JPH08319923A - スタータ及びその歯面衝撃緩和方法 - Google Patents

スタータ及びその歯面衝撃緩和方法

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JPH08319923A
JPH08319923A JP12870495A JP12870495A JPH08319923A JP H08319923 A JPH08319923 A JP H08319923A JP 12870495 A JP12870495 A JP 12870495A JP 12870495 A JP12870495 A JP 12870495A JP H08319923 A JPH08319923 A JP H08319923A
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pinion gear
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ring gear
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長尾  安裕
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Abstract

(57)【要約】 【目的】始動騒音及び衝撃の低減並びに小型軽量化を実
現するスタータの提供。 【構成及び効果】エンジンのクランキング回転数の脈動
変化時の減速局面において、電機子側出力軸の換算回転
数がリングギア100の回転数以上となる回転数交差時
点A以前に、ピニオンギア210の駆動側の歯面をリン
グギア100の被駆動側の歯面に当接させる。このよう
にすれば、上記回転数交差時点A経過後、ピニオンギア
210が電機子出力軸510により駆動されてリングギ
ア100を駆動し始める時点でのバックラッシュが解消
されているので歯面衝撃を大幅に低減することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リングギアとピニオン
ギアとの噛合を通じてエンジンに結合されるスタータに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来のスタ−タは、スタータモータのア
ーマチャの回転軸である電機子出力軸が一方向性クラッ
チ(オーバーランニングクラッチ)を介してピニオンギ
アに結合され、このピニオンギアはリングギアと噛合し
てエンジンのクランク軸に結合されている。
【0003】近年は、始動トルクの増大及びスタ−タモ
ータの小型軽量化などのためにピニオンギアと電機子出
力軸との間に減速機構を介設する減速型スタータが主流
となている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したリングギアと
ピニオンギアとの噛合を通じて始動トルクを伝達する従
来のスタータでは、両ギヤの歯面間の隙間があるために
通常のギヤ機構と同じくバックラッシュによる歯面衝撃
が不可避的に発生する。スタ−タ内部に減速装置を有す
る従来の減速型スタータでは、この減速分だけピニオン
ギア側回転系の慣性が増大し、このため上記歯面衝撃が
一層増大するという問題があった。
【0005】特に、エンジンのクランキング時において
はエンジンの爆発行程期間と圧縮行程期間とでエンジン
の発生トルクが正負に反転し、いわゆるトルク脈動が生
じてリングギアの歯面をピニオンギアの歯面が繰り返し
叩く現象が生じ、騒音低減の障害となっていた。また、
この時に生じる大きな歯面衝撃を考慮してスタータの駆
動系を設計せねばならず、スタータの小型軽量化の障害
となっていた。
【0006】本発明は上記問題点に鑑みなされたもので
あり、簡素な対策により始動時の歯面衝撃及びそれによ
り生じる騒音の低減が可能な小型軽量のスタ−タ及びそ
の歯面衝撃緩和方法を提供することを、その、目的とし
ている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の構成は、
エンジンのリングギアにバックラッシュを有して噛合す
るピニオンギアと、前記ピニオンギアと電機子出力軸と
の間に介設されて前記電機子出力軸から前記ピニオンギ
アにトルクを伝達する一方向性クラッチとを有するスタ
−タにおいて、前記電機子出力軸と前記リングギヤとの
回転数比を掛けて前記両者の回転数が定回転状態で等値
となるように換算した前記電機子出力軸の換算回転数が
前記エンジンのクランキング回転数の脈動変化時の減速
局面にて前記リングギアの回転数以上となる回転数交差
時点以前に、前記ピニオンギアの駆動側の歯面を前記リ
ングギアの被駆動側の歯面に当接させる歯面衝撃緩和手
