JP4889135B2 - 反射防止膜フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線遮断効果、熱線反射効果、反射防止効果等を有する各種機能性塗膜、反射防止フィルム及びそれらを塗布により製造するためのコーティング溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紫外線遮断効果、熱線反射効果、反射防止効果等を有する機能性薄膜の形成方法は、一般に気相法と塗布法とに大別される。気相法による機能性薄膜の製造方法には、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的方法と、CVD法等の化学的方法とがある。また、塗布法による機能性薄膜の製造方法には、スプレー法、浸漬法及びスクリーン印刷法等がある。
【0003】
気相法による機能性薄膜の製造方法は、高機能且つ高品質な薄膜を得ることが可能であるが、高真空系での精密な雰囲気の制御が必要であるといった問題や、特殊な加熱装置又はイオン発生加速装置を必要とし、製造装置が複雑で大型化する為に、必然的に製造コストが高くなるという問題がある。また、気相法による機能性薄膜の製造方法は、薄膜の大面積化或いは複雑な形状のものを製造することが困難であるという問題がある。
【0004】
他方、塗布法による機能性薄膜の製造方法のうち、スプレー法によるものは、塗液の利用効率が悪く、成膜条件の制御が困難である等の問題がある。また、塗布法を利用する機能性薄膜の製造方法のうち、浸漬法及びスクリーン印刷法等によるものは、成膜原料の利用効率が良く、大量生産や設備コスト面での有利さがあるが、一般的に塗布法により得られる機能性薄膜は、気相法により得られる薄膜に比較して機能及び品質が劣るという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、塗布法によって優れた品質の薄膜を得る方法として、無機又は有機超微粒子を酸性及び又はアルカリ水溶液中に分散した分散液を、基板上に塗布し、焼成する方法が提案されている。この製造方法によると、大量生産や設備コスト面では有利であるが、製造工程中に高温での焼成過程を必要とする為、プラスチック基材には成膜が不可能であるという問題や、基板と塗布膜との収縮度の違い等より得られる薄膜の均一性が十分でないという問題や、気相法により得られる薄膜に比較した場合に依然として性能が劣るという問題や、また、熱処理に長時間(例えば、数十分間以上)を要し、生産性に劣るという問題を有する。
【0006】
上記問題点に対し、本発明者等は、Rm Si(OR’)n 〔Rは炭素数1〜10のアルキル基、又はビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基、カルボキシル基等の反応性基、R’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは4の整数である〕で表される珪素アルコキシドを加水分解して調製したシリカゲルを、透明樹脂基材上に直接又は他の層を介して塗布し、形成された塗布層を基材にダメージを与えない程度の加熱、或いは活性エネルギー線を照射してゲル層とすることで、基材にダメージを与えずに所望の高品質な機能性薄膜を効率よく生産する方法を先に特許出願しているが、通常の手法で得られるシリカゾルはゲル膜の基材への密着性が弱いため、基材から簡単に剥がれ、実使用上問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布法を採用する方法において、基材にダメージを与えずに、所望の高品質な機能性薄膜を効率よく生産することができ、且つ基材への密着性が良好なコーティング溶液、該溶液を用いて製造した光学機能性膜及び反射防止膜フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。
【0009】
即ち、本発明のコーティング溶液は、下記式で示されるアルキルシリケートを(A)成分とし、下記式で示される珪素アルコキシドを(B)成分とし、(B)成分中のRc 中のC原子の量が、(A)成分と(B)成分との総和のSi原子1モル当たり、0.04〜0.4モルの範囲で混合し、水の存在下で加水分解、縮重合して得られるシリケートオリゴマーを主体としてなることを特徴とする。:
(A)成分: Ra O〔−{Si(ORb 2 }−O−〕n −Ra
