JPH08333464A - 積層体の製造方法 - Google Patents

積層体の製造方法

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JPH08333464A
JPH08333464A JP7140727A JP14072795A JPH08333464A JP H08333464 A JPH08333464 A JP H08333464A JP 7140727 A JP7140727 A JP 7140727A JP 14072795 A JP14072795 A JP 14072795A JP H08333464 A JPH08333464 A JP H08333464A
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JP
Japan
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gas
composition
inorganic composition
coating
laminate
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Application number
JP7140727A
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English (en)
Inventor
Miyuki Miyazaki
幸 宮崎
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基材上に反射防止性、撥水性に優れ、さら
に、耐擦傷性の高い被膜が形成された積層体の製造方法
を提供する。 【構成】 テトラアルコキシシラン、特定のpHの塩基
性水及び有機溶媒を特定量混合して得られる縮合組成物
(A)と、テトラアルコキシシラン、特定のpHの酸性
水及び有機溶媒を特定量混合して得られる縮合組成物
(B)とを、特定の重量比で混合して得られる無機質組
成物(C)を基材上に塗布する第1工程、得られた塗布
物を相対湿度70%以上の環境下に置く第2工程、上記
塗布物に光を照射する第3工程、及び上記塗布物を少な
くともフッ素原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガス1
0体積%以下と残部が不活性ガスからなる混合ガスの大
気圧近傍の圧力下で、該混合ガスの放電プラズマに接触
させる第4工程からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基材上に反射防止性、
撥水性に優れ、さらに、耐擦傷性の高い被膜が形成され
た積層体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラスは、カラーテレビのブラウン管
や、自動車のフロントガラス、太陽電池の光取り入れ部
材などに広く用いられているが、このガラス表面で外部
光線が反射すると、映り込みのために画像や内部物体が
見え難くなったり、太陽電池のエネルギー変換効率が低
くなったりする。
【0003】また、近年、透明プラスチック材料が、軽
量性、易加工性、耐衝撃性の特徴を生かし、ガラスに代
わって、光学レンズ、メガネレンズ、建築物の窓、ショ
ーウインドウ等に広く利用されているが、耐擦傷性に乏
しくハードコーティング処理を必要としている。さら
に、ガラス同様外部光線の反射のため光学的障害が問題
となっている。
【0004】この問題を解決するために、ガラスおよび
プラスチック基材に反射防止膜を単層で積層させること
が知られているが、得られた積層体は被膜の機械的強度
に問題があったり、また、大気中の塵、水滴、油滴等が
付着し易いものであった。
【0005】これらの問題を解決する方法として、特開
昭61−247743号公報には、特定のフッ素含有シ
リコーン化合物2種類とシリコーン化合物との3成分か
らなる組成物を、溶媒中で加水分解、重縮合させてゾル
液としたものを、プラスチック基材上に塗布し、一定温
度で乾燥、硬化させて、反射防止性、防汚性、耐擦傷性
を有する積層体を製造する方法が開示されている。
【0006】しかし、上記の積層体は、十分な耐擦傷性
を得ようとすると、配合組成の影響により反射防止性が
低下したり、また、製造時に加熱による乾燥、硬化工程
が必要なので、プラスチック基材によっては、反り等の
変形や溶融等が起こるという問題点がある。
【0007】また、特開平6−279061号公報に
は、表面に多孔質層を有するガラス基材に、フロロシラ
ンを用いて防汚層を積層させる方法が開示されている。
この方法は、多孔質層内部への均一な膜形成方法として
減圧CVD法を使用しているので、バッチ式の処理とな
るため、生産性や大面積基材の処理に問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの問
題点を解決するものであり、その目的は、基材上に反射
防止性、撥水性に優れ、さらに、耐擦傷性の高い被膜が
形成された積層体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明1(請求項1記載
の発明を本発明1という。)で用いられる縮合組成物
(A)は、一般式Si(OR)4 (式中、Rは炭素数1
〜5のアルキル基)で表されるテトラアルコキシシラ
ン、塩基性水及び有機溶媒を混合し、テトラアルコキシ
シランを部分加水分解、重縮合させて得られる。
【0010】上記の一般式Si(OR)4 で表されるテ
トラアルコキシシランにおいて、Rは、炭素数が多くな
ると、無機質組成物(C)の安定性が低下して長期安定
性が悪くなるので、炭素数1〜5のアルキル基に限定さ
れ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i
so−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、
tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチ
ル基、ネオペンチル基などが挙げられる。
【0011】Si(OR)4 で表されるテトラアルコキ
シシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、
テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブト
キシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ
−tert−ブトキシシラン、テトラ−n−ペントキシ
シラン、テトラ−iso−ペントキシシラン、テトラネ
オペントキシシランなどが挙げられ、加水分解、重縮合
における反応性の点から、テトラメトキシシラン、テト
ラエトキシシランが好ましく、テトラエトキシシランが
特に好ましい。
【0012】上記塩基性水とは、塩基種によりpHが1
0.0〜12.0に調整された水をいう。塩基種は、水
のpHを10.0〜12.0に調整できるものであれ
ば、特に限定されず、例えば、アンモニア、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム等が挙げられ、pH調整の容易
さ、及び不純物が混入しにくいこと等からアンモニアが
特に好ましい。
【0013】塩基性水のpHは、低くなると、得られる
コロイダルシリカの分子量が低下し、十分な反射防止性
を有する積層体が得られず、高くなると、得られる縮合
組成物(A)の安定性が低下するので、10.0〜1
2.0に限定され、10.3〜11.5が好ましく、1
0.8〜11.4が特に好ましい。
【0014】塩基性水は、少なくなると、得られるコロ
イダルシリカの分子量が低下して、積層体の反射防止性
が低下し、多くなると、縮合組成物(A)の安定性が低
下するので、Si(OR)4 で表されるテトラアルコキ
シシラン1モルに対して、2〜8モルに限定され、3〜
4モルが好ましい。
【0015】有機溶媒は、Si(OR)4 で表されるテ
トラアルコキシシランおよび塩基性水と相溶性のあるも
のであれば特に限定されるものではなく、例えば、メチ
ルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコ
ール、エトキシエチルアルコール、アリルアルコール等
が挙げられるが、得られる被膜の多孔性の向上という点
から、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