段を有することを特徴とするスタ−タである。
【0008】本発明の第2の構成は、上記第1の構成に
おいて更に、前記一方向性クラッチが前記歯面衝撃緩和
手段を兼ねており、前記一方向性クラッチの空転トルク
は、前記エンジンのクランキング回転数の脈動変化時の
減速局面にて前記両歯面が前記回転数交差時点以前に当
接可能な値に設定されていることを特徴としている。本
発明の第3の構成は、上記第2の構成において更に、前
記一方向性クラッチが、内外周面が互いに対面するとと
もに一方がピニオンギアに他方が電機子出力軸に結合さ
れるクラッチアウタ及びクラッチインナと、前記内外周
面の一方に周方向一端側で浅く周方向他端側で深く凹設
されるローラ収容溝に周方向へ所定空走距離内で変位可
能に収容されるクラッチローラと、前記ローラ収容溝に
連通して前記内外周面の一方に凹設されるスプリング収
容溝に収容されて前記ローラを前記周方向一端側へ付勢
するクラッチスプリングとを備え、前記クラッチスプリ
ングの前記ローラ付勢力は、エンジンのクランキング回
転数の脈動変化時の減速局面における前記クラッチの空
転により前記両歯面が前記回転数交差時点以前に当接可
能な値に設定されていることを特徴としている。
【0009】本発明の第4の構成は、上記第1乃至第3
のいずれかの構成において更に、前記ピニオンギアと前
記電機子出力軸との間に介設された減速機構を有するこ
とを特徴としている。本発明の第5の構成は、上記第1
乃至第3のいずれかの構成において更に、前記一方向性
クラッチが、遊星減速式の前記減速機構のインターナル
ギアと固定部材との間に介設されることを特徴としてい
る。
【0010】本発明の第6の構成は、エンジンのリング
ギアにバックラッシュを有して噛合するピニオンギア
と、前記ピニオンギアと電機子出力軸との間に介設され
て前記電機子出力軸から前記ピニオンギアにトルクを伝
達する一方向性クラッチとを有するスタ−タの歯面衝撃
緩和方法であって、前記電機子出力軸と前記リングギヤ
との回転数比を掛けて前記両者の回転数が定回転状態で
等値となるように換算した前記電機子出力軸の換算回転
数が、前記エンジンのクランキング回転数の脈動変化時
の減速局面にて前記リングギアの回転数以上となる以前
に、前記ピニオンギアの駆動側の歯面を前記リングギア
の被駆動側の歯面に当接させることを特徴とするスタ−
タの歯面衝撃緩和方法である。
【0011】本発明の第7の構成は、上記第6の構成に
おいて更に、前記歯面衝撃緩和手段を兼ねる前記一方向
性クラッチの空転トルクを、前記エンジンのクランキン
グ回転数の脈動変化時の減速局面にて前記両歯面が前記
回転数交差時点以前に当接可能な値に設定することを特
徴としている。本発明の第8の構成は、上記第7の構成
において更に、前記一方向性クラッチが、内外周面が互
いに対面するとともに一方がピニオンギアに他方が電機
子出力軸に結合されるクラッチアウタ及びクラッチイン
ナと、前記内外周面の一方に周方向一端側で浅く周方向
他端側で深く凹設されるローラ収容溝に周方向へ所定空
走距離内で変位可能に収容されるクラッチローラと、前
記ローラ収容溝に連通して前記内外周面の一方に凹設さ
れるスプリング収容溝に収容されて前記ローラを前記周
方向一端側へ付勢するクラッチスプリングとを備え、前
記クラッチスプリングの前記ローラ付勢力を、エンジン
のクランキング回転数の脈動変化時の減速局面における
前記クラッチの空転により前記両歯面が前記回転数交差
時点以前に当接可能な値に設定することを特徴としてい
る。
【0012】
【作用及び発明の効果】本発明の第1、第6の構成で
は、エンジンのクランキング回転数の脈動変化時の減速
局面において、電機子出力軸の換算回転数がリングギア
の回転数以上となる回転数交差時点以前に、ピニオンギ
アの駆動側の歯面をリングギアの被駆動側の歯面に当接
させる。なお、上記換算回転数とは、電機子出力軸とリ
ングギヤとの間の減速比を電機子出力軸の回転数に掛け
て、電機子出力軸の回転数をリングギアの回転数に等し
く見做した回転数を意味する。
【0013】このようにすれば、上記回転数交差時点経
過後、ピニオンギアが電機子出力軸により駆動されてリ
ングギアを駆動し始める時点でのバックラッシュが解消
されているので歯面衝撃を大幅に低減することができ、
その結果、始動騒音低減及びスタータ強度の格段の低減
を実現することができる。本発明の第2、3、7、8の
構成では、上記第1の構成において更に、一方向性クラ
ッチの空転トルクの低減により両歯面を上記回転数交差
時点以前に当接させる。このようにすれば、非常に簡単
な構成により、第1の構成を実現することができる。好
適には、一方向性クラッチの空転トルクの低減又はピニ
オンギア回転質量系の質量増大によりそれを実現する。
