造的に同定するのに使用される。「溶液
相」ライブラリーでは、上記のZuckermannにより記載されたアフィニティ選択法
を使用することができる。
組み合わせライブラリーの特に好ましいタイプは、コード化された組み合わせ
ライブラリーであり、これは特有の化学コード(例えばオリゴヌクレオチドある
いはペプチド)の合成を使用し、これは、ライブラリーのリガンド候補の合成と
並行して、容易に翻訳(例えば慣用の分析法を用いた配列決定により)される。
コードの構造はリガンドの構造を完全に示すものであり、慣用の分析方法を使用
した場合にはその構造を解明することが困難であるか不可能であるような生物学
的に活性なリガンドを構造的に特性化するのに使用される。組み合わせライブラ
リーの構築のためのコード理論は最近記載されている(例えば、S. Brenner and
R.A. Lerner, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 89, 5381 (1992); J.M. Kerr, et
al., J. Am. Chem. Soc. 115, 2529 (1993)参照)。
これらの理論及びその他の関連する理論は、アミンイミド単位から誘導されたオ
リゴマー及びその他の複合体構造のコード化された組み合わせライブラリーの構
築に使用することが意図される。
組み合わせの化学の、例えば薬剤発見に関する、化学化合物のスクリーニング
可能なライブラリーを形成することにおける威力は、上記に挙げたものを含むい
くつかの刊行物に記載されている。例えば、Lam et al.によって概略が示された
「スプリット固相合成」法を用いて、20の異なるアミンイミドをペンタマー構造
中にランダムに導入することにより(ペンタマーの5つのサブユニットのそれぞ
れは前記アミンイミド単位の1つから誘導されたものである)、205 = 3,200,00
0のペプチド擬似物リガンド候補のライブラリーであって、それぞれのリガンド
候補が1以上の固相合成支持体粒子に結合しており、そのような粒子のそれぞれ
は単一のリガンド候補のタイプを含むライブラリーを生成することができる。こ
のライブラリーは、僅か数日で構築し生物活性についてスクリーニングすること
ができる。これは新規な分子候補を製造するためにオキサゾロンモジュールを使
用した組み合わせ化学の威力である。
下記に示すのは、アミンイミドをベースとする化合物のランダムな組み合わせ
ライブラリーの構築に使用することが意図される多くの方法の1つである。スク
シノイルリンカーを介して支持体に結合された27のトリマー構造を生成するため
の、以下に示すα−クロロアセチルクロリドとヒドラジンから誘導された3種の
アミンイミドのランダムな導入を下記に示す。
(1) 適当な固相合成支持体、例えばMerrifieldのクロロメチル樹脂を、CsCO3 の
存在下に4-ヒドロキシ酪酸により処理し、その後当分野で知られた条件下でp-ト
ルエンスルホニルクロリドでトシル化する。
(2) 得られた樹脂を3つの等しい部分に分ける。それぞれの部分を上記に示した
ヒドラジンの1つと結合してヒドラジニウム樹脂を得、これを上記した実験条件
を用いたクロロアセチルクロリドとの反応によりアミンイミドに変換する。
(3) アミンイミド樹脂部分を十分に混合し、もう一度3つの等しい部分に分ける
。各樹脂部分を異なるヒドラジンと結合し、その
後α−クロロアセチルクロリドと結合し、2つの結合したアミンイミドサブユニ
ットを有する樹脂を生成する。次にこの樹脂部分を十分に混合し、3つの等しい
部分に分ける。
(4) 各樹脂部分を異なるヒドラジンと結合し、その後酸塩化物との反応により3
つの結合したアミンイミドサブユニットを有する樹脂を生成する。
樹脂部分を混合して、27種のビーズを含み、そのビーズのそれぞれの種類が単
一のトリマーアミンイミド種を含むものである、上記のビーズ染色法を使用する
スクリーニングのためのライブラリーを生成する。あるいは、アミンイミドを加
酸分解により支持体から分離し、ブチリル化された末端窒素を含むアミンイミド
の「溶液相」ライブラリーを生成してもよい(下記の構造に示したもので、ここ
ではR=C3H7である)。
4.4.10 アミンイミドをベースとする糖ペプチド擬似物の設計と合成
アミンイミド構造を導入した非常に多くの糖類及び多糖類の構造モチーフが意
図され、限定されるものではないが、下記のものが含まれる。
(1) 糖化学の分野においてよく知られた反応及び上記の反応を用いた、アミン
イミドバックボーンによるある種のグリコシド結合の置換。
(2) 糖誘導体及び目的に合わせた擬似物、あるいはその他の糖を適所に保持す
るためのリンカーとしてのアミンイミド構造の使用。
4.4.11 アミンイミド含有オリゴヌクレオチド擬似物の設計と合成 ヌク
レオチド及びオリゴヌクレオチド合成の技術により、非常に多様な適当にブロッ
クされ活性化されたフラノース及びその他の中間体が得られ、これらはアミンイ
ミドをベースとする擬似物の構築に非常に有用であると考えられる(Comprehens
ive Organic Chemistry, Sir Derek Barton, Chairman of Editorial Board, Vo
l. 5, E. Haslam, Editor, pp. 23-176)。
アミンイミドをベースとする構造を導入した非常に多様なヌクレオチド及びオ