(Ra 、及びRb は炭素数1〜10のアルキル基で同一であっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である)で表されるアルキルシリケート;
(B)成分: Rc Si(ORd 3
(Rc は炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、メルカプト基、イソシアネート基、スルホニル基、カルボキシル基等、Rd は炭素数1〜10のアルキル基を表す)で表される珪素アルコキシド。
【0010】
また、本発明の光学機能性膜は、前記本発明のコーティング溶液を基材上に直接または他の層を介して塗布・乾燥することにより形成し、基材に直接又は他の層を介して支持させた、屈折率1.38〜1.46の光学機能性膜であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の反射防止膜フィルムは、基材フィルム面上に、直接または他の層を介してハードコート層を形成し、その上に直接または他の層を介して屈折率1.65以上の高屈折率層を形成し、その上に前記本発明のコーティング溶液を塗布・乾燥することにより屈折率1.38〜1.46の低屈折率層を形成して得られたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の紫外線遮断膜は、基材上に、直接または他の層を介して支持されている紫外線遮断膜であって、前記本発明のコーティング溶液を塗布・乾燥することにより屈折率1.38〜1.46の低屈折率層を形成し、その上に屈折率1.7以上の高屈折率層を形成して得られたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の熱線反射膜は、基材上に、直接または他の層を介して支持されている熱線反射膜であって、前記本発明のコーティング溶液を塗布・乾燥することにより屈折率1.38〜1.46の低屈折率層を形成し、その上に屈折率1.7以上の高屈折率層を形成して得られたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施態様を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0015】
本発明は、光学機能性膜が支持される基材、特に透明基材に、直接又は他の層を介して、本発明の特別な組成のコーティング溶液を用いて塗布・乾燥することにより、種々の光学機能特性を付与した光学機能性膜を得るものである。本発明のコーティング溶液により形成される光学機能性膜は、例えば、ワープロ、コンピューター、テレビ等の各種ディスプレイ、液晶表示素子に用いる偏光板の表面、サングラスレンズ、度付メガネレンズ、カメラ用ファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラス等に必要な機能、例えば、反射防止機能、紫外線遮断機能、熱線反射機能を付与する目的に有用である。
【0016】
本発明のコーティング溶液における(A)成分は、次式(1):
a O〔−{Si(ORb 2 }−O−〕n −Ra 式(1)
で表されるアルキルシリケートであり、ここでRa 及びRb は炭素数1〜10のアルキル基で同一であっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。(A)成分は、具体的には、Ra 及びRb がメチル基のメチルシリケート、例えば、MS51(商品名、三菱化学製)、MS56(商品名、三菱化学製)が使用でき、また、Ra 及びRb がエチル基のエチルシリケート、nが1のテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン等が使用できる。
【0017】
本発明のコーティング溶液における(B)成分は、次式(2):
c Si(ORd 3 式(2)
で表される珪素アルコキシドであり、ここでRc は炭素数1〜10のアルキル基、又はビニル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、メルカプト基、イソシアネート基、スルホニル基、カルボキシル基等、Rd は炭素数1〜10のアルキル基を表す。更に具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
(A)成分と(B)成分との混合比は、(B)成分中のRc 中のC原子の量が、(A)成分と(B)成分との総和のSi原子1モル当たり、0.04〜0.4モルの範囲で混合したものである。
【0019】
