JPH08295634A - 動脈疾患治療剤 - Google Patents

動脈疾患治療剤

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JPH08295634A
JPH08295634A JP7297700A JP29770095A JPH08295634A JP H08295634 A JPH08295634 A JP H08295634A JP 7297700 A JP7297700 A JP 7297700A JP 29770095 A JP29770095 A JP 29770095A JP H08295634 A JPH08295634 A JP H08295634A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動脈疾患の治療・予防に有用な薬剤を提供す
ることを目的とする。 【解決手段】 本発明の動脈疾患治療剤は、HGF(Hep
atocyte Growth Factor,肝細胞増殖因子)を有効成分と
して含有することからなる。本発明の動脈疾患治療剤の
有効成分であるHGFは、血管内皮細胞の増殖を促進す
る作用を有すると共に、血管平滑筋細胞の増殖を促進せ
ず、更には修復された血管内皮細胞を介して血管平滑筋
細胞の異常な増殖を抑える作用をも有している。従っ
て、本発明の治療剤は、動脈障害、特に血管平滑筋細胞
の増殖を主体とする障害に起因する各種疾患の治療・予
防に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は動脈疾患の治療及び予防
に有用な薬剤に関する。より詳細には、HGF(Hepatoc
yte Growth Factor)を有効成分として含有する動脈疾患
治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】動脈は、組織学的には内膜、中膜及び外
膜の3層から構成されており、内膜は単層の内皮細胞と
内皮下層からなり、中膜は主として平滑筋線維と弾性線
維から構成されている。また、外膜は境界を有すること
なく周囲の結合組織に移行している。動脈疾患は一般に
よくみられる疾患であり、また生命維持に欠くことので
きない脳、心臓、腎臓などの臓器に重大な影響を及ぼす
ので重要であり、最も一般的な疾患は動脈硬化症であ
る。動脈硬化は、動脈壁の肥厚、改築、弾性低下をきた
し動脈壁が硬化する限局性の動脈病変の総称であり、病
理形態学的には粥状硬化、石灰化硬化及び細動脈硬化に
分類され、臨床的には粥状硬化と細動脈硬化が重要であ
る。現在、臨床病理学的に最も注目を集めているのは、
比較的大きな動脈に発生し、動脈の狭窄閉塞をきたす粥
状硬化であり、硬化が進行すると、動脈の狭窄閉塞によ
る脳虚血発作、狭心症、心筋梗塞、間欠性跛行などの重
篤な疾患が出現する。粥状硬化の発生機序については、
必ずしも明確になっていないが、動脈内皮細胞が化学的
因子や機械的因子により傷害を受け、そこを介して単球
が内膜に侵入してマクロファージとなり、マクロファー
ジが変性(酸化)LDL(低比重リポプロテイン)を取
り込むことにより泡沫細胞化し、動脈硬化が発症すると
いう説が有力である。一方、近年、粥状硬化の発生進展
における中膜平滑筋細胞の役割が注目されている。内膜
の傷害その他により、血小板の粘着、凝集が起こり、そ
こから放出された種々の血管作用物質が内膜透過性を亢
進させたり、中膜平滑筋細胞の増殖を刺激し、粥状硬化
病変の進展をきたす可能性があることが指摘されてい
る。糖尿病性合併症の血管障害において内皮細胞の関与
が認識されつつある(分子糖尿病学の進歩-基礎から臨
床まで-1994,234-243頁,金原出版刊)。糖
尿病に伴う動脈硬化においても、内皮細胞の障害、平滑
筋細胞の増殖が想定される。その成因の基本は、高血糖
状態の持続であることが想定できるが、そのメカニズム
は不明な点が多く、ポリオール代謝異常、後期グリケー
ション終末生成物の関与、低酸素説などの仮説が挙げら
れている。一方、HGFは膵臓ランゲルハンス島の培養
系においてその増殖促進することが知られている(Otonk
oski et al., Diabetes 43, 947-953, 1994)。しかし、
血糖値が低下することは報告されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来から動脈硬化症な
どの動脈疾患を治療するために種々の治療法が試みられ
てきているが、従来の動脈硬化の予防・治療は、血中の
LDLコレステロールを下げることを主眼としており、
コレステロール吸収阻害剤やコレステロール合成阻害剤
などが用いられてきたが、その効果が不十分であった
り、またその副作用(例えば、食欲不振、胃腸障害、過
敏症状等)などの問題から新たな予防・治療剤の開発が
望まれている。ところで、血管内皮細胞はNOやCNP
などの血管拡張因子・平滑筋細胞増殖抑制因子を産生・
分泌しており、内皮細胞が損傷を受けると血管平滑筋細
胞の増殖が誘発されることが知られており、本発明者等
は前記の発生機序に基づき、傷害を受けた血管内皮細胞
を迅速に修復することができれば、平滑筋細胞の増殖を
主体とする病変を予防・治療することが可能であること
に想到したが、現在まで血管平滑筋細胞に作用すること
なく、血管内皮細胞のみを増殖させる因子についてはほ
とんど報告されていない。本発明者等は、かかる観点か
ら、血管平滑筋細胞に作用することなく、血管内皮細胞
のみを増殖させる因子について鋭意研究した結果、HG
Fがかかる作用を有すること見出し、HGFが動脈疾
患、特に血管平滑筋細胞増殖を主体とする病変の予防・
治療に有用であることが判明した。
【0004】上記のHGFは肝実質細胞を in vitro で
増殖させる因子として見出されたタンパク質である(Bi
ochem Biophys Res Commun, 122, 1450, 1984、Proc. N
atl.Acad. Sci. USA, 83, 6489, 1986、 FEBS Letter,
22, 311, 1987、Nature, 342, 440, 1989、Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 87, 3200, 1990)。肝実質細胞を特
異的に増殖させる因子として発見されたHGFは、本発
明者らをはじめとする多くの研究者による最近の研究成
果によって、生体内で組織傷害治癒などの種々の活性を
示している事が明らかとなり、研究対象としてのみなら
ずヒトや動物の治療薬などへの応用に期待が集まってい
る。HGFは主に間葉系の細胞により産生されているこ
とが解明されており、近隣細胞から必要に応じてHGF
が供給される、所謂パラクリン機構が成立していること
が明らかにされている。しかしながら、肝臓や腎臓に傷
害を受けたとき、傷害を受けていない臓器、例えば肺な
どにおいてもHGFの産生が高まることから、所謂エン
ドクリン機構によってもHGFが供給されていると考え
られる。このようなHGFの受容体に関して、最近の研
究から、c−Met原腫瘍遺伝子がHGF受容体をコー
ドしていることが確定的になった(Bottaro et al., Sci
