JPH084638A - 加速振動低減用エンジン制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 コースト時に加速する際にエンジンの燃料供
給状態に応じて有効に車両の振動を抑制する。 【構成】 コースト時に車両が加速中であると判断され
た場合、車両の加速直前に燃料供給が行われているか否
かを、センサ群１の信号からマイクロコンピュータ２に
より判断する。燃料供給が行われていると判断される
と、エンジン水温Ｃ及びエンジン回転数Ｎｅによって決
定されたコースト燃料供給時マップによって点火時期補
正量が決定され、それに対して燃料遮断が行われている
と判断されると、コースト燃料遮断時マップによって点
火時期補正量が決定される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、コースト時に車両を加
速する際に発生する前後振動を抑制するためにエンジン
の出力トルクを制御する加速振動低減用エンジン制御装
置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】車両運転中に加速する場合、コースト時
に要求される点火時期と非コースト時に要求される点火
時期とは異なる。また、コースト時にエンジンの燃料噴
射を停止している状態から加速する際には、燃料噴射が
行われる。この結果、エンジンの出力トルクが急激に変
化するため、駆動系のねじれ振動を引き起こし、車両が
前後に振動するために運転者に不快感を与える。

【０００３】このような不都合を防止するために例えば
特開平2-191869号公報では、コースト時から加速する際
にエンジン回転数の変化に応じて点火時期を遅角補正す
るに当たり、エンジン回転数が所定値以上である場合に
矩形状に点火時期を遅角させて駆動系のねじれ振動を低
減するものが提案されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記特開平2-191869号
公報に記載されたような従来のエンジン制御では、加速
後に振動低減するためのエンジン出力トルクダウン量を
遅角される点火時期補正量に主に置き換え、トルクダウ
ン量を大きくする場合には点火時期補正量を大きくして
いる。この点火時期補正量は、エンジン回転数、エンジ
ン水温及びシフト位置に基づいて主に決定される。しか
しながら、同一のエンジン回転数、同一のエンジン水温
及び同一のシフト位置においても、走行条件によりエン
ジンが燃料供給されている場合もあれば燃料遮断されて
いる場合もある。このような違いにより、車両加速後の
振動レベルは大きく異なる。図６に示すように、コース
ト時にアクセルを踏んで加速を開始した後の駆動軸トル
クは、エンジン燃料供給時の駆動トルクａに比べてエン
ジン燃料遮断時の駆動トルクｂの方が振動が大きくな
る。従来のエンジン制御では、曲線ｄに示すように後述
する最適点火時期ＴＡＤＶＭに基づいて点火時期を設定
しているのでこのような違いに対応することができず、
場合によっては車両の振動をほとんど抑制できないおそ
れがある。

【０００５】本発明の目的は、コースト時に加速する際
にエンジンの燃料供給状態に応じて有効に車両の振動を
抑制することができる加速振動低減用エンジン制御装置
を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の第１の加速振動
低減用エンジン制御装置は、車両の加速状態を検出する
加速状態検出手段と、この加速状態検出手段により車両
が加速状態に移行したと判断されると設定時間中エンジ
ンの出力トルクを低減する出力トルク低減手段とを具え
る加速振動低減用エンジン制御装置において、車両の加
速直前における前記エンジンの燃料供給状態を判別する
燃料供給状態判別手段と、この燃料供給状態判別手段に
よる判別結果に応答して、加速直前の燃料供給時に比べ
て燃料遮断時に前記エンジンの出力トルクの低減量を多
くするよう前記出力トルク低減手段に指令する出力トル
ク低減量制御手段とを設けたことを特徴とするものであ
る。

【０００７】本発明の第２の加速振動低減用エンジン制
御装置は、加速振動低減用エンジン制御装置の制御を点
火時期制御とすることを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】この目的のために本発明の第１の加速振動低減
用エンジン制御装置では、図１に概念図を示すように、
加速状態検出手段により車両が加速状態であることが検
出されると、燃料供給状態判別手段によってエンジンの
燃料供給状態が判別される。この燃料供給状態判別手段
による判別結果に応答して、出力トルク低減量制御手段
は、加速直前の燃料供給時に比べて燃料遮断時にエンジ
ンの出力トルクの低減量を多くするよう出力トルク低減
手段に指令する。

