JPH0829114B2 - 7−アミノセフアロスポラン酸およびその誘導体の製造法 - Google Patents

7−アミノセフアロスポラン酸およびその誘導体の製造法

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JPH0829114B2
JPH0829114B2 JP61218057A JP21805786A JPH0829114B2 JP H0829114 B2 JPH0829114 B2 JP H0829114B2 JP 61218057 A JP61218057 A JP 61218057A JP 21805786 A JP21805786 A JP 21805786A JP H0829114 B2 JPH0829114 B2 JP H0829114B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は7−アミノセファロスポラン酸(以下、7−
ACAと略す)およびその誘導体の酵素的手段による製造
方法に関するものである。
〔従来の技術〕 醗酵生産によって得られるセファロスポリンCは7位
アミノ基に結合したアシル基を除去する反応(以下、脱
アシル化と略す)により7−ACAに誘導され、これを出
発原料として種々のセファロスポリン系抗生物質が合成
され、医薬品として実用に供されている。
セファロスポリンCの脱アシル化方法としては化学的
方法および酵素的方法があるが、化学的脱アシル化法
(例えば特公昭41−13862号および特公昭45−40889号の
方法)は反応工程が多く、反応に用いる試薬のコストが
高いこと、反応の副産物として大量の化合物が排出され
ることなど工業的に欠点が多いことが知られている。
酵素的脱アシル化法としてはセファロスポリンCの7
位側鎖7β−(D−5−アミノ−5−カルボキシペンタ
ンアミド)基のD−5−アミノ基にグリオキシル酸を作
用させた化学的に脱アミノ反応を行なう特公昭55−1291
0の方法、あるいは微生物酵素を作用させて脱アミノ反
応を行なう特公昭50−7158の方法などにより、セファロ
スポリンCを7β−(5−カルボキシ−オキソペンタン
アミド)セファロスポラン酸に誘導し、ついで過酸化水
素を作用させることにより脱炭酸反応を行なわせて7β
−(4−カルボキシブタンアミド)セファロスポラン酸
(通称グルタリルアミドセファロスポラン酸。以下、グ
ルタリル7−ACAと略す)に誘導しておき、更にシュー
ドモナス属(Pseudomonas)細菌の生産する酵素(文
献:シブヤ(Shibuya)ら(1981)アグリカチュラルバ
イオロジカルケミストリー(Agricultural Biological
Chemistry)45,1561−1567)を作用させることにより脱
アシル化反応を行なわせ、7−ACAへ誘導する方法があ
る。この方法は化学的脱アシル化法の問題点の多くを解
決できるが、3段の反応であるため、より勝れた酵素的
な一段反応による方法の開発が望まれていた。
セファロスポリンCを直接脱アシル化して7−ACAを
得る方法としては、アクロモバクター属(Achromobacte
r)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)あるい
はフラボバクテリウム属(Flavobacterium)の細菌を用
いるアメリカ特許No.3239394(1966)の方法、アスペル
ギルス属(Aspergillus)あるいはアルタナリア属(Alt
ernaria)の真菌を用いる特開昭52−143289の方法、シ
ュードモナス属の細菌を用いる特開昭53−94093号の方
法、ペシロミセス属(Pecilomyces)の真菌を用いる特
開昭59−44392の方法およびシュードモナス属の新種に
属する細菌を用いる特開昭61−21097の方法がある。さ
らにはシュードモナス属の細菌からクローニングされた
セファロスポリンCアシラーゼの遺伝子を含む大腸菌の
形質転換体を用いる特開昭61−152286の方法がある。
〔発明が解決しようとしている問題点〕
一般に微生物の培養物、その菌体処理物あるいは抽出
物による酵素反応を工業的に利用するためには、これら
の調製が容易であること、安価であること、あるいはこ
れの諸性質がすぐれていることなどの特長が必要とされ
ている。しかし上記の従来の方法で工業的にセファロス
ポリンCを直接脱アシル化することに成功した例はいま
だに知られていない。
〔問題点を解決するための手段および作用〕
本発明者らは上記の問題点を解決するため、セファロ
スポリンCから酵素的に1段の工程で7−ACAを生成さ
せる研究を行なってきた。この過程でコマモナス属(Co
mamonas)細菌よりグルタリル7−ACAを水解する能力を
有する7β−(4−カルボキシブタンアミド)セファロ
スポラン酸アシラーゼ(以下グルタリル7−ACAアシラ
ーゼと称す)の遺伝子を分離して大腸菌に導入し、この
酵素を著量生産させることに成功した(特開昭60−1102
92)。さらにトリゴノプシス属(Trigonopsis)酵母か
らセファロスポリンCを酸化する能力を有するD−アミ
ノ酸オキシダーゼ遺伝子を分離して大腸菌に導入し、こ
の酵素を著量生産させることに成功した〔特開昭61−21
5878(特開昭63−71180)〕。更に本発明者らが鋭意研
究を行なった結果、上記のD−アミノ酸オキシダーゼ遺
伝子とグルタリル7−ACAアシラーゼ遺伝子を含む単一
の大腸菌の培養物を同時にセファロスポリンCに作用さ
せると意外にも一段の工程で7−ACAが生成することを
見出した。これらの知見にもとづき本発明を完成するに
到った。
すなわち本発明によれば、一般式(I) (式中Rは−OCOCH3、−Hまたは−OHである)で表さ
れる化合物またはその塩を脱アシル化して一般式(II) (式中Rは前記と同じ意味を有する)で表わされる化
合物またはその塩を生成する7−ACAおよびその誘導体
を製造方法において、前記(I)で表される化合物に、
D−アミノ酸オキシダーゼ及びグルタリル7−ACAアシ
ラーゼを発現する単一の大腸菌の培養物を含む酵素混合
物を過酸化水素の存在下または非存在下に水性媒体中で
作用させることを特徴とする7−ACAおよびその誘導体
の製造方法が提供される。
本発明の方法は、一般式(I)で表わされる化合物ま
たはその塩と、組換えDNA技術により単一の大腸菌に産
生せしめたD−アミノ酸オキシダーゼ及びグルタリル7
−ACAアシラーゼを含む酵素混合物とを水性媒体中で混
合し、これらの酵素が作用により一般式(II)で表わさ
れる化合物またはその塩を製造するものである。
本発明の方法で出発物質として用いる一般式(I)で
表わされる化合物またはその塩及び本発明の方法で得ら
れる最終生成物である一般式(II)で表わされる化合物
またはその塩に関し、一般式(I)及び(II)中、Rが
−OCOCH3の場合のものがそれぞれセファロスポリンC及
び7−ACAを示す。本発明において一般式(I)及び(I
I)で表わされる化合物の塩としては例えば、ナトリウ
ム塩やカリウム塩などが挙げられる。
本発明で用いられる酵素混合物としては、D−アミノ
酸オキシダーゼ遺伝子とグルタリル7−ACAアシラーゼ
遺伝子を含む組換え体DNAで形質転換された単一の大腸
菌においてD−アミノ酸オキシダーゼおよびグルタリル
7−ACAアシラーゼを発現するものであって、この単一
の大腸菌の培養物またはその処理物との混合物を用いる
ことができる。例えば好適には、D−アミノ酸オキシダ
ーゼ遺伝子を含む組換え体DNAおよびグルタリル7−ACA
アシラーゼ遺伝子を含む組換え体DNAを共存させて保有
する単一の大腸菌の形質転換体を造成し、その培養物ま
たはその処理物を用いることもできるし、D−アミノ酸
オキシダーゼ遺伝子およびグルタリル7−ACAアシラー
ゼ遺伝子を単一のベクター上に含む組換え体DNAを造成
し、これにより形質転換された単一の大腸菌の培養物ま
たはその処理物を用いることもできる。尚、D−アミノ
酸オキシダーゼ遺伝子を含む組換え体DNAおよびグルタ
リル7−ACAアシラーゼ遺伝子を含む組換え体DNAを共存
させて保有する単一の大腸菌の形質転換体を造成するに
は互いに不和合性の異なるグループに属する2種類のプ
ラスミドをベクターとして用い、各々に上記の2種の遺
伝子を別々に含む組換え体DNAを造成し、得られた2種
の組換え体DNA両者で同時に一種の大腸菌を形質転換す