ence 251, 802-804, 1991; Naldini et al., Oncogene
6, 501-504, 1991)。また、HGFが静脈内皮細胞の増
殖促進作用を有することが報告されている(J. Cell Bio
l., 119, 629, 1992)。上述のようにHGFに関しては
多くの知見が得られているが、HGFが血管平滑筋細胞
に作用することなく、血管内皮細胞のみを増殖させる作
用を有することは従来知られていない新規な知見であ
る。さらに、HGFが高血糖による血管平滑筋細胞の増
殖には影響を与えず、高血糖による血管内皮細胞の減少
を抑制することは従来知られていない新規な知見であ
る。本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、本
発明は新規な動脈疾患治療剤を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明は、 HGFを有効成分として含有することを特徴とする動
脈疾患治療剤; 動脈疾患が、血管平滑筋増殖を主体とする動脈疾患で
ある上記記載の動脈疾患治療剤; 動脈疾患が、PTCA後の再狭窄である上記記載の
動脈疾患治療剤;及び 動脈疾患が、高血糖に伴う動脈疾患である上記記載
の動脈疾患治療剤に関する。
【0006】本発明で使用されるHGFとしては、医薬
として使用できる程度に精製されたものであれば、種々
の方法で調製されたものを用いることができる。HGF
の調製方法としては、各種の方法が知られている。例え
ば、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝
臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤等の臓器、血小
板、白血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精
製して得ることができる(FEBS Letters, 224, 312, 198
7、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 5844, 1989など
参照)。また、HGFを産生する初代培養細胞や株化細
胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞等)から分離
精製してHGFを得ることもできる。あるいは遺伝子工
学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベク
ターに組込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換
し、この形質転換体の培養上清から目的とする組換えH
GFを得ることができる(例えば、Nature, 342, 440, 1
989、特開平5−111383号公報、Biochem. Biophy
s. Res. Commun., 163, 967, 1989など参照)。上記の宿
主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で
用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草
菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞などを用いること
ができる。
【0007】より具体的には、HGFを生体組織から抽
出精製する方法としては、例えば、ラットに四塩化炭素
を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を摘出し
て粉砕し、S−セファロース、ヘパリンセファロースな
どのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC等の通常
の蛋白質精製法にて精製することができる。また、遺伝
子組換え法を用い、ヒトHGFのアミノ酸配列をコード
する遺伝子を、ウシパピローマウィルスDNAなどのベ
クターに組み込んだ発現ベクターによって動物細胞、例
えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マ
ウスC127細胞、サルCOS細胞などを形質転換し、
その培養上清より得ることができる。
【0008】かくして得られたHGFは、HGFと実質
的に同効である限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失又
は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸
配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端
に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは
糖鎖が同様に欠失又は置換されていてもよい。
【0009】本発明の治療剤は上記のHGFを有効成分
とし、HGFは後記試験例に示されるように、血管平滑
筋細胞を増殖させることなく、血管内皮細胞の増殖を促
進する作用を有する。更に、HGFは、障害を受けてい
ない組織には作用を示さず、障害を受けている組織にの
み作用するので、副作用を惹起するおそれが少ないとい
う特長を有する。従って、本発明の治療剤は、動脈疾
患、特に血管平滑筋細胞の増殖を主体とする病変の治療
・予防に有効であり、これらには例えば下記の疾患〜
が包含される。
【0010】PTCA(percutaneous transluminal c
oronary angioplasty)後の再狭窄 末梢循環不全(閉塞性動脈硬化症等を含む) 動脈硬化症 また、本発明の治療剤は、血管内皮細胞の増殖を促進す
る作用を有することから、心筋梗塞後の側副血行路形成
にも有効である。さらに、本発明の治療剤は、糖尿病な
どにおける高血糖による内皮細胞の障害、糖尿病性合併
症などに有効である。ここで、高血糖とは、例えば、空
腹時の血液中のグルコース濃度が110mg/dl以上
である状態をいう。また、糖尿病では、このグルコース
濃度が140mg/dl以上となっている。
【0011】本発明の治療剤は、ヒトの他、哺乳動物
(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)
における動脈障害に起因する種々の疾患の治療・予防に
適用される。
【0012】本発明の治療剤は種々の製剤形態(例え
ば、液剤、固形剤、カプセル剤等)をとりうるが、一般
的には有効成分であるHGFのみ又はそれと慣用の担体
と共に注射剤、吸入剤、坐剤又は経口剤とされる。当該
注射剤は常法により調製することができ、例えば、HG
Fを適切な溶剤(例えば、滅菌された水、緩衝液、生理
食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌
し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製する
ことができる。注射剤中のHGF含量としては、通常0.