【０００９】ここで、エンジン出力トルクの低減量を加
速直前の燃料供給時に比べて燃料遮断時に多くする理由
は、コースト時から加速した場合に生じる車両の前後振
動の起振力は加速直前に燃料供給されている場合に比べ
て燃料遮断されている場合の方が大きいからである。

【００１０】出力トルク低減量が決定されると、加速状
態検出手段により車両が加速状態に移行したと検出され
た後の設定時間中エンジンの出力トルクが低減される。
このようにして加速直前の燃料供給又は燃料遮断に応じ
て出力トルクの低減量を決定しているので、出力トルク
量を有効に低減することができ、したがってコースト時
に加速する際にエンジンの燃料供給状態に応じて有効に
車両の振動を抑制することができる。

【００１１】本発明の第２の加速振動低減用エンジン制
御装置では、加速振動低減用エンジン制御装置の制御を
点火時期制御としているので、加速振動低減用エンジン
制御装置の制御をリアルタイムで行うことができる。

【００１２】

【実施例】本発明の加速振動低減用エンジン制御装置を
図面を参照して詳細に説明する。図２は、本発明の加速
振動低減用エンジン制御装置の概略構成図である。この
加速振動低減用エンジン制御装置は、各種センサを有す
るセンサ群１と、センサ群１からの信号が入力されると
ともに各演算を行うマイクロコンピュータ２と、マイク
ロコンピュータ２からの出力信号が供給される点火装置
３及びインジェクタ群４とを具える。

【００１３】センサ群１は、車速Ｖを検出する車速セン
サ５と、エンジン水温Ｃを測定するエンジン水温センサ
６と、クランク角の所定角度ごとに角度信号θを出力す
るとともにタイミングを制御する角度センサ７と、エン
ジン回転数Ｎｅを検出するエンジン回転数センサ８と、
スロットル弁がアイドル開度ＴＨであるか否かを検出す
るスロットルスイッチ９と、エンジンの負荷状態を検出
するために吸入空気量Ｑを検出するエアーフローメータ
１０とを具える。

【００１４】マイクロコンピュータ２は、センサ群１か
らの信号が入力されるとともに出力信号を点火装置３及
びインジェクタ群４に供給する入出力回路１１と、ＣＰ
Ｕ１２と、角度信号θから算出されるエンジン回転数Ｎ
ｅ及び吸入吸気量Ｑに対応した最適点火時期ＴＡＤＶＭ
（例えば上死点からの角度）が予め設定されたＲＯＭ１
３と、ＲＡＭ１４と、演算の基本となるクロックパルス
をを出力するクロック発振器１５とを具える。ＲＯＭ１
３に記憶された最適点火時期ＴＡＤＶＭは入出力回路６
から基準位置信号が供給されるごとに読み出され、その
値と基準位置信号発生時からの角度信号θの積算値とが
一致すると点火信号を点火装置３に供給する。

【００１５】点火装置３は、点火信号に応じて開閉動作
するトランジスタ１６と、トランジスタ１６が点火信号
によってオフになることにより高電圧が発生して点火が
行われる点火コイル１７と、配電器１８と、各気筒ごと
に設置された点火プラグ１９とを具える。

【００１６】図３は、本発明の加速振動低減用エンジン
制御装置で適用される点火時期補正プログラムのフロー
チャートを示す。ステップ２０において、エンジン回転
数Ｎｅ、吸入空気量Ｑ等から作成された最適点火時期マ
ップを検索することにより、上記最適点火時期ＴＡＤＶ
Ｍを設定する。ステップ２１において、後述するように
して点火時期補正量ＬＵＲＴＳを設定し、点火時期遅角
補正を行うことにより点火コイル１７（図２）の点火時
期が決定される。