(A)成分は膜の密着性に主として関与し、(B)成分はコーティング溶液の安定性と低屈折率性に主として関与する。(A)成分及び(B)成分中の−ORa 、 −ORb 、 −ORd 等の官能基は加水分解されるが、(B)成分中のRc は加水分解性の基ではなく、コーティング溶液の塗布乾燥後も膜中に残る。そのため、このRc 中のC原子の量で塗布膜の性質が変わることを見いだした。本発明のコーティング溶液及び機能性膜中における、Si原子1モル当たりのRc 中のC原子の量は、0.04モル〜0.4モルの範囲よりもC原子が多い場合は、得られた光学機能性膜の膜強度が弱くなるという不具合があり、一方、この範囲よりもC原子が少ない場合は、屈折率が高くなる等、光学的特性が悪くなる。
【0020】
このような配合比は、(A)成分と(B)成分との固形分重量比で言えば、ほぼ50:50〜95:5の範囲に相当する。即ち、(A)成分が上記の範囲より多い場合は、加水分解後の溶液が白濁し、均一透明な膜を得ることができなくなり、(A)成分が上記の範囲より少ない場合は、はじき等の塗布膜の不良原因となる。
【0021】
(A)成分としてのアルキルシリケート及び(B)成分としての珪素アルコキシドの加水分解は、好ましくは、(A)成分及び(B)成分を適当な有機溶媒中に溶解して、水の存在下で行う。(A)成分及び(B)成分は有機溶媒により溶解・希釈されることによって、水と均一に接触するようになり加水分解が均一に行われる利点がある。
【0022】
加水分解の際に使用する有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルコール、ケトン、エステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
一般的に言えばケトンを使用した場合には、加水分解反応が速く進み、アルコールを使用した場合には遅くなる傾向がある。したがって、反応速度をコントロールするためには、前記有機溶媒の種類を適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0024】
コーティング溶液における(A)成分及び(B)成分の添加量は、(A)成分及び(B)成分が水を存在させた場合に100%加水分解及び縮合したとして生じるコーティング溶液中のシリケートオリゴマー固形分換算で0.05%以上、好ましくは0.1〜30重量%になるように溶解する。コーティング溶液におけるシリケートオリゴマーの濃度が0.05重量%未満であると形成される機能性膜が所望の特性を充分に発揮できず、一方、30重量%を超えると透明均質膜の形成が困難となる。又、本発明においては、以上の固形分の範囲内であるならば、有機物や無機物バインダーを併用することも可能である。
【0025】
(A)成分、(B)成分、有機溶媒及び加水分解に必要な量以上の水を加えた溶液は、15〜35℃、好ましくは22〜28℃の温度で、2〜30時間、好ましくは3〜10時間撹拌することにより、コーティング溶液を製造する。
【0026】
或いは、有機溶媒を使用せずに、(A)成分及び(B)成分を加水分解させる場合には、水中で撹拌を行うことにより均一な加水分解を行うことができる。
【0027】
上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、これらの触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸又は酢酸等の酸が好ましく、これらの酸を約0.001〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液として加え、該水溶液中の水分を加水分解用の水分とすることができる。
【0028】
上記手順により加水分解・縮合反応を行って得られたシリケートオリゴマー中のSi−OHの量は、Si原子1モル当たり、1.2〜2.2モルの範囲が好ましい。この範囲よりもSi−OH量が多い場合は溶液の保存安定性が悪い等の不具合がある。また、この範囲よりもSi−OH量が少ない場合は、基材に対する密着性がなくなる等の不具合がある。Si−OH量は、例えばNMR測定を行い、Si−OHに由来するピークの占有面積より求めることができる。また、はじめの添加水分量が既知であり、水分量とアルコキシ基起因のアルコール量の経時変化を近赤外分光法、赤外分光法、カールフィッシャー法などを用いて測定している場合には、間接的にSi−OH量を求めることができる。
【0029】