【0016】有機溶媒の添加量は、少なくなると、縮合
組成物(A)の安定性が低下し、多くなると、得られる
コロイダルシリカの分子量が低下し、積層体の反射防止
性が低下するので、Si(OR)4 で表されるテトラア
ルコキシシラン1モルに対して10〜30モルに限定さ
れ、無機質組成物(C)の安定性の点から、テトラアル
コキシシラン1モルに対して13〜18モルが好まし
い。
【0017】縮合組成物(A)の混合方法は、特に限定
されず、例えば、Si(OR)4 で表されるテトラアル
コキシシラン、塩基性水及び有機溶媒を、均質なものを
得るために、好ましくは、攪拌機に供給し混合する方法
が挙げられる。攪拌機としては、特に限定されるわけで
はなく、マグネチックスターラーのような簡便な攪拌機
で十分である。
【0018】縮合組成物(A)を混合する際の温度は、
低くなると、重縮合反応が不充分となり、高くなると、
縮合組成物(A)の安定性が低下するので、10〜30
℃で行うのが好ましく、20〜25℃が特に好ましい。
【0019】縮合組成物(A)を混合する際の時間は、
短くなると、加水分解、重縮合反応が不十分となり、長
くなると、縮合組成物(A)の安定性が低下するので、
1〜10時間が好ましく、2〜4時間が特に好ましい。
従って、縮合組成物(A)の混合は、10〜30℃で、
1〜10時間行うのが好ましく、20〜25℃で、2〜
4時間行うのが特に好ましい。
【0020】本発明1で用いられる縮合組成物(B)
は、一般式Si(OR1 4 (式中、R1 は炭素数1〜
5のアルキル基)で表されるテトラアルコキシシラン、
酸性水及び有機溶媒を混合し、テトラアルコキシシラン
を部分加水分解、重縮合させて得られる。
【0021】上記の一般式Si(OR1 4 で表される
テトラアルコキシシランにおいて、R1 は、炭素数が多
くなると、無機質組成物の安定性が低下して長期安定性
が悪くなるので、炭素数1〜5のアルキル基に限定さ
れ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i
so−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、
tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチ
ル基、ネオペンチル基などが挙げられる。
【0022】Si(OR1 4 で表されるテトラアルコ
キシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、
テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラ
ン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−
ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テ
トラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−n−ペント
キシシラン、テトラ−iso−ペントキシシラン、テト
ラネオペントキシシランなどが挙げられ、加水分解、重
縮合における反応性の点から、テトラメトキシシラン、
テトラエトキシシランが好ましく、テトラエトキシシラ
ンが特に好ましい。
【0023】上記酸性水とは、酸性種によりpHが0〜
2.6に調整された水をいう。酸性種は、水のpHを、
0〜2.6に調整できるものであれば、特に限定され
ず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられ、塩酸、硝
酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
【0024】酸性水のpHは、低くなると、縮合組成物
(B)の安定性が低下することがあり、高くなると、テ
トラアルコキシシランの加水分解が不十分となるので、
0〜2.6に限定され、1.0〜1.7が好ましく、
1.1〜1.2が、特に好ましい。
【0025】酸性水の添加量は、少なくなると、テトラ
アルコキシシランの加水分解が不十分となり、更に、得
られる無機質組成物の基材への塗布が困難となり、多く
なると、縮合組成物(B)の安定性が低下するので、S
i(OR1 4 で表されるテトラアルコキシシラン1モ
ルに対して3〜8モルに限定され、4〜7モルが好まし
い。
【0026】上記有機溶媒は、Si(OR1 4 で表さ
れるテトラアルコキシシラン及び酸性水に相溶するもの
であれば、特に限定されず、例えば、縮合組成物(A)
の製造に用いられるものと同様のものが用いられ、有機
溶媒の添加量は、少なくなると、縮合組成物(B)の安
定性が低下し、又、多くなると、得られるコロイダルシ
リカの分子量が低下し、積層体の反射防止性が低下する
ので、Si(OR1 4 で表されるテトラアルコキシシ
ラン1モルに対して10〜30モルに限定され、無機質
組成物の安定性の点から、テトラアルコキシシラン1モ
ルに対して13〜18モルが特に好ましい。
【0027】縮合組成物(B)の混合方法は、特に限定
されず、例えば、Si(OR1 4で表されるテトラア
ルコキシシラン、酸性水及び有機溶媒を、均質なものを
得るために、好ましくは、攪拌機に供給し混合する方法
が挙げられる。攪拌機としては、特に限定されるわけで
はなく、マグネチックスターラーのような簡便な攪拌機
で十分である。
【0028】縮合組成物(B)を混合する際の温度は、
低くなると、重縮合反応が不充分となり、高くなると、
縮合組成物(B)の安定性が低下するので、10〜30
℃で行うのが好ましく、20〜25℃が特に好ましい。
【0029】縮合組成物(B)を混合する際の時間は、
短くなると、十分な分子量が得られず、長くなると、縮
合組成物(B)の安定性が低下するので、1〜10時間
が好ましく、2〜4時間が特に好ましい。従って、縮合
組成物(B)の混合は、10〜30℃で、1〜10時間
行うのが好ましく、20〜25℃で、2〜4時間行うの
が特に好ましい。
【0030】本発明1で使用される無機質組成物(C)
の混合は、上記縮合組成物(A)及び縮合組成物(B)
を、重量比((A)/(B))=0.4〜2.4で混合
する。
【0031】縮合組成物(A)が、少なくなると、得ら
れる被膜の多孔率が低下し、得られる積層体の反射防止
効果が低下し、多くなると、得られる被膜と基材との密
着性が低下するので、縮合組成物(A)と縮合組成物
(B)の重量比((A)/(B))は、0.4〜2.4
に限定され、無機質組成物(C)の安定性及び被膜と基
材の密着性の向上のため、1.5〜2.3が好ましい。
【0032】縮合組成物(A)と縮合組成物(B)を混
合する際の温度は、低くなると、コロイダルシリカとシ
リカゾルの重縮合が困難となり、得られる被膜の反射防
止効果が低下し、高くなると、得られる無機質組成物
(C)の安定性が低下するので、−10〜30℃で行う
のが好ましく、−8〜25℃が特に好ましい。
【0033】縮合組成物(A)と縮合組成物(B)を混
合する時間は、短かくなると、コロイダルシリカとシリ
カゾルの重縮合が不十分となり、得られる被膜の反射防
止効果が低下し、又、長くなると、無機質組成物(C)
の安定性が低下するので、0.5〜4時間が好ましく、
特に1〜2時間が好ましい。従って、縮合組成物(A)
と縮合組成物(B)の混合は、−10〜30℃で、0.
5〜4時間行うのが好ましく、−8〜25℃で、1〜2
時間行うのが特に好ましい。
【0034】縮合組成物(A)と縮合組成物(B)を混
合する方法は、特に限定されず、例えば、縮合組成物
(A)及び縮合組成物(B)を、均質なものを得るため
に、好ましくは、攪拌機に供給し攪拌混合する方法が挙
げられる。攪拌機としては、特に限定されるわけではな
く、マグネチックスターラーのような簡便な攪拌機で十
分である。
【0035】本発明1の第1工程は、上記の方法で得ら
れる無機質組成物(C)を、まず、基材上に塗布する工
程である。
【0036】上記の基材としては、無機質組成物(C)
の塗布が可能な基材であれば特に限定されず、例えば、
ケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラ
ス、カリ石灰ガラス、鉛石灰ガラス、バリウムガラス、
ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス等からなる無機基