リゴヌクレオチド構造モチーフが意図され、限定されるものではないが、下記の
ものが含まれる。
(1) 下記方法は、本来のオリゴヌクレオチドに見られるリン酸ジエステル配置
の代わりにペプチドアミンイミドをベースとする
リンカーを含むオリゴヌクレオチドの合成のために有用と考えられる多くのもの
の1つである。
(2) アミンイミド配置が複雑なオリゴヌクレオチド誘導単位を結合するために
使用される構造の合成のためには、例えば下記の
ような方法が非常に有用であると考えられる。
5. 実施例:ビンカミンを結合するレセプターの単離及び精製に有用な両親媒 性リガンド擬似物の合成
適当な溶媒、例えばn-プロパノール中の、1.84 g (0.01 mol)の1,2-エポキ
シドデカン(I)の溶液に、攪拌しながら0.61 g (0.01 mol)の1,1-ジメチルヒド
ラジンを加える。溶液を1時間室温で攪拌し、氷浴で10℃に冷却し、最小量の同
じ溶媒に溶解した3.54 g (0.01 mol)のビンカミン(II)を加える。反応混合物
を0℃で2時間攪拌し、室温に戻し、室温で3時間攪拌する。この時間の終了時
点で高減圧下(0.2torr)に溶媒を除去し、粗精製物を単離する。複合体(II)は
、ビンカミン及び構造的に関連する分子により治療的な作用を受けるレセプター
タンパク質の単離及び精製のための安定剤として有用である。
6. 実施例:セロトニン結合レセプターの単離及び精製に有用な両親媒性リガ ンド擬似物の合成
100 mlの適当な溶媒中の17.62 g (0.1mol)のセロトニンの攪拌された溶液に
、8.61 g (0.1 mol)のメチルアクリレートを15分
間にわたって加える。反応混合物を室温に戻し、室温で2日間攪拌する。凍結乾
燥により溶媒を除去し、エステル(IV)を得る。 6.01 g(0.1 mol)の1,1-ジメチ
ルヒドラジンを攪拌しながら適当な溶媒、例えばプロパノール中の18.4 g (0.1
mol)の1,2-エポキシドデカンに加える。混合物を室温で1時間攪拌し、同じ溶
媒に溶解した(IV)の溶液を加える。その後混合物を室温で3日間攪拌する。この
時間の終了時点で減圧下に溶媒を除去し、セロトニン複合体(V)を得る。これは
、セロトニン結合膜レセプタータンパクの発見、安定化及び単離のためのリガン
ドとして有用である。
7. 実施例:コデイン結合タンパクの単離及び精製に有用なローダミンB含有 リガンド擬似物の合成
カルボン酸から酸塩化物を調製する標準的な方法によりローダミンBから調製
した、ローダミンBの酸塩化物(VI)の49.74 g (0.1 mol)を適当な溶媒の500 m
lに溶解したものを、攪拌しながら、
100 mlの同じ溶媒中の6.01 g(0.1 ml)の1,1-ジメチルヒドラジンの溶液に1時
間にわたって加える。温度は10℃に維持する。添加の完了の後、混合物を室温で
12時間攪拌し、減圧下に溶媒をストリッピングにより除去し、ローダミンBジメ
チルヒドラジン(VII)を得る。
5.21 g(0.01 mol)の(VII)を、100 mlの適当な溶媒、例えばベンゼン中に溶
解し、同じ溶媒50 ml 中の、アルコールのトシル化のための標準的な方法により
コデインから調製した、4.69 g(0.01 mol)のトシルコデイン(VIII)を15分間に
わたって攪拌しながら加える。混合物を加熱して還流させ、還流状態に1時間維
持する。その後混合物を冷却し、溶媒を減圧下に除去し、残留物を適当なアルコ
ール中に再溶解し、10%メタノール性KOHでpH8に調整する。沈殿した塩を濾
過により除去し、溶媒を減圧下にストリッピングして複合体(IX)を得る。これは
、コデイン及び構造的に同様なアナローグを結合するレセプタータンパクの位置
決定、安定化及び単離のためのプローブとして有用である。
8. 実施例:コデイン結合タンパクの単離及び精製に有用なディスパーズブル ー3含有リガンド擬似物の合成
50 ml の適当な溶媒(例えばベンゼン)中に溶解した0.285 g(0.001 mol)の
ノルコデイン(X)の溶液に、10 ml の同じ溶媒中の0.139 g(0.001 ml)の4,4'-
ジメチルビニルアズラクトン(XI)の溶液を加え、得られる溶液を70℃に加熱し、
この温度に10時間維持する。この時間の終了時に、冷却して温度を10℃にし、10
ml の同じ溶媒に溶解した0.06 g(0.001 mol)の1,1-ジメチルヒドラジンを滴
下して加える。次に溶液を70℃に再加熱し、この温度に2時間維持する。染料の
純粋な試料(市販の材料から標準的な通常相シリカクロマトグラフィーにより得
る)から標準的なトシル化方法により調製した0.466 g(0.001 mol)のディスパ
ーズブルー3トシレート(XII)を加え、混合物をさらに2時間70℃に加
熱する。次に減圧下に溶媒を除去し、残留物を適当なアルコール溶媒中に再溶解
し、10% (w/v)メタノール性KOH によりpH8(湿潤pHペーパーにより測定)に滴
定する。沈殿した塩を濾過により除去し、濾液を減圧下でストリッピングして複
合体(XIII)を得る。
これは、コデイン及び同様な分子を結合するレセプタータンパクの位置決定及び
単離のためのプローブとして有用である。
9. 実施例: コデイン結合性蛋白質の単離及び精製のための両親媒性リガン ドの合成
オクタデシルイソシアネート29.95g(0.1mol)をベンゼン100
ml中の1,1−ジメチルヒドラジン6.01g(0.1mol)にゆっくりと
