JPH101439A - 神経変性疾患治療剤 - Google Patents

神経変性疾患治療剤

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JPH101439A
JPH101439A JP8149568A JP14956896A JPH101439A JP H101439 A JPH101439 A JP H101439A JP 8149568 A JP8149568 A JP 8149568A JP 14956896 A JP14956896 A JP 14956896A JP H101439 A JPH101439 A JP H101439A
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JP
Japan
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protein
therapeutic agent
neuropathy
present
active ingredient
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JP8149568A
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Inventor
Yasuo Takahashi
橋 靖 雄 高
Masahito Shimojo
条 雅 人 下
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Mochida Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Mochida Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】神経変性疾患を治療する効果があり、副作用が
軽度で安全な治療剤の提供。 【解決手段】トロンボモジュリン様蛋白質を有効成分と
して含有することを特徴とする神経変性疾患治療剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトロンボモジュリン
(以下、TMと略す)様蛋白質を有効成分として含有す
ることを特徴とする神経変性疾患治療剤に関する。
【0002】
【従来技術】現在、中枢の神経変性疾患である、アルツ
ハイマー型痴呆症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏
病、脳外傷あるいは脳損傷による神経障害等の治療剤と
して、ホパンテン酸カルシウム、イデベノン等の脳代謝
賦活薬や、ニカルジピン、シンナリジン等の脳循環改善
薬や、レボドパ等の脳機能改善薬が用いられているが、
これらの薬物の作用機序については不明な点が多く、臨
床的な治療効果も不十分であり、対症療法的に用いられ
ているのが実状である。また、末梢の神経変性疾患であ
る筋萎縮性側索硬化症、糖尿病性神経障害、及び制癌剤
による神経障害、アルコール性神経障害等などにおいて
も、筋弛緩薬、抗痙攣薬あるいはビタミン剤等の対症療
法がほとんどすべてであり、臨床的な治療効果も不十分
であるのが実状である。
【0003】これに対し神経変性疾患の根本的な病因で
ある虚血、外傷、老化、或いは原因不明の病因による全
般的な、或いは特定の領域の神経細胞の機能低下、変
性、壊死に対し、直接的にそれを予防したり、再生を促
進させることにより疾患を治療することを目的として、
神経細胞の成長促進・生存維持・神経突起伸展促進をす
る物質、いわゆる神経栄養因子(以下、NTFと略す)
と称する物質を生体より探索・発見し、医薬品として応
用する試みが盛んに行われている。その代表例として神
経成長因子(以下、NGFと略す)があり、研究が進め
られているが、神経細胞の中の限られた細胞にしか効果
を示さないことが最近の研究で明らかとなっている(プ
ロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー
オブ サイエンシーズ オブ ザ ユナイテッド ス
テイツ オブ アメリカ(Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA)88、961−965、199
1)。他に塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、脳
由来神経栄養因子(以下、BDNFと略す)、毛様体神
経栄養因子(以下、CNTFと略す)、ニューロトロフ
ィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィ
ン−5、インターロイキン2、インターロイキン3、イ
ンターロイキン6、インスリン様成長因子(以下、IG
F−1と略す)、肝実質細胞増殖因子(HGF)等がN
TFとしての作用を有することが示されている(古川昭
栄ら、クリニカルニューロサイエンス、、1284−
1289、1991)。
【0004】これらNTFのいくつかについては、その
臨床応用が試みられつつある。すなわち、BDNF、C
