JPH083630A - 環状体の焼入れ変形矯正方法 - Google Patents

環状体の焼入れ変形矯正方法

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JPH083630A
JPH083630A JP13446994A JP13446994A JPH083630A JP H083630 A JPH083630 A JP H083630A JP 13446994 A JP13446994 A JP 13446994A JP 13446994 A JP13446994 A JP 13446994A JP H083630 A JPH083630 A JP H083630A
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滋 沖田
Kazuo Hayakawa
和夫 早川
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 マルテンサイト変態を伴う鋼に、浸炭処理お
よび/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された
環状体に一回の変形矯正を行うことで、十分な変形矯正
を行うことが可能な環状体の焼入れ変形矯正方法を提供
する。 【構成】 焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間
に、環状体16の内径側から拘束を開始し、これに連続
して、環状体16が変態により膨張する直前に環状体1
6の外径側から拘束を開始した後、前記内径側および外
径側から同時に拘束する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環状体の焼入れ変形矯
正方法に関わり、特に、転がり軸受などに使用される鋼
の環状体を焼入れて最終製品を製造する環状体の焼入れ
変形矯正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、転がり軸受に使用されている一般
的な素材としては、炭素(C)含有量が、例えば1重量
%の軸受鋼や、炭素含有量が、0.2重量%の肌焼鋼な
どが挙げられる。前記のような軸受鋼や肌焼鋼などから
構成される環状体は、熱処理(特に、焼入れ処理)によ
り、その形状が変形することが知られている。
【0003】図1は炭素含有量の違いによる鋼の焼入時
(冷却時)における径寸法の変化のしかたの違いを概略
で示したものである。マルテンサイト変態による膨張が
熱収縮を上回る見かけ上の膨張開始点以後の膨張の割合
が、炭素含有量の増加に伴い高くなることがわかる。さ
らに、浸炭または浸炭窒化処理を行ったものでは表層部
と心部とで変態による膨張収縮のタイミングも異なる。
【0004】そこで、前記軸受鋼のように、炭素含有量
が高く、浸炭処理または浸炭窒化処理を施すことなく、
あるいは、浸炭処理および浸炭窒化処理を施さずに焼入
れ処理を行うことで、表面から心部まで所望の硬さが均
一に得られる鋼(以下、『完全硬化鋼』という)を使用
した環状体の場合には、図1に示した通りマルテンサイ
ト変態による膨張量が大きく、当該環状体の熱処理によ
る変形を矯正する方法として、後で理由を述べるように
膨張開始後当該環状体を外径側から拘束する方法(以
下、『外径拘束』という)により変形矯正が効果的に行
われる。
【0005】なお、本発明では、浸炭処理または浸炭窒
化処理のいずれか一方を施すか、あるいは、浸炭処理お
よび浸炭窒化処理の両方を施すことを、以下、『浸炭処
理および/または浸炭窒化処理を施す』ということにす
る。一方、前記肌焼鋼のように、炭素含有量が低く、浸
炭処理および/または浸炭窒化処理を施した後に焼入れ
処理を行うことで、表面に所望の硬さを得る鋼を使用し
た環状体の場合には、膨張開始点後の膨張量も小さく、
心部と表層部との変態のタイミングのずれもあり、後述
するように外径拘束ではうまく矯正できない。そこで、
当該環状体の熱処理による変形を矯正する方法として、
当該環状体を内径側から拘束する方法(以下、『内径拘
束』という)が行われている。
【0006】ここで、前記肌焼鋼は、浸炭処理および/
または浸炭窒化処理を施すことで、焼入れ時に圧縮残留
応力が発生し、その疲労強度が向上する特性を備えてい
る。また、前記肌焼鋼は、素材としては炭素含有量が低
いので、前加工工程を容易に行えるという利点がある。
しかしながら、肌焼鋼は、完全硬化鋼と比較すると、浸
炭処理や浸炭窒化処理を行う分、手間やコストがかかる
という問題もある。
【0007】そこで、近年では、前記コストの増加を抑
制することができる素材として、浸炭処理時間または浸
炭窒化処理時間を減らしても、表面に所望の硬さを得る
ことができる中炭素鋼(炭素を0.3重量%以上、0.