ればよい。
前述のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子としては例え
ば、酵母トリゴノプシス・バリアビリス(Torigonopsis
variabilis)CBS4095由来のものがあげられ、またグ
リタリル7−ACAアシラーゼ遺伝子としては例えば、コ
マモナス・エスピー(Comamonas sp.)SY−77−1(微
工研菌寄第2410号)由来のものがあげられる。トリゴノ
プシス・バリアビリス由来のD−アミノ酸オキシダーゼ
遺伝子及びその遺伝子を含む組換え体DNAは例えば特願
昭61−215878(特開昭63−71180)号に記載されている
方法により得ることができる。即ち、以下のようにして
取得することができる。
(1)トリゴノプシス・バリアビリスCBS 4095から全DN
Aを抽出し、制限酵素で切断した後、ベクターに組みこ
み、大腸菌に導入し、DNAライブラリーを作成する。ト
リゴノプシス・バリアブリスCBS 4095は寄託機関である
セントラール・ビユーロー・フォーア・シメルカルチュ
レス(Centraal Bureau voor Schimmel−cultures)、
オランダ国に寄託番号4095号の下に寄託されている酵母
である。
(2)トリゴノプシス・バリアブリスCBS 4095からセフ
ァロスポリンCを酸化する能力をもつD−アミノ酸オキ
シダーゼを抽出・精製し、アミノ基末端アミノ酸配列を
決定する。
(3)得られたD−アミノ酸オキシダーゼのアミノ基末
端アミノ酸配列の一部分について、これにより推定され
る遺伝子のDNA塩基配列をもつオリゴヌクレオチドの混
合物を合成し、これをDNAプローブとする。
(4)DNAプローブを32Pでラベルし、前記(1)で得ら
れたDNAライブラリーとコロニー・ハイブリダイゼーシ
ョンを行なわせ、DNAプローブと相補性を示した大腸菌
のコロニーを選択・分離する。
(5)選択された大腸菌の菌株からプラスミドDNAをと
りだし、ベクターに組みこまれたトリゴノプシス・バリ
アビリスCBS 4095由来のDNAの塩基配列を決定する。
(6)決定されたDNA塩基配列中にD−アミノ酸オキシ
ダーゼのアミノ基末端アミノ酸配列を正しくふくむアミ
ノ酸配列の読取り枠を見出し、これをふくむDNA断片に
適当な修飾をほどこした上で、大腸菌の遺伝子発現のた
めのベクターに組みこみ、発現用の組換え体DNAを造成
する。
また、コマモナス・エスピー由来のグルタリル7−AC
Aアシラーゼ遺伝子及びその遺伝子を含む組換え体DNAは
例えば特開昭60−110292号に記載されている方法により
取得することができる。即ち、以下のようにして得るこ
とができる。
1)コマモナス属細菌SY−77−1(微工研菌寄第2410
号)の菌体より全DNAを抽出し、制限酵素で切断する。
2)ベクターDNAを制限酵素で切断・開裂させる。
3)ベクターDNAの開裂部位に1)で得たDNA断片を組込
ませ、閉環した組換え体DNAをつくる。
4)組換え体DNAを宿主たる大腸菌に導入する。
5)組換え体DNAを導入させた大腸菌の中から、グルタ
リル7−ACAアシラーゼ活性を有する菌株を選択分離す
る。
6)選択された大腸菌の菌株よりプラスミドDNAをとり
出し、制限酵素および再結合酵素あるいは他のベクター
を用いて改変し、グルタリル7−ACAアシラーゼ遺伝子
の発現が増大するようになった組換え体DNAをつくる。
7)改変された組換え体DNAを大腸菌に導入し、その後
導入された大腸菌の中からグルタリル7−ACAアシラー
ゼ産生能の増大した株を選択分離する。
尚、前記2種の遺伝子の調製、それらを含む組換え体
DNAならびにその組換え体DNAで形質転換転換された大腸
菌の調製は通常の公知の組換えDNA技術により行なうこ
とができる。
以上のようにして得られる大腸菌を通常の培養条件で
培養することによりD−アミノ酸オキシダーゼおよびグ
ルタリル7−ACAアシラーゼを、両者を同時に著量含む
培養物が得られる。得られた培養物はそのまま用いても
よいし、この培養物を例えば菌体を集めて破砕して酵素
を抽出したり、それを液体クロマトグラフィーや等電点
電気泳動等に供するなどの公知の常用手段を用いる精製
処理に付すことにより、部分精製もしくは実質的に完全
に精製したD−アミノ酸オキシダーゼおよびグルタリル
7−ACAアシラーゼを調製してこれを用いてもよい。
上記両酵素活性を有する培養物またはその部分的また
は実質的に完全に精製した両酵素を含む混合物を酵素混
合物として用いて化合物(I)またはその塩に作用させ
ることにより、化合物(II)またはその塩を効率よく生
成させることができる。この反応は水性媒体中で行なわ
れ、反応時のpHは7.0〜8.5を、温度は20〜40℃を維持す
ることが好ましい。本発明の方法で用いられる水性媒体
としては例えば水およびリン酸緩衝液などの緩衝液など
があげられる。
本発明の方法により、化合物(I)またはその塩から
化合物(II)またはその塩を製造するメカニズムを化合
物(I)においてRが−OCOCH3である場合、即ちセファ
ロスポリンCである場合を例にとって説明すると以下の
ようになる。
まず、セファロスポリンCが酵素混合物中のD−アミ
ノ酸オキシダーゼの作用により酸化されて7β−(5−
カルボキシ−5−オキソペンタンアミド)セファロスポ
ラン酸が生成する。この時に過酸化水素が同時に生成す
る。この過酸水素の作用により、生成した7β−(5−
カルボキシ−5−オキソペンタンアミド)セファロスポ
ラン酸が脱炭酸されてグルタリル7−ACAに転化され
る。グルタリル7−ACAは酵素混合物中のグルタリル7
−ACAアシラーゼの作用を受けて脱アシル化され7−ACA
[一般式(II)で表わされる化合物においてRが−OCOC
H3のもの]が生成する。
上記反応系において用いる酵素混合物を調製する際に
使用する大腸菌として、通常の大腸菌を用いた場合、過
酸化水素を分解するカタラーゼ活性を有しているため、
該酵素混合物中にカタラーゼが混入し、そのためその酵
素混合物を用いると上記の反応過程で生成する過酸化水
素を分解し、反応の進行をさまたげる。これを解決する
ためには、過酸化水素の存在下に水性媒体中で該酵素混
合物を作用させればよい。過酸化水素を存在させる方法
としては、高濃度の過酸化水素はセファロスポリン化合
物を分解してしまうので必要量をできるだけ低濃度にな
るように加えるのが好ましく、適当な方法で過酸化水素
を補給することが望ましい。また、カタラーゼ活性を欠
損している大腸菌の変異株を誘導し、これを宿主とした
形質転換体を用いた場合には該酵素混合物を過酸化水素
の非存在下に作用させることができる。
尚、上記カタラーゼ欠損変異株の誘導は通常の公知の
方法、例えばN−メチル−N′−ニトロソグアニジンな
どの変異誘起剤を用いる方法などにより行なうことがで
きる。
以上のようにして生成した化合物(II)またはその塩
は公知の通常の方法、例えばカラムクロマトグラフ法、
等電点沈でん法などを使用して反応液から分離精製する
ことができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、
本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお実施例において化合物(II)またはその塩の定量
には高速液体カラムクロマトグラフを用いた。カラムは
ミクロボンダパンク(μ−Bondapak)C18(ウォーター
ズ社製)を用い、移動相としては5%酢酸アンモニウム
98容とアセトニトリル2容の混合液を用いた。化合物
(II)またはその塩の検出は260mmで行なった。
また実施例において7−ACAまたはその誘導体の生成
率は、次式により求めた 更に、実施例において7−ACAまたはその誘導体の純
度は実施例で得られた7−ACAまたはその誘導体の粉末
を一定量とって水に溶解し、これを前記液体クロマトグ
ラフィーに供し、7−ACAまたはその誘導体を定量し、
該粉末中の7−ACAまたはその誘導体の含量(%)を計
算することにより求めた。
〔実施例〕
参考例1 本参考例1はD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を含む
形質転換体とグルタリル7−ACAアシラーゼ遺伝子を含
む形質転換体を別々に培養して得られる培養物を用いる
方法である。