0002〜0.2(W/V%)程度、好ましくは0.001〜0.1(W/V%)程
度に調整される。また、経口薬としては、例えば、錠
剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟又は硬カプセル剤、液
剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などの剤形に製剤化さ
れ、これらの製剤は製剤化の常法に準じて調製すること
ができる。坐剤も慣用の基剤(例えば、カカオ脂、ラウ
リン脂、グリセロゼラチン、マクロゴール、ウィテップ
ゾル等)を用いた製剤上の常法によって調製することが
できる。また、吸入剤も製剤上の常套手段に準じて調製
することができる。製剤中のHGF含量は、剤形、適用
疾患などに応じて適宜調整することができる。
【0013】製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添
加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロ
ブリン、ゼラチン、グリシン、マンニトール、グルコー
ス、デキストラン、ソルビトール、エチレングリコール
などが挙げられる。さらに、本発明の製剤は製剤化に必
要な添加物、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止
剤、無痛化剤、等張化剤等を含んでいてもよい。液状製
剤とした場合は凍結保存、又は凍結乾燥等により水分を
除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、用時
に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使用される。
【0014】本発明の治療剤は、その製剤形態に応じた
適当な投与経路により投与され得る。例えば、注射剤の
形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与するこ
とができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重な
どにより適宜調整されるが、通常HGFとして0.05mg〜
500mg、好ましくは1mg〜100mgであり、これを1日1回
ないし数回に分けて投与するのが適当である。
【0015】
【発明の効果】本発明において、有効成分であるHGF
は、血管内皮細胞の増殖を促進する作用を有すると共
に、血管平滑筋細胞の増殖を促進せず、更には修復され
た血管内皮細胞を介して血管平滑筋細胞の異常な増殖を
抑える作用をも有している。従って、本発明の治療剤
は、前述した動脈障害、特に血管平滑筋細胞の増殖を主
体とする障害に起因する各種疾患の治療・予防に有用で
ある。更に、HGFは、障害を受けている組織にのみ作
用するので、副作用の少ない薬剤を得ることができると
いう効果を奏する。また、本発明において、有効成分で
あるHGFは高血糖による血管平滑筋細胞の増殖に影響
を与えず、高血糖による血管内皮細胞の障害を抑制する
作用を有すると共に、更には修復された血管内皮細胞を
介して血管平滑筋の異常な増殖を抑える作用をも有して
いる。従って、本発明の治療剤は、前述した糖尿病性合
併症、糖尿病や高血糖に伴う血管障害、動脈疾患などの
治療・予防に有用である。
【0016】
【実施例】以下、実験例及び実施例に基づいて本発明を
より詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。なお、以下の実験で使用した材料及び
方法は以下のとおりである。
【0017】実験材料及び方法細胞培養 ラット冠動脈内皮細胞(3−6代継代)は、10%ウシ
血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイ
シン(100mg/ml)を含むDMEM培地にて維持
した。3ケ月令SDラットより得た大動脈平滑筋細胞
(6−10代継代)は、10%ウシ血清、ペニシリン
(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg
/ml)を含むWaymouth's培地(Gibco, Grand island,
NY)にて維持した。新生血管内膜平滑筋細胞は、バルー
ンにて傷害したSDラットの大動脈より得、同様に維持
した。細胞は、37℃にて水蒸気に満たされた95%空
気−5%二酸化炭素の条件下にて培養し、2日に1度培
地の交換を行った。ヒト血管内皮細胞と大動脈平滑筋細
胞はクラボー(株)より取得し、上記と同様に維持し
た。
【0018】DNA合成の測定法 血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞は、96穴組織培養用
プレート上にまいた。細胞が隙間なく付着した状態にお
