JPH083734Y2 - 無段変速機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は、無段変速機の改良に関し、詳しくは主動
力伝達経路と副動力伝達経路を並設してなる無段変速機
の改良に関するものである。

（従来技術及びその課題） 従来、固定プーリーと、この固定プーリーに対し離接
可能に対向状に設けられた可動プーリーからなる駆動プ
ーリーと、この駆動プーリーに並設される、同様な固定
プーリーと可動プーリーからなる従動プーリー間にＶベ
ルトを掛装し、駆動側又は従動側の可動プーリーを移動
させて、駆動プーリーの動力を従動プーリーへ無段階に
変速して伝達し得る無段変速機において、駆動軸と従動
軸間にギアを配設して、ギアを介し駆動側の動力を従動
側へ伝える副動力伝達経路を備えた無段変速機が存在
し、このような無段変速機において、後進時には伝達経
路を逆転させる必要上、後進時にだけ作用させる専用の
後進用ギアが設けられ、このような後進用のギア及びこ
のギア用のシャフト及び軸受により構造が繁雑となり、
又、部品点数も増加して、無段変速機全体のコストが高
くなるという問題点があった。

（課題を解決するための手段） 本考案は上記従来の問題点に鑑み案出したものであっ
て、特別な後進用の専用ギアを必要としない構造の無段
変速機を提供せんことを目的とし、その要旨は、それぞ
れニードルベアリング3,5を介し回転可能な前進用ギア
２と後進用ギア４と、前記何れかのギア2,4を固定し得
る移動可能なカップリングスリーブ７とを有する入力軸
１と、前記前進用ギア２と噛み合う前進用カウンターギ
ア10と、該ギア10と対向する後進用カウンターギア11を
固設してなるカウンター軸９と、前記後進用カウンター
ギア11及び前記後進用ギア４と噛み合う駆動ギア15を固
設し、かつ固定プリー16と可動プーリー17からなる駆動
側プーリー19を有する無段変速機入力軸13と、前記前進
用ギア２と噛み合い２方向作動クラッチ22aに支持され
た中間入力ギア22と、対向する中間出力ギア23を有する
中間軸20と、前記中間出力ギア23と噛み合う入力ギア25
を固設し、かつ固定プーリー27と可動プーリー28からな
る従動側プーリー29を有する出力軸24を備え、前記駆動
側プーリー19と前記従動側プーリー29間にＶベルト18を
掛装して動力を伝達可能に構成するとともに、前記カッ
プリングスリーブ７の移動により前記前進用ギア２を前
記入力軸１に固定した時に、前記カウンター軸９を介し
前記無段変速機入力軸13に正回転の動力が伝達され、逆
に、前記カップリングスリーブ７の移動により前記後進
用ギア４を前記入力軸１に固定した時に、前記駆動ギア
15を介し前記無段変速機入力軸13に逆回転の動力が伝達
され、かつ前記カウンター軸9,前記前進用ギア2,前記中
間軸20,前記入力ギア25を介し前記出力軸24に逆回転の
動力が伝達されるように構成したことである。

（作用） 入力軸１にニードルベアリング３を介し回転可能に設
けられた前進用ギア２は、前進時にカップリングスリー
ブ７の移動により入力軸１に固定された時に、入力軸１
からカウンター軸９を介し無段変速機入力軸13へ正回転
の動力を伝えることができ、又、逆にカップリングスリ
ーブ７が逆方向に移動されて後進用ギア４が入力軸１に
固定された時には、前進用ギア２は自由に入力軸１にニ
ードルベアリング３を介し回転することとなり、入力軸
１の回転力は後進用ギア４を介し無段変速機入力軸13の
駆動ギア15に伝えられ、この駆動ギア15から後進用カウ
ンターギア11及び前進用カウンターギア10を介し前記前
進用ギア２に動力が伝えられ、この時に前進用ギア２は
入力軸１の回りに自由に回転して、さらに動力を中間入
力ギア22に伝えることができ、中間入力ギア22及び中間
出力ギア23を介し動力は逆回転となって、入力ギア25よ
り出力軸24に伝えられる。

