JPH08286A - フィルム状培地及びこれを用いた微生物の検出方法 - Google Patents

フィルム状培地及びこれを用いた微生物の検出方法

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JPH08286A
JPH08286A JP15841394A JP15841394A JPH08286A JP H08286 A JPH08286 A JP H08286A JP 15841394 A JP15841394 A JP 15841394A JP 15841394 A JP15841394 A JP 15841394A JP H08286 A JPH08286 A JP H08286A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 毛細管現象により水を拡散することのできる
シートの片面に、(a)水及びアルコールに可溶な高分
子化合物、(b)水に可溶でアルコールに不溶な高分子
化合物及び(c)菌体培養用栄養分を含有する培地組成
物を含む薄膜を形成したフィルム状培地;及びこれを用
いた微生物の検出方法。 【効果】 このフィルム状培地を用いれば、検体液の接
種が容易であり、更にコロニーの観察及び鈞菌が正確か
つ容易にできるため、種々の微生物の検査を簡便に行う
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、種々の微生物の検出、
同定、輸送に有用なフィルム状培地及びこれを用いた微
生物の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】種々の微生物を検出、同定するにあたっ
て、従来から行われている微生物の培養方法として、平
板塗抹法や混釈法、液体培地法などが一般的に用いられ
ている。これらの方法は、培養を行う以前に培地や器具
類の滅菌の準備が必要であり、被検試料を培地に接種し
た後は塗抹や混釈等の熟練を要する操作が必要である。
更に、被検試料接種後の培地の輸送や培養後発育したコ
ロニーを計測したあとの培地等の滅菌ではかさばる器具
や培地により多大な労力を要する。
【0003】そのため手軽に培養できるフィルム状培地
を用いた簡易検査法が報告されている。その例として
は、(1)防水性基体の上面部に、接着剤層、栄養成分
を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順
次積層した培地(特開昭57−502200号公報)、
(2)防水性基体の上面部に、空気透過性膜、栄養成分
を含む冷水可溶性ゲル化剤粉末層及びカバーシートを順
次積層した培地(特開平3−15379号公報)、
(3)濾紙等に菌体栄養成分を含浸させ、その表面をカ
バーシートで覆ってなる検出紙(特開平2−65798
号公報)が報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
(1)及び(2)のフィルム状培地においては、試料接
種後、試料を一定面積に拡散させるためにスプレッダー
により圧力をかける操作を必要とするという問題があっ
た。また、上記(3)のフィルム状培地においては、コ
ロニーの形成が濾紙内部で行われるため、コロニーの観
察が困難であることから、精度が低下する、更に鈞菌が
できないという問題があった。従って、本発明の目的は
試料接種等の操作性に優れ、かつコロニーの観察が容易
で正確な検出が可能なフィルム状培地及びこれを用いた
微生物の検出方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らはフ
ィルム状培地を上記操作性とコロニーの検出性との両面
から種々検討した結果、基体として毛細管現象により水
を拡散できるシートを用い、そのシートの片面に2種の
特定の高分子化合物及び菌体培養用栄養成分を含有する
培地組成物を含む薄膜を形成すれば、試料液をフィルム
状培地上に滴下するのみで容易に拡散し、かつ形成され
た薄膜上で明確なコロニーが形成され、検出性の良好な
フィルム状培地が得られることを見出し、本発明を完成
するに至った。
【0006】すなわち、本発明は毛細管現象により水を
拡散することのできるシートの片面に、(a)水及びア
ルコールに可溶な高分子化合物、(b)水に可溶でアル
コールに不溶な高分子化合物及び(c)菌体培養用栄養
分を含有する培地組成物を含む薄膜を形成したことを特
徴とするフィルム状培地を提供するものである。
【0007】また、本発明は上記のフィルム状培地の非
薄膜形成面に検体液を接種して培養し、薄膜形成面に形
成されたコロニーを検出することを特徴とする検体中の
微生物の検出方法を提供するものである。
【0008】本発明のフィルム状培地の基体として用い
られるシートは、シート上に接種された検体液が拡散
し、当該検体液中の微生物を培地組成物に到達せしめる
ため、毛細管現象により水を拡散することのできるもの
であることが必要である。かかる性質を有するシートと
しては、濾紙、レーヨン不織布、ポリエステル不織布、
ポリプロピレン不織布に代表される合成繊維不織布、コ
ットン不織布に代表される天然繊維不織布などが挙げら
れる。このうち、濾紙、レーヨン不織布及び長繊維セル
ロース不織布が好ましく、特に濾紙及びレーヨン不織布
が好ましい。
【0009】これらのシートは上記の性質を有するもの
であれば、特に制限されないが、水の拡散性及び薄膜形
成性の両者を考慮すれば5〜200g/m2の密度を有
し、0.05〜0.5mmの厚さを有するシート、特に濾
紙及びレーヨン不織布が好ましい。
【0010】また、これらのシートの形状は、正方形、
長方形、円形等特に限定されない。またその大きさも特
に制限されないが、微生物の簡易検出用の場合には長径
で1〜15cmが好ましい。
【0011】本発明においては、上記シートの片面に前
記(a)、(b)及び(c)成分を含有する培地組成物
を含む薄膜が形成されているものであり、この培地組成
物はシートの構造中にほとんど浸透していないことが望
ましい。培地組成物がシートの構造中に浸透している場
合には、微生物のコロニーがシートの構造中で形成され
るため、肉眼でのコロニー観察が容易でなく、鈞菌がで
きない。これに対し、本発明では培地組成物を含む薄膜
がシートの片面に形成されているため、当該薄膜中でコ
ロニーが形成されるため、肉眼による観察が容易であ
り、鈞菌も容易である。
【0012】薄膜の形成は、例えば前記(a)、(b)
及び(c)成分を含むアルコール懸濁液をシートの片面
に塗布後乾燥する方法;並びにこのアルコール懸濁液を
乾燥して得られた薄膜をシート片面にラミネートする方
法が挙げられる。アルコール中では、(a)成分は溶解
しているが、(b)成分は溶解していないので、コーテ
ィング法を採用した場合でもシートの構造中にほとんど
浸透せず、表面に均一にコーティングされる。またラミ
ネート法を採用する場合、薄膜の形成は、例えば前記ア
ルコール懸濁液をシャーレなどのガラスやプラスチック
表面に塗布後乾燥して得られた薄膜に、シートをのせて
接触固定する方法が好ましい。このようにシャーレ内部
のガラスやプラスチック表面上でラミネートする方法で