【発明の詳細な説明】
オキサゾロン誘導分子のモジュール設計および合成
1.発明の分野
本発明は、生化学的および生物薬学的活性物質の、さらに繊維、ビーズ、フィ
ルム、ゲルなどの加工材料を含む新規材料の、論理的な開発に関する。詳細には
、本発明は、アミンイミドおよび関連構造に基づく分子モジュールの開発、なら
びに希望通りの性質(この性質は個々のビルディングモジュールの寄与により計
画および決定され得る)を有する単純もしくは複雑な分子、ポリマーおよび加工
材料の組立て(アセンブリー)におけるこれらモジュールの使用に関する。本発
明の分子モジュールはキラルなものであることが好ましく、生物学的受容体、酵
素、遺伝物質、その他のキラルな物質を認識しうる新規な化合物および加工材料
の合成に使用することができ、かくして、医薬品、分離および材料科学の分野に
おいて大いに注目されている。
2.発明の背景
新しい分子の発見は伝統的に2つの広い分野に集中しており、すなわち、命に
かかわる病気の治療用薬剤として使用される生物活性物質、および商業的用途、
特に高度な応用技術に用いられる新材料の分野である。両分野において、新分子
の発見のために用いられる戦略は2つの基本的な操作、つまり(i)化学合成に
より製造されたまたは天然源から単離された、候補分子の多かれ少なかれ無作為
な選択、および(ii)対象となる1以上の性質についての候補分子の試験、を包
含するものであった。この発見のサイクルは、希望の性質をもつ分子が突き止め
られるまで繰り返される。多くの場合、試験のために選ばれた分子のタイプは、
むしろ狭く規定された化学クラスに属していた。例えば、新しいペプチドホルモ
ンの発見はペプチドに関する研究を、新しい治療用ステロイドの発見はステロイ
ド核に関する研究を、コンピュータチップまたはセンサーの作製に用いる新しい
表面の発見は無機材料に関する研究を含んでいた。その結果、新しい機能性分子
(特に自然界にあって、偶然にうまく発見することを当てにしているもの)の発
見は膨大な時間と労力を要し、予測がつかず、費用も高くつく作業であった。
新分子の発見に用いられる戦略および方策を以下で簡単に説明する。生物学的
に興味のある分子に重点が置かれるが、ここに概略される生物活性分子の発見に
おいて出くわす技術的問題はまた、高度応用技術のための新材料として利用され
る分子の発見において遭遇する問題を示すものでもある。さらに、後述するよう
に、こうした問題は高度応用技術のための加工材料の開発の際に遭遇する問題を
よく示すものでもある。
2.1 薬剤の設計
生物学的活性についての近頃の理論によると、生物学的活性それゆえに生理学
的状態は分子認識現象の結果であると言える。例えば、ヌクレオチドは相補的塩
基対を形成することができ、その結果、相補的な一本鎖分子同士がハイブリダイ
ズして二重または三重らせん構造を形成するが、このらせん構造は遺伝子発現の
調節に関与していると思われる。別の例では、リガンドと呼ばれる生物活性分子
がもう一つの分子、通常はリガンドアクセプターと呼ばれる巨大分子(例:受容
体、酵素)と結合し、この結合が一連の分子現象を誘起し、最終的に生理学的状
態、例えば正常な細胞の成長および分化、発がんへ導く異常な細胞増殖、血圧の
調節、神経インパルスの発生および伝達などを引き起こす。リガンドとリガンド
アクセプターの結合は幾何学的特徴を有し、著しく特異的であって、相応の三次
元構造配置および化学的相互作用を伴うものである。
2.1.1 ヌクレオチドの設計および合成
遺伝子治療および遺伝子発現操作における近年の関心は、アンチセンス、リボ
ザイムまたは三重らせんの作用機構により遺伝子発現を阻止または抑制するため
に使用しうる合成オリゴヌクレオチドの設計に集中している。そのために、天然
標的DNAまたはRNA分子の配列が決定され、標準方法を用いて所望の標的配
列の相補鎖に相当するオリゴヌクレオチドが合成される(S.Crooke,The FASEB
Journal,Vol.7,Apr.1993,p.533およびそこに引用された文献を参照のこ
と)。in vivo 使用を目的としたオリゴヌクレオチドのより安定した形態を設計
しようとする試みは、一般に、リボースまたはデオキシリボースサブユニットの
さまざまな位置に種々の基、例えばハロゲン、アジド、ニトロ、メチル、ケトな
どを付加させるものであった(核酸の有機化学(The Organic Chemistry of Nucl
eic Acids),Y.Mizuno,Elsevier Science Publishers BV,アムステルダム,
オランダを参照のこと)。
2.1.2 グリコペプチド
生物学的炭水化物化学の近年の進展の結果、炭水化物は生命の過程、例えば細
胞認識、免疫、胚の発生と発達、発がん、細胞死などを統率するのに必要な莫大
な量の情報のコード化に必要とされる非常に複雑な構造を有する生物系の構成成
分であると見なされつつある。かくして、自然界に存在する2種類のアミノ酸は
、2つの基本的な分子メッセージを2つの可能なジペプチド構造の形成を介して
伝達するために用いられ、そして4種類のヌクレオチドは24の分子メッセージ
を伝達するのに対して、2種類の異なる単糖サブユニットは11のユニークな二
糖を生成させ、そして4種類の異なる単糖は最高で35,560のユニークな四量体を
生成させることができ、それぞれが所定の生理学的系において基本的な別個の分
子メッセンジャーとして機能することができる。
ガングリオシドは生物が糖構造を可変的にかつ有効に使用することができる例
である。これらの分子はグリコリピド(糖−脂質複合物質)であり、そのままで
細胞壁上の戦略的に重要な位置にそれ自体を位置づけることができる。つまり、
その脂質成分がそれを細胞壁の疎水性内部に定着させ、その親水性成分を細胞外
の水性環境に位置づける。こうして、ガングリオシドが(他の多くの糖と同様に
)細胞の歩哨として働くように選ばれた。すなわち、それらはバクテリア毒素の
不活性化と接触阻害の両方に関与している。接触阻害はあまり理解されていない
複雑な過程であって、この過程により正常細胞は隣接細胞の増殖を阻止する(大
部分の腫瘍細胞ではこの性質が失われている)。コレラ菌により分泌された毒素
の強力な阻害剤であり、枝分かれした複雑な五量体構造をもつ点に特徴があるガ
ングリオシドGMの構造を以下に示す。
ヒト血液型抗原(A、BおよびO血液クラス)に関与するグリコプロテイン(
糖−タンパク質複合物質)のオリゴ糖成分を以下に示す。
不適合な血液クラスに属する赤血球上の糖タンパク質と相補的タンパク質との相
互作用は凝集物つまりクラスターの形成を引き起こし、ヒトの輸血が失敗する原
因となる。
その他の数多くの生物学的過程および巨大分子がグリコシル化(すなわち、糖
との共有結合)によって制御されている。こうして、エリトロポエチンの脱グリ
コシル化はこのホルモンの生物活性を失わせ、ヒト生殖腺刺激ホルモンの脱グリ
コシル化は受容体結合を高めるが生物活性をほぼ完全に消失させ(Rademacherら
,Ann.Rev.Biochem 57,785(1988)を参照のこと)、そして組織プラスミノー
ゲン活性化因子(TPA)の3部位のグリコシル化は、これらの部位の2つがグ
リコシル化されているポリペプチドよりも活性が30%高いグリコポリペプチド
をもたらす。
2.1.3 生物学的リガンドの擬似物の設計および合成
病気治療用の薬剤を開発するための最近の有利な戦略は、生物学的受容体、酵
素または関連した巨大分子のリガンドに類似していて、そのリガンドの活性を増
強する(つまり、作動薬として働く)かまたは抑制する(つまり、拮抗薬として
働く)リガンドの形態を発見することによるものである。このような望ましいリ
ガンド形態の発見は、分子(化学合成により製造されたもの、または天然源から
単離されたもの)の無作為スクリーニングにより、あるいはリード構造(通常は
天然リガンドの構造)の同定と、多数回に及ぶ反復構造設計および生物学的試験
からのその性質の最適化を含むいわゆる「合理的」方法を用いることにより、行
われてきた。大多数の有効な薬剤は「合理的」方法によってではなく無作為に選
ばれた化合物のスクリーニングによって見いだされてきたので、最近になって、
コンビナトリアル・ケミストリー(combinatorial chemistry)を使って無作為に
構築された化学構造の巨大ライブラリー(化合物群)を合成し、そのライブラリ
ーを特定の生物活性についてスクリーニングすることに基づく薬剤発見のハイブ
リッド方法が出現してきた(S.Brenner and R.A.Lerner,1992,Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 89:5381)。
「合理的」薬剤設計において用いられたリード構造(lead-structure)の大半
は受容体または酵素の天然ポリペプチドリガンドである。大部分のポリペプチド
リガンド、特に小型のもの、はペプチド結合が酸性媒体中でまたはペプチダーゼ
の存在下で加水分解を受けやすいため、生理学的液体中で比較的不安定である。
従って、このようなリガンドは薬物速度論的に非ペプチド系化合物よりも明らか
に劣っており、薬剤として好ましくない。小型ペプチドの薬剤としての更なる制
限はリガンドアクセプターに対するその親和性が低いことである。この現象は大
型の折り畳まれたポリペプチド(例:タンパク質)が特異的アクセプター(例:
受容体、酵素)に対して示す親和性(ナノモル以下の範囲であり得る)とまさに
対照的である。ペプチドが有効な薬剤となるためには、それらを非ペプチド有機
構造、すなわちペプチド擬似物、に変換する必要があり、こうした擬似物は固く
(好ましくはナノモル範囲で)結合し、しかも生物学的組織および液体と共存す
るという化学的および生化学的にきびしい状況に耐えねばならない。
ペプチド擬似物設計の分野で数多くの進歩が見られるにもかかわらず、ポリペ
プチド−リガンド構造をペプチド擬似物に変換する問題の一般的解決策はなにも
定められていない。現在、「合理的」ペプチド擬似物設計がその場限りで行われ
ている。再設計−合成−スクリーニングを多数回繰り返すことにより、ある種の
生化学クラスに属するペプチドリガンドが有機化学者と薬理学者のグループによ
って特定のペプチド擬似物に変換された。しかしながら、多くの場合、生化学の
ある分野(例えば、リード物質として酵素基質を用いるペプチダーゼ阻害剤の設
計)で得られた成果を、他の分野(例えば、リード物質としてキナーゼ基質を用
いるチロシンーキナーゼ阻害剤の設計)で使用するために移し変えることはでき
ない。
多くの場合、「合理的」方法を用いてペプチド構造リード物質から得られるペ
プチド擬似物は人為的なα−アミノ酸を含むものである。これらの擬似物の多く
は天然ペプチド(これらもα−アミノ酸を含む)の厄介な特性のいくつかを示し
、それゆえ、薬剤として使用するのに適していない。最近、ステロイドまたは糖
構造のような非ペプチド足場を用いて特異的な受容体結合基を一定の幾何学的関
係で固定させる基礎的な研究が記述された(例えば、Hirschmann,R.ら,1992,
J.Am.Chem.Soc.,114:9699-9701; Hirschmann,R.ら,1992,J.Am.Chem.S
oc.
,114:9217-9218を参照のこと)。しかし、この方法の成功にはまだ出会ってい
ない。
リード構造の同定と、無作為に選ばれた化合物のスクリーニングからの有用な
薬剤候補物質の同定を促進させようとして、研究者らは、希望の生物活性につい
てスクリーニングされるペプチドおよびいくつかのタイプの、ペプトイド(pepto
id)と呼ばれる、ペプチド擬似物の大きなコンビナトリアル・ライブラリーを構
築する自動化方法を開発した。例えば、H.M.Geysen の方法(1984,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 81:3998)はMerrifieldペプチド合成法の変法を用いており、
この方法では、合成すべきペプチドのC末端アミノ酸残基がポリエチレンピンと
して形作られた固相支持体粒子に結合される。これらのピンは追加のアミノ酸残
基を導入して目的のペプチドを形成するように個々にまたは集合的に順次処理さ
れる。その後、ペプチドはピンから取り出すことなく活性についてスクリーニン
グされる。Houghton(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131および米国特
許第4,631,211 号)は固相支持体に結合させたC末端アミノ酸を含む個々のポリ
エチレンバッグ(「ティーバッグ」)を利用している。これらは混合され、そし
て固相合成法を使って必要なアミノ酸とカップリングされる。その後、製造され
たペプチドは回収され個別的に試験される。Fodorら(1991,Science 251:767)は
アドレス指定可能なペプチドの大きなアレイを作製するためのシリコンウエハー
上の光指向的、空間的にアドレス指定可能なパラレル−ペプチド合成を記述して
おり、ペプチドは生物学的ターゲットへの結合について直接試験され得る。さら
に、これらの研究者はファージの表面に巨大ペプチドライブラリーを発現させる
ための組換えDNA/遺伝子工学的操作法を開発した(Cwirlaら,1990,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 87:6378)。
別のコンビナトリアルアプローチにおいて、V.D.HuebnerとD.V.Santi(米国
特許第5,182,366 号)は官能化されたポリスチレンビーズを利用している。こう
したポリスチレンビーズをいくつかの部分に分割し、各部分を希望のアミノ酸で
アシル化し、ビーズ部分を一緒に混ぜ合わせた後に再分割し、各部分を2番目の
希望のアミノ酸でアシル化して固相ペプチド合成の技法によりジペプチドを製造
する。この合成法を用いると、指数的に増加する数のペプチドが均一な量で合成
され、続いてペプチドは興味の対象となる生物活性について別個にスクリーニン
グされる。
また、Zuckerman ら(1992,Int.J.Peptide Protein Res.91:1)はペプチド
ライブラリーを合成するための類似方法を開発し、これらの方法を「ペプトイド
」と呼ばれるN−アルキルグリシンペプチド誘導体のライブラリー(さまざまな
生化学ターゲットに対する活性についてスクリーニングされる)を構築するため
のモジュール合成化学の自動化に応用した(Symonら,1992,Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 89:9367も参照のこと)。暗号化されたコンビナトリアル化学合成が
最近記述されている(S.Brenner and R.A.Lerner,1992,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 89:5381)。
最近、治療上有効な擬似リガンドを設計するための代替戦略として、核酸に結
合する性質を保持する分子の構築および使用が多くの注目を集めている。これら
の物質は、それらが直接ワトソン−クリック型「アンチセンス」ヌクレオチド擬
似物であろうと、フーグスティーン型結合体またはDervanと共同研究者が初めて
提唱したような小溝(minor groove)結合化合物であろうと、多種多様な誘導体
および自然界に存在する糖−リン酸骨格(バックボーン)の変異型を使用してい
る。塩基相補を支持するためにポリアミド骨格も使用された。これらの系では結
合および所望の機能性がin vitroで観察されるが、それらは変異遺伝子またはそ
の潜在RNAに対するハイブリダイゼーションのためのin vivo 使用において設
計上の固有の欠点を有している。これらポリアミド系の2つの主要な欠点は、(
a)タンパク質の加水分解開裂を受けやすいアミド結合への粘り強い信頼、およ
び(b)化合物がクラスとしてまたは単独でさえも効率のよい膜透過性を示すこ
とができないこと、にある。
しかしながら、この研究の過程で、膨大な量の知識が次のことに関して蓄積さ
れた。すなわち、1)天然の核酸への密着結合が観察されるような方法で一連の
天然または修飾塩基を担持する合成足場の能力、および2)天然の塩基またはヌ
クレオチドに効率よく水素結合する(ハイブリダイズする)ための設計されたヌ
クレオチド塩基またはグアノシン、シトシン、チミジン、アデニンまたはウリジ
ン以外の自然界に存在するヌクレオチド塩基としての要件である。中でも、これ
らの天然ヌクレオチド擬似物はショードマイシン(1)、プソイドウリジン(2
)、そして合成化合物(3)および(4)である。
このような人工または修飾塩基は、アデニンまたはグアニンに結合し得る5−
ブロモウラシルの両互変異性体についてここに示すように、足場から突き出てい
るのであれば効率のよいハイブリダイゼーションを示すことが実証された。
「アンチセンス」または「遺伝子治療」の第一の目標は、非常に固い特異的な
ハイブリダイゼーションによって公的記録変異情報(有害DNA)またはメッセ
ンジャー情報(対応RNA)を不活性化することである。
先に述べたように、「アンチセンス」剤が代謝されたり完全に破壊されたりす
る経路は多数存在する。こうした既知の障害物の結果として、化学者達は、化合
物が(a)免疫および代謝経路の分解反応を生き残れるような、また(b)細胞
膜と核膜を通過してハイブリダイゼーションが起こり得る部位に到達できるよう
な代替骨格を捜し求めてきた。
リード構造のほかに、好ましい「合理的」薬剤発見の実現にとって非常に有用
な情報源は生物学的リガンドアクセプターである。これは、分子モデリング予測
と共同して、リガンドとそのアクセプターとの結合様式を模倣するために使用さ
れる。結合様式に関する情報はリード構造の結合特性を最適化する上で有用であ
る。しかし、リガンドアクセプターの構造、好ましくはアクセプターと高親和性
リガンドとの複合体の構造、を見つけるには、そのアクセプターまたは複合体を
純粋な結晶状態で単離し、続いてX線結晶構造解析を行う必要がある。生物学的
受容体、酵素およびそのポリペプチド基質の単離精製には時間と労力、それに費
用がかかる。生物化学のこの重要な領域での成功は複雑な分離技術の有効利用に
依存している。
結晶化は分離技術としての価値を有するが、多くの場合、特に複雑な生物学的
環境からの生体分子の単離を必要とする場合には、クロマトグラフによる分離が
うまくいく。クロマトグラフ分離は混合物が天然、合成または半合成の活性表面
上を移動するときの混合物の諸成分の可逆的かつ示差的結合の結果であり、移動
しつつある混合物中の密着結合成分が最後まで一緒に表面に残り、その結果とし
て分離が起こる。
分離に用いる支持体または担体の開発には、さまざまな条件下で単量体分子の
重合−架橋を行ってビーズ、ゲル、フィルムなどの加工材料を製造するか、また
は市販されている種々の加工材料の化学的修飾(例えば、ポリスチレンビーズの
スルホン化)を行って希望の新材料を製造することが必要であった。多くの場合
、従来の担体材料は特殊な分離または特殊なタイプの分離を行うために開発され
たものであり、従って用途が限られている。これらの材料の多くは生物学的巨大
分子と不適合であり、例えば、高圧液体クロマトグラフィーを行うために度々用
いられる逆相シリカは疎水性タンパク質や他のポリペプチドを変性させることが
ある。その上、多くの担体はタンパク質、酵素、糖タンパク質などの感受性生体
分子と適合しない条件(例えば極端なpH)下で使用される。こうした担体を用
いて実施される分離に伴う更なる難点は、分離結果がしばしば担体バッチに依存
する、すなわち再現性がない、ことである。
最近、市販の加工材料を性質の向上した製品に変えるため、いろいろなコーテ
ィング材料や複合形成材料が用いられている。しかし、この方法の成功にはまだ
出会っていない。
クロマトグラフの担体が複雑な混合物の一成分と特異的に結合する分子を保持
する場合、その成分は混合物から分離され、その後に実験条件(例:緩衝液、ス
トリンジェンシーなど)を変えることによって放出されるだろう。このタイプの
分離は「アフィニティークロマトグラフィー」という適切な呼び名がついており
、依然として非常に有効かつ広範に用いられる分離技術である。これは確かに慣
例的なクロマトグラフィー技術よりも相当に選択的である。例えば、シリカ、ア
ルミナ、長鎖炭化水素や多糖をコーティングしたシリカやアルミナ、他のタイプ
のビーズまたはゲルを用いる慣例的クロマトグラフィーは、その最大分離効率を
達成するために、生体分子に害を及ぼす条件、例えば高圧、有機溶媒や他の変性
剤の使用などの条件下で使用することが必要である。
より強力な分離技術の開発は、材料科学の分野における、特に生理学的媒体中
に見いだせる条件に類似した実験条件(すなわち、これらの実験条件は温度およ
びpHが生理学的レベルに近似していて、生体分子に害を及ぼしたり変性するこ
とが知られている物質を何も含まない水性媒体を使用するものでなければならな
い)下で特定の分子形状を認識することができる材料の設計および構築における
飛躍的な前進にかかっている。こうした「インテリジェント」材料の構築は、多
くの場合、いろいろな化学的修飾により既存の材料(例:表面、フィルム、ゲル
、ビーズ)に他者を特異的に認識する能力のある小分子を導入することを必要と
する。また、認識能のある分子が単量体に変換されて、重合反応により「インテ
リジェント」材料を作りだすために用いられている。
2.2 オキサゾロン
オキサゾロン、すなわちアズラクトンは、一般式:
の構造を有しており、式中のAは官能基、nは0−3である。五員環を含み、第
4位に単一の置換基を有するオキサゾロンは、通常、ペプチドの化学合成の間に
、問題のあるラセミ化を生じる一過性の中間生成物として生じる。オキサゾロン
は、原則的に、第4位に1ないし2個の置換基を有することができる。これらの
置換基が均等なものでない場合には、この第4位の炭素が不斉となり、2つの重
ね合わせることのできないオキサゾロン構造(アズラクトン):
が生じる。
(キラルな)天然のアミノ酸誘導体、たとえば活性化アシルアミノアシル構造
から誘導された、単一の4置換基を有するキラルなオキサゾロン(5(4H)−
オキサゾロンとしても公知)が、純粋な結晶状態で生成、単離されている(Boda
nsky,M; Klausner,Y.S.; Ondetti,M.A.in "Peptide Synthesis",Second Ed
ition,John Wiley & Sons,New York,1976,p.14、ならびにこの文献に記載
された参考文献)。これらのオキサゾロンのうちのいくつかの容易な塩基触媒ラ
セミ化については、ペプチド合成で重大な問題となっているラセミ化の研究との
関連で調べられている(Kemp,D.S.in "The Peptides,Analysis,Synthesis,
and Biology",Vol.1,Gross,E.& Meienhofer,J.editors,1979,p.315を
参照のこと)。
ペプチド合成の間に生じるラセミ化は、アミノ末端からのペプチド鎖伸長反応
の場合のように、所望のペプチドの合成が活性化ペプチジルカルボキシルのアミ
ノリシスによって行われる場合(たとえば下記のI−VI)に特に甚だしい(At
herton,E.;Sheppard,R.C."Solid Phase Peptide Synthesis,A Practical A
pproach",IRL Press at Oxford University Press,1989,p11-12を参照のこと
)。こうしたラセミ化について記載した、十分に調べられた作用機序の一つでは
、活性化されたアシル誘導体(II)がオキサゾロン(III)に転化され、そ
の後、オキサゾロンの容易な塩基触媒ラセミ化が、共鳴安定化した中間生成物(
IV)を経由して生じ、さらに、ラセミ化オキサゾロン(V)のアミノリシスが
生じて、ラセミペプチド生成物(VI)が生成する。
オキサゾロンIII(あるいは、その活性化アシル前駆物質II)をトラッピング
して、アミノリシスに際してほとんどまたは全くラセミ化を生じないアシル化剤
を生成するべく広範な研究が実施され、こうした領域が成功をおさめた結果(た
とえば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールの使用)、ペプチド合成技術がおお
いに前進することとなった(Kemp,D.S.in”The Peptides,Analysis,Synthes
is,and Biology”,Vol.1,Gross,E.& Meienhofer,J.editors,1979,p.