〔1〕酵母トリゴノプシス・バリアビリス(Trigonopsi
s variavilis)からクローニングされたD−アミノ酸
オキシダーゼ遺伝子を含む組換え体pEDA01を保持し、D
−アミノ酸オキシダーゼを生産する大腸菌エシェリヒア
・コリ(Escherichia coli)MB65/pEDA01〔特願昭61−
215878(特開昭63−71180)〕は下記の方法によって調
製した。
1.トリゴノプシス・バリアビリスからの全DNAの抽出と
切断 クライヤー(Cryer)らの方法〔文献:メソッズイン
セルバイオロジー(Methods in Cell Biology)12巻、3
9−44,アカデミックプレス(Academic Press)社,197
5〕にしたがって、トリゴノプシス・バリアビリスCBS 4
095から全DNAを抽出精製した。このDNA40μgをとり、
制限酵素MboI4単位と37℃、15分間反応させた。反応液
を等量のフェノール・クロロホルム(1:1)で抽出し、D
NAをエタノールで沈殿させた後、0.1倍濃度のTE緩衝液
〔10mMトリス−塩酸(pH8.0),1mMEDTA〕にとかした。
得られたDNA溶液の全量を0.7%アガロースゲル電気泳動
に供し、6〜9kbの大きさに相当するゲルからDNAをふく
む部分を切出して、電気溶出法によりゲルからDNA断片
を溶出させた。ついで溶出液を等量のフェノールおよび
フェノール・クロロホルムで順次抽出し、得られる水層
にエタノールを添加してDNAを沈殿させた後、0.1倍濃度
のTE緩衝液20μlにとかした。
2.ベクターDNAの開裂 ベクターpUC18 30μgをBamHIで完全に開裂させ、得
られたDNA断片を0.1倍濃度のTE緩衝液20μlにとかし
た。
3.ベクターへのDNA断片の挿入 上記工程1で得られた溶液と上記工程(2)で得られ
た溶液を3:1の割合に混合し、T4・DNAリガーゼを15℃で
6時間反応させ、ベクターとトリゴノプシス・バリアビ
リスCBS 4095のDNA断片を結合させた。
4.トリゴノプシス・バリアビリスのDNAライブラリーの
作成 まず大腸菌宿主としてセファロスポリナーゼ 欠損変
異菌株を造成した。すなわちエシェリヒア・コリ(Esch
erichia coli)MC 1061(米国シカゴ大学マルコム カ
サダバン(Malcom Casadaban)博士より入手。本菌の性
質はジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー
(J.Mol.Biol.),138,179−207,1980に記載されてい
る)をN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニ
ジンで処理した後、セファロスポリンCに対する感受性
が増大したコロニーを選択した。これらの中からセファ
ロスポリナーゼ活性をほとんど示さない株を選択分離
し、その一株をエシュリヒア・コリMB65と命名して宿主
として用いた。なお、本変異株エシュリヒア・コリMB65
は工業技術院微生物工業技術研究所に、微工研菌寄第89
00号として寄託されている。つぎに上記工程3で得られ
た組換え体DNAを形質転換によりエシェリヒア・コリMB6
5に導入し、アンピシリン50μg/mlをふくむL−ブロス
寒天培地〔バクトトリプトン(ディフコ(Difco)社
製)1%、酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%、寒天1.5%〕
上で生育してきたコロニーを集めて、これをトリゴノプ
シス・バリアビリスCBS 4095のDNAライブラリーと称し
た。
5.D−アミノ酸オキシダーゼのアミノ基末端アミノ酸配
列の決定 トリゴノプシス・バリアビリスCBS 4095から前述のス
ワジュセル(Szwajcer)らの方法にしたがってD−アミ
ノ酸オキシダーゼを精製した。精製した酵素蛋白質のア
ミノ基末端のアミノ酸配列を前述の方法により解析し、
アミノ基末端から41番目までのアミノ酸配列を決定し
た。得られたN−末端アミノ酸配列を次式にて表わす。
Ala−Lys−Ile−Val−Val−Ile−Gly−Ala−Gly−Val
−Ala−Gly−Leu−Thr−Thr−Ala−Ler−Gln−Leu−Leu
Arg-Lrs-Gly-His-Glu-Val−Thr−Ile−Val−Ser−Glu
−Phe−Thr−Pro−Gly−Asp−Leu−Ser−Ile−Gly−Tyr
− 注:下線部はプローブ合成に用いられた配列を示す。
6.DNAプローブの合成 上記工程5で得られたアミノ酸配列中から前記式中に
下線で示される2箇所の配列を選択し、これらのアミノ
酸配列から推定される遺伝子上の可能なDNA塩基配列す
べてをふくむオリゴヌクレオチド混合物を第1表に示す
ように合成した。すなわち各アミノ酸配列ごとに可能な
オリゴヌクレオチドを2群にわけて合成して混合物をつ
くり、これらをDNAプローブDAO−1とDAO−2、およびD
AO−3とDAO−4と称した。オリゴヌクレオチドの合成
はすべてアプライド バイオシステム(Applied Biosys
tem)社のDNAシンセサイザー(Synthesizer)モデル380
−Aを用いて行なった。
7.DNAライブラリーからD−アミノ酸オキシ ターゼ・クローンの候補の選択・分離 上記工程6で得られたDNAプローブを各々イングリア
(Inglia)らの方法〔文献:ヌクレイック アシッド
リサーチ(Nucleic Acids Res.),9,1627−1642,198
2〕にしたがってT4ポリヌクレオチドキナーゼとγ−32P
−ATPを用いてラベルした。つぎにDNAライブラリーであ
る前記工程4で得られた大腸菌をアンピシリン50μg/ml
をふくむL−ブロス寒天培地上でコロニーとして生育さ
せ、これをレプリカ法によってワットマン(Whatman)5
41紙でうつし、リゾチームで溶菌し、アルカリでDNA
変性させ、塩酸による中和処理を行なった後、DAO−1
およびDAO−2とハイブリダイゼーションさせた。ハイ
ブリダイゼーションは6倍濃度のSSC(0.15M NaCl,0.01
5Mクエン酸ナトリウム,pH7.0),0.5%ノニデットP−40
(シグマ社、米国製)、DAO−1あるいはDAO−2約2×
1015cpm/mlを用いて、44℃で1時間半行ない、この後6
倍濃度のSSCを用いて室温で2回、つづいて6倍濃度のS
SCを用いて44℃で1回紙を洗浄した。この後紙を乾
燥させ、オートラジオグラフィ(感光条件:−80℃,3時
間)に供した。その結果、DAO−1またはDAO−2に対し
ハイブリダイゼーション陽性のコロニーが多数見出され
た。そこで陽性のコロニーから40株をとりあげ、液体培
養した後、バーンボイム(Birnboim)らの方法〔文献:
ヌクレイックアシッドリサーチ(Nucleic Acids Re
s.),7,1513−1523,1979〕によりプラスミドDNAを調製
した。ついでこれらのDNAを常法により変性させた後、
ニトロセルロースフィルターにスポットして、DNAプロ
ーブとハイブリダイゼーションさせた。ハイブリダイゼ
ーションは6倍濃度のSSC、10倍濃度のデンハルト(Den
hardt)液(0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロ
リドン、0.02%牛血清アルブミン)およびラベルしたDN
Aプローブを用いて、44℃(DAO−1およびDAO−2の場
合)または40℃(DAO−3およびDAO−4の場合)で1時
間行ない、この後6倍濃度のSSCを用いて室温で1回、
ついで44℃(DAO−1およびDAO−2の場合)または40℃
(DAO−3およびDAO−4の場合)で1回洗浄した。この
後フィルターをオートラジオグラフィー(感光条件:−
80℃,3時間)に供した結果、DAO−1あるいはDAO−2に
ハイブリダイゼーション陽性に示すものでかつDAO−3
あるいはDAO−4にも陽性を示すものが6株見出され
た。これら6株からのプラスミドDNAを種々の制限酵素
で切断し、アガロースゲル電気泳動を行なった後、ラベ
ルしたDNAプローブとサザン・ハイブリダイゼーション
〔方法については文献:サザン(Sout hern)(1975)
ジャーナルオブモレキュラーバイオロジー(J.Mol.Bio
l.),98,503−517)を行なった。その結果、EcoRI切断