7重量%以下の範囲内で含有する)が、転がり軸受をは
じめとした疲労強度が必要とされる各機械部品に使用さ
れてきている。
【0008】また、前記環状体の焼入れ変形矯正技術と
しては、特開平3−44421号公報、特開昭62−3
7315号公報、特公昭58−31369号公報および
実公昭55−13405号公報などに開示された従来例
がある。これらの従来例では、肌焼鋼に浸炭処理および
/または浸炭窒化処理を施したものや、完全硬化させる
ものも、全て同一方法、すなわち、外径拘束か内径拘束
のいずれか一方を施すことで環状体の変形矯正を行って
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開平3−44421号公報、特開昭62−37315号
公報、特公昭58−31369号公報および実公昭55
−13405号公報などに開示されている従来例では、
肌焼鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した
環状体や、完全硬化させた環状体など、種々の素材から
構成されている環状体に、全て同一の方法(外径拘束、
内径拘束のうちのいずれか一方)で焼入れ変形矯正を行
っているため、得られた種々の環状体に適した効率のよ
い変形矯正を行うことが非常に困難であるという問題が
ある。
【0010】また、特に素材の炭素含有量が、0.3重
量%以上、0.7重量%以下である中炭素鋼に、浸炭処
理および/または浸炭窒化処理を施した素材から構成さ
れた環状体は、図1に示したように、膨張開始点後の膨
張量が高炭素鋼(軸受鋼)と低炭素鋼(肌焼鋼)との中
間程度であること、およびその表面と心部とで変態する
タイミングが異なるということのため、従来の方法では
最適な変形矯正を行うことができないという問題があ
る。
【0011】すなわち、膨張開始点後外径拘束により変
形矯正を行おうとしてもこの時点では心部は変態を終了
し、弾性変形に移行していること、さらにまた、中炭素
鋼は、変態膨張量が完全硬化鋼より少ないため、十分な
変形矯正を行うことができない。一方、前記中炭素鋼に
浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した素材から
構成された環状体に、内径拘束を行った場合には、当該
環状体は、肌焼鋼から構成された環状体より変態膨張量
が大きいため、変形矯正後の膨張による変形が発生する
という欠点がある。従って、中炭素鋼に浸炭処理および
/または浸炭窒化処理を施した素材から構成された環状
体に、完全な変形矯正を行うことができないという問題
がある。
【0012】このように、前記中炭素鋼は、浸炭処理時
間または浸炭窒化処理時間を減らしても、表面に所望の
硬さを得ることができるという利点がある反面、十分な
変形矯正ができないという問題がある。そして、特に、
熱処理後に研削処理を行う転がり軸受では、熱処理変形
は研削コストを著しく増加させてしまうと共に、取り代
が不均一になり、品質のバラツキを発生させる虞れもあ
る。
【0013】本発明は、このような従来の問題点を解決
することを課題とするものであり、マルテンサイト変態
を伴う鋼に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施
した素材から構成された環状体に一回の変形矯正を行う
ことで、十分な変形矯正を行うことが可能な環状体の焼
入れ変形矯正方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明は、マルテンサイト変態を伴う鋼からなる環
状体の焼入れ変形矯正方法に関するものであって、焼入
れ開始温度から600℃以上の温度の間に、前記環状体
の内径側から拘束を開始する第一工程と、前記第一工程
に連続して、前記環状体が変態により膨張する直前に、
該環状体の外径側から拘束を開始する第二工程と、を含
むことを特徴とする環状体の焼入れ変形矯正方法を提供
するものである。
【0015】また、前記環状体の焼入変形矯正方法にお
いて、前記第2工程後あるいはこれと同時に前記内径側
および外径側から同時に拘束するようにしてもよい。
【0016】
【作用】本発明によれば、マルテンサイト変態を伴う鋼
からなる環状体を焼入れ変形矯正する際に、焼入れ開始
温度から600℃以上の温度の間、すなわち、600℃
以上、焼入れ開始温度以下の温度範囲にある際に、環状
体の内径側から拘束を開始し、これに連続して、前記環
状体が変態により膨張する直前に、外径側から拘束を開
始したする方法をとっているため、一回の変形矯正で、
前記環状体に、内径拘束と外径拘束の両方の特性が十分
に付与され、前記環状体に十分な変形矯正が行える。
【0017】以下、この理由を説明する。転がり軸受に
使用されている肌焼鋼(炭素含有量=0.2重量%)
に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したもの