315)。
このように、ペプチド合成で生じるラセミ化の問題を処理する試みでは、オキ
サゾロン中間生成物の生成を一律に抑制してきた。
さらに、第4位に水素置換基を有するある種のビニルオキサゾロンも熱転位を
受けることがあり(23 Tetrahedron 3363(1967))、その結果、もっと別の所望
の変換、たとえばミカエル型の付加が抑制されることがある。
3.発明の概要
新規な分子を構築する新たな方法について記載する。この方法では、適当な原
子ならびに官能基を含む、オキサゾロン(アズラクトン)から誘導した分子ビル
ディングブロックを開発する。この分子ビルディングブロックは、キラルであっ
てもよく、所望の特性を有する分子のモジュールアセンブリーにおいて使用され
、各モジュールは、組立られた分子の全体としての特性に貢献している。本発明
のオキサゾロン誘導体であるビルディングブロックは、天然のリガンドの三次元
構造ならびに機能を模倣し、そして/または、天然の受容体の結合部位と相互に
作用するよう設計された新規な分子を合成する際に使用することができる。分子
構築に対してのこうした論理的なアプローチは、あらゆる種類の分子の合成、た
とえば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、ポリマ
ーを模倣した化合物、ならびに材料科学で有用な加工材料の合成に適用すること
ができ、例はこれらに限定されるものではない。こうしたアプローチは、特定の
操作を行う機械装置であって、各モジュールが、装置の全体としての操作の役に
立つ特定の作業を行うようになっている機械装置のモジュール構成に似ている。
本発明は、部分的には、発明者の下記のような洞察に基づくものである。(1
)あらゆるリガンドは単一で普遍的な構造特性を共有している。すなわち、それ
らはアミド結合、炭素−炭素結合、またはホスホジエステル結合によって形づく
られた足場構造から構成され、この足場構造によって、いくつかの官能基が、正
確で、比較的固い幾何学的配置で担持されている。(2)リガンドと受容体との
結合の仕方にも単一で普遍的な特性がある。すなわち、それらは互いに相補的な
構造要素間の吸引的相互作用、例えば、電荷相互作用およびπ型相互作用、疎水
力およびファンデルワールス力、水素結合が関与している。(3)直径100オ
ングストロームから1cmまでの寸法範囲の一連の加工材料が存在し、それらは
、各種の構成、幾何形状、形態、ならびに機能を有する材料から構成されている
。そのいずれも、共通の特徴として、生物学的に活性な分子または分子混合物に
提示される機能性表面を有しており、その結果、分子(または混合物中の所望の
分子)と表面との間の認識が達成される。そして(4)ペプチドの合成の間に生
じることのある、これまでは望ましくない中間生成物だと考えられてきたオキサ
ゾロン誘導体構造が、オキサゾロン構造のラセミ化が防止または抑制されるので
あれば、所望のリガンドに似ており、そして/また適当な受容体結合部位と相互
作用する適当な官能基を支持する骨格または足場を構成したり、直交して官能基
を有する足場の各種の部分の合成を行ったりするうえで理想的なビルディングブ
ロックとなる。このように、本発明は、こうしたラセミ化することのないオキサ
ゾロン誘導体が、新規な分子を合成するにあたっての普遍的なビルディングブロ
ックとして使用できることを、さらに見いだしたことにも、部分的には基づいて
いる。さらに、オキサゾロン誘導体を、上述の一連の加工材料に関してさまざま
な方法で利用して、特定の分子を認識しうる新規な材料を生成することもできる
。このようなオキサゾロン誘導体は、キラル的に純粋であってもよく、多くの生
物活性分子(例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレ
オチド、炭水化物、脂質を含むがこれらに限らない)を模倣した分子、ならびに
各種の他のポリマーおよび新材料として有用な加工材料(例えば、カラムクロマ
トグラフィー、触媒、固相イムノアッセイに有用な固相支持体、ドラッグデリバ
リー用の担体、フィルム、複雑な混合物の各種成分の選択的分離に使用するべく
設計された「インテリジェント」材料を含むがこれらに限らない)の合成に使用
することができる。
オキサゾロンから誘導したモジュールを、各種の分子構造のモジュールアセン
ブリーに使用する実施例を挙げておく。分子構造としては、ラセミ混合物の光学
分割で有用な官能化したシリカ表面、ヒトエラスターゼ、プロテインキナーゼ、
HIVプロテアーゼを阻害するペプチド擬似物、炭水化物、オリゴヌクレオチド
、ファーマコフォア擬似物、ならびにオキサゾロン含有モノマーのフリーラジカ
ル重合あるいは縮重合によって形成したポリマーがある。
本発明では、対象であるオキサゾロン誘導分子が、所望の立体化学的性質を有
しており、必要であれば、エナンチオマーとして純粋な分子として得ることがで
きる。単一の分子の合成に加えて、本明細書に記載する技術、あるいはそうした
技術に、コンビナトリアル・ケミストリーを実施するうえで当分野で周知の変更
を加えた技術を使用して、オキサゾロン誘導分子のライブラリーを合成すること
も本発明の範囲に含まれる。さらに、オキサゾロン誘導分子は、加水分解ならび
に酵素に対する安定性が増大しており、in vivoで、生物活性物質を標的である
リガンド・アクセプター巨大分子に輸送する際にも、重大な副作用を生じること
がない。
本発明によると、不斉中心が第4位のジ置換炭素であるようなキラルなオキサ
ゾロンも、対称で非キラルなオキサゾロンも、容易に合成することができ、それ
らを、他の各種分子との制御された反応を生じうる分子モジュールとして使用し
て、設計通りのキラルな認識剤ならびに結合体を製造することができる。段階的
あるいは連鎖的に重合反応を実施することによって、こうしたキラルなオキサゾ
ロンを互いに結合して、特定の配列ならびに立体化学的性質を有する高分子の生
物学的リガンド擬似物を生成することもできる。さらに、本発明では、4−ジ置
換キラルオキサゾロンは、各種の固相支持体ならびに生物学的巨大分子の不斉官
能化を行ったり、有用な特性を有する各種キラルポリマーを生成したりするうえ
で極めて有用である。これらの反応生成物は、いずれも、各種の化学的、酵素的
環境で驚くほど安定で、各種の高度に薬剤学的な用途や、先端技術の用途に独特
の適性を有している。
オキサゾロン前駆物質の第4位がキラルである必要がない用途、たとえば、あ
る種の高分子材料の構築や、2つ以上の薬剤学上有用な、あるいは単に生物学的
に活性なリガンドを結合するためのリンカーを構築するにあたってオキサゾロン
を使用する場合などでは、化学合成において、対称な、すなわち非キラルなオキ
サゾロンを使用する。さらに、オキサゾロンから誘導した生成物が、オキサゾロ
ン前駆物質の第4位をエナンチオマーとして純粋な状態で含む必要がない場合に
は、合成にあたって、エナンチオマーとして純粋でないオキサゾロン前駆物質を
使用することもできる。
本発明は、特定の水への溶解度を有するポリマーの製造方法にも関するもの
であり、この方法は、a)式:
を有しており、式中のRおよびR’が同一あるいは異なっており、疎水性を示す
有機部分から選ばれるものであるような第一のモノマーを選び、b)式:
を有しており、式中のRおよびR’が同一あるいは異なっており、親水性を示す
有機部分から選ばれるものであるような第二のモノマーを選び、そしてc)上記
の双方のモノマーを反応させて、所望の水への溶解度を有するポリマーが生成す
るまで、伸長中のポリマー鎖に有効量の各モノマーを供給する工程を有する。こ
の方法では、上記の疎水性の有機部分は、カルボキシル、アミノ、あるいはエス
テル官能基を有さないものとすることができる。また、上記の親水性部分は、カ
ルボキシル、アミノ、あるいはエステル官能基を有するものとすることができる
。
本発明は、さらに、上記式を有する生物活性化合物の構造を模倣または補足す
る化合物を製造するにあたっての、上記の合成化合物の製造方法の使用にも関す
る。この方法は、たとえば、ファーマコフォア、ペプチド擬似物、ヌクレオチド
擬似物、炭水化物擬似物、ならびにリポーター化合物を製造する際に使用できる
。
本発明は、さらにまた、コンビナトリアル・ライブラリーの構築方法にも関す
るものであり、この方法は、a)式:
を有しており、式中のnが≧1である化合物を製造し、そしてb)この化合物を
用いてさらなる反応を行ってコンビナトリアル・ライブラリーを構築する工程を
有する。
本発明は、さらにまた、複数の化合物から所望の化合物を分離する方法にも
関するものであり、この方法は、a)式:
(n≧1)
を有する分離用化合物を製造し、b)この分離用化合物を複数の化合物と接触さ
せ、そしてc)上記の複数の化合物から、上記の第二の化合物と、分離された化
合物とを分別する工程を有する。
本発明の化合物は、多くの異なった経路で合成することができる。有機合成の
分野では、所定の化合物を製造するうえで、数多くの異なった合成プロトコール
を使用しうることが周知である。経路が異なると、使用する反応試薬の価格が上
下したり、分離・精製方法の難易度が上下したり、スケールアップの煩雑さが上
下したり、収量が上下したりすることがある。熟練した有機合成化学の技術者で
あれば、各種合成方法の互いに競合する特性のバランスをうまくとる方法を熟知
している。したがって、本発明の化合物は、選択した合成方法によって限定され
るものではなく、以下に記載する化合物が得られる合成方法であれば任意のもの
を用いることができる。
本発明の範囲は、上述のマーカッシュ群のそれぞれの化合物種を包含するもの
である。したがって、たとえば、クレームで数値指定を行っており、それが整数
、すなわちmまたはnである場合、本発明の範囲は、それぞれの異なった整数に
よって表されることになるそれぞれの化合物種をカバーするものとする。
4.1 キラルな置換オキサゾロンの合成
適当なN−アシルアミノ酸から、キラルな4,4’−ジ置換オキサゾロンを
製造することができ、その際には、当業者に周知のいくつかの標準的なアシル化
ならびに環化方法の任意のもの、たとえば、
を使用することができる。
第2位の置換基が付加反応を受ける場合には、第4位でのキラリティーを保持
したまま付加反応を行って、新たなオキサゾロンを生成することができる。この
ことを、アルケニルオキサゾロンに対するミカエル型の付加について、以下に示
す。
ここで、XはSまたはNR、そしてA’は官能基である。
オキサゾロンの合成にあたって必要なキラルアミノ酸前駆物質は、キラルな補
助物質を用いた立体選択的な反応で生成することができる。こうしたキラルな補
助物質の例としては、以下に示すような(5)−(−)−1−ジメトキシメチル
−2−メトキシメチルピロリジン(SMPD)(Liebig's Ann.Chem.1668(198
3))がある。
ここでR2はCH3、i−Buまたはベンジル、そしてR3はCH3、CHF2、C2
H5、n−Buまたはベンジルである。2つめの例としては、5H,10β−ホ
キサゾロ[3,2−c][1,3]ベンゾキサジン−2(3H),5−ジオンが
ある(55 J.Org.Chem.5437(1990))。
ここで、R1はフェニルまたはi−Pr、そしてR2はCH3、C2H5またはCH2
=CH−CH2である。
また、所望のキラルなアミノ酸は、ラセミ混合物の立体選択的生化学的変換
によって得ることもでき、ラセミ混合物は、以下に、市販の生物を用いた事例に
ついて示すような標準的な反応を経由して合成することができる(53 J.Org.C
hem.1826(1988))。
ここで、R1はi−Pr、i−Bu、フェニル、ベンジル、p−メトキシベンジ
ルまたはフェネチル、そしてRはCH3、あるいはC2H3である。
4,4’−ジ置換オキサゾロンのラセミ混合物は、以下に示す変換のような第
4位のアルキル化によって、モノ置換オキサゾロンから生成することができる(
Synthesis Commun.,Sept.1984,at 763: 23 Tetrahedron Lett.4259(1982)
)。
オキサゾロンのラセミ混合物の分割は、当業界で周知の適当な条件下でクロマ
トグラフィーあるいはキラル支持体を使用し、キラルな酸を用いたオキサゾロン
の安定な塩の分別晶出を使用したり、あるいは、単に、ラセミオキサゾロンを加
水分解してアミノ酸誘導体とし、ラセミ修飾物を標準的な分析方法で分割したり
することによって行うことができる。
アルデヒド、ケトンまたはイミンと、N−アシルグリシンから形成されるオ
キサゾロンと、の縮合反応から高収率で得られた対応不飽和誘導体を還元するこ
とによって、多岐にわたる各種の4−モノ置換アズラクトンを容易に製造するこ
とができる。49 J.Org.Chem.2502(1984); 418 Synthesis Communications(1
984)
立体特異的な水素化触媒を使用して水素化を行い、エナンチオマーとして純粋
な生成物を製造することができる。その後、この生成物を立体選択的にアルキル
化して、エナンチオマーであるジ置換オキサゾロンモジュールを製造することが
できる。こうした例を、以下に、エナンチオマーとして純粋なアデニン誘導化ヌ
クレオチド擬似オキサゾロンモジュールについて示す。
ステップ1.−カルボニル末端スペーサーの結合
ステップ2.−オキサゾロン4−位へのカップリング
ステップ3.−立体特異的還元および相間移動メチル化
こうして、置換基を、天然のポリペプチドおよびオリゴヌクレオチドの側鎖、
これらの擬似物および変異体、炭水化物および薬剤用変異体および擬似物、また
は標的系との望ましい相互作用を生じさせるために骨核または中枢部に結合する
ことができるその他の側鎖置換基のいずれかの必要な形態に模倣して組み合わせ
た、広範にわたる種類のオキサゾロンの多官能性鏡像異性体を製造するために、
極めて多数の化学的および生物学的方法を使用することができる。
4.2 キラル認識
“キラル認識”とは、個々のキラル鏡像異性体が鏡像異性体として純粋なキラ
ル標的または認識試薬との間で差異のある結合エネルギーを示すプロセスのこと
である。この試薬は表面に結合させてクロマトグラフィー用のキラル固定相(C
SP)を生成させるか、またはラセミ体標的とジアステレオマー複合体を形成す
るのに使用することができる。これらの複合体は物理化学的に異なる特性を有し
ているので、分別結晶化などの標準的な単位プロセスを使用して分離することが
できる。
CSPを使用するこの認識プロセスには次の2つのステップが必要である;1
)吸収および2)鏡像異性体間のエネルギー分別。鏡像異性体と表面との間の絶
対結合エネルギーによって、その結合の緊密度が決定される。複合体間のエネル
ギーの差異によって、選択性が決定される。これは以下の図式によって表される
。
エネルギー
CSPと鏡像異性体RおよびS間の相互作用は“3点相互作用”であると想像
される。これは実際に3点での結合または連関が必要であるというのではなくて
、ジアステレオマー複合体内での何らかの3種類の引力または反発力がその鏡像
異性体を区別(“認識”)するのに役立っているという意味である。2つのキラ
ル種間の、水素結合、イオン相互作用、双極子相互作用、疎水性pi−pi相互
作用および立体的相互作用を含む、引力および/または反発力相互作用の多重組
合せによって、複合体間でのより大きな区別(“認識”)が助長される。これら
の相互作用の数が多いほど、またそのタイプがより多種にわたるほど、その結果
生じる複合体間のエネルギーの差異は大きくなり、相互作用による“認識”度も
大きくなる。
これを下記の図式で示す。
鏡像異性体として純粋な、あるオキサゾロン誘導体について、こうした“3点
相互作用”に関与することが可能な相互作用の様式を下に示す。
4.3 キラルオキサゾロンの合成的換
4.3.1 複合体を形成する1または2つの親核剤との反応
下記のように、キラルオキサゾロンを各種の親核剤で開環反応させて、キラル
分子を生成させる。
上記の構造において、Yは酸素、硫黄または窒素原子を表す。R1およびR2は
互いに異なっており、それぞれが以下のものの中の1つを表す;炭素環式を含む
アルキルおよびそれらの置換体;アリル、アラルキル、アルカリールおよびそれ
らの置換体またはヘテロ環体。R1およびR2の好ましい形態は、天然のポリペプ
チドおよびオリゴヌクレオチド中にある側鎖置換基、これらの変異体若しくは擬
似物、炭水化物、薬剤、これらの変異体若しくは擬似物、または標的系との望ま
しい相互作用を生じさせるために骨核または中枢部に結合することができるその
他の側鎖置換基である。
上記の開環反応は、触媒として作用する、カルボン酸、その他のプロトン若し
くはルイス酸などの酸、または第3級アミン若しくは水酸化物などの塩基の存在
または非存在下で、室温または高温下で、メチレンクロライド、酢酸エチル、ジ
メチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒中、または水中のいずれかで実施
することができる。BYHの構造が開環アシル化を妨害する恐れのある親核官能
基を含む場合は、当分野で知られている多数の保護基に基づく好適な直交保護法
を使用して、これらの親核官能基を一時的に保護しなければならない;例えば、Protective Groups in Organic Synthesis
,2ed.,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,J
ohn Wiley & Sons,New York,N.Y.,1991参照)。
表示した置換基AおよびBは各種の構造のものがあり、物理的および官能性特
性が著しく異なっていても同じでもよい。またキラルでも対称性でもよい。Aお
よびBは好ましくは以下のものから選択される。
1)(AA)Nの形態のアミノ酸誘導体。これには例えば以下のような天然お
よび合成のアミノ酸残基(N=1)が含まれる。天然に存在するすべてのαアミ
ノ酸、特にアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン
、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン
、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、ト
リプトファン、チロシン;アミノイソ酪酸、およびイソバリンその他などの天然
に存在する2置換アミノ酸;α−2置換変異体、α位においてオレフィン置換し
たもの、天然に存在する側鎖の誘導体、変異体または擬似物を含む、各種合成ア
ミノ酸残基;N−置換グリシン残基:スタチン、ベスタチンその他などの官能性
における擬似アミノ酸残基として知られる天然および合成のもの。上記のアミノ
酸で構築される、アンギオテンシノーゲンおよびこれに類する生理学的に重要な
アンギオテンシン加水分解生成物などのペプチド(N=2−30)、同様に上記の
すべての天然および合成残基の各種組合せおよび互換体から製造される誘導体、
変異体および模倣体。ビッグエンドテリン、パンクレアスタチン、ヒト成長ホル
モン放出因子およびヒト膵臓ポリペプチドなどのポリペプチド(N=31−70)。
コラーゲンなどの構造タンパク質、ヘモグロビンなどの機能性タンパク質、ド
ーパミンおよびトロンビン受容体などの調節タンパク質を含む、タンパク質(N
>70)。
2)(NUCL)Nの形態のヌクレオチド誘導体、これにはアデノシン、チミ
ン、グアニジン、ウリジン、シトシンなどの天然および合成ヌクレオチド、これ
らの誘導体、およびプリン環、糖環、リン酸連結の各種変異体および擬似物、な
らびにこれらのいくつかまたはすべての組合せが含まれる。ヌクレオチドプロー
ブ(N=2−25)およびオリゴヌクレオチド(N>25)、これには天然に存在す
るヌクレオチド、誘導体、および合成プリン若しくはピリミジンまたはこれらの
類似体、各種糖環擬似物を含有する変異物質の各種可能なホモおよびヘテロ合成
的組合せおよび互換体のすべてを含み、そして限定するわけではないが、ホスホ
ジエステル、ホスホロチオネート、ホスホロジチオネート、ホスホロアミデート
、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3'−チオホルムアセタール、
メチレン(メチルイミノ)、3-N-カルバメート、モルホリノカルバメートおよび
ペプチド核酸類似体を含む、極めて多種の互換骨格類似体。
3)(CH)n型態の炭水化物誘導体。これには、グルコース、ガラクトース
、シアル酸、共にガラクトシダーゼの阻害剤であるβ-D- グルコシルアミンおよ
びノジョリマイシン、Klebsiella pneumoniaの生育を阻害することが知られてい
る5a- カルバ-2-D-ガラクトピラノースなどの疑似糖などの関連化合物を含む天
然の生理学的に活性な炭水化物(n=1)、合成炭水化物残基およびそれらの誘
導体(n=1)ならびに高マンノースオリゴサッカライド、既知の抗生物質スト
レプトマイシンを含む、天然に見出だされるようなこれらのすべてのオリゴマー
互換複合体(n>1)が含まれる。
4)天然に存在するかまたは合成の有機構造要素。この用語は、例えば酵素に
対して相補的な構造を有するなどの生物学的活性があり、特定の構造を有する有
機分子を意味するものとして定義される。この用語は薬効物質またはその代謝産
物を含む薬剤化合物の周知の基本構造のいずれをも含むものである。これらには
、細菌の細胞壁の生合成を阻害することが知られているペニシリンなどのβ−ラ
クタム;CNS受容体に結合することが知られ、抗うつ薬として使用されるジベ
ンズアゼピン;細菌リボサイムに結合することが知られているポリケチドマクロ
ライド、その他が含まれる。これらの構造要素はリガンドアクセプターへの結合
に必要な特異的特性を有するものとして一般に知られているものである。
5)オキサゾロン構造中または反応スキーム中に合成的に取り込まれ、官能基
のリポーター官能性に逆干渉することなくその官能基を介して結合することがで
きる反応性官能基を有する、天然若しくは合成の染料または写真増幅能のある残
基などのリポーター要素。好ましい反応性基は、アミノ、チオ、ヒドロキシ、カ
ルボキシル酸、カルボキシル酸エステル、特にメチルエステル、酸塩化物、イソ
シアナートアルキルハライド、ハロゲン化アリルおよびオキシラン基である。
6)2重結合などの重合可能な基またはその他の縮重合若しくは共重合し得る官
能性を有する有機成分。好適な基としてはビニル基、オキシラン基、カルボキシ
ル酸、酸塩化物、エステル、アミド、ラクトンおよびラクタムが含まれる。Rお
よびR’として定義されるものなどの、他の有機成分も使用することができる。
7)上に概説した各種反応性基を介して、結合基のリガンド受容体への結合が
逆効果を及ぼさず、結合基の官能性の相互作用活性が巨大分子によって決まるか
または制限されるような状態で、オキサゾロンモジュールに結合することができ
る、巨大分子表面またはその構造などの、巨大分子成分。これには以下のものが
含まれる。順相および逆相クロマトグラフィー分離、水の精製、塗料用色素その
他などの各種用途において一般に使用されるような、例えばシリカ、アルミナ、
ジルコニア、チタニアなどの多孔性および非多孔性無機巨大分子成分;タンパク