NTF、IGF−1などを用いて、末梢の神経変性疾患
である筋萎縮性側索硬化症患者を対象として、臨床検討
が進行しつつある。現在までのところ、CNTFの効果
が報告されているが、半減期が極めて短いためか、その
臨床効果は乏しかったのみならず、注射局所の疼痛・熱
感などの副作用が報告されている(岡澤均、最新医学、
50、2197−2202、1995)。したがって、
現在までのところ、臨床上有用性が認められたNTFは
なく、より効果が優れ、かつ、副作用が軽度な、安全な
治療剤が切望されている。
【0005】一方、TMは、1981年にエスモンらに
より血管内皮細胞表面上に存在する抗凝固物質として発
見され、その後1987年に鈴木らによりその全一次構
造が明らかにされた糖蛋白質であり、トロンビンと結合
してトロンビンの凝固促進作用を抑制するとともにトロ
ンビンによるプロテインC活性化を著しく促進させる。
TM様蛋白質は、効率よく凝固系を抑制することから、
播種性血管内凝固症候群(以下、DICと略す)や各種
血栓症等の予防や治療に有用であることが示唆されてい
る。このようにTMは広く凝固線溶系に作用する分子で
あると考えられているが、他方、細胞機能に及ぼす影響
についてはほとんど知られていない。
【0006】数少ない報告例をあげると、今田らは、マ
ウステトラカルシノーマF9細胞をレチノイン酸あるい
はサイクリックAMP(cAMP)で内胚葉系細胞に分
化させると、マウスTMと同じ機能を有し、また、遺伝
子クローニングの結果マウスTMとまったく同一である
ことが明らかとなったフェトモジュリンが内胚葉系細胞
に発現されることを報告した[デベロップメンタル バ
イオロジー(Dev.Biol.)140、113−1
22、1990]。また、最近、石井らは、TM様蛋白
質がマウス由来の線維芽細胞に対して増殖促進作用を有
することを報告した(特開平7−316066号公
報)。以上のような報告がみられるが、TM様蛋白質
が、神経系で最も重要な役割を担っている神経細胞に対
して直接作用すること、特に生存維持や神経突起伸展等
の神経栄養効果があるということを記載した報告は全く
知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】中枢および末梢の神経
変性疾患に対して用いられている薬物は、対症療法が中
心であり、臨床効果も不十分である。この様な現況か
ら、中枢および末梢の神経変性疾患において、副作用が
少なく安全で、かつ本質的治療薬となりうる新しいNT
Fを有効成分として含有する神経変性疾患治療剤を提供
するのが、本発明の課題である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、神経細胞に
対するNTFに関する探索研究を行っている途上、TM
様蛋白質がNGFでは作用が見られない大脳神経細胞に
直接作用し、その生存維持や神経突起伸展等の神経栄養
効果を示すという今まで全く知られていなかった事実を
発見し、さらに鋭意研究を重ねて本発明を完成した。
【0009】以下に本発明を詳細に説明する。本発明の
第一の態様は、TM様蛋白質を有効成分として含有する
ことを特徴とする神経変性疾患治療剤である。
【0010】本発明の第二の態様は、TM様蛋白質を有
効成分として含有することを特徴とする中枢の神経変性
疾患治療剤であり、特に、アルツハイマー型痴呆症、パ
ーキンソン病、ハンチントン舞踏病、脳外傷あるいは脳
損傷による神経障害などの治療剤である。
【0011】本発明の第三の態様は、TM様蛋白質を有
効成分として含有することを特徴とする末梢の神経変性
疾患治療剤であり、特に、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病
性神経障害、制癌剤による神経障害、アルコール性神経
障害などの治療剤である。また、本発明の第四の態様
は、TM様蛋白質および任意のNTFを有効成分として
含有することを特徴とする神経変性疾患治療剤である。
さらに、本発明の第五の態様は、TM様蛋白質を有効成
分として含有することを特徴とする神経組織あるいは神
経細胞の移植時の処理剤あるいは保存剤である。
【0012】本明細書において、「神経変性疾患」の語
は、虚血、外傷、老化、或いは原因不明の病因による神
経細胞の機能低下、変性、壊死などによりひきおこされ
る疾患をすべて含む。すなわち、アルツハイマー型痴呆
症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、脳外傷ある
いは脳損傷による神経障害など、中枢の神経障害が含ま
れる。また、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病性神経障害、
制癌剤による神経障害、アルコール性神経障害などの末
梢の神経障害も含まれる。
【0013】また、「TM様蛋白質」の語は、TMおよ
びTMの生物学的もしくは免疫学的活性に必要な一部分
のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそれらの類似物
を意味する。すなわち、本発明に用いるTM様蛋白質
は、トロンビンと結合してトロンビンの凝固促進作用を