は、焼入れ時に、その心部は、表面層に比べて早く変態
し始め、変態が進むにしたがって、弾性力を持つように
なる。このため、心部のマルテンサイト変態開始点(M
s点)またはその付近まで温度が低下してから変形矯正
を始めた場合には、環状体の全周(表層部)が変形矯正
されても、心部は、弾性変形が支配的になっており、焼
入れ完了後に変形矯正冶具を取り外すと、ほとんど変形
矯正前の状態に戻ってしまう。
【0018】すなわち、浸炭処理および/または浸炭窒
化処理を施した素材に、内径拘束方式で変形矯正を行う
場合には、収縮小のできるだけ高温時から変形矯正を開
始し、環状体の収縮と共に、なるべく変態が少ない間に
変形矯正することが要求される。図2は、従来の内径拘
束による焼入れ処理後の変形率(%)と内径拘束開始温
度(変形矯正開始温度)(℃)との関係を示す図であ
る。
【0019】鋼の変形率は、環状体の外径と、当該外径
の真円度との比である。図3に示すように、各種鋼(S
CR420,SCR430,SCR440)の変形率
(%)は、内径拘束開始温度(℃)が、600℃以下の
場合は、変形率が急速に大きくなる、すなわち、変形矯
正能力が急速に低下することが判る。これより、本発明
では、内径拘束開始温度(℃)を、600℃以上、焼入
れ開始温度以下、の範囲(焼入れ開始温度から600℃
以上の温度の間)で行うように限定した。
【0020】また、より精密な変形矯正を行うことが必
要とされる場合には、内径拘束開始温度(℃)を、80
0℃以上、焼入れ開始温度以下、の範囲で行うことが好
適である。浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施し
た素材に焼入れ処理を行い、変態硬化させた場合、当該
素材の表面に圧縮残留応力が発生する。これは、浸炭処
理および/または浸炭窒化処理を行うと、表面部と内部
で変態温度が異なり、内部の変態温度が高く表面部は低
い。そのため、内部の変態膨張が表面部に先行して起こ
ることで表面に圧縮残留応力が発生する(『金属熱処理
技術便覧』第337頁、金属熱処理技術便覧編集委員会
編、昭和44年8月31日発行)。
【0021】熱処理後に研削加工を行う転がり軸受で、
表面に圧縮残留応力があり、さらに変形が大きいもの
は、前記研削加工後に応力のバランスが変化して、再び
変形してしまう。このようなものには、再研削しなけれ
ばならない場合がある。現状では、環状体が焼入れ処理
時に真円度がその直径の0.1%を越えた場合に、再研
削を行う可能性が高くなる。
【0022】図3は、従来の内径拘束による焼入れ処理
後の変形率(%)と、素材に含有される炭素量(重量
%)との関係を示す図である(変形矯正温度600℃の
場合)。素材の炭素含有量が、0.3重量%を越えてい
る場合には、変形矯正が不十分となり、再研削を行う可
能性が高くなる。
【0023】変態膨張量は、焼入れ条件や成分の影響も
あるが、おもに焼入れ時に固溶する炭素量によって変化
する(『金属熱処理技術便覧』、第355頁、金属熱処
理技術便覧編集委員会編、昭和44年8月31日発
行)。素材の炭素含有量が、0.3重量%以上である
と、変態膨張量がさらに大きくなり、内径拘束方式で変
形矯正を行う場合には、変形矯正後に当該素材が膨張し
て変形が発生してしまう。
【0024】すなわち、素材に含まれる炭素量が、0.
3重量%以上のものは、肌焼鋼の場合とは異なり、変態
膨張量が大きくなりすぎて内径拘束のみでは、完全に変
態矯正することができない。従って、本発明では、内径
拘束に続いて外径拘束を行うようにした。外径拘束方式
では、Ms点以後、マルテンサイト変態による膨張時に
変形矯正を開始して変形矯正を行う。この外径拘束方式
では、変態途中に応力が加わると、容易に塑性変形を起
こす変態誘起超塑性(以下、『トリップ現象』という)
を利用して、環状体が変態膨張して変形矯正冶具にあた
り、塑性変形していくことで変形矯正される(『鉄鋼便
覧I基礎』、第522頁、日本鉄鋼協会編、昭和56年
6月20日発行)。
【0025】このため、軸受鋼など、素材に含有される
炭素量が、1.0重量%程度の完全硬化鋼の場合、当該
素材の表面と心部とが、ほぼ同時に変態することに加
え、全体の固溶炭素含有量が高く、変態膨張量が大きい
ので、外径拘束方式を行うことが有効である。一方、肌
焼鋼に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した
ものに対しては、心部の変態がほぼ終了しているので、
心部の弾性力が強く、また、全体の変態膨張量が小さい
ので、外径拘束方式は、ほとんど変形矯正力がない。
【0026】図4は、炭素含有量が、0.4重量%以
上、0.8重量%以下の素材に、浸炭処理および/また
は浸炭窒化処理を施した環状体を焼入れた際に、従来の
外径拘束方式で変形矯正した場合の変形率(%)と素材
の炭素含有量(重量%)との関係を示す図である。図4
に示すように、炭素含有量が、0.7重量%以下になる