加えた。混合物を18時間室温で攪拌し、常法により製造したトシルコデイン(V
III)54.2g(0.1mol)を30分かけて少しずつ加えた。混合物を還流
するまで加熱し、2時間還流下攪拌した。その後、溶媒を減圧下留去し、残渣を
エタノールのような適当な溶媒に溶解し、10%(
w/v)メタノール性KOHでpHを8に滴定した(湿らせたpH紙で測定)。
次いで、沈殿した塩を濾去し、溶媒を減圧下留去して粗複合体(XIV)を得た。
これは、コデイン及び類似分子に結合する受容体蛋白質の安定化及び単離に有用
である。
10.実施例: プロテインキナーゼ結合性ペプチドの擬似物の合成
a.標準 FMOC ペプチド合成法を用いて、末端 FMOC 基を脱保護した後、示さ
れたような固体支持体に結合してドデカマーペプチド(BEAD)-Asp-His-Ile-Ala
-Asn-Arg-Arg-Gly-Thr-Arg-Gly-Ser-NH2 が得られた。このペプチドを、適当な
溶媒中の等モル量の ClCH2COClの溶液と50℃で6時間振盪した。溶媒をデカン
テーションにより除去し、該ペプチドに結合している末端-NH-CO-CH2CL基を除去
した。
b.適当な溶媒中の等モル量の1,1−ジメチルヒドラジン及びジシクロヘキ
シルカルボジイミドの溶液を等モル量のヘプタマーペプチド H2N-Thr-Thr-Tyr-A
la-Asp-Phe-Ile-COOH(これは、標準 FMOC 固相ペプチド合成化学、例えば Mill
ipore Corp.のth
e Milligen Division 市販の装置及び方法を用いて製造し、遊離の状態で得た。
)で処理した。混合物を4時間室温で攪拌した。沈殿したN,N’−ジシクロヘ
キシル尿素を遠心分離及びデカンテーションにより除去し、溶液を上記a.で製
造した官能化されたビーズに加えた。次いで、混合物を50℃に加熱し、この温
度で一夜振盪した。混合物を冷却し、溶媒をデカンテーションにより除去し、ペ
プチドをビーズから分離し、アミニミド擬似物 H2N-Thr-Thr-Tyr-Ala-Asp-Phe-I
le-CO-N-N(CH3)2-CH2-Ser-Gly-Arg-Thr-Gly-Arg-Asn-Ala-Ile-His-Asp-COOHを得
た。この擬似物は、天然のプロテインキナーゼ結合性ペプチド、UK(5−24
)中のアラニンの位置にアミニミドを有し、プロテオリシス安定性が増強された
合成結合性ペプチドとして有用である。
11.1. ヒトエラスターゼインヒビターの擬似物の合成
この実施例は、公知のN−トリフルオロアセチルジペプチドアナリドインヒビ
ターの構造(162 J. Mol. Biol. 645 (1982)及びそこで引用された文献参照)に
基づいたヒトエラスターゼに対する競合的インヒビターの合成を教示する。
エタノール50ml中のアミニミド、N−(p−イソプロピルアナリド)−メ
チル)−S−N−メチル−N−ベンジルクロロメチルアセトアミド3.7g(0
.01mol)に、エタノール50ml中の1−メチル−1−イソブチル−2−
N−トリフルオロアセチルヒドラゾン(これは標準アシル化法を用いて[メチル
イソブチルアミン及びクロラミンからの]1−メチル−1−イソブチルヒドラジ
ンと無水トリフルオロ酢酸の反応から製造した。)1.86g(0.01mol
)を加えた。混合物を還流するまで加熱し、還流下4時間攪拌した。次いで、混
合物を室温まで冷却し、10%(w/v)KOHメタノール溶液でフェノールフ
タレイン終点まで滴定した。次いで、混合物を濾過し、溶媒をロータリーエバポ
レーターで減圧下留去した。残渣をベンゼンに取り、濾過した。ベンゼンをロー
タリーエバポレーターで留去して粗混合ジアステレオマーアミニミド5.1g(
95%)を得た。所望の(S)−(S)異性体は、シリカ上の順相クロマトグラ
フィーによる精製により得られた。この生成物は、ヒトエラスターゼに対する競
合的インヒビターとして有用であり、pH2水性移動相を用いた CrownpackTM C
R(+)キラル固定相(Daicell Chemical Industries Ltd.)によるHPLCによっ
て特徴付けられた。NMR(DMSO−d6 ):化学シフト、ピーク積分法及び
D2 O交換実験は構造上の特徴を示した。
11.2. キラルクロロアミニミド出発物質の合成
下記に概要したように製造したヨウ化ヒドラジニウムエナンチオマー4.2g
(0.01mol)、クロロ酢酸1.0g(0.0106mol)及び塩化クロ
ロアセチル1.24g(0.011mol)の混合物を乾燥管を備えたミクロ反
応フラスコに入れ、油浴中105℃で1時間加熱した。次いで、この(均一な)
反応混合物を室温まで冷却し、エチルエーテル20mlで4回激しく攪拌しなが
ら抽出して塩化クロロアセチル及びクロロ酢酸を除去した。半固体残渣を最小量
のメタノールで溶解し、10%KOHメタノール溶液でフェノールフタレイン終
点まで滴定した。沈殿した塩を濾去し、濾液をロータリーエバポレーターを用い
て40℃で蒸発乾固させた。残渣をベンゼンに取り、濾過した。溶媒をロータリ
ーエバポレーターにより留去し、(S)−アミニミドエナンチオマー3.37g
(90%)を得た。これは、CDCl3 NMRスペクトル及びD2 O交換実験に
より特徴付けられ、そのまま続けて次の工程に用いた(上記参照)。
11.3. キラルアミニミド出発物質の合成
