JP3622015B2 - 肺傷害治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は肺傷害治療剤に関し、より詳細にはHGF(Hepatocyto Growth Factor、肝細胞増殖因子)を有効成分とする肺傷害治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
HGFは本発明者らが再生肝ラット血清中から成熟肝実質細胞を in vitro で増殖させる因子として見いだしたタンパク質である(Biochem Biophys Res Commun, 122, 1450, 1984)。本発明者らはさらに、HGFをラット血小板より単離することに成功し(Proc. Natl. Acad. Sci, 83, 6489,1986, FFBS Letter, 22, 311, 1987)、そのアミノ酸配列を一部決定した。さらに、本発明者らは解明されたHGFアミノ酸配列をもとにヒトおよびラット由来のHGFcDNAクローニングを行い、このcDNAを動物組織に組換えて肝実質細胞増殖因子をタンパク質として得ることに成功した(ヒトHGF:Nature, 342, 440, 1989;ラットHGF:Proc. Natl. Acad. Sci, 87, 3200, 1990)。
【0003】
HGFの分子量はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で82〜85kDである。ラットHGF分子は463アミノ酸残基からなるα鎖と233アミノ酸残基からなるβ鎖が1個のジスルフィド結合により架橋したヘテロダイマー構造を持ち、α、β両鎖とも2個のグルコサミン型糖鎖結合部位が存在する。ヒトHGFもまたほぼ同じ生理活性を有し、463アミノ酸残基からなるα鎖と234アミノ酸残基からなるβ鎖とからなる。α鎖中には線溶酵素プラスミンと同様のクリングル構造が4個存在し、β鎖のアミノ酸配列においてもセリンプロテアーゼ活性を有するプラスミンのB鎖と約37%のホモロジーを有する。ラットHGFとヒトHGFのアミノ酸配列のホモロジーはα鎖において91.6%、β鎖において88.9%と非常に高い相同性を持ち、その活性は全く互換性がある。
【0004】
肝実質細胞を特異的に増殖させる因子として発見されたHGFは、本発明者をはじめとする研究者による最近の研究成果によって、生体内で種々の活性を示している事が明らかとなり、研究対象としてのみならずヒトや動物の治療薬などへの応用に期待が集まっている。
本発明者らは、HGFが増殖因子として肝細胞のみならず広く上皮系細胞に働く事を明らかにし、いくつかの発明を成就した。特願平2−158841号においては、HGFが腎の近位尿細管細胞の増殖を促進することより、腎疾患治療剤としての応用開発を、また特願平2−419158号においては、HGFがメラノサイト、ケラチノサイトなど正常上皮細胞の増殖を促進することより、上皮細胞促進剤として創傷治療や皮膚潰瘍治療、毛根細胞の増殖剤などへの応用開発を成就し、その詳細を開示した。特に、HGFはEGF等他の多くの増殖因子に見られるガン化作用やガン細胞増殖活性を有さないことから、より実用に適している。さらに本発明者らは、特願平3−140812号においてHGFのヒト肝ガン由来HepG2細胞株、リンパ芽球ガン由来IM9細胞株などのガン細胞増殖抑制活性を利用し、制ガン剤としても利用可能であることを開示した。
【0005】
HGFの医薬品としての実用性を考える上でさらに重要な点は、HGFがG1期、すなわち増殖期に入った細胞のみを増殖促進し、G0期、すなわち静止期にある細胞には作用しないことである。このことは、傷害のある組織の増殖再生は促進するが、傷害を受けていない組織に対しては全く作用を及ぼさないことを意味する。従って、過剰にHGFを投与しても、あるいは血液などを介して非患部にHGFが到達しても、正常組織にガン化を誘導したり過剰な増殖を起こすことがないと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のようにHGFが肝細胞だけでなく広く上皮細胞の増殖を促進し、またガン細胞の増殖抑制活性を有することから、生体内ではHGFが組織傷害治癒に働いていることが予想される。HGF産生細胞は上皮細胞自身ではなく、肝臓ではKupffer細胞や類洞壁血管内皮細胞、腎臓では毛細血管内皮細胞、肺では肺胞マクロファージや血管内皮細胞など主に間葉系の細胞により産生されていることが解明されており、近隣細胞から必要に応じてHGFが供給される、いわゆるパラクリン機構が成立していることが明らかにされている。
しかしながら、肝臓や腎臓に傷害を受けたとき、傷害を受けていない臓器、例えば肺などにおいてもHGFの産生が高まることから、いわゆるエンドクリン機構によってもHGFが供給されていると考えられる。