いて、血管内皮細胞は0.5%ウシ血清を含むDMEM
培地にて48時間培養しても増殖しなかった。細胞の相
対的なDNA合成速度は、24時間の、トリチウムラベ
ル化チミジン([3H]TdR)の細胞中トリクロロ酢
酸(TCA)沈殿物質中への取り込みを測定することで評
価した。HGF、線維芽細胞増殖因子(FGF)或いは
ビークル(増殖因子を含まないコントロール培地)は、[
3H]TdRを加える12時間前に添加した。TdRを
添加して24時間後に細胞を冷PBS(−)にて2回、冷
10%TCAにて2回洗浄した後、4℃にて10%(wt/
vol)TCAで30分間処理した。次ぎに細胞をエタノー
ル(95%)にて軽く洗浄後、0.25規定水酸化ナトリ
ウム溶液に4℃で、3時間処理して溶かし込み、溶液を
中和した。TCA沈殿物質中に取り込まれたラジオアイ
ソトープ活性は、液体シンチレーションカウンターにて
測定した。血管平滑筋細胞についてのDNA合成速度に
ついても同様に試験した。血管平滑筋細胞は、無血清培
地にて、48時間で増殖は停止した。この時点でヒトH
GF、FGF、インターロイキン1α(IL−1α)、
インターロイキン6(IL−6)、ウシ血清(5%)又
はビークルを加えて12時間培養し、[3H]TdRを
添加して24時間後に細胞を回収した。
【0019】共培養実験 血管内皮細胞を細胞培養用インサート(コースター社、
孔径0.45μm)にまき、10%ウシ血清を加えたD
MEM培地にて増殖させた。新たに再生された血管内膜
平滑筋細胞又は血管平滑筋細胞は、6穴プレートにま
き、5%ウシ血清を加えたWaymouth's培地にて維持し
た。細胞が隙間なく増殖した状態で、内皮細胞を含有し
たインサートを、増殖停止状態の平滑筋細胞を入れたウ
ェル中に入れた。内皮細胞と平滑筋細胞は、無血清のWa
ymouth's培地中にて24時間共培養し、[3H]TdR
を加えてさらに12時間培養を続けた。相対的なDNA
合成速度は[3H]TdRのTCA沈殿物質中への取り
込み量の測定によって評価した。
【0020】逆転写(RT)−PCR 血清刺激下隙間なく増殖した状態で、ラット冠動脈血管
内皮細胞、ヒト大動脈血管内皮細胞、ラット平滑筋細
胞、ラット新生内膜平滑筋細胞、そしてヒト大動脈血管
平滑筋細胞よりRNAをRNAゾル(Tel-Test Inc, Tex
as)を用いて抽出した。HGF及びc−met(HGF
レセプター)メッセンジャー(m)RNAのレベルは、
RT−PCR法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 847
4-8478, 1993)にて測定した。なお、プライマーとして
は下記の配列のものを使用した。 HGF: 5’側プライマー:5'-ATGCTCATGGACCCTGGT-3' 3’側プライマー:5'-GCCTGGCAAGCTTCATTA-3' c−met: 5’側プライマー:5'-CAGTGATGATCTCAATGGGCAAT-3' 3’側プライマー:5'-AATGCCCTCTTCCTATGACTTC-3' 増幅したDNAは2%アガロース電気泳動にかけ、エチ
ジウムブロマイドにて染色した。
【0021】材料 basic FGF(bFGF)、IL−1α(インターロキ
ン−1α)及びIL−6(インターロイキン−6)はR
&D社より入手し、HGFは組換ヒトHGFを用いた。
ベラプロストナトリウム(プロスタグランジンI2
剤:TRKと略す)は、科研製薬から、プロスタグラン
ジンE1(PGE1)及びプロスタグランジンE2(PG
2)は、Paesel and Lorei社から入手した。生存細胞数の測定法 生存細胞数の測定は、WST−細胞数測定キット(ワコ
ー社製)を用いて、490nmの吸光度を測定すること
により求めた。HGFの測定法 培養上清中のHGF濃度は、抗HGFモノクローナル抗
体を使用したELISAのキット(特殊免疫研究所製)によ
り測定した。統計解析 すべての値は、平均値±標準誤差にて現した。すべての
実験は最低3回繰り返した。多重比較における有意差検
定には、ダンカンの検定を用いた。危険率5%以下を統
計上有意と考えた。
【0022】試験例1血管平滑筋細胞の増殖に対する血管内皮細胞の効果 ラット大動脈血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖に対す
るラット冠動脈血管内皮細胞(EC)の効果を、ECを
VSMCに添加する共培養法により[3H]TdR取り
込み量で試験した。その結果を図1に示す。図中、EC
(−)はECなしを、EC(+)はEC有りを示す(以
下、同様)。1群8ウェルで実験を行った。図1に示さ
れるように、VSMCのDNA合成が有意に抑制されて
おり、ECはVSMCの増殖を抑制していることが認め
られた。
【0023】試験例2新生内膜平滑筋細胞(niVSMC)の増殖に対するE
Cの効果 上記のように、ECにVSMCに対する増殖抑制作用が