と、変形率(%)が急速に増加する、すなわち、変形矯
正が変形矯正能力が急速に低下することが判る。
【0027】つまり、炭素含有量が、0.7重量%以下
の素材に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施した
ものは、変態膨張量が、完全硬化鋼より小さくなるこ
と、また、心部で変形矯正開始前に変態が進行してしま
い弾力性を持つようになることから、外径拘束方式で
は、完全に変形矯正することができない。そこで、本発
明では、マルテンサイト変態を伴う素材(鋼)、特に、
炭素含有量が、0.3重量%以上、0.7重量%以下の
素材に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したも
のは、肌焼鋼に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を
施したものに比べ、全体の変態膨張量が大きくなるこ
と、さらに、心部の変態開始が表面層に比べて早いこと
に着眼し、600℃以上の温度から内径拘束を開始して
変形矯正を行い、続いて、前記環状体が変態により膨張
する直前に、外径拘束を開始してトリップ現象による変
形矯正を行うことにした。
【0028】ここで、前記環状体に行う内径拘束は、焼
入れ開始温度から600℃以上(より好ましくは800
℃以上)の温度の間に行うが、この時、冷却と同時に加
圧矯正を加えると、さらに矯正効果が向上される。ま
た、炭素含有量が、0.3重量%付近にある環状体の変
形矯正は、内径拘束が主流となり、外径拘束が内径拘束
を補助するかたちとなる。一方、炭素含有量が、0.7
重量%付近にある環状体の変形矯正は、内径拘束で補助
的に変形矯正した後、外径拘束が主流となって変形矯正
されるかたちとなる。
【0029】すなわち、本発明では、一回の変形矯正
で、従来の内径拘束と外径拘束の両方の特性を十分に活
用させることができるため、従来では、十分な変形矯正
が行えなかったマルテンサイト変態を伴う鋼、特に、中
炭素鋼(炭素を0.3重量%以上、0.7重量%以下の
範囲内で含有する)に、浸炭処理および/または浸炭窒
化処理を施した素材から構成された環状体が、完全に変
形矯正される。
【0030】図5に本発明に係る変形矯正方法により、
中炭素鋼に浸炭および/または浸炭窒化したものを変形
矯正する場合の冷却時の寸法変化の様子の概略を示す。
膨張開始点以後の外径拘束のみをしたとすると、さきに
も述べたとおり、この時点では心部の変態はほぼ終了し
ており、拘束を行っても型を外すと心部の弾性力によ
り、元に戻ってしまう。すなわち、変形矯正をしないの
と同じことになってしまう。したがって、収縮中のでき
るだけ早い時点で内径拘束を開始する。これにより、型
に沿って変形する(図4のA点からB点)。
【0031】その後何もしないとB点をすぎてからの膨
張量が低炭素鋼の場合と異なり無視できない。B点以
降、破線で示すフリーの場合の曲線と平行に膨張を開始
し、変形を生じる原因となる。そこで、B点以後のでき
るだけ早い時点で今後は外径拘束を開始する(図4のC
点)。B点以降の膨張は、前述のように変態誘起超塑性
を利用して変形矯正することができる(図4のC点から
D点)。このように、ほぼ外径拘束治具の内径面と同
じ、歪みの小さな外径面を有する環状体が得られる。
【0032】また、本発明にかかる変形矯正方法では、
環状体の内径側と外径側の両方から変形矯正を行うた
め、焼入れによる環状体のねじれ変形の発生が最低限に
抑えられる。このねじれ変形は、環状体が焼入れ時に焼
入れ冷却剤に浸漬される方向や、焼入れ油の攪拌状況や
環状体の形状などによって発生するものである。そし
て、特に、円錐ころ軸受など、その肉厚が変化するもの
に浸炭処理および/または浸炭窒化処理を施したものに
発生しやすい。
【0033】ここで、前記内径拘束に連続して行う外径
拘束の開始温度が高すぎると、環状体が冶具と干渉する
虞れがある。このため、外径拘束を開始するタイミング
を図ることが要求されるが、通常の焼入れでは、数秒で
200〜300℃まで油冷され、その後は、比較的ゆっ
くり冷却されるので、外径拘束を開始するタイミングは
取りやすく問題はない。
【0034】この環状体の焼入れ変形矯正方法を実施す
る際に使用する環状体の焼入れ変形矯正装置としては、
焼入れ剤を収容する焼入れ槽の上方に加圧シリンダを配
設し、当該加圧シリンダの下方に伸びるピストンロッド
の中間部に第2のピストンおよびこれと係合され前記ピ
ストンロッド上を上下に移動可能に設けられた第2加圧
シリンダと、当該第2加圧シリンダの下面に配設され、
前記環状体の外径側を拘束する外径拘束冶具とを設置
し、前記ピストンロッドの下端に前記外径拘束冶具と同
軸となるように配され、且つ前記環状体の内径側を拘束
する内径拘束冶具を配設した構造を有し、前記外径拘束
冶具と内径拘束冶具は、各々独立して移動可能且つ各々