材、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニ
ル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ
エチレンテレフタレート、三酢酸セルロース等からなる
有機基材が挙げられる。
【0037】無機基材においては、ケイ酸ガラス、ケイ
酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラスが好ましい。有機
基材においては、ポリカーボネート、アクリル樹脂が好
ましい。また、基材の形状は、特に限定されるものでは
ない。
【0038】無機質組成物(C)の塗布方法は、特に限
定されず、例えば、刷毛、スプレーコート、ディップコ
ート、スピンコート、ロールコート、流し塗り等による
塗布方法等が挙げられる。
【0039】なお、塗布は、大気中の湿度が高いと、得
られる被膜が白濁等の不均一性を示すので、大気中の相
対湿度50%以下で行うのが好ましく、30%以下で行
うのが特に好ましい。
【0040】無機質組成物(C)を基材上に塗布する
際、膜厚は、特に限定されないが、反射防止効果を得た
い波長と、以下の関係となる被膜が得られる様に無機質
組成物(C)を塗布することは、反射防止効果の向上を
図ることができ、好適である。
【0041】d=(1/4+m/2)×λ/n d:被膜の膜厚 λ:反射防止効果を得たい波長 n:被膜の屈折率 m:0又は自然数
【0042】なお、無機質組成物(C)を塗布する際、
必要に応じて、溶媒により希釈し、無機質組成物(C)
の粘度を調整することは、無機質組成物(C)の基材上
への塗布効率が向上し好適である。
【0043】また、無機質組成物(C)を塗布する際、
基材が樹脂の場合、基材にコロナ放電処理等の前処理を
施すと、塗液の濡れ性を向上させ美観に優れた積層体を
得るのに好適である。
【0044】本発明1では、無機質組成物(C)を基材
上に塗布する第1工程に次いで、上記塗布物を乾燥硬化
させてもよい。上記硬化方法としては、特に限定され
ず、室温にて自然乾燥してもよいし、加熱乾燥してもよ
い。例えば、無機質組成物(C)を上記の方法でケイ酸
ガラスの表面に被覆し、室温で自然乾燥を行った後、6
0〜300℃の温度で硬化させると、無機質組成物
(C)中のシリコンマトリックスとコロイダルシリカの
収縮率の差により多孔質の反射防止被膜が形成された積
層体が得られる。また、例えば、プラスチック製品の表
面に被覆し、室温で自然乾燥を行った後、60〜150
℃の温度で硬化させると、反射防止被膜が形成された積
層体が得られる。
【0045】しかし、上記の乾燥硬化では、多孔質の被
膜中に未反応のシラノール基や有機溶媒が残存し、相対
的に硬化温度が低いほど残存量が多くなる傾向にあり、
プラスチック等の高温で硬化できない基材では、反射防
止効果の耐久性が十分でない場合がある。そこで、本発
明1では、以下のように、第2工程として、高湿度養生
処理および第3工程として、光照射を経ることにより微
細孔内の残存アルコキシ基、シラノール基および有機溶
媒などを除去し、硬化をさらに進める。また、高湿度養
生処理のみでも同様の効果が得られるが、反射防止効果
の経時変化の無い被膜を得るためには、長期の処理期間
を要する。しかし、高湿度養生処理に続いて光照射工程
を経ることにより、養生時間の短縮化を図ることができ
る。
【0046】本発明1の第2工程は、無機質組成物
(C)が基材上に塗布された塗布物を相対湿度70%以
上の環境下に置く工程である。
【0047】本発明1において、上記の相対湿度70%
以上の環境下としては、好ましくは、相対湿度80%以
上、更に好ましくは、相対湿度95%以上の環境下がよ
い。この相対湿度が70%未満では、残存未反応基の除
去効果が得られない。
【0048】上記の相対湿度70%以上の環境下に置く
際の温度は、特には限定されないが、温度が低くなる
と、処理に時間がかかり、温度が高くなると有機質基材
では基材の変形が起こり易くなるので、40〜100℃
が好ましく、50〜90℃が特に好ましい。
【0049】上記の相対湿度70%以上の環境下に置く
際の時間は、相対湿度にもよるが、時間が短くなると、
残存未反応基の除去効果が得られなくなり、時間が長す
ぎても時間に応じた効果が得られなくなるので、通常3
0〜500時間が好ましく、40〜250時間がより好
ましい。
【0050】本発明1の第3工程は、第2工程に続い
て、上記塗布物に光を照射する工程である。上記照射す
る光のエネルギーは未反応基が吸収するエネルギーであ
れば、特には限定されないが、シラノール基の重縮合に
効果のあると考えられる5eV以上の光が好ましい。
【0051】本発明1の第4工程は、第3工程に続い
て、上記塗布物を少なくとも一方の対向面に固体誘電体
が配設された対向する金属電極間に配置し、少なくとも
フッ素原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガス10体積
%以下と残部が不活性ガスからなる混合ガスの大気圧近
傍の圧力下で、金属電極間に電圧を印加し、発生したガ
スの放電プラズマを該塗布物表面に接触させる工程であ
る。
【0052】無機質組成物(C)が塗布された膜は、上
記工程によって、プラズマ中の高エネルギー活性種(例
えば、電子、イオン、ラジカル等)によって塗膜の乾
燥、硬化が促進されるとともに、フッ化炭化水素膜が表
面に堆積される。
【0053】上記フッ化炭化水素膜の厚みは、上記無機
質組成物(C)の塗布膜厚によって適宜選ばれるが、薄
くなると撥水性が十分に得られなくなり、厚くなると、
耐擦傷性に劣るだけでなく干渉効果により十分な反射防
止効果が得られなくなるので、100〜500Åが好ま
しい。
【0054】上記不飽和炭化水素ガスとしては、例え
ば、エチレン、プロピレン、アチチレン等のガスが挙げ
られる。
【0055】上記フッ素原子含有ガスとしては、例え
ば、4フッ化炭素(CF4 )、4フッ化2炭素(C2
4 )、6フッ化エタン(C2 6 )等の飽和フッ化炭素
ガス;3塩化1フッ化炭素(CCl3 F)、1臭化3フ
ッ化炭素(CBrF3)等のハロゲン化フッ化炭素ガス;
6フッ化アセトン((CF3 2 CO)、6フッ化−2
−プロパノール((CF3 2 CH2 O)等のフッ素原
子含有炭素水素の蒸気などが挙げられる。
【0056】上記不飽和炭化水素ガスとフッ素原子含有
ガスは、混合されて使用されるが、不飽和炭化水素ガス
とフッ素原子含有ガスとの混合ガス中のフッ素原子含有
ガスの量は、少なくなると積層体の撥水効果が得られに
くくなり、多くなると撥水性被膜が得られにくくなるの
で10〜50重量%が好ましい。
【0057】さらに、上記の不飽和炭化水素ガスとフッ
素原子含有ガスは、不活性ガスと混合された混合ガスと
して使用される。
【0058】上記の不活性ガスとしては、ヘリウム、ア
ルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや窒素ガスが単独
又は混合して使用されるが、ヘリウムが準安定状態で寿
命が長く、フッ素原子含有ガスを励起するのに有利なた
め好ましい。不活性ガスとしてヘリウム以外のガスを使
用する場合は、安定な放電プラズマを発生させるため
に、アセトンやメタノール等の有機物蒸気、メタン、エ
タン等の炭化水素ガスを2体積%以下の割合で混合する
のが好ましい。
【0059】少なくともフッ素原子含有ガスを含む不飽
和炭化水素ガスと不活性ガスとの混合割合は、使用する
ガスの種類により適宜決定されるが、少なくともフッ素
原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガス濃度が10体積
%を超えると、高電圧を印加しても均一な放電プラズマ
が発生し難くなるので、少なくともフッ素原子含有ガス
を含む不飽和炭化水素ガス濃度は10体積%以下に限定
され、好ましくは0.01〜5体積%である。
【0060】上記、少なくともフッ素原子含有ガスを含
む不飽和炭化水素ガス10体積%以下と残部が不活性ガ
スからなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下とは、100
〜800Torrの圧力下のことであり、圧力調整が容
易で装置が簡便で済むため、700〜780Torrの
範囲が好ましい。
【0061】放電プラズマを前記塗布物表面に接触させ
フッ化炭化水素膜を堆積させるには、基材を加熱した
り、冷却したりする必要は、特にはなく、室温下で十分
である。
【0062】また、放電プラズマに接触させる時間は、