認められたことから、この点を確認するため、niVS
MCの増殖に対するECの効果を検討した。バルーンに
て傷害を受けたラット大動脈より得られたniVSMC
はオートクリン−パラクリン機構により種々の成長因子
を産生していることが知られている。実験は、ECをn
iVSMCに添加する共培養法により[3H]TdR取
り込み量で試験した。その結果を図2に示す(1群8ウ
ェル)。図2に示されるように、試験例1と同様に、E
CにはniVSMCに対する増殖抑制作用が認められ
た。
【0024】試験例3ECの増殖に対するHGFの効果 ECの増殖に対するHGFの効果を[3H]TdR取り
込み量で試験した。なお、比較としてbFGF及び牛胎
児血清(FBS)についても試験した。HGFについて
はEC培養系に各濃度のHGFを添加(1群8ウェ
ル)、bFGFについてはEC培養系にbFGF(10
ng/ml)を添加(1群8ウェル)、FBSについて
はEC培養系に20%FBSを添加(1群8ウェル)し
た。その結果を図3に示す。図において、**はP<
0.01(ビークル群に対する比較結果、特に明示のな
い限り以下同様)を示す。図3に示されるように、HG
Fは1ng/mlでは効果がなかったが、10ng/m
lでは[3H]TdR取り込み量が増加しており、EC
のDNA合成を促進し、ECの増殖を促進することが明
らかとなった。また、bFGF(10ng/ml)もD
NA合成を促進した。なお、HGF及びbFGFの間に
は有意差はなかった。また、ECのRNA合成に対する
HGFの効果を、トリチウム化ウリジン取り込み量で試
験した。その結果を、図4に示す。図において、**は
P<0.01を示す。図4に示されるように、HGF及
びbFGFはECのRNA合成をも促進することが明ら
かとなった。
【0025】試験例4ECの増殖に対するHGFとbFGFとの相加効果 上記のように、HGF及びbFGFは共にECの増殖を
促進することが判明したので、ECのDNA合成に対す
るHGFとbFGFとの相加効果を[3H]TdR取り
込み量で試験した(1群8ウェル)。その結果を図5に
示す。図中、*はP<0.01を示す。図5に示される
ように、HGFとbFGFとの間で相加効果が認めら
れ、この値は20%FBSに相当するものであった。ま
た、ECのRNA合成及び蛋白合成に対するHGFとb
FGFとの相加効果を、それぞれトリチウム化ウリジン
取り込み量及びトリチウム化ロイシン取り込み量で試験
した(1群8ウェル)。試験は、トリチウム化チミジン
と同様にTCA法により行った。その結果をそれぞれ図
6及び図7に示す。図中、*はP<0.01を示す。図
6及び図7に示されるように、ECのRNA合成及び蛋
白合成に対してもHGFとbFGFとの間で相加効果が
認められた。
【0026】試験例5ECの増殖に対するHGFと他のサイトカインの相加効
ECの増殖に対するHGFと他のサイトカイン(IL−
1α及びIL−6)との相加効果を[3H]TdR取り
込み量で試験した(1群8ウェル)。その結果を図8に
示す。図中、*はP<0.01(対HGF/ビークル)
を示す。図8に示されるように、IL−1α及びIL−
6はそれぞれECのDNA合成を促進することが明らか
になったが、これらとHGFとの間では相加効果は認め
られなかった。
【0027】試験例6VSMCの増殖に対するHGFの効果 VSMCの増殖に対するHGFの効果を[3H]TdR
取り込み量で試験した。なお、比較としてbFGFにつ
いても試験した。HGF及びbFGFはそれぞれVSM
C培養系に各濃度(1,10及び100ng/ml)を
添加(1群8ウェル)した。その結果を図9に示す。図
中、**はP<0.01を示す。図9に示されるよう
に、bFGFは[3H]TdR取り込み量が増加してお
り、VSMCのDNA合成を促進することが示された。
一方、HGFにおいては、[3H]TdR取り込み量に
変化がなく、VSMCの増殖作用は認められなかった。
また、VSMCに変えて、niVSMCについても同様
な試験を行った。その結果を図10に示す。図中、**
はP<0.01を示す。図10に示されるように、bF
GFはniVSMCの増殖を促進し、一方HGFはni
VSMCの増殖を促進することはなかった。更に、ni
VSMCのRNA合成に対するHGFの効果をトリチウ
ム化ウリジンの取り込み量で試験した。その結果を図1
1に示す。図中、**はP<0.01を示す。図11に
示されるように、HGFはniVSMCのRNA合成を
促進することはなかった。以上の結果及び試験例3の結
果からして、bFGFはEC及びVSMCの増殖を促進
する作用を有する。それに対し、HGFはECの増殖を
促進するが、VSMC(及びniVSMC)の増殖を促
進する作用はないことが明らかになった。
【0028】試験例7ヒト大動脈血管内皮細胞の増殖に対するHGFの効果 ヒト大動脈血管内皮細胞の増殖に対するHGFの効果を