特に空転トルクの低減でそれを実現する場合には、ピニ
オンギアの回転質量系の質量増大を図る必要がなく、そ
れによる歯面衝接時の衝撃の増大も回避することができ
る。
【0014】更に説明すれば、ピニオンギアと一体に回
転する回転質量系であるピニオンギア回転質量系は、バ
ックラッシュを通じてリングギアに対して相対微小回転
可能となっており、一方向性クラッチを通じて電機子出
力軸に対して所定の相対回転範囲において相対回転可能
となっている。リングギアのクランキング脈動時の減速
局面では、いままでリングギアにより駆動されていたピ
ニオンギアはリングギアより過渡的に相対的に高速とな
り、その結果、ピニオンギアの被駆動側の歯面はリング
ギアの駆動側の歯面より離れ、それに続く更なるリング
ギアの減速によりピニオンギアの駆動側の歯面がリング
ギアの被駆動側の歯面に当接する。すなわち、両ギアの
当接状態は、ピニオンギア駆動当接状態からリングギア
駆動当接状態に変化する。ピニオンギア駆動当接状態
は、リングギアの回転数がピニオンギアの換算回転数よ
り小さくなった時点から開始される。リングギア駆動当
接状態が生じる時点は、摩擦を無視すれば原理的には次
のように決定される。
【0015】まず、以下の説明で角速度、角加速度はリ
ングギヤに換算した値とする。時点tpはリングギアが
加速から減速に向かう時点すなわちその振動周期におい
て角速度がピークとなる時点とし、この時のリングギア
の角速度ωrをωroとし、ピニオンギアの角速度ωp
をωpoとし、この時のアーマチャの角速度ωaをωa
oとする。ωaoはωpoに等しい。時点tpから時間
Δt後の時点t1におけるリングギアの角速度ωrをω
r1とし、この時のピニオンギアの角速度ωpをωp1
とする。次に、その後、リングギアの角速度ωrとピニ
オンギアの角速度ωpとが一致した時点tc(=tp+
Δtpc)におけるリングギアの角速度ωrをωr2と
し、ピニオンギアの角速度ωpをωp2とし、この時の
アーマチャの角速度ωaをωa2とする。当然、ωr2
=ωp2=ωa2である。
【0016】ここで、アーマチャの角加速度をα、リン
グギアの角加速度をβ、ピニオンギアの角加速度をγと
する。計算範囲において、これらの角加速度は一定と近
似する。角度で表したバックラッシュ量をθb、Tkを
空走トルク、Iを慣性質量とする。当然、各加速度は加
速方向を+として取り扱う。時点tpから時点tcの間
の期間Δtpcにおいて、すなわち、リングギアの角速
度ωrがピーク値から減速し、逆にピニオンギアの角速
度ωpが増大して、両者が一致するまでの期間Δtpc
において、以下の数式が成立する。
【0017】
【数1】ωro−ωao=△tpc(α−β) 数式1を移項して、
【0018】
【数2】△tpc=(ωro−ωao)/(α−β) 次に、時点tpから時点t1の間の期間Δt(Δt<Δ
tpc)において、以下の数式が成立する。
【0019】
【数3】θb=0.5(γ−β)△t2 数式2を移項して、
【0020】
【数4】 △t=(2θb/(γ−β))1/2 ,(γ−β>0) なお、γは空走トルクTkと慣性質量Iとの間で以下の
数式で規定される。
【0021】
【数5】γ=−Tk/I 上式から、以下の数式が成立する。
【0022】
【数6】 △tpc−△t =(ωro−ωao)/(α−β)ー((2θb)/(γ−β))1/2 =(ωro−ωao)/(α−β) ー(2θb/(−Tk/I−β))1/2 >0 数式6から、以下の数式を導出できる。
【0023】
【数7】((ωro−ωao)/(α−β))2>2θ
b/(−Tk/I−β)=−2θbI/(Tk+βI) したがって、次の数式が成り立つ。
【0024】
【数8】 −(Tk+βI)>((α−β)/(ωro−ωao))2 ・2θbI したがって、次の数式が成り立つ。
【0025】
【数9】 Tk<−βI−((α−β)/(ωro−ωao))2 ・2θbI 上記数式の物理的な意味を以下に説明する。
【0026】上記期間において一方向性クラッチは空転
しており、この時、ピニオンギア回転質量系から電機子
出力軸側へ空転トルクが供給され、電機子出力軸側の回
転質量系はこれにより加速され、またこの時スタ−タモ
ータが電動動作していればその電動トルクによっても加
速される。逆に、上記両状態間の間において、ピニオン
ギア回転質量系は上記空転トルクによる電機子出力軸の
加速により消耗して減速される。
【0027】ピニオンギアの減速及び電機子出力軸の増
速によりピニオンギアの換算角速度ωpが電機子出力軸
の換算角速度ωaに一致する時点をtcとすれば、上記
時点tpから時点tcまでの時間(すなわち、ピニオン
ギアがリングギアよるトルクを受け取らなくなってから
ピニオンギアが電機子出力軸と実質的に結合されるまで