で生成する約0.6kbのDNA断片にDAO−2とDAO−3または
DAO−4が強くハイブリダイゼーション陽性を示すプラ
スミドDNAが見出された。このプラスミドをPDAO2−12と
命名し、D−アミノ酸オキシダーゼ・クローンの候補と
した。
8.D−アミノ酸オキシダーゼ・クローンの同定とDNA塩基
配列の決定 プラスミドpDAOC2−12よりEcoRI切断により生成する
0.6kbのDNA断片について、前述のサンガー(Sanger)ら
の方法に従ってDNA塩基配列を決定した。その結果、第
2図で示されるように真核生物の遺伝中に存在するイン
トロン様の配列をはさんで、上記工程5で得られたD−
アミノ酸オキシダーゼのアミノ基末端のアミノ酸配列に
完全に一致するアミノ酸配列をコードする塩基配列が見
出され、この断片がD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の
一部をふくむことが明らかになった。プラスミドpDAOC2
−12については、制限酵素切断の結果にもとづいて第3
図にあらわされる制限酵素開裂地図を作成した。上記の
結果にもとづいて、すでに決定された塩基配列から遺伝
子読取り方向の下流にあたる領域についてDNA塩基配列
を決定したところ、第1図に示される355個のアミノ酸
よりなる蛋白質をコードする塩基配列が存在することが
判明した(第1図では第2図で示されたイントロン様配
列を削除して表示してある)。かくしてプラスミドpDAO
C2−12中のトリゴノプシス・バリアプリスCBS 4095由来
のDNA断片中にはD−アミノ酸オキシダーゼの構造遺伝
子が完全にふくまれているものと推定された。
9.D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の修飾 クローニングされたD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子
が大腸菌で発現する上で障害となりうるDNA塩基配列部
分をプラスミドpDAOC2−12中のトリゴノプシス・バリア
ビリスCBS 4095由来のDNA断片から第4図に示される工
程にしたがって削除した。以下に各工程を詳述する。
(1)プラスミドpDAOC2−12 40μgをEcooRIとHindIII
で切断し、得られる約0.45kbの断片を精製した後、その
0.8μgにdATP,dGTP,dCTP,TTPを終濃度各0.33mM,DNAポ
リメラーゼクレノウ(Klenow)断片5単位を加え、10mM
トリス−塩酸(pH7.5)、10mM MgCl2、1mMジチオレイト
ール、50mM NaClの反応液30μl中で30℃、20分間反応
させた。これより両端が平滑端にされたDNA断片を精製
し、その約0.2μgにBamHIリンカー(0.0175 O.D.)とT
4 DNAリガーゼ1単位を加え、50mMトリス−塩酸(pH7.
5)、10mM MgCl2、0.5mM ATP、5mMジチオスレイトール
の反応液20μlで15℃、一夜反応させた。反応後DNA断
片を精製し、EcoRIとBamHIで両端を切断し、EcoRI−Bam
HI断片として回収した。一方ファージM13mp18の2本鎖D
NAをEcoRIとBamHIで切断した後、これに上記のEcoRI−B
amHI断片を加え、T4DNAリガーゼで結合させて、D−ア
ミノ酸オキシダーゼ遺伝子の一部を組みこんだファージ
M13M2−12−7を造成した。
(2)イントロン様配列を削除するために、第4図に示
されるようにイントロン様配列の前後を直結した配列に
相補するオリゴヌクレオチドを合成し、DAOE1と命名し
た。DAOE1 25 pmoleとM13プライマーM1(宝酒造社製)1
0pmoleをT4ポリヌクレオチドキナーゼでりん酸化し、メ
ッシング(Messing)の方法〔文献:メソッズインエン
ザイモロジー(Methods Enzymol.),101,20−78,198
3〕にしたがって調整したファージM13M2−12−7の1本
鎖DNA約0.5pmoleを加え、95℃で5分間加熱後室温にな
るまで放置した。ついでこれにdATP,dGTP,dCTP,TTP(各
0.4mM),ATP(0.4mM),DNAポリメラーゼクレノウ(Klen
ow)断片(5単位)、T4DNAリガーゼ(2単位)を加
え、各7mMのトリスー塩酸(pH7.5)、MgCl2、NaClおよ
び14mMのジチオスレイトールの反応液50μl中で37℃、
30分間反応させた。0.5MのEDTA5μlを加えて反応停止
後、メッシング(Messing)の方法(文献前出)にした
がってエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)JM105
を反応液でトランスフェクション処理し、ファージ導入
菌をプラークとして検出した。出現したファージ・プラ
ークをプラーク・ハイブリダイゼーション法〔文献:ベ
ントン(Benton)ら(1977)サイエンス(Science),1
96,180−182〕によって32PでラベルしたDAOE1とハイブ
リダイゼーションさせ、陽性を示したプラークを見出し
た。陽性プラーク中のファージを再度エシュリヒア・コ
リJM105に感染させて、上記と同様にしてDAOE1とハイブ
リダイゼーションを示すプラークを純化して分離した
後、プラーク中に存在するファージを常法によって液体
培養し、1本鎖DNAを分離した。得られた1本鎖DNAの塩
基配列を解析したところ、予定通りイントロン様配列を
欠失した塩基配列をもつトリゴノプシス・バリアビリス
CBS4095由来のDNA断片をもつことが判明したので、この
ファージをM13ME1と命名した。
(3)つぎにD−アミノ酸オキシダーゼ蛋白質合成開始
部位(ATG)よりも上流にあるトリゴノプシス・バリア
ビリスCBS4095由来のアミノ酸非コード領域を削除する
ために、第4図に示されるようにこの領域の前後を直結
した配列に相補するポリヌクレオチドを合成し、DAOE2
と命名した。ついでDAOE2とファージM13ME1の1本鎖DNA
とから、上記工程(2)でのべた方法と同一の工程にし
たがって、イントロン様配列の削除を加えてATGより上
流のアミノ酸非コード領域をも削除されたD−アミノ酸
オキシダーゼ遺伝子の一部を保有するファージを造成
し、これをM13ME12と命名した。
10.発現ベクターの造成 本実施例に用いられる発現用ベクター造成の出発プラ
スミドであるpAKKM1は公知の文献マツダ(Matsuda)ら
(1985)ジャーナルオブバクテリオロジー(J.Bacterio
l.),163,1222−1228にその造成方法が示されており、
β−ラクタマーゼ遺伝子が不活化された特徴をもつ。第
5図に示すように、まずpAKKM1をEcoRIとBamHIで切断
し、これより約5kbのDNA断片を分離・精製した。一方la
cUV5プロモーターをふくむプラスミドpRZ4022〔米国ウ
ィスコンシン大学ダブリュー・レズニコフ(W.Reznikof
f)博士より入手〕をEcoRIとBamHIで切断することによ
りlacUV5プロモーターを含む95bpの断片を調製した。つ
いで上記2断片をT4DNAリガーゼを用いて結合させ、発
現用ベクターpEX002を得た。なお上記で用いたプラスミ
ドpRZ4022はギルバート(Gilbert)らの方法〔文献:プ
ロシーディングスオブナショナルアカデミーサイエンス
ユーエスエー(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),70,3581−3
584,1973〕にしたがってlacUV5プモーターをふくむ95bp
のALuI断片を調整し、pBR322のEcoRI−BamHI部位に置換
挿入することによって造成される。
11.D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の発現 第6図にD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子発現用組換
え体の造成工程を示す。まずファージM13ME12の2本鎖D
NAよりEcoRIおよびBamHI切断により約0.3kbのD−アミ
ノ酸オキシダーゼのアミノ基末端部分をコードするDNA
断片を分離した。ついでpDAOC2−12よりEcoRIおよびSal
I切断によりM13ME12にふくまれている部分をのぞく約1.