抑制するとともにトロンビンによるプロテインC活性化
を著しく促進させる蛋白性物質をすべて含む。従って、
天然型あるいは遺伝子工学的に産生されたいずれでも良
く、遺伝子工学手法により得られる改変型あるいはキメ
ラ型であってもよい。医薬品とする場合、好ましくはヒ
ト由来のTM様蛋白質が望まれる。また、ヒト由来のT
Mは膜結合性であり、完全長のアミノ酸配列を持つもの
は水に対する溶解性が低い。このため、本発明において
は完全長のアミノ酸配列を持たず、溶解性の高いTM様
蛋白質(以下、可溶性TM様蛋白質と略す)、例えば天
然型のヒト尿由来の可溶性TM様蛋白質もしくは遺伝子
組換えヒト可溶性TM様蛋白質がさらに好ましい。な
お、遺伝子組換え技術等を利用して産生された、TMの
アミノ酸配列の部分構造を有する様々なTM様蛋白質
も、神経変性疾患治療剤として本発明の効果を有するも
のは、本発明に含まれる。
【0014】このようなTM様蛋白質は、天然型につい
ては、例えば、特開昭60−199819号公報に開示
されているヒト胎盤由来のTM、ヒト尿由来の可溶性T
M様蛋白質として、特開平3−86900号公報に開示
されている非還元状態での分子量が55,000〜5
8,000および60,000〜65,000の可溶性
TM様蛋白質、特開平3−218399号公報に開示さ
れている非還元状態での分子量が72,000±3,0
00および79,000±3,000の可溶性TM様蛋
白質、ジャーナル オブ バイオケミストリー(J.B
iochem.)113,433−440、1993に
記載されている非還元状態での分子量が55,000お
よび60,000の可溶性TM様蛋白質およびヨーロピ
アン ジャーナル オブ バイオケミストリー(Eu
r.J.Biochem.)221、1079−108
7、1994に記載されている非還元状態での分子量が
57,000および63,000の可溶性TM様蛋白質
があげられる。
【0015】遺伝子組換え型については、例えば、遺伝
子組換えヒト可溶性TM様蛋白質として、特開平1−6
219号公報に開示されている少なくともアミノ末端か
ら345−462番目のアミノ酸配列を含む可溶性TM
様蛋白質およびWO92/00325号公報に開示され
ている少なくともアミノ末端から4−446番目のアミ
ノ酸配列を含む可溶性TM様蛋白質があげられる。ま
た、特開平2−255699号公報、特開平3−259
084号公報あるいは特開平5−213998号公報に
開示されているTMの構成アミノ酸が一部欠如している
TM様蛋白質、特表平5−508150号公報、WO9
3/15755号公報、WO93/25675号公報あ
るいは特開平5−310787号公報に開示されている
一部が他のアミノ酸に置換されたTM様蛋白質が挙げら
れる。例えば、メチオニンを他のアミノ酸に置換するこ
とによって酸化を防止したもの[特表平5−50815
0号公報]、あるいはアミノ酸配列を修飾することによ
って蛋白分解酵素による分解を防止したもの[WO93
/15755号公報]等が挙げられる。
【0016】また、WO91/04276号公報、WO
91/05803号公報、あるいは特開平3−1333
80号公報に開示されているコンドロイチン及び/又は
コンドロイチン硫酸を含む糖鎖を有するTM様蛋白質、
特開平6−279497号公報に開示されているウシト
ロンボモジュリン由来の酸性アミノ酸配列を含むo−グ
リコシド糖鎖結合部位を付加し、コンドロイチン硫酸糖
鎖を結合させたTM様蛋白質、あるいは、WO92/0
3149号公報に開示されているo−グリコシル化部位
領域の糖鎖を修飾あるいはo−グリコシル化部位領域を
欠失させたTM様蛋白質、特開平4−210700号公
報に開示されているコンドロイチン及び/又はコンドロ
イチン硫酸を含まないTM様蛋白質などが挙げられる。
さらに、特表平4−505554号公報に開示されてい
るヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター等のアミノ
酸配列の一部を含んでいてもよいTM様蛋白質があげら
れる。
【0017】TM様蛋白質は現在臨床開発中のDIC治
療薬であり、ヘパリンによる治療に付随するような出血
傾向などの副作用も少なく、医薬品としての安全性が高
いことが期待されている(保坂義隆ら、第56回日本血
液学会抄録集、791題、1994)。また、TM様蛋
白質は生体内半減期が長く、医薬品として好ましい体内
動態を示すことが確認されている。
【0018】本発明の製剤は、神経細胞に直接作用し、
その生存維持や神経突起伸展促進等の神経栄養効果を発
揮するTM様蛋白質を含有するので、今まで用いられて
きた脳代謝賦活薬や脳循環改善薬等の対症療法剤と異な
り、種々の神経変性疾患の根本的な病因である虚血、外
傷、老化、或いは原因不明の病因による全般的な、或い
は特定の領域の神経細胞の機能低下、変性、壊死に対
し、直接的にそれを予防したり、再生を促進させること
により疾患の治療に用いることが出来る。神経変性疾患
としては、例えば、中枢の神経変性疾患として、アルツ
ハイマー型痴呆症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏
病、脳外傷あるいは脳損傷による神経障害などがあげら
れる。また、末梢の神経変性疾患として、筋萎縮性側索
硬化症、糖尿病性神経障害、制癌剤による神経障害、ア
ルコール性神経障害などがあげられる。以上の疾患があ
げられるが、この限りでない。また、本発明の治療剤を
他のNTFと適宜組み合わせて併用することもできる。
さらに、神経組織や神経細胞等の移植の際に生着率の改
善や移植後の機能維持等を目的として本発明の治療剤を
生体へ投与したり、あるいは、移植する前の神経組織や
神経細胞等を本発明の治療剤で処理することもできる。
【0019】本発明の有効成分であるTM様蛋白質はi
n vitroにおいて大脳神経細胞の生存を維持する
という、NGFにはない作用を有していることから、よ
り効果的に神経変性疾患の治療剤として用いる事が出来
る。本発明の製剤が生体においても効果を示すことは、
中枢の神経変性疾患モデルとして、例えばクロマー(K
romer)らにより示されている脳損傷病態モデル
(サイエンス(Science)235,214−21
6、1987)等で証明することが出来る。また、末梢
の神経変性疾患モデルとしては、例えば、オッペンハイ
ム(Oppenheim)らにより示されている運動神
経傷害モデル(ネイチャー(Nature)373,3
44−346、1995)等で証明することが出来る。
【0020】本発明のTM様蛋白質および任意のNTF
を有効成分として含有する神経変性疾患治療剤におい
て、TM様蛋白質と組み合わせるNTFの具体例として
は、NGF、bFGF、BDNF、CNTF、ニューロ
トロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロト
ロフィン−5、インターロイキン2、インターロイキン
3、インターロイキン6、IGF−1およびHGF等を
挙げることができる。このうち、NGF、BDNF、ニ
ューロトロフィン−3あるいはIGF−1等が好まし
く、BDNFがさらに好ましい。本発明のTM様蛋白質
を有効成分として含有する神経組織あるいは神経細胞の
移植時の処理剤あるいは保存剤としては、前述のTM様
蛋白質を含有する製剤のいずれの形態であってもよい。
移植時に、直接薬物を移植部位に投与する、あるいは、
移植前の神経組織や神経細胞を栄養液等で保存する際に
本発明の製剤を添加することにより、生着率の向上や生
着後の機能活性の維持がはかられる。
【0021】本発明の製剤は有効成分としてTM様蛋白
質を含有していれば良く、公知のいかなる製剤学的製造
法によっても製造することが出来る。当該TM様蛋白質
は、薬剤として一般的に用いられる適当な担体または、
媒体、例えば滅菌水や生理食塩水、植物油(例、ゴマ
油、オリーブ油)、鉱油、高級アルコール、高級脂肪
酸、無害性有機溶媒(例、エタノール)等、さらには必
要に応じて賦形剤(例、マンニトール)、着色剤、乳化
剤(例、コレステロール)、懸濁剤(例、アラビアゴ
ム)、界面活性剤(例、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ
油系界面活性剤、ポリエチレングリコール系界面活性
剤)、溶解補助剤(例、リン酸ナトリウム)、安定化剤
(例、糖、糖アルコール、アルブミン)または保存剤
(例、パラベン)、吸着防止剤、保湿剤、酸化防止剤、
緩衝剤、等張化剤、無痛化剤等と適宜組み合わせて、生
体に効果的に投与するのに適した注射剤、経鼻吸収剤、
経皮吸収剤、経口剤等の医薬用製剤、好ましくは注射剤
に調製することが出来、これら具体例のいくつかについ
ては公知である。例えば、注射剤の製剤としては、凍結
乾燥品や、注射用水剤や、浸透圧ポンプに封入した形等
で提供できる。
【0022】本発明の製剤は、例えば、動脈内注射、静
脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、脳室内投与、髄腔内
投与、経口投与等の方法によって、例えば、TM様蛋白
質量として一日、約0.01〜10,000μg/k
g、さらに好ましくは、0.1〜1,000μg/kg
となる量を投与したり、浸透圧ポンプ等に封入し生体に
留置することにより連続的に投与することができる。さ
らに本発明の有効成分であるTM様蛋白質をリポソーム
形成物質(特開昭60−243022号公報あるいは特
開昭64−85920号公報)に封入した後、リポソー
ムとして投与することもできる。また、脳室内や髄腔内
にカテーテルを埋め込み、これから直接薬物を投与する
こともできる。さらに、神経組織または神経細胞移植時
の保存液中に、例えば、ヒトTM様蛋白質濃度を約
0.001〜1,000μg/ml、さらに好ましく
は、0.01〜100μg/mlの濃度で添加すること
もできる。
【0023】また、頸動脈よりマンニトールや尿素等の
高張液を注入すると一過性に脳血液関門の透過性が上昇
すること(プロシーディングス オブ ザ ナショナル
アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ ユナ
イテッド ステイツ オブアメリカ(Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA)76、481−48