従って、前記前進用ギア２は、前進時には、動力を伝
える駆動ギアとして作用するとともに、後進時には、ア
イドラーギアとして逆回転の動力を伝えることができ、
後進時に動力を逆回転で伝えるために別途、後進用の専
用ギアを必要とせず、前進及び後進時に同一の前進用ギ
ア２を利用することができ、構造がシンプルなものとな
る。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図は無段変速機の概略構成図であり、第２図は第
１図の無段変速機を構成する各種ギアを組み付けた状態
の配列側面構成図である。

図において、エンジンのクランクシャフト等から動力
を受けて回転する入力軸１は玉軸受8,8を介し回転可能
に支持されており、この入力軸１の外周にはニードルベ
アリング３を介し回転可能に前進用ギア２が設けられて
いる。又、この前進用ギア２に対向させて所定間隔をお
いて入力軸１の外周にニードルベアリング５を介し回転
可能に後進用ギア４が設けられている。又、前進用ギア
２と後進用ギア４間には、シンクロナイザハブ６が入力
軸１にスプラインを介し固定されており、シンクロナイ
ザハブ６にはカップリングスリーブ７が取り付けられ、
このカップリングスリーブ７は図示しないシフトフォー
クによって入力軸１に沿って移動されるものであり、カ
ップリングスリーブ７が移動し前記シンクロナイザハブ
６が前記前進用ギア２に締結された時には、前進用ギア
２が入力軸１に固定状となり、又、逆にシンクロナイザ
ハブ６がカップリングスリーブ７により後進用ギア４と
締結された時には、後進用ギア４が入力軸１に固定状と
なるように構成されている。

この入力軸１には、平行状にカウンター軸９が軸受1
2,12を介し回転可能に設けられており、カウンター軸９
には、前進用カウンターギア10と、対向状に後進用カウ
ンターギア11がそれぞれ固設されており、前進用カウン
ターギア10は前記前進用ギア２と噛み合った状態で組み
付けられている。

又、カウンター軸９と平行状に無段変速機入力軸13が
軸受14を介し回転可能に設けられており、この無段変速
機入力軸13には、駆動ギア15が固設されており、この駆
動ギア15は前記後進用カウンターギア11と噛み合ってお
り、さらに前記後進用ギア４とも噛み合った状態で組み
付けられている。又、無段変速機入力軸13には、固定プ
ーリー16が固設されており、この固定プーリー16と対向
状に軸方向に移動可能に可動プーリー17が配設されてお
り、この固定プーリー16と可動プーリー17間に形成され
るＶ溝にＶベルト18が掛装されて、この固定プーリー16
と可動プーリー17で駆動側プーリー19を構成している。

一方、前記入力軸１と平行状に玉軸受21,21を介し中
間軸20が設けられており、この中間軸20には、２方向差
動クラッチ22aを介し中間入力ギア22が設けられてお
り、さらに中間軸20には中間出力ギア23が固設されてい
る。前記中間入力ギア22は前記前進用ギア２と噛み合っ
た状態で組み付けられている。尚、中間入力ギア22の２
方向差動クラッチ22aは、正回転及び逆回転の両方向に
おいて中間入力ギア22の回転を中間軸20に伝えることが
できるが、中間軸20の回転が遅い時のみに噛み合って回
転を中間軸20に伝えることができるもので、中間軸20の
回転が中間入力ギア22の回転よりも速い時には、空転し
て動力を伝えない構造となっている。（このような２方
向差動クラッチとして、特願平１−147820号、（特開平
３−14923号公報）、特願平１−339266号（特開平３−1
99722号公報）に開示したものがある。） 又、この中間軸20と平行状に出力軸24が軸受26,26を
介し回転可能に設けられており、この出力軸24には入力
ギア25が固設されており、この入力ギア25は前記中間出
力ギア23に噛み合った状態で組み付けられている。又、
出力軸24には、固定プーリー27と可動プーリー28が設け
られており、可動プーリー28は固定プーリー27に対し離
接する方向に軸移動可能であり、この両プーリー27,28
により従動側プーリー29が構成されている。この従動側
プーリー29には前記駆動側プーリー19からＶベルト18が
掛装され、駆動側プーリー19の動力がこの従動側プーリ
ー29を介し出力軸24に伝達されるように構成されてい
る。