トルエン125ml中の1−メチル−1−ベンジル−ヒドラジン(これは、標
準法[J. Chem. Ed. 485 (1959)]を用いてメチルベンジルアミン及びクロラミ
ンから製造した。)13.6g(0.1mol)を氷浴中5℃に冷却した。これ
に、トルエン100mlに溶解したp−イソプロピルフェニルクロロメチルアナ
リド(これは、塩化クロロアセチル及びp−イソプロピルフェニルアミンから製
造した。)21.17g(0.1mol)の溶液を激しく攪拌しながら1時間か
けて少しずつ加えた。加えている間、温度は5℃に保った。次いで、反応混合物
を室温まで温め、一夜攪拌した。沈殿した固体のヒドラジニウム塩を濾過し、冷
トルエンで洗浄し、真空オーブン中、60℃/30”で乾燥し、ラセミ生成物3
4.3g(98%)を得た。このラセミ化合物をエタノール100ml中、室温
で一夜スラリー化し、わずかにモル過剰の湿った酸化銀を加え、混合物を室温で
一夜攪拌した。次いで、混合物を、最小量の溶媒中に当量のD−酒石酸を含有す
るエタノ
ール溶液に濾過した。アルコール性濾液をその容量の約20%に濃縮し、濁りが
認められるまでジエチルエーテルを加えた。次いで、濁った溶液を0℃で一夜冷
却し、濾過して結晶を集めた。固体物質をエタノール/エーテルから再結晶する
ことにより精製し、所望の純粋なジアステレオマー塩を得、これは続いて、当量
の固体ヨウ化カリウムで処理し、(炭酸ナトリウムを加えてアルカリ性にした)
酒石酸塩の水−エタノール溶液から沈殿させることにより、ヨウ化物の形態に変
換した。これは、pH2水性移動相を用いた CrownpackTM CR(+)キラル固定相(
Daicell Chemical Industries Ltd.)によるHPLCによって特徴付けられた。
NMR(DMSO−d6 ):化学シフト、ピーク積分法及びD2 O交換実験は構
造上の特徴を示した。
14. 実施例: ヒトエラスターゼを阻害するペプチド擬似物の合成
エタノール50ml中の上記クロロメチルアミニミド4.36g(0.01m
ol)に、エタノール50ml中の1−メチル−1−イソブチル−2−N−トリ
フルオロアセチルヒドラゾン(これは標準アシル化条件を用いて[メチルイソブ
チルアミン及びクロラミンからの]1−メチル−1−イソブチルヒドラジンと無
水トリフルオロ酢酸の反応から製造した。)1.86g(0.01mol)の溶
液を加えた。混合物を還流するまで加熱し、還流下4時間攪拌し、次いで、室温
まで冷却し、10%(w/v)KOHメタノール溶液でフェノールフタレイン終
点まで滴定した。次いで、混合物を濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで
減圧下留去した。残渣をベンゼンに取り、再び濾過した。ベンゼンをロータリー
エバポレーターで留去して混合(R)−(S)及び(S)−(S)アミニミドジ
アステレオマー5.7g(95%)を得た。所望の(S)−(S)異性体は、シ
リカ上の順相クロマトグラフィーによる精製により得られた。この生成物は、ヒ
トエラスターゼに対する競合的インヒビターとして有用であり、pH2水性移動
相を用いた CrownpackTM CR(+)キラル固定相(Daicell Chemical Industries Lt
d.)によるHPLCによって特徴付けられた。NMR(DMSO−d6 ):化学
シフト、ピーク積分法及びD2 O交換実験は構造上の特徴を示した。キラルクロロアミニミドの合成
5.2.3に記載したように製造したヨウ化ヒドラジニウムエナンチオマー4
.87g(0.01mol)、クロロ酢酸1.0g(0.0106mol)及び
塩化クロロアセチル1.24g(0.011mol)の混合物を乾燥管を備えた
ミクロ反応フラスコに入れ、油浴中105℃で1時間加熱した。次いで、この(
均一な)反応混合物を室温まで冷却し、エチルエーテル20mlで4回抽出して
塩化クロロアセチル及びクロロ酢酸を除去した。残渣の半固体塊を最小量のメタ
ノールで溶解し、10%KOHメタノール溶液でフェノールフタレイン終点まで
滴定した。沈殿した塩を濾去し、濾液をロータリーエバポレーターを用いて40
℃で蒸発乾固させた。次いで、残渣をベンゼンに取り、濾過した。溶媒をロータ
リーエバポレーターにより留去し、(S)−アミニミドエナンチオマー3.88
g(89%)を得た。これは、CDCl3 NMRスペクトル及びD2 O交換実験
により特徴付けられ、そのまま合成の次の工程に用いた(上記参照)。キラルアミニミドの合成
トルエン100ml中の1−(5’[3’−メチルウラシル]メチル)−1−
メチルヒドラジン(これは、24J. Org. Chem. 660 (1959)及びそこで引用された
文献に記載されたように、2−メチルフェニルヒドラゾンをエタノール中の5−
クロロメチル−3−メチルウラシルでアルキル化した後、ベンゾイル基を酸加水
分解によ除去して製造した。)18.4g(0.1mol)を氷浴中5℃に冷却
し、そこに、トルエン100ml中のp−イソプロピルフェニルクロロメチルア
ナリド(これは、塩化クロロアセチル及びp−イソプロピルアナリンから製造し
た。)21.1g(0.1mol)の溶液を激しく攪拌しながら温度を5℃に維
持しつつ1時間かけて加えた。次いで、反応混合物を室温まで温め、一夜攪拌し
た。この溶液を0℃に冷却し、沈殿した塩化ヒドラジニウム塩を濾過し、冷トル
エンで洗浄し、真空オーブン中、40℃/30”で乾燥し、粗ラセミ生成物4.