5、1979)、また、アルキルグリセロール等の物質
に、他の薬物の脳移行性を促進する作用があることが報
告されており(アンジュワンデ ケミ(Angew.C
hem.)23、257−328、1984)、このよ
うな手法を用いて投与することもできる。また、アルブ
ミンに化学修飾を施し、カチオン化したカチオン化アル
ブミンは何等かの機構で脳内に取り込まれる可能性が示
唆されており(ジャーナル オブ クリニカル インベ
スチゲーション(J.Clin.Invest)70
289−295)、このような手法を用いてTM様蛋白
質を化学修飾した後、投与することもできる。
【0024】(取得例)以下にTM様蛋白質の取得例を
挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明に用
いるTM様蛋白質はこれらに限定されるものではない。 取得例1(可溶性TM様蛋白質の取得例:UTM0) ヒト尿中可溶性TM様蛋白質の製造 特開平3−218399号公報に記載された方法に準じ
て調製した。すなわち、原尿100LをNaOHでpH
8.5に調整し、析出した沈殿物を除去した。HClで
pH5.5に調整した後、アクリルニトリル繊維で濾過
して尿中のウロキナーゼを吸着除去し、通過尿を限外濾
過膜を使用して脱塩濃縮した。pHを7.3に調整した
後、60℃で15分間処理した。次いで、DEAEセル
ロース(ワットマン社製)カラム、DIP−トロンビン
−アガロースクロマトグラフィーでおよびセファクリル
S−300(ファルマシアファインケミカル社製)カラ
ムで順次精製し、活性画分を採取した(以下、UTM0
と略す)。この画分は、SDS−PAGE(分子量測定
キット(生化学工業社製、ゲル濾過用)およびフォスフ
ォリラーゼB(ベーリンガーマンハイム社製))で分子
量72,000±3,000および79,000±3,
000に相当する。この画分は一晩蒸留水に対して透析
した後凍結乾燥した。
【0025】取得例2(可溶性TM様蛋白質の取得例:
rUTM) 遺伝子組換え型ヒト可溶性TM様蛋白質の製造 WO92/00325号公報の方法に準じて製造した。
すなわち、ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げ
たDNAを利用してアミノ末端のアミノ酸配列がAla
−Pro−Ala−であるアミノ酸456残基よりなる
可溶性TMを発現するベクターを調製し、これをCHO
細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行って高発現株を得
た。この高発現株の培養液をDIP−トロンビン−アガ
ロースカラムとゲル濾過により精製し目的物を得た(r
UTM)。
【0026】取得例3(可溶性TM様蛋白質の取得例:
RTM) 遺伝子組換え型ヒト可溶性TM様蛋白質の製造 WO92/00325号公報の方法に準じて製造した。
すなわち、ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げ
たDNAを利用してアミノ末端のアミノ酸配列がAla
−Pro−Ala−であるアミノ酸498残基よりなる
可溶性TMを発現するベクターを調製し、これをCHO
細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行って高発現株を得
た。この高発現株の培養液をDIP−トロンビン−アガ
ロースカラムとゲル濾過により精製し目的物を得た(R
TM1、RTM2)。
【0027】(実験例)以下に本発明を詳細に説明する
ために実験例により効果を具体的に説明するが、本発明
はこれらによって、なんら限定されるものではない。 (実験例1:TM様蛋白質による大脳皮質神経細胞に対
する生存維持効果)吉田らの方法(ニューロサイエンス
レターズ(Neurosci.Lett.)66、1
81−186、1986)に従い、胎生15日齢のマウ
ス(静岡実験動物農業協同組合より入手)脳の大脳皮質
より神経細胞を単離して1%牛胎児血清(日本生物材料
センター)を含むDMEM/F12培地(ギブコ社)に
懸濁し、予めポリリジン(シグマ社)をコーティングし
た培養プレートに1平方センチメートルあたり5×10
4 個の密度で播種し、37℃、5%CO2 の条件で培養
した。24時間後に表1のTM様蛋白質を神経細胞の培
養液中に添加した。48時間後に細胞を1%グルタルア
ルデヒド溶液で固定し、細胞数をクリスタルバイオレッ
トを用いた比色定量法(アナリティカル バイオケミス
トリー(Anal.Biochem.)182、16−
19、1989)にて測定した。結果を表1に示す。数
値は播種した細胞数に対する生き残った細胞数の百分率
(%)の平均値で示した。
【0028】表 1 ────────────────────── 添加サンプル(用量) 神経細胞生存率(%) ────────────────────── 無添加(対照) 22 UTM0(200U/mL ) 75 ──────────────────────
【0029】表1から明らかなように、UTM0は明ら
かに神経細胞の生存を維持し、神経栄養効果を示した。