質の精製、水の軟水化およびその他の各種用途において一般に使用されている、
スチレン−ジビニルベンゼンビーズ、各種メタクリレートビーズ、PVAビーズ
などの合成成分、例えばアガロース、キチンなどの天然および官能性化セルロー
スなどの天然成分、ナイロン、ポリエーテルスルホンまたは上記のいずれかの材
料で製造したシートおよび中空繊維膜を含む、多孔性および非多孔性有機巨大分
子成分。これらの巨大分子の分子量の範囲は約1000ダルトンから可能な限り大き
くてもよい。それらの形態は、ナノ粒子(nanoparticle)(dp=100-1000オング
ストローム)、ラテックス粒子(dp=1000-5000オングストローム)、多孔性ま
たは非多孔性ビーズ(dp=0.5-1000ミクロン)、膜、ゲル、巨視的表面若しくは
官能性化または被覆加工物、あるいはこれらの複合体でもよい。
Aおよび/またはBは、好適な有機成分への化学結合、水素原子、アルデヒド
、エステル、ハロゲン化アルキル、ケトン、ニトリル、エポキシドなどの好適な
親電子基、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシレート、アミド、カルバニオン、
尿素などの好適な親核基を含有する有機成分、または下記定義のR基のうちの1
つでもよい。さらに、AとBが結合して、環または前記図式によって定義した化
合物の反復単位の末端を連結した構造をとるか、あるいは別々に他の成分に連結
してもよい。
本発明の組成をより一般化した構造は、以下の図式で定義される。
式中、
a.AおよびBの少なくとも1つが上記定義のものであり、AおよびBは任意
に互いにまたは別の化合物に連結している;
b.XおよびYは同じかまたは異なっていて、それぞれが化学結合または炭素
、窒素、イオウ、酸素の1若しくはそれ以上またはそれらの組合せを表す;
c.RおよびR’は同じかまたは異なっていて、それぞれがB、シアノ、ニト
ロ、ハロゲン、酸素、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、直鎖または分枝アルキル
鎖、炭素環式アリールおよびそれらの置換またはヘテロ環誘導体を表し、このと
き、RおよびR’は隣接するn単位間で異なっていてもよく、それらが結合する
炭素原子に対して、選択された立体化学配置を取っている。
ここで使用する用語、直鎖または分枝アルキル基とは、アルカン、アルケンお
よびアルキンを含む、置換または非置換の非環式炭素含有化合物のいずれかを意
味している。30までの炭素原子を有するアルキル基が好ましい。アルキル基の例
には以下のものが含まれる;例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ−プロピ
ル、n-ブチル、イソ−ブチルまたは第3級ブチルなどの低級アルキル;例えばコ
チル、ノニル、デシルなどの高級アルキル;例えばエチレン、プロピレン、プロ
ピルジエン、ブチレン、ブチルジエンなどの低級アルキレン;1-デセン、1-ノネ
ン、2,6-ジメチル-5- オクテニル、6-エチル-5- オクテニルまたはヘプテニルな
どの高級アルケニル;1-エチニル、2-ブチニル、1-ペンチニルなどのアルキニル
。当業者は膨大な数の直鎖および分枝アルキル基に精通しており、それらは本発
明の範囲内に含まれる。
さらに、これらのアルキル基は1またはそれ以上の水素原子が官能基と入れ替
わった各種置換基を含有していてもよい。官能基としては、限定するわけではな
いが、2,3例をあげると、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、アミド、エ
ステル、エーテル、およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)が含ま
れる。特定の置換アルキル基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ
、ペントキシなどのアルコキシ;1,2-ジヒドロキシプロピル、1,4-ジヒドロキシ
-1- ブチルなどのポリヒドロキシ;メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミ
ノ、ジエチルアミノ、トリエチルアミノ、シクロペンチルアミノ、ベンジルアミ
ノ、ジベンジルアミノなど;プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸基など;ホルム
アミド、アセトアミド、ブタンアミドなど;メトキシカルボニル、エトキシカル
ボニルなど;クロロホルミル、ブロモホルミル、1,1-クロロエチル、ブロモエチ
ルなど;またはジメチルまたはジエチルエーテル基などがある。
ここで使用する、炭素原子数が約20までの置換および非置換炭素環式基とは、
限定するわけではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、
アドマンチルなどを含む、環式炭素含有化合物を意味する。これらの環式基は水
素原子の1またはそれ以上が官能性基と入れ替わった、各種置換体をも含んでも
よい。これらの官能性基としては上記のもの、および上記の低級アルキル基が含
まれる。本発明の環式基はさらに異種原子を含んでいてもよい。例えば、特定の
実施態様において、R2はシクロヘキサノールである。
ここで使用する、置換および非置換アリール基とは、通常6またはそれ以上の
偶数の(pi)電子を含有し、共役2重結合系を形成する炭化水素環を意味する。
限定するわけではないが、アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アニ
シル、トルイル、キシレニルなどが含まれる。本発明においては、アリールには
アリールオキシ、アラルキル、アラルキロキシおよびヘテロアルキル基も含まれ
、例えばピリミジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、安息香酸、トルエ
ンまたはチオフェンなどである。これらのアリル基は任意の数の各種官能基で置
換されていてもよい。置換アルキル基およびカルボキシル基に関連して、上記の
官能基の他に、アリル基上の官能基としてニトロ基でもよい。
上に示したように、R2はアルキル、炭素環またはアリール基のどのような組
合せであってもよく、例えば、1-シクロヘキシルプロピル、ベンジルシクロヘキ
シルメチル、2-シクロヘキシルプロピル、2,2-メチルシクロヘキシルプロピル、
2,2-メチルフェニルプロピル、2,2-メチルフェニルブチルなどである。
d.Gは化学結合または結合基であり、そしてGは隣接するn単位間で異なっ
ていてもよく、
e.nは1またはそれ以上である。
好ましくは、Gが化学結合の場合、Yは第4級窒素に結合させるための末端炭
素原子を含む。そして、nが1で、XおよびYが化学結合の場合、RおよびR’
は同じであり、AおよびBは異なっていて、一方はHとR以外のものである。
ある条件下において、Aおよび/またはBは、好適な有機成分への化学結合、
水素原子、またはアルデヒド、エステル、ハロゲン化アルキル、ケトン、ニトリ
ル、エポキシドなどの好適な親電子基、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシレー
ト、アミド、カルバニオン、尿素などの好適な親核基を含有する有機成分、また
は下記定義のR基のうちの1つでもよい。さらに、AとBが結合して、環または
前記図式によって定義した化合物の反復単位の末端を連結した構造をとるか、あ
るいは別々に他の成分に連結してもよい。
本発明の組成をより一般化して表現すると、以下の構造式で定義される。
式中、
a.AおよびBの少なくとも1つが上記定義のものであり、AおよびBは任意
に互いにまたは別の化合物に連結している;
b.XおよびYは同じかまたは異なっていて、それぞれが化学結合または炭素
、窒素、イオウ、酸素の1若しくはそれ以上またはそれらの組合せを表す;
c.RおよびR’は等しいかまたは異なっていて、それぞれがA、B、シアノ、
ニトロ、ハロゲン、酸素、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、直鎖または分枝アル
キル鎖、炭素環式、アリールおよびそれらの置換またはヘテロ環誘導体からなる
群から選択され、このとき、RおよびR’は隣接するn単位間で異なっていても
よく、それらが結合する炭素原子に対して、選択された立体化学配置を取ってい
る。
d.Gは隣接するn単位間で異なっていてもよい結合基または化学結合であり
、そして、
e.n≧1である。
好ましくは、(1)nが1でありX及びYが化学結合である場合は、A及びBは
異なっていて一方が化学結合、H又はRより他のものであり;(2)nが1であり
Yが化学結合である場合は、Gはカルボニル基への連結のためのNH、OH又は
SH末端基を含み、G−Bはアミノ酸残基又はペプチドより他のものであり;(3
)nが1であり、X、Y及びGの各々が化学結合である場合は、A及びBは各々
、化学結合、アミノ酸残基又はペプチドより他のものであり;そして(4)nが1
である場合は、X又はAのいずれかがNH基への直接連結のためのCO基を含ま
なければならない。
これら化合物を、ペプチド、ヌクレオチド、炭水化物、薬学的化合物、リポー
ター化合物、重合性化合物又は基質の如き種々の化合物を模倣させるのに用いる
ことができる。
本発明の1つの態様においては、A及びBの少なくとも1が、ヒドロキシル、
スルフヒドリル又はアミン基で官能化された有機又は無機高分子表面に相当する
。好ましい高分子表面の例には、シリカ及びアルミナの如きセラミックス;多孔
質又は非孔質ビーズ;ビーズ、膜、ゲル、巨視的表面の形にあるラテックスの如
きポリマー;又はそれらの被覆型又は複合体又はハイブリッドが含まれる。これ
ら物質のキラル体の一般構造を次に示す。
本発明の他の態様においては、上の構造中でのAとBの役割が逆転して、Bが
上に示したリストから選ばれる置換基となりそしてAが次の鏡像体のうちの1つ
について示される官能化された表面を表すことになる。
以下の記載中では、nが整数であるRnをR及びR1の定義からの基を指定す
るのに用いることとする。
好ましい態様においては、上の構造中の基A又はBはアミンイミド部分である
。この部分は、例えば、オキサゾロンを不斉置換ヒドラジンと反応させてそのヒ
ドラジドをアルキル化することにより(例えば、ハロゲン化アルキル又はエポキ
シドとの反応により)導入することができる。そのような表面の例を次に示す。
本発明の他の態様は、次の構造を有するオキサゾロン環に関する。
式中、A、R及びR1は上記の通りでありqは0又は1である。好ましくはY
は化学結合である。この環は所望のオキサゾロン誘導体を調製するのに有用であ
る。
本発明の更なる態様は、2位に適当な置換基を有するオキサゾロンが反応性物
質として働く能力を利用する。適する置換基には、そのオキサゾロンをマイゲル
受容体にするビニル基、ハロアルキル及びアルキルスルホン酸エステル及びエポ
キシド基が含まれる。例えば、キラルな2−ビニルオキサゾロンの二重結合にマ
イケル(Michael)付加を行ってから開環反応を行うと、キラルな複合構造体が
できる。2−ビニルアズラクトン誘導体のケースについて示されるこの一般的反
応スキームは次の通りである。
式中、Xは硫黄、酸素又は窒素原子を表すことができ;Yは硫黄、酸素又は窒
素原子を表すことができ;そして置換基A及びBは上記の通り種々の構造を取り
入れてもよく、それらの物理的又は機能的特性が顕著に相違していても同じであ
っても、キラルであってもアキラルであってもよく、好ましくは、アミノ酸;オ
リゴペプチド;ポリペプチド及びタンパク質;ヌクレオチド;オリゴヌクレオチ
ド;リガンド擬似物;炭水化物;アミンイミド;治療剤、代謝産物、染料、写真
的に活性な化学物質に見出される構造体;又は所望の立体的、電荷的、水素結合
的又は疎水的特性を有するか又は重合性ビニル基を含有する有機分子から選択さ
れる。
上記のマイケル反応は、通常、理論量の求核体、つまりAXH、とオキサゾロ
ンを用いて、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、アルコール等の如
き適する溶媒中で行われる。このマイケル付加の生成物は、好ましくは、反応溶
媒を減圧留去することにより単離され、そして再結晶又はクロマトグラフィーの
如き技術を用いて精製される。順相又は逆相条件下、適する溶媒系の存在下での
、種々の担体のうちの1種、例えば、シリカ、アルミナでの重力又は圧力クロマ
トグラフィーを精製に用いることができる。このマイケル及びオキサゾロン開環
プロセスを選択すると、上に示したAXH及びBYH求核体の選択に一定の制限
が
強いられる。具体的には、ROH型の求核体は、主として開環反応を経て付加す
る傾向にあり、通常は酸性触媒(例えば、BF3)を必要とする。かくして、X
は普通は酸素であるべきではない。
同じく、1級アミンは開環を経て付加する傾向にあるので、XはNHであるべ
きではない。2級アミンは適切な反応条件下で容易に二重結合に付加するが、多
くは開環も起こす。従って、XもYもNであってもよいが、AとBが共に水素で
あることはないことを条件とする。RSH型の求核体は、そのスルフヒドリル基
がイオン化されるなら、即ち、SHプロトンを引き抜くのに十分な強さの(非オ
キサゾロン反応性)塩基の存在下でイオン化されるなら、専ら開環を経て付加す
るであろう。一方、かかる求核体含有硫黄は、非イオン化条件、即ち、中性又は
穏和な酸性条件下ではマイケル反応を経て専ら付加するであろう。Michael 付加
の間、開環副反応を避けるためには反応混合液中でのヒドロキシル系化学種(例
えば、水分)の存在を制限することが重要である。
要約すると、AXHは第2アミン又はチオールであることができ、そしてBY
Hは1級アミンでも2級アミンでもチオールでもアルコールでもよい。
上に示したマイケル−開環と続く反応の1つの変形では、Aが前述のリストか
ら選択される置換基であり、そしてBXHが、開環反応において求核体として役
立つヒドロキシル、スルフヒドリル又はアミン基で官能化された、有機又は無機
高分子表面、例えば、セラミック;多孔質又は非孔質ビーズ;ビーズ、膜、ゲル
の形にあるラテックスの如きポリマー;又はこれらの複合体又はハイブリッード
を含む。この連続反応は、非ポリマーケースについて示した条件と類似の条件下
で行われ、最終生成物の精製は、洗浄、透析等の如き、誘導体化後に支持体及び
他の表面を精製するために当該技術分野で用いられる技術を包含する。この連続
反応の結果生じるのは、次に示す如き構造体である。
他の変形では、AXHとBYHの役割は逆転して、BYHが上のリストから選
択される置換基となりそしてAXHが官能化された表面を表すことになる。
他の重要な二官能的反応性オキサゾロン誘導体には、
が含まれる。
これらは、α,α−二置換アミノ酸残基を適切な官能化酸クロリドでアシル化
してからオキサゾロンに環化することにより作られる。
また、2位に反応基を有するオキサゾロンは、反応性p−ベンジル基を含有す
る塩化ベンゾイルオキサゾロン誘導体の次の具体例について示すように、適する
アシル化反応により作ることができる。
Xが、塩化ベンジル基の場合のように、その反応性がオキサゾロン環の反応性
に対して直交性である基の一部分である場合は、BYHで開環付加を行ってから
適切なAXH基、例えば、1級アミンと反応させて次の生成物を得ることができ
る。
上の連続反応式において、ベンジル求電子体が求核性BYHについてオキサゾ
ロン環と競合するなら、以下にB1として示す適する保護基を用いて、ベンジル
求電子体を保護してもよい。BYHを開環付加させた後、標準的技術を用いて保
護基を除去(例えば、保護基がBocである場合は、CH2Cl2中で薄いTFA
を用いることによってそれを除去)してから、得られる生成物を適切な求電子体
、例えば、A−CH2−Brと反応させ、かくして置換基Aをこの分子内に導入
する。
4.3.2. キラルなオリゴマー及びポリマーを生成するキラルな
オキサゾロンのカテネーション
標的分子との予測可能な結合性相互作用を生じさせることができる官能基を有
するオキサゾロン誘導構成単位を選ぶこと及びそれら構成単位のカテネーション
(連結)を行うために上に大まかに記載した技術の如き合成技術を用いることに
より、選択した天然オリゴマー又はポリマー、例えば、ペプチド及びポリペブチ
ド、オリゴヌクレオチド、炭水化物、並びに他のあらゆる生物活性種であって、
それらの三次元結合の幾何学的形態が、主鎖及び側鎖を含有するオキサゾロン誘
導体の種々の組み合わせにより模倣されることができる生物活性種を模倣する、
オキサゾロン誘導サブユニット擬似物の配列を構築することが可能である。これ
は、天然に存在するアミノ酸の側鎖中に見出される置換基;プリン及びピリミジ
ン基並びにこれらの誘導体及び変異体;シアル酸の如き天然及び合成の炭化水素
認識基;細菌細胞壁生合成の有効な阻害物質であることが知られているβ−ラク
タム系抗生物質の部分の如き既知の薬理活性を有する有機構造を含有する基を含
むがこれらに限定されない多種多様な側鎖認識置換基を用いて、高度に特異的な
活性を有する構造体を生成させることにより達成することができる。これら部分
を位置特異的なやり方で主鎖に沿って取り付け、整え、そして一定の間隔を置く
ことができる。その主鎖とは、その基本的な幾何学的形態、間隔、硬さ及び他の
特性が、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド又は炭水化物中に見出され
る天然の主鎖を機能的に模倣するようにデザインされることができそして局部的
に一致させられることができる主鎖であるか、又はこれら側鎖認識基の序列又は
組み合わせをその主鎖との及び互いとの適切な構造的関係に整列させて、高度に
特異的かつ選択的な活性を有する種を生成させるのに単に役立つことができる主
鎖である。加えて、これらオキサゾロン誘導連結体の向上した加水分解安定性及
び酵素安定性の故に、これらデザインされた機能性分子は、天然種よりも良好な
安定性及び薬物動態特性を有するであろう。化学の集積されたモジュール性で、
電子的装置のデザインと類似のやり方で、比較的少数の交換可能な反応性モジュ
ール及び手順を用いて成分二次組織を組み合わせることにより、この多種多様な
分子の構築を行うことが可能になる。これを以下に概略図で示す。
以下に、カルボニル末端スペーサーを経て連結されたオキサゾロン誘導主鎖中
への一般的な“塩基”(プリン又はピリミジン)基の導入について、このアプロ
ーチを説明する。この例では認識基として塩基を用いるが、この基は所望の目的
生成物を与える、例えば、炭水化物、薬作用発生団部分又はデザインされた合成
認識要素の如きどのような基であってもよいことに留意すべきである。
以下の具体的な連続反応式は、1つ置きのオキサゾロン誘導モジュールに付い
た塩基を有するリガンドの構築を示すものである。また、各々の連続するオキサ
ゾロンモジュールに付いた塩基を有する種を構築することもできる。認識基保有
モジュール上の置換基は、個々の認識基の間の及び各々の認識基とバックボーン
主鎖との間の所望の構造的関係に依存して、全て同じキラル性を有しても、規則
正しく交互するキラル性を有しても、ラセミ性であってもよい。
また、二重結合を介して主鎖に付いた塩基を有する誘導体を生成させる非水素
化モジュールを用いる変形物を含む、他の変形物を構築することもできる。これ
ら構造物においては、組み立てたリガンドをこの不飽和結合の多同時的立体特異
的水素化に付し、立体的に制御したやり方でα水素置換基を有する誘導体を生成
させ、α水素含有オキサゾロンを経由してこれらリガンドを構築する際に問題と
なる上に概略を示したようなラセミ化を回避することができる。
4.3.2.1. 求核的オキサゾロン開環付加反応を行ってからオキサゾロン形成環化
反応を交互に行うことによるカートネーション
a.α,α−二置換配列
このアプローチによれば、通常はリチウム塩である(キラルな)α,α−二置
換アミノ酸誘導体のアミノ基による開環性求核的攻撃を経てオキサゾロンモジュ
ールをカテネーションする。続いて、得られた付加物を再環化して(キラル性を
保持したまま)末端オキサゾロンを形成させる。次いで、このオキサゾロンを更
に求核的開環カテネーション反応に付して、以下に示すような成長性キラル鎖を
作る。この操作を所望のポリマーが得られるまで繰り返す。
式中、Mはアルカリ金属であり;置換基対R1とR2、R3とR4、R5とR6及び
RnとRn-1の各メンバーはその他方と相違していて、各々は単独でアルキル、シ
クロアルキル、又はそれらの置換型;アリール、アラルキル又はアルカリール、
又はそれらの置換型及び複素環型を意味し;これら置換基対がつながって1つの
炭素環又は複素環を形成してもよく;R1とR2の好ましい形は、天然のポリペプ
チド、オリゴヌクレオチド、炭水化物、薬作用発生団に存在する側鎖置換基、こ
れらの変異体又は擬似物、又は主鎖若しくはバックボーンに付いて標的の系と所
望の相互作用を起こすことができる他のあらゆる側鎖置換基であり;Xは酸素、
硫黄、又は窒素原子を表し;そしてAとBは上記の置換基である。
保護された末端アミノ基を含有するキラルなオキサゾロン誘導体は、次に示す
ように、当業者にとって既知の標準的技術により調製された、保護された二置換
ジペプチドから調製することができる。
式中、B1はBoc(t−ブトキシカルボニル)又はFmoc(フルオレニルメ
トキシカルボニル)の如き適切な保護基である。次いで、このオキサゾロンを用
いて、上記の反応条件を用いてアミン、ヒドロキシル、又はスルフヒドリル基を
リンカー構造体に又はAXHにより一般的に表される官能化固体支持体上にアシ
ル化することができる。このアシルの後、このアミドの全体の構造に適合性の(
即ち、この分子内に存在し得るあらゆる他の保護基又は官能基に関してそのアミ
ン保護基が反応的に直交性である)標準的なアミン脱保護法を用いて脱保護し、
そして、以下に示すように、得られたアミノ基を新たな二官能性オキサゾロンと
の反応に用いて成長性キラルポリマー構造体を生成させる。
示した反応式において、Yは例えば官能化されたアリール基の如きリンカーで
あり;Xは適する構造の窒素原子、酸素又は硫黄原子であり;置換基対R1とR2
、R3とR4、Rn-1とRnの各メンバーはその他方とは相違していて、各々は単独
でアルキル、炭素環、又はそれらの官能化型、アリール、アラルキル又はアルカ
リール、又は官能価であって、それらの複素環型を含み;R1とR2の好ましい形
は、天然のポリペプチド、オリゴヌクレオチド、炭水化物、薬作用発生団に存在
する側鎖置換基、これらの変異体又は擬似物、又は主鎖若しくはバックボーンに
付いて標的の系と所望の相互作用を起こすことができる他のあらゆる側
鎖置換基であり;置換基Rは炭素環又は複素環の一部分であってもよく;Aは上
記の置換基であり;CはAについての諸構造から選択される置換基であり;そし
てB1は保護基である。
上のカテネーションがポリマー延長サイクル当たり2つのアミノ酸残基の導入
を包含するので、偶数の残基を有するリガンドができることが分かる。奇数の残