同時に移動可能であることを特徴とする環状体の焼入れ
変形矯正装置を提供することができる。
【0035】この環状体の焼入れ変形矯正装置では、外
径拘束冶具と内径拘束冶具が、各々独立して移動可能且
つ各々同時に移動可能であるため、たとえば、加熱され
た環状体の内径側に内径拘束冶具を係合させて、内径拘
束を開始し、内径拘束しながら当該環状体を冷却する工
程に続いて、前記内径拘束をしたまま前記環状体の外径
側に外径拘束冶具を係合させて、外径拘束を開始し、前
記内径拘束と外径拘束とを同時に行うことができる。
【0036】前記内径拘束冶具および外径拘束冶具は、
たとえば、円筒ころ軸受の内輪および外輪、円錐ころ軸
受の内輪および外輪などのような、形状矯正を行う環状
体の形状に応じた形状のものが使用される。また、内径
拘束冶具および外径拘束冶具の形状を任意に変更するこ
とで、軸受の内輪や外輪以外の環状体の焼入れ変形矯正
を行うこともできる。すなわち、内径拘束冶具および外
径拘束冶具の形状を、変形矯正すべき環状体の形状によ
り変更することで、あらゆる形状の環状体の形状矯正が
行われる。
【0037】また、前記内径拘束冶具および外径拘束冶
具を着脱可能にすることで、焼入れ変形矯正すべき環状
体に応じた内径拘束冶具および外径拘束冶具を簡単に交
換することもできる。そしてまた、前記内径拘束冶具
に、環状体の上部と当接して環状体を係止する係止部を
配設することで、焼入れ終了後の環状体が膨張して、そ
の外径側が外径拘束冶具に拘束された状態にあっても、
当該環状体は、前記係止部に係止された(ひかかった)
状態となっているため、内径拘束冶具に対して外径拘束
冶具を先に引き上げることができる。従って、前記環状
体は、外径拘束冶具と内径拘束冶具との間から簡単に取
り外される。
【0038】このように、前記環状体の焼入れ変形矯正
装置を使用することで、従来の内径拘束と外径拘束の両
方を行うことができ、前記環状体に、内径拘束と外径拘
束の両方の利点が同時に付与される。
【0039】
【実施例】次に、本発明にかかる一実施例について説明
する。本実施例は内周面がテーパ状に形成されている、
例えば円錐ころ軸受の外輪を焼入れする場合の一例を示
すものである。図8は、本発明の実施例にかかる環状体
の焼入れ変形矯正装置の断面構成図、図9は、図8に示
す環状体の焼入れ変形矯正装置の部分拡大図である。
【0040】図8および図9に示す環状体の焼入れ変形
矯正装置1は、架台30上に設置された焼入れ槽17
と、焼入れ槽17の上方に配設され且つ図示しないフレ
ームに固定された加圧シリンダ10と、加圧シリンダ1
0のピストンロッド13に移動可能に配設された外径拘
束冶具14と、ピストンロッド13の下端に固定された
内径拘束冶具15と、を含んで構成されている。外径拘
束治具14の内径は、環状体16を内径拘束後、環状体
16が膨張し始めるとまもなくその外径面が接触し、変
形矯正(外径拘束)を行い得る大きさに仕上げられてい
る。
【0041】焼入れ槽17は、その上部の中央が、焼入
れ槽17の上部から着脱可能な環状体載置部24となっ
ている。この環状体載置部24には、形状矯正が行われ
る環状体16が載置される。本実施例においては、焼入
れ冷却剤としては油が使用されている。前記環状体載置
部24の中央部には、円形状の穴が開口されており、こ
の穴の外周部には、下方から中空の円筒部材からなる焼
入れ油配管20が設置されている。そして、焼入れ油配
管20から供給される焼入れ油を環状体載置部24の穴
から出すことができるようになっている。なお、焼入れ
油配管20には、図示しない焼入れ油供給装置が接続さ
れており、ここから焼入れ油配管に所望の焼入れ油が供
給されるようになっている。そして、必要な時にのみ、
環状体載置部24の穴から焼入れ油を出すことができる
ように、コントロールされている。
【0042】この焼入れ油配管20には、焼入れ油配管
20を上下運動させるシリンダ装置21が接続されてい
る。すなわち、シリンダ装置21のピストンロッド22
に、焼入れ油配管20が取付けされており、ピストンロ
ッド22が上下運動することで、焼入れ油配管20が上
下運動するようになっている。ここで、前記環状体載置
部24には、この焼入れ油配管20が配設されているた
め、環状体載置部24は、焼入れ油配管20の上下運動
に応じて前記焼入れ槽17内を上下移動可能となる。
【0043】また、前記焼入れ槽17には、図示しない
焼入れ油供給装置から供給される焼入れ油を焼入れ槽1
7内に供給する焼入れ油噴出口18が複数設けられてい
る。この焼入れ油噴出口18からは、焼入れ油が勢い良
く噴出されるように供給される。なお、符号19は、焼
入れ油の上面を示している。前記加圧シリンダ10は、
メインプレスシリンダ11と、その下方に配設されたサ
ブプレスシリンダ12とを備えている。この加圧シリン
ダ10のピストンロッド13は、メインプレスシリンダ
11のピストンロッドであると同時に、サブプレスシリ
