JPH0840153A - 自動車用ルーフドリップモール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 特別な材料や工程を必要とすることなく、車
体への組付けが容易で、しかも成形性にも優れ、かつ確
実に水を止め受けることのできる信頼性の高い止水構造
を有するルーフドリップモールを提供しようとする。 【構成】 下側屈曲部１１、および立上り部１２、なら
びに上側屈曲部１３からなる断面Ｃ字状の嵌合主体部１
４を備えたルーフドリップモール１０に、前記立上り部
の内面から上方の該立上り部側に向けてその先端１５Ａ
が近接して屈曲する薄肉の屈曲シール片を１５を一体に
突設して、前記屈曲シール片が車体側雨樋２０への取付
時に該車体側雨樋の立上り片２２外面側に密に圧着する
ようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は自動車用ルーフドリッ
プモールに関し、特には該ルーフドリップモールの止水
構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のルーフ（屋根）側部に設けられ
た雨樋（ルーフチャンネル）に沿って一般にルーフドリ
ップモールと称される長尺の合成樹脂製モールディング
が装着される。このルーフドリップモールは、合成樹脂
を主体とする押出成形品が多用されており、車体側雨樋
の下顎部に係着する下側屈曲部、および車体側雨樋の立
上り片外側を覆う立上り部、ならびに先端が前記立上り
部内側方向に近接して屈曲されて車体側雨樋の立上り片
頭部に係着する上側屈曲部からなる断面Ｃ字状の嵌合主
体部を備えている。

【０００３】この種ルーフドリップモールは、上のよう
に断面Ｃ字状の嵌合主体部によって断面Ｌ字状の雨樋部
立上り片に係着されるのであるが、該雨樋部およびルー
フドリップモールは長尺であり、しかも車体に沿って三
次元方向に屈曲して取付られるものであるから、雨樋部
立上り片とルーフドリップモールの嵌合主体部に部分的
に隙が生ずることが避けられない。そして、雨樋部立上
り片をオーバーフローするような大量の水が流れると、
この隙からルーフドリップモールの内側に水が流入す
る。また、雨樋部立上り片の継ぎ目等からルーフドリッ
プモールの内側に水が流入することもある。これらのル
ーフドリップモールの内側に流入した水はモール下部の
下顎部に溜まり、ドアの開閉時などに垂れ落ちて乗員の
衣服などを汚す。

【０００４】このような水の垂れ落ちを防止するため
に、従来では図３に示すように、コーキングスポンジと
称されるＥＰＤＭやアクリルの半連続発泡体からなる止
水材をルーフドリップモールの内面側に両面粘着テープ
で貼り付け、この止水材によってルーフドリップモール
内側に水が流入するのを防いでいた。符号５０はルーフ
ドリップモール、５１はその下側屈曲部、５２は立上り
部、５３は上側屈曲部、５４は嵌合主体部、５５は止水
材、５６はルーフドリップモール内部に埋設された金属
箔などの補強層、６０は車体側雨樋、６１は立上り片頭
部である。

【０００５】しかしながら、この種の止水材５５をルー
フドリップモール５０の内面に貼着することは、そのた
めの特別な止水材料を加工し取付のための工程を必要と
しコストアップとなるばかりでなく、長尺のルーフドリ
ップモールの狭い開口部の中に長尺の止水材を貼り入れ
ることはそれ自体煩雑な作業で、上下方向に蛇行するこ
とがしばしばある。殊に、図４に示すように、この止水
材５５がモール内面の設定された位置より上部に取り付
けられた場合には、断面Ｃ字状の嵌合主体部５４の上側
屈曲部５３先端が車体側雨樋６０の立上り片頭部６１に
係着することを困難ないしは不能にし、モール組み付け
上の問題を呈していた。