77g(98%)を得
た。このラセミ化合物をエタノール100ml中でスラリー化し、わずかにモル
過剰の湿った酸化銀を加え、混合物を室温で一夜攪拌した。このラセミ化合物を
その酒石酸塩を介して分離し、上記のSinghの方法を用いてヨウ化物として単離
した。これは、pH2水性移動相を用いた CrownpackTM CR(+)キラル固定相(Da
icell Chemical Industries Ltd.)によるHPLCによって特徴付けられた。N
MR(DMSO−d6 ):化学シフト、ピーク積分法及びD2 O交換実験は構造
上の特徴を示した。3−メチル−5−クロロメチルウラシルの合成
A.N−メチル尿素74.08g(1mol)及びジエチルエトキシメチレン
マロネート216.2g(1mol)を共に122℃で24時間、次いで170
℃で12時間加熱し、3−メチルウラシル−5−カルボン酸エチルエステルを収
率35%(酢酸エチルからの再結晶後)で得た。
B.3−メチルウラシル−5−カルボン酸エチルエステル30gを10%Na
OHでケン化し、遊離酸を収率92%(標準仕上げ作業及び酢酸エチルからの再
結晶後)で得た。
C.3−メチルウラシル−5−カルボン酸20gを260℃で脱炭酸し、3−
メチルウラシルを定量的収率で得た。
D.3−メチルウラシル−5−カルボン酸を、標準クロロメチル化条件を用い
てHCl及びCH2 で処理して3−メチル−5−クロロメチルウラシルを収率5
2%(標準仕上げ作業及び酢酸エチルからの再結晶後)で得た。NMR(DMS
O−d6 ):化学シフト、ピーク積分法及びD2 O交換実験は構造上の特徴を示
した。
13. 実施例: HIVプロテアーゼを阻害するペプチド擬似物の合成
この実施例は、基質 Ac-L-Ser(Bzl)-L-Leu-L-Phe-L-Pro-L-Ile-L-Val-OMeの切
れやすい結合部位へのキラルアミニミド残基の挿入に基づいた、安定性が増強さ
れたHIVプロテアーゼに対する競合的インヒビターの合成を教示する(例えば
、33J. Med. Chem. 1285 (1990)及びそこで引用された文献参照)。
Ac-Ser(Bzl)-Leu-Asn-Phe-CO-NH-NC5H100.735g(1mmol)を最小量
のDMFに溶解し、Kentの方法(256Science 221 (1992))に従って H2N-Val-Il
e-OMeを(BrCH2CO)2O で処理して製造したBrCH2CONH-Val-Ile-OMe0.344gを
そこに加えた。この混合物を60℃に加熱し、この温度で一夜攪拌した。この段
階で、DMFを高度の減圧下で除去し、標準順相シリカクロマトグラフィーによ
る中和後にエナンチオマー混合物から所望の(S)異性体が得られ、保護ペプチ
ドを得た。続いて、側鎖保護基を標準ペプチド脱保護技術を用いて除去し、生成
物 Ac-Ser-Leu-As
n-Phe-CON-N+(C5H10)-CH2-CONH-Val-Ile-OMeを得た。これは、安定性が増強され
たHIVプロテアーゼに対する競合的インヒビターとして有用である。テトラペプチドヒドラゾンの合成
標準ペプチド合成技術(33J. Med. Chem. 1285 (1990)及びそこで引用された
文献参照)によって製造した Ac-Ser(Bzl)-Leu-Asn-Phe-OH 0.653g(1m
mol)を、標準ペプチド結合方法及び化学(33J. Org. Chem. 851 (1968)参照
)を用いて1−アミノピペリジン0.10g(1mmol)と結合させ、反応溶
媒を減圧下で除去し、単離して収率97%でヒドラジドを得た。
14. 実施例: 橋かけ重合体鎖を与える重合に有用なキラル単量体の製造
Singh の方法(103J. Chem. Soc. 604 (1913))によって、標準アルキル化条
件を用いて塩化p−ビニルベンジル及び1−メチル−1−エチルヒドラジンから
製造し、(S)−エナンチオマーとして単離した(S)−1−メチル−1−エチ
ル−1−p−ビニルベンジルヒドラジニウム・ヨージド3.18g(0.01m
ol)を、無水t−ブタノール75mlに加えた。混合物を窒素下攪拌し、カリ
ウムt−ブトキシド1.12g(0.01mol)を加えた。混合物を24時間
室温で攪拌し、反応混合物を無水THF75mlで希釈し、氷浴中で冷却し、次
いで、THF50ml中の2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン1.39
g(0.01mol)を15分間かけて加えた。添加終了後、混合物を室温まで
温め、室温で6時間攪拌した。溶媒をアスピレーター減圧下ロータリーエバポレ
ーターを用いて除去し、粗単量体3.0g(92%)を得た。生成物を−30℃
でエチルアセトンから再結晶化し、純粋な結晶性単量体を得た。これは、キラル
分離、特に高pHでの操作のための橋かけキラルゲル、ビーズ、膜及び複合物(c
omposites)を製造するために有用である。NMR(CDCl3 )化学シフト、6
ppm領域における複数のビニル基の存在、ビニル・スプリッティング・パター
ン、ピーク積分法及びD2O実験は構造上の特徴を示した。FTIRでは182
cm-1領域におけるアズラクトンCOバンドを欠いていた。
15. 実施例: オキサゾロンを用いたシリカの官能化及びそれに続くラセミ カルボン酸の分離に有用なキラルアミニミドへの変換
Singh の方法(103J. Chem. Soc. 604 (1913))によって製造した(S)−1−
メチル−1−エチル−1−フェニルヒドラジニウム・ヨージド2.81g(0.
