JPH083718A - 溶射被覆金属部材の製造方法 - Google Patents

溶射被覆金属部材の製造方法

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JPH083718A
JPH083718A JP6134282A JP13428294A JPH083718A JP H083718 A JPH083718 A JP H083718A JP 6134282 A JP6134282 A JP 6134282A JP 13428294 A JP13428294 A JP 13428294A JP H083718 A JPH083718 A JP H083718A
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Yutaka Ishiwatari
裕 石渡
Masaki Tamura
雅貴 田村
Masahiro Saito
正弘 齋藤
Masashi Takahashi
雅士 高橋
Yoshiyasu Ito
義康 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 金属基材の表面に、微細な金属酸化物粒子が
均一に分散した被覆層を溶射により形成し、溶射被覆金
属部材の耐食・耐酸化性を大幅に改善する。 【構成】 Ni基、Co基等の耐熱性合金基材の表面
に、金属酸化物粒子を含む耐食・耐酸化性金属からな
り、粒径が 100μm 以上の粗大粒子と50μm 以下の微小
粒子とが混合された機械的合金化粉末を溶射により被覆
する。金属酸化物としては、Al2 3 あるいは希土類
金属酸化物が使用され、全体の50体積%以上を粒径1μ
m 以下の微細粒子とする。また、機械的合金化粉末中の
微小粒子の割合は、粗大粒子に対して重量比で0.2〜
1.0倍とすることが望ましい。さらに、溶射被覆後、
真空中等で1200℃以下の温度で熱処理を施すことによ
り、耐食・耐酸化性をより向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属基材の表面に耐食
性および耐酸化性に優れた金属材料を溶射により被覆
し、溶射被覆金属部材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ガスタービンの動翼、静翼や燃
焼器のように1000℃以上の高温に長時間さらされる
部材には、高温強度に優れたニッケル(Ni)基、コバ
ルト(Co)基あるいは鉄(Fe)基合金が用いられて
いる。しかし、前記したような高温では、燃焼ガス中の
酸素や硫黄等による酸化や硫化腐食が、金属部材の寿命
低下の大きな原因となっている。そして、高温強度部材
として用いられる前記耐熱合金は、酸化や腐食に対して
は十分な耐性を有していないため、表面を耐食性および
耐酸化性に優れた金属材料で被覆することにより、高温
強度は耐熱性金属基材で、耐食・耐酸化性は被覆層で担
うという機能分担が図られている。
【0003】従来から、このような耐食・耐酸化性の金
属層を被覆する方法としては、粉末材料を溶融し基材表
面に付着させるプラズマ溶射法と、金属蒸気を基材表面
に電気的に蒸着するPVD法(物理的蒸着法)とが工業
的に用いられているが、現在では生産性やコストの面で
有利なプラズマ溶射法が主流になりつつある。この方法
は、高温のプラズマガスにより粉末状の金属材料を瞬時
に溶融させ、プラズマガスとともに金属基材の表面に吹
き付け凝固させる方法であり、こうして被覆する耐食・
耐酸化性に優れた金属材料としては、NiまたはCoを
主成分とし、これに、形成される酸化物層が酸素の拡散
を抑制する保護皮膜としての作用を有する元素として、
クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、あるいはイッ
トリウム(Y)を添加した合金材料が用いられている。
しかし、ガスタービンの翼や燃焼器において、効率向上
のための高温化や経済性向上のための長寿命化を考えた
場合には、従来からの溶射被覆金属部材は必ずしも満足
できる特性を有していないのが現状である。
【0004】一方、金属中に微細な金属酸化物粒子を分
散してなる酸化物粒子分散強化合金(ODS合金、Oxide
Dispersed Strengthened Alloys)は、金属マトリクス
中に分散された粒径が1μm 下の微細な酸化物粒子が、
金属内部の転位の動きをトラップするで高温強度を改善
した材料であり、強化粒子である金属酸化物が高温まで
マトリクス金属と反応せず安定なため、固溶強化型合金
や析出強化型合金に比べて優れた高温クリープ強度を有
している。また、このような酸化物粒子分散強化合金