の時間)Δtpcを、上記Δtより長く設定すれば、歯
面衝撃を解消できることがわかる。
【0028】空転トルクTkが大きければ、リングギア
が減速するにも関わらずピニオンギアの運動エネルギ消
耗も大きくなってピニオンギアの減速率も増大する。そ
の結果、ピニオンギアよりリングギアの換算角速度が相
対的に大きくなって、ピニオンギアが上記両歯面間で変
位してバックラッシュを解消する時点が遅れてしまう。
一方、ピニオンギア回転質量系の慣性質量Iが増大する
と、空転トルクによる運動エネルギの消耗によるピニオ
ンギアの減速率が小さくなり、この結果、ピニオンギア
がリングギアより相対的に高速化して上記バックラッシ
ュの解消を速やかに行うことができる。
【0029】すなわち、空転トルクTkを(−βI−
((α−β)/(ωro−ωao)) 2 ・2θbI)よ
り小さく設定することにより、歯面衝撃を大幅に低減で
きることがわかる。本発明の第4の構成では、上記第2
の構成において更に、ピニオンギアと電機子出力軸との
間に減速機構が介設されるいわゆる減速型スタータに上
記第2実施例が適用される。減速型スタータは特に電機
子出力軸側の慣性質量が増大しているために歯面衝接時
の衝撃が大きく、第2の構成の効果が一層顕著となる。
【0030】本発明の第5の構成では、上記第4の構成
において更に、一方向性クラッチを遊星減速式の前記減
速機構のインターナルギアと固定部材との間に介設す
る。このようにすれば、ピニオンギア回転質量系の慣性
質量が増大するので、上記空転トルク伝達時のピニオン
ギアの回転数低下を抑止してバックラッシュ隙間の解消
を速やかに行うことができる。また、空転トルクの範囲
も拡大することができ、製造が容易となる。
【0031】
【実施例】次に、本実施例のスタ−タを、図1を参照し
て説明する。このスタ−タは、エンジンに配設されたリ
ングギア100に噛み合うピニオン200や遊星歯車機
構300を内包するハウジング400と、モータ500
と、マグネットスイッチ600を内包するエンドフレー
ム700とに大別される。また、スタ−タの内部では、
ハウジング400とモータ500との間がモータ隔壁8
00によって区画されている。 〔ピニオン200の説明〕図1に示すように、ピニオン
200には、エンジンのリングギア100に噛合するピ
ニオンギア210が形成されている。
【0032】ピニオンギア210の内周面には、出力軸
220に形成されたヘリカルスプライン221に嵌まり
合うピニオンヘリカルスプライン211が形成されてい
る。一方、ピニオンギア210は、圧縮コイルバネより
なるリターンスプリング240により常に出力軸220
の後方へ付勢されている。リターンスプリング240
は、直接ピニオンギア210を付勢するのではなく、リ
ング体420を介してピニオンギア210を付勢する。 〔遊星歯車機構300の説明〕遊星歯車機構300は、
図1に示すように、モータ500の回転数を減速して、
モータ500の出力トルクを増大する減速手段である。
遊星歯車機構300は、モータ500のアーマチャシャ
フト510の前側外周に形成されたサンギヤ310と、
このサンギヤ310に噛合し、このサンギヤ310の周
囲で回転する複数のプラネタリーギヤ320と、このプ
ラネタリーギヤ320をサンギヤ310の周囲で回転自
在に支持する出力軸220と一体形成されたプラネット
キャリア330と、プラネタリーギヤ320の外周にお
いてプラネタリーギヤ320と噛合する筒状で、かつ樹
脂からなるインターナルギヤ340とからなる。 〔オーバーランニングクラッチ350の説明〕オーバー
ランニングクラッチ350は、インターナルギヤ340
を、一方向のみ(エンジンの回転を受けて回転する方向
のみ)回転可能に支持されている。オーバーランニング
クラッチ350は、インターナルギヤ340の前側に一
体形成された第1の円筒部をなすクラッチアウタ351
と、遊星歯車機構300の前方を覆う固定側をなすセン
ターブラケット360の後面に形成され、クラッチアウ
タ351の内周と対面して配置された第2の円筒部をな
す環状のクラッチインナ352と、クラッチアウタ35
1の内周面に傾斜して形成されたローラ収納部に収納さ
れるローラ353とを有している。
【0033】このように構成すれば、遊星歯車機構30
0のインターナルギヤ340に設けられた第1の円筒部
をクラッチアウタ351となし、固定側をなす第2の円
筒部をクラッチインナ352とするとともに、クラッチ
アウタ351の内周にローラ353のローラ収納部を形
成しているので、スタ−タがエンジンによりオーバーラ
ンされた時に、モータ500とピニオンギア210との
回転差を吸収するようにクラッチアウタ351であるイ
ンターナルギヤ340がクラッチインナ352に対し空