上記手順により加水分解・縮合反応を行って得られたシリケートオリゴマーの平均分子量は、300〜100,000の範囲にあることが好ましい。この量より平均分子量が少ない場合は、塗布・乾燥後の膜の強度が十分とれない等の問題がある。また、この範囲よりも平均分子量が大きいときは、基材に対する密着性がなくなる等の不具合がある。分子量は、例えば次の条件下でGPC測定を行い、得られた保持時間を基にし、ポリスチレンについて既知の保持時間と分子量の関係から求めたポリスチレンサイズ換算分子量として得られる。
【0030】
分離カラム:以下の3種類のポリスチレンゲル充填カラム(東ソー(株)製)を順次に3本連結して使用する。
【0031】
「TSK GEL G−1000H」
「TSK GEL G−2000H」
「TSK GEL G−4000H」
流出液:テトラヒドロフラン(1ml/分)
流出温度:40℃
【0032】
本来、保持時間は、分子の大きさ(寸法)によって決まるものであり、分子量とは直接関係がない。しかしながら、同一系統分子構造の中では分子量と分子の大きさはほぼ比例する。一方、新規なポリマーについては分子量と保持時間との関係が明らかでない。そこで、本発明においては、新規なシリケートオリゴマーの分子量を規定するために、ポリスチレンサイズ換算分子量を採用している。
光学特性、液のポットライフの点から、4官能の珪素アルコキシドと、他のアルコキシドの比は、30:70〜95:5の範囲が望ましい。
【0033】
本発明のコーティング溶液には、各種の添加剤を添加することが可能である。最も重要な添加剤としては、成膜を促進する硬化剤が挙げられ、これらの硬化剤としては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム等の有機酸金属塩の酢酸、ギ酸等の有機酸溶液が挙げられる。該有機酸金属塩の濃度は約1〜20重量重量%程度であり、コーティング溶液中における該有機酸金属塩の添加量は、コーティング溶液中に存在するシリケートオリゴマー100重量部に対して上記有機酸金属塩として約0.1〜10重量部程度の範囲が好ましい。
【0034】
本発明で使用する透明樹脂基材としては、例えば、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリロニトリルフィルム等が使用できるが、特に一軸延伸ポリエステルフィルムが透明性に優れ、好適に用いられる。その厚みは、通常は5μm〜1000μm程度のものが好適に用いられる。
【0035】
本発明では、前記シリケートオリゴマーを主体としてなるコーティング溶液を、前記基体、好ましくは透明樹脂基体の表面に対し、塗布法により塗布し、その後塗布物を加熱、或いは活性エネルギー線を照射処理することにより、シリカゲル膜を形成する。
【0036】
本発明のコーティング溶液の基体への塗布方法としては、スピンコート法、デイップ法、スプレー法、バーコート法、ダイコート法、スライドコート法、ロールコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコート法等が挙げられる。
【0037】
加熱による硬化は、基材に与えるダメージを考慮した場合150℃以下、より好ましくは120℃以下であることが望ましい。
【0038】
活性エネルギー線としては、電子線又は紫外線が挙げられ、特に電子線が好ましい。例えば、電子線硬化の場合にはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1,000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光源から発する紫外線等が利用される。活性エネルギー線の総照射量として、活性エネルギー線が電子線である場合に2Mrad以上、好ましくは2〜50Mradの範囲が望ましい。
【0039】
電子線照射は、空気を酸素で置換しながら、或いは十分な酸素雰囲気中で行うことが好ましく、酸素雰囲気中で行うことによりSi−O−Si結合の生成、重合・縮合が促進され、より均質且つ高品質のゲル層を形成することができる。
【0040】
以上、本発明の光学機能性膜の製造方法においては、用いる塗布材料の選択により所望の機能を持つ光学機能性膜を得ることができる。又、本発明により得られる光学機能性膜は、単層の反射防止膜として、或いは多層の反射防止膜における低屈折率層として使用することができる。
【0041】