は、耐酸化特性にも優れていることが確認されている。
すなわち、金属は酸素と結合し酸化物を形成すると、金
属時に比べて体積が増大して酸化物層内に内部応力を生
じる。そして、酸化が進むにつれて酸化物層(酸化皮
膜)が成長すると同時に内部応力が大きくなり、遂に酸
化皮膜が剥離する。一般に酸化皮膜は、雰囲気中から金
属基材への酸素の拡散を抑え酸化の進行を抑制する効果
があるが、酸化皮膜が剥離した時点で、金属基材の表面
は雰囲気ガスにさらされ再び急激に酸化される。この酸
化と剥離を繰り返すことにより、金属基材は徐々に減肉
(腐食減量)していくが、酸化物粒子分散強化合金は、
分散された酸化物粒子が金属基材表面に形成された酸化
皮膜と結合し、皮膜のアンカーとして機能するため、酸
化皮膜が剥離しにくくなり、その結果酸化による減肉速
度が小さくなると言われている。このように酸化物粒子
分散強化合金は、高温強度と耐食・耐酸化特性がともに
優れた材料であるが、製造プロセス的な制約から複雑な
形状を有する部材の製造が困難なため、前記したガスタ
ービンの部材への適用が制限されているのが現状であ
る。
【0005】ところで、このような酸化物粒子分散強化
合金を製造するにはいくつかの方法があるが、中でも撹
拌式ボールミルや振動式ボールミルといった高エネルギ
ータイプのボールミルを用いる機械的合金化(メカニカ
ルアロイング)法が、適用可能な材料の制約が少ないた
め、広く用いられてる。機械的合金化の原理を以下に示
す。すなわち、図4に示すように、水冷された容器1内
に、粒径が数μm の金属粉末2と金属酸化物粒子3とを
入れ、これらを、直径10mm程度の金属製またはセラミッ
ク製のボール4とともに不活性ガス中に密閉する。そし
て、アーム5のついたアジテータと呼ばれる撹拌子6を
高速で回転させることにより、ボール4同士を衝突さ
せ、ボール4間に挟まれた金属粉末2と酸化物粒子3と
に対して圧延(冷間接合)と粉砕を繰り返すことによ
り、図5に示すように、酸化物粒子3が金属マトリクス
7中に均一かつ微細に分散した機械的合金化粉末8を得
る。
【0006】因みに特開平−119657号公報では、酸化物
粒子分散強化合金の優れた耐食・耐酸化性に着目し、前
記方法で製造した、粒径が44μm 以下で0.5〜5体
積%の酸化物粒子が金属マトリクス中に分散した機械的
合金化粉末を、耐熱合金の表面に溶射により被覆するこ
とにより、耐食性および耐酸化性を著しく向上させるこ
とができることが述べられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般に
金属酸化物は溶融金属に濡れにくく、溶融金属中に酸化
物粒子を添加すると、酸化物粒子が溶融金属表面に浮遊
し凝集する。そのため、金属マトリクス中に酸化物粒子
を均一に分散させるためには、前記したような複雑な機
械的合金化方法が必要となっているのであるが、特開平
−119657号公報に述べられているように、粒径が44μ
m 以下の微小な機械的合金化粉末を、プラズマ溶射等に
より被覆した場合には、溶射時に機械的合金化粉末が完
全に溶融するため、図6に示すように、酸化物粒子3は
金属マトリクス7と分離して凝集し、凝集した酸化物粒
子層9が、溶射被覆10層中に粒径数μm から数10μ
m の粗大な粒子として存在する(図7)。なお、図中符
号11は、金属基材を示し、符号12は溶着したマトリ
クス金属の層を示す。
【0008】本発明者らは、金属マトリクス中に分散し
た酸化物粒子が微細なほど、酸化物層(酸化皮膜)の密
着性が良いことを実験的に確認しており、溶射過程で粗
大化した酸化物粒子が分散された溶射被覆層では、数回
の熱サイクルにより容易に酸化皮膜が剥離し、十分な耐
食・耐酸化性を示さないことがわかっている。また、酸
化物粒子の添加量については、添加量が増大するほど延
性が低下し脆くなる傾向を示すため、機械的特性に注目
すれば、特開平−119657号公報におけるように0.5〜
5体積%の添加は一応適正な範囲といえる。しかし、耐
食および耐酸化性については、酸化物粒子の添加量が増
大するほど酸化皮膜の密着性が向上する傾向があるた
め、溶射被覆金属部材において強度は主に金属基材が分
担することを考慮すれば、酸化物粒子の添加量について
より適正な範囲を見出だし、さらに耐食・耐酸化性の向
上を図ることが求められる。
【0009】本発明はこれらの事情に鑑みてなされたも
ので、耐熱性金属基材の表面に、金属マトリクス中に微
細な金属酸化物粒子が均一に分散した被覆層を溶射によ
り形成し、耐食・耐酸化性が著しく改善された溶射被覆
金属部材を製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述したように、従来か