基を含有するリガンドを得るには、標準的合成法を経て調製される以下に示すよ
うな適当なアミノ酸誘導体で予備的工程を行うことができる。
上記のポリマーでは、個々のモジュールは、ペプチドを模倣させるためにデザ
インされたリガンドについての場合のように、認識置換基を保有してもよい。ま
た、この連続反応を用いて、付いている各置換基の、つまりは、得られるリガン
ドの構造的及び機能的特性の周期性及び立体化学の連続的に変化する段階的制御
でリガンドを構築することができる。これは、認識基を保有しない1又は2以上
のモジュールによって認識基を保有するモジュールを互いから離すことにより行
うことができる。これら介在モジュールは、アキラルなα,α二置換モジュール
であってもよく、キラル性が重要でない場合にはそれらは標準的な水素保有αア
ミノ酸モジュールであってもよい。これらは置換の周期性を規制するためのスペ
ーサーとして役立ち得るか又はリガンドの柔軟性を制限するなどの他の種々の補
助機能に有用であり得る。認識基保有モジュール上の置換基は、個々の認識基の
間の及び各々の認識基とバックボーン主鎖との間の所望の構造的関係に依存して
、全て同じキラル性を有するように構築しても、規則正しく交互するキラル性を
有しても、ラセミ性であってもよい。
また、より高いオーダーの構造的特性を与えることができるモジュールの“サ
ブアセンブリ”を予備構築し、より高いオーダーの構造の制御ができるようなや
り方でこれら同じ連続反応を用いて一緒に組み立ててもよい。これを、次のタイ
プの交互モジュールの繰り返しパターンで形成されたポリマーの場合について説
明する。
このポリマーは、反復性の隣接の二置換により課せられる配座的制限により生
ずる3〜10のヘリックスを形成するであろう。この三つ組周期性で、そのヘリ
ックスの一方の側に沿って規則正しく並んだ荷電スルホネート基を有するヘリッ
クス上部構造が形成される。
このヘリックス形成現象は、天然に存在するペプチドで観察されており、それ
は隣り合うアミノイソ酪酸(aib)残基、つまり天然に存在するアキラルなα
,α−二置換アミノ酸の配列を含有している。これの例には、アレメチシン(al
emethicin)及びスズキシリン(suzukicillin)の如き一定の天然に存在するペ
プチド系抗生物質が含まれ、それらのaib誘導ヘリックス構造は、これら抗生
物質の作用の細胞攪乱様式における重要な構成であると仮定されている。
b.二官能的に反応性の他の要素
上に示したポリマー合成のどの時点においても、(1)オキサゾロンに開環付加
できる末端OH、−SH又は−NH2基及び(2)キラルなα,α−二置換アミノ酸
のアミノ基と反応できるもう1つの末端基、を有する構造種を以下に示すように
ポリマー骨格中に挿入することができる。
所望により、この合成におけるオキサゾロン環を生成させる各工程においてこ
のプロセスを反復してもよい。用いる二官能性種は、この合成の個々の工程で同
じであっても異なっていてもよい。
オキサゾロン形成のため及びアシル化剤としてオキサゾロンを使用するための
上記の実験操作は、これらオキサゾロン統制カテネーションに有用であると考え
られる。特定のケースに起こり得る溶解性及びカップリングの問題は、ポリペプ
チド及びペプチド擬似物合成の分野における当業者に効果的に取り扱われ得る。
カテネーションは漸進的により大きな分子を生成してゆくので、例えば、双極性
非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドDMF、ジメチルスルホキシ
ドDMSO、N−メチルピロリドン等)の如き特定の溶媒及びカオトロピック(
chaotropic)(分子凝集破壊)剤(例えば、尿素)は非常に有用であろう。
4.3.2.2. 二官能的に反応性のオキサゾロンを用いるカートネーション
オキサゾロン(アズラクトン)環の2位の置換基が4位のキラル性を保持した
まま進行する付加反応を受けることができるときは、この付加反応は開環アシル
化と組み合わさってキラルなポリマー配列を生成することができる。これを、ア
ルケニルアズラクトンのケースについて以下に示す。
上の反応の順序において、Aは上記の型の構造体を表しHNu1−Z−Nu2H
はメチルアミノ−エチルアミン、1−アミノプロパン−3−チオール等の如き反
応性に差のある2種の求核基を含有する構造体を表し;基Nu1、Nu2、Nu3
及びNu4は同一である必要はなくそしてZは上記の通りのリンカー構造体であ
る。
構造体HNu1−Z−Nu2Hは、上述の通り、反応性に差のある2種の求核基
を含有することができ、Nu1とNu2が匹敵する反応性の基であるなら、これら
求核基のうちの一方を他方と競合するのを防ぐために保護してアシル化の後に選
択的に脱保護する。当該技術分野又はペプチド合成分野において広く用いら
れる(例えば、アミノ、ヒドロキシル、チオ等の如き求核基のための)保護基が
、このHNu1−Z−Nu2H構造体のNu置換基の一方の保護に有用である。H
Nu1−Z−Nu2Hとのアシル化反応の(必要な場合はNu脱保護後の)生成物
を新たなオキサゾロン単位とマイケル様式で更に反応させ、そしてこの付加後に
追加の二求核体で開環アシル化する。この合成工程の順序の繰り返しで成長性ポ
リマー分子が生成する。これらプロセスを行うための反応条件は、関連するポリ
マーについて上記した条件と類似である。
上のタイプのオリゴマーは、生物学的主鎖(scaffolds)、特にポリペプチド主
鎖に対するそれらの構造的類似性の故に、生化学的に非常に有用である。置換基
Rをそのオリゴマーの立体的、電荷的又は疎水的特性に適合するように選ぶこと
ができるので、いろいろに使える擬似物を生じさせることができる。
4.3.3. オキサゾロンを用いるペプチド及びタンパク質の官能化
本発明の更なる態様においては、不斉二置換オキサゾロンの求核的開環を利用
してペプチド又はタンパク質中の選択した位置にキラルな残基又は配列を導入し
、向上した加水分解安定性及び酵素安定性を有するハイブリッド分子を生成させ
ることができる。
キラルなアズラクトンとメリフィールド支持体に付いた合成トリペプチドのア
ミノ末端との反応を以下に示す。
上のアミノ分解で用いられるオキサゾロンは、このアミノ分解の後に脱保護さ
れそしてアシル化を経て更なる延長に利用されるところの保護されたアミノ末端
を含有してもよい。この合成を変形したものを以下に示す(B1は上記の通りの
適する保護基を表す)。
所望のオキサゾロン単位を用いて所与のポリペプチドを延長した後は、所望に
より、標準的なペプチド合成技術を用いてそのポリペプチド合成を続けてもよい
。
以下の構造体は、上のようにして調製して固相合成支持体から切り離した9の
サブユニットを含有する短いポリマーを示すものである。
上に示したポリアミド構造体において、各々のR基はアルキル、炭素環、又は
それらの置換型;アリール、アラルキル、アルカリール、又はそれらの複素環型
を含む置換型を意味し;複数のR基が1つの炭素環又は複素環を規定してもよく
;この適用におけるR基の好ましい構造は、天然に存在するアミノ酸の側鎖の構
造を模倣する構造である。
上に概略を示した合成は、関連する分子及び巨大分子について先に記載したも
のと類似の操作を用いて行うことができる。
また、二置換されたキラルなアズラクトンを次の複数工程操作を用いて種々の
新規な非天然残基をペプチド又はタンパク質中に導入するのに用いることができ
る。
a.カルボキシル末端残基がキラルであり二置換されたペプチドを、好ま
しくは固相合成により合成する。
b.固相合成により調製したペプチドを支持体から切り離して、必要な場
合にはそのN−末端を再保護した後、環化して以下に示すようにオキサゾロソを
生成させる。
c.固相上で第2目的ペプチド配列を合成する。
d.上の工程(b)及び(c)で生成したペプチドを適する反応条件下で
カップリングして、そのペプチドを支持体から切り離しそしてその合成の間に用
いた全ての保護基を外した後、非天然残基を含有する以下に示す新規なペプチド
を生成させる。
上の構造体において、各々のR基はアルキル、シクロアルキル、アリール、アラ
ルキル又はアルカリール、又はそれらの置換型又はそれらの適する複素環型を意
味し;複数のR基が1つの炭素環又は複素環を規定してもよく;好ましくは、R
基は、天然に存在するアミノ酸の側鎖の構造的擬似物である。
やはり、上の工程a〜dに示した反応は、関連するケースについて上記した条
件を用いて行うことができる。支持体上への又は溶液中でのペプチドセグメント
のカップリングは、ペプチド合成の分野の伝統的技術を用いて行われる。
上の合成の変形においては、上の工程(b)で生成したオキサゾロンペプチド
を種々の二官能性求核分子と反応させて、以下に示すようなアシル化生成物を得
ることができる。
上のアシル化生成物をペプチドとカップリングさせて新規でキラルなハイブリ
ッドを生成させることができる。2種のカップリングルートを用いることができ
る。
(1)Aがアミノ基と縮合できる基であるなら、その縮合反応をカップリン
グに用いる。例えば、Aがカルボキシル基であるなら、DCC又は類似の試薬を
用いるペプチドアミンとの縮合で所望の生成物が生成する。上に記載した如き当
該技術分野で周知の反応条件及び適する(直交性)保護基が有用であると考えら
れる。
(2)Aが適する求核基(例えば、ヒドロキシル、アミノ、チオ等)である
なら、それを用いて保護されたアミノ末端を含有するペプチドオキサゾロンを開
環することができる。以下に示すケースでは、上に示した一般構造の基Y、A及
びZを次のように定義する。Y=NCH3、A=SHそしてZ=CH2CH2
上の反応は、関連するペプチド合成について上記した条件と類似する条件下で
行われる。求核性のヒドロキシル、チオ、アミノ及び他の基、例えば、炭水化物
を有する非常に多種の分子を、上に概略を示した適するオキサゾロンとの反応を
用いて、ペプチド及び関連するフレームワークと結合させることができる。
また、オキサゾロンをその環の2位に付いている反応性基と共に用いて、残基
をペプチド鎖に付けたりその中に挿入することができる。これは、2−アルケニ
ルアズラクトンのケースについて以下に示す2種の方法のいずれかで行うことが
できる。
(1)前もって誘導体化したオキサゾロンを一般構造AXHの求核体を用い
るマイケル付加によりペプチドアミンで求核攻撃する。
(2)ペプチド求核体、例えば、スルフヒドリル基を2−ビニルオキサゾロ
ンの二重結合にマイケル付加してから、そのオキサゾロン環を別のペプチド求核
体、例えば、アミンで求核攻撃した後に更に修飾する。この反応順序で、以下に
示すような種々の構造のポリマー分子が生成する。
4.3.4. 他の擬似物
オキサゾロン誘導擬似物は、上に概略を示したオキサゾロン形成化学及びカー
トネーション化学を用いて生成させることができ、プリン又はピリミジン塩基、
炭水化物、ファーマコフォア等の如き、適切なスペーサーを介して側鎖置換基に
付いた天然又は合成の認識基(即ち、上記の一般構造式中のR又はR1は、認識
基−スペーサーサブアセンブリを表す)を有するバックボーンが生成する。
これは、例えば、次の一般的合成スキームを経て達成することができる。
4.3.4.1. オリゴヌクレオチド擬似物の合成
先に説明したように、核酸に結合する特性を有する分子の構築及び応用に大き
な注目が集まっている。この分野における研究の途上、1.天然の核酸へのしっ
かりした結合が認められるという具合に一連の天然の又はデザインされた塩基を
支持する合成主鎖の能力:2.グアノシン、シトシン、チミジン、アデノシン又
はウリジンより他のデザインされたか又は天然に存在する塩基が別の天然塩基又
はヌクレオチドに効率的に結合するための要件、に関して大量の知見が集まった
。有効な主鎖が考案されれば、非天然の又は修飾された塩基でも有効なハイブリ
ダイゼーションを示せることが証明された。本明細書に開示した戦略は、天然及
び/又は非天然の塩基(例えば、チミン、グアニジン、5−フルオロウラシル(
5−FU))をオキサゾロン骨格上に付帯させてアンチセンス鎖又はヌクレオチ
ド
擬似物を形成する戦略である。得られる結合及びバックボーンは、塩基、酸及び
タンパク質分解/加リン酸分解活性に対するそれらの耐性の点で優っている。塩
基は、適切なスペーサーを用いて付けることができ、そしてその置換幾何学的形
態の立体化学と周期性及び骨格主鎖の硬さは、それら塩基が標的とする対応物と
ハイブリダイズするのに最適な塩基の配置及び方向を与える間隔にそれら塩基を
整列させそして投入できるように、デザインすることができる。オキサゾロン誘
導オリゴヌクレオチド擬似物の合成の具体例を以下に示す。
4.3.4.2. 炭水化物擬似物の合成
先に記載したとおり、炭水化物類は、次第に、生命、例えば細胞認識、免疫性
、胚発育、発癌および細胞死の過程を所期の効果の得られるよう編成するのに必
要とされる多量の情報を暗号化するために必要な非常に複雑な構造を有する生体
系の成分として見なされつつある。この情報が含まれ、そして特定の炭水化物の
詳細な三次元のトポロジー形態に指向された高度に特異な結合の相互作用をとお
して利用される。制御された方法での種々の配列にこれらの部分を配置すること
および結合することができるのは非常に価値がある。このことは、ヘマグルチニ
ン(赤血球凝集素)の結合を阻害することが示された官能化シアル酸基を含むラ
ンダム・ビニル共重合体により行われるように、オリゴマー骨格にそって炭水化
物認識基を連結することによる(J.Am.Chem.Soc.、113、68
6、1991)か、または適切な構造スカホールド(足場物質)上の適当なスペ
ーサーと一緒に複合的な炭水化物基を配置することにより行われてもよく、その
ため炭水化物基は、それらが標的に選択的に結合し得るような方法で間隙に配向
される〔例えばJ.Am.Chem.Soc.、113、5865、1991年
;同書5865参照。〕。オキサゾロン誘導炭水化物擬似物は、ハロゲン化カル
ボン酸、カルボン酸、アルコール、チオール、アミン、アルデヒド、ケトンのよ
うな官能基を、上で概説されたオキサゾロン形成およびカーテネーション反応に
適合性のある任意の他の基と一緒に含有する炭水化物モジュールから合成されて
もよく、そのため炭水化物は基本的スカホールドに付着されるか、または厳密に
制御された方法で骨格にそって配列される。このような炭水化物モジュールの合
成の例は、以下に概説される。
モジュール1.
(a)(COCl)2,DMSO,Et3N,CH2Cl2,−60℃
(b)Ac2O.ピリジン.CH2Cl2,
モジュール2.
(a)2−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、サリチル酸Ag塩
、THF、室温
(b)HCl水溶液、THF、室温
モジュール3.
(a)(COCl)2、DMSO、Et3N、CH2Cl2、−60℃
(b)Ac2O、ピリジン、CH2Cl2、室温
モジュール4.
(a)2−(2−ブロモエチル)−1,3−ジオキサン、THF、室温
(b)HCl、THF、室温
4.3.4.3. フォーマコフォア擬似物の合成
背景
天然リガンドまたは基質が酵素、ヌクレオチドまたは炭水化物の受容体または
これらの活性部位に対する結合を支配する物理的な原理は、非ペプチド、非ヌク
レオチドおよび非炭水化物化合物(競合的阻害剤またはアゴニスト)の結合を支
配するのと同一の原理である。先行または原始型として公知の生物学的に活性な
化合物の修飾、それからその構造同族体、同族体または類似体を合成しそして試
験することは、新規治療剤の開発の基本的戦略である。この方法のいくつかの利
点は、・任意に試験されたものより原始型のものに最も類似する生理学的特性を
有するこれらの修飾誘導体のより顕著な蓋然性、
・医薬上優れた剤を得る可能性、
・新規薬の商業的製造、
・構造活性相関が確立されて、さらなる発展を助けること
である。
全ての薬の発見計画の目的は、(a)潜在性、特異性、安定性、薬理学的持続
期間、毒性、投与の容易さおよび製造の費用において、原始型より望ましい特性
を示す薬を得ること、(b)薬理作用を与える分子の特徴を発見することである
。ファーマコフォアの語は、この薬理作用を与えるこれらの重要な特徴を記述す
るのに使用される。
生物学的に活性な化合物、例えばタンパク質またはポリペプチドが、樹脂また
はガラス表面のような固相支持体に付着するために数種の技術が存在する。これ
らの結合された化合物は、移動性の部分的欠損にもかかわらず、多様な阻害活性
、その結合特性を保持する結合分子の能力の指標を示す。
特定の公知様式の活性を示すことが知られている広範な種類の一般的ファーマ
コフォアには、例えば細菌の細胞壁に介入するβ−ラクタム抗菌剤(actib
acteric,);向精神薬または抗コリン作用薬として作用し得るピペリジ
ンおよびペペリジン;および刺激剤としてのキサンチンが存在する。以下の一般
反応式は、上述の種々のオキサゾロン(aoxazolone)誘導高分子骨格
形成反応に含まれるファーマコフォアの合成を概説する。詳細な例を以下に示す
。
1.DA−アミノ−(N−(4−(オキソメチル)ベンジル)ベンジル−ペ
ニシリンの合成:
2.4−ヒドロキシ−N−(2,(1,3−ジオキシル)エチル)−4−フ
ェニルピペリジンの合成:
等モル量の0.5N HCl水溶液と共に、メタノール/水またはTHF/水
のような適切な溶媒に溶かした4−ヒドロキシ−N−(2−(1,3−ジオキシ
ル)−エチル−4−フェニルピペリジン(xmg,xミリモル)の溶液を、50
℃で4時間攪拌した。反応混合物を、塩化メチレンまたはジエチルエーテルのよ
うな適切な溶媒で希釈し、飽和NaHCO3水溶液で抽出して酸を中和し、続い
てブラインにより抽出した。ロータリーエバポレータで溶媒を除去して、固体を
得た(xg,x%)。一部を再結晶させて、分析用の試料を得た。
3.5H−5−((1,3−ジオキサン−2−イル)−2−エテニル)ジベ
ンゾ[A.D]シクロヘプテンの合成:
4.4 特異的分子認識能のあるオキサゾロン(Ozaxolone)由来
の高分子構造の創作
本発明の具体例で、オキサゾロン誘導分子のビルディングブロックは、特定の
分子を認識する能力のある新規な巨大分子構造(「インテリジェント高分子」)
を構築するのに利用されうる。「インテリジェント高分子」は、以下の一般式:
P−C−L−R
(ここで、Rは分子認識能のある構造であり、
Lはリンカーであり、
Pは支持台としての役割を果たす巨大分子構造であり、
CはPを囲む被覆材(コーティング)として提供される高分子構造で
ある。)
で表すことができる。
構造Rは天然リガンドまたは生物学的リガンドアクセプターまたは上述された
もののようなそれらの擬似物であってもよい。
リンカーLは化学結合または上記で列挙した結合構造の1つ、あるいはアミノ
酸、アミンイミドモノマーのようなサブユニットの配列、オキサゾロン由来鎖の
原子等でありうる。
高分子被覆材Cは共有結合または「収縮包装」、すなわち表面が被覆材重合に
供される場合に生じる結合を、介して支持台に付着されてもよく、当業者によく
知られている。この被覆要素は、
1)厚みで10−50オングストロームの薄い架橋高分子フィルム、
2)制御された微孔性および種々の厚みを有する架橋高分子層、または、
3)制御された微孔性ゲルであってもよい。支持台が以下で記載されるとおり、
微孔粒子または膜である場合、制御された微孔性ゲルは、支持台の多孔性構造を
完全に満たすように操作されうる。高分子被覆材は、当業者によく知られた方法
で、被覆材架橋、重合開始剤、溶媒、反応物の濃度の性質および程度のような種
々の反応パラメーター、および温度、通気等のような他の反応条件を注意深く制
御することによる制御法で構築されうる。
支持台Pは直径(dp)100オングストローム〜1000ミクロンである薄
膜材料、ラテックス粒子(dp0.1−0.2ミクロン)、微孔性ビーズ(dp
1−1000ミクロン)、多孔性膜、ゲル、ファイバー、または連続性の巨視的
表面でありうる。これらは、シリカ、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリス
ルホン、アガロース、セルロース等の市販されている高分子材料、または以下に
記載されるような合成オキサゾロン含有高分子であってもよい。
オキサゾロン由来構造を含む要素P,C,LまたはRはいずれも、オキサゾロ
ン由来構造への前駆体を含む要素の形態から得られる。上述の複合サブユニット
認識剤は標的の治療剤、ドラッグデリバリーシステム、アジュバント、診断薬、
キラル選択剤、分離系、および希望通りの触媒の開発に非常に有用である。
本明細書中、「表面」、「基質」および「構造」の語は、上で定義したとおり
にP、Cに結合したP、またはCおよびLに結合したPのいずれかを意図する。
4.5 キラルなアルケニルアズラクトンモノマーおよび重合生成物
アルケニルアズラクトンに使用される場合、上で検討されたアズラクトン開環
付加反応は、広範な種のキラルなビニルモノマーを直接に生成するのに使用され
うる。これらは、重合または共重合されて、キラルなオリゴマーまたは高分子を
生成することができ、そしてさらに架橋されてキラルなビーズ、膜、ゲル、被覆
材またはこれらの材料の複合材を生成しうる。
キラルな架橋可能な高分子類を生成するのに使用されうる他の有用なモノマー
類は、キラルな2−ビニルオキサゾロンを適切なアミノアルケンまたは他の不飽
和求核試薬で求核開裂させることにより生成しうる。
ビニル重合および重合橋架け技術は、当業界でよく知られており(例えば、米
国特許第4,981,933号を参照)、上述の好ましい方法に使用され得る。
4.6 オキサゾロン基本単位から得られたコンビナトリアルライブラリー
上で概説したオキサゾロン類の合成変換は、メリフィールドおよびその他によ
り記載されたとおり、固相ペプチド合成を行うのと類似する方法で固体支持体上
で十分におこなわれ得る。[例えば、バラニー,ジー.、メリフィールド,アー
ル.ビー.のThe peptides、2巻、グロス イー.,メイエンホー
ファー,ジェイ.編、1−284頁のSolid Phase Peptide
Synthesis(Acad.Press、ニューヨーク、1980年);
スチュワート,ジェイ.エム.、ヤン,ジェイ.ディー.のSolid Pha
se Peptide Synthesis、2版、Pierce Chemi
cal Co.、イリノイ、ロックフォード、1984年;アサートン,イー.
、シェパード,アール.シー.のSolid Phase Peptide S
ynthesis、ディー.リックウッドおよびビー.ディー.ハメス編、IR
L編、オッスフォード ユニバーシティー プレス、1989年を参照]オキサ
ゾロン由来構造のアセンブリーは、ビルディングブロック、すなわち分子のサブ
ユニットの連続的コンビナトリアルの結果であるので、オキサゾロン由来オリゴ
マー構造の膨大なコンビナトリアルライブラリーは、ラム[ケイ.エス.ラムら
のNature、354、82(1991)]およびズッカーマン[アール.エ
ヌ.ズッカーマンらのProc.Natl.Acad.Ser.USA、89、
4505(1992);ジェイ.エム.カーらのJ.Am.Chem.Soc.