この駆動側プーリー19と従動側プーリー29により主動
力伝達経路が形成されており、又、前述した入力軸1,カ
ウンター軸9,中間軸20にそれぞれ設けられた各ギアによ
り副動力伝達経路が形成されている。

このような構成において、図示しないシフトフォーク
が運転者により前進側に操作されると、カップリングス
リーブ７はシンクロナイザハブ６のスプライン上を第１
図における右側方向に移動し、前進用ギア２をクラッチ
ギヤ2aにスプライン係合することにより、入力軸１の動
力は締結固定された前進用ギア２を通し、前進用カウン
ターギア10を介しカウンター軸９に伝達され、さらにカ
ウンター軸９の後進用カウンターギア11を通し、駆動ギ
ア15を介し無段変速機入力軸13に伝達され、無段変速機
入力軸13の駆動側プーリー19が回転され、この動力はＶ
ベルト18を介し前記従動側プーリー29に伝達される。

又、入力軸１の動力は固定された前進用ギア２を通
し、前記中間入力ギア22にも伝わり、発進及び低速運転
状態では、中間入力ギア22の回転より中間軸20の回転が
遅いため、前記２方向差動クラッチ22aは噛み合って回
転を中間軸20に伝えることができ、動力は、中間軸20の
中間出力ギア23と、入力ギア25を介し、出力軸24に伝達
される。

この前進時の回転は第２図における実線で示した方向
の回転となり、各ギアを介し伝達され、この回転方向を
本例では正回転方向とする。

これに対し、シフトフォークが後進側へ操作された時
には、カップリングスリーブ７はシンクロナイザハブ６
のスプライン上を第１図における左側方向に移動し、後
進用ギア４のクラッチギヤ4aにスプライン係合すること
により、後進用ギア４が入力軸１に締結固定されること
となる。この時には、入力軸１の動力は後進用ギア４を
介し、この後進用ギア４と噛み合った駆動ギア15に伝達
され、逆回転となって無段変速機入力軸13に伝わり、逆
回転の動力がＶベルト18を介し出力軸24に伝えられる。

又、駆動ギア15の回転は後進用カウンターギア11に伝
えられ、さらに前進用カウンターギア10を介し前記前進
用ギア２にも伝えられるが、この時には前進用ギア２は
ニードルベアリング３を介し入力軸１に対し回転可能と
なっており、この場合には前進用ギア２に自由に回転す
るアイドラーギアとしての役割を果たすこととなり、動
力はこの前進用ギア２から中間入力ギア22に伝えられ、
さらに中間出力ギア23を介し入力ギア25を伝えられ、逆
回転の動力が出力軸24に伝えられる。この逆回転の伝達
方向は第２図において破線で示す。

このように本例においては、入力軸１に設けたカップ
リングスリーブ７を移動させることにより、前進時に
は、前進用ギア２を入力軸１の動力を伝える駆動ギアと
して作用させることができるとともに、後進時には、前
進用ギア２を入力軸１の回りに回転するアイドラーギア
として作用させ、逆方向の回転動力を出力軸24に伝える
ことができ、従来のような、後進時に作用する専用の後
進用ギアを設ける必要がなく、前進用ギア２を前進と後
進時に兼用して用いることができ、その分、部品点数が
少なく、コストを低減させることができ、構造的にも簡
潔な装置とすることができる。