2kbのD−アミノ酸オキシダーゼの構造遺伝子部分をコ
ードするDNA切断を分離した。さらに発現用ベクターpEX
002をBamHIおよびXhoIで切断した後、上記の2つの断片
と混合し、T4DNAリガーゼで結合反応を行なわせた。そ
の反応液を用いてエシェリヒア・コリMB65を形質転換
し、カナマイシン40μg/mlをふくむL−ブロス寒天培地
上で生育してくるコロニーを選択した。得られたコロニ
ーについて、D−メチオニンを基質とし、O−ジアニシ
ジンを用いるD−アミノ酸オキシダーゼ活性の検出をヘ
ドリック(Hedrick)ら(1968)アーカイブスオブバイ
オケミストリーアンドバイオフィジックス(Arch.Bioch
em.Biophys.),126,155−164の方法に従って行なった
結果、多数の陽性コロニーを得た。この中の1株からプ
ラスミドDNAを抽出し、これをpEDAO1と命名し、制限酵
素切断により第6図に示される構造を確認した。またこ
の組換え体を保有する大腸菌をエシェリヒア・コリMB65
/pEDAO1と命名した。
この菌をカナマイシン40μg/mlをふくむL−ブロス
(L−ブロス寒天培地より寒天を除いたもの)100mlに
植菌し、32℃で24時間振とう培養した。培養液を遠心分
離して集菌し、これを10mlの0.1Mプロリン酸緩衝液(pH
8.0)に懸濁した。これを超音波処理して細胞を破砕
し、遠心分離した後の上清をD−アミノ酸オキシダーゼ
酵素液とした。
〔2〕コマモナス・エスピー(Comamonas sp.)SY−77
−1(微工研菌寄第2410号)からクローニングされたグ
ルタリル7−ACAアシラーゼ遺伝子を含む組換え体pAKKB
1001(特開昭60−110292)を下記の方法によって調製し
た。
1)コマモナス属細菌SY−77−1(微工研菌寄第2410
号)から全DNAの調製とその切断 ニュートリエント・ブロス(牛肉エキス0.3%,ペプ
トン0.5%)100mlにコマモナス属細菌SY−77−1(微工
研菌寄第2410号)を接種し、30℃にて一夜培養後集菌
し、8mlのTE緩衝液に懸濁する。これにリゾチームを終
濃度1mg/mlになるように加え、37℃にて1時間反応させ
る。次にこれにプロナーゼEを終濃度200μg/mlになる
ように加え、つづいてドデシル硫酸ナトリウムを終濃度
1%となるように加えて37℃にて1時間反応させる。反
応終了後反応液に等容量のTNE緩衝液(50mMTris−HCl,5
mM EDTA,100mM NaCl;pH8.0)で飽和したフェノールを加
え、混合した後10,000rpmで10分間遠心し、水層を採取
する。この水層に等容量のフェノール・クロロホルム混
液(1:1,V/V)を加え、同様にして遠心後水層を採取し
て、さらに等容量のクロロホルムを加えて同様にして遠
心後水層を採取する。採取した水溶液にリボヌクレアー
ゼAを終濃度40μg/mlになるように加え、37℃にて1時
間反応させる。反応終了後NaClとポリエチレングリコー
ル6000を各々終濃度1Mおよび10%になるように加え、4
℃にて4時間保持してから5000rpmで5分間遠心し、生
成した沈殿を0.1倍濃度TE緩衝液に溶かす。こうして得
られた溶液を酢酸ナトリウムを終濃度300mMになるよう
に加え、2倍容量のエタノールを加えて、−20℃にて4
時間保持した後、10,000rpmで20分間遠心してDNAの沈殿
を集める。この沈殿を0.1倍濃度TE緩衝液に溶かし、以
後の切断反応に供する。DNAの切断のためには1μgのD
NAに対し0.3単位のPstIを加え、10mM Tris−HCl(pH7.
