JPH08333643A

JPH08333643A - プリフォームおよびその製造方法、このプリフォームを用いた複合材およびその製造方法

Info

Publication number: JPH08333643A
Application number: JP13629295A
Authority: JP
Inventors: Shinsuke Mori; 伸介森; Makoto Suzuki; 鈴木　　誠; Masahiro Takahashi; 昌博高橋
Original assignee: Suzuki Motor Corp
Current assignee: Suzuki Motor Corp
Priority date: 1995-06-02
Filing date: 1995-06-02
Publication date: 1996-12-17

Abstract

(57)【要約】【目的】本発明の目的は、ウィスカの表面改質により
十分なハンドリング強度を具備しているプリフォームお
よびその製造方法、また、このプリフォームを用いて機
械的性質および熱処理効果に優れている複合材およびそ
の製造方法を提供することにある。【構成】本発明に係るプリフォームの製造方法は、水
５にホウ酸アルミニウムウィスカ１、有機バインダ７お
よびＮａ塩６を添加して分散させることによりスラリー
９を作り、このスラリー９を乾燥させることによりウィ
スカ１の表面にＮａ塩６が付着した造粒粉１３を作製
し、次いで、作製された造粒粉１３を加圧成形し、その
後、これをＮａ塩６の融点以上の温度で焼成してプリフ
ォーム２を製造している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ウィスカの表面改質を
行ったプリフォームおよびその製造方法、また、このプ
リフォームを用いた複合材およびその製造方法に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、車両のエンジン部品にはアル
ミニウム合金が使用されており、エンジンの低燃費化お
よび高性能化に伴い、エンジン部品の軽量化を図ってい
る。しかも、この種のエンジン部品では、耐久性や耐摩
耗性などを確保するため、エンジン部品等の軽量化に対
応できる高強度、熱間での機械的性質に優れるセラミッ
クス繊維（ウィスカも含む）で強化したアルミニウム合
金複合材のＦＲＭ（繊維強化金属）が用いられている。

【０００３】ところで、ＦＲＭを作製するには、セラミ
ックス繊維（ここでは、ホウ酸アルミニウムウィスカ）
の予備成形体（プリフォームという）が必要となる。こ
のプリフォームは、複合材料の強化材として使用される
ウィスカを水溶液に分散させるとともに、バインダを添
加してスラリーを作り、スプレードライヤにより造粒し
て当該造粒粉をプレス成形し、その後に焼成を行うこと
により成形される。その際、プリフォームに対してハン
ドリング強度を出すため、ガラスフリット（ガラス溶融
物）等を混合させることにより、所望の強度を得てい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たガラスフリットは、ＦＲＭ中において不純物とみなさ
れ、均質になり難くかつその粒が大きいので、破壊の起
点となり易いという問題を有していた。また、ホウ酸ア
ルミニウムウィスカは、熱処理（Ｔ６）に有効なマトリ
ックス中のＭｇと反応するので、熱処理効果が十分に得
られなかった。

【０００５】なお、このようなホウ酸アルミニウムウィ
スカの表面改質方法も提案されている。すなわち、テト
ラエトキシシランを有機溶媒に溶解し、その溶液中にホ
ウ酸アルミニウムウィスカを分散させた状態でテトラエ
トキシシランを加水分解するとともに、ホウ酸アルミニ
ウムウィスカを濾過して乾燥し、窒化性雰囲気中にてホ
ウ酸アルミニウムウィスカを高温度（１０００〜１４０
０゜Ｃ）に加熱して焼成し、これにより当該ウィスカの
表面に窒化ケイ素の被膜を形成している。しかし、この
表面改質方法にあっては、ウィスカの表面改質を効率良
くかつ低コストに実施することが難しかった。

【０００６】本発明はこのような実状に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、ウィスカの表面改質により
十分なハンドリング強度を具備しているプリフォームお
よびその製造方法、また、このプリフォームを用いて機
械的性質および熱処理効果に優れている複合材およびそ
の製造方法を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記従来技術の有する課
題を解決するために、本発明においては、水溶液中にホ
ウ酸アルミニウムウィスカ、有機バインダおよびＮａ塩
を添加して分散させることによりスラリーを作り、この
スラリーを乾燥させることにより上記ウィスカの表面に
Ｎａ塩が付着した造粒粉を作製し、次いで、作製された
造粒粉を加圧成形し、その後、これをＮａ塩の融点以上
の温度で焼成してプリフォームを製造している。