転すると、ローラ353はその遠心力を受けてクラッチ
インナ352外周面から離脱し、ローラ353やクラッ
チインナ352の外周面の異常摩耗が防止できる。
【0034】オーバーランニングクラッチ350は、出
力軸220を軸受370を介して回転自在に支持するセ
ンターブラケット360を利用しているので、軸方向長
も長くすることなしに小型化を図ることができる。 〔センターブラケット360の説明〕センターブラケッ
ト360は、図4および図5に示すもので、ハウジング
400の後側の内部に配置されている。ハウジング40
0とセンターブラケット360とは、ハウジング400
に係止されている。 〔プラネットキャリア330の説明〕プラネットキャリ
ア330は、後端に、プラネタリーギヤ320を支持す
るために径方向に伸びるフランジ形突出部331を備え
る。このフランジ形突出部331には、後方に伸びるピ
ン332が固定されており、このピン332がメタル軸
受333を介してプラネタリーギヤ320を回転自在に
支持している。
【0035】また、プラネットキャリア330は、前側
端部がハウジング400の前端内部に固定されたハウジ
ング軸受(図示せず)と、センターブラケット360の
内周の内側筒部365内に固定されたセンターブラケッ
ト軸受370とによって、回転自在に支持されている。
このプラネットキャリア330は、内側筒部365の前
端位置に環状溝334を備え、この環状溝334には、
止め輪が嵌め合わされている。この止め輪と内側筒部3
65の前端との間には、プラネットキャリア330に対
して回転自在に装着されたワッシャ336が設けられて
おり、止め輪がワッシャ336を介して内側筒部365
の前端に当接することにより、プラネットキャリア33
0が後方に移動することが規制される。また、プラネッ
トキャリア330の後側を支持するセンターブラケット
軸受370の後端は、内側筒部365の後端と、フラン
ジ形突出部331との間に挟まれるフランジ部371を
備え、フランジ形突出部331がフランジ部371を介
して内側筒部365の後端に当接することにより、プラ
ネットキャリア330が前方に移動することが規制され
る。
【0036】なお、プラネットキャリア330の後面に
は、軸方向に伸びる凹部337を備え、この凹部337
内に配置されるプラネットキャリア軸受380を介して
アーマチャシャフト510の前端を回転自在に支持して
いる。 〔ハウジング400の説明〕ハウジング400は、ハウ
ジング400の前端内部に固定された図示しないハウジ
ング軸受で出力軸220を軸支するとともに、図示しな
い開口部からの雨水等の進入を極力低減するために、開
口部にシャッタ420が配設される。 〔モータ500の説明〕モータ500は、ヨーク50
1、モータ隔壁800、不図示のブラシ保持部材に囲ま
れて配置されている。なお、モータ隔壁800は、セン
ターブラケット360との間で遊星歯車機構300を収
納するもので、遊星歯車機構300内の潤滑油がモータ
500に進入するのを防ぐ役目も果たす。
【0037】モータ500は、図1に示すように、アー
マチャシャフト510、このアーマチャシャフト510
に固定されて一体に回転する不図示の電機子鉄心および
電機子コイルから構成されるアーマチャ(図示せず)
と、このアーマチャを回転させる固定磁極(図示せず)
とから構成され、固定磁極はヨーク(図示せず)の内周
に固定されている。 〔アーマチャシャフト510の説明〕アーマチャシャフ
ト510は、プラネットキャリア330の後内部のプラ
ネットキャリア軸受380、およびエンドフレーム70
0内にある図示しない軸受によって回転自在に支持され
る。このアーマチャシャフト510の前端は、遊星歯車
機構300の内側に挿通されるとともに、上述のよう
に、アーマチャシャフト510の前端外周には遊星歯車
機構300のサンギヤ310が形成されている。 (作動説明)乗員によってキースイッチがスタ−タ位置
に設定されると、バッテリからマグネットスイッチ60
0の吸引コイルに通電されて、スイッチ600の接点が
ONし、端子620を介してモータ500へ通電される
と同時に、図示しないピニオン移行装置によりピニオン
200が、リングギア100に噛合い、モータ500で
発生する回転力がアーマチャシャフト510から減速機
構300を通じて増大されてプラネットキャリア330
に伝達され、更にスプライン221、211を通じてピ
ニオン200へ更にリングギア100へ伝達され、エン
ジンを駆動する。後述するクランキング状態を経てエン
ジンが着火して始動することによって、エンジンのリン
グギア100がリングギア210の回転よりも速く回転
されると、リングギア100の回転によってリングギア
210が回転駆動される。すると、リングギア100か