らの溶射被覆金属部材の製造における問題点は、主とし
て、金属マトリクス中に酸化物粒子を微細に分散した機
械的合金化粉末が、溶射過程で完全に溶融することによ
り、酸化物粒子が溶融金属から分離し凝集することに起
因している。したがって、機械的合金化粉末を完全には
溶融させずに金属基材表面に溶射被覆することができれ
ば、酸化皮膜の密着強度を向上させ、耐食・耐酸化性を
改善することができる。
【0011】本発明者らは、溶射条件(電圧と電流)と
機械的合金化粉末の粒径を変えて金属基材表面に溶射被
覆する実験を行った結果、前記粉末の粒径が100μm
を超えると、粒子全体が溶融することなく、表面のみの
溶融が可能になることを見出した。すなわち、粒径が1
00μμm 以上の機械的合金化粉末をプラズマ溶射によ
り金属基材表面に被覆した場合には、プラズマによる加
熱で、図1に示すように、機械的合金化粉末8の表面層
13のみを溶融させることが可能であり、これにより機
械的合金化粉末8の内部は、金属マトリクス7中に酸化
物粒子3が均一に分散した溶射前と同じ状態を保つこと
ができる。また、表面層13が溶融するため、酸化物粒
子3が分離・凝集した層9が一部認められるが、その割
合は従来方法で溶射被覆した場合に比べて極わずかであ
る。
【0012】本発明の溶射被覆金属部材の製造方法は、
以上の知見に基づいてなされたもので、耐熱性金属基材
の表面に、高エネルギーミル粉砕されて機械的合金化さ
れた粉末であり、かつ微細な金属酸化物粒子を含む耐食
・耐酸化性金属材料からなる、粒径が100μm 以上の
粗大粒子と50μm 以下の微小粒子との混合粉末を、溶
射により被覆することを特徴とする。
【0013】本発明において、耐熱性金属基材として
は、Ni基合金またはCo基合金あるいはFe基合金か
らなる基材が用いられる。また、このような金属基材の
表面に溶射被覆する耐食・耐酸化性の金属材料として
は、NiおよびCoを主成分とし、Al、Cr、および
Yから選ばれた少なくとも1種の元素を含む合金が使用
される。
【0014】さらに、このような金属材料に添加され分
散される金属酸化物としては、Al2 3 とY2 3
ような希土類金属酸化物とから選ばれた少なくとも1種
の酸化物が用いられる。そして、このような金属酸化物
の添加量(含有量)は、添加量の増加とともに耐食・耐
酸化性は向上するが、添加量があまり多くなると溶射被
覆層の延性が低下して疲労亀裂の起点となる可能性があ
るため、被覆材料全体に対して10〜50体積%となる
範囲が適正と考えられる。
【0015】また本発明の製造方法において、前記金属
酸化物を含み溶射に供せられる機械的合金化粉末のうち
で粗大粒子の粒径は、100μm 〜500μm とするこ
とが望ましい。すなわち、粗大粒子を含む機械的合金化
粉末は、溶射の際の加熱で粗大粒子の表面層のみが溶融
され、未溶融層を含む溶射被覆層が形成される。そし
て、溶射に供される粗大粒子の粒径が大きくなるほど、
溶射被覆層中の未溶融層の比率が高くなり、酸化物粒子
の分離・凝集が少なくなるが、同時に溶射被覆層中に生
じる気孔の数も増加する傾向にあるため、粗大粒子の粒
径は100μm 〜500μm の範囲が適正であると考え
られる。さらに、このような粗大粒子とともに、溶射の
際に内部まで完全に溶融する粒径が50μm 以下の微小
な粒子を同時に混合して溶射に供することにより、気孔
の発生を改善することができる。因みに、このような微
小粒子と粗大粒子との混合比率は、微小粒子が多くなる
と溶射被覆層中の凝集した酸化物粒子層の数も増加する
ため、粗大粒子1に対して微小粒子を0.2〜1.0の
範囲とすることが適正と考えられる。
【0016】本発明においては、前記粗大粒子と微小粒
子とを混合した機械的合金化粉末を溶射により被覆する
ことにより、図2に示すように、溶射被覆層10中に粗
大粒子内部の未溶融層14が残り、粒径が1μm 以下の
酸化物粒子3が金属マトリクス7中に均一に分散した未
溶融層14が、溶融した薄い表面層13および微小粒子
に起因する完全溶融層15により結合した組織を呈す
る。そして、10μm 程度の大きさに凝集した酸化物粒
子層9は、溶射被覆層10中にわずかに認められるにす
ぎない。
【0017】さらに、本発明においては、このような溶
射被覆層を緻密化させ溶着(密着)強度を高めるため
に、溶射被覆後に熱処理を施すことができる。熱処理温
度は、高すぎると溶射被覆層中のマトリクス金属の結晶
が成長するばかりでなく、分散した金属酸化物粒子の成
長・粗大化も生じるため、概ね1200℃以下の温度と
することが好ましい。
【0018】
【作用】本発明の製造方法においては、耐熱性金属基材