使用する混合ガス種類や印加電圧等のプラズマ発生のた
めの因子や、必要な膜厚で適宜決定される。
【0063】以下に、本発明1における第4工程のプラ
ズマ処理工程について図面によって説明する。図1は、
本発明1に使用されるプラズマ処理装置の一例を示す説
明図である。この装置は、電源部1、処理容器2、上部
金属電極4、下部金属電極5から構成されている。電源
部1は、1〜100kHzの周波数電源が印加可能とさ
れるが、耐熱性の低い基材にプラズマ処理するには、基
材への影響が少ない10〜30kHzの周波数が好まし
い。
【0064】放電プラズマの発生は、電極への電圧印加
によって行うが、電界強度が低くなると、プラズマ密度
が小さくなるので処理時間がかかり、高くなると、誘電
体が絶縁破壊したり、また誘電体が高温になりアーク放
電に移行する挙動を示すので、電界強度が1〜40kV
/cm程度になるように電圧印加するのが好ましい。
【0065】処理容器2は、上面2aと底面2bがステ
ンレス製、側面2cが硬質ガラス製であり、上面2aと
上部金属電極4との間に絶縁体2dが配設されている。
処理容器2の材質は、これに限らず、全てがガラス製、
プラスチック製でも構わないし、電極と絶縁がとれてい
るならば、ステンレスやアルミニウム等の金属製でも構
わない。
【0066】処理容器2内に一対の対向する平行平板型
の上部金属電極4と下部金属電極5が配設されている。
なお、電極配置構造としては、平行平板型以外にも、同
軸円筒型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対向
平板型でも、また、複数の細線と平板からなるものでも
構わない。電極の材質は、金属であれば、特に限定され
ず、例えば、ステンレス、真鍮等の多成分系の金属で
も、銅、アルミニウム等の純金属でも良い。
【0067】放電プラズマによる表面処理部3は、対向
する上部金属電極4と下部金属電極5の間の空間であ
る。
【0068】本発明1においては、金属電極の少なくと
も一方の対向面に固体誘電体が配設される。具体的に
は、上部金属電極4と下部金属電極5の少なくとも一方
の対向面に固体誘電体6が配設される。図1の装置にお
いては、下部金属電極5の上に固体誘電体6が配設され
ている。固体誘電体6は、相対する電極の対向面の全面
に配設される必要がある。一部でも、対向面が露出して
いるとプラズマ処理時にアーク放電が生じる。固体誘電
体6は、図1に示すように、必ずしも下部金属電極5の
上に配設される必要はなく、上部金属電極4側に配設さ
れても構わないし、両電極に配設されても構わない。
【0069】固体誘電体6としては、例えば、ポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)やポリエチレンテレフ
タレート(PET)等のプラスチック;シリカ、アルミ
ナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸化合物等
のセラミックスなどが用いられるが、使用される混合ガ
スとの反応性を考慮して選択される必要がある。
【0070】固体誘電体6の形状は、シート状でも、フ
ィルム状でも構わない。固体誘電体6の厚みについて
は、厚みが薄くなると、高電圧印加時に絶縁破壊が起こ
ってアーク放電が生じやすくなり、厚くなると、放電プ
ラズマを発生するのに高電圧を要するので、0.05〜
4mmの厚みが好ましい。
【0071】図1の装置において、フッ素原子含有ガス
を含む不飽和炭化水素ガスは、ガス導入管8を経て多孔
構造の上部金属電極4から、また不活性ガスは、ガス導
入管9から、表面処理部3に供給される。なお、図1に
おいては、上部金属電極4は、不飽和フッ化炭素ガスを
均一に供給するために、その内部がガスの通路とされ
た、多孔性の電極とされている。このように上部金属電
極4がガス導入口と電極を兼ね、且つ多孔構造からなる
と、フッ素原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガスを表
面処理部3に均一に供給し、均一な処理を行うために好
ましい。しかし、例えば、ガスを攪拌状態で供給した
り、高速で吹き付けるなどにより、フッ素原子含有ガス
を含む不飽和炭化水素ガスを表面処理部3に均一に供給
することが可能であれば、必ずしも多孔構造とする必要
はない。
【0072】また、不活性ガスは、フッ素原子含有ガス
を含む不飽和炭化水素ガスと混合してガス導入管8を通
り、上部金属電極4から導入しても構わないが、均一性
よくプラズマ処理するためには、フッ素原子含有ガスを
含む不飽和炭化水素ガスを上部金属電極4から導入し、
不活性ガスをガス導入管9から導入するのが好ましい。
また、ガス導入管9の処理容器2内の先端部は、図1に
示したように、多数の穴の開いたリング状とし、その穴
からガスが処理容器2内に供給される方が、均一に処理
され易いので好ましい。
【0073】本発明1で使用されるガスは、図示しない
がマスフローコントローラーで流量制御されて供給され
るのが好ましく、フッ素原子含有ガスを含む不飽和炭化
水素ガス10体積%以下と残部が不活性ガスからなる混
合ガスとして表面処理部3に供給される。
【0074】図1のプラズマ処理装置を用いて、無機質
組成物(C)が塗布され、相対湿度70%以上の環境下
に置かれ、さらに光照射された表面をプラズマ処理する
際の操作手順は、特に限定されないが、例えば、以下の
手順である。処理容器2内の固体誘電体6上に基材7を
無機質組成物(C)の塗布面が上部金属電極4に対向す
るように配置する。処理容器2内の空気を排気した後、
フッ素原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガス及び不活
性ガスをマスフローコントローラーで流量制御し、上記
の所定の濃度の混合ガスとして、表面処理部3に供給
し、表面処理部3の混合ガスの圧力を大気圧近傍の圧力
とする。次いで、金属電極間に電圧を印加し、発生した
ガスの放電プラズマを、基材7の無機質組成物(C)が
塗布された表面に接触させて、該表面にフッ化炭化水素
膜を堆積させる。
【0075】過剰のフッ素原子含有ガス、不飽和炭化水
素ガス及び不活性ガスは、処理容器2のガス出口10か
ら排出する。なお、処理容器2内にフッ素原子含有ガ
ス、不飽和炭化水素ガス及び不活性ガスを導入するに際
して、処理容器2内に残存する空気を、例えば油回転真
空ポンプからなる排気装置(図示せず)によって排気口
11から排出するのが好ましい。
【0076】また、対向する金属電極4、5間の距離
は、フッ素原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガスのガ
ス流量、印加電圧の大きさ、固体誘電体の厚み、処理す
る基材の厚み等により適宜決定されるが、短くなると、
未使用の反応ガスが多くなり非能率的であり、長くなる
と電極空間のガスの均一性が損なわれ易くなるので、1
〜20mmが好ましい。
【0077】また、上記の操作手順においては、プラズ
マ処理に先立って、処理容器2内の空気を排気した後、
所定の濃度の混合ガスを表面処理部3に供給したが、処
理容器2内の空気を排気せずに、所定の濃度の混合ガス
を表面処理部3にある時間供給しながら、ガス出口10
又は排気口11から処理容器2内のガスを排気させるこ
とにより、ガス交換をした後プラズマ処理してもよい。
【0078】なお、上記の例では、基材7は配置された
片面(図1では、上面)のみが表面処理されるが、基材
7の両面の処理が必要であれば、基材7を上部金属電極
4と下部金属電極5の間の空間に浮かせればよい。
【0079】なお、図1の装置は、基材7の塗布物表面
をバッチ式に処理する例であるが、基材7の塗布物表面
を連続的に処理する場合は、基材7がフィルム状であれ
ば、一般に使用されている走行系を用い、基材7がシー
ト状であれば、ベルトコンベアー等の搬送系を用い、処
理容器2に外部の空気が混入しないようなシール機構を
有する基材導入口及び基材排出口を設け、基材7が処理
容器2内を連続して、通過できるようにし、基材7を必
要な時間だけ放電プラズマが接触するようなライン速度
で、処理容器2内を通過せしめることにより容易に連続
処理が可能である。
【0080】本発明2(請求項2記載の発明を本発明2
という。)は、請求項1記載の第1工程、第2工程及び
第3工程に続いて、該塗布物を少なくとも一方の対向面
に固体誘電体が配設された対向する金属電極間に配置
し、不飽和フッ化炭素ガス10体積%以下と残部が不活
性ガスからなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下で、金属
電極間に電圧を印加し、発生したガスの放電プラズマを
該塗布物表面に接触させる第4工程からなることを特徴
とする積層体の製造方法である。
【0081】本発明2の第1〜3工程までは、本発明1
の第1〜3工程と同様である。本発明2の第4工程によ
って、無機質組成物(C)が塗布された膜は、不飽和フ
ッ化炭素ガスが励起された放電プラズマに接触されるこ
とにより、プラズマ中の高エネルギー活性種(例えば、
電子、イオン、ラジカル等)によって塗膜の乾燥、硬化
が促進されるとともに、フッ化炭素膜が表面に堆積され
る。
【0082】上記フッ化炭素膜の厚みは、上記安定性無
機質組成物の塗布膜厚によって適宜選ばれるが、薄くな
ると撥水性が十分に得られなくなり、厚くなると、耐擦
傷性に劣るだけでなく干渉効果により十分な反射防止効
果が得られなくなるので、100〜500Åが好まし
い。
【0083】上記不飽和フッ化炭素ガスとしては、例え
ば、フッ化エチレン(CF2 CF2)、6フッ化プロピ
レン(CF3 CFCF2 )等のフッ化炭素ガス、1塩化
3フッ化エチレン(CClFCF2 )等の塩素化フッ化
炭素ガス等が挙げられ、これには、フッ素原子含有ガス
を添加してもよく、例えば、4フッ化炭素(CF4 )、
6フッ化エタン等の飽和フッ化炭素ガス;3塩化1フッ
化炭素(CCl3 F)、1臭化3フッ化炭素(CBrF
3)等のハロゲン化フッ化炭素ガス;6フッ化アセトン
((CF3 2 CO)、6フッ化−2−プロパノール
((CF3 2 CH 2 O)等のフッ素原子含有炭化水素
の蒸気などが挙げられる。不飽和フッ化炭素ガス、フッ
素原子含有ガスは、単独で用いてもよいが、2種以上を
併用してもよい。
【0084】上記不飽和フッ化炭素ガスとしては、高速
度で膜を堆積させることができ、安全であり有害ガスを
生成しない6フッ化プロピレン単独が好ましく、フッ素
原子含有ガスを添加する場合は、6フッ化プロピレン
と、4フッ化炭素もしくは6フッ化エタンとの混合フッ
化ガスが好ましく、この際、前記混合フッ化ガス中の6
フッ化プロピレンガスの量は10重量%以上であるのが
好ましい。
【0085】上記の不活性ガスとしては、ヘリウム、ア
ルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや窒素ガスが単独
又は混合して使用されるが、ヘリウムが準安定状態で寿
命が長く、不飽和フッ化炭素ガスを励起するのに有利な
ため好ましい。不活性ガスとしてヘリウム以外のガスを
使用する場合は、安定な放電プラズマを発生させるため
に、アセトンやメタノール等の有機物蒸気、メタン、エ
タン等の炭化水素ガスを2体積%以下の割合で混合する
のが好ましい。
【0086】不飽和フッ化炭素ガスと不活性ガスとの混
合割合は、使用するガスの種類により適宜決定される
が、不飽和フッ化炭素ガス濃度が10体積%を超える
と、高電圧を印加しても均一な放電プラズマが発生し難
くなるので、不飽和フッ化炭素ガス濃度は10体積%以
下に限定され、好ましくは0.01〜5体積%である。
また、不飽和フッ化炭素ガスにフッ素原子含有ガスを添
加する場合も、添加しない場合と同様の理由で、不飽和
フッ化炭素ガスとフッ素原子含有ガスの合計ガス濃度は
10体積%以下が好ましい。
【0087】上記、不飽和フッ化炭素ガスと不活性ガス
からなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下とは、100〜
800Torrの圧力下のことであり、圧力調整が容易
で装置が簡便で済むため、700〜780Torrの範
囲が好ましい。
【0088】放電プラズマを前記塗布物表面に接触させ
フッ化炭素膜を堆積させるには、基材を加熱したり、冷
却したりする必要は、特にはなく、室温下で十分であ
る。
【0089】また、放電プラズマに接触させる時間は、
使用する混合ガス種類や印加電圧等のプラズマ発生のた
めの因子や、必要な膜厚で適宜決定される。
【0090】以下に、本発明2におけるプラズマ処理工
程について図面によって説明する。本発明2に使用され
るプラズマ処理装置の一例としては、本発明1で述べた
図1の装置が挙げられる。
【0091】図1の装置において、不飽和フッ化炭素ガ
スは、ガス導入管8を経て多孔構造の上部金属電極4か
ら、また不活性ガスは、ガス導入管9から、表面処理部
3に供給される。なお、図1においては、上部金属電極
4は、不飽和フッ化炭素ガスを均一に供給するために、
その内部がガスの通路とされた、多孔性の電極とされて
いる。このように上部金属電極4がガス導入口と電極を
兼ね、且つ多孔構造からなると、不飽和フッ化炭素ガス
を表面処理部3に均一に供給し、均一な処理を行うため
に好ましい。しかし、例えば、不飽和フッ化炭素ガスを
攪拌状態で供給したり、高速で吹き付けるなどにより、
表面処理部3に均一に供給することが可能であれば、必
ずしも多孔構造とする必要はない。
【0092】また、不活性ガスは、不飽和フッ化炭素ガ
スと混合してガス導入管8を通り、上部金属電極4から
導入しても構わないが、均一性よくプラズマ処理するた
めには、不飽和フッ化炭素ガスを上部金属電極4から導
入し、不活性ガスをガス導入管9から導入するのが好ま
しい。また、ガス導入管9の処理容器2内の先端部は、
図1に示したように、多数の穴の開いたリング状とし、
その穴からガスが処理容器2内に供給される方が、均一
に処理され易いので好ましい。
【0093】本発明2で使用されるガスは、図示しない
がマスフローコントローラーで流量制御されて供給され
るのが好ましく、不飽和フッ化炭素ガス10体積%以下
と、残部が不活性ガスからなる混合ガスとして表面処理
部3に供給される。
【0094】図1のプラズマ処理装置を用いて、無機質
組成物(C)が塗布された表面をプラズマ処理する際の
操作手順は、特に限定されないが、例えば、以下の手順
である。処理容器2内の固体誘電体6上に基材7を無機
質組成物(C)の塗布面が上部金属電極4に対向するよ
うに配置する。処理容器2内の空気を排気した後、不飽
和フッ化炭素ガス及び不活性ガスをマスフローコントロ
ーラーで流量制御し、上記の所定の濃度の混合ガスとし
て、表面処理部3に供給し、表面処理部3の混合ガスの
圧力を大気圧近傍の圧力とする。次いで、金属電極間に
電圧を印加し、発生したガスの放電プラズマを、基材7
の無機質組成物(C)が塗布された表面に接触させて、
該表面にフッ化炭素膜を堆積させる。
【0095】過剰の不飽和フッ化炭素ガス及び不活性ガ
スは、処理容器2のガス出口10から排出する。なお、
処理容器2内に不飽和フッ化炭素ガス及び不活性ガスを
導入するに際して、処理容器2内に残存する空気を、例
えば油回転真空ポンプからなる排気装置(図示せず)に
よって排気口11から排出するのが好ましい。
【0096】また、対向する金属電極4、5間の距離
は、不飽和フッ化炭素ガスのガス流量、印加電圧の大き
さ、固体誘電体の厚み、処理する基材の厚み等により適
宜決定されるが、短くなると、未使用の反応ガスが多く
なり非能率的であり、長くなると電極空間のガスの均一
性が損なわれ易くなるので、1〜20mmが好ましい。
【0097】また、上記の操作手順においては、プラズ
マ処理に先立って、処理容器2内の空気を排気した後、
所定の濃度の混合ガスを表面処理部3に供給したが、処
理容器2内の空気を排気せずに、所定の濃度の混合ガス
を表面処理部3にある時間供給しながら、ガス出口10
又は排気口11から処理容器2内のガスを排気させるこ
とにより、ガス交換をした後プラズマ処理してもよい。
【0098】なお、上記の例では、基材7は配置された
片面(図1では、上面)のみが表面処理されるが、基材
7の両面の処理が必要であれば、基材7を上部金属電極
4と下部金属電極5の間の空間に浮かせればよい。
【0099】なお、図1の装置は、基材7の塗布物表面
をバッチ式に処理する例であるが、基材7の塗布物表面
を連続的に処理する場合は、基材7がフィルム状であれ
ば、一般に使用されている走行系を用い、基材7がシー
ト状であれば、ベルトコンベアー等の搬送系を用い、処
理容器2に外部の空気が混入しないようなシール機構を
有する基材導入口及び基材排出口を設け、基材7が処理
容器2内を連続して、通過できるようにし、基材7を必
要な時間だけ放電プラズマが接触するようなライン速度
で、処理容器2内を通過せしめることにより容易に連続
処理が可能である。
【0100】本発明3(請求項3記載の発明を本発明3