らピニオンギア210に伝えられた回転トルクは、プラ
ネットキャリア330を介してプラネタリーギヤ320
を支持するピン332に伝えられる。つまり、プラネッ
トキャリア330によってプラネタリーギヤ320が駆
動される。すると、インターナルギヤ340には、エン
ジン始動時とは逆回転のトルクがかかるため、オーバー
ランニングクラッチ350がリングギア100の回転を
許す。つまり、インターナルギヤ340にエンジン始動
時とは逆回転のトルクがかかると、オーバーランニング
クラッチ350のローラ353がクラッチインナ352
より離脱し、インターナルギヤ340の回転が可能にな
る。
【0038】つまり、エンジンが始動して、エンジンの
リングギア100がピニオンギア210を回転駆動する
相対回転は、オーバーランニングクラッチ350で吸収
され、エンジンによってアーマチャが回転駆動されるこ
とがない。エンジンが始動すると、乗員によってキース
イッチ10がスタ−ト位置から外され、マグネットスイ
ッチ600の吸引コイル650への通電が停止される。
【0039】これによりスイッチの接点がOFFすると
同時に図示しないピニオン移行装置も通電前の状態へ戻
り、ピニオン200はリターンスプリング240により
リングギアより離脱し、静止状態へ戻る。図4にエンジ
ン着火前のクランキング状態でのリングギア100の回
転数及びモータ軸(電機子出力軸)510の換算回転数
の時間変化を示し、図5に従来のスタ−タにおけるエン
ジン着火後のクランキング状態でのリングギア100の
回転数及びモータ軸(電機子出力軸)510の換算回転
数の時間変化を示し、図6に本実施例のスタ−タにおけ
るエンジン着火後のクランキング状態でのリングギア1
00の回転数及びモータ軸(電機子出力軸)510の換
算回転数の時間変化を示す。なお、上記従来のスタータ
に比べて本実施例のスタータは一方向性クラッチ350
の空転トルクが所定値以下に低減されている。
【0040】まず、従来のクラッチを用いた場合を図
4、5にて説明する。図4のようにクランキング行程に
おいて上死点を過ぎると、エンジン(以後、エンジンは
リングギア100と一体回転するためリングギア100
の運動をエンジンの運動として説明する)は、膨張行程
となるため急激に速度(回転数)が上昇する。しかし、
スタ−タモータ500は、エンジンからの力がクラッチ
350で遮断されるため、モータ500自身のトルクと
クラッチ350の空転トルクとの合成トルクにて加速さ
れるのみである。従って、図4の破線のようにリングギ
ア100と比較してゆっくり増速する。この時、ピニオ
ンギア210は、図7のようにB面にてリングギア10
0より力を受けてリングギア100と同一速度となって
いる。リングギア100が更に回転し、中間点を過ぎる
と、図4の実線のようにリングギア100は圧縮力によ
り減速される。この状態では、破線で示すようにスタ−
タモータ500は更に加速を続けている。一方、ピニオ
ンギア210は、クラッチ350の空転トルクにより減
速されながら図5のようにリングギア100と噛合った
まま一体で回転している。この時、従来のクラッチでは
空転トルクがピニオン200等の慣性に対して大きくさ
れていてリングギア100より速く減速されるため、依
然として図7のようにリングギア100より力を受ける
状態となっている。更に、リングギア100が回転する
と圧縮力が大きくなり急速に減速され、ついには増速中
のスタ−タモータ500の回転とA点にて同一となる。
この直前の時点ではまだ図7のように、リングギア10
0からピニオンギア210、クラッチ350を介してモ
ータ500へ力が伝達される状態であり、モータ軸(電
機子出力軸)510とリングギア100の間には図7、
図9のようにギア間の駆動側のバックラッシュCn、C
n1、Cn2やクラッチの遊び等があり、すぐには、モ
ータ500からの動力をリングギア100に伝達できな
い。従ってギア間のバックラッシュやクラッチの遊びが
「0」となり駆動が可能となるまでに空走状態が生じ、
図4に示すようにリングギア100は更に減速され、モ
ータ500は更に加速された状態となり、大きな相対回
転差(N1)が生じた後、B点にて初めて動力を伝達す
る事になる。当然、ギア間では衝突が生じ、大きな衝撃
や、騒音が発生する。また、この衝突によりスタ−タモ
ータ500は図4に示すように急激に減速されるととも
にリングギア100は加速されるため、リングギア10
0の回転がスタ−タモータ500の回転より再度大きく
なる現象が生じる。従って上死点をすぎるまで衝突を繰
り返す事となる。
【0041】一方、本実施例のスタ−タでは図6に示す
ように、膨張行程から圧縮行程へ入いる場合において、
ピニオンギア210を減速させるクラッチ350の空転