4),10mM MgSO4,50mM NaCl,1mMジチオスレイトールの緩
衝液30μl中で37℃にて1.5時間反応を行なわせ、つづ
いて70℃にて10分間加熱して反応を停止させる。
2)ベクターpBR322の開裂 1μgのpBR322に対し1単位のPstIを加え、1)と同
一の緩衝液30μl中で37℃にて2時間反応させ、1)と
同様にして反応を停止させる。
3)再結合反応 0.8μgの切断されたコマモナス属細菌SY−77−1DNA,
0.4μgの開裂されたpBR322,30mM Tris−HCl(pH7.5),
10mM MgCl2,10mM 2−メルカプトエタノール,10mM ATP,1
単位T4リガーゼをふくむ100μlの反応液中で22℃にて
2時間反応させる。その後70℃にて10分間加熱すること
により、反応を停止させる。
4)組換え体プラスミドの大腸菌への導入 3)で再結合反応させることにより得られたDNA溶液
でエシェリヒア・コリK12C600r−m−(ATCC33525)を
形質転換し、テトラサイクリン10μg/mlを含むL−ブロ
ス寒天培地に生育してくるコロニーを分離した。これら
のコロニーをアンピシリン50μg/mlをふくむL−ブロス
寒天培地上に移植して生育の有無を試験し、アンピシリ
ン感受性を示すコロニーを組換え体DNAを保持した大腸
菌として分離した。
5)グルタリル7−ACAアシラーゼ産生能を有する大腸
菌の選択分離 上記のようにして得られたアンピシリン感受性株をテ
トラサイクリンをふくむL−ブロス寒天培地上で32℃に
て一夜培養し、生育した菌の一部をかきとって100μl
のグルタリル7−ACA(1mg/ml)をふくむ0.1M燐酸緩衝
液(pH7.0)に懸濁した後、37℃にて5時間反応させ
る。その後120μlの反応停止液(100%酢酸2容と0.25
M NaOH1容の混合液)を加え、さらに40μlの発色液
(p−ジメチルアミノベンズアンデヒドを0.5%になる
ようにメタノールに加えた液)を加える。この反応でグ
ルタリル7−ACAアシラーゼ産生能を有する大腸菌は反
応液を黄色に変色させる。こうして得られた新規な大腸
菌をエシェリヒア・コリK12C600(pAKK1001)と命名し
た。
6)大腸菌プラスミドDNAの分離と解析 上記の大腸菌を100mlのテトラサイクリンをふくむL
−ブロスに接種し37℃にて一夜培養後、遠心集菌し、15
%蔗糖、50mM Tris−HCl(pH8.5),50mM EDTAおよび1mg
/mlのリゾチームよりなる溶液2mlに懸濁した後、室温に
て1時間保持する。
次にトリトン(Triton)溶液(0.1% TritonX−100,5
0mM Tris−HCl,50mM EDTA;pH8.5)2mlを加え、37℃にて
30分間保持する。その後この溶液を5℃にて30,000rpm
で30分間遠心し、上清を採取する。これをエチジウムブ
ロマイドー塩化セシウム平衡密度勾配遠心(15℃にて4
0,000rpm,48時間)にかけ、プラスミドDNAを分離精製す
る。これを2)と同様の方法でPstIで切断し、断片の長
さを1%アガロースを用いたアガロース電気泳動法で測
定したところ、ベクターDNAに相当する4.3Kbの断片の他
に3.6Kb,2,6Kb,0.9Kbの断片が見出された。このことか
ら新規な大腸菌から分離された組換え体DNAは第7図に
おいて制限酵素地図で示される構造を有し、組換え体DN
AではpBR322に7.1KbのDNA断片が組み込まれていること
が判明した。
7)反応生成物の確認 上記の新規な大腸菌をテトラサイクリンをふくむL−
ブロス5mlに接種し、32℃にて一夜培養後遠心集菌し、1
mlのグルタリル7−ACA(25mg/ml)をふくむ0.1M燐酸緩
衝液に懸濁する。これを37℃にて6時間反応させ、遠心
して上清を採取し、高速液体クロマトグラフィーに供す
る。高速液体クロマトグラフィーにはLinchrosorb S110
0を充てんしたカラム(150×4mm)を用い、溶媒として
は0.1M燐酸緩衝液(pH7.5)を用いて溶出し、溶出液中
の紫外部吸光物質を260nmの吸光度を測定して検出す
る。上記反応液からは7−ACAに完全に一致する紫外線
吸光物質が検出され、7−ACAが生成していることが確
認された。
8)組換え体DNAの改変によるグルタリル7−ACAアシラ
ーゼ産生能の増大した大腸菌の分離 組換え体DNA中に存在するグルタリル7−ACAアシラー
ゼ産生遺伝子の発現を増大することによりグルタリル7
−ACAアシラーゼの産生を増大させるため、以下にのべ
る工程にしたがって組換え体DNAの改変が行なわれた。
a)エシェリヒア・コリK12C600(pAKK1001)から6)
のようにして分離したプラスミドDNAを以下のようにし
てBamHIで部分的に切断する。プラスミドDNA1μgに対
し0.5単位のBamHIを加え、1)でのべたDNA切断用の緩
衝液30μl中で37℃にて1時間反応させた後、等容量の
TNE緩衝液で飽和したフェノールを加え、反応を停止さ
せる。次に遠心によりフェノールを除去した後、等容量
のエチルエーテルを加えて混合し、エチルエーテルを除
去する。この溶液中のDNAエタノールで沈殿させ、沈殿
を0.1倍濃度TE緩衝液に溶かす。
b)ベクターpBR325を2)でのべた方法によってPstIで
開裂し3)でのべた方法で再び閉環させた後、エシェリ
ヒア・コリK12C600r−m−(ATCC33525)に導入し、テ
トラサイクリンをふくむL−ブロス寒天培地上に生育し
てくるコロニーからアンビシリンに感受性になった株を
選択分離する。こうして得られたアンピシリン感受性株
よりプラスミドDNAを取得することにより、アンピシリ
ン耐性遺伝子(β−ラクタマーゼ産生遺伝子)が不活性
された新規なベクターが得られる。
c)上記の新規なベクタープラスミドをBamHIで開裂さ
せる。
d)a)で得られたDNAと開裂された新規なベクタープ
ラスミドを3)でのべた方法より再結合し、エシェリヒ
ア・コリK12C600r−m−(ATCC33525)に導入した後、
クロラムフェニコール20μg/mlをふくむL−ブロス寒天
培地に生育するコロニーを選択分離する。
e)選択された株の中から5)にのべる方法によりグル
タリル7−ACAアシラーゼ産生能を有する株を選択分離
する。次にグルタリル7−ACAアシラーゼ産生能を有す
る株のグルタリル7−ACAアシラーゼ活性を測定し最も
活性の高い株を選択分離する。グルタリル7−ACAアシ
ラーゼ活性の測定にはクロラムフェニコールをふくむL
−ブロス5mlで一夜培養した菌体をグルタリル7−ACA
(25mg/ml)をふくむ0.1M燐酸緩衝液(pH7.0)2mlに懸
濁し、37℃にて15分間反応させ、反応後直ちに遠心して
菌体を除去した後、反応液の一定量を高速液体クロマト
グラフィーに供し、生成している7−ACAを定量する。
このようにして得られた高いグルタリル7−ACAアシ
ラーゼ産生能を有する新規な大腸菌の一株をエシェリヒ
ア・コリK12C600(pAKKB1001)と命名した。新規な大腸
菌のグルタリル7−ACAアシラーゼ産生能を比活性で比
較したところ、コマモナス属細菌SY−77−1(微工研菌
寄第2410号)の活性を1とするとき、エシェリヒア・コ
リK12C600(pAKK1001)は3、これに対してエシェリヒ
ア・コリK12C600(pAKKB1001)では15であった。
9)グルタリル7−ACAアシラーゼ産生能の増大した大
腸菌よりプラスミドDNAの分離と解析 8)で得られた新規な大腸菌より6)でのべた方法に
よってプラスミドDNAを分離し、BamHIで切断してアガロ
ースゲル電気泳動法でDNA断片の長さを測定したとこ
ろ、8)のb)で得られた新規なベクターに相当する5.