という。)は、請求項1または2記載の無機質組成物
(C)の代わりに、請求項1記載の無機質組成物(C)
の固形分濃度を1.0〜4.0重量%に調整して得られ
る安定性無機質組成物を使用することを特徴とする請求
項1または2記載の積層体の製造方法である。
【0101】本発明3で使用される安定性無機質組成物
は、その固形分濃度が低くなると、塗布効率が低くなり
生産性が悪くなり、その固形分濃度が高くなると、シラ
ノール基同士が溶媒中で接近し、重縮合反応が早くな
り、この傾向は環境温度が高くなると顕著となり、例え
ば、温度管理のできない環境下で塗布剤として使用する
と経時的に安定性無機質組成物が変化し、長期保存がで
きないという問題が起こる可能性があるので、その固形
分濃度は1.0〜4.0重量%に限定され、1.5〜
2.5重量%が好ましい。なお、本発明3でいう固形分
濃度とは、安定性無機質組成物中のSi原子が全てSi
2 になると考えた場合の安定性無機質組成物中の該S
iO2 の重量百分率である。
【0102】本発明3で使用される安定性無機質組成物
を製造するには、請求項1記載の無機質組成物(C)
を、その固形分濃度が1.0〜4.0重量%になるよう
に、有機溶媒を添加して希釈する。
【0103】上記有機溶媒としては、前記縮合組成物
(A)及び縮合組成物(B)の混合物と、相溶するもの
であれば特に限定されず、例えば、縮合組成物(A)の
製造に用いられるものと同様のものが用いられる。
【0104】本発明3は、請求項1または2記載の無機
質組成物(C)の代わりに、上記の安定性無機質組成物
を使用することの他は本発明1または2の積層体の製造
方法と同様である。
【0105】
【作用】本発明1の方法によると、縮合組成物(A)の
混合条件下では、テトラアルコキシシランの重縮合がか
なり進行し、コロイダルシリカが形成されており、縮合
組成物(B)の混合条件下では、テトラアルコキシシラ
ンの重縮合が比較的進まず、シリカゾルの段階で抑えら
れており、この両者の混合物である無機質組成物(C)
は、コロイダルシリカとシリカゾルの混合物となる。
【0106】この無機質組成物(C)を基材上に塗布
後、高湿度環境下に置くことにより残存アルコキシ基を
加水分解させ、加えて光を照射することによりシラノー
ル基の重縮合に伴うシリカゾルとコロイダルシリカの重
縮合反応を進行させ、コロイダルシリカとシリカゾルの
収縮率の差異により多孔質化され、加えて過酷な環境下
においても反射防止効果の経時変化の少ない被膜を得る
ことができる。また、光照射工程は高湿度環境下放置の
所要時間の短縮効果も有する。
【0107】この多孔質被膜が積層された基材を、少な
くとも一方の対向面に固体誘電体が配設された対向する
金属電極間に配置し、フッ素原子含有ガスを含む不飽和
炭化水素ガス10体積%以下と残部が不活性ガスからな
る混合ガスの大気圧近傍の圧力下で、金属電極間に電圧
を印加し、発生したガスの放電プラズマを該被膜に接触
させると、被膜の乾燥、硬化が促進されると共に、プラ
ズマ重合により被膜表面にフッ化炭化水素膜が堆積さ
れ、被膜に撥水性が生じる。
【0108】本発明2の方法における、無機質組成物
(C)を基材上に塗布する工程、高湿度環境下に置く工
程および光を照射する工程による作用は上記の本発明1
の作用と同様である。本発明2では、多孔質被膜が積層
された基材を、少なくとも一方の対向面に固体誘電体が
配設された対向する金属電極間に配置し、不飽和フッ化
炭素ガス10体積%以下と残部が不活性ガスからなる混
合ガスの大気圧近傍の圧力下で、金属電極間に電圧を印
加し、発生したガスの放電プラズマを該被膜に接触させ
ると、被膜の乾燥、硬化が促進されると共に、プラズマ
重合により被膜表面にフッ化炭素膜が堆積され、被膜に
撥水性が生じる。
【0109】本発明3においては、安定性無機質組成物
は、無機質組成物(C)の固形分濃度を1.0〜4.0
重量%になるように調整したものであるので、保存安定
性に優れている。
【0110】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。なお、結
果に示した積層体に関する各物性の評価方法は次の通り
であった。
【0111】(1) 反射率測定 反射率測定装置(島津製作所社製、鏡面反射測定装置、
入射角5度)を用いて、積層体の反射スペクトルを波長
400〜800nmの範囲で測定し、その最低反射率R
minを求め、次式により片面最小反射率(R)を測定す
る。 R=Rmin/2
【0112】(2) 撥水性試験 積層体の被膜に2μlの蒸留水を滴下し、被膜の静的接
触角を、接触角計(協和界面科学社製「CA−DT
型」)によって測定した。被膜表面3点について測定し
平均値をとった。
【0113】(3) 耐擦傷性試験 積層体の被膜の表面を、ネルの布で、1000g/cm
2 の荷重をかけて、往復100回摩擦し、表面の傷の有
無を目視した。 (判定基準) ○:傷は確認できなかった。 ×:傷が確認できたか、もしくは膜が剥離していた。
【0114】(4) 信頼性試験 積層体を−40℃の雰囲気下に30分保持した後、取り
出し、その直後に80℃の雰囲気下に30分保持する。
これを1サイクルとして、次いで、取り出し、その直後
に再び−40℃の雰囲気下に置いて2サイクル目を開始
する。このような熱衝撃試験を210サイクル行った。
上記、熱衝撃試験の終了後、前記反射率測定、撥水性試
験および耐擦傷性試験を行い、信頼性を試験した。
【0115】(5) 無機質組成物の保存安定性 上記(1) 〜(4) の物性について再現性のある積層体が得
られる無機質組成物の使用可能期間。
【0116】(実施例1〜12、比較例1〜16)表1
〜3にモル比で示したそれぞれ所定量のテトラエトキシ
シラン、アンモニアによりpHが調整された塩基性水お
よびイソプロピルアルコールを、マグネチックスターラ
ーに供給、800rpmで2時間、20℃で混合し、縮
合組成物(A)を得た。
【0117】表1〜3にモル比で示したそれぞれ所定量
のテトラエトキシシラン、塩酸によりpHが調整された
酸性水およびイソプロピルアルコールを、マグネチック
スターラーに供給、800rpmで2時間、20℃で混
合し、縮合組成物(B)を得た。
【0118】得られた縮合組成物(A)および縮合組成
物(B)を、表1〜3に示した重量比(縮合組成物
(A)/縮合組成物(B))で、マグネチックスターラ
ーに供給、800rpmで2時間、20℃で混合し、無
機質組成物(C)を得た。
【0119】積層体の製造:得られた無機質組成物
(C)に、表1〜3に示した基材〔スライドガラス(N
AKARAI社製、S−2111、76mm×26mm
×1mm)、またはポリカーボネート板(帝人社製、商
品名「テイジンパンライト」、100mm×40mm×
1mm)〕を浸漬し、100〜300mm/分の速度で
引き上げた後、室温で10分間放置し被膜が形成された
スライドガラスまたはポリカーボネート板を得た。
【0120】上記被膜が形成されたスライドガラスまた
はポリカーボネート板を、表4に示した温度、湿度条件
下に、表4に示した時間だけ置いた。
【0121】上記温度、湿度条件下に置いた後、上記無
機質組成物(C)が塗布された膜面に、大気中で184
nm(6.7eV)、254nm(4.9eV)の光を
照射距離20mm、照射時間120秒間の条件(SEN EN
GINEERING 社製、紫外線表面改質装置使用)で照射した
(ただし、比較例16は光の照射をせず。)。
【0122】光照射後の塗布物を以下のようにしてプラ
ズマ処理した。
【0123】図1に示した容量結合型プラズマ処理装置
〔上部金属電極4および下部金属電極5は直径120m
mのステンレス鋼(SUS304)よりなる。上部金属
電極4の下部金属電極5への対向面には、1mmφの穴
が1cm間隔で開いている。上部金属電極4と下部金属
電極5の距離は5mmであり、下部金属電極5上に表5
および表6に示した直径140mm、厚み2mmの固体
誘電体6が配設されている〕の固体誘電体6上に、上記
の被膜が形成されたスライドガラスまたはポリカーボネ
ート板7を置き、処理容器2内の空気を10Torrま
で排気した。次いで、処理容器2内に表5および表6に
示した所定量のフッ素原子含有ガスおよび不飽和炭素水
素ガスをガス導入管8から、ヘリウムガスをガス導入管
9から供給し、処理容器2内の圧力を表5および表6に
示した圧力とした後、15kHzで表5および表6に示
した電圧を電極に印加し、表5および表6に示した時間
プラズマ処理し、基材面上に約500Åの被膜が形成さ
れた積層体を得た。
【0124】得られた積層体を用いて、前記の評価方法