トルクが小さくされているので、ピニオンギア210の
減速がリングギア100の減速より遅くなり(図6の破
線参照)、駆動側のバックラッシュは図6のC点におい
て図8のように「0」の状態となる。従って、A点にお
いて、ピニオンギア210とリングギア100と間のバ
ックラッシュのための空走は生じない。
【0042】次に、この時の遊星減速機構300におけ
る状態を説明する。まず、圧縮行程に入ってリングギア
100が減速され始めると、ピニオンギアを含む減速部
は、慣性にて回転をつづけようとしている。この時、イ
ンターナルギヤ340はクラッチの空転トルクにより減
速される。しかし、図9に示すようにインターナルギヤ
340とプラネタリギヤ320は噛合っているため、プ
ラネタリギヤ320、シャフト331、ピニオンギア2
00も同時に減速される。ところで、アーマチャギア3
10はモータ500の増速により加速されているため、
図9に示したプラネタリギヤ320とアーマチャギア3
10との間のバックラッシュCn2はすぐに「0」とな
り、アーマチャギア310からプラネタリギヤ320に
動力を伝える状態となる。
【0043】このアーマチャギア310からの動力によ
り加速されたプラネタリギヤ320は図9に示すインタ
ーナルギヤ340とのバックラッシュCn1を「0」と
するように回転し、図10及び図11の駆動状態と同
じ、ギアの噛合状態となる。従って、内部減速装置30
0内のバックラッシュも「0」となり、図6のA点にお
いてギア間のバックラッシュによる空走がなくなる。
【0044】なお、空転トルクTkを(−βI−((α
−β)/(ωro−ωao))2 ・2θbI)より小さ
く設定することにより、歯面衝撃を大幅に低減できるこ
とがわかる。 (実施例2)他の実施例を図2を参照して説明する。こ
の実施例では実施例1に比べて一方向性クラッチ350
が変更されている。
【0045】本実施例では、ピニオンギア210aのみ
がリングギア100aと噛合ってほぼ同一回転で回転
し、クラッチアウタ351a、出力軸211a、プラネ
タリギヤ320aはスタ−タモータ500aの回転数に
同期して回転し、インタナルギヤ340aは停止してい
る。今、圧縮行程に入るとリングギア100aはエンジ
ンの圧縮力により減速され、ピニオンギア210aはク
ラッチ350aの空転トルクにより減速されて上述した
過程に従って運動する。一方、遊星減速機構300aに
おいては、クラッチ350aの空転トルクによりアウタ
351aを通じて、出力軸331a、プラネタリギヤ3
20aが加速される。しかしながら、モータ500aの
トルクによる加速に比較するとクラッチ350aの空転
トルクが非常に小さく、その加速は非常に遅いため、遊
星減速機構300aは短時間に図11に示すような状態
となる。従って、図1の構造と同じようにギア間のバッ
クラッシュが「0」の状態にて図6のA点を抑える事に
なる。
【0046】次に、A点以降について説明する。エンジ
ンと、スタ−タの回転が同一となった図6のA点により
動力を伝達するまでには、クラッチ350a内の伝動子
(ローラ)353aがオーバーラン状態より駆動状態へ
わずかに回転方向に変位する。従って、図6に示すよう
にわずかな空走状態が生じる。しかしながら、従来のク
ラッチに比較して非常に空走時間が短く、相対回転数も
小さいため、衝撃や、騒音を小さく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスタ−タの一実施例を示す一部破断軸
方向側面図である。
【図2】本発明のスタ−タの他実施例を示す一部破断軸
方向側面図である。
【図3】図2の一方向性クラッチ350の径方向半断面
図を示すD−D線矢視断面図である。
【図4】従来におけるエンジン未着火時のエンジンクラ
ンキング脈動状態におけるリングギア、ピニオンギア、
電機子出力軸の回転数の変化を示す図である。
【図5】従来におけるエンジン着火後のエンジンクラン
キング脈動状態におけるリングギア、ピニオンギア、電
機子出力軸の回転数の変化を示す図である。
【図6】実施例1、2におけるエンジン着火後のエンジ
ンクランキング脈動時のリングギア、ピニオンギア、電
機子出力軸の回転数の変化を示す図である。
【図7】リングギア100及びピニオンギア210のオ
ーバーラン時の状態を示す図である。
【図8】リングギア100及びピニオンギア210の駆
動時の状態を示す図である。
【図9】遊星減速機構の各ギヤのオーバーラン時の状態
を示す図である。
【図10】リングギア100及びピニオンギア210の
駆動時の状態を示す図である。
【図11】遊星減速機構の各ギヤのオーバーラン時(圧
縮行程時)の状態を示す図である。
【符号の説明】
100はリングギア、210はピニオンギア、510は