3H]TdR取り込み量により試験した。なお、比較
としてbFGF及びFBSについても試験した。HGF
についてはヒト大動脈血管内皮細胞培養系に各濃度のH
GFを添加(1群8ウェル)、bFGFについてはヒト
大動脈血管内皮細胞培養系にbFGF(10ng/m
l)を添加(1群8ウェル)、FBSについてはヒト大
動脈血管内皮細胞培養系に20%FBSを添加(1群8
ウェル)した。その結果を図12に示す。なお、図中、
*はP<0.05、**はP<0.01を示す。図12
に示されるように、HGFは投与量依存的にヒト大動脈
血管内皮細胞の増殖を促進した。bFGFもヒト大動脈
血管内皮細胞の増殖を促進したが、その程度はHGFよ
りも低いものであった。
【0029】試験例8RT−PCR法によるHGF mRNA及びc−met
mRNAレベルの測定 ラット冠動脈血管内皮細胞(EC)、ヒト大動脈血管内
皮細胞、ラット平滑筋細胞(VSMC)、ラット新生内
膜平滑筋細胞(niVSMC)及びヒト大動脈血管平滑
筋細胞におけるHGF mRNA及びc−met mRN
Aの発現をRT−PCR法で測定した結果を、図13
(HGF mRNA)及び図14(c−met mRN
A)に示す。図13に示されるように、HGF mRN
Aは、内皮細胞、平滑筋細胞及び新生内膜平滑筋細胞に
発現が認められた。また、図14に示されるように、c
−met mRNAについても、内皮細胞、平滑筋細胞
及び新生内膜平滑筋細胞に発現が認められた。
【0030】試験例9ヒト大動脈血管内皮細胞に対する高グルコースの影響 高グルコースのヒト大動脈血管内皮細胞に対する傷害を
検討する為に、ヒト大動脈血管内皮細胞を5、55、1
05mMのグルコース濃度下に培養した後の生存細胞数
を、WSTを用いた生存細胞数の測定で試験した。その
結果を図15に示す。1群8ウェルで実験を行った。図
15に示されるように、正常な血糖値5mMと比較し
て、55、105mMグルコースにより濃度に依存し
て、生存細胞数が有意に減少した。図において、**は
P<0.01を示す。105mMグルコースにおける生
存細胞数は、55mMグルコースよりもさらに有意に
(図において、##はP<0.01を示す)減少した。
培養液中の高濃度のグルコースは、濃度依存的にヒト大
動脈血管内皮細胞を傷害し、その生存細胞数を減少させ
た。
【0031】試験例10ヒト大動脈血管内皮細胞の高グルコースによる傷害に対
するHGFの効果 試験例9に記載のようにヒト大動脈血管内皮細胞の高グ
ルコースによる細胞傷害が認められたことから、この傷
害に対するHGFの効果を検討するため、ヒト大動脈血
管内皮細胞の105mMグルコース存在下における培養
において、10、100ng/mlのHGFを添加し、
WSTを用いてヒト大動脈血管内皮細胞の生存細胞数の
測定を行った。その結果を図16に示す。1群8ウェル
で実験を行った。図16に示されるように、対照群と比
べ105mMグルコースによりヒト大動脈血管内皮細胞
の細胞数の有意な減少が再現された(図において、**
はP<0.01を示す)。さらに、このヒト大動脈血管
内皮細胞細胞の減少は、10、100ng/mlHGF
の添加により有意に抑制された(図において、#はP<
0.05を示す)。105mMグルコースに10、10
0ng/mlHGFを添加した群は、正常グルコース濃
度の対照群と差は無かった。すなわち、10、100n
g/mlのHGFにより、高グルコースによるヒト大動
脈血管内皮細胞の傷害が有意に抑制され、ほぼ正常な生
存細胞数まで回復した。以上の結果より、HGFは高グ
ルコースによるヒト大動脈血管内皮細胞の傷害を抑制さ
せることが明らかになった。
【0032】試験例11ヒト大動脈血管内皮細胞からのHGFの分泌及びそれに
対する高グルコース、TRKの影響 試験例10に記載のように、HGFは高グルコースによ
るヒト大動脈血管内皮細胞の傷害を抑制したことから、
5、55、105mMのグルコース存在下のヒト大動脈
血管内皮細胞の培養上清中のHGF量をELISA法に
より測定した。その結果を図17に示す。1群8ウェル
で実験を行った。図17に示されるように、ヒト大動脈
血管内皮細胞の培養上清中にはHGFが検出された。5
mMグルコース存在下と比較して、55、105mMグ
ルコース存在下に培養したヒト大動脈血管内皮細胞の培
養上清中のHGF濃度は、濃度依存的に有意に減少し
た。ヒト大動脈血管内皮細胞により確かにHGFが分泌
されており、高グルコースにより細胞数が減少するとと
もに、分泌されるHGF量も減少することが分かった。
さらに、5mMのグルコース存在下において、10
-6M、10-7MのTRKを添加したヒト大動脈血管内皮
細胞の培養上清中のHGF量をELISA法により測定
し、無添加の時と比較した。TRKは、ヒト大動脈血管
内皮細胞の培養上清中のHGF濃度を有意に増加させ
た。