また、rUTM、RTM1およびRTM2も同様の作用
を示す。一方、ウシ血清アルブミンは100μg/mL
あるいは1000μg/mLの添加によっても全く効果
を示さなかった。なお、ヒト尿由来可溶性TM様蛋白質
のマウスにおける急性毒性試験結果は、特開平3−21
8399号公報に開示されており、TM様蛋白質は安全
であることが確認されている。
【0030】
【実施例】以下に本発明の製剤の実施例を示すが、本発
明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1) UTM0 5 mg 精製ゼラチン 50 mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニトール 25 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調製した。
【0031】(実施例2) UTM0 5 mg アルブミン 20 mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニトール 25 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調製した。
【0032】(実施例3) rUTM 10 mg 精製ゼラチン 20 mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニト−ル 25 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調整した。
【0033】(実施例4) RTM1 10 mg 精製ゼラチン 50 mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニトール 25 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調製した。
【0034】(実施例5) RTM2 10 mg アルブミン 20 mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニトール 25 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調製した。
【0035】(実施例6) UTM0 10 mg L−アルギニン塩酸塩 200 mg プルロニックF68 10 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調製した。
【0036】(実施例7) RTM1 10 mg マルトース 100 mg 精製ゼラチン 100 mg プルロニックF68 10 mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 81.8 mg 上記成分を注射用蒸留水10mlに溶解し、無菌濾過し
たあとに1.0mlずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾
燥して注射用製剤を調製した。
【0037】
【発明の効果】本発明の治療剤は神経細胞に対して直接
作用し、その生存促進や神経突起伸展促進等の神経栄養
効果を示すので、種々の神経変性疾患、例えば中枢の神
経変性疾患としてアルツハイマー型痴呆症、パーキンソ
ン病、ハンチントン舞踏病、脳外傷あるいは脳損傷によ
る神経障害などの本質的な治療剤として用いることがで
きる。また、末梢の神経変性疾患として、筋萎縮性側索
硬化症、糖尿病性神経障害、制癌剤による神経障害、ア
ルコール性神経障害などの本質的な治療剤として用いる
こともできる。また、神経組織や神経細胞等の移植の際
に生着率の改善や移植後の機能維持等を目的として本発
明の治療剤を生体へ投与したり、あるいは、移植する前
の神経組織や神経細胞等を本発明の治療剤で処理するこ
ともできる。
【0038】本発明の神経変性疾患治療剤の有効成分で
あるTM様蛋白質は、上記神経変性疾患の根本的な病因
である虚血、外傷、老化、或いは原因不明の病因による
神経細胞の機能低下、変性、壊死に対し、直接的にそれ
を予防したり、再生を促進させることが出来るので、今
まで用いられてきた脳代謝賦活薬や脳循環改善薬等の対
症療法剤に比べて優れており、かつ、NGF等の既存の
神経栄養因子にはない作用を有しているため本質的な神
経変性疾患治療剤として医療に貢献できる。また、本発
明のTM様蛋白質は既存薬に比べて副作用が少ないこと
が期待され、安全な神経変性疾患の治療剤になりうる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】トロンボモジュリン様蛋白質を有効成分と
    して含有することを特徴とする神経変性疾患治療剤。
  2. 【請求項2】前記神経変性疾患が、中枢の神経変性疾患
    である請求項1に記載の神経変性疾患治療剤。
  3. 【請求項3】前記神経変性疾患が、末梢の神経変性疾患
    である請求項1に記載の神経変性疾患治療剤。
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