の表面に、金属マトリクス中に微細な金属酸化物粒子を
均一に分散させた被覆層を、溶射により形成することが
できる。そして、このように形成された溶射被覆層にお
いては、被覆層中の酸化物粒子が、表面に形成される主
としてAl2 3 やCr2 3 からなる酸化皮膜と結合
して、この酸化皮膜のアンカーとして機能し、表面酸化
皮膜の密着強度を高め剥離を抑制する。そのため金属基
材表面は、常に酸素の拡散を抑制する保護作用を有する
酸化皮膜で覆われることになり、金属基材の酸化・腐食
が効果的に抑制乃至防止される。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1〜4 先に図4に示した装置を用いて、機械的合金化粉末を製
造した。すなわち、上部に内部の雰囲気を一定に保つた
めの蓋体が取付けられた水冷構造の金属製容器1と、水
冷容器1内に収容された直径10mmの金属製ボール4、
および複数のアーム5を有しモータに連結された撹拌子
6とから成る製造装置に、23Co−17Cr−13Al− 1
Y−Ni合金(数値は質量%)の粉末と酸化イットリウ
ム(Y23 )粉末とを、Y2 3 が表1に示す割合
(体積%)になるようにそれぞれ供給し、不活性ガス雰
囲気中に密閉した後、撹拌子6を毎分50〜 300回転の速
度で10〜50時間回転させ、容器1内のボール2を撹
拌し衝突させた。そして、ボール2間に挟まれたCo−
Cr−Al−Y−Ni合金粉末とY2 3 粉末との混合
粉末に圧延と粉砕を繰り返し、粒径が数100〜500
nmの微細なY2 3 粒子がCo−Cr−Al−Y−Ni
合金のマトリクス中に均一に分散した機械的合金化粉末
を製造した。このとき、撹拌時間、容器内温度、有機溶
剤の添加量等を調整することにより、粒径が100〜5
00μm の粗大粒子と、粒径が50μm以下の微小な粒
子とが、表1に示す割合で混合された機械的合金化粉末
を得た。次いで、このように調製された機械的合金化粉
末を、アルゴン、ヘリウム等のプラズマフレーム中に供
給して溶融させ、Ni基耐熱合金(16Cr− 2.5W−
1.5Mo−Ni; 数値は質量%)からなる基材の表面
に、プラズマ溶射ガンから吹き付け凝固させた。さらに
その後、こうして形成された溶射被覆層に対して、表1
に示す各温度で熱処理を行った。
【0020】また比較のために、金属基材と溶射被覆す
るマトリクス金属は実施例と同じとし、被覆材の耐食・
耐酸化性に影響を及ぼすY2 3 の添加(含有)量、な
らびに機械的合金化粉末の粒度と溶射後の熱処理温度を
それぞれ変えて、溶射被覆を行った。すなわち、比較例
1においては、実施例2および4と同じY2 3 添加量
および粒度で処理温度を高くして熱処理を行い、比較例
2では、機械的合金化粉末として粒径が100〜500
μm の粗大粒子のみを用いて溶射を行った。また、比較
例3においては、粒径が50μm 以下の微小粒子のみを
用いて溶射を行い、比較例4では金属基材のままで溶射
被覆を行わなかった。
【0021】
【表1】 次に、実施例および比較例でそれぞれ製造された溶射被
覆金属部材について、1000℃と室温との間で急加
熱、急冷却の条件下で1000回の熱サイクルをそれぞ
れ加え、熱サイクル後の重量減少率をそれぞれ測定し
た。測定結果を図3に棒グラフで示す。この図から、本
発明の実施例では、重量減少率が比較例のそれに比べて
1/2〜1/5に減り、腐食減量が大幅に低減されてい
ることが分かる。このような腐食減量の低減は、溶射被
覆層内に分散された微細な酸化物粒子が、表面の酸化皮
膜と結合しアンカーとして機能することによるものであ
る。すなわち、実施例1〜4では、粒径が100〜50
0μm の比較的大きい粒子と粒径が50μm 以下の微小
粒子とが混合された機械的合金化粉末を溶射に供し、か
つ1200℃以下の温度で熱処理を施しているので、溶
射過程で粒径が50μm 以下の微小粒子は内部まで完全に
溶融し、粒径が100〜500μm の粗大粒子はごく浅
い表面のみが溶融して溶射被覆層を形成する。その結
果、溶射被覆層中の酸化物粒子は、金属マトリクス中に
微細かつ均一に分散した状態を維持しており、表面に形
成される酸化皮膜と結合することにより酸化皮膜の剥離
を効果的に防止する。一方、比較例1のように熱処理温
度が高すぎたり、比較例3のように微小粒子のみを溶射
被覆した場合には、酸化物粒子の凝集・粗大化が起こ
り、凝集した酸化物粒子層と金属マトリクスとが完全に
分離した溶射被覆層が形成される。また、比較例2のよ
うに粗大粒子のみを溶射被覆した場合には、溶射被覆層
内に気孔を生じやすく、機械的特性や耐食・耐酸化性が
低下する。
【0022】なお、本実施例では、耐熱性金属基材およ
びマトリクス金属の組成を一定にして、溶射被覆を行っ