【0033】試験例12ヒト大動脈血管平滑筋細胞に対する高グルコースの影響 ヒト大動脈血管平滑筋細胞に対する高グルコースの影響
を検討する為に、ヒト大動脈血管平滑筋細胞を5、5
5、105mMのグルコース濃度下に培養した後の生存
細胞数を、WSTを用いた生存細胞数の測定で試験し
た。その結果を図18に示す。1群8ウェルで実験を行
った。図18に示されるように、5mMグルコース存在
下と比較して、55、105mMグルコース存在下にお
いて、濃度に依存してヒト大動脈血管平滑筋細胞の細胞
数が有意に増加した。105mMグルコース存在下にお
けるヒト大動脈血管平滑筋細胞数は、55mMグルコー
ス存在下よりもさらに有意に増加した。培養液中の高濃
度のグルコースは、濃度依存的にヒト大動脈由来培養血
管平滑筋細胞の生存数を増加させることが分かった。
【0034】試験例13ラット大動脈血管平滑筋細胞(VSMC)に対する高グ
ルコースの影響 VSMCに対する高グルコースの影響を検討する為に、
試験例12と同様にして、VSMCを5、55、105
mMのグルコース濃度下に培養した後の生存細胞数を、
WSTを用いた生存細胞数の測定で試験した。その結果
を図19に示す。1群8ウェルで実験を行った。図19
に示されるように、5mMグルコース存在下と比較し
て、55、105mMグルコース存在下において、濃度
に依存してVSMCの細胞数が有意に増加した。培養液
中の高濃度のグルコースは、VSMCの生存数を増加さ
せることが分かった。
【0035】試験例14ヒト大動脈血管平滑筋細胞からのHGFの分泌に対する
TRK、PGE1、PGE2の影響 正常グルコース濃度(5mM)におけるヒト大動脈血管
平滑筋細胞の培養上清中のHGF量をELISA法分析
し、これに対するTRK(10-7、10-6M)、PGE
1、PGE2(10-6M)アナログの影響を検討した。そ
の結果を図20に示す。1群8ウェルで実験を行った。
図20に示されるように、TRK(10-7、10
-6M)、PGE1、PGE2(10-6M)は5mMグルコ
ース濃度において、ヒト大動脈血管平滑筋細胞の培養上
清中のHGF濃度をそれぞれ有意に増加させた。HGF
の産生を促進することが知られているTRKは、ヒト大
動脈血管平滑筋細胞からのHGF分泌量を増加させた。
【0036】試験例15ヒト大動脈血管平滑筋細胞からのHGFの分泌及びそれ
に対する高グルコース、TRKの影響 ヒト血管平滑筋細胞の培養上清中のHGF量を分析し、
高グルコースの影響を検討した。5、55、105mM
のグルコース存在下のヒト大動脈血管平滑筋細胞の培養
上清中のHGF量をELISA法により測定した。さら
に、TRK(10-6M)を添加した時のヒト大動脈血管
平滑筋細胞の培養上清中のHGF量を測定し、無添加の
時と比較した。その結果を図21に示す。1群8ウェル
で実験を行った。図21に示されるように、ヒト大動脈
血管平滑筋細胞の培養上清中にはHGFが検出された。
5mMグルコース存在下と比較して、105mMグルコ
ース存在下に培養したヒト大動脈血管平滑筋細胞の培養
上清中のHGF濃度は、有意に減少した。ヒト大動脈血
管平滑筋細胞よりHGFが分泌されており、高グルコー
スにより細胞数が増加するにも関わらず、分泌されるH
GF量は減少することが分かった。5、55、105m
Mのグルコース存在下において、さらに10-6MのTR
Kを添加したヒト大動脈血管平滑筋細胞の培養上清中の
HGF量をELISA法により測定した。TRKは5、
55、105mMグルコース濃度において、HGF濃度
を有意に増加させた。HGFの産生を促進することが知
られているTRKは、高グルコースにおいても、ヒト大
動脈血管平滑筋細胞からのHGF分泌量を増加させた。
【0037】試験例16ヒト大動脈血管平滑筋細胞に対する高グルコースの影響 高グルコースのヒト大動脈血管平滑筋細胞に対する作用
を検討する為に、ヒト大動脈血管平滑筋細胞を5、10
5mMのグルコース濃度下に培養した後の生存細胞数
を、WSTを用いた生存細胞数の測定で試験した。その
結果を表1に示す。1群8ウェルで実験を行った。表1
に示されるように、正常な血糖値5mMと比較して、1
05mMグルコースにより生存細胞数が有意に増加し
た。表1において、**はP<0.01を示す。培養液
中の高濃度のグルコースは、ヒト大動脈血管平滑筋細胞
の生存細胞数を増加させた。
【0038】試験例17高グルコースによるヒト大動脈血管平滑筋細胞の増殖に
対するHGFの効果 試験例16に記載のようにヒト大動脈血管平滑筋細胞の
高グルコースによる増殖が認められたことから、これに
対するHGFの効果を検討するため、ヒト大動脈血管平
滑筋細胞の5mM、105mMグルコース存在下におけ
る培養において、100ng/mlのHGFを添加し、
WSTを用いてヒト大動脈血管内皮細胞の生存細胞数の
測定を行った。その結果を表1に示す。1群8ウェルで
実験を行った。表1に示されるように、5mMまたは1