【００１７】図４は、コースト燃料遮断時マップ及びコ
ースト燃料供給時マップである。これらコースト燃料遮
断時マップＡ及びコースト燃料供給時マップＢはエンジ
ン水温Ｃ及びエンジン回転数Ｎｅから作成され、点火時
期補正量ＬＵＲＴＳはこのマップに基づいて設定され
る。図４から、コースト燃料遮断時マップＡの方が、コ
ースト燃料供給時マップＢに比べて点火時期補正量ＬＵ
ＲＴＳが大きいことがわかる。

【００１８】本例の動作を説明する。図５は、本発明の
加速振動低減用エンジン制御装置の制御ルーチンのフロ
ーチャートである。このルーチンは再加速時の点火時期
遅角を要求するものであり、例えば１０ｍｓｅｃごとに
実行される。

【００１９】まずステップ２２において、車両の加速状
態を検出する。車両が加速されていないと判断された場
合、ステップ２３においてエンジンに燃料が供給されて
いるか否かを判断する。燃料が供給されていると判断さ
れるとステップ２４においてｆｕｅｌＣＵＴフラグに１
をセットし、燃料が供給されていないと判断されるとス
テップ２５においてｆｕｅｌＣＵＴフラグに０をセット
してこれらのフラグを燃料供給フラグとしてメモリに格
納する。後述するようにこれらの燃料供給フラグを用い
て車両の加速直前の燃料供給の有無を判別する。その後
ステップ２６において点火時期遅角を行うためのパラメ
ータである制御タイマＣＮＴＲＥＴ及び点火時期補正量
ＬＵＲＴＳをすべて０にクリアし、この制御ルーチンを
終了する。

【００２０】ステップ２２において車両が加速開始され
たと判断された場合、ステップ２７において所定値ＴＭ
ＲＲＴＤを制御タイマＣＮＴＲＥＴに格納し、この制御
ルーチンを終了する。

【００２１】ステップ２２において車両が加速中である
と判断された場合、ステップ２８において制御タイマＣ
ＮＴＲＥＴの値が０か否かを判断する。制御タイマＣＮ
ＴＲＥＴの値が０であると判断された場合には、ステッ
プ２６において点火時期遅角を行うためのパラメータで
ある制御タイマＣＮＴＲＥＴ及び点火時期補正量ＬＵＲ
ＴＳをすべて０にクリアし、この制御ルーチンを終了す
る。

【００２２】ステップ２８において制御タイマＣＮＴＲ
ＥＴの値が０でないと判断された場合には、ステップ２
９において制御タイマＣＮＴＲＥＴの減算を行う。この
減算が行われた後、ステップ３０においてｆｕｅｌＣＵ
Ｔフラグの値を判別し、車両の加速直前に燃料供給が行
われているか否かを判断する。ｆｕｅｌＣＵＴフラグの
値が１すなわち燃料供給されていると判断された場合、
ステップ３１においてコースト燃料供給時マップＢ（図
４）から補正すべき点火時期補正量ＬＵＲＴＳを読み込
み、この制御ルーチンを終了する。ｆｕｅｌＣＵＴフラ
グの値が０すなわち燃料遮断されていると判断された場
合、ステップ３２においてコースト燃料遮断時マップＡ
（図４）から補正すべき点火時期補正量ＬＵＲＴＳを読
み込み、この制御ルーチンを終了する。上述したよう
に、図５の制御プログラムにより車両の振動低減のため
の点火時期遅角補正が実行される。

【００２３】図６は、本発明及び従来の加速振動低減用
エンジン制御装置の時間変化に対する駆動軸トルク、点
火時期及びアクセル操作量である。図６によれば、コー
スト時からアクセルを踏んで加速を開始し、しばらく経
過してから駆動軸トルクは変化するが、エンジン燃料供
給時の駆動トルクａとエンジン燃料遮断時の駆動トルク
ｂとでは振動のレベルが異なる。従来の制御では上述し
たように、最適点火時期ＴＡＤＶＭに基づいて点火時期
を設定しているので、このように振動レベルが異なるエ
ンジン燃料供給時の駆動トルクａ及びエンジン燃料遮断
時の駆動トルクｂに対して振動を有効に抑制することが
できない。