、115、2529(1993)]により記載されたような適切な固相化学合成
技術を使用して十分に製造されうる。興味深い生物活性、すなわちレセプターと
の結合または酵素との相互作用のある化合物のこれらのライブラリーのスクリー
ニングは、当業界でよく知られた種々のアプローチを用いて行われうる。「固相
」ライブラリー(すなわち、リガンド候補がそれらの合成に使用された固体支持
体粒子に付着し続けるライブラリー)では、ラムのビーズ染色技術を使用しうる
。この技術は、リガンド候補アクセプター、例えばその活性が色生成物になるこ
とができる酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)で標識し、こうして活性リ
ガンド候補を含むライブラリー支持体を染色し、そして無色の不活性候補を含有
する支持粒子をそのまま残す。染色された支持粒子は、ライブラリーから(例え
ば、顕微鏡の助けをかりてマイクロマニピュレーター(顕微操作器)に結合され
たごく小さなピンセットを使用して)物理的に取り除かれ、そして例えば、8M
塩酸グアニジンで洗浄することにより、複合体からリガンドアクセプターを取り
除いた後、ライブラリー中の生物学的に活性なリガンドを構造的に同定するのに
使用される。「液相」ライブラリーに、上述のザッカーマンにより記述されたア
フィニティー選択技術を使用しうる。
特に好ましい型のコンビナトリアルライブラリーは、コード化コンビナトリア
ルライブラリーであり、それは、ライブラリーのリガンド候補の合成と平行して
、(例えば、従来の分析法を用いたシーケンシングにより)容易に解読しうる特
徴的な化学コード(例えばオリゴヌクレオチドまたはペプチド)の合成を含む。
コードの構造はリガンドの構造を十分記述しており、その構造が従来の分析法を
用いて解明するのが困難であるかまたは不可能である生物学的に活性なリガンド
を構造的に特徴づけるのに使用される。コンビナトリアルライブラリーの構築の
ためのコード化反応式が最近記述された(例えば、エス.ブレナーおよびアール
.エイ.ラーナーのProc.Natl.Acad.Sci.USA、89、5
381(1992);ジェイ.エム.カーらのJ.Am.Chem.Soc.、
115、2529(1993)を参照)。これらまたは他の関連反応式は、オキ
サゾロンから誘導されるオリゴマーおよび他の複合体構造のコード化されたコン
ビナトリアルライブラリーを構築における使用を意図される。
例えば薬の発見に関連した化学品化合物のスクリーニング可能なライブラリー
をつくる際のコンビナトリアルケミストリーの力は、上述のものを含めて数種の
刊行物に記載されている。例えば、ラムらにより概説された「スプリット固相合
成」アプローチを使用して、20のオキサゾロンの5量体構造へのランダム組込
み(ここで、5量体中の5つのサブユニットの各々がオキサゾロン類の内の1つ
に由来する。)で、205=3,200,000ペプチド擬似物リガンド候補の
ライブラリーを生成し、各リガンド候補は1つまたはそれ以上の固相合成支持粒
子に付着し、そして個々のこのような粒子は単一リガンド候補型を含む。このラ
イブラリーは、わずか2〜3日で構築され、生物活性についてスクリーニングさ
れることが可能である。このようなものは、新規分子候補を構築するためにオキ
サゾロンモジュールを使用したコンビナトリアルケミストリーの力である。
以下は、オキサゾロン由来化合物のランダムコンビナトリアルライブラリー;
アミノ酸グリシン、メチル−エチル−グリシン、およびイソプロピルメチルグリ
シンに由来する3つのオキサゾロンのランダム組み込みを構築する際に使用して
、スクシノニル・リンカーを介して支持体に結合された27の3量体構造を生み
出すことが例示されることを意図する多くの方法の内の1つである。
(1)適切な固相合成支持体、例えばメリフィールドのクロロメチル樹脂が、3
等分される。
(2)アシル化t−ブチルエステル誘導体:
に変換した後、各部分を上で示されたグリシンの1つ1つに結合する。
上述の変換を行う条件は、よく知られており、上で与えられた参考文献に記載さ
れたようなペプチド合成の技術で普通に用いられる。
(3)各アミノアシル樹脂部分を、適切なトリフルオロ酢酸(TFA)原液のよ
うな酸溶液、または好ましくはTFAとCH2Cl2の1:1混液で処理して、t
−Bu保護基を取り除く。得られたアシルアミノ酸樹脂を上述のとおりのクロロ
ギ酸エチルで処理して、オキサゾロン樹脂を製造する。
(4)3つのオキサゾロン樹脂部分を十分に混合し、そして得られた混合物を3
等分する。
(5)個々の樹脂部分を、上述の条件を用いてt−ブチルエステルとして保護さ
れた別のグリシンに結合する。上述のとおり、各々の樹脂部分についてアミド生
成物を脱保護し、クロロギ酸エチルとの反応に用いてオキサゾロンに環化する。
(6)得られた樹脂部分を十分に混合し、そしてその後再び3等分する。
(7)各々の樹脂部分を、t−ブチルエステルとして保護されたカルボキシルを
含有する別のグリシンと結合させ、そして上述のとおりのTFAを用いて生成物
を脱保護し、樹脂部分を混合して、27タイプの樹脂ビーズを含むライブラリー
をつくる。各タイプが、スクシノイルリンカーを介して支持体に結合した単一オ
キサゾロン由来トリペプチド類似体を含み、このリンカーは、そのN−末端がス
クシノイル化されている「液相」ライブラリーをつくるために加酸分解で役立ち
うる。
この一般反応式の多くの修飾は、別の研究(「一頭部一ペプチド類似体合成」
)についての加酸分解により支持体からリガンド候補をまっすぐ前に脱離できる
はずのベンズヒドリル支持体を用いてC−N結合を介して、リガンド候補の直接
付着を含むと考えられる。
構造指向法でモジュール方式に関連すべきこられの化学の可能性は、構造モチ
ーフを囲む構造要素をモジュール方式に変化させることにより、指向性コンビナ
トリアルライブラリーを生成する特異的な能力を供与する。これにより、以下の
アリール複素環−脂環式アミンの構造テーマ(主題)を囲む16の分子のマトリ
ックスの発生について具体化される。
テーマ:
これは、2−フェニルおよび2−(2−ナフチル)−5−オキサゾロン類(グ
リシンのリチウム塩をアリール酸塩化物と反応させ、続いて0℃でクロロギ酸エ
チルで環化することによって生成される)を、2−フルフラール、3−フルフラ
ール、2−チオフェナールおよび3−チオフェニルと反応させて、4位で官能化
されたオキサゾロンを生成し、続いて4−(3−アミノプロピルモルホリン)お
よび1−(3−アミノプロピル)−2−ピピコリンの開環付加を行うことにより
、示された付加物を形成することにより行われる。これは、各バイアルが以下の
ような1つの純粋な最終化合物を含むような個々のバイアルで反応を行うことに
より完成される:
1)乾燥ベンゼン中に溶かした等モル量のオキサゾロンおよびアルデヒド(2
5ml/gmの反応物)を15分間75℃に加熱し、2)反応混合物を10℃に
冷却し、そしてアミンを攪拌しながら滴下し、3)混合物を20分間75℃に再
加熱し、そして4)真空中で溶媒を除去して粗固体生成物を得た。
4.7 オキサゾロン由来グリコペプチド擬似物の設計および合成
オキサゾロン由来構造を組み込んだ多種の糖および多糖の構造モチーフが含ま
れることを意図するが、以下には限定されない。
(1)上述された設計および合成技術を用い、糖および多糖レセプターに結合
する能力のある天然ペプチドリガンドを擬態するオキサゾロン由来構造。
(2)単糖類、オリゴ糖類または多糖類を互いに、またはリガンドアクセプタ
ーを認識する能力のある他の構造と結合するオキサゾロン由来構造。
上述の糖の合成のための豊富な化学的方法が有用である。炭水化物化学の技術
には、選択的に保護された官能基を有する種々の大きさの膨大な糖について記載
されており、これはオキサゾロンおよび所望の生成物を生成する関連種との選択
的反応が記載されている(Comprehensive Organic Ch emistry
,サー デレック バートン,編集委員長、5巻、イー.ハスラ
ム編、687−815頁;エイ.ストレイトバイザー,シー.エッチ.ハースコ
ック、イー.コソワーのIntroduction to Organic C hemistry
,第4版、MacMillan Publ.Co.,ニューヨ
ーク、903−949頁参照)。
例えば、以下に示すブリグルの無水物は、よく知られた実験条件でアンヒンダ
ード(阻害されていない)アルコールと反応させて、βグルコシドを生成しうる
。2位以外の全ての位置で保護された糖が得られ、適切な不活性有機溶媒中で、
BF3のような酸触媒を使用し、例えばルイス酸(例えばEtOAC、ジオキサ
ン等)の不存在下または存在下で、上述の反応条件を用いて適当なオキサゾロン
を開環する。
同様に、D−グルコースとベンズアルデヒドとの反応から得られる炭水化物は
、炭水化物化学の業界でよく知られた技術を用いて、酸の存在下でアルコールを
用いた連続的な反応、およびトリチル化(tritylation)により1位
および6位で容易に保護されうる。保護されていない3位を有する糖が得られ、
上述のとおり選択的に使用して、所望のオキサゾロン構造を誘導することができ
る。
適切なオキサゾロンは、反応性アミノ置換基、すなわち、アミノ糖またはポリ
アミノ糖を含む炭水化物によっても開環されうる。例えば、ムラミン酸との反応
が以下のとおり進行すると予測される。
1−5当量の希望通りのキサゾロンを有する構造的に興味深い抗アメーバ薬(
ambecide)パロモマイシンを以下に示すように同様に処理し、分岐テト
ラサッカライド スカホールドが形状的に定義された方法でオキサゾロンから誘
導されたペプチド擬似物の構造を支持する一連の新規構造を生成することが予測
される。
(3)グリコシド連結の置換としてのオキサゾロン由来構造の使用。
炭水化物中で1つのヒドロキシル以外の全ての選択的保護をすると、ヒドロキ
シルの選択的酸化でカルボニル誘導体になり、その後この誘導体はメチレンオキ
サゾロンとのアルドール型縮合反応に使用されて、アルケンオキサゾロンを生成
することができる。これは、その後、例えば炭水化物のアノマー性ヒドロキシル
により開環されて、脱保護後新規炭水化物を与える。
4.8 オキサゾロン誘導オリゴヌクレオチド擬似物の設計および合成
ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド合成の技術では、オキサゾロン誘導擬
似物の構築に非常に有用であると予測される、非常に多種の適切に保護されそし
て活性化されたフラノースおよび他の中間体が提供された(Comprehen sive Organic Chemistry
,サー デレック バートン、
編集委員長、5巻、イー.ハスラム編、23−176頁)。
オキサゾロン由来構造を組み込む、非常に多種のヌクレオチドおよびオリゴヌ
クレオチド構造モチーフが含まれるが、以下に限定されるものではない。
(1)天然オリゴヌクレオチド中で発見されたリン酸ジエステル基群の場所に
ペプチド性オキサゾロン誘導リンカーを含有するオリゴヌクレオチドの合成のた
めに、以下のアプローチが有用であると予測される多くの中の1つである。
(2)複合オリゴヌクレオチド誘導ユニットを結合するのにオキサゾロン誘導
基群が使用される構造の合成のために、以下のような攻略法が有用であると予測
される。
実施例
本発明のオキサゾロン誘導体を用いてなされた結果を例示するため、その中の
考察に対して本発明の範囲を限定することを何ら企図することなく以下の実施例
を提供する。全ての部及びパーセントは、特に示さない限り重量部及び重量%で
ある。
実施例1.
オクスフェナシンのエナンチオメトリー純度の特徴づけ
本実施例は、(R)-及び(S)-p-ヒドロキシフェニルグリシンのメチルエステルの
ラセミ混合物を用いて、純粋なキラル異性体アザラクトン(S)-(-)-4-ジフルオロ
メチル-4-ベンジル-2-ビニル-5-オキサゾロン(1)の開環反応を使用して、以下に
示すようにジアステレオマー結合体(conjugates)(2)及び(3)を生成させることを
教示する。
これらのジアステレオマーは、順相のシリカによる標準的HPLCによって分離し
て、出発のp-ヒドロキシフェニルグリシンのエナンチオマー組成物を定量的にア
ッセイすることができ、それらからエステルが生成される。
p-ヒドロキシフェニルグリシン(オクスフェナシン)の(S)-異性体は、炭水化
物の酸化が高脂肪酸利用レベル(例えば、虚血性心疾患に生ずる)によって低下
される場合は、この過程を促進するための有効な治療剤であり、そして、ペニシ
リン、アモキシシリン及びいくつかの他の半合成抗生物質(セファロスポリン類
を含む)を生産する際の重要なキラル中間体でもある。オクスフェナシンはラセ
ミ化しやすく、従って、この実施例に記述されたキラル純度についてのアッセイ
は、有用な開発及び品質管理の手段を表す。
ラセミp-ヒドロキシフェニルグリシンの分割
p-ヒドロキシフェニルグリシンのエステル化
0.3 g(0.2ml)の塩化チオニルを、メタノール中で特徴づけられる4-ヒドロキシ
フェニルグリシンエナンチオマーの立体異性混合物0.4gの攪拌溶液5mlに滴下し
て加え、混合物の温度を氷冷で10℃〜20℃の間に保持した。反応を室温で1時間
進行させた。次に、ロータリーエバポレーターをアスピレーターで減圧し(10 to
rr)、室温でメタノールを除去し、固体を得た。この固体を10mlの脱イオン水に
溶解し、0.88M 水酸化アンモニウムでpHを9.2 に調整した。次に、溶液を10℃で
1時間攪拌し、沈殿した固形のエステル混合物を濾別し、脱イオン水で洗浄し、
そして減圧下に45℃で乾燥し、0.41g の生成物を得た(94%)。
開環付加
上記概説したように調製したエステル化4-ヒドロキシフェニルグリシン0.181g
(0.001mol)を、過酸化物不含の乾燥ジオキサン10ml中に溶解した。この混合物に
0.251g(0.001mol)の(S)-4ジフルオロメチル-4-ベンジル-2-ビニル-5-オキサゾロ
ンを加え、得られる溶液を2時間加熱還流した。ロータリーエバポレーションに
よりジオキサンを除去し、0.43g(100%)の薄黄色の固形アミド残留物を単離した
。
HPLC分析
ジアステレオマーアミドの溶液を、塩化メチレン中に7mg/ml の濃度で調製し
た。この溶液を、20μLループバルブ注入システムを使用する254nm での検出セ
ットを備えたDuPont Model 830液体クロマトグラフ内に注入した。シクロヘキサ
ン/n-ブタノール/イソプロパノール(98/1/1)移動相を用いて 5_Spherisorb
S5Wシリカゲルを詰めたステンレススチールのHPLCカラム(25cm×0.4cm)上で、流
速0.9ml/分で試料をクロマトグラフした。次に、2種類の純粋なエナンチオマー
を種々の比率で含む一連の合成混合物を用いて作成された検量線を使用して、エ
ナンチオマーアミド結合体を定量した。純粋なL異性体はSchweizerhall Inc.か
ら購入した。純粋なD異性体は、MTM Research Chemicals/Lancaster Synthesis
Inc.から得た、市販の入手可能なD,L ラセミ化合物から、Clark,Phillips and
Steer(J.Chem.Soc.,Perkins Trans.I,475[1976])の方法によって調製した。
(S)-4-ジフルオロメチル 4- ベンジル-2- ビニル-5- オキサゾロン
5.43g(0.05mol)のクロロギ酸エチルを、75mlの乾燥アセトン中13.46g(0.05mol
)のN-アクリロイル(S)-2-ジフルオロメチルフェニルアラニンに、室温で、攪拌
しながら加えた。次に、7.0ml(0.05mol)のトリエチルアミンを10分間以上かけて
滴下して加え、ガスの放出がなくなるまで混合物を室温で攪拌した(1.5 時間)
。トリエチルアミン塩酸塩を濾過により除去し、ケーキを25mlのアセトンでスラ
リー状にし、再濾過した。合わせた濾液をロータリーエバポレーターで50mlに濃
縮し、再濾過し、-30 ℃に冷却し、結晶化した生成物を濾過により回収し、そし
て真空中(in vacuo)で乾燥して10.05g(80%)の(S)-4-ジフルオロメチル-4 ベ
ンジル-2- ビニルアズラクトンを得た。NMR(CDCl3); CH2=CH- 化学シフト、6ppm
領域における分裂パターン、及び構造の解析に役立つ積分比。FTIR(mull)1820cm-1
に強いアズラクトンのCOバンド。
N-アクリロイル-(S)-2-ジフルオロメチルフェニルアラニンの合成
Kolb and Barth(Liebigs Ann.Chem.1668(1983))に記載された方法を使用して
調製した21.5g(0.1mol)の(S)-2-ジフルオロメチルフェニルアラニンを、水100ml
中8.0g(0.2mol)の水酸化ナトリウム溶液に攪拌しながら加え、完全に溶解され
るまでこの温度で攪拌した。次に、9.05g(0.1mol)の塩化アクリロイルを攪拌し
ながら滴下して加え、外部冷却により10-15 ℃の温度に保持した。添加が完了し
た後、攪拌を30分続けた。この溶液に、10.3ml(0.125mol)の濃塩酸を10分間以上
かけて加え、15℃に温度を保持した。添加が完了した後、その反応混合物をさら
に30分攪拌し、0℃に冷却し、そして固形の生成物を濾過により回収し、氷水で
よく洗浄し、ラバーダムでしっかりと押しつけた。湿ったケーキをエタノール/
水から再結晶化し、18.8g(70%)のN-アクリロイル-(S)-2-ジフルオロメチルフェ
ニルアラニンを生じた。NMR(CDCl3):化学シフト、CH2=CH- 分裂パターン、及び
構造解析に役立つ積分比。
実施例2.
アミノプロピルシリカを有する結合体のキラルクロマトグラフィーによる固定
相開環形成の調製
スターラー、加熱浴、還流冷却器及びディーンスターク管(Dean-Starkトラッ
プ)を備えた三ツ口フラスコ内において、100ml のベンゼン中で5.0gのアミノプ
ロピル−官能化シリカをスラリー化した。混合物を加熱還流し、水を共沸除去し
た。3.69g(0.01mol)の(S)-4-エチル,4-ベンジル-2-(3',5'-ジニトロフェニル)-
5-オキサゾロンを加え、混合物を3時間加熱還流した。続いて混合物を冷却し、
シリカをブッフナーロートで回収し、50mlのベンゼンで洗浄した。湿ったケーキ
を100ml メタノール中に再度スラリー化し、全部で4回再濾過した。得られた生
成物を減圧オーブンセット中で60℃で30秒間乾燥し、4.87g の官能化シリカを得
た。結合相を、メタノールからステンレススチールのHPLCカラム(25cm ×0.46cm
)中に詰め、うまく使用して、標準条件で一連のマンデル酸誘導体を分離した。(
S)-4-エチル-4-ベンジル-2-(3',5'-ジニトロフェニル)-5-オキサゾロンの合成
1.09g(0.01mol)のクロロギ酸エチルを、75mlの乾燥アセトン中3.87g(0.01mol)
のN-3,5-ジニトロベンゾイル(S)-2-エチルフェニルアラニンに、室温で攪拌しな
がら加えた。1.4ml(0.01mol)のトリエチルアミンを10分間以上かけて滴下して加
え、ガスの放出がなくなるまで混合物を室温で攪拌した(1.5 時間)。トリエチ
ルアミン塩酸塩を濾過により除去し、ケーキを25mlのアセトンでスラリー化し、
再濾過した。合わせた濾液をロータリーエバポレーターで50mlに濃縮し、再濾過
し、30℃に冷却し、結晶化した生成物を濾過により回収し、そして真空中で乾燥
して2.88g(78%)の(S)-4-エチル-4-ベンジル-2-(3',5'-ジニトロフェニル)アズ
ラクトンを生じた。NMR(CDCl3); 構造解析に役立つ周波数及び積分比。FTIR: 約
1820cm-1で強いアズラクトンのバンド。
N-3,5-ジニトロベンゾイル-(S)-2-エチルフェニルアラニン
Zydowsky,de Lara and Spanton(55 J.Org.Chem.5437(1990))に記載された方
法を使用して(S)-フェニルアラニン及びヨウ化エチルから調製した19.3g(0.1mol
)の(S)-2-エチルフェニルアラニンを、水100ml中8g(0.2mol)の水酸化ナトリ
ウム溶液に攪拌しながら加え、約10℃に冷却した。次に、その混合物を、完全な
溶解がされるまでこの温度で攪拌した。次に、23.1g(0.1mol)の3,5-ジニトロベ
ンゾイルクロリドを攪拌しながら滴下して加え、外部冷却により10-15 ℃の温度
を保持した。この添加が完了した後、攪拌を30分続けた。この溶液に、10.3ml(1
.25mol)の濃塩酸を10分間以上かけて添加し、再度15℃に温度を保持した。この
添加中に白色の固体が生成された。添加が完了した後、反応混合物をさらに30分
攪拌し、0℃に冷却し、そして白色の固体を濾過により回収し、氷水でよく洗浄
し、ラバーダムでしっかりと押しつけた。湿ったケーキをエタノール/水から再
結晶化し、減圧オーブン中で60℃で30秒乾燥し、27.1g(70%)のN-3,5-ジニトロ
ベンゾイル-(S)-2エチルフェニルアラニンを得た。
実施例3.
アミノプロピル−官能化シリカ製剤の合成
Teflonのパドルスターラー、温度計、及びクライゼン(claisen)アダプターを
介してディーンスタークトラップでセットされた垂直な還流器を備えた三ツ口の
丸底フラスコ(1L)において、500ml のトルエンに200gの0.15M Spherosil(IB
F Corporation)を加えた。スラリーを攪拌し、浴温を140 ℃に加熱し、蒸留によ
って水を共沸除去し、ディーンスタークトラップ中に回収した。トルエンの損失
分を測定し、乾燥トルエンを添加することにより補った。125.0gの3-アミノプロ
ピルトリメトキシシランを漏斗を通して慎重に添加し、混合物を攪拌し、そして
140 ℃にセットした浴温で3時間還流した。反応混合物を約40℃に冷却し、得ら
れた官能化シリカをブッフナーロートで回収した。次に、シリカを50mlのトルエ
ンで2回洗浄し、吸引して乾燥し、250ml トルエンに再スラリー化し、再濾過し
、250mlメタノールに再スラリー化し、そして全部で3回濾過した。メタノール
で得られた湿ったケーキを、減圧オーブン中で60℃で30秒乾燥し、196.4gのアミ
ノプロピルシリカを得た。
実施例4.