【０００６】これに対して、このような問題を解決する
ために様々な提案がなされている。例えば、図５は実開
昭６１−２５２４９号公報に開示されたルーフドリップ
モール７０で、嵌合主体部７１の内面にひれ状のリップ
７２を形成したものである。このルーフドリップモール
７０にあっては、しかしながら、ひれ状リップ７２が軟
らかな材質よりなるものであるから、その先端が下側屈
曲部７３側へめくれたり嵌合主体部７１方向に折れ曲が
るなどして、車体側雨樋への密着性が悪くなる嫌いがあ
る。このひれ状リップ７２の保形性を増すためには、該
リップ７２の厚みを大きくすればよいが、リップの厚み
を大きくすると、可撓性が悪くなってシール性能が低下
したり、また車体側雨樋の立上り片への組付けが困難も
しくは煩雑になるという問題が生ずる。

【０００７】また、図６は実開昭５７−１５００５２号
公報に開示されたルーフドリップモール９０で、嵌合主
体部９１の内面に中空の管状体９２を一体に形成したも
のである。このルーフドリップモール９０は、中空の管
状体９２の根元部分９２ａ，９２ｂがモール本体部と一
体に形成されるので該根元部分の剛性が高くなり、従っ
て管状体９２の変形度も少なくなるため、車体側雨樋に
嵌着しにくいという問題があった。また、この中空の管
状体９２の根元部分９２ａ，９２ｂには成形時に管状体
９２を構成する材料樹脂が漏れ出しやすく、特に金型の
磨耗や成形条件によって根元部分９２ａ，９２ｂの外側
に管状体構成樹脂の漏出面９３Ａ，９３Ｂが形成される
ことがある。この漏出面のうち、特に上側の漏出面９３
Ａは、図中の破線で示す車体側雨樋６０の頭部６１がそ
の組付時に接触する部分であり、当該漏出面９３Ａが滑
り性の悪い熱可塑性エラストマーによって形成されるこ
ともあって、車体側雨樋６０の頭部６１の滑り性が悪
く、その組付け作業を困難にする嫌いがある。加えて、
このような中空管状体９２部分の成形に際しては、該中
空形状部分内にエアを吹き込んでその形状を安定させる
のであるが、エア量の多少によって管状体９２に破れや
変形が生じやすいという大きな成形上の問題があった。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、このよう
な問題点に鑑み提案されたものであって、特別な材料や
工程を必要とすることなく、車体への組付けが容易で、
しかも成形性にも優れ、かつ確実に水を止め受けること
のできる信頼性の高い止水構造を有するルーフドリップ
モールを提供しようとするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、
断面略Ｌ字状の車体側雨樋の下顎部に係着する下側屈曲
部、および前記車体側雨樋の立上り片外側を覆う立上り
部、ならびに先端が前記立上り部内側方向に屈曲されて
前記車体側雨樋の立上り片頭部に係着する上側屈曲部か
らなる断面略Ｃ字状の嵌合主体部を備えたルーフドリッ
プモールにおいて、前記立ち上り部の内面から上方の該
立ち上り部側に向けてその先端が近接して屈曲する薄肉
の屈曲シール片を一体に突設して、前記屈曲シール片が
前記車体側雨樋への取付時に該車体側雨樋の立上り片外
面側に密に圧着するようにしたことを特徴とするルーフ
ドリップモールに係る。

【００１０】

【実施例】以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説
明する。図１はこの発明のルーフドリップモールの一例
を示す部分斜視図、図２はその組み付け状態を示す断面
図である。

【００１１】図１および図２に示されるように、この発
明の自動車用ルーフドリップモール１０は、下側屈曲部
１１と立上り部１２と上側屈曲部１３とからなる断面Ｃ
字状の嵌合主体部１４を備えており、自動車の車体側雨
樋２０に嵌着されて用いられる。