【００２４】一方、本発明の加速振動低減用エンジン制
御装置による制御では、コースト燃料供給時には、エン
ジン燃料供給時に補正された点火時期ｅに示すように、
加速開始からしばらく経過した後の設定時間ｔ₁ 中に点
火時期補正が行われ、また、コースト燃料遮断時には、
エンジン燃料遮断時に補正された点火時期ｆに示すよう
に、加速開始からしばらく経過した後の設定時間ｔ₂ 中
に点火時期補正が行われる。このように、エンジンの燃
料供給状態に応じて点火時期補正が行われると、本発明
により点火時期が補正された駆動トルクｃに示すように
車両加速後の車両振動を有効に低減でき、したがってコ
ースト時に加速する際にエンジンの燃料供給状態に応じ
て有効に車両の振動を抑制することができる。

【００２５】

【発明の効果】上述したように本発明の第１の加速振動
低減用エンジン制御装置によれば、加速直前の燃料供給
又は燃料遮断に応じて出力トルクの低減量を決定してい
るので、出力トルク量を有効に低減することができ、し
たがってコースト時に加速する際にエンジンの燃料供給
状態に応じて有効に車両の振動を抑制することができ
る。

【００２６】本発明の第２の加速振動低減用エンジン制
御装置によれば、加速振動低減用エンジン制御装置の制
御を点火時期制御としているので、加速振動低減用エン
ジン制御装置の制御をリアルタイムで行うことができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の加速振動低減用エンジン制御装置の概
念図である。

【図２】本発明の加速振動低減用エンジン制御装置の概
略構成図である。

【図３】本発明の加速振動低減用エンジン制御装置で適
用される点火時期補正プログラムのフローチャートを示
す。

【図４】コースト燃料遮断時マップ及びコースト燃料供
給時マップである。

【図５】本発明の加速振動低減用エンジン制御装置の制
御ルーチンのフローチャートである。

【図６】本発明及び従来の加速振動低減用エンジン制御
装置の時間変化に対する駆動軸トルク、点火時期及びア
クセル操作量である。

【符号の説明】

１ センサ群 ２ マイクロコンピュータ ３ 点火装置 ４ インジェクタ群 ５ 車速センサ ６ エンジン水温センサ ７ 角度センサ ８ エンジン回転数センサ ９ スロットルスイッチ １０ エアーフローメータ １１ 入出力回路 １２ ＣＰＵ １３ ＲＯＭ １４ ＲＡＭ １５ クロック発振器 １６ トランジスタ １７ 点火コイル １８ 配電器 １９ 点火プラグ Ｖ 車速 Ｃ エンジン水温 θ 角度信号 Ｎｅ エンジン回転数 ＴＨ アイドル開度 Ｑ 吸入空気量 ＴＡＤＶＭ 最適点火時期 Ａ コースト燃料遮断時マップ Ｂ コースト燃料供給時マップ ａ エンジン燃料供給時の駆動トルク ｂ エンジン燃料遮断時の駆動トルク ｃ 本発明により点火時期が補正された駆動トルク ｄ 最適点火時期ＴＡＤＶＭに基づいて設定された点火
時期 ｅ エンジン燃料供給時に補正された点火時期 ｆ エンジン燃料遮断時に補正された点火時期 ｔ₁ ，ｔ₂ 設定時間

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両の加速状態を検出する加速状態検出
   手段と、この加速状態検出手段により車両が加速状態に
   移行したと判断されると設定時間中エンジンの出力トル
   クを低減する出力トルク低減手段とを具える加速振動低
   減用エンジン制御装置において、 車両の加速直前における前記エンジンの燃料供給状態を
   判別する燃料供給状態判別手段と、この燃料供給状態判
   別手段による判別結果に応答して、加速直前の燃料供給
   時に比べて燃料遮断時に前記エンジンの出力トルクの低
   減量を多くするよう前記出力トルク低減手段に指令する
   出力トルク低減量制御手段とを設けたことを特徴とする
   加速振動低減用エンジン制御装置。
2. 【請求項２】 前記加速振動低減用エンジン制御装置の
   制御を点火時期制御とすることを特徴とする請求項１記
   載の加速振動低減用エンジン制御装置。