キラルなクロマトグラフィー固相を生成するための、アミノメルカプト官能化
シリカ及び(S)-4エチル-4-ベンジル-2-アクリロイル-5-オキサゾロンのマイケル
付加生成物を用いた(S)-1-(1ナフチル)エチルアミンの開環結合
(S)-(1)(1ナフチル)エチルアミンとの結合体の形成
スターラー、加熱浴、還流冷却器及びディーンスタークトラップを備えた三ツ
口フラスコ中において、100mlのベンゼン中に10.0g の(S)-4-エチル-4-ベンジル
-2-(エチルチオプロピルシリカ)-5-オキサゾロンをスラリー化した。混合物を加
熱還流し、水を共沸除去した。3.42g(0.02mol)の(S)-(-)-(1ナフチル)エチルア
ミンを添加し、混合物を6時間加熱還流した。次に、混合物を冷却し、ブッフナ
ーフィルターでシリカを回収し、100ml のベンゼンで洗浄した。湿ったケーキを
100ml のメタノール中に再スラリー化し、全部で4回再濾過した。生成物を、減
圧オーブン中で60℃で30秒乾燥し、9.72g の官能化シリカを得た。結合相を、メ
タノールからステンレススチールHPLCカラム(25cm ×0.46cm)中に詰め、うまく
使用して、Regis Chemical,Morton Grove,III.60053により配布されたクロマ
トグラフィーカタログに記載の標準条件を用いて一連のpi-アクセプターアミン
誘導体を分離した(例えば、ラセミ2-アミノ-1-ブタノール+αメチルベンジ
ルアミンの3,5-ジニトロベンゾイル誘導体)。
メルカプトプロピルシリカのマイケル(Michael)付加
Teflonのパドルスターラー、温度計、及びクライゼンアダプターを介してディ
ーンスタークトラップでセットされた垂直還流器を備えた三ツ口の丸底フラスコ
(500ml)において、200ml のベンゼンに20g のメルカプトプロピルシリカを加え
た。スラリーを攪拌し、140 ℃の浴温に加熱し、蒸留によって水を共沸除去し、
ディーンスタークトラップ中に回収した。ベンゼン容量の損失を測定し、乾燥ベ
ンゼンを添加することにより補った。6.88g(0.03mol)の(S)-4-エチル-4-ベンジ
ル-2-ビニル-5-オキサゾロンを添加し、混合物を攪拌し、そして16時間還流した
。次いで、反応混合物を約40℃に冷却した。得られる官能化シリカをブッフナー
ロートで回収し、50mlのベンゼンで洗浄し、吸引して乾燥し、100ml のメタノー
ルに再スラリー化し、そして全部で4回濾過した。メタノールで濡れた得られた
固形物を、減圧オーブン中で60℃で30秒乾燥し、19.45gのオキサゾロン-官能化
シリカを生じた。
(S)-4-エチル-4'-ベンジル-2-アクリロイル-5-オキサゾロンの合成
10.9g(0.1mol)のクロロギ酸エチルを、250ml の乾燥アセトン中24.7g(0.1mol)
のN-アクリロイル-(S)-2-エチルフェニルアラニンに、室温で、攪拌しながら加
えた。14ml(0.1mol)のトリエチルアミンを10分間以上かけて滴下して加え、ガス
の放出がなくなるまで混合物を室温で攪拌した(1.5 時間)。トリエチルアミン
塩酸塩を濾過により除去し、ケーキを50mlのアセトンでスラリー化し、再濾過し
た。合わせた濾液をロータリーエバポレーターで150mlに濃縮し、再濾過し、30
℃に冷却し、結晶化した生成物を濾過により回収し、そして真空中で乾燥して19
.5g(85%)の(S)-4 エチル-4-ベンジル-2-ビニル-5-アズラクトンを得た。NMR 9C
DCl): 化学シフト,6ppm領域におけるCH2=CH- 分裂パターン+構造解析に役立つ
積分比。FTIR + (mull): 1820cm-1領域において強いアズラクトンのCOバンド。
メルカプトプロピル−官能化シリカの調製
テフロンの羽根付きスターラー(paddle stirrer)、温度計、クライゼンアダプ
ターを介してディーン・スターク管(Dean Stark trap)を設置した垂直な冷却器
とを備えた1Lの三ツ口丸底フラスコ中に、500 mLのトルエンを入れ、ここに20
0gの10u(80A)エクシルシリカ(Exsil silica,Exmere Ltd.)を添加した。スラリ
ーを攪拌し、浴温140 ℃で加熱して蒸留によって水を共沸混合して除去し、ディ
ーン・スターク管で集めた。トルエン容量の損失を測定し、乾燥トルエンを加え
て補った。110.0gの3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを注意深くロート
を通して添加し、混合物を攪拌し、浴温を140 ℃にセットして3時間還流した。
その後、反応混合物を約40℃に冷却した。生じた官能化シリカをブッフナーフィ
ルター上で集め、50mLのトルエンで2回洗い、絞って乾燥し、250 mLのトルエン
中で再度スラリーにし、再濾過した。これを再び濾過し、250 mLのメタノール中
で再度スラリーとし、合計3回目の濾過を行った。生じたメタノール湿潤ケーキ
を60℃にセットした減圧乾燥機中で30秒間(30")乾燥し、196.4gのメルカプトプ
ロピルシリカを得た。
実施例 5
公知のヒトエラスターゼ阻害剤の擬似物の合成
本実施例は、公知のN-トリフロロアセチルジペプチドアナライド(analide)阻
害剤の構造に基づくヒトエラスターゼのための拮抗阻害剤の合成を教示する−例
えば、107 Eur.J.Biochem. 423(1980); 162 J.Mol.Biol.645(1982)および
その中で引用された参考文献を参照せよ。
N-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシル-(S)-2- エチルフェニルアラ
ニルP-イソプロピルアナライドの合成
0.135g(0.001モル)の4-イソプロピルアナリン(analine)を最小量のアセトニト
リルなどの適当な溶媒に溶解し、最小量の同じ溶媒に溶解した0.384g(0.001モル
)の2-(N-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシル)-(S)-4-メチル-4-
ベンジル-5- オキサゾロンを、攪拌された溶液に冷却しながらゆっくりと添加し
た。添加に続いて、反応混合物を室温に戻し、室温で36時間撹拌した。その後、
溶媒を真空中で除去し、ヒトエラスターゼの拮抗阻害剤として有用な固体のN-ト
リフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシル-(S)-2- エチルフェニルアラニルア
ナライドを本質的に定量的に得た。
2-(N- トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシル)-(S)-4-メチル-4- ベン
ジル-5- オキサゾロン
4.1g(0.01モル)のN-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシル-(S)-2- メ
チルフェニルアラニンリチウム塩を、スターラー、加熱用バス、クライゼンヘッ
ド(claisen head)、下降冷却器、温度計および滴下ロートを設置した三ツ口丸底
フラスコ中に入れた50mLの乾燥ベンゼンなどの適当な溶媒中でスラリーとした。
この系を65℃に加熱し、10mLの乾燥ベンゼンに溶解した1.09g(0.01モル)のクロ
ロギ酸エチルを10分以上かけて添加した。添加は激しいガスの放出と、ベンゼン
/エタノール共沸物の蒸留を伴った。添加の終了後、30分間加熱を続けた。その
後、加熱浴を除去してスラリーをさらに15分間攪拌した。沈殿した塩化リチウム
を注意深く濾過して除き、ケーキをベンゼンで砕いて再濾過した。濾液を合わせ
てポット温度40℃でストリッピングし、3.50g(90%)の粗オキサゾロンを得た。
生成物をアセトンから-30 ℃で再結晶して精製した。FTIR(mull): 1820cm-1
の領域に強いアズラクトンのCOバンド。
N-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシル-(S)-2- メチルフェニルアラ
ニンの合成
2.23g(0.01モル)の2-トリフルオロアセチル-(S)-4- メチル-4- イソブチル-5-
オキサゾロンを攪拌しながら最小量のアセトニトリルなどの適当な溶媒に溶解
し、最小量の同じ溶媒に溶解した1.85g(0.01モル)の(S)-2-メチルフェニルアラ
ニンのリチウム塩を、ゆっくりと、冷却しながら加えた。この塩を、(S)-2-メチ
ルフェニルアラニン((S)- フェニルアラニンとヨウ化メチルから、55J.Org.Ch em
.5437(1990)に記載のZydoski らの方法を用いて製造された)をエタノールな
どの適当な溶媒に溶かした1当量のLiOHで処理して得、ついで溶媒を真空中で溶
媒を留去して得た。リチウム塩を加えた後、反応混合物を室温まで温め、室温で
36時間攪拌した。その後、溶媒を真空中で留去し、固体のN-トリフルオロアセチ
ル-(S)-2- メチルロイシル-(S)-2- メチルフェニルアラニンリチウム塩をほぼ定
量的な収率で得た。
2-トリフルオロアセチル-(S)-4- メチル-4- イソプロピル-5- オキサゾロンの
合成
12.05g(0.05モル)のN-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシンを室温で
100 mLの乾燥アセトン中で攪拌し、5.43g(0.05モル)のクロロギ酸エチルを添加
した。7.0mL(0.05モル)のトリエチルアミンを10分間以上かけて滴下し、この混
合物をガスの放出が終了するまで、室温で攪拌した(1.5時間)。トリエチルアミ
ン塩酸塩を濾別し、ケーキを25mLのアセトンでスラリーにし、再濾過した。濾液
を合わせてロータリーエバポレータで75mLまで濃縮し、再濾過し、-30 ℃まで冷
却した。結晶化した生成物を濾過して集め、真空中で乾燥して10.6gの(S)-4- メ
チル-4- イソブチル-2- トリフルオロアセチル-5- オキサゾロンを得た(88 %)
。FTIR(mull): 1820cm-1の領域に強いアズラクトンCOバンド。
N-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシンの合成
D,L-ロイシンメチルエステル塩酸塩からKolbとBarth の方法(Liebig's Ann.C hem.
at 1668(1983))を用いて調製された(S)-2-メチルロイシン14.5g(0.1 モー
ル)を、20mLの水に8g(0.2モル)のNaOHを溶解させた溶液に攪拌しながら添加し、
10℃に冷却した。可溶化が完了するまでこの混合物をこの温度で攪拌した。その
後、13.25g(0.1モル)のトリフルオロアセチルクロライドを攪拌しながら滴下し
、外部冷却により温度を10℃に保った。添加終了後、攪拌を30分間続けた。この
溶液に、10分以上かけて、10.3 mL(0.125 モル)の濃塩を加え、温度を再び15℃
に保った。添加の間に白色の固体が生成した。添加の完了後、反応混合物をさら
に30分間攪拌し、0℃に冷却した。白色固体を濾過して集め、氷水で良く洗い、
ゴム製のダム(dam)でしっかりと押さえつけた。生じた湿潤ケーキをエタノール
/水から再結晶し、真空中で乾燥して17.4g のN-トリフルオロアセチル-(S)-2-
メチルロイシンを得た(72%)。N-トリフルオロアセチル-(S)-2- メチルロイシン
は、次の工程で直接、配列(sequence)の中で使用される(上述)。
実施例 6
ペプスタチン擬似物の合成
本実施例は、公知のアスパルチルプロテアーゼ(aspartyl protease)阻害剤で
あり、構造が知られているペプスタチンのオキサゾロン由来擬似物の合成を教示
する:この擬似物は、ペプスタチンによって阻害されるプロテアーゼについての
拮抗阻害剤として有用である。
N-イソバレリル-(S)-2- メチルバレリル-(3S,4S)-スタチル-(S)-2- メチル- アラニル-(3S,4S)スタチンの合成
以下に述べるように調製したBoc-保護リチウム塩を、酸の形に変換すると同時
に、標準的な脱保護条件の下で酸処理して脱保護した。5.17g(0.01モル)のN-イ
ソバレリル(S)-2-メチル誘導体を100mL の乾燥アセトニトリルに添加して室温に
て攪拌し、3.17g(0.01モル)のバリル-(S)-4- メチル-4- イソプロピル-5- オキ
サゾロンを冷却しながら添加した。添加が終了した後、この混合物を加熱還流し
、1時間還流した。その後、溶媒を真空中でストリッピングし、ペプスタチンで
阻害されるアルパルチルプロテアーゼのペプスタチン擬似物の拮抗阻害剤として
有用な、N-イソバレリル-(S)-2- メチルバリル-(3S,4S)-スタチル-(S)-2- メチ
ルアラニル-(3S,4S)スタチンを定量的な収量で得た(J.Med.Chem.27(1980)お
よびその中で引用された参考文献を参照せよ)。NMR(d6DMSO): 化学シフト、
積分値および構造の解析のためのD2O 交換実験。
N-Boc-(3S,4S)- スタチル-(S)-2- メチルアラニル-(3S,4S)-スタチンリチウ ム塩
以下のようにして調製された6.84g(0.02モル)のBoc-保護オキサゾロンを室温
で100mL 乾燥アセトニトリル中に攪拌し、以下に概要を述べた方法を用いてスタ
チンから調製された3.62g(0.02モル)の(3S,4S)- スタチンのリチウム塩を冷却
しながら添加した。添加終了後、混合物を加熱還流し、1時間還流した。その後
溶媒を真空中でストリッピングし、N-Boc-(3S,4S)- スタチル-(S)-2- メチルア
ラニル -(3S,4S)- スタチンリチウム塩を定量的な収量で得た。
Boc-保護(3S,4S)- スタチン、[(3S,4S)-4-アミノ3-ヒドロキシ-6- メチル
ヘプタン酸]を、市販のアミノ酸から製造し、標準的なペプチド合成法を用いて
2-メチルアラニンと結合させ、以下に記載の方法を用いてリチウム塩に変換した
。この誘導体18.30g(0.05モル)を150 mLの乾燥アセトニトリル中で室温で攪拌し
、5.45g(0.05モル)のクロロギ酸エチルおよび7.0 mL(0.05 モル)のトリエチルア
ミンを順番に攪拌しながら加えた。そして、この混合物をガス放出が終了するま
で攪拌した(1.5時間)。その後、この混合物をロータリーエバポレータでストリ
ッピングして乾固し、残渣を100 mLのベンゼン中で砕いて、濾過により塩を除去
した。濾液をロータリーエバポレータでストリッピングし、16.4g(96%)の粗2-
Boc-(3S,4S)スタチル-4,4-ジメチル-5- オキサゾロンを得た。分析上純粋な物
質をアセトンから-30℃で再結晶して得た。NMR(CDCl3)-化学シフトおよび構
造解析に有用な分割(splitting)パターン。FTIR(mull): 1820cm-1の領域に
強いアズラクトンのCOバンド。N-イソバレリル-(S)-2- メチルバリル-(S)-4- メチル-4- イソプロピル-5- オキ サゾロン
以下のようにして調製した2-イソバレリル-(S)-2- メチルバリル-(S)-2- メチ
ルバリンリチウム塩13.46g(0.04モル)を、150 mLの乾燥アセトニトリル中で、室
温にて攪拌した。その後、4.36g(0.04モル)のクロロギ酸エチルと5.6 mL(0.04
モル)のトリエチルアミンを順番に攪拌しながら添加し、この混合物を室温でガ
ス放出が終わるまで攪拌した(1.5時間)。その後、この混合物をロータリーエバ
ポレーターでストリッピングして乾固し、残渣を100 mLのベンゼン中で砕いて、
濾過して塩を除き、濾液を再度ロータリーエバポレーターでストリッピングし、
12g(96%)の粗N-イソバレリル-(S)-2- メチルバリル-(S)-4- メチル-4- イソプ
ロピル-5- オキサゾロンを得た。分析上純粋な物質を、アセトンから-30 ℃で
再結晶して得た。NMR(CDCl3):構造の解析に有用な化学シフトおよび分割(spl
itting)パターン。FTIR(mull): 1820cm-1の領域に強いアズラクトンCOバ
ンド。N-イソバレリル-(S)-2- メチルバリル-(S)-2- メチルバリンリチウム塩
6.85g(0.05モル)の(S)-2-メチルバリンリチウム塩を、以下に示す方法によっ
て(S)-メチルバリンから調製し、150 mLの乾燥アセトニトリル中で室温にて攪拌
した。以下のように調製した9.93g(0.05モル)のオキサゾロンを、冷却しながら
少しずつ加えた。添加終了後、この混合物を加熱還流し、1時間還流した。その
後、溶媒を真空中でストリッピングし、N-イソバレリル-(S)-2- メチルバリル-(
S)-2- メチルバリンリチウム塩を98%の収率で得た。この塩は、次の工程で直接
使用された。2-イソバレリル-(S)-4- メチル-4- イソプロピル-5- オキサゾロン
2-(S)-メチルバリンを(S)-バリンからKolbe とBarth に記載された方法(Liebi
g's Ann.Chem.at 1668(1983))によって調製し、標準的なアシル化法を用いて
塩化イソバレリルでアシル化し、N-イソバレリル-(S)- メチルバリンを製造した
。ついで、N-イソバレリル-(S)-2- メチルバリンを、エタノールに溶解した1当
量のLiOHで処理し、溶媒を真空中で除去してN-イソバレリル-(S)- メチルバリン
リチウム塩を得た。このリチウム塩22.3g(0.1 モル)を150 mLの乾燥アセトニト
リル中で室温にて攪拌し、10.9g(0.01モル)のクロロギ酸エチルおよび14mL(0.1
モル)のトリエチルアミンを攪拌しながら順番に添加した。この混合物をガスの
放出が終了するまで、室温で攪拌した(1.5時間)。その後、この混合物をロータ
リーエバポレーターでストリッピングして乾固し、残渣を150 mLのベンゼン中で
砕いて塩を濾別し、濾液を再度ロータリーエバポレーターでストリッピングして
、17.4g の粗2-イソバレリル-(S)-4- メチル-4- イソプロピル-5- オキサゾロン
を得た(85%)。分析上純粋な物質を、アセトンから-30 ℃で再結晶して得た。F
TIR(mull): 1820cm-1の領域に強いアズラクトンのCOバンド。NMR(CDCl3
):構造の解析に有用な化学シフトおよび分割(splitting)パターン。
実施例 7
HIVプロテアーゼの擬似阻害剤の合成
本実施例は、HIVプロテアーゼの拮抗阻害剤の合成を、キラルなアズラクト
ン残基を公知の基質である、Ac-Ser-Leu-Asn-Phe-Pro-Ile-Val-OMeの切断されや
すい位置中の戦略的に重要な位置への挿入に基づいて教示する。33 J.Med.Che m.1285(1990)
およびその中で引用される参考文献を参照せよ。
標準的なペプチド合成技術を用いて調製されたHN-(L)-Pro-(L)-Ile-(L)-ValOM
e の0.341g(1ミリモル)を最小量のDMFに溶解した。この混合物に、0.229g
(1ミリモル)の2-アクリロイル-(S)-4- エチル-4- ベンジル-5- オキサゾロン
を上記のように添加した。この混合物を室温にて、マイケル付加反応が完了する
まで攪拌した(TLCでモニターした)。その後、Boc-保護D-アミノ酸から標準的な
ペプチド保護およびカップリング化学(J.Med.Chem.1285(1990)およびその中
で引用された参考文献を参照せよ)を用いて調製されたMeO-D-Ser(Bzl)-D-Leu-D-
Asn-NH2の0.393g(1ミリモル)を添加し、この混合物を60℃に加熱してこの温
度でさらに12時間攪拌した。その後、DMFを高真空下に留去し、残渣を標準的
なC18 逆相クロマグラフィーで精製し、保護されたペプチドを得た。ついで側鎖
の保護基を標準的なペプチド脱保護技術を用いて除去し、HIVプロテアーゼの
拮抗阻害剤として有用な生成物であるMeO-D-Ser-D-Leu-D-Asn-NH-CO-(S)-Phe-[M
e]-NH-COCH2-CH2-L-N-Pro-L-Ile-L-Val-OMeを得た。
実施例 8
HIVプロテアーゼ擬似阻害剤の合成
本実施例は、他のHIVプロテアーゼの拮抗阻害剤の合成を教示する。この場
合において、フェニル置換基はウラシル誘導体と置換される。
以下に示す方法で調製されたウラシル誘導体0.82g(1ミリモル)を、標準的
なペプチド結合法を用いて、遊離プロリンのカルボン酸基を介して0.244g(1ミ
リモル)のIle-Val-OMe に結合させた。この生成物を、標準的なC18 逆相クロマ
グラフィーによって精製し、保護されたペプチドを得た。その後、Bzl 側鎖保護
基を上述した標準的なペプチド脱保護技術を用いて除去し、HIVプロテアーゼ
の拮抗阻害剤として有用な、上に示した生成物を得た。
0.47g(1ミリモル)の(S)-(S)-プロリンビニルアズラクトンのマイケル付加
物(adduct)を最小量のDMFに溶解した。標準的なペプチド合成技術(33 J.Med .Chem.1285(1990)
およびその中で引用された参考文献を参照せよ)によりBoc
保護されたアミノ酸から調製されたMeO-D-Ser-(Bzl)-D-Leu-D-Asn-NH2の0.488g
(1ミリモル)を、その後添加し、この混合物を60℃に加熱してこの温度で12時
間攪拌した。その後、DMFを高真空下に留去し、0.95g の粗生成物を得た。
2.33g(5ミリモル)のL-プロリンを最小量のDMFに溶解し、1.75g(5ミリモ
ル)のラセミ体のウラシル官能化アズラクトンを添加し、この混合物を室温にて
マイケル付加反応が完了するまで攪拌した(TLC でモニターした)。その後、D
MFを高真空下に留去して、ジアステレオマーの混合物を標準的な順相クロマグ
ラフィーで精製し、所望の(S)-(S)-マイケル付加物を得た。
3.69g(0.01モル)のラセミ体のN-アクリロイル-2- メチル(3’メチルウラシル)
-5'- アラニンを50mLの乾燥アセトン中で攪拌し、1.09g(0.01モル)のクロロギ酸
エチルを添加した。1.4mL(0.01モル)のトリエチルアミンを10分以上かけて滴下
した。この混合物を室温にてガスの放出が終了するまで攪拌した(1.5時間)。ト
リエチルアミンの塩酸塩を濾別し、ケーキを20mLのアセトン中でスラリーにし、
再濾過した。濾液を合わせてロータリーエバポレーターで50mLに濃縮し、30℃に
冷却して結晶化した生成物を濾過によって集め、真空中で乾燥して、ラセミ体の
4-(2- メチル-5'-[3’メチルウラシル])4-メチル-2- ビニルアズラクトンを得た
。
17.15g(0.05 モル)のラセミ体の2-(3'-メチルウラシル)5'-メチルアラニンの
エチルエステルを、攪拌しながら4.0g(0.1モル)の水酸化ナトリウムを溶解した1
00 mLの水に添加した。この混合物を溶解が完了するまで攪拌し、その後10℃に
冷却した。重合阻害剤として0.05g の2,6-ジ-t- ブチル-p- クレゾールを添加し
、ついで4.52g(0.05モル)の塩化アクリロイルを攪拌しながら滴下し、外部冷却
により温度を10〜15℃に保った。その後、この溶液に10分以上かけて、5.7mL(0.