基材、好ましくは透明基材上に高屈折率膜と低屈折率膜とが交互に積層することで、反射防止膜を形成することができる。高屈折率膜と低屈折率膜の層数が多いほど、設定波長の反射率を高めることができる。しかしながら、層数が多いほどピンホール等の不良が発生しやすくなり、また、コーティング回数が増えてコスト的に望ましくないことなどの観点から、少ない方がよい。
【0042】
また、約550nmを中心波長とした波長領域の反射防止効率を高めるために、層構成としては、基材の上に高屈折率層、低屈折率層と設けるのが好ましい。
【0043】
高屈折率材料としては、約550nmを中心波長とした波長領域の反射防止効率を高めるためには、屈折率1.65以上であることが好ましい。高屈折率膜を形成するための組成物は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ビスマス、ITO、ATO、また、これらの混合物等が挙げられる。
【0044】
高屈折率膜の形成方法は、蒸着法、スパッタ法、CVD法等の真空技術等により形成することが可能であり、また、スピンコート法、デイップ法、スプレー法、バーコート法、ダイコート法、スライドコート法、ロールコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコート法等の各種印刷法での形成も可能である。
【0045】
また、反射防止膜の機械的強度を高めるために、基材と高屈折率層との間にハードコート層を設けることが好ましい。あるいは、高屈折率層がハードコート性を持ち合わせた、高屈折率ハードコート層を基材と低屈折率層の間に設けてもよい。
【0046】
本発明により得られる光学機能性膜は、熱線反射膜における低屈折率層として使用することができる。特開平10−236847号公報にあるように、透明基材上に高屈折率層と低屈折率層が交互に積層することで、熱線反射膜を形成することができる。高屈折率材料としては、熱線(赤外線)波長領域の反射効率を高めるために、屈折率1.7以上であることが好ましい。
【0047】
この熱線反射膜における高屈折率層は、反射防止膜の場合と同様なものが使用でき、反射防止膜の場合と同様な製造方法で形成することができる。
【0048】
熱線(赤外線)の中心波長における反射効率を高めるために、層数は、奇数であることが好ましい。また、反射防止膜の場合と同様の理由で、層数は少ない方が良い。好ましい層構成としては、基材の上に、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の順に形成することが好ましい。
【0049】
また、本発明により得られる光学機能性膜は、紫外線遮断膜における低屈折率層として使用することができる。紫外線遮断膜は、上記熱線反射膜と同様の層構成であり、特に、高屈折率層が紫外線吸収能をもつ材料からなる。この場合の高屈折率層の構成材料としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ビスマス、また、これらの混合物が挙げられる。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の光学機能性膜を実施例を用いて説明する。
以下の実施例において、コーティング組成物の分子量は、上述のGPC測定を行い決定した。また、Si−OH量は、NMR測定を行い、Si−OHに由来するピークの占有面積より求めた。
【0051】
〔実施例1〕
▲1▼低屈折率層形成用コーティング組成物の調製
メチルシリケートとしてMS51(商品名、三菱化学製)〔(A)成分〕とメチルトリメトキシシラン(東京化成工業製)〔(B)成分〕を固形分重量比で60:40で混合した。これにメチルエチルケトンと0.005Nの塩酸を加え、全体の固形分が6wt%、水分濃度が5wt%になるように調合した。これを25℃で3時間攪拌し、加水分解、重縮合を行った。硬化剤として酢酸ナトリウムと酢酸とを混合したものを加えた後、固形分1wt%になるようにイソプロパノールで希釈し、シリケートオリゴマーコーティング溶液を作製した。
その際の平均分子量は30000であった。また、Si−OH量は含有Siに対して1.8モル倍であった。
【0052】
▲2▼高屈折率ハードコート層の形成
透明基材フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(A−4350:商品名、東洋紡製)を用意した。一方、屈折率1.9のZrO2 超微粒子(No.1275A:商品名、住友大阪セメント製)と電離放射線硬化型樹脂(X−12−2400−6:商品名、信越化学工業製)を重量比で2:1に混合した。得られた樹脂組成物をPETフィルム上に、膜厚7μm/dryとなるようにグラビアリバースコートにより塗工し、溶媒を乾燥除去した。その後、電子線175kVで5Mrad照射して塗膜を硬化し、高屈折率ハードコート層を形成した。