により各物性を評価し、結果を表7に示した。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】なお、表1〜3並びに後述の表8、9、1
4および18の基材欄のPは、ポリカーボネート板を、
Gはスライドガラスを示し、縮合組成物(A)および縮
合組成物(B)欄のIPAはイソプロピルアルコールを
示す。なお、比較例3は、縮合組成物(A)の調製時の
塩基性水の添加量が多すぎるため、および比較例4は、
縮合組成物(B)の調製時の酸性水の添加量が少なすぎ
るため、基材に塗布できなかった。比較例5は、縮合組
成物(B)の調製時の酸性水の添加量が多すぎるため、
被膜が白濁したので、各物性値の測定はしなかった。比
較例7は、縮合組成物(A)の調製時の塩基性水のpH
が高すぎるため、縮合組成物(A)がゲル化し無機質組
成物(C)が得られなかった。
【0129】比較例9は、縮合組成物(A)と縮合組成
物(B)の混合比が大きすぎるため、塗布できなかっ
た。比較例11は、縮合組成物(A)の調製時の有機溶
剤量が少なすぎるため、縮合組成物(A)がゲル化し無
機質組成物(C)が得られなかった。比較例12は、縮
合組成物(A)の調製時の有機溶媒の量が多すぎるた
め、加水分解、縮重合反応速度が極端に遅くなり、反応
が不十分なため基材に塗装できなかった。
【0130】比較例13は、縮合組成物(B)の調製時
の有機溶媒の量が多すぎるため、加水分解、縮重合反応
速度が極端に遅くなり、反応が不十分なため基材に塗装
できなかった。
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】なお、表5および表6並びに後述の表1
1、12、16および20の固体誘電体欄のTは、酸化
チタンを、PTは、ポリテトラフルオロエチレンを、Z
は、酸化ジルコニウムを示し、また、フッ素含有ガス欄
のF1は、4フッ化炭素を、F2は、6フッ化プロピレ
ンを、不飽和炭化水素ガス欄のC1は、プロピレン、C
2は、エチレンを示す。比較例14では、フッ素原子含
有ガスおよび不飽和炭化水素ガスの使用量が多いため、
均一性の良いプラズマが放電できなかったので、プラズ
マ処理を中止した。
【0135】
【表7】
【0136】(比較例17)特開昭61−247743
号公報の実施例1に従い、 C6 132 4 Si(OCH3 3 50g (CH3 O)3 SiC2 4 6 122 4 Si(OCH3 3 40g Si(OCH3 4 10g を、tert−ブタノール2500gと混合したもの
に、1%塩酸水溶液16.5gを添加し、室温下で24
時間攪拌しながら反応させて、ゾル液を作製した。得ら
れたゾル液に実施例11に使用したものと同様のスライ
ドガラスを浸漬し、750mm/分の速度で引き上げた
後、100℃で1時間乾燥させて積層体を得た。得られ
た積層体の各物性を評価し、結果を前述の表7に示し
た。
【0137】(実施例13〜24、比較例18〜26)
実施例1と同様にして、表8および表9に示した条件で
無機質組成物(C)を得た。
【0138】積層体の製造:得られた無機質組成物
(C)に、表8および表9に示した基材〔スライドガラ
ス(NAKARAI社製、S−2111、76mm×2
6mm×1mm)、またはポリカーボネート板(帝人社
製、商品名「テイジンパンライト」、100mm×40
mm×1mm)〕を浸漬し、100〜300mm/分の
速度で引き上げた後、室温で10分間放置し被膜が形成
されたスライドガラスまたはポリカーボネート板を得
た。
【0139】上記被膜が形成されたスライドガラスまた
はポリカーボネート板を、表10に示した温度、湿度条
件下に、表10に示した時間だけ置いた。
【0140】上記温度、湿度条件下に置いた後、上記無
機質組成物(C)が塗布された膜面に、大気中で184
nm(6.7eV)、254nm(4.9eV)の光を
照射距離20mm、照射時間120秒間の条件(SEN EN
GINEERING 社製、紫外線表面改質装置使用)で照射した
(ただし、比較例26は光の照射をせず。)。
【0141】光照射後の塗布物を以下のようにしてプラ
ズマ処理した。
【0142】実施例1に使用したものと同様のプラズマ
処理装置(ただし、固体誘電体6は、表11および表1
2に示したものを使用した。)を用い、その固体誘電体
6上に、上記光照射された、被膜が形成されたスライド
ガラスまたはポリカーボネート板7を置き、処理容器2
内の空気を10Torrまで排気した。次いで、処理容
器2内に表11および表12に示した所定量の6フッ化
プロピレンガスおよび4フッ化炭素をガス導入管8か
ら、ヘリウムガスをガス導入管9から供給し、処理容器
2内の圧力を表11および表12に示した圧力とした
後、15kHzで表11および表12に示した電圧を電
極に印加し、表11および表12に示した時間プラズマ
処理し、基材面上に約500Åの被膜が形成された積層
体を得た。
【0143】得られた積層体を用いて、前記の評価方法
により各物性を評価し、結果を表13に示した。
【0144】
【表8】
【0145】
【表9】
【0146】
【表10】
【0147】
【表11】
【0148】
【表12】
【0149】
【表13】
【0150】比較例20は、縮合組成物(B)の調製時
の酸性水の添加量が多すぎるため、被膜が白濁したの
で、各物性値の測定はしなかった。比較例24では、6
フッ化プロピレンガスの使用量が多いため、均一性の良
いプラズマが放電できなかったので、プラズマ処理を中
止した。
【0151】(実施例25〜37、比較例27)実施例
1と同様にして、表14に示した条件で無機質組成物
(C)を調製した。実施例25〜36においては、得ら
れた無機質組成物(C)の固形分濃度が1.0〜4.0
重量%の範囲に入らない場合は、イソプロピルアルコー
ルを添加して表14に示した固形分濃度に調整して、安
定性無機質組成物を得た。また、実施例37について
は、無機質組成物(C)の固形分濃度を5.0重量%
に、比較例27については、無機質組成物(C)の固形
分濃度を0.5重量%に調製した。
【0152】積層体の製造:得られた安定性無機質組成
物及び無機質組成物(C)に、表14に示した基材〔ス
ライドガラス(NAKARAI社製、S−2111、7
6mm×26mm×1mm)、またはポリカーボネート
板(帝人社製、商品名「テイジンパンライト」、100
mm×40mm×1mm。製膜性を良くするために、基
材前処理として、コロナ放電処理を行った。コロナ放電
処理条件は、基材と電極との距離が5mm、電力4.5
kWで1秒間とした。)〕を浸漬し、300〜400m
m/分の速度で引き上げた後、室温で10分間放置し被
膜が形成されたスライドガラスまたはポリカーボネート
板を得た。
【0153】上記被膜が形成されたスライドガラスまた
はポリカーボネート板を、表15に示した温度、湿度条
件下に、表15に示した時間だけ置いた。
【0154】上記温度、湿度条件下に置いた後、上記安
定性無機質組成物および無機質組成物(C)が塗布され
た膜面に、大気中で184nm(6.7eV)、254
nm(4.9eV)の光を照射距離20mm、照射時間
120秒間の条件(SEN ENGINEERING 社製、紫外線表面
改質装置使用)で照射した。
【0155】光照射後の塗布物を以下のようにしてプラ
ズマ処理した。
【0156】実施例1で使用したものと同様のプラズマ
処理装置(ただし、固体誘電体6は表16に示したもの
を使用した。)の固体誘電体6上に、光照射後の上記の
被膜が形成されたスライドガラスまたはポリカーボネー
ト板7を置き、処理容器2内の空気を10Torrまで
排気した。次いで、処理容器2内に表16に示した所定
量のフッ素原子含有ガスおよび不飽和炭素水素ガスをガ
ス導入管8から、ヘリウムガスをガス導入管9から供給
し、処理容器2内の圧力を表16に示した圧力とした
後、15kHzで表16に示した電圧を電極に印加し、
表16に示した時間プラズマ処理し、基材面上に約0.
1μmの被膜が形成された積層体を得た。
【0157】得られた積層体を用いて、前記の評価方法
により各物性を評価し、結果を表17に示した。
【0158】
【表14】
【0159】
【表15】
【0160】
【表16】
【0161】
【表17】
【0162】なお、比較例27は、無機質組成物(C)
の固形分濃度が低いためうまく製膜できなかった。
【0163】(実施例38〜51)実施例25と同様に
して、表18に示した条件で無機質組成物(C)を調製
した。得られた無機質組成物(C)の固形分濃度が1.