【００１２】下側屈曲部１１は、嵌合主体部１４の下側
を構成しており、車体側雨樋２０の下顎部２１に下面側
から係着する。また、立上り部１２は前記下側屈曲部１
１から上側に連続して設けられており、車体側雨樋２０
の立上り片２２外側を覆う形状に形成されている。上側
屈曲部１３は、前記立上り部１２の上部内側から下向き
に設けられているとともに、その先端１３Ａが立上り部
１２内側方向に近接して屈曲して形成されている。そし
て、この屈曲された上側屈曲部先端１３Ａの屈曲弾性に
伴うばねアクションによって、前記車体側雨樋２０の立
上り片頭部２３をモール立上り部１２方向に押圧すると
ともに、雨樋２０とルーフドリップモール１０の長手方
向の位置ずれを吸収する。

【００１３】この発明においては、図示のように、前記
立上り部１２の内面に、雨水などがルーフドリップモー
ル１０と車体側雨樋２０との間に浸入するのを防ぐため
の薄肉の屈曲シール片１５が一体に突設されている。こ
の屈曲シール片１５は、立上り部１２の内面から上方の
該立上り部１２側に向けて、その先端１５Ａが近接して
屈曲する略半円状に形成されており、ルーフドリップモ
ール１０を車体側雨樋２０に取り付けた際に立上り片２
２の外面に密に圧着するように構成されている。なお、
屈曲シール片１５の断面形状は、図示の略半円形状のほ
か、楕円、長円、多角形状等、任意の形状とすることが
できる。この屈曲シール片１５は薄肉に形成されてい
て、実施例では概ね０．３ｍｍないし０．８ｍｍの厚み
で形成されている。

【００１４】前記屈曲シール片１５の先端１５Ａと立上
り部１２は近接しており、その近接距離は約０．５ｍｍ
以下が望ましく、接触していてもよい。それによって、
図２のように、立上り片２２に装着した際に屈曲シール
片の先端１５Ａがモールの立上り部１２の内面に密着す
るので、シール効果が向上する。

【００１５】この屈曲シール片１５を構成する材質は、
弾力性を有する軟質樹脂であって、押出成形可能なもの
であれば何でもよいが、好ましくは非移行性タイプの熱
可塑性エラストマーである。非移行性タイプの熱可塑性
エラストマーとは、可塑剤を含むことなく弾性を示すエ
ラストマーであって、たとえばＳＥＢＳ樹脂（スチレン
−エチレン−ブチレン−スチレン樹脂）やポリウレタン
樹脂またはポリエステル系樹脂ならびにポリアミド樹脂
などである。それによって、長年の使用で可塑剤がモー
ル本体側へ移行することによるひび割れなどの発生を防
止することができる。

【００１６】本実施例において、ルーフドリップモール
１０にはステンレス箔やアルミ箔等の金属補強層１６が
埋設されているとともに、当該金属補強層１６を介して
モールの外面側には軟質合成樹脂層１７が、内面側には
剛性のある合成樹脂層１８がそれぞれ一体に形成されて
いる。金属補強層１６の厚みは実施例で約０．１５〜
０．２ｍｍ程度である。

【００１７】上記軟質合成樹脂層１７に用いられる材質
に特に限定はなく、塩化ビニル樹脂など公知の押出成形
が適用されるものであればよい。また、前記剛性のある
合成樹脂層１８は、ルーフドリップモール１０の押出形
状を安定させしかも腰強さを与えて、車体側雨樋２０へ
の嵌着を簡単かつ確実にするためのもので、ＡＢＳ樹脂
等が好適に用いられる。

【００１８】

【発明の効果】この発明の自動車用ルーフドリップモー
ルによれば、ルーフドリップモールの立ち上り部の内面
から上方の該立ち上り部側に向けてその先端が近接して
屈曲する薄肉の屈曲シール片を一体に突設したものであ
るから、まず第一に、車体側雨樋の立上り片に装着した
際に、屈曲シール片の先端がモールの立上り部の内面に
密着しつつ変形するので高いシール性能を保持すること
ができる。