【０００８】また、他の本発明は、上記した発明の製造
方法によって製造されるプリフォームである。

【０００９】さらに、他の本発明においては、水溶液中
にホウ酸アルミニウムウィスカ、有機バインダおよびＮ
ａ塩を添加して分散させることによりスラリーを作り、
このスラリーを乾燥させることにより上記ウィスカの表
面にＮａ塩が付着した造粒粉を作製し、次いで、作製さ
れた造粒粉を加圧成形し、これをＮａ塩の融点以上の温
度で焼成してプリフォームを作製し、その後、このプリ
フォームを加温された金型内に配置するとともに、該金
型内にアルミニウム合金溶湯を注湯して加圧し、この加
圧状態を上記アルミニウム合金溶湯が完全に凝固するま
で保持することによって複合材を製造している。

【００１０】また、他の本発明は、上記した発明の製造
方法によって製造される複合材である。

【００１１】

【作用】本発明に係るプリフォームの製造方法では、水
溶液中にホウ酸アルミニウムウィスカ、有機バインダお
よびＮａ塩を添加しながら、攪拌にて分散させることに
よりスラリーを作り、このスラリーをスプレードライす
ることにより上記ウィスカの表面にＮａ塩が付着した造
粒粉を作製し、次いで、この造粒粉を加圧成形した後、
Ｎａ塩の融点以上の温度で焼成してプリフォームを製造
しているため、従来の方法に比べてウィスカの表面改質
を効率的に行え、ウィスカの表面に均一にＮａ塩を定着
させることができる。

【００１２】また、他の本発明に係るプリフォームは、
ウィスカの表面に均一に定着しているＮａ塩のバインダ
効果により十分なハンドリング強度が付与されているた
め、成形時の取扱いが容易となる。

【００１３】さらに、他の本発明に係る複合材の製造方
法では、上記発明により製造されたプリフォームを用い
ており、このプリフォームを例えば２５０゜Ｃに設定さ
れた加温状態の金型内に配置するとともに、該金型内に
アルミニウム合金溶湯を注湯して上パンチなどにより加
圧し、この加圧状態を上記アルミニウム合金溶湯が完全
に凝固するまで保持することによって複合材を製造して
いるため、ガラスフリットを使用せずに済み、ウィスカ
の表面に定着したＮａ塩がマトリックス中のＳｉの晶出
形態に影響を与え、マトリックス中のＭｇとの反応を防
ぎ、しかもウィスカの劣化も防ぐことになり、均質で不
純物が少なく、かつ熱処理効果を有する健全な複合材が
得られる。

【００１４】また、他の本発明に係る複合材は、ウィス
カの表面改質により機械的性質および熱処理効果に優れ
ているため、エンジン部品のピストン、シリンダヘッ
ド、シリンダブロック等に適用することが可能である。

【００１５】

【実施例】以下、本発明を図示の実施例に基づいて詳細
に説明する。

【００１６】図１〜図５は本発明に係るプリフォームお
よびその製造方法と、このプリフォームを用いた複合材
およびその製造方法の一実施例を示している。図におい
て、１は強化繊維としてのホウ酸アルミニウムウィスカ
（例えば、四国化成工業株式会社製の「アルボレックス
Ｇ」、繊維長１０〜３０μｍ，繊維径０．５〜１．０μ
ｍ）、２は当該ウィスカ１の予備成形体であるプリフォ
ーム、３はプリフォーム２を用いて製造されるアルミニ
ウム合金（Ｍｇを含む）をマトリックスとした複合材で
ある。

【００１７】本実施例のプリフォーム２および複合材３
は、次の（１）〜（４）の各工程を経て製造される。

【００１８】（１）スラリー調合まず、図１に示す如く、タンク４内に水５を入れるとと
もに、水５中に上記ウィスカ１、Ｎａ塩６（例えば、Ｎ
ａＣｌ，ＮａＳｉＯ₃，Ｎａ₂ＣＯ₃等）および有機バ
インダ７｛ＰＶＡ（ポリビニルアルコール）等｝を添加
し、これらを攪拌機８にて攪拌することにより均一に分
散させてスラリー９を作製する。Ｎａ塩６は、ホウ酸ア
ルミニウムウィスカ１に対して１〜５ｗｔ％の範囲の量
で添加している。また、有機バインダ７は焼成時に燃焼
・気化するが、プレス成形時のハンドリング強度を得る
ために６ｗｔ％程度の量で添加している。したがって、
本実施例における各添加量は、１ｋｇのウィスカ１に対
してＮａＣｌが５０ｇ、ＰＶＡが６０ｇであり、これら
を約４．０リットルの水に分散させている。