た例について説明したが、本実施例以外の溶射マトリク
ス金属や酸化物粒子についても同様の効果が得られる。
【0023】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の製造方法によれば、粒径 1μm 以下の微細な酸化物粒
子が均一に分散した比較的大きい機械的合金化粉末(粒
径 100以上)と、同じく酸化物粒子が分散した微小な機
械的合金化粉末(粒径50μm 以下)との混合粉末を、溶
射により被覆し、かつ適正な温度で熱処理を施している
ので、微細な金属酸化物粒子が均一に分散され、耐食・
耐酸化性が大幅に改善された溶射被覆金属部材が形成さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法において、プラズマ溶射によ
り機械的合金化粉末(粗大粒子)の表面層のみが溶融し
た状態を示す図。
【図2】本発明の製造方法により得られる溶射被覆層の
組織を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施例および比較例で得られた溶射被
覆金属部材について、熱サイクルを加えた後の重量減少
率の測定結果を示すグラフ。
【図4】一般的な機械的合金化の原理を模式的に示す
図。
【図5】機械的合金化により得られた粉末粒子を示す
図。
【図6】微小な機械的合金化粉末の溶射により、金属酸
化物粒子が分離・凝集した状態を模式的に示す図。
【図7】従来からの方法で溶射被覆された被覆層の組織
を模式的に示す図。
【符号の説明】
3………酸化物粒子 7………金属マトリクス 8………機械的合金化粉末 9………凝集した酸化物粒子層 10………溶射被覆層 13………表面層 14………未溶融層 15………完全溶融層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 雅士 神奈川県横浜市鶴見区末広町2の4 株式 会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 伊藤 義康 神奈川県横浜市鶴見区末広町2の4 株式 会社東芝京浜事業所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐熱性金属基材の表面に、高エネルギー
    ミル粉砕されて機械的合金化された粉末であり、かつ微
    細な金属酸化物粒子を含む耐食・耐酸化性金属材料から
    なる、粒径が100μm 以上の粗大粒子と50μm 以下
    の微小粒子との混合粉末を、溶射により被覆することを
    特徴とする溶射被覆金属部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 溶射被覆後、真空中または不活性ガス雰
    囲気中で1200℃以下の温度で熱処理を施す請求項1
    記載の溶射被覆金属部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記耐熱性金属基材が、Ni基合金、C
    o基合金、Fe基合金のいずれかからなる基材である請
    求項1または2記載の溶射被覆金属部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記耐食・耐酸化性金属材料が、Niお
    よびCoを主成分とし、Al、Cr、Yからなる群から
    選ばれた少なくとも1種の元素を含む合金である請求項
    1乃至3のいずれか1項記載の溶射被覆金属部材の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 前記金属酸化物が、Al2 3 および希
    土類金属酸化物からなる群から選ばれた少なくとも1種
    の酸化物であり、かつ全体の50体積%以上が粒径1μ
    m 以下の微細粒子である請求項1乃至4のいずれか1項
    記載の溶射被覆金属部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記機械的合金化された粉末中の金属酸
    化物の含有割合が、5〜50体積%である請求項1乃至
    5のいずれか1項記載の溶射被覆金属部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記機械的合金化された混合粉末におい
    て、粗大粒子に対する微小粒子の割合が、重量比で0.
    2〜1.0倍の範囲にある請求項1乃至6のいずれか1
    項記載の溶射被覆金属部材の製造方法。
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