0625モル)の濃塩酸を加え、再び温度を15℃に保持した。添加終了後、この反応
混合物をさらに30分間攪拌し、0℃に冷却した。固体の生成物を濾過して集め、
氷水でよく洗ってゴム製のダムでしっかりと押さえつけた。生じた湿潤ケーキを
エタノール/水から再結晶し、6N HClで加水分解して12.91gのラセミ体の
N-アクリロイル-(3'- メチルウラシル)-5'- メチルアラニンを得た(70%)。
アラニンのエチルエステルとベンズアルデヒドからO'Donnell らの方法(23 Te trahedron Lett
.4259(1982))に従って調製したシッフ塩基20.5g(0.1モル)と、
最小量の塩化メチレンに溶解した17.4g(0.1 モル)の3-メチル-5- クロロメチル
ウラシルとを、微粉末の水酸化カリウムと触媒量(0.01 当量)の同じ溶媒に溶か
した相転移試薬C6H5CH2NEt3Cl との混合物に、0℃で攪拌しながら滴下した。添
加に続いて、この混合物を10℃で出発物質が消費されるまで攪拌した(約2時間
)。0℃で3時間、1N HCl/Et2O を用いた粗生成物のおだやかな酸加水分
解によって水性の後処理(aqueous workup)を行い、29.5g のラセミ体のαメチル
アミノ酸エステルを得た(86%)。
3-メチル-5- クロロメチルウラシルの合成
A.74.08g(1モル)のN-メチル尿素と216.2g(1モル)のジエチルエトキシメ
チレンマロネートを一緒に122 ℃で24時間、ついで170 ℃で12時間加熱した。酢
酸エチルから再結晶した後、3-メチルウラシル-5- カルボン酸エチルエステルを
35% の収率で得た。
B.30gの3-メチルウラシル-5- カルボン酸エチルエステルを10% NaOHで鹸化し
、遊離酸を、標準的な検査及び酢酸エチルの再結晶の後、92% の収率で得た。
C.20gの3-メチルウラシル-5- カルボン酸を260 ℃で脱炭酸し、定量的な収率
で3-メチルウラシルを得た。
D.3-メチルウラシル-5- カルボン酸を、標準的な条件を用いてHClとCH2O
で処理し、標準的な後処理及び酢酸エチルの再結晶の後、3-メチル-5- クロロメ
チルウラシルを52% の収率で得た。
実施例 9
キラルな架橋結合をしている結合体モノマーの調製
上記の実施例3.3.3 で調製した(S)-4-エチル,4- ベンジル-2- ビニル5-オキサ
ゾロン4.59g(0.02モル)を、氷浴中で0℃に冷却した75mLの塩化メチレン中に1.1
4g(0.02モル)のアリルアミンを溶かして攪拌した溶液に少しずつ添加した。15分
後、この混合物を室温まで温め、その後室温で4時間攪拌した。この溶媒をロー
タリーエバポレーターを用いて、アスピレータで減圧してストリッピングし、5.
7gの粗モノマーを得て、NMRおよびFTIR解析で同定した。生成物を酢酸エ
チルから再結晶し、キラル分離のための架橋結合された(croddlinked)キラルな
ゲル、ビーズ、膜、および複合材料を造るために有用な、純粋な白色の結晶製モ
ノマーを得た。
実施例 10
セロトニン- 結合受容体の単離および精製に有用な結合体の合成
28.6g(0.1モル)のシーブ乾燥(sieve-dried)オクタデカンチオールと13.9g(0.1
モル)の2-ビニル-4,4'-ジメチルアズラクトンを、マグネチックスターラーとド
ライライト(Drierite)を充填した乾燥管とを配置した丸底フラスコ中で混合し、
氷浴中で冷却した。1時間後、この混合物を室温に戻し、4日間室温で保持した
。その後、この生成物を250 mLの適当な溶媒に溶解し、この系を氷浴中で冷却し
、17.62g(0.1モル)のセロトニンを同じ溶媒250 mLに溶かした冷溶液に30分以上
かけて添加した。この反応混合物を2時間以上かけて室温に戻し、室温でさらに
4時間攪拌した。その後、この溶液を凍結乾燥して、セロトニン−結合受容体タ
ンパク質の安定化および単離のためのリガンドとして有用な誘導体60g を得た。
実施例 11
モルフォリン受容体の単離および精製に有用な結合体の合成
0.285g(0.001モル)のノルコデイン(I)をベンゼンなどの適当な溶媒50mLに溶解
した溶液に、0.139g(0.001モル)の4,4'- ジメチルビニルアズラクトン(II)を10m
Lの同じ溶媒に溶解した溶液を添加した。生じた溶液を70℃に加熱し、この温度
で10時間保持した。この時間の終わりに、溶媒を真空下に留去して0.42g のマイ
ケル付加物(III)を得た。0.21g(0.0005モル)のこの付加物を30分以上かけて攪拌
しながら、0.23g(0.0005モル)のルシファーイエロー−CH(IV)を、アセトンな
どの適当な溶媒と水との1:1混液50mL中、pH7.5 に調節して窒素雰囲気中、0
℃で添加した。この反応混合物を0℃で1時間攪拌し、その後、室温に戻した。
その後、この混合物を室温で窒素雰囲気中で7日間攪拌した。真空下に溶媒を留
去し、水を凍結乾燥して除いて生成物(V)を得た。(V)は、モルヒネおよびその誘
導体に結合する受容体タンパク質の研究のためのプローブとして重要である。
実施例 12
シバクロンブルー(Cibacron Blue)に結合するタンパク質の単離および精製に有
用な結合体の合成
ベンゼンなどの適当な溶媒100 mLに溶かしたチオコレステロール4.03g(0.01モ
ル)の攪拌溶液に、10mLの同じ溶媒に溶解した2-ビニル-4,4'-ジメチル-5- アズ
ラクトン1.39g(0.01モル)の溶液を添加した。この混合物を70℃に加熱し、この
温度で4時間攪拌した。溶媒を真空下で完全に留去し、生成物(VI)を200 mLのジ
メチルホルムアミドに再溶解した。この溶液を氷浴中で冷却し、下記のように調
製したシバクロンブルー誘導体(VII)、8.5g(0.01モル)を250 mLのDMFと100 m
Lのトリエチルアミンに溶解した溶液を30分以上かけて添加した。この反応混合
物を1時間冷却しながら攪拌し、室温に戻して12時間攪拌した。その後、この反
応混合物を1Lの25%NaCl水溶液に0℃で添加して15分間攪拌した;その後、10
0 mLの10 M 塩酸を冷却しつつ攪拌しながら添加し、青色の沈殿を濾過によって
集め、1Lの水で再度スラリー化し、再濾過した。この抽出手順をさらに2回繰
り返した。この生成物(VIII)を真空乾燥機中で、60℃で30秒間乾燥した。(VIII)
は、シバクロンブルーの官能基を挿入し、位置付けるために有用であり、染料
の官能基に結合するタンパク質を含むトランスメンブレンプロセスの研究のため
の広範な用途を有する細胞膜中のアフィニティー認識リガンドである。シバクロンブルー誘導体(VIII)の調製
40.0g(0.05モル)のシバクロンブルーF3 GA を40℃で攪拌しながら1LのDM
Fに溶解した。この溶液に、26.5g(0.23モル)のヘキサメチレンジアミンを攪拌
しながら添加し、ついで4.0g(0.05 モル)のピリジンを添加した。この反応混合
物を終夜攪拌し、80mLの10M塩酸と940gのNaClを添加してpHを2.0 に調整した。
3.5Lの水を、修飾された染料を沈殿させるために加えた。この混合物を1時間攪
拌し、染料を濾過して集めた。ケーキを、pH2.0 の水3.5Lでさらに洗い、真空乾
燥機中、70℃で真空中で30秒間乾燥した。アミノ官能化染料(VII)34.0gを得た。
実施例 13
β-N-アセチルグルコサミダーゼの単離および精製に有用な光反応性結合体の合
成
3.63g(0.01モル)の2-アセトアミド-2- デオキシ-1- チオb-D-グルコピラノー
ス-3,4,6- トリアセテート(IX)と、1.39g の2-ビニル-4,4'-ジメチルアズラクト
ンとを攪拌しながら、適当な溶媒100 mLに溶解し、70℃に加熱して12時間攪拌し
ながらこの温度に保持した。この時間が終了するときに、この混合物を室温に冷
却し、同じ溶媒50mLに溶解した1.53g(0.01モル)のドーパミンを冷却しつつ攪拌
しながら、30分以上かけて加えた。温度を室温まで上げ、反応混合物を終夜攪拌
した。その後、溶媒を凍結乾燥により除去し、6.5gの生成物(X)を得た。生成物(
X)は、炭水化物の官能基(functionality)がβ-N- アセチルグルコサミダーゼや
同様な特異性を有する関連タンパク質に結合するため、これらのタンパク質の研
究のために有用である(350 Biochem.Biophys.Acta. 437(1974)を参照せよ)。
ドーパミン結合カテコール官能基は、標準的技術によって写真の増幅を可能にす
る写真の現像剤である。
実施例 14
プロテインキナーゼのリガンドの合成
プロテインキナーゼの天然結合ペプチドリガンドPK(5-24)(253 Science 414(1
991)参照)である20-merのシステイン変異体(variant)、Cys-Thr-Tyr-Ala-Asp-Ph
e-Ile-Ala-Ser-Gly-Arg-Thr-Gly-Arg-Arg-Asn-Ala-Ile-His-Asp は、標準的なペ
プチド合成技術によって合成されるが、この100 mgを0.5mL の適当な溶媒に溶解
した7mgの2-ビニル-4,4'-ジメチルアズラクトンと、室温で6日間振蘯した。こ
の期間の終了時に、0.5 mLの水に溶解した23mgのルシファーイエロー CH を加え
、この混合物を室温で6時間振蘯した。溶媒を凍結乾燥により除去し、130 mgの
2官能性付加物(XI)を得た。この(XI)は、プロテインキナーゼおよび構造的に類
似のタンパク質のための競合的なリガンドの結合アフィニティーの競合的評価の
ためのリガンドとして有用である。
実施例 15
2量体オキサゾロンオリゴマー由来4-メチレニル-5- オキサゾロンの合成
6- ベンゾイルアミドプリン(23.9g,0.10モル)とジイソプロピルエチルアミ
ン(14.22g,0.11モル、19.16mL)をアセトニトリル(200 mL)に溶解した溶液を、4
-クロロブチルアルデヒド(15.26g,0.10 モル)を滴下する間、0℃に冷却した。
この混合物を室温で12時間攪拌し、ジイソプロピルエチルアミン塩酸塩を濾別し
た。濾液を真空下で濃縮し、酢酸エチルから再結晶し、白色、粉状の結晶性生成
物(22.37g,0.063モル、63%)を得た。
この物質をメタノール(400mL)に溶解し、水(25mL)とp-トルエンスルホン酸(0
.5g)をここに添加した。この混合物を加熱還流し、アセタールを消費した。この
反応混合物を真空下で濃縮し、残渣をTHFと炭酸水素ナトリウムの水溶液(10%
w/v,300mL)とに分配した。水相をTHFで抽出し、有機相を合わせて乾燥し(飽
和水性NaCl,MgSO4)、濾過して濃縮し、再結晶後、6-ベンゾイルアミド-9-(4-オ
キソブチル)プリン(16.38g,0.053モル、84%)を得た。
トリエチルアミン(0.101g,1.0ミリモル)を2-フェニル-5 -オキサゾロン(1.61
g,10ミリモル)と6-ベンゾイルアミド-9-(4-オキソブチル)プリン(3.09g,10ミ
リモル)を20mLのベンゼンに溶かした溶液に添加した。生じた混合物を50℃で10
分間加熱し、室温に冷却した後、溶媒を真空中に留去した。残渣の糊状の塊をエ
タノールで砕いて固体を得、ついでエタノールから再結晶してオフホワイトの結
晶性のオキサゾリノン- 結合ベンゾイルアデニン(2.84g,63%)を得た。
アデニニルオキサゾロン(4.52g,10ミリモル)の懸濁液と酢酸エチル(100mL)中
10% の炭素上パラジウム(106mg,1モル%)を、環外メチレンが十分に還元される
まで乾燥水素ガスとともに噴霧した(1当量)。触媒をセライトのパッドを通す
濾過によって除去し、濾液を濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(100 mL)と水
性NaOH(1.0M,100 mL)に溶解し、水酸化テトラ-n- ブチルアンモニウム(0.26g,
1.0 ミリモル)およびキニン(0.324g,1.0ミリモル)を加えた。この混合物を、ヨ
ウ化メチル(3.53g,25ミリモル、1.55mL)を加える間、0℃に冷却した。この混
合物を、オキサゾロンが徹底的にアルキル化されるまで攪拌した。有機相
を分離し、水相をエーテルで抽出した(2×100mL)。有機相を合わせて乾燥し(飽
和水性NaCl,MgSO4)、濃縮して固体(4.98g)を得た。これをクロマトグラフし、4
-(4- ベンゾイルアデニニルブチル)-4-メチル-5- オキサゾロン(3.87g,8.27ミ
リモル、83%)を得た。
4-(4- ベンゾイルアデニニルブチル)-4-メチル-5- オキサゾロン(4-(4-benzoy
ladeninylbutyl)-4-methyl-5-oxazolone,3.87g,8.27ミリモル)をメタノール(1
00mL)に溶解し、グリシンリチウム塩(1.01g,12.41ミリモル)を加えた。この混
合物を50℃で3時間温めた。開環反応完了後、水(100mL)を加えて、希HClでp
H=5.0の酸性にした。生じた溶液を真空中で濃縮し、固体を少量%の酢酸エチル
を添加したベンゼンに溶解した。クロロギ酸エチル(1.31g,12.41ミリモル、1.1
8mL)とトリエチルアミン(1.26g,12.41ミリモル、1.32mL)を添加する間、この溶
液を氷浴中で冷却した。ガス放出が終了したのち、吸引濾過によって塩を除去し
、濾液を真空中で濃縮した。残渣をエタノールから再結晶し、79% の収率で2-(5
- ベンゾイルアデニニル-2- ベンズアミドイル-2- メチルペンチル)-5-オキサゾ
リジノン(4.54g,8.58ミリモル)を得た。
4-クロロブチルアルデヒド(4-chlorobutryaldehide,15.26g,0.10モル)を氷
冷した4-ベンゾイルアミドピリミジノン(21.5g,0.10モル)とジイソプロピルエ
チルアミン(14.22g,0.11 モル、19.16mL)をアセトニトリル(200mL)に溶解した
溶液に滴下した。バスを除去し、この混合物を室温で終夜攪拌した。塩を濾別し
、溶媒を真空中に留去し、ついで酢酸エチルから再結晶して所望の生成物(23.8g
,0.072モル、72%)を得た。
アセタールをメタノール(400mL)に溶解したこの溶液に、p-トルエンスルホン
酸(0.5g)および水(25mL)を加え、この混合物をアセタールが消費されるまで還流
した。この反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をTHFと炭酸水素ナトリウム水
溶液(10% w/v,300mL)とに分配した。水相をTHFで抽出し、有機相を合わせて
乾燥し(飽和水性NaCl,MgSO4)、濾過して濃縮し、再結晶後、4-ベンゾイルアミ
ド-1-(4-オキソブチル)-ピリミジノン(16.38g,0.053モル、84%)を得た。
4-ベンゾイルアミド-1-(4-オキソブチル)-ピリミジノン(0.57g,2.0 ミリモル
)、予め調製した2-(5-(ベンゾイルアデニニル)-2-ベンズアミドイル-2- メチル
ペンチル)-5-オキサゾリジノン(1.06g,2.0 ミリモル)、及びトリエチルアミン
(触媒として138mL,10mg,0.1ミリモル)をベンゼン(20mL)に溶解した溶液を、
出発物質がなくなるまで50℃で2時間温めた。溶媒を真空中に留去し、エタノー
ルで砕いてその後エタノールから再結晶して、生成物(0.99g,1.39ミリモル、70
%)を得た。
アデニニルオキサゾロン(0.99g,1.39ミリモル)の懸濁液と酢酸エチル(15mL)
中10% の炭素上パラジウム(15mg,1モル%)とを、環外メチレンが十分に還元され
るまで乾燥水素ガスとともに噴霧した(1当量)。触媒をセライトのパッドを通
す濾過によって除去し、濾液を濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(15mL)と水
性NaOH(1.0 M,15mL)に溶解し、水酸化テトラ-n- ブチルアンモニウム(4mg,0.1
5ミリモル)およびキニン(45mg,0.15ミリモル)を加えた。この混合物を、ヨウ化
メチル(0.49g,3.5 ミリモル、0.22mL)を加える間、0℃に冷却した。この混合
物を、オキサゾロンが徹底的にアルキル化されるまで攪拌した。有機相を分離し
、水相をエーテルで抽出した(2×20mL)。有機相を合わせて乾燥し(飽和水性NaCl
,MgSO4)、濃縮して固体(1.23g)を得た。これをクロマトグラフし、2-(5- ベン
ゾイルアデニニル)-2-ベンズアミドイル-2- メチルペンチル)-4-(4- ベンゾイル
シチジニルブチル)-4-メチル-5- オキサゾロン(0.87g,1.2 ミリモル、86%)を得
た。
2-(5- ベンゾイルアデニニル)-2-ベンズアミドイル-2-メチルペンチル)-4-(4-
ベンゾイルシチジニルブチル)-4-メチル-5- オキサゾロン(0.87g,1.2 ミリモ
ル)とグリシンのリチウム塩(150mg,1.8 ミリモル)を溶解したメタノール溶液を
、50℃で3時間温めた。開環反応完了後、水(10mL)を加えて、希HClでpH=5.0
の酸性にした。生じた溶液を真空中で濃縮し、固体を少量%の酢酸エチルを添加
したベンゼンに溶解した。クロロギ酸エチル(190mg,1.8 ミリモル、0.17mL)と
トリエチルアミン(183mg,1.8 ミリモル、0.19mL)を添加する間、この溶液を氷
浴中で冷却した。3時間後、吸引濾過によって塩を除去し、濾液を真空中で濃縮
した。残渣をエタノールから再結晶し、62% の収率で2-(2-(5-ベンゾイルアデニ
ニル)-2-ベンズアミドイル-2- メチルペンタノイルアミド)-2-(4- ベンゾイルシ
チジニル)-2-メチルペンチル)-5-オキサゾロン(585mg,0.74ミリモル)を得た。
エルレンマイヤー生成物もまた、認識基が存在する足場を提供するために還元
せずに残すことができる。これは「平面的な」構造を提供するにもかかわらず、
それがまた、異なる空間とこれらの基の存在とを提供するだろう。以下に示すの
は、このような分子のための発展性を秘めたユニットを提供する実験の順序であ
る。
アデニニルオキサゾロン(2.84g,6.3 ミリモル)をメタノール(10mL)に溶解し
、グリシンのリチウム塩(0.77g,9.45ミリモル)を加えた。この混合物を50℃で
3時間温めた。開環反応完了後、水(100mL)を加えて、希HClでpH=5.0の酸性
にした。生じた溶液を真空中で濃縮し、固体を少量%の酢酸エチルを添加したベ
ンゼンに溶解した。クロロギ酸エチル(1.03g,9.45ミリモル、0.9mL)とトリエチ
ルアミン(0.96g,9.45ミリモル、1.32mL)とを添加する間、この溶液を氷浴中で
冷却した。続くガスの放出が終了した後、吸引濾過によって塩を除去し、濾液を
真空中で濃縮した。残渣をエタノールから再結晶し、67% の収率でオキサゾリジ
ノン(2.12g,4.24ミリモル)を得た。
4-ベンゾイルアミド-1-(4-オキソブチル)ピリミジノン(0.57g,2.0 ミリモル)
、予め調製したオキサゾリジノン- 結合ベンゾイルアデニン(1.18g,2.0 ミリモ
ル)、およびトリエチルアミン(触媒として138mg,10mg,0.1ミリモル)をベ
ンゼン(20mL)に溶解した溶液を、出発物質がなくなるまで50℃で2時間温めた。
溶媒を真空中に留去し、エタノールで砕き、その後、エタノールから再結晶して
生成物(0.90g,1.16ミリモル、58%)を得た。
この生成物をメタノール(15mL)に溶解し、グリシンのリチウム塩(0.14g,1.74
ミリモル)で処理して添加した。この混合物を50℃で3時間温めた。開環反応完
了後、水(10mL)を加えて希HClでpH=5.0の酸性にした。生じた溶液を真空中で
濃縮し、固体を少量の酢酸エチルを添加したベンゼンに溶解した。クロロギ酸エ
チル(1.89mg,1.74ミリモル、165mL)とトリエチルアミン(176mg,1.74ミリモル
、242mL)とを添加する間、この溶液を氷浴中で冷却した。続いてガスの放出が終
了した後、吸引濾過によって塩を除去し、濾液を真空中で濃縮した。残渣をエタ
ノールから再結晶し、51% の収率でオキサゾリジノン(493mg,0.59ミリモル)を
得た。
実施例 16
炭水化物モジュール Iの合成
三ツ口丸底フラスコにCH2Cl2などの適当な溶媒5mLと337 mLの塩化オキサリル
(3.9ミリモル、1.2 当量)とを入れた。溶液を攪拌し、5mL のジクロロメタンを
含む460mL DMSO(505mg,6.5 ミリモル、2当量)を速い速度で滴下しながら-60℃
に冷却した。5分後に、化合物1(1g,3.23 ミリモル、1.0 当量)を、温度を
-60 ℃に保ちながら、10分以上かけて滴下した。さらに15分後に、トリエチルア
ミン(4.5mL,32.3ミリモル、10当量)を温度を-60 ℃に保ちながら滴下した。5
分間攪拌を続け、その後この混合物を室温に戻して水を加えた。水層を分離し、
酢酸エチルなどの幾分極性の溶媒で抽出した。有機層を合わせ、1% HCLで
塩基性でなくなるまで洗い、飽和塩化ナトリウムで再び洗って、無水硫酸マグネ
シウム上で乾燥した。濾過した溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、アル
デヒド2(900mg,91%)を得た。
このアルデヒド2(500mg,1.63ミリモル)がピリジン(1.32mL,16.3 ミリモル
、10当量)に溶解された溶液に、無水酢酸(996mg,9.8 ミリモル、6当量)に加え
た。反応混合物を蒸気浴上で6時間加熱した。過剰のピリジン、無水酢酸および
酢酸を減圧下に留去した。生じた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、純
粋な生成物3(758mg,95%)を得た。
実施例 17
炭水化物モジュールIIの合成
THFなどの適当な溶媒(5mL)に溶解した化合物4(500mg,0.98ミリモル)
に銀- サリチレート(Ag-salicylate、265mg,1.08 ミリモル、1.1 当量)を加え
た。室温で10分後、2-(2- ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン(130mg,0,98ミリ
モル、1.0 当量)をこの混合物に加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌し
た。1N の水性HCl(5mL)をこの反応混合物に加え、そして反応をさらに30
分間行わせた。その後、この反応液に水を添加した。水相を酢酸エチルで数回抽
出した。有機相抽出物を合わせ、飽和水性NaCl で洗い、MgSO4で乾燥し、濾過し
て濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製し、純粋な生成物5(483mg,90%)
を得た。
実施例 18
炭水化物モジュールIII の合成
三ツ口の丸底フラスコに、CH2Cl2などの適当な溶媒10mLと540 mLの塩化オキサ
リル(6.2ミリモル、1.2 当量)とを入れた。この溶液を攪拌し、5mL のジクロロ
メタンを含む740mL のDMSO(810mg,10.4ミリモル、2当量)を速い速度で滴下し
ながら-60 ℃に冷却した。5分後に、化合物6(1g,51.8 ミリモル、1.0 当量
)を、温度を-60 ℃に保ちながら、10分以上かけて滴下した。さらに15分後に、
トリエチルアミン(7.2mL,51.8ミリモル、10当量)を温度を-60 ℃に保ちながら
滴下した。5分間攪拌を続け、その後この混合物を室温に戻して水を加えた。水
層を分離し、酢酸エチルなどの幾分極性の溶媒で抽出した。有機層を合わせ、1
%HClで塩基性でなくなるまで洗い、飽和塩化ナトリウムで再び洗って、無水
硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過した溶液をロータリーエバポレーターで濃
縮し、アルデヒド7(890mg,90%)を得た。
このアルデヒド7(800mg,4.2 ミリモル)がピリジン(3.4mL,42ミリモル、10
当量)に溶解された溶液に、無水酢酸(3g,29.3ミリモル、7当量)を加えた
。反応は、室温で12時間攪拌した。過剰のピリジン、無水酢酸および酢酸を減圧
下に留去した。生じた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、所望の生成物
8(1.48g,88%)を得た。
実施例 19
炭水化物モジュールIVの合成
CH2Cl2などの適当な溶媒(5mL)に溶解したアミン6(500mg,2.59ミリモル)
にTMSCl(1.55g,14.2 ミリモル、5.5 当量)を加え、ついでトリエチルアミン(2.