0〜4.0重量%の範囲に入らない場合は、イソプロピ
ルアルコールを添加して表18に示した固形分濃度に調
整して、実施例38〜50の安定性無機質組成物を得
た。また、実施例51については、無機質組成物(C)
の固形分濃度を5.0重量%に調製した。
【0164】積層体の製造:得られた安定性無機質組成
物及び無機質組成物(C)に、表18に示した基材〔ス
ライドガラス(NAKARAI社製、S−2111、7
6mm×26mm×1mm)、またはポリカーボネート
板(帝人社製、商品名「テイジンパンライト」、100
mm×40mm×1mm。製膜性を良くするために、基
材前処理として、コロナ放電処理を行った。コロナ放電
処理条件は、基材と電極との距離が5mm、電力4.5
kWで1秒間とした。)〕を浸漬し、300〜400m
m/分の速度で引き上げた後、室温で10分間放置し被
膜が形成されたスライドガラスまたはポリカーボネート
板を得た。
【0165】上記被膜が形成されたスライドガラスまた
はポリカーボネート板を、表19に示した温度、湿度条
件下に、表19に示した時間だけ置いた。
【0166】上記温度、湿度条件下に置いた後、上記安
定性無機質組成物および無機質組成物(C)が塗布され
た膜面に、大気中で184nm(6.7eV)、254
nm(4.9eV)の光を照射距離20mm、照射時間
120秒間の条件(SEN ENGINEERING 社製、紫外線表面
改質装置使用)で照射した。
【0167】光照射後の塗布物を以下のようにしてプラ
ズマ処理した。
【0168】実施例25で使用したものと同様のプラズ
マ処理装置(ただし、固体誘電体6は表20に示したも
のを使用した。)の固体誘電体6上に、光照射後の上記
の被膜が形成されたスライドガラスまたはポリカーボネ
ート板7を置き、処理容器2内の空気を10Torrま
で排気した。次いで、処理容器2内に表20に示した所
定量の6フッ化プロピレンおよび4フッ化炭素をガス導
入管8から、ヘリウムガスをガス導入管9から供給し、
処理容器2内の圧力を表20に示した圧力とした後、1
5kHzで表20に示した電圧を電極に印加し、表20
に示した時間プラズマ処理し、基材面上に約500Åの
被膜が形成された積層体を得た。
【0169】得られた積層体を用いて、前記の評価方法
により各物性を評価し、結果を表21に示した。
【0170】
【表18】
【0171】
【表19】
【0172】
【表20】
【0173】
【表21】
【0174】
【発明の効果】本発明1の積層体の製造方法の構成は上
記の通りであり、縮合組成物(A)及び(B)を混合す
る際、特に攪拌等も必要なく、均質なものを得るため
に、好ましくは、攪拌するのがよいが、かかる場合であ
っても、混合装置としてマグネチックスターラーなどの
ような簡便な攪拌機で十分であり、又、無機質組成物
(C)の混合も同様に、均一にコロイダルシリカをアル
コキシシランに分散させる際、特に攪拌等も必要なく、
均質なものを得るために、好ましくは、攪拌するのがよ
いが、かかる場合であっても、混合装置としてマグネチ
ックスターラーなどのような簡便な攪拌機で十分であ
り、高性能な装置を必要とせずに得られる。従って、こ
の無機質組成物(C)は容易に得られる。
【0175】この無機質組成物(C)を基材上に塗布
し、高湿度環境下に置くことにより被膜の細孔内に残存
する未反応アルコキシ基を加水分解させる。さらに光照
射工程により残存シラノール基を重縮合させ、コロイダ
ルシリカとアルコキシシランの収縮率の差異により耐殺
傷性に優れた無機質多孔質膜となる。残存未反応基は、
高湿度環境下放置のみによっても除去することが可能で
あるが、光照射工程と組み合わすことにより高湿度環境
下での所要放置時間を短縮することができる。この処理
により過酷な環境下においても反射防止効果の経時変化
の少ない信頼性の高い被膜を得ることができる。
【0176】さらに、本発明1では、特定の条件でフッ
素原子含有ガスを含む不飽和炭化水素ガス10体積%以
下と残部が不活性ガスからなる混合ガスのプラズマ処理
することにより、基材上にフッ化炭化水素膜を積層させ
る。このフッ化炭化水素膜の高い撥水性のため、本発明
1の方法で得られた積層体は防汚性にも優れる。また、
このプラズマ処理工程は、大気圧近傍で行われるので、
連続処理も可能であり生産性の面でも有利な方法であ
る。
【0177】本発明2の積層体の製造方法の構成は上記
の通りであり、無機質組成物(C)を基材上に塗布する
工程、高湿度環境下に置く工程および光を照射する工程
による効果は上記の本発明1の効果と同様である。
【0178】さらに、本発明2では、特定の条件で不飽
和フッ化炭素ガス10体積%以下と残部が不活性ガスか
らなる混合ガスのプラズマ処理することにより、基材上
にフッ化炭素膜を積層させる。このフッ化炭素膜の高い
撥水性のため、本発明2の方法で得られた積層体は防汚
性にも優れる。また、このプラズマ処理工程は、大気圧
近傍で行われるので、連続処理も可能であり生産性の面
でも有利な方法である。
【0179】本発明3の積層体の製造方法の構成は上記
の通りであり、本発明1または本発明2と同様の効果が
得られる。さらに、本発明3で用いられる安定性無機質
組成物は、固形分濃度が1.0〜4.0重量%とされて
いるので、保存安定性がよく、長期間にわたり使用可能
である。
【0180】本発明1〜3の製造方法で得られた積層体
は、低屈折率であり、防汚性に優れているので、反射防
止体として好適に使用される。従って、本発明1〜3の
製造方法で得られた積層体は、例えば、メガネレンズ、
ゴーグル、コンタクトレンズ等のメガネ分野;車の窓、
インパネメーター、ナビゲーションシステム等の自動車
分野;窓ガラス等の住宅・建築分野;太陽電池、光電
池、レーザー等のエネルギー分野;ノートパソコン、電
子手帳、液晶テレビ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロ
ジェクションテレビ、光ファイバー、光ディスク等の電
子情報機器分野;照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計等の
家庭用品分野;ショーケース、額、半導体リソグラフィ
ー、コピー機器等の業務用分野;液晶ゲーム機器、パチ
ンコ台ガラス、ゲーム機等の娯楽分野等の分野の材料に
用いられ得る。これらのうち、特に、メガネレンズ、車
の窓、インパネメーター、ナビゲーションシステム、太
陽電池、光電池、レーザー、ノートパソコン、電子手
帳、液晶テレビ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロジェ
クションテレビ、光ディスク、蛍光灯、液晶ゲーム機器
等の材料に好適に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明1に使用されるプラズマ処理装置の一例
を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電源部 2 処理容器 3 表面処理部 4 上部金属電極 5 下部金属電極 6 固体誘電体 7 基材 8 ガス導入管 9 ガス導入管 10 ガス出口 11 排気口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 83/04 LRR C08L 83/04 LRR C09D 183/04 PMS C09D 183/04 PMS G02B 1/11 G02B 1/10 A 1/10 Z

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式Si(OR)4 (式中、Rは炭素
    数1〜5のアルキル基)で表されるテトラアルコキシシ
    ラン1モルに対して、pHが10.0〜12.0の塩基
    性水2〜8モル及び有機溶媒10〜30モルを混合して
    得られる縮合組成物(A)と、一般式Si(OR1 4
    (式中、R1 は炭素数1〜5のアルキル基)で表される
    テトラアルコキシシラン1モルに対して、pHが0〜
    2.6の酸性水3〜8モル及び有機溶媒10〜30モル
    とを混合して得られる縮合組成物(B)とを、(A)/
    (B)=0.4〜2.4(重量比)で混合した無機質組
    成物(C)を基材上に塗布する第1工程、得られた塗布
    物を相対湿度70%以上の環境下に置く第2工程、上記
    塗布物に光を照射する第3工程、次いで上記塗布物を少
    なくとも一方の対向面に固体誘電体が配設された対向す
    る金属電極間に配置し、少なくともフッ素原子含有ガス
    を含む不飽和炭化水素ガス10体積%以下と残部が不活
    性ガスからなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下で、金属
    電極間に電圧を印加し、発生したガスの放電プラズマを
    該塗布物表面に接触させる第4工程からなることを特徴
    とする積層体の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の第1工程、第2工程及び
    第3工程に続いて、該塗布物を少なくとも一方の対向面
    に固体誘電体が配設された対向する金属電極間に配置
    し、不飽和フッ化炭素ガス10体積%以下と残部が不活
    性ガスからなる混合ガスの大気圧近傍の圧力下で、金属
    電極間に電圧を印加し、発生したガスの放電プラズマを
    該塗布物表面に接触させる第4工程からなることを特徴
    とする積層体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の無機質組成物
    (C)の代わりに、請求項1記載の無機質組成物(C)
    の固形分濃度を1.0〜4.0重量%に調整して得られ
    る安定性無機質組成物を使用することを特徴とする請求
    項1または2記載の積層体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR19990019538A (ko) * 1997-08-29 1999-03-15 윤종용 하이드로 카본계의 가스를 사용한 반사방지막 형성방법
JP2011514395A (ja) * 2008-02-05 2011-05-06 コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ 有機−無機ハイブリッド材料、該材料製の光学薄層、これを含む光学材料、およびその製造方法

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