9Kbの断片の他に4.8Kb,0.7Kbの断片が見出された。さら
にプラスミドDNAをPstIで切断し、アガロースゲル電気
泳動法で解析した結果にもとづいて、第8図に示される
組換え体DNAの制限酵素地図が作成された。
このことからエシェリヒア・コリK12C600(pAKKB100
1)より分離された組換え体DNAでは、pBR325を改変した
新規なベクターDNAにエシェリヒア・コリK12C600(pAKK
1001)から分離された組換え体DNAの一部分である5.5Kb
のDNA断片が組み込まれていることが判明した。
得られたプラスミドpAKB1001を第9図に示す工程によ
り改変してから、形質転換体を得て、酵素生産に用い
た。以下にこの工程を詳しく説明する。
プラスミドpAKKB1001を制限酵素Hpalで開裂し、つづ
いて制限酵素PvuIIで部分的に切断した後、T4DNAリガー
ゼで再結合させた。これでエシェリヒア・コリMM294
[アメリカンタイプカルチャーコレクション(American
Type Culture Collection)よりATCCNo.33678として入
手できる]を形質転換し、クロラムフェニコール25μg/
mlを含むL−ブロス寒天平板上で生育するがテトラサイ
クリン10μg/mlを含む培地上では生育できない(これを
テトラサイクリン感受性と称する)コロニーを選択し
た。このコロニーを培養してプラスミドDNAを分離し、p
AKKB1003と命名した。改変された組換え体はグルタリル
7−ACAアシラーゼ遺伝子を保持し、かつ小型化された
特徴をもつ。
プラスミドpUC9(アメンカンタイプカルチャーコレク
ションよりATCCNo.37252として入手できる)を制限酵素
HaeIIIで切断し、生成したDNA断片から約0.2Kbの大きさ
の断片をアガロースゲル電気泳動により分離し、精製し
た。一方プラスミドpAKKB1003を制限酵素HindIIIで開裂
し、つづいてHaeIIIで部分的に切断した後、DNAポリメ
ラーゼ・クレノウ(Klenow)断片とdATP,dGTP,dCTPおよ
びTTPを作用させて、切断端を平滑末端にした。このも
のと上記のpUC9から分離した断片を混合し、T4DNAリガ
ーゼで結合反応を行なった。これをエシェリヒア・コリ
MM294を形質転換し、クロラムフェニコール25μg/mlと
5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガ
ラクトシド20μg/mlを含むL−ブロス寒天平板上で生育
し、かつ青色を呈するコロニーを選択した。これらのコ
ロニーにグルタリル7−ACAを作用させ、前記5)に記
載のp−ジメチルアミノベンズアルデヒドで7−ACAを
発色させる方法を用いてグルタリル7−ACAアシラーゼ
活性を検出した。酵素活性を有するコロニーを選択し、
これによりプラスミドDNAを分離して、pAKKlac1001と命
名した。この組換え体をさらに簡便なものにするため、
pAKKlac1001を制限酵素HindIIIとSmalで切断し、DNAポ
リメラーゼ・クレノウ断片を前記と同様に作用させて平
滑末端をもつ断片とした後、T4DNAリガーゼで再結合さ
せた。これにエシェリヒア・コリMB65(微工研菌寄第89
00号)を形質転換し、クロラムフェニコールに耐性でか
つグルタリル7−ACAアシラーゼ活性を有するコロニー
を選択した。このコロニーよりプラスミドDNAを分離
し、pAKKΔSH1と命名し、またこれによる形質転換体を
エシェリヒア・コリMB65/pAKKΔSH1と命名した。組換え
体pAKKΔSH1は、エシェリヒア・コリのβ−ガラクトシ
ターゼ遺伝子のプロモーターを含む部分と融合し、発現
の調節が可能になったグルタリル7−ACAアシラーゼ遺
伝子を含むようになった特徴をもつ。
こうして得られたエシェリヒア・コリMB65/pAKKΔSH1
をクロラムフェニコール25μg/mlを含むL−ブロスで培
養し、上記(1)と同様に処理して、グルタリル7−AC
Aアシラーゼ酵素液を調製した。
〔3〕D−アミノ酸オキシダーゼ酵素液10ml、グルタリ
ル7−ACAアシラーゼ酵素液10mlおよび0.1Mリン酸緩衝
液(pH8.0)30mlを混合し、セファロスポリンC(純度7
0%)714mgを添加して、37℃で振とうしながら反応を行
なった。30%過酸化水素水を反応開始後15分,30分,45分
後に各々0.5ml、70分、85分、100分後に各々0.01ml加え
て120分間反応を行なった。反応終了後中の7−ACAの生
成率は55.7%であった。
反応液で水で3倍に希釈し、100mlのDEAEセファデッ
クスA−25(Cl-型.ファルマシア社製)のカラムに通
した。120mlの水で洗い、ついで0.05Mの食塩水を通すと
7−ACAが溶出された。7−ACA画分を集め、pH7.0に調
節して減圧濃縮後、予め0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で
洗ったダイヤイオンHP−20(三菱化成製)100mlのカラ
ムを通過させ、次に脱イオン水で充分カラムを水洗した
後、50%メタノール水で溶出した。7−ACA溶出画分を
集め、減圧濃縮後、pH3.0に調節し、冷所に放置したと
ころ、7−ACAが析出した。沈殿物を集め、真空乾燥し
て、160mgの7−ACAを得た。この純度は80%であった。
参考例2 参考例1と同様の反応系にデアセチルセファロスポリ
ンC(純度65%)500mgを添加し、37℃で120分反応を行
なった。反応終了液中の7−アミノデアセチルセファロ
スポラン酸の生成率は52%であった。
実施例1 本実施例はD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を含む組
換え体とグルタリル7−ACAアシラーゼ遺伝子を含む組
換え体が共存する形質転換体を用いる方法に関する。
(1)pEDAO1およびpAKKΔSH1はもとにpBR322に起源を
もつベクターを用いて造成された組換え体である。そこ
でpBR322とは不和合性の異なることが知られているプラ
スミドpACYC184(アメリカンタイプカルチャーコレクシ
ョンよりATCCNo.37033として入手できる)に、第10図に
示される工程で、pAKKΔSH1中のグルタリル7−ACAアシ
ラーゼ遺伝子を含むDNA断片を組み込んだ。すなわち、
まずpACYC184をHindIIIで開裂した。一方pAKKΔSH1を制
限酵素PVuIIとNdeIで切断し、生成した約3KbのDNA断片
をアガロースゲル電気泳動で分離し、精製した後、DNA
ポリメラーゼ・クレノウ断片を前記と同様に作用させ
て、平滑末端をもつ断片とした。これにTDNAリガーゼの
作用でHindIIIリンカーを付加し、HindIIIで処理した
後、上記のpACYC184と混合し、T4DNAリガーゼで両者を
結合させた。これでエシェリヒア・コリMB65を形質転換
し、クロラムフェニコールに耐性でかつテトラサイクリ
ンに感受性であり、しかもグルタリル7−ACAアシラー
ゼ活性を有するコロニーを選択した。このコロニーを培
養してプラスミドDNAを分離し、これをpACYCaclと命名
した。pACYCaclでエシェリヒア・コリMB65/pEDA01を形
質転換し、カナマイシン40μg/mlとクロラムフェニコー
ル25μg/mlを含むL−ブロス寒天平板上で生育してくる
コロニーを選択して、これをエシェリヒア・コリMB65/p
EDA01/pACYCaclと命名した。
(2)エシェリヒア・コリMB65/pEDA01/pACYCaclをカナ
マイシン40μg/mlとクロラムフェニコール25μg/mlを含
むL−ブロスで培養して、実施例1と同様にして酸素液
を調製した。酵素液1ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)4m
lにセファロスポリンC(純度70%)を70mg添加し、実
施例1と同様にして120分間反応を行なった。反応終了
液中の7−ACA生成率は40.6%であった。
実施例2 本実施例はD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子とグルタ
リル7−ACAアシラーゼ遺伝子が共存する組換え体を保
有する形質転換体の培養物を用いる方法である。
(1)上記両遺伝子が共存する組換え体の造成工程を第
11図に示す。すなわちpAKKΔSH1をPvuIIおよびNdeIで切
断し、生成したDNA断片の両端をDNAポリメラーゼ・クレ
ノウ断片を前記と同様に作用させて平滑末端とした。こ
れよりアガロースゲル電気泳動により約3Kbの大きさの
断片を分離し、精製した。一方pEDA01をSmaIで開裂し、
これと上記の断片を混合した後、両者をT4DNAリガーゼ
の作用で結合させた。これを用いてエシェリヒア・コリ
MB65を形質転換し、カナマイシン40μg/mlを含むとL−
ブロス寒天平板上に生育しかつグルタリル7−ACAアシ
ラーゼ活性を示すコロニーを選択した。このコロニーよ
りプラスミドDNAを分離し、これをpDOaclと命名し、こ
れを保持する形質転換体をエシェリヒア・コリMB65/pDO
aclと命名した。