ンダ12のピストンロッドでもある。このメインプレス
シリンダ11およびサブプレスシリンダ12共に、空圧
シリンダや油圧シリンダなど、種々のシリンダ装置が使
用可能である。
【0044】サブプレスシリンダ11の下面には、環状
体16の外径側を拘束する外径拘束冶具14が着脱可能
に固定されている。すなわち、この外径拘束冶具14
は、後に詳述するが、サブプレスシリンダ11の動きに
応じて、ピストンロッド13の軸方向に上下移動可能と
なっている。また、メインプレスシリンダ11およびサ
ブプレスシリンダ12により外径拘束治具14および内
径拘束治具15が最下点に達したときに、外径拘束治具
14の底面および内径拘束治具15の底面と環状体載置
部24との間には、すきまができるように構成されてい
る。
【0045】ピストンロッド13の下端には、環状体1
6の内径側を拘束する内径拘束冶具15が着脱可能に固
定されている。すなわち、外径拘束冶具14と内径拘束
冶具15は、各々独立して移動可能となっていると共
に、各々同時に移動可能となっている。外径拘束冶具1
4および内径拘束冶具15の形状は、環状体16の形状
に応じて決定される。本実施例では、図9に示すよう
に、環状体16として、円錐ころ軸受の外輪を使用し、
この外輪の形状矯正を行うことが可能な外径拘束冶具1
4および内径拘束冶具15を用いた。この内径拘束冶具
15の外側(外径拘束冶具14側)には、環状体16の
上部に当接し、該環状体16を係止する係止部25が設
けられている。また、内径拘束治具15には、焼入れ油
供給配管20から供給される焼入れ油が内部からワーク
(環状体)内周面に焼入れ油を供給可能とするため、複
数のスリットが設けられている。
【0046】このように、前記外径拘束冶具14および
内径拘束冶具15は、共に、着脱可能に固定されている
ため、他の形状を備えた外径拘束冶具および内径拘束冶
具と簡単に交換することができる。次に、本実施例にか
かる環状体の焼入れ変形矯正装置1の具体的動作につい
て説明する。
【0047】先ず、図8(1)では、環状体載置部24
上の所定位置に、加熱された環状体16(ここでは、円
錐ころ軸受の外輪)を載置する。この時、シリンダ装置
21は作動状態で環状体載置部24は最上部にある。次
に、図8(2)では、メインプレスシリンダ11を作動
し、ピストンロッド13を下降させ、前記環状体16の
内径側に内径拘束冶具15をセットする。この時、同時
に、サブプレスシリンダ12および外径拘束冶具14
も、ピストンロッド13の下降に伴って下降する。
【0048】次いで、図8(3)では、シリンダ装置2
1は作動状態を保っているが、メインプレスシリンダ1
1の下向きの力の方がシリンダ装置21の上向きの力よ
り強いため押され、環状体を支えた状態でピストンロッ
ド22および焼入れ油供給配管20が下降し、環状体載
置部24上に載置された環状体16が焼入れ槽17内に
入り、内径拘束を開始する。この時、焼入れ油供給配管
20から焼入れ油を噴出させると共に、焼入れ油噴出口
18から焼入れ油を噴出させる。なお、この内径拘束
は、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の間に行っ
た。ここまでの工程は数秒のレベルで行われた。
【0049】次に、図8(4)では、図8(3)に引き
続いて(スタートから数秒〜10数秒後)、サブプレス
シリンダ12を作動し、外径拘束冶具14を下降させて
環状体16の外径側に外径拘束冶具14をセットし、外
径拘束を開始する。このようにして、内径拘束および外
径拘束を同時に行う。なお、この外径拘束は、環状体1
6が変態により膨張する直前に行った。
【0050】その後、環状体16の形状矯正が終了した
際には、サブプレスシリンダ12の作動を停止し、外径
拘束冶具14を引き上げて環状体16から外径拘束冶具
14を取り外す。この時、環状体16は、膨張してお
り、その外径側が外径拘束冶具14に拘束された状態と
なっているが、環状体16は、内径拘束冶具15の係止
部25により係止されているため、外径拘束冶具14を
簡単に引き上げ、図8(3)の状態にすることができ
る。また、この状態では、環状体16は、内径拘束部材
15に拘束されていないため、内径拘束冶具15を引き
上げると、図8(1)の状態に戻る。
【0051】このように、環状体の焼入れ変形矯正装置
1を使用することで、従来の内径拘束と外径拘束の両方
を行うことができ、環状体16に、内径拘束と外径拘束
の両方の利点が同時に付与することができる。この結
果、環状体に、十分な変形矯正を行うことが可能とな
る。次に、本実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯正装
置1を使用して、以下に示す調査を行った。
【0052】表1に示す組成の鋼種からなる環状体に、
下記に示す熱処理(浸炭処理、焼入れ処理および焼戻し