【００１９】（２）スプレードライ（造粒）そして、図２に示す如く、（１）工程で作製されたスラ
リー９をパイプ１０を介してスプレードライヤ１１のケ
ーシング１２内に流し込むと、当該スラリー９は矢印ａ
で示す熱風を受けることにより乾燥させられる。これに
伴い、ウィスカ１の表面にＮａ塩６が付着した平均粒径
４０〜６０μｍの造粒粉１３が作製される（図３参
照）。

【００２０】（３）加圧成形次いで、図４に示すように、（２）工程で作製された造
粒粉１３を金型１４内に入れ、当該造粒粉１３を体積率
Ｖｆが２０％であって、８０×８０×２０ｍｍの板状体
となるように上パンチ１５で加圧成形する。その後、こ
れをＮａ塩６の融点以上の温度（８００〜１１００゜
Ｃ）で、３時間程焼成することによって、プリフォーム
２を作製する。Ｎａ塩６は融点を越えると、ウィスカ１
の表面に定着するとともに、バインダとしての効果を持
つ。したがって、焼成温度が８００゜Ｃ以下であると、
Ｎａ塩６のバインダとしての効果が得られない上、ウィ
スカ１への定着が不十分となる。また，焼成温度が１１
００゜Ｃ以上であると、ウィスカ自身の劣化が生じ、好
ましくないからである。なお、上記した金型１４は、サ
イド型１６と下型１７とから構成されている。

【００２１】（４）高圧鋳造しかる後、図５に示すように、（３）工程で作製された
プリフォーム２を２５０゜Ｃに加温設定された成形金型
１８内にセットするとともに、温度が７００゜Ｃ前後の
アルミニウム合金（ＡＣ８Ａ）の溶湯１９を成形金型１
８内に注湯する。次いで、これらアルミニウム合金溶湯
１９およびプリフォーム２を上パンチ２０により６００
〜１０００ｋｇｆ／ｃｍ²で加圧し、この加圧状態をア
ルミニウム合金溶湯１９が完全に凝固するまで保持す
る。そして、成形金型１８から取り出すと、複合部３ａ
を有する複合材３が得られる。なお、上記した成形金型
１８は、サイド型２１と下型２２とから構成されてい
る。

【００２２】いま、（２）工程で作製された造粒粉１３
を用いて、体積率Ｖｆ２０％，直径φ６０ｍｍ，厚さ１
０ｍｍのプリフォームを作製し、三点曲げ強度試験を行
い、ガラスフリット等を用いた従来品と比較してみる
と、その結果は次の表１に示すとおりである。

【００２３】

【表１】

【００２４】三点曲げ強度試験の結果、本実施例の試料
は、ガラスフリットを用いた従来品と同等の強度である
ことが判る。しかも、成形時の取扱いも容易であって、
複合化時の変形も少ないものであると考えられる。

【００２５】また、（４）工程で作製された複合材３に
対してＴ６処理（ＪＩＳでのＡＣ８ＡーＴ６に相当し、
５１０゜Ｃ×４Ｈの温入焼入，１７０゜Ｃ×１０Ｈ）を
施したものと、Ｔ６処理していないものをそれぞれ試料
として用い、これら試料を従来品と比較してみた。試験
方法には、ロックウェル硬さ試験機と引張試験機を用い
た。そして、これら硬さ試験と引張試験の結果は次の表
２，３に示すとおりである。なお、引張試験された試料
の破面はＳＥＭにて観察を行った。

【００２６】

【表２】

【００２７】

【表３】

【００２８】表２，３から明かなように、熱処理前で
は、ＮａＣｌとガラスフリットを用いた複合材は硬さが
同等であり、引張強度はＮａＣｌを使用した方がガラス
フリットを使用したものよりも若干高い値が得られた。
これは、ＮａＣｌがガラスフリットに比べて微小で均一
に分散しているため、破損の起点が減少しているものと
考えられるからである。また、熱処理後では、ガラスフ
リットを使用した複合材が硬さ、強度の両方共に低下し
ているのに対し、ＮａＣｌを使用した複合材は硬さ、強
度の両方共に増加している。これは、ウィスカ表面に付
着したＮａＣｌがマトリックス中のＭｇとの反応を防ぐ
ことによるものと考えられるからである。しかも、引張
試験を行った試料の破面をＳＥＭにて観察してみると、
ウィスカのプルアウトも認められず、良好なものであっ
た。

【００２９】以上、各本発明の一実施例につき述べた
が、本発明は既述の実施例に限定されるものではなく、
本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が
可能である。