【0053】
▲3▼低屈折率層の作製
前記▲2▼の工程で得られた高屈折率ハードコート層上に、さらに前記▲1▼の工程で得られたシリケートオリゴマーコーティング溶液を0.1μmとなるように塗工した。得られた塗膜の硬化の条件は120℃で1時間の熱処理を行い、反射防止フィルムを得た。
【0054】
▲4▼反射防止膜の特性評価
前記▲1▼〜▲3▼の工程を経て得られた反射防止フィルムの光学特性は全光線透過率が94.0%、ヘイズ値0.5、可視光線の波長領域での最低反射率は、1.5であり、反射防止性能は優れていた。またそのテープ剥離試験による密着性は100(100)%であり、基材への密着性も良好であった。
【0055】
〔実施例2〕
前記実施例1の(A)成分と(B)成分の混合比を固形分重量比で90:10にした以外は、前記実施例1と同一の工程にて、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムの光学特性は全光線透過率が94.0%、ヘイズ値0.5、可視光線の波長領域での最低反射率は、1.2であり、反射防止性能は優れていた。またそのテープ剥離試験による密着性は100(100)%であり、基材への密着性も良好であった。
【0056】
〔実施例3〕
前記実施例1における(B)成分をメチルトリエトキシシランに変えて用いた以外は、前記実施例1と同一の工程にて、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムの光学特性は全光線透過率が94.0%、ヘイズ値0.5、可視光線の波長領域での最低反射率は、1.4であり、反射防止性能は優れていた。またそのテープ剥離試験による密着性は100(100)%であり、基材への密着性も良好であった。
【0057】
〔実施例4〕
前記実施例2における(B)成分をメチルトリエトキシシランに変えて用いた以外は、前記実施例2と同一の工程にて、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムの光学特性は全光線透過率が94.0%、ヘイズ値0.5、可視光線の波長領域での最低反射率は、1.2であり、反射防止性能は優れていた。またそのテープ剥離試験による密着性は100(100)%であり、基材への密着性も良好であった。
【0058】
〔実施例5〕
熱線反射膜の作製:
透明基材フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(A−4350:商品名、東洋紡製)を用いた。一方、屈折率1.9のZrO2 超微粒子(No.1275A:商品名、住友大阪セメント製)と電離放射線硬化型樹脂(X−12−2400−6:商品名、信越化学工業製)を重量比で2:1に混合した。得られた樹脂組成物をPETフィルム上に、膜厚約0.1μmとなるように塗工し、溶媒を乾燥除去した。その後、電子線175kVで5Mrad照射して塗膜を硬化し、第1層の高屈折率層を形成した。その上に前記実施例1で用いたものと同じシリケートオリゴマーコーティング溶液を0.15μmとなるように塗工した。得られた塗膜に対して120℃で1時間の熱処理を行い第2層の低屈折率層を形成した。さらにその上に第1層の高屈折率層と同様に、第3層の高屈折率層を設けることにより、熱線反射膜を得た。
【0059】
得られた熱線反射膜の光学特性は可視光線透過率が80.0%、太陽光線透過率44.5%で、熱線反射性能は優れていた。またそのテープ剥離試験による密着性は100(100)%であり、基材への密着性も良好であった。
【0060】
〔実施例6〕
紫外線遮断膜の作製:
透明基材フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(A−4350:商品名、東洋紡製)を用いた。一方、屈折率2.1の酸化チタン膜をスパッタ法で形成し、第1層の高屈折率層とした。その上に、前記実施例1で用いたものと同じシリケートオリゴマーコーティング溶液を0.15μmとなるように塗工した。得られた塗膜に対して120℃で1時間の熱処理を行い低屈折率層を生成した。さらにその上に第1層の高屈折率層と同様に、第3層の高屈折率層を設け、紫外線遮断膜を得た。
得られた紫外線遮断膜の光学特性は紫外線透過率が9.3%と、紫外線遮断性能は優れていた。またそのテープ剥離試験による密着性は100(100)%であり、基材への密着性も良好であった。