電機子出力軸、350は一方向性クラッチ(歯面衝撃緩
和手段)。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジンのリングギアにバックラッシュを
    有して噛合するピニオンギアと、前記ピニオンギアと電
    機子出力軸との間に介設されて前記電機子出力軸から前
    記ピニオンギアにトルクを伝達する一方向性クラッチと
    を有するスタ−タにおいて、 前記電機子出力軸と前記リングギヤとの回転数比を掛け
    て前記両者の回転数が定回転状態で等値となるように換
    算した前記電機子出力軸の換算回転数が前記エンジンの
    クランキング回転数の脈動変化時の減速局面にて前記リ
    ングギアの回転数以上となる回転数交差時点以前に、前
    記ピニオンギアの駆動側の歯面を前記リングギアの被駆
    動側の歯面に当接させる歯面衝撃緩和手段を有すること
    を特徴とするスタ−タ。
  2. 【請求項2】前記一方向性クラッチは前記歯面衝撃緩和
    手段を兼ねており、前記一方向性クラッチの空転トルク
    は、前記エンジンのクランキング回転数の脈動変化時の
    減速局面にて前記両歯面が前記回転数交差時点以前に当
    接可能な値に設定されている請求項1記載のスタ−タ。
  3. 【請求項3】前記一方向性クラッチは、内外周面が互い
    に対面するとともに一方がピニオンギアに他方が電機子
    出力軸に結合されるクラッチアウタ及びクラッチインナ
    と、前記内外周面の一方に周方向一端側で浅く周方向他
    端側で深く凹設されるローラ収容溝に周方向へ所定空走
    距離内で変位可能に収容されるクラッチローラと、前記
    ローラ収容溝に連通して前記内外周面の一方に凹設され
    るスプリング収容溝に収容されて前記ローラを前記周方
    向一端側へ付勢するクラッチスプリングとを備え、前記
    クラッチスプリングの前記ローラ付勢力は、エンジンの
    クランキング回転数の脈動変化時の減速局面における前
    記クラッチの空転により前記両歯面が前記回転数交差時
    点以前に当接可能な値に設定されている請求項2記載の
    スタ−タ。
  4. 【請求項4】前記ピニオンギアと前記電機子出力軸との
    間に介設された減速機構を有する請求項1乃至3のいず
    れか記載のスタータ。
  5. 【請求項5】前記一方向性クラッチは、遊星減速式の前
    記減速機構のインターナルギアと固定部材との間に介設
    される請求項4記載のスタ−タ。
  6. 【請求項6】エンジンのリングギアにバックラッシュを
    有して噛合するピニオンギアと、前記ピニオンギアと電
    機子出力軸との間に介設されて前記電機子出力軸から前
    記ピニオンギアにトルクを伝達する一方向性クラッチと
    を有するスタ−タの歯面衝撃緩和方法であって、 前記電機子出力軸と前記リングギヤとの回転数比を掛け
    て前記両者の回転数が定回転状態で等値となるように換
    算した前記電機子出力軸の換算回転数が、前記エンジン
    のクランキング回転数の脈動変化時の減速局面にて前記
    リングギアの回転数以上となる以前に、前記ピニオンギ
    アの駆動側の歯面を前記リングギアの被駆動側の歯面に
    当接させることを特徴とするスタ−タの歯面衝撃緩和方
    法。
  7. 【請求項7】前記歯面衝撃緩和手段を兼ねる前記一方向
    性クラッチの空転トルクを、前記エンジンのクランキン
    グ回転数の脈動変化時の減速局面にて前記両歯面が前記
    回転数交差時点以前に当接可能な値に設定する請求項6
    記載のスタ−タの歯面衝撃緩和方法。
  8. 【請求項8】前記一方向性クラッチは、内外周面が互い
    に対面するとともに一方がピニオンギアに他方が電機子
    出力軸に結合されるクラッチアウタ及びクラッチインナ
    と、前記内外周面の一方に周方向一端側で浅く周方向他
    端側で深く凹設されるローラ収容溝に周方向へ所定空走
    距離内で変位可能に収容されるクラッチローラと、前記
    ローラ収容溝に連通して前記内外周面の一方に凹設され
    るスプリング収容溝に収容されて前記ローラを前記周方
    向一端側へ付勢するクラッチスプリングとを備え、前記
    クラッチスプリングの前記ローラ付勢力を、エンジンの
    クランキング回転数の脈動変化時の減速局面における前
    記クラッチの空転により前記両歯面が前記回転数交差時
    点以前に当接可能な値に設定する請求項7記載のスタ−
    タの歯面衝撃緩和方法。
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