9mL,20.7ミリモル、8当量)を加えた。この反応混合物を室温で6時間攪拌した
。反応をクエンチするために水を加えた。有機層を水と飽和NaClとで洗い、無水
硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過した溶液をロータリーエバポレーターで濃
縮し、シリル化された生成物9(1.3g,91%)を得た。
THFなどの適当な溶媒(8mL)に溶解した化合物9(1g,1.8ミリモル)
に、2-(2- ブロモエチル)-1,3-ジオキサン(387mg,1.98ミリモル、1.1 当量)を
加えた。室温で2時間後、1N水性HCl(10mL)をこの反応混合物に加え、そ
して反応をさらに室温で30分間行わせた。その後、この反応液に水を添加した。
水相を酢酸エチルで数回抽出した。有機相抽出物を合わせ、飽和水性NaCl で洗
い、MgSO4で乾燥し、濾過して濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製し、
純粋な生成物10(400mg,89%)を得た。
実施例 20
DA- アミノ-(N-(4-(オキソメチル)ベンジル)ベンジル- ペニシリンの合成
Dα- アミノ-(N-(4-(オキソメチル)ベンジル)ベンジル- ペニシリンの合成:
Dα- アミノ-(N-(4-(ジエトキシメチル)ベンジル)ベンジル-ペニシリン、メ
チルエステル(32.6g,58.7ミリモル)を、メタノール/水またはTHF/水など
の適当な溶媒(100mL)に溶解し、当モル量の水性0.5 N HClとともに、50℃
で4時間攪拌した。この溶媒を凍結乾燥して留去し、固体(29.5g,99%)を得た。
一部を再結晶し、分析試料とした。
Dα- アミノ-(N-(4-(ジエトキシメチル)ベンジル)ベンジル- ペニシリン、メチ
ルエステルの合成:
Dα- アミノベンジルペニシリン、メチルエステル(36.3g,99.9ミリモル、ナ
フィオン(Nafion)のような樹脂に支持された超強酸の存在下に無水メタノール溶
液などの中でD(-)-a- アミノベンジルペニシリンから合成された)およびTHF
またはメタノールなどの無水溶媒(400mL)にアルゴンまたは窒素などの不活性雰
囲気下で溶解した4-(ジエトキシメチル)ベンズアルデヒド(21.2g,101.8 ミリモ
ル)を、典型的には終夜、イミン中間体が形成され、出発試薬が薄層クロマトグ
ラフィー(TLC)で示されたように消費されるまで攪拌した。この反応混合物を0
℃に冷却してシアノボロヒドリドナトリウム(sodium cyanoborohydride、7.63g
,121.4ミリモル)を加え、この混合物を0℃で少なくとも15分間、TLC によって
示されるイミン中間体が消費されるまで攪拌した。溶媒を一部ロータリーエバポ
レーターで留去した。残渣を塩化メチレンまたはジエチルエーテルなどの適当な
溶媒に溶解し、飽和水性NaHCO3(2×200mL)で抽出し、ついでブリン(brine)(1×1
00mL)で抽出し、Na2SO4上で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーターで留去
し、オフホワイトの固体(52.8g,95%)を得た。一部を再結晶し、分析試料とし
た。
実施例 21
4-ヒドロキシ-N-(2-(1,3- ジオキシル)-エチル)-4-フェニルピペリジンの合成
4-ヒドロキシ-N-(1,3-ジオキサン-2-イル)-エチル)-4-フェニルピペリジンの合
成:
4-ヒドロキシ-4- フェニルピペリジン(5.00g,28.2ミリモル)と2-(2- ブロモ
エチル)-1,3-ジオキサン(5.53g,28.4ミリモル)とをキシレンまたはジメチルホ
ルムアミド(DMF)などの適当な溶媒(100 mL)に、アルゴンまたは窒素などの
不活性雰囲気下に溶解した溶液を、数時間から終夜、K2CO3または別の適当な無
機の塩基の存在下に、おだやかに還流した。この反応混合物を室温まで冷却し、
塩化メチレンまたはジエチルエーテルなどの適当な溶媒で希釈し、飽和水性NaHC
O3(2×100mL)で、ついでブリン(1×100mL)で抽出し、無水Na2SO4上で乾燥した。
溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、オフホワイトの固体(7.31g,89%)を
得た。一部を再結晶し、分析試料とした。
4-ヒドロキシ-N-(3-オキソプロピル)-4-フェニルピペリジンの合成:
4-ヒドロキシ-N-((1,3- ジオキサン-2- イル)エチル)-4-フェニルピペリジン(
5.30g,18.2ミリモル)をメタノール/水またはTHF/水などの適当な溶媒(100
mL)に溶解し、1.5 倍モル過剰の水性0.5 N HClとともに、50℃で4時間攪
拌した。この反応混合物を塩化メチレンまたはジエチルエーテルなどの適当な溶
媒で希釈し、酸を中和するまで飽和水性NaHCO3(2×100mL)で、続いてブリン(1
×100mL)で抽出し、MgSO4上で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーターで留
去し、オフホワイトの固体(4.04g,95%)を得た。一部を再結晶し、分析試料とし
た。
実施例 22
5H-5-((1,3- ジオキサン-2- イル)-2-エテニル)-ジベンゾ[A,D]シクロヘプテン
の合成
THFなどの適当な無水溶媒(300mL)に溶解した2-(1,3- ジオキサン-2- イル)
-エチルトリフェニルホスフォニウムブロミド(27.8g,60.8ミリモル)の溶液を0
℃に冷却する一方、n-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5 M/25.0 mL)の溶液などの
当モル量の強塩基を30分以上かけて攪拌しながら滴下した。この混合物をさらに
1時間またはアニオン生成が確実になるまで室温で攪拌した。THFなどの適当
な無水溶媒(100mL)に溶解したジベンゾスベレノン(dibenzosuberenone,12.5g,
60.6 ミリモル)を30分以上かけて、攪拌しながら滴下した。0℃でさらに2時間
攪拌を続けた。反応を水の添加(50mL)によって止めた。溶媒を、一部ロータリー
エバポレーターで留去した。残渣を塩化メチレンまたはジエチルエーテルなどの
適当な溶媒に溶解し、飽和水性NaHCO3(2×100mL)で、ついでブリン(1×100mL)で
抽出し、無水Na2SO4上で乾燥した。有機溶媒をロータリーエバポレーターで濃縮
し、39gの着色油状物を得た。この未精製物質を、順相シリカゲルなどの適当な
固相上でヘキサン/酢酸エチル混液などの適当な移動相で溶出してカラムク
ロマトグラフィーにより精製し、所望の化合物(15.7g,85%)を得た。一部を再精
製し、分析試料とした。
5H-5-((1- オキソ-3- プロペニル)-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテンの合成:
5H-5-((1,3- ジオキサン-2- イル)-2-エテニル)-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテ
ン(14.3g,47.0ミリモル)をメタノール/水またはTHF/水などの適当な溶媒(
100mL)に溶解し、1.5 倍モル過剰の水性0.5 N HClとともに、50℃で4時間
攪拌した。この反応混合物を塩化メチレンまたはジエチルエーテルなどの適当な
溶媒で希釈し、飽和水性NaHCO3(2×100mL)で酸を中和するまで抽出し、ついでブ
リン(1×100mL)で抽出し、MgSO4上で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレータ
ーで濃縮し、13g の着色油状物を得た。この未精製物質を、順相シリカゲルなど
の適当な固相上でヘキサン/酢酸エチル混液などの適当な移動相で溶出してカラ
ムクロマトグラフィーにより精製し、所望の化合物(11.1g,96%)を得た。一部を
再精製し、分析試料とした。
5H-5-((N-(2,2-ジメトキシエチル)-1-アミノ-3- プロペニル)-ジベンゾ[A,D]シ
クロヘプテンの合成:
5H-5-(1-オキソ-3- プロペニル)-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン(9.80g,39.8
ミリモル)とアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(4.21g,40.0ミリモル)
とを、THFまたはメタノールなどの適当な無水溶媒(100mL)に溶解し、アルゴ
ンまたは窒素などの不活性な雰囲気中で、薄層クロマトグラフィー(TLC)によっ
て示されたようにイミン中間体が生成され、出発試薬が消費されるまで、典型的
には終夜、攪拌した。反応混合物を0℃に冷却した。シアノボロヒドリドナトリ
ウム(3.06g,48.7ミリモル)を加え、TLC によって示されたように、イミン中間
体が消費されるまで、少なくとも30分間、0℃で攪拌した。溶媒を一部、ロータ
リーエバポレーターで留去した。残渣を塩化メチレンまたはジエチルエーテルな
どの適当な溶媒に溶解し、飽和水性NaHCO3(2×100mL)で、ついでブリン(1×100m
L)で抽出し、Na2SO4上で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーターで濃縮し
、固体(12.02g,90%)を得た。一部を再結晶し、分析試料とした。
5H-5-((N-(ジメチル-N-(2-オキソエチル)-1-アミノ-3- プロペニル)-ジベンゾ[A
,D]シクロヘプテンの合成:
5H-5-((N-(2,2-ジメトキシエチル)-1-アミノ-3- プロペニル)-ジベンゾ[a,d]
シクロヘプテン(9.71g,28.9ミリモル)と1当量のピリジンなどの非求核的塩基
とを、THFまたはメタノールなどの適当な無水溶媒(100mL)に溶解し、ヨード
メタン(8.35g,58.8ミリモル)を加えた。この反応液を、TLC によって示された
ように、出発物質が消費され、4級置換アミノ化合物が生成されるまで、数時間
から終夜おだやかに還流した。10モル過剰の水性1.0 N HClを加え、50℃で
4時間攪拌を続けた。溶媒を一部、ロータリーエバポレーターで留去した。残渣
を塩化メチレンまたはジエチルエーテルなどの適当な溶媒に溶解し、飽和水性Na
HCO3(100mL)で酸を中和するまで抽出し、ついでブリン(100mL)で抽出し、その後
MgSO4で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーターと真空ポンプを用いて留去
し、固体(8.16g,80%)を得た。一部を再結晶し、分析試料とした。
実施例 23
被覆剤として有用な物質の合成
本実施例は、開環反応とそれに続くマイケル付加による被覆剤の調製を教示す
る。
最初の合成工程において、8.82g(0.113 モル)の95% N-メチルエチレンジアミ
ンを75mLの塩化メチレン中で攪拌しながら、氷浴中で0℃に冷却して溶解した。
その後、予め0℃に冷却した13.9g(0.10モル)のジメチルビニルアズラクトン(式
3にR2=R3=CH3で表された出発種)を、この塩化メチレン混合物に、温度を5℃以
下に保ったまま加えた。この溶液を室温で攪拌した。約15分後、白色沈殿が生成
され始めた。その後、この混合物をさらに2時間、0℃で攪拌した。白色固体を
ブッフナーロート上で集め、25mLの塩化メチレンで2回洗い、空気乾燥して
13.92gの開環付加物を得た。核磁気共鳴(NMR)およびフーリエ変換赤外吸収
(FTIR)スペクトル分析により以下のように同定した: NMR(CDCl3):構造
解析に役立つCH3-N/gem(CH3)2比1:2;6 ppmの領域におけるCH2=CH- 分割パ
ターン、積分比およびD2O交換実験。FITR(null):1820 cm-1でのアズラクトンの
COバンドなし; 強いアミドのバンドが1670〜1700cm-1の領域に存在。
次の合成工程においては、6.39g(0.3 モル)の(I)と4.17g(0.3モル)のジメチル
ビニルアズラクトンとを、50mLのベンゼンに溶解し、70℃で4時間加熱した。こ
のフラスコを室温まで冷却し、栓をして3日間室温で放置した。その後、生成さ
れたどろどろの油状物から溶媒をデカントして除いた。この油状物を50mLのアセ
トンに溶解し、別のどろどろの油状物を生成するためにストリッピングした。こ
の後者の油状物を終夜1torrの減圧下におき、3.53g の白色固体を得た。NMR
およびFTIRスペクトル分析により以下のように同定した: NMR: 構造解析
に役立つCH3-N/gem(CH3)2比1:4;6ppm の領域におけるCH2=CH- 分割パター
ン、積分比およびD2O交換実験。FITR(null):1800 cm-1で強いアズラクトンのC
Oバンド。
最終合成工程において、3.5g(0.01モル)の(II)と1.61g(0.01モル)のH2N(CH2)3
CH(OC2H5)2を0℃に冷却した50mLのアセトンに溶解し、0℃で4時間攪拌した。
この溶液を室温で2日間放置した。生じた黄色がかった溶液をストリッピングし
、終夜、室温で1torrの減圧下におき、5.0gの白色固体を得た。4.5gのこの固体
を熱酢酸エチルに溶解し、熱ヘキサンで曇点にし、室温で終夜結晶化させた。3.
54g の白色結晶性固体を濾過して集め、真空乾燥器中で、室温で30秒間真空とし
て終夜乾燥した。最終生成物をNMRおよびFTIRスペクトル分析により、以
下のように同定した: NMR(CDCl3):構造解析に役立つ6 ppmの領域におけるCH2
=CH- 分割パターン、積分比およびD2O 交換実験。FITR(mull):1820 cm-1でのア
ズラクトンのCOバンドなし。
実施例 24
アフィニティークロマトグラフィーにおいて有用な被覆シリカ支持体の調製
本実施例は、前記実施例で調製された化合物(III)からのアフィニティー被覆
の調製を記載する。
1.76g(0.0034モル)の(III)と0.328g(0.0032モル)のn-メチロールアクリルアミ
ドを50mLのメタノールに溶解し、その後1.11mLの水を添加した。この溶液に、5
g のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン官能化シリカ(「エポキシシリカ
」)を加えた。この混合物を室温で、ロータリー(a rotary)中で15分間混合した
。その後、44℃の浴を用いてストリッピングし、重量損失で測定した揮発物含量
は15% であった(サンガン(a sun gun)を用いて25〜200 ℃で測定)。成分の混
合物に曝した結果として被覆されたシリカを、32.0g のVAZO-64(すなわち、窒素
で脱気されたトルエン0.5mL に溶解した重合触媒、2,2'- アゾビスイソブチロニ
トリル)を含む50mLのイソオクタン中でスラリーにした。その後、このスラリー
を窒素で完全に脱気し、ついで70℃で2時間攪拌した。その後、被覆されたシリ
カを濾過して集め、50mLのメタノール中で3回洗い、空気乾燥した。最後にこの
シリカを120 ℃で2時間加熱して被覆を硬化させ、5.4gの被覆シリカを得た。こ
のシリカは、以下の接着された基を含んでいた:
1.5gの被覆シリカビーズを20mLの水性 HCl(pH=3.0)とともに、4時間、室
温で振蘯した。反応の工程は、アンモニア性硝酸銀溶液による遊離アルデヒドの
生成のための試験(トレンス試験(Tollens test))により確認した。生じた固体
をブッフナー濾過により集め、その後、再度スラリーにし、洗浄液が中性になる
まで再度集めた。このシリカ粒子を、その後空気乾燥し、以下のように単一のア
ルデヒド基で置換された末端メトキシ基を有する1.25gのアルデヒド充填材を得
た。
レプリゲンタンパク質A(Repligen Protein A)を、Chromatochem Inc.,Misso
ula,MT からの指示書(技術ノート(Technical Note)No..4151))に従って、ウシ
血清アルブミンの接着のために与えられた標準的な条件を用いて、アルデヒド充
填材に結合した。
1cmのガラスカラムをプロテインA機能化物質で充填し、ヒトIgG をPBS 緩衝
液(pH=7.4)から、流速1.6mL/分でロードした。このIgG を0.01 M NaOAc(pH=3.0)
で溶出した。このIgG を集め、標準的な検量線を用いて、量を分光光学的に測定
した。充填材の測定された能力は、カラム容積1ml に対して、12mg IgGであった
。
実施例 25
アズラクトン−含有ポリマーの官能化
アズラクトンが存在する官能化されたポリマー性表面を得ること(例えば、米
国特許4,737,560号)およびそれらを上記で概要を述べた段階に従って官能化す
ることが可能である。例えば、HNu1-Z-Nu2H 形の二求核種(dinucleophilic spec
ies)と適当なアズラクトンとを連続反応を用いて、
(表面)-(X)-Az 形の表面を、
〔ここで、Xはリンカーであり、Azはアズラクトンを表し、種である
(表面)-(X)-CONHC(CH3)2CONu1-(Z)Nu2CH2CH2-Az
に変換することができる。〕
この種は、所望により、生体分子に結合されていてもよく、以下の結合体
を形成してもよい。
適切な実験手順は以下の通りである。
アズラクトン- 官能支持体を、CHCl3などの適当な溶媒中でスラリーにし、0
℃に冷却した。モルベースで、表面アズラクトン基の存在の総数に対して等しい
量の二官能性求核試薬を、同じ溶媒に溶解し、振蘯しながら添加した。その後、
この混合物を0℃で6時間振蘯し、室温に戻して、終夜室温で振蘯した。支持体
を濾過によって集め、新しい溶媒で洗い、適当な溶媒中で再度スラリーにし、同
じ溶媒に溶解した1当量のビニルアズラクトンをこれに加えた。その後、この混
合物を振蘯し、70℃に加熱してこの温度に12時間保った。この時間の終了のとき
に、この混合物を冷却し、支持体を濾過によって集めた。その後支持体を、新し
い溶媒で完全に洗い、真空中で乾燥した。
実施例 26
血清からのヒトIgGの精製に有用な支持体の調製
上記のように調製された官能性ビーズを、pH 7.5の水性リン酸緩衝液中に懸濁
した。10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に濃度10mg/900μL(Ul)で溶解したプロテイン
A(Repligen)を加え、その後、この混合物を室温で3時間、穏やかに振蘯した。
遠心してビーズを濃縮し、上清をデカントして除き、pH7.5の水性リン酸緩衝液
で5回、ビーズを洗った。その後、ビーズを内径0.46cmのガラスカラムにロード
し、標準的なアフィニティー精製技術を用いて、血清からヒトIgGを精製する
ために用いた。
本明細書中で特に開示されていない組成物を調製するための他の組成物および
方法が、それにもかかわらず、予期されるということは、当業者にとって自明な
はずである。このような他の組成物および方法は、本発明の範囲内にあり、本質
であると思われる。かくして、本発明は、ここで記載された特定の実施太陽に何
ら限定されるものではないが、後述する請求の範囲に限定されないというわけで
はない。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 31/785 9284−4C A61K 31/785
38/00 AED 7433−4C 47/48 Z
38/46 AAK 9284−4C C07D 211/52
38/55 8615−4C 239/47 Z
ADZ 9639−4C 263/42
47/48 9639−4C 265/10
C07D 211/52 7822−4C 307/54
239/47 9454−4C 319/06
263/42 9455−4C 333/22
265/10 9271−4C 473/34 361
307/54 8615−4C C07H 5/06
319/06 8615−4C 7/027
333/22 9356−4H C07K 5/062
473/34 361 9356−4H 5/103
C07H 5/06 7433−4C C08B 37/00 Z
7/027 0276−2J G01N 33/545 Z
C07K 5/062 9051−4C A61K 48/00
5/103 9638−4C C07D 207/08
C08B 37/00 7124−2H G03C 5/30
G01N 33/545 9051−4C A61K 37/02 AED
// A61K 48/00 9051−4C 37/64 ADZ
C07D 207/08 9051−4C 37/54 AAK
G03C 5/30 9051−4C 37/64
C07M 7:00
(72)発明者 ケースビア,デイヴィッド
アメリカ合衆国 01749 マサチューセッ
ツ州 ハドソン,プリースト ストリート
45番地
(72)発明者 ファース,ポール
アメリカ合衆国 01749 マサチューセッ
ツ州 ウァルサム,カレッジ ファーム
ロード 310番地 アパートメント 13
(72)発明者 トゥ,チェン
アメリカ合衆国 02139 マサチューセッ
ツ州 ケンブリッジ,メモリアル ドライ
ブ 305番地