(2)エシェリヒア・コリMB65/pDOaclをカナマイシン4
0μg/μgを含むL−ブロスで培養し、参考例1と同様
にして酸素液を調製した。これを実施例1と同様にして
セファロスポリンCに作用させたところ、反応終了液中
の7−ACA生成率は16%であった。
参考例3 エシェリヒア・コリMB65を変異誘起剤N−メチル−
N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジンで処理した後、
ルーエン(loewen)の方法(文献:ジャーナルオブバク
テリオロジー(J.Bacteriol.)152,622−626,1984)に
したがって、カタラーゼ活性の欠損した変異株を分離
し、これをエシェリヒア・コリMBC1013と命名した。な
お本変異株は工業技術院微生物工業技術研究所に、微工
研菌寄第8901号として寄託されている。
pEDA01およびpAKKΔSH1で独立にエシェリヒア・コリM
BC1013を形質転換し、得られた各々の形質転換体を培養
して、参考例1と同様にして酸素液を調製した。各々の
形質転換体からの酵素液各1ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH
8.0)3mlにセファロスポリンC(純度70%)70mgを添加
し、37℃で振とうさせながら、過酸化水素水を添加せず
に120分反応を行なった。反応終了後中の7−ACA生成率
は59%であった。
実施例3 エシェリヒア・コリMBC1013をpEDA01およびpACYCacl
で同時に形質転換し、カナマイシン40μg/mlとクロラム
フェニコール25μg/mlを含むL−ブロス寒天平板上で生
育してくるコロニーを形質転換体として分離した。この
形質転換体をカナマイシン40μg/mlとクロラムフェニコ
ール25μg/mlを含むL−ブロスで培養して、参考例1と
同様にして酵素液を調製した。酵素液1ml、0.1Mリン酸
緩衝液(pH8.0)にセファロスポリンC(純度70%)70m
gを添加し、37℃で振とうさせながら、過酸化水素水を
添加せずに120分反応を行なった。反応終了液中の7−A
CA生成率は42.6%であった。
〔発明の効果〕
本発明者らは大腸菌のクローニングされたD−アミノ
酸オキシダーゼ遺伝子とグルタリル7−ACAアシラーゼ
遺伝子を用いれば、 (1)両遺伝子を箇別に含む組換え体の共存する単一の
形質転換体の培養物または処理物あるいは、 (2)両遺伝子が共存する単一の組換え体による単一の
形質転換体の培養物または処理物 のいずれを用いても、1段の工程できわめて効率よくセ
ファロスポリンCおよびその誘導体から7−ACAおよび
その誘導体を生成せしめることができる。また上記反応
の進行のためには通常の大腸菌を宿主として用いた場合
過酸化水素の補給を必要とするが、実施例から明らかな
ようにカタラーゼ生産能を欠損した大腸菌の変異株を宿
主として用いれば、過酸化水素を補給する必要もなく、
さらに容易な反応工程にすることができる。このように
セファロスポリンCから7−ACAを製造する上で、従来
の方法と比較して画期的にすぐれた方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図はトリゴノプシス・バリアビリス由来のD−アミ
ノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列およびそれをコードす
るD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の塩基配列を示す。
図中、上段は塩基配列を、下段はアミノ酸配列をそれぞ
れ示す。 第2図はプラスミドpDAOC2−12よりEcoRI切断により生
成する約0.6Kbの断片の塩基配列の一部を示す。図中で
上段は塩基配列を、下段はこれに対応するアミノ酸配列
を、点線を引いた部分はイントロン様配列を示す。 第3図はプラスミドpDAOC2−12の制限酵素開裂地図を示
す。 第4図はD−アミノ酸オキシダーゼ・クローンよりアミ
ノ酸非コード領域削除の概要を示す。 第5図はD−アミノ酸オキシダーゼ発現用ベクター造成
工程の概要を示す。図中で記号Cmr,Kmr,Aprは各々ク
ロラムフェニコール、カナマイシン、アンピシリンに対
する耐性遺伝子を、PlacUV5はlacUV5プロモーターを示
す。 第6図はD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子発現用組換え
体造成工程の概要を示す。図中で の部分はD−アミノ酸オキシダーゼ(DAOの略号で表
示)のアミノ酸配列コード領域を示す。 第7図はエシェリヒア・コリK12C600(pAKK1001)より
分離された組換え体プラスミドの制限酵素地図である。 第8図はエシェリヒア・コリK12C600(pAKKB1001)より
分離された組換え体プラスミドの制限酵素地図である。 第9図は組換え体pAKKB1001の改変の工程を示す。図中
には工程に関与しているかあるいはマーカーとなる制限
酵素切断部位のみが以下の略号で示されている。E,EcoR
I。Pv,PvuII。H,HindIII。B,BamHI。He,HaeIII。Hp,Hpa
I。N,NdeI。Sm,SmaI。また図中Cmr,Tcr,Aprは各々ク
ロラムフェニコール、テトラサイクリン、およびアンピ
シリンへの耐性遺伝子を、acy1はグルタリル7−ACAア
シラーゼ遺伝子を表示する。 第10図はプラスミドpACYC184にグルタリル7−ACAアシ
ラーゼ遺伝子を組込んだ組換え体pACYCaclの造成工程を
示す。 第11図はD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子(図中DAOの
略号で表示)を含む組換え体pEDA01にグルタリル7−AC
Aアシラーゼ遺伝子を組込んだ組換え体pDOaclの造成工
程を示す。図中Kmrはカナマイシンの耐性遺伝子を表示
する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07D 501/22 101 7602−4C 501/28 7602−4C C12N 1/21 8828−4B (C12P 35/00 C12R 1:19) (C12P 35/02 C12R 1:19) (C12N 1/21 C12R 1:19) (56)参考文献 特開 昭52−38092(JP,A) 特開 昭60−110292(JP,A) 特開 昭61−152286(JP,A)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (式中Rは−OCOH3、−H、またはOHである)で表され
    る化合物またはその塩を脱アシル化して一般式(II) (式中Rは前記と同じ意味を有する)で表される化合物
    またはその塩を生成させる7−アミノセファロスポラン
    酸及びその誘導体の製造方法において、前記(I)で表
    される化合物に、D−アミノ酸オキシダーゼ及び7β−
    (4−カルボキシブタンアミド)セファロスポラン酸ア
    シラーゼを発現する単一の大腸菌の培養物を含む酵素混
    合物を過酸化水素の存在下または非存在下に水性媒体中
    で作用させることを特徴とする7−アミノセファロスポ
    ラン酸およびその誘導体の製造法。
  2. 【請求項2】該酵素混合物が、D−アミノ酸オキシダー
    ゼ遺伝子を含む組換え体DNAおよび7β−(4−カルボ
    キシブタンアミド)セファロスポラン酸アシラーゼ遺伝
    子を含む組換え体DNAで形質転換された単一の大腸菌の
    培養物またはその処理物であることを特徴とする特許請
    求の範囲第(1)記載の製造法。
  3. 【請求項3】該酵素混合物が、D−アミノ酸オキシダー
    ゼ遺伝子および7β−(4−カルボキシブタンアミド)
    セファロスポラン酸アシラーゼ遺伝子を共に含む単一の
    組換え体DNAで形質転換された単一の大腸菌の培養物ま
    たはその処理物であることを特徴とする特許請求の範囲
    第(1)項に記載の製造法。
  4. 【請求項4】該酵素混合物が、カタラーゼ産生能を欠損
    していない大腸菌が産生するD−アミノ酸オキシダーゼ
    と7β−(4−カルボキシブタンアミド)セファロスポ
    ラン酸アシラーゼを含む酵素混合物であり、該酵素混合
    物を一般式(I)で表される化合物またはその塩に過酸
    化水素の存在下に作用させることを特徴とする特許請求
    の範囲第(1)乃至(3)項のいずれかに記載の製造
    法。
  5. 【請求項5】該酵素混合物が、カタラーゼ産生能を欠損
    している大腸菌が産生するD−アミノ酸オキシダーゼと
    7β−(4−カルボキシブタンアミド)セファロスポラ
    ン酸アシラーゼを含む酵素混合物であり、該酵素混合物
    を一般式(I)で表される化合物またはその塩に過酸化
    水素の非存在下に作用させることを特徴とする特許請求
    の範囲第(1)乃至(3)項のいずれかに記載の製造
    法。
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