処理)を行う。 (熱処理) 浸炭条件 930℃にて6時間 焼入れ条件 850℃にて30分間 焼入れ油の温度 80℃ 焼戻し条件 170℃にて2時間 環状体(リングPT) 円錐ころ軸受30312外輪
(外径=130mm,幅=22mm) 但し、SUJ2には、浸炭処理は施さない。
【0053】
【表1】
【0054】次に、前記熱処理が施された各々の環状体
(試験片)に、表2に示す変形矯正を行い、実施例1〜
実施例16を得る。次に、比較として、前記熱処理が施
された各々の環状体(試験片)に、表3に示す変形矯正
を行い、比較例17〜比較例43を得る。なお、表2お
よび表3に示す変形矯正方法の内容を以下に示す。 (変形矯正方法) 内−800 800℃から内径拘束開始(内径拘束
のみ) 内−600 600℃から内径拘束開始(内径拘束
のみ) 内−500 500℃から内径拘束開始(内径拘束
のみ) 内−400 400℃から内径拘束開始(内径拘束
のみ) 外 外径拘束のみ 内外800 800℃から内径拘束を開始し、続け
て試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行い、
さらに内径拘束および外径拘束を同時に行う 内外600 600℃から内径拘束を開始し、続け
て試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行い、
さらに内径拘束および外径拘束を同時に行う 内外500 500℃から内径拘束を開始し、続け
て試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行い、
さらに内径拘束および外径拘束を同時に行う 次に、このようにして得られたそれぞれの試験片(実施
例1〜実施例16、比較例17〜比較例43)の平均変
形率(%)および平均傾斜量(mm)を以下に示す方法
で測定する。実施例1〜実施例16の平均変形率(%)
および平均傾斜量(mm)を表2に、比較例17〜比較
例43の平均変形率(%)および平均傾斜量(mm)を
表3に示す。
【0055】なお、前記傾斜は、焼入れ時に環状体が焼
入れ油に浸漬される方向や、焼入れ油の攪拌状況や、環
状体の形状によって発生するものである。特に、肉厚が
変化する円錐ころ軸受などに、浸炭処理および/または
浸炭窒化処理を施したものに発生しやすい。そして、熱
処理後、研削を行う軸受などでは、傾斜の発生により研
削工程に著しい支障が発生し、大きい傾斜があると研削
不良が発生する場合もある。 (平均変形率測定方法)試験片の最大径と最小径とを測
定し、その差を真円度とする。この真円度を外輪外径
(130mm)で割った値を、試験片の変形率(%)と
する。測定数は、60個とし、その平均値をもって平均
変形率(%)とした。 (傾斜量測定方法)試験片の外周面で、上下の円弧部を
除いた直線部の上端部と下端部における最大径と最小径
とを測定する。この最大径部および最小径部における4
か所での上下端部の差の平均をもって平均傾斜量(m
m)とした。なお、前記上端部と下端部との距離は、1
8mmであった。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】表2および表3から、800℃から内径拘
束を開始し、続けて試験片が変態により膨張する直前に
外径拘束を行い、さらに内径拘束および外径拘束を同時
に行って得たものと、600℃から内径拘束を開始し、
続けて試験片が変態により膨張する直前に外径拘束を行
い、さらに内径拘束および外径拘束を同時に行って得た
もの(実施例1〜実施例16)は、平均変形率(%)お
よび平均傾斜量(mm)とも小さく、良好な結果が得ら
れたことが判る。そして、特に、800℃から内径拘束
を開始し、続けて試験片が変態により膨張する直前に外
径拘束を行い、さらに内径拘束および外径拘束を同時に
行って得たものの平均変形率(%)および平均傾斜量
(mm)が優れていたことが判る。
【0059】これは、実施例1〜実施例16では、内径
拘束と外径拘束の両方の特性が十分に活用され、試験片
に十分な変形矯正が行えたためである。一方、比較例1
7〜比較例43は、平均変形率(%)および平均傾斜量
(mm)とも実施例1〜実施例16に比べて大きくなっ
たことが判る。これは、比較例17〜比較例43では、
内径拘束と外径拘束の両方の特性が十分に活用されず、
試験片に十分な変形矯正を行えなかったためである。
【0060】図6に、内外800、内外600、内外5
00を行った試験片(素材)に含まれる炭素量(重量
%)と、平均変形率(%)との関係を示す。図6から、
内径拘束開始温度が600℃以上で内外径拘束を行った
場合、素材の酸素量が0.2重量%の肌焼鋼から0.3
〜0.7重量%の中炭素鋼および1重量%の軸受鋼まで
全ての場合で完全に変形矯正できることがわかる。ただ
し、内径拘束開始温度が500℃である場合(内外50
0)は内外径拘束を行っても素材の炭素量が比較的低
く、内径拘束を主流として変形矯正を行う0.2〜0.