【００３０】

【発明の効果】上述の如く、本発明に係るプリフォーム
の製造方法は、水溶液中にホウ酸アルミニウムウィス
カ、有機バインダおよびＮａ塩を添加して分散させるこ
とによりスラリーを作り、このスラリーを乾燥させるこ
とにより上記ウィスカの表面にＮａ塩が付着した造粒粉
を作製し、次いで、作製された造粒粉を加圧成形し、そ
の後、これをＮａ塩の融点以上の温度で焼成してプリフ
ォームを製造しているので、従来のウィスカのアスペク
ト比（縦横比）等の形状，性質を変更することなく使用
でき、しかも、ウィスカの表面にＮａ塩を均一に定着さ
せることが可能となり、従来の製造方法に比べてウィス
カの表面改質を効率良く、かつ低コストで行うことがで
きる。したがって、本発明の製造方法によって製造され
たプリフォームは、ウィスカの表面に均一に定着したＮ
ａ塩のバインダ効果によって、焼成後十分なハンドリン
グ強度を具備しているので、成形時の取扱いが容易とな
る。

【００３１】また、他の本発明に係る複合材の製造方法
は、水溶液中にホウ酸アルミニウムウィスカ、有機バイ
ンダおよびＮａ塩を添加して分散させることによりスラ
リーを作り、このスラリーを乾燥させることにより上記
ウィスカの表面にＮａ塩が付着した造粒粉を作製し、次
いで、作製された造粒粉を加圧成形し、これをＮａ塩の
融点以上の温度で焼成してプリフォームを作製し、その
後、このプリフォームを加温された金型内に配置すると
ともに、該金型内にアルミニウム合金溶湯を注湯して加
圧し、この加圧状態を上記アルミニウム合金溶湯が完全
に凝固するまで保持することによって複合材を製造して
いるので、ガラスフリットを使用しなくて済む上、ウィ
スカの表面に定着したＮａ塩がマトリックス中のＭｇと
の反応を防ぐことが可能になり、これによって均質で不
純物が少なく、十分な熱処理効果を有する健全な複合物
を確実に製造することができる。したがって、本発明の
製造方法によって製造された複合材は、優れた機械的性
質を保有しているので、ピストン、シリンダヘッド、シ
リンダブロック等の各種エンジン部品に適用することが
でき、これらエンジン部品の軽量化によって当該エンジ
ンの低燃費、高性能化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る製造方法によってプリ
フォームおよび複合材を製造する工程のうち、スラリー
調合工程を示す概念図である。

【図２】上記製造工程のうち、スプレードライ工程を示
す概念図である。

【図３】上記スプレードライ工程で作製された造粒粉を
示す半分断面図である。

【図４】上記製造工程のうち、加圧成形工程を示す概念
図である。

【図５】上記製造工程のうち、高圧鋳造工程を示す概念
図である。

【符号の説明】

１ホウ酸アルミニウムウィスカ２プリフォーム３複合材４タンク５水６Ｎａ塩７有機バインダ８攪拌機９スラリー１０パイプ１１スプレードライヤ１３造粒粉１４金型１５上パンチ１８成形金型１９アルミニウム合金溶湯２０上パンチ

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】水溶液中にホウ酸アルミニウムウィス
カ、有機バインダおよびＮａ塩を添加して分散させるこ
とによりスラリーを作り、このスラリーを乾燥させるこ
とにより上記ウィスカの表面にＮａ塩が付着した造粒粉
を作製し、次いで、作製された造粒粉を加圧成形し、そ
の後、これをＮａ塩の融点以上の温度で焼成してプリフ
ォームを製造したことを特徴とするプリフォームの製造
方法。
【請求項２】請求項１の製造方法によって製造される
プリフォーム。
【請求項３】水溶液中にホウ酸アルミニウムウィス
カ、有機バインダおよびＮａ塩を添加して分散させるこ
とによりスラリーを作り、このスラリーを乾燥させるこ
とにより上記ウィスカの表面にＮａ塩が付着した造粒粉
を作製し、次いで、作製された造粒粉を加圧成形し、こ
れをＮａ塩の融点以上の温度で焼成してプリフォームを
作製し、その後、このプリフォームを加温された金型内
に配置するとともに、該金型内にアルミニウム合金溶湯
を注湯して加圧し、この加圧状態を上記アルミニウム合
金溶湯が完全に凝固するまで保持することによって複合
材を製造したことを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項４】請求項３の製造方法によって製造される
複合材。