【００１９】第二に、屈曲シール片の先端が自由に移動
でき変形するので、屈曲シール片自体の変形性がよくな
り、車体側立上り片外面の形状に沿いやすく、この点か
らもシール効果が向上する。

【００２０】第三に、屈曲シール片の先端がモール立ち
上り部側に向けて近接して屈曲する形状に形成されてい
るのでリップ自体の保形性がよく、従来のひれ状リップ
等のように、成形時にめくれたり折れ曲がったりするこ
とがない。

【００２１】第四に、従来の中空管状体のように上側の
根元部からの樹脂材料の漏出面が形成されないので車体
側雨樋組付時における滑り性の問題は生ぜず、さらに中
空管状体のように成形時にエアを吹き込む必要がないの
で、成形品の品質が安定する。

【００２２】第五に、成形性がよく品質が安定すること
から、屈曲シール片を薄くすることができる。実施例で
説明したように、０．３ｍｍないし０．８ｍｍのような
肉厚は従来のひれ状リップや中空管状体では実現できな
いものである。屈曲シール片を薄くすることによって、
ルーフドリップモールの車体側雨樋への組付けは容易と
なり、作業効率も格段と向上する。

【００２３】このように、この発明によれば、特別な材
料や工程を必要とすることなく、シール性、成形性およ
び組付け性に優れた信頼性の高い止水構造を有するルー
フドリップモールを提供することができた。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のルーフドリップモールの一例を示す
部分斜視図である。

【図２】その組み付け状態を示す断面図である。

【図３】従来の自動車用ルーフドリップモールの止水構
造の一例を示す断面図である。

【図４】その組付け状態を示す断面図である。

【図５】従来のルーフドリップモールの他の例を示す断
面図である。

【図６】同じく従来のルーフドリップモールの別の例を
示す断面図である。

【符号の説明】

１０ ルーフドリップモール １１ 下側屈曲部 １２ 立上り部 １３ 上側屈曲部 １４ 嵌合主体部 １５ 屈曲シール片 １６ 金属補強層 １８ 剛性樹脂層 ２０ 車体側雨樋 ２１ 下顎部 ２２ 立上り片 ２３ 立上り片頭部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島本 昌孝 愛知県豊田市トヨタ町１番地トヨタ自動車 株式会社内 (72)発明者 北村 和雄 愛知県豊田市トヨタ町１番地トヨタ自動車 株式会社内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 断面略Ｌ字状の車体側雨樋の下顎部に係
   着する下側屈曲部、および前記車体側雨樋の立上り片外
   側を覆う立上り部、ならびに先端が前記立上り部内側方
   向に屈曲されて前記車体側雨樋の立上り片頭部に係着す
   る上側屈曲部からなる断面略Ｃ字状の嵌合主体部を備え
   たルーフドリップモールにおいて、 前記立ち上り部の内面から上方の該立ち上り部側に向け
   てその先端が近接して屈曲する薄肉の屈曲シール片を一
   体に突設して、前記屈曲シール片が前記車体側雨樋への
   取付時に該車体側雨樋の立上り片外面側に密に圧着する
   ようにしたことを特徴とするルーフドリップモール。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記屈曲シール片の
   肉厚が約０．３ｍｍないし０．８ｍｍである自動車用ル
   ーフドリップモール。
3. 【請求項３】 請求項１または２において、前記屈曲シ
   ール片の先端と立ち上り部の内面との近接距離が０．５
   ｍｍ以下である自動車用ルーフドリップモール。
4. 【請求項４】 請求項１または２において、前記屈曲シ
   ール片が非移行タイプの軟質熱可塑性エラストマーによ
   ってルーフドリップモール本体と一体に押出成形された
   自動車用ルーフドリップモール。
5. 【請求項５】 請求項１ないし４のいずれかにおいて、
   ルーフドリップモール本体に金属箔補強層が埋設されか
   つ該金属箔補強層の内側が剛性のある合成樹脂層によっ
   て形成された自動車用ルーフドリップモール。