01mol)を無水t−ブタノール100mlに加えた。混合物を窒素下攪拌し
、カリウムt−ブトキシド1.12g(0.01mol)を加えた。混合物を2
4時間室温で攪拌した後、反応混合物を無水THF100mlで希釈した。混合
物に、(S)−4−エチル−4−ベンジル−2−ビニル−5−オキサゾロンのメ
ルカプトプロピル−官能性シリカに対するマイケル付加生成物で官能化されたシ
リカ5.0gを加え
た。混合物を室温で8時間攪拌した。この官能化シリカを濾過して集め、100
mlずつのトルエン(2回)、メタノール(4回)及び水(2回)を用いて連続
してスラリー化及び濾過を繰り返した。得られた湿ったケーキを真空オーブン中
、60℃で30”真空下で重量が一定になるまで乾燥し、キラル−アミニミド−
官能化シリカ4.98gを得た。これは、イブプロフェン、ケトプロフェン等の
ようなカルボン酸のラセミ混合物を分離するのに有用である。
16. 実施例: マンデレートの分離に使用するためのキラルアミニミドによ るシリカの官能化
エポキシシリカ(15μ Exsil C-200 silica)10.0gをメタノール75m
l中でスラリー化し、振盪して表面をむらなく湿らせた。このスラリーに、1,
1−ジメチルヒドラジン6.01g(0.01mol)を加え、混合物を周期的
に振盪しながら45分室温に置いた。(S)−3,5−ジニトロベンゾイルバリ
ンメチルエステル32.5g(0.1mol)を加え、混合物を周期
的に振盪しながら3日間室温に置いた。次いで、官能化シリカを濾過して集め、
メタノール100ml中でのスラリー化及び濾過を合計5回繰返し、次いで、真
空オーブン中、60℃/30”で一夜乾燥し、生成物9.68gを得た。この官
能化シリカは、メタノールから0.46×15cmステンレス鋼カラムに充填さ
れたスラリーであり、標準条件下でマンデル酸誘導体の混合物を用いるのに使用
した。エポキシシリカの製造
5μ C-200 Exsil silica (SA 250 μ2/g)50gをテフロン製櫂形攪拌機、
温度計、及びクライゼンアダプターを介してDean-Stark トラップを組み立てた
バーチカルコンデンサーを備えた2リットルの三頚丸底フラスコ中のトルエン6
50mlに加えた。スラリーを攪拌し、140℃の浴温まで加熱し、共沸蒸留し
、Dean-Stark トラップに集めることにより水を除去した。トルエン量の減少を
測定し、減少した量の乾燥トルエンを添加して償った。グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン200gを漏斗を通して注意深く加え、浴温を140℃にして
混合物を一夜攪拌及び還流した。次いで、反応混合物を約40℃に冷却した。得
られた官能化シリカを Buechner フィルター上に集め、トルエン50mlで2回
洗浄し、吸引乾燥し、トルエン500mlでのスラリー化、濾過、メタノール5
00mlでのスラリー化及び濾過を合計4回繰り返した。得られたメタノール湿
潤ケーキを30”にした真空オーブン中60℃で一夜乾燥し、エポキシシリカ4
8.5gを得た。N−3,5−ジニトロベンゾイル−(S)−バリンメチルエステ ルの合成
(S)−バリンメチルエステル13.12g(0.1mol)を水50ml中
の水酸化ナトリウム8g(0.2mol)の溶液に攪拌しながら加え、約10℃
に冷却し、この温度で完全に溶解するまで混合物を攪拌した。次いで、塩化3,
5−ジニトロベンゾイル23.1g(0.1mol)を攪拌下、外側から冷却し
て温度を10〜15℃に維持しながら滴下した。滴下終了後、30分攪拌を続け
た。この溶液に、再度温度を15℃に維持しながら濃塩酸10.3ml(1.2
5mol)を10分かけて加えた。
この添加の終了後、反応混合物を更に30分攪拌し、0℃に冷却した。濾過して
固体生成物を集め、氷水で十分に洗浄し、ゴムダム(rubber dam)で強く押した
。得られた湿ったケーキをエタノール/水から再結晶化し、真空オーブン中30
”真空下60℃で乾燥してN−3,5−ジニトロベンゾイル−(S)−バリンメ
チルエステル28.5g(90%)を得た。NMR(CDCl3 ):化学シフト
、スプリッティング・パターン、積分法及びD2 O交換実験は構造上の特徴を示
した。
17. 実施例: アミニミド含有イオン交換シリカマトリック スの製造
この実施例は、修飾する支持体としてエポキシシリカを用いたアミニミド官能
化イオン交換シリカマトリックスの製造を述べる。この反応式を以下に示す。
エポキシシリカ(15μ Exsil AWP 300 silica 、表面積100m2/g)25g
を、溶媒によって完全に湿潤されるまでメタノール100ml中でスラリー化し
た。次いで、1,1−ジメチルヒドラジン10.2gを回転させながら加え、混
合物を3時間室温に置いた。次いで、Et2NCH2CH2C00Et 24.7gを加え、混合
物を周期的に振盪しながら2日間室温に維持した。
ジエチルアミノエチル(DEAE)官能化シリカを濾過して集め、メタノール
100ml中でのスラリー化及び濾過を合計5回繰り返した。充填物を真空オー
ブン中60℃/30”で一夜乾燥した。次いで、この材料の1.0mlの層(be
d)を15mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH7.7中に充填した。次いで、この
カラムを15mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.6で平衡化し、この緩衝液中
の1mg/ml卵白アルブミン溶液を前記層(bed)に1.6ml/分の流速で
突き通した。合計59.2mlの蛋白質溶液を通した。
次いで、このカラムを41.7mlの15mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5
.58を用いて3.9ml/分の流速で洗浄した
。結合した蛋白質を23.4mlの0.5M NaClを用いて3.9ml/分
の流速で溶出させた。次いで、溶出液(15.2ml)を集め、アリコットの透
過率を分光光度計を用いて280mμで測定した。卵白アルブミン濃度を検量線
から求めた。集めた卵白アルブミンの全量は63.7mgであった。
18. 実施例: アミニミド含有サイズ排除シリカマトリックスの製造
この実施例は、上述したエポキシシリカ支持体を用いたアミニミド官能化サイ
ズ排除シリカマトリックスの製造を述べる。
エポキシシリカ(15μ Exsil C-200 silica 、表面積250m2/g)10.0gを
メタノール75ml中でスラリー化し、振盪して、表面をむらなく湿潤させた。
このスラリーに1,1−ジメチルヒドラジン10.2gを加えた。混合物を周期
的に振盪しながら45分室温に置いた。
次いで、酢酸エチル15gを加え、混合物を周期的に振盪しながら3日間室温
に置いた。次いで、濾過して官能化シリカを集め、メタノール100ml中での
スラリー化及び濾過を合計5回繰り返し、真空オーブン中60℃/30”で一夜