6重量%では完全に変形矯正することができなかったこ
とがわかる。
【0061】図7に、各々の試験片の平均変形率(%)
と、平均傾斜量(mm)との関係を示す。図7から、内
外800、内外600、内外500を行った試験片は、
同一変形率に対して傾斜量が減少していることが判る。
なお、本実施例では、図8および図9に示す環状体の焼
入れ変形矯正装置1を使用した場合について説明した
が、これに限らず、本発明にかかる環状体の焼入れ変形
矯正方法は、焼入れ開始温度から600℃以上の温度の
間に、前記環状体の内径側から拘束を開始し、これに連
続して、前記環状体が変態により膨張する直前に、該環
状体の外径側から拘束を開始する方法(その後本実施例
のように内径側、外径側から同時に拘束してもよい)を
行うことができれば、他の構造を備えた変形矯正装置を
使用してもよいことは勿論である。
【0062】また、本実施例で使用した環状体の焼入れ
変形矯正装置1の構成要素である外径拘束冶具14およ
び内径拘束冶具15は、図8および図9に示す構造の
他、環状体の形状に応じて変更することが可能である。
たとえば、環状体が、円筒ころ軸受の外輪である場合に
は、図10に示すように、円筒ころ軸受の外輪である環
状体16Aの内径側を拘束することが可能な形状を備え
た内径拘束冶具15Aと、環状体16Aの外径側を拘束
可能な外径拘束冶具14Aを使用すればよい。
【0063】また、環状体が、円錐ころ軸受の内輪であ
る場合には、図11に示すように、円筒ころ軸受の内輪
である環状体16Bの内径側を拘束することが可能な形
状を備えた内径拘束冶具15Bと、環状体16Bの外径
側を拘束可能な外径拘束冶具14Bを使用すればよい。
さらにまた、前記環状体の焼入れ変形矯正装置1は、軸
受の内輪や外輪の焼入れ変形矯正を行うことができる
他、外径拘束冶具14および内径拘束冶具15の形状を
変更することで、他の形状を備えた環状体の焼入れ変径
矯正を行うことが可能である。
【0064】また、本実施例では、表1に示す組成の鋼
種からなる環状体に、浸炭処理を行ったが、これに限ら
ず、浸炭処理に替えて浸炭窒化処理を施してもよく、ま
た、浸炭処理と浸炭窒化処理の両方を施してもよい。ま
た、上記実施例では、焼入れ冷却剤として焼入れ油を使
用しているが、本発明において冷却剤の種類は問わず、
油に代え水等としてもよいのは勿論である。
【0065】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明にかか
るマルテンサイト変態を伴う鋼からなる環状体を焼入れ
変形矯正する際に、焼入れ開始温度から600℃以上の
温度の間、すなわち、600℃以上、焼入れ開始温度以
下の温度範囲にある際に、環状体の内径側から拘束を開
始し、これに連続して、前記環状体が変態により膨張す
る直前に、外径側から拘束を開始した後、当該環状体を
内径側および外径側から同時に拘束することで、前記環
状体に、内径拘束と外径拘束の両方の特性を十分に付与
することができる。この結果、一回の変形矯正で、前記
環状体に十分な変形矯正を行うことができ、傾斜の発生
も最小限に抑えることができるという効果がある。
【0066】また、内径拘束、外径拘束の両方を行える
ため、広範囲の炭素含有量の鋼からなる環状体に対し、
変形矯正を十分に行うことができる。特に従来、十分な
変形矯正が不可能であった中炭素鋼についても本発明に
より、良好に変形矯正が可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼の焼入れ時における時間と寸法との関係を鋼
の炭素含有量をパラメータとして示す図である。
【図2】従来の内径拘束による焼入れ処理後の変形率
(%)と内径拘束開始温度(℃)との関係を示す図であ
る。
【図3】従来の内径拘束による焼入れ処理後の変形率
(%)と、素材に含有される炭素量(重量%)との関係
を示す図である。
【図4】炭素含有量が、0.4重量%以上、0.8重量
%以下の素材に、浸炭処理および/または浸炭窒化処理
を施した環状体を焼入れた際に、従来の外径拘束方式で
変形矯正した場合の変形率(%)と素材の炭素含有量
(重量%)との関係を示す図である。
【図5】本発明による中炭素鋼の変形矯正の様子の概略
を示す図である。
【図6】本発明の実施例にかかる内外800、内外60
0、内外500を行った試験片(素材)に含まれる炭素
量(重量%)と平均変形率(%)との関係を示す図であ
る。
【図7】本発明の実施例にかかる各々の試験片の平均変
形率(%)と平均傾斜量(mm)との関係を示す図であ
る。
【図8】本発明の実施例にかかる環状体の焼入れ変形矯
正装置の断面構成図である。
【図9】図8に示す環状体の焼入れ変形矯正装置の部分
拡大図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる環状体の焼入れ
変形矯正装置の部分拡大断面図である。
【図11】本発明の他の実施例にかかる環状体の焼入れ
変形矯正装置の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 環状体の焼入れ変形矯正装置 10 加圧シリンダ 11 メインプレスシリンダ 12 サブプレスシリンダ 13 ピストンロッド 14 外径拘束冶具 15 内径拘束冶具 16 環状体 17 焼入れ槽 20 焼入れ油供給配管 21 シリンダ装置 24 環状体載置部

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マルテンサイト変態を伴う鋼からなる環
    状体の焼入れ変形矯正方法であって、焼入れ開始温度か
    ら600℃以上の温度の間に、前記環状体の内径側から
    拘束を開始する第一工程と、前記第一工程に連続して、
    前記環状体が変態により膨張する直前に、該環状体の外
    径側から拘束を開始する第二工程と、を含むことを特徴
    とする環状体の焼入れ変形矯正方法。
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