（考案の効果） 本考案の無段変速機は、それぞれニードルベアリング
3,5を介し回転可能な前進用ギア２と後進用ギア４と、
前記何れかのギア2,4を固定し得る移動可能なカップリ
ングスリーブ７とを有する入力軸１と、前記前進用ギア
２と噛み合う前進用カウンターギア10と、該ギア10と対
向する後進用カウンターギア11を固設してなるカウンタ
ー軸９と、前記後進用カウンターギア11及び前記後進用
ギア４と噛み合う駆動ギア15を固設し、かつ固定プーリ
ー16と可動プーリー17からなる駆動側プーリー19を有す
る無段変速機入力軸13と、前記前進用ギア２と噛み合い
２方向作動クラッチ22aに支持された中間入力ギア22
と、対向する中間出力ギア23を有する中間軸20と、前記
中間出力ギア23と噛み合う入力ギア25を固設し、かつ固
定プーリー27と可動プーリー28からなる従動側プーリー
29を有する出力軸24を備え、前記駆動側プーリー19と前
記従動側プーリー29間にＶベルト18を掛装して動力を伝
達可能に構成するとともに、前記カップリングスリーブ
７の移動により前記前進用ギア２を前記入力軸１に固定
した時に、前記カウンター軸９を介し前記無段変速機入
力軸13に正回転の動力が伝達され、逆に、前記カップリ
ングスリーブ７の移動により前記後進用ギア４を前記入
力軸１に固定した時に、前記駆動ギア15を介し前記無段
変速機入力軸13に逆回転の動力が伝達され、かつ前記カ
ウンター軸9,前記前進用ギア2,前記中間軸20,前記入力
ギア25を介し前記出力軸24に逆回転の動力が伝達される
ように構成したことにより、前記前進用ギア２は、前進
時には、動力を伝える駆動ギアとして作用するととも
に、後進時には、アイドラーギアとして逆回転の動力を
伝えることができ、後進時に動力を逆回転で伝えるため
に別途、後進用の専用ギアを必要とせず、前進及び後進
時に同一の前進用ギア２を利用することができ、部品点
数が少なく、コストを低減させることができ、構造的に
も簡潔な装置とすることができる効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図は本考案の実施例を示し、第１図は本例無段変速機を
構成する構成部材の概略構成図、第２図は第１図の各種
ギアを組み付けた状態の側面配列構成図である。 １……入力軸、２……前進用ギア 3,5……ニードルベアリング ４……後進用ギア ６……シンクロナイザハブ ７……カップリングスリーブ ９……カウンター軸 10……前進用カウンターギア 11……後進用カウンターギア 13……無段変速機入力軸、15……駆動ギア 16……固定プーリー、17……可動プーリー 18……Ｖベルト、19……駆動側プーリー 20……中間軸、22……中間入力ギア 23……中間出力ギア、24……出力軸 25……入力ギア、27……固定プーリー 28……可動プーリー、29……従動側プーリー

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】それぞれニードルベアリング3,5を介し回
   転可能な前進用ギア２と後進用ギア４と、前記何れかの
   ギア2,4を固定し得る移動可能なカップリングスリーブ
   ７とを有する入力軸１と、 前記前進用ギア２と噛み合う前進用カウンターギア10
   と、該ギア10と対向する後進用カウンターギア11を固設
   してなるカウンター軸９と、前記後進用カウンターギア
   11及び前記後進用ギア４と噛み合う駆動ギア15を固設
   し、かつ固定プーリー16と可動プーリー17からなる駆動
   側プーリー19を有する無段変速機入力軸13と、 前記前進用ギア２と噛み合い２方向作動クラッチ22aに
   支持された中間入力ギア22と、対向する中間出力ギア23
   を有する中間軸20と、 前記中間出力ギア23と噛み合う入力ギア25を固設し、か
   つ固定プーリー27と可動プーリー28からなる従動側プー
   リー29を有する出力軸24を備え、 前記駆動側プーリー19と前記従動側プーリー29間にＶベ
   ルト18を掛装して動力を伝達可能に構成するとともに、 前記カップリングスリーブ７の移動により前記前進用ギ
   ア２を前記入力軸１に固定した時に、前記カウンター軸
   ９を介し前記無段変速機入力軸13に正回転の動力が伝達
   され、逆に、前記カップリングスリーブ７の移動により
   前記後進用ギア４を前記入力軸１に固定した時に、前記
   駆動ギア15を介し前記無段変速機入力軸13に逆回転の動
   力が伝達され、かつ前記カウンター軸9,前記前進用ギア
   2,前記中間軸20,前記入力ギア25を介し前記出力軸24に
   逆回転の動力が伝達されるように構成してなる無段変速
   機。