【0007】
このように、肺で産生されたHGFは、少なくとも肝臓や腎臓などの遠隔臓器の組織修復に寄与しているが、肺に傷害が加わった時にHGFが肺の再生に寄与するか否かは明らかにされていない。肺傷害疾患としては、例えば、肺炎、肺気腫、肺結核、慢性閉塞性肺疾患などが挙げられるが、特に、肺の繊維化による傷害(例えば、塵肺など)、免疫力の低下した患者や老人の罹患する嚥下性肺炎等は予後不良の経過をとることがあり、その予防・治療法の確立が強く望まれている。本発明者は、肺にもHGFレセプターが存在しており、またHGFの標的細胞の多くは上皮細胞系であることから、肺自身に傷害が加わった時にHGFが肺の再生に寄与し、上記の疾患の予防・治療に有効であろうと思考し、急性肺傷害を起こした時の肺におけるHGFの作用を検討した。その結果、傷害が加わることによって肺でHGFが新たに産生され、またHGFが肺のHGFレセプターを介して肺の上皮細胞におけるDNA合成を促進すること及びヒト血中HGF濃度は肺疾患患者において著しく上昇していることを見出し、さらに肺傷害を起した動物にHGFを投与すると、肺組織での細胞増殖が上昇し、肺傷害の修復が促進されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、本発明は、肺傷害の予防・治療に有用な肺傷害治療剤を提供すること目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の肺傷害治療剤は、HGFを有効成分として含有することからなる。
上記の構成からなる本発明の有効成分であるHGFは、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法で調製されたものを用いることができる。HGFの調製方法としては、各種の方法が知られており、例えば、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤等の臓器、血小板、白血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して得ることができる。また、HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞など)から分離精製してHGFを得ることもできる。あるいは遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養物から目的とする組換えHGFを得ることができる(例えば、Nature, 342, 440, 1989など参照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞などを用いることができる。
【0009】
より具体的には、HGFを生体組織から抽出精製する方法としては、例えば、ラットに四塩化炭素を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を摘出して粉砕し、S−セファロース、ヘパリンセファロースなどのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC等の通常の蛋白質精製法にて精製することができる。また、遺伝子組換え法を用い、ヒトHGFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を、ウシパピローマウィルスDNAなどのベクターに組み込んだ発現ベクターによって動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスC127細胞、サルCOS細胞などを形質転換し、その培養上清より得ることができる。
【0010】
かくして得られたHGFは、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が同様に欠失又は置換されていてもよい。かかるHGF同効物としては、例えば、特開平3−130091号公報、国際公開WO90/10651号公報などに記載の物質が挙げられ、これらも本発明に適用でき、本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明の製剤は種々の製剤形態(例えば、液剤、固形剤、カプセル剤など)をとりうるが、一般的には有効成分であるHGFのみ又はそれと慣用の担体と共に注射剤とされるか、又は慣用の担体と共に外用剤、坐剤、吸入剤、経鼻剤とされる。当該注射剤は常法により調製することができ、例えば、HGFを適切な溶剤(例えば、滅菌水、緩衝液、生理食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。注射剤中のHGF含量としては、通常0.0002〜0.2(W/V%)程度、好ましくは0.001〜0.1(W/V%)程度に調整される。また、外用薬としては、例えば、軟膏状、ゲル状、液状などの剤形に製剤化され、製剤中のHGF含量は、外用薬の適用疾患、適用部位などに応じて適宜調整することができる。坐剤、吸入剤および経鼻剤は、製剤化の常法に準じて調製することができる。