乾燥した。この官能化シリカは、メタノールから調節ピストンを備えた内径10
mmの被覆ガラス製カラムに充填され、8cm長の充填層を与えたスラリーであ
った。この充填物は、種々の分子量のポリエチレングリコールポリマーの混合物
を移動相を用いて高い分離率で分離するのに用いられた。
他の実験で、上記バルク充填物は、血液代替物としてポリエチレングリコール
官能化ヘモグロビンで処理された被検動物から採
取された血清試料からこの誘導体を選択的に吸着することがわかった。上記バル
ク充填物で処理後、血清を濾過すると、上記官能化ヘモグロビンを含まない血清
が得られ、こうして、標準法による血液のスクリーニング又は検査を可能にした
。
19. 実施例: アミニミドで官能化したヒドロキシプロピルセルロースでの シリカマトリックスのコーティング
ヒドロキシプロピルセルロースを強アルカリ性条件下(好ましくは、カリウム
t−ブトキシドのような強塩基を使用)ClCH2CON-N+(CH3)3と反応させて一官能
化させた。この結果、次のように各糖単位当たり約1個の水酸基がアミニミドで
置換される。
得られたアミニミド誘導体を例えばシリカの表面にコーティングした。140
℃に加熱して、N(CH3)3 基を脱離させてイソシアネート部分を形成させた。
次いで、イソシアネート基を糖単位上の未反応の水酸基と反応させて橋かけコ
ーティングとした。
代わりに、上記セルロースを、標準技術(例えばビスオキシランとの反応)を
用いて上記表面にコーティングし、固定化し、次いで、上述した所望のアミニミ
ド誘導体で、一、二又は三置換することができる。
上述の反応は、水酸基の代わりにNH又はSH基を有するポリマー又はオリゴ
マーに用いることもでき、また橋かけセルロース膜のような構造を形成すること
もできる。
20. 実施例: マトリックス上でのアミニミドの重合によるシリカマトリッ クスのコーティング
この実施例は、代わりの固定化技術、即ち、ビニル基を有するアミニミド前駆
体を重合させ、表面にコーティングする方法を説明する。この化学は、材料の固
体ブロックを形成するというよりも、存在する支持体の周りに堅固な殻(shell
)を形成することを除いて、上述した方法に似ている。
この一連の反応は、上述した反応を使用する。次式:
で示されるエポキシドを上記2.aに記載したようにメタクリル酸メチル及びジ
メチルヒドラジンと反応させて
CH=C(CH3)-CO-NN(CH3)2-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3Cl- を形成させた。この材料
3.11g及びn−メチロールアクリルアミド0.598gをメタノール75m
lに溶解し、次いで水3.54m
lを加えた。この溶液にエポキシシリカ(15μ Exsil AWP 300 silica 、表面積
100m2/g)15gを加えた。
混合物をロータリー内で室温で15分攪拌し、次いで浴温を44℃にして重量
の減少により測定して揮発性内容物が15%になるまで留去した(sun gun で2
5〜200℃)。このコーティングされたシリカを、窒素で脱気されたトルエン
1.5mlに溶解した86mgのVAZO−64を含有するイソオクタン100
ml中でスラリー化した。このスラリーを窒素で十分に脱気し、次いで70℃で
2時間攪拌した。
このコーティングされたシリカを濾過して集め、メタノール100mlで3回
洗浄し、風乾した。このシリカを120℃で2時間加熱し、コーティングを硬化
させた。コーティングされたシリカ13.1gを得た。この材料の1mlの層(
bed)を調節ガラス製カラムに充填し、ラクトグロブリンからBSAを分離する
のに良好に用いられた。
21. 実施例: 橋かけアミニミドポリマー鎖を有するシリカ支持体の製造
この実施例では、次のように、エポキシ官能化表面を、二置換ヒドラジン、ビ
スエポキシド及びトリエステルと反応させて、該表面に共有結合で結合するアミ
ニミド鎖の橋かけ網目を形成させた。
上記反応は、特別な条件を用いることなく、水中で室温で行った。
22. 実施例: 橋かけ多孔性アミニミドイオン交換ビーズの製造
この実施例は、三次元橋かけ多孔性共重合体アミニミドイオン交換ビーズの製
造を述べる。これは、次の3種の単量体の反応を伴う。
単量体A: CH2=CH-CON-N+(CH3)3
単量体B: CH2=C(CH3)-CON-N+(CH3)2-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3Cl-
クロスリンカー: CH2=CH-CO-NH-C(CH3)2-CON-N+(CH3)2-CH2-Ph-CH=CH2
(式中、Phはフェニルである。)
単量体Aの製造:この単量体は、21J. Polymer Sci., PolymerChem. Ed.1159
(1983) に記載の方法に従って製造した。
単量体Bの製造:グリシジル−トリメチルアンモニウムクロリド30.3g(
0.2mol)をメタノール100mlに溶解し、濾過して不溶物を除去した。
そこに、メタクリル酸メチル22g(0.22mol)、次いで1,1−ジメチ
ルヒドラジン12g(0.2mol)を加えた。溶液を温めるとわずかに桃色に
なった。これを6日間室温に置き、次いで木炭で処理し、濾過し、ロータリーエ
バポレーター上、55℃、10mmで濃縮して濃ラベンダー色の粘性物を得た。
これをジエチルエーテル及び熱ベンゼンで粉末化し、最小量のメタノールに溶解
した。次いで、混合物を木炭で処理し、濾過し、沸騰するまで加熱し、酢酸エチ
ルで曇点にならせた。得られた溶液を0℃で1週間置いた。生じた白色結晶を濾
過して集め、冷酢酸エチルで洗浄し、真空オーブン中、室温で乾燥して単量体B
7.3gを得た。
単量体Cの製造:1,1−ジメチルヒドラジン18g(0.3mol)を塩化
メチレン50mlに溶解し、攪拌しながら氷浴中で冷却した。塩化メチレン50
ml中のビニルアズラクトン41.7g(0.3mol)を、温度を5℃未満に
維持するようにゆっくりと加えた。澄明な溶液を攪拌し、1時間かけて室温に戻
し(白色結晶が生じた)、室温で更に1.5時間攪拌した。白色固体を濾過して
集め、塩化メチレン100mlで再度スラリー化し、再度濾過した。次いで、真
空オーブン中、室温で一夜乾燥して
次式:
CH2=CH-CO-NH-C(CH3)2-CO-NH-N-(CH3)2
で示される中間体26.81gを得た。この中間体10.0g(0.05mol
)及び塩化ビニルベンジル7.66g(0.05mol)をエタノール50ml
及びアセトニトリル50mlの混合液に溶解した。この溶液を4時間窒素気流下
で還流した。次いで、これを室温まで冷却し、ロータリーエバポレーター上55
℃で濃縮して濃黄色油状物を得た。この油状物をジエチルエーテルで3回粉末化
し、灰色(黄色)がかった白色(off-white)の固体17.08gを得た。この
固体を熱メタノール100mlに溶解し、セリット・パッド(celite pad)を通
して濾過し、少量のゲル状物質を除去し、澄明な濾液を濃縮して単量体C10.