05mMグルコース存在下において、対照群(HGF非
添加群)と比べ100ng/mlHGFの添加により、
ヒト大動脈血管内皮細胞数は影響を受けなかった。すな
わち、HGFは正常グルコース濃度においても、高グル
コース濃度においても、ヒト大動脈血管内皮細胞の増殖
に影響しないことが明らかになった。
【0039】
【表1】
【0040】実施例1 生理食塩水100ml中にHGF1mg、マンニトール
1g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無
菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結
乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0041】実施例2 0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaCl及び
0.01%ポリソルベート80含有、pH7.4)10
0ml中にHGF1mgとヒト血清アルブミン100m
gを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアル
に分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾
燥製剤を得た。
【0042】実施例3 注射用蒸留水100ml中にHGF1mg、ソルビトー
ル2g、グリシン2g及びポリソルベート80 10m
gを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに
分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥
製剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】VSMCのDNA合成に対するECの効果を示
す図である。
【図2】niVSCMのDNA合成に対するECの効果
を示す図である。
【図3】ECのDNA合成に対するHGFの効果を示す
図である。
【図4】ECのRNA合成に対するHGFの効果を示す
図である。
【図5】ECのDNA合成に対するHGFとbFGFの
相加効果を示す図である。
【図6】ECのRNA合成に対するHGFとbFGFの
相加効果を示す図である。
【図7】ECの蛋白合成に対するHGFとbFGFの相
加効果を示す図である。
【図8】ECのDNA合成に対するHGF及び他のサイ
トカイン(IL−1α及びIL−6)の相加効果を示す
図である。
【図9】VSCMのDNA合成に対するHGFの効果を
示す図である。
【図10】niVSMCのDNA合成に対するHGFの
効果を示す図である。
【図11】niVSMCのRNA合成に対するHGFの
効果を示す図である。
【図12】ヒト大動脈血管内皮細胞のDNA合成に対す
るHGFの効果を示す図である。
【図13】ラット冠動脈血管内皮細胞(EC)、ヒト大
動脈血管内皮細胞、ラット平滑筋細胞(VSMC)、ラ
ット新生内膜平滑筋細胞(niVSMC)及びヒト大動
脈血管平滑筋細胞におけるHGF mRNAの発現を示
す電気泳動写真である。
【図14】ラット冠動脈血管内皮細胞(EC)、ヒト大動
脈血管内皮細胞、ラット平滑筋細胞(VSMC)、ラット
新生内膜平滑筋細胞(niVSMC)及びヒト大動脈血
管平滑筋細胞におけるc−met mRNAの発現を示
す電気泳動写真である。
【図15】ヒト大動脈血管内皮細胞に対する高グルコー
スの影響を示す図である。
【図16】ヒト大動脈血管内皮細胞の高グルコースによ
る傷害に対するHGFの効果を示す図である。
【図17】ヒト大動脈血管内皮細胞からのHGFの分泌
及びそれに対する高グルコース、TRKの影響を示す図
である。
【図18】ヒト大動脈血管平滑筋細胞のに対する高グル
コースの影響を示す図である。
【図19】VSMCに対する高グルコースの影響を示す
図である。
【図20】ヒト大動脈血管平滑筋細胞からのHGFの分
泌に対するTRK、PGE1、PGE2の影響を示す図で
ある。
【図21】ヒト大動脈血管平滑筋細胞からのHGFの分
泌及びそれに対する高グルコース、TRKの影響を示す
図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 HGFを有効成分として含有するこ
    とを特徴とする動脈疾患治療剤。
  2. 【請求項2】 動脈疾患が、血管平滑筋細胞増殖を
    主体とする動脈疾患である請求項1記載の動脈疾患治療
    剤。
  3. 【請求項3】 動脈疾患が、PTCA後の再狭窄で
    ある請求項1記載の動脈疾患治療剤。
  4. 【請求項4】 動脈疾患が、高血糖に伴う動脈疾患
    である請求項1記載の動脈疾患治療剤。
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