【0061】
〔比較例1〕
前記実施例1の▲1▼と同様の材料を用い、MS51の添加を行わなかった以外は、同一の反応条件にてコーティング溶液を得た。このゾル溶液を前記実施例1の▲2▼で作製した高屈折率ハードコート層上に0.1μmの厚みになるように塗工し、120℃で1時間の熱処理を行い、反射防止フィルムを得た。
この反射防止フィルムの光学特性は全光線透過率94.0%、ヘイズ値0.5、可視光線の波長領域での最低反射率は、1.2であり、前記実施例1と同等の反射防止性能を示したが、そのテープ剥離試験による密着性では塗膜の一部剥離が認められた。
【0062】
〔比較例2〕
前記実施例1の▲1▼と同様の材料を用い、MS51の添加を行わなかった以外は、同一の反応条件にてコーティング溶液を得た。このゾル溶液を前記実施例5と同様の工程で熱線反射膜を得た。
得られた熱線反射膜の光学特性は可視光線透過率が79.0%、太陽光線透過率50.9%で、前記実施例5と同等の熱線反射性能を示したが、そのテープ剥離試験による密着性では塗膜の一部剥離が認められた。
【0063】
〔比較例3〕
前記実施例1の▲1▼と同様の材料を用い、MS51の添加を行わなかった以外は、同一の反応条件にてコーティング溶液を得た。このゾル溶液を前記実施例6と同様の工程で紫外線遮断膜を得た。
得られた紫外線遮断膜の光学特性は紫外線透過率が11.3%と、前記実施例6と同等の紫外線遮断性能を示したが、そのテープ剥離試験による密着性では塗膜の一部剥離が認められた。
【0064】
【発明の効果】
以上、本発明のコーティング溶液、光学機能性膜及び反射防止膜フィルムによれば、塗布法を採用する方法においても、本発明のコーティング溶液を用いて形成した光学機能性膜及び反射防止フィルムは、基材にダメージを与えずに、所望の高品質な機能性膜を効率よく生産することができ、且つ基材への密着性が良好である。

Claims (5)

  1. 下記式で示されるアルキルシリケートを(A)成分とし、下記式で示される珪素アルコキシドを(B)成分とし、(B)成分中のRc 中のC原子の量が、(A)成分と(B)成分との混合物の総和のSi原子1モル当たり、0.04〜0.4モルの範囲であり、(A)成分中の−ORa 、−ORb 及び(B)成分中の−ORd は加水分解性であり、(B)成分中のRc は加水分解性ではなく、該(A)成分と(B)成分との混合物を水の存在下で加水分解、縮重合して得られるシリケートオリゴマーを主体としてなり、
    該シリケートオリゴマーは、Si−OHの量が、Si原子1モル当たり、1.2〜2.2モルの範囲にあり、且つ平均分子量が300〜100,000であり、
    さらに、コーティング溶液中に存在するシリケートオリゴマー100重量部に対して有機酸金属塩として0.1〜10重量部となるように添加して得られるコーティング溶液を、
    プラスチック基材フィルム上に塗布し、乾燥することにより形成された屈折率1.38〜1.46の塗膜を有する反射防止膜フィルム:
    (A)成分: Ra O〔−{Si(ORb 2 }−O−〕n −Ra
    (Ra 、及びRb は炭素数1〜10のアルキル基で同一であっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である)で表されるアルキルシリケート;
    (B)成分: Rc Si(ORd 3
    (Rc は炭素数1〜10のアルキル基、又はフェニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、メルカプト基、イソシアネート基、スルホニル基、カルボキシル基、Rd は炭素数1〜10のアルキル基を表す)で表される珪素アルコキシド。
  2. 請求項1記載の反射防止フィルムにおいて、プラスチック基材フィルムと屈折率1.38〜1.46の塗膜の間にハードコート層が形成されていることを特徴とする反射防止膜フィルム。
  3. 前記加水分解、重縮合は、水と有機溶媒の存在下で行われる請求項1又は2記載の反射防止膜フィルム。
  4. 前記(A)成分のRa 、及びRb がメチル基及び/又はエチル基であり、且つ前記(B)成分のRc がメチル基である請求項1、2又は3記載の反射防止膜フィルム。
  5. 前記コーティング溶液の固形分が、0.05〜30重量%である請求項1記載の反射防止膜フィルム。
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