0gを白色固体として得た。
重合:1mlの乳化剤 Span 80及び175mlの鉱油を、攪拌機及び加熱浴を
備えた500mlの丸底フラスコに入れた。混合物を70RPMで機械的に攪拌
し、温度を55℃にした。単量体A40.5g、単量体B7.2g及び上記クロ
スリンカー5.7gを脱塩水100mlに溶解し、55℃に加熱した。この溶液
に過硫酸アンモニウム150mgを加え、次いで混合物を攪拌されている鉱油に
注いだ。攪拌を調整して平均小滴直径が約75μ(光学顕微鏡で測定)の安定な
エマルションを生じさせた。
15分後、0.15mlのTMEDを加え、攪拌を更に45分続けた。反応混
合物を冷却し、一夜放置した。上清の鉱油相を吸引して除去し、デカンテーショ
ンによりビーズを集めた。このビーズを脱塩水中のトリトンX−100の0.0
5%溶液で3回洗
浄して残った鉱油を除去し、次いで水で洗浄し、静かに置いた。
水をデカンテーションにより除去した。
この手順を合計5回繰り返した。上述の工程の終りに得られたビーズは、約7
5μの平均直径及び175μeq/mlのイオン交換容量を有していた。
23. 実施例: アミニミド基礎電気泳動ゲルの製造
この実施例は、アミニミド電気泳動ゲルの製造を述べる。対照として、標準シ
グマ蛋白質電気泳動ミックス(米国ミズーリ州セントルイスの Sigma Chemical
Co. から市販)を、下記に示したように、5%及び12.5%の単量体溶液と共
に勾配マーカーを用いて製造したアクリルアミド/メチレンビスアクリルアミド
直線勾配ゲル上を移動させた。
低トリス(Lower Tris)1.5 M:トリス塩基6.06g、10%SDS8m
lに二回蒸留した水(DD水)を加えて容量を90mlに調整した。濃塩酸でp
Hを6.0に調整し、DD水で最終容量を100mlに調整した。
アクリルアミド30%w/v:アクリルアミド29.2g、メチレンビスアク
リルアミド0.8g及びDD水100ml。
SDS10%w/v:SDS10gをDD水に溶解し、容量を100mlに調
整した。
過硫酸アンモニウム10%:過硫酸アンモニウム0.1gをDD水0.9ml
に溶解した。この溶液は、調製後4時間以内に用いた。
TMED:米国ミズーリ州セントルイスの Sigma Chemical Co. から商品名T
MEDAとして入手したものを直接用いた。
アクリルアミドを同重量のアミニミド単量体CH2=CH-CO-N-N(CH3)3 に代えて第
二のゲルを製造し、第一のゲルと同様にして標準蛋白質を移動させた。
アミニミドゲルを用いた蛋白質の分離はアクリルアミドゲルと同等であったが
、Rf(即ち、溶媒の先端部が移動した距離に対する特定の蛋白質が移動した距
離の比)値がアクリルアミドゲルのそれよりも約20%高かった。
24. 実施例: アミニミド基礎ラテックス粒子の製造
この実施例は、アミニミド・コモノマー(comonomer)を含むラテックス粒子
の製造を述べる。
蒸留水591.1mlを三頸丸底フラスコに入れた。窒素導入管(nitrogen d
ip tube)を液面の下に置き、窒素の流速を2cm3/分に合わせた。溶液をテフ
ロン製櫂(paddle)を用いて250RPMで機械的に攪拌し、30分80℃に加
熱した。セパレート・フラスコ(a separate flask)内で、温度が25℃を超える
ことなく溶液を得るように、アクリル酸ブチル121.6g、アクリル酸エチル
54.6g、アクリル酸13.0g、メタクリル酸メチル9.97g、アミニミ
ド単量体 CH2=CH-CO-N-N(CH3)2-CH2-C
H2-OH 59.7g及び0.92gのエアロゾルTR−70を溶解した。完全に溶
解した時、1.53gの更なるTR−70を加え、次いで混合物を溶液になるま
で攪拌した。
蒸留水20.7mlを10分間窒素で浄化し、1.59gのK2
S2O8をそれに溶解した。この過硫酸塩溶液を反応フラスコ中の熱水にそれが80
℃で安定した後に加えた。窒素導入管(nitrogendip tube)を上げ、窒素の覆い
を維持した。単量体混合物を、安定した正確に定められた速度で、その一定の添
加が正確に4時間かかるように注入した。添加終了後、ラテックスを80℃で1
時間ポストヒートし、25℃に冷却し、攪拌しながら20分かけてトリエチルア
ミン(約20cm3 )を滴下してpH5.0に滴定した。次いで、ラテックスを
目の粗い薄地の綿布(cheese cloth)を通して濾過し、保存した。平均粒径は約
0.14μであった。
本明細書に具体的に開示されていない他の組成物及び該組成物の製造方法も意
図されていることは当業者にとって明かなはずである。そのような他の組成物及
び方法は本発明の範囲及び精神の範囲内にあると考えられる。従って、本発明は
、本明細書に開示された特定の態様の記載によって限定されるものではない。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 31/35 9454−4C
31/655 9454−4C
38/00
ADY
C07C 323/50
C07D 239/22 8615−4C
311/80 9360−4C
461/00 7602−4C
489/00 7019−4C
C08B 37/00 Z 7433−4C
C08F 8/30 MHA 7308−4J
C08G 73/00 NTB 9285−4J
85/00 NVB 8416−4J
C12Q 1/68 Z 9453−4B
(31)優先権主張番号 041,559
(32)優先日 1993年4月2日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,H
U,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,MG,MN
,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,
SD,SE,SK,UA,US