製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。さらに、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等を含んでいてもよい。液状製剤とした場合は凍結保存、又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使用される。
本発明の製剤は、該製剤の形態に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、注射剤の形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内等に投与することができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などにより適宜調整されるが、通常HGFとして0.01mg〜100mgであり、これを1日1回ないし数回に分けて投与するのが適当である。
【0012】
【発明の効果】
本発明の治療剤において、有効成分であるHGFは肺胞の上皮細胞の増殖を促進し、傷害を受けた肺の再生を図ることができる。従って、本発明の治療剤は、慢性及び急性肺疾患(例えば、肺炎、肺気腫、肺結核、慢性閉塞性肺疾患、塵肺嚥下性肺炎など)の予防・治療に有用である。
【0013】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実験において使用した材料及び方法は、以下の通りである。
【0014】
動物の処理:
成熟したウィスター系雄性ラット(体重150−250g)をエーテルにより麻酔した。頸部が切開され、かつ気管が露出せしめられた。急性の肺傷害を生じせしめるために18ゲージのelasterニードルを気管に突き刺し、次に、0.1M HClを2ml/kg体重の割合で主として左肺に注入した。
【0015】
ノザンブロット分析:
HClにより急性の肺傷害を生じせしめられたラットからAGPC法を用いて、全RNAが分離された。全RNAの10μgが1.0%のアガロース/ホルムアルデヒドゲル上でのゲル電気泳動に用いられ、かつHybond−Nメンブランフィルター(Amercham)に移した。ラットHGF cDNAのEcoRI部分、5’−部分をコード化するRBC−1クローン、並びにα−チェーンの第4Kringle領域、HGFの全β−チェーン及び3’−非コード化領域の一部がMegaprimeDNAラベリングシステム(Amercham)を用い、メーカーの指示に従ってラベリングされた。ハイブリッド化は、42℃の50%(volume/volume)ホルムアルデヒド、5×SSPE(1×SSPEはNaClの0.15M、リン酸ナトリウム緩衝液の10mM(pH7.4)及びEDTAの1mMからなる)、2×Denhardtの溶液、0.5%SDS及び50μg/mlの鮭精子DNAからなる溶液の中で20時間にわたって行われた。フィルターは、0.2×SSPE−0.1%SDSを用い、65℃で15分間洗浄し、乾燥し、次にフジX線フィルムにオートラジオグラフを作成された。
【0016】
肺から採取されたHGFの部分的純化処理:
HGF作用を純化するために肺が10mMのトリス−HCl、0.3M NaCl、及びプロテアーゼインヒビター(1mM PMSF、1mMのモノヨードアセテート及び1mMのEDTA)を含む0.01% Tween80からなる緩衝液4部の中でホモジナイズされた。105,000gで60分間遠心処理を施した後に上澄み液が上記の緩衝液の100倍に対して透析され、かつ同じ緩衝液に平衡状態化されているヘパリン−セファロースカラムに施された。カラムは同じ緩衝液の6部を用いて洗浄され、次に緩衝液中の2MのNaClの2部により溶出された。溶出物は、2mMのHEPES−NaOH(pH7.2)及び20mMのNaClからなる緩衝液の100倍に対して透析され、冷凍乾燥され、次に蒸留水の0.3部に溶かされた。これらのサンプルは、0.22μm穴径フィルター(Millipore)をとおし、かつHGF活性の検定に用いられた。
【0017】
HGF活性の検定:
HGF活性は、初代培養のラット肝細胞のDNA合成に対する刺激効果を測定することによりもとめられた。成熟ラットの肝細胞がその位置でのコラゲナーゼ灌流法を用いて分離された。分離された細胞は、タイプIのコラーゲンをコートされた24穴のプラスチックディッシュ(Corning)上で6.25×10セル/0.5ml/2cmの密度で播種され、、5%牛血清、10−5Mのインスリン及び10−9Mのデキサメサゾンを含むWilliamの培地の中で3時間培養され、次に培地は10−9Mのインスリン、10−9Mのデキサメサゾンおよび0.1μg/mlのアプロチニンを含み、血清を含まぬWilliamの培地に変えられた。20時間後にサンプルが培養に加えられ、更に20時間にわたって培養された。次に培養された細胞は[125I]−デオキシウリジンの1μCiを用いて、6時間パルスラベリングされ、リン酸塩緩衝液(PBS)及び10%トリクロロアセテートを用いて洗浄され、かつ1MのNaOHを用いて可溶化された。[125I]−デオキシウリジンの核への移行はγ−カウンターを用いてカウントされた。1単位は培養ラット肝細胞の中のDNA合成に対する10ng/ml EGFによる刺激効果の最大値の1/2に相当する値である。
【0018】
組織変化及びラベリングインデックスに対する効力検定:
5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU、Sigma)が50μg/kg体重のラットの腹腔内に注入され、1時間後に死亡せしめ、次に肺を10%エタノールで24−48時間にわたり固定され、次にパラフィンに埋められたHClによる肺の組織変化を調べるために4μm厚みの切片がパラフィンから取り出され、且つヘマトキシリンとエオシンで染められた。ラベリングインデックスを効力検定するために切片は室温(RT)下で1時間にわたり2MのHCl中に浸漬されることにより、DNAを変成し、0.1Mの硼酸塩緩衝液(pH8.5)中で中和され、PBS中で5%の馬血清を用いてブロックされ、次にPBSにより1/50に希釈された。
抗−BrdUモノクローナル抗体(Beckton Dickinson)とともに、室温下で1時間インキュベートされた。切片は、PBSにより洗浄され、次に1/200に希釈されたビオチン−結合された馬抗マウスIgG抗体(vector)とともに室温下で1時間インキュベートされた。洗浄後組織は、1/100に希釈され、アルカリフォスファターゼで結合されたストレプロアビジン(Dako)とともに室温で1時間インキュベートされた。酵素反応が0.2M トリス−HCl(pH8.2)、250μg/ml 1−levamisole(Sigma)、0.01%の新しいフクシン(Merck)、0.01%の亜硝酸ナトリウム及び250μg/mlナフトールAS−BIリン酸塩(Sigma)を含む0.25%、N,N−ジメチルホルムアミドからなる緩衝液中で開始された。切片は、PBSにより洗浄され、10%ホルマリンにより固定され、かつヘマトキシリンにより対比染色された。ラベリングインデックスは、気管支上皮、及び肺胞各壁の細胞において3個体の独立した3−6領域内でカウントされた。
【0019】
肺からの細胞膜に結合された[125I]−HGFに対する効力検定:
ラットの肺から分離された細胞膜は、遠心作用により下記の如くpercoll gradient上に準備された。肺は、0.25M シュクロース、10mM トリス−HCl(pH7.5)及び2mM EDTAからなるSTE緩衝液中でホモジナイズし、次に30秒間1,000gで遠心分離された。上澄みが10分間5,000gで遠心分離され、次にSTE緩衝液中に再懸濁せしめられた。得られた粗メンブラン画分はpercoll solution(17:1)上に層状化され、かつ20分間10,000gで遠心分離された。
50μgの細胞膜は、クロラミン−T法により組換体ヒトHGFのヨウ素化により作られた[125I]−HGFとともに1時間10℃で100mlの結合緩衝液の100ml中でインキュベートされた。この緩衝液は、10mMのHEPES、6.4nMのラベリングされぬHGFを持ち、又は持たぬ[125I]−HGFを含むハンクスの0.2%牛血清アルブミンを持って構成される。メンブランは、10分間12,000gで4℃下で遠心分離され、結合緩衝液の10μlを用いて再懸濁せしめられ、次に新しい試験管に移された。メンブランに結合する[125I]−HGFは、γ−カウンターでカウントされた。すべての結合に関する実験は、裏付け実験を併せて行われた。
【0020】
ヒト血液中のHGF濃度の検定:
ヒト血液中のHGF濃度を測るためのサンドイッチRIA法の効果を確認した。簡単に説明すると、抗−ヒト−HGFモノクローナル抗体をコートされたビーズが、1/2−希釈されたヒト血清とともに一晩室温下で振盪しながらインキュベートされた。洗浄後ビーズは、[125I]−結合されたヒトHGFモノクローナル抗体とともに4時間室温下で振盪しながらインキュベートされた。ビーズは洗浄され、別の試験管に移され、次にビーズに結合した[125I]がγカウンターにおいてカウントされた。HGFの濃度は、組換体ヒトHGFによる標準曲線から求められた。
【0021】
実施例1
塩酸肺傷害を受けたラットにおけるHGFmRNAのノザンブロット分析
塩酸肺傷害を受けたラットの肺から、AGPC法により経時的にRNAを抽出し、前記の方法に準じて、ノザンブロットによりHGFmRNAの発現量を調べた。その結果を図1に示す。
図1に示されるように、ラットの肺においては、正常時においてもHGFmRNAの比較的強い発現が認められており、その発現量は塩酸投与後わずか3時間で正常時の2倍以上となり、6時間で若干減少した後再び増加し、12時間後には正常時の3倍以上になった。HGFmRNAは24時間後には正常時の約2倍程度にまで減少するが、それ以降は少なくとも1週間後までは同レベルで推移した。
【0022】
実施例2
塩酸肺傷害を受けたラットの肺のHGF活性の変化
塩酸肺傷害を受けたラットの肺から、経時的にHGFを分離し、ヘパリン−セファロースクロマトグラフィーにより部分精製した後、前記の方法でHGF活性を測定した。その結果を図2に示す。
正常時の肺におけるHGF活性は67U/g組織であったが、塩酸投与後の肺のHGF活性は速やかに上昇し、傷害6時間後のHGF活性は約130U/g組織になった。HGF活性は12時間後には若干減少するが、24時間後には再び上昇した。その後HGF活性は徐々に減少し、1週間後にはほぼ正常レベルに戻るという2相性の経過を示した。
【0023】
実施例3
塩酸肺傷害を受けたラットの肺のラベリングインデックスの経時変化
塩酸肺傷害後の各経過時間において、in vivoでBrdUを取り込んだ細胞、すなわちS期にある細胞の割合をラベリングインデックスで調べ、図3に示した。気管支上皮細胞(図中、●印)におけるラベリングインデックスは正常状態では0.95%であったが、塩酸投与後12時間より増加し始め、24時間後には12.95%でピークとなった。その後ラベリングインデックスは次第に減少し、1週間後には正常時とほぼ同じレベルに戻った。一方、肺胞を構成する細胞(図中、○印)のラベリングインデックスは正常時には1.42%であったが、塩酸投与の24時間後から次第に増加し、48時間後に11.74%でピークとなった。その後は次第に減少し、1週間後にはほぼ正常レベルに戻った。
【0024】
実施例4
塩酸肺傷害を受けたラットの肺の細胞膜に対する[ 125 I]−HGFの結合量変化
塩酸を経気管的に左肺に投与し、傷害後の様々な経過時間の左肺より得られた細胞膜(PM)画分の単位蛋白あたりの特異的HGF結合量を調べた。[125I]−HGFの細胞膜画分に対する特異的結合量は総結合量の約10%であり、解析が可能であった。その結果を図4に示す。図4に示した各値は独立した2回の実験の平均である。図4に示したようにHGFの特異的結合量は塩酸投与後3時間で正常時の約68%、6時間で約26%、12時間で検出限界以下にまで減少し、そしてそのレベルは48時間後まで持続した。その後、特異的結合は、72時間後で正常時の約24%、1週間後で正常時の約88%に回復した。Insetに示すScatchard解析では、正常肺でのKd値が58pM、Bmaxが1530site/μg protein、塩酸投与後3時間の肺でのKd値が51pM、Bmaxが1050site/μg proteinであった。即ち、細胞膜画分に対する[125I]−HGFの特異的結合量の減少はレセプターのHGFに対するAffinityが変化したことに伴うものではなく、レセプター数が減少したことに伴うものであることが示された。
図5は、肝臓(図中、△印)、腎臓(図中、▲印)、脾臓(図中、○印)の細胞膜画分における[125I]−HGFの特異的結合量を示しているが、塩酸投与後HGFの特異結合量が減少するのは肺(図中、●印)のみで、他の臓器では変化しなかった。すなわち肺で産生されたHGFは肺自身のレセプターにのみ結合することが明らかになった。
【0025】
実施例5
健常人及び肺疾患患者血液中におけるHGF濃度の測定
健常人及び肺疾患患者血液中におけるHGF濃度を前記のサンドイッチRIA法で測定した。その結果を図6に示す。図6に示されるように、健常人197例に関して、サンドイッチRIA法で求めた血中HGF濃度は0.33±0.10ng/mlであった。これに対し、種々の肺疾患患者22例の血中HGF濃度は、1.22±1.01ng/mlと上昇していた。なかでも、珪肺症の1例は4.10ng/ml、肺化膿症の1例は2.84ng/mlと非常な高値を示した。肺炎患者7例については、1.06−2.80ng/mlに分布していた。
【0026】
実施例6
肺傷害ラットに対するHGFの投与効果
肺傷害ラットにHGFを投与したときの効果を下記の方法で試験した。
▲1▼材料と方法
ウィスター系雄性ラット(SPF)体重150〜250gをペントバルビタールによる麻酔下、頸部を切開し気管を露出した。急性の肺傷害を生じさせるために20ゲージのエラスターニードルを気管に突き刺し、次に、0.01M塩酸/生理食塩液を2ml/kg体重の割合で主として左肺に注入した。
HGFは、0.25%BSA及び0.01%Tween80を含み、Ca2+及びMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩液(PBS(−))を溶媒として1mg/mlになるように溶解した。このHGF溶液を塩酸投与直後と12時間後に2.5mg/kg体重/回の割合で尾静脈より投与し、コントロール群には溶媒のみを同様に投与した。実験は一群10匹で行った。
塩酸投与から22時間後に、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)と5−フルオロ−2’−デオキシウリジンを10:1の割合で含む溶液(Cell proliferation kit labelling reagent、Amersham)を10ml/kg体重の割合でラットの腹腔内に注入し、2時間後にエーテル麻酔下、腹動脈より脱血し屠殺した。次に、左肺を4%パラホルムアルデヒト/PBS(−)で3〜5時間固定し、その後、肺門付近の領域を切り出してパラフィンで包埋した。このパラフィンブロックよりマイクロトームにて厚さ2μmの肺切片を切り出し、シランコートスライドグラスに付着させ、キシレンにて脱パラフィンした。このように調製した肺組織切片についてCell proliferation kit(Amersham)を用いて、細胞核に取り込まれたBrdUを免疫染色するとともに、ヘマトキシリンにより肺組織切片の2重染色を行った。
次に、免疫染色した肺門付近の切片の任意の気管支上皮細胞1000〜2000個について顕微鏡(200倍)観察下で、核が黒色に染まったものをBrdU陽性細胞として計数し、全細胞中の陽性細胞数の割合(%)を求め、ラベリングインデックスとした。肺と同様に脾臓を処理し、脾臓中央部を横切るように切片を作成し、この切片を肺と同様に染色しBrdU陽性細胞のみられない個体はラベリング試薬が確実に腹腔内に投与されなかったものとして検討の対象からはずした。統計処理は、スチューデント(student)のt検定を用いた。
【0027】
▲2▼結果
塩酸による肺傷害後のHGF投与によるラベリングインデックスの変化を、肺内の気管支上皮細胞において検討した。その結果を図7に示す。ここでラベリングインデックスの解析の対象としたラットは、HGF投与群、コントロール群とも8個体であった。コントロール群の気管支上皮細胞のラベリングインデックスは、4.15±1.33%であった。これに対して、HGF投与群は8.36±0.92%で有意に上昇していた(p<0.001)。なお、無処理の正常ラットの肺門付近の気管支上皮細胞におけるラベリングインデックスを4匹のラットで調べたところ、0.71±0.08%であった。
HGF投与による塩酸肺傷害ラットにおける気管支上皮細胞のラベリングインデックスの上昇は、傷害を起こした肺組織での細胞増殖の上昇を示しており、HGFによる肺傷害修復促進作用を示していると考えられた。これによりHGFの肺傷害治療剤としての可能性が示唆された。
【0028】
製剤例1
生理食塩水100ml中にHGF1mg、マンニトール1g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0029】
製剤例2
0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaCl及び0.01%ポリソルベート80含有、pH7.4)100ml中にHGF1mgとヒト血清アルブミン100mgを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0030】
製剤例3
注射用蒸留水100ml中にHGF1mg、ソルビトール2g、グリシン2g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】塩酸肺傷害を受けたラットにおけるHGFmRNAのノザンブロットを示す図である。
【図2】塩酸肺傷害を受けたラットの肺のHGF活性の変化を示す図である。
【図3】塩酸肺傷害を受けたラットの肺のラベリングインデックスの経時変化を示す図である。
【図4】塩酸肺傷害を受けたラットの肺の細胞膜(PM)に対する[125I]−HGFの結合量変化を示す図である。
【図5】塩酸肺傷害を受けたラットの肝臓(図中、△印)、腎臓(図中、▲印)、脾臓(図中、○印)の細胞膜(PM)画分における[125I]−HGFの特異的結合量を示す図である。なお、図中、●印は肺細胞膜に対する[125I]−HGFの結合量を示す。
【図6】健常人及び肺疾患患者血液中におけるHGF濃度の測定結果を示す図である。
【図7】塩酸肺傷害を受けたラットに対するHGFの投与効果を示す図である。

Claims (1)

  1. HGFを有効成分として含有することを特徴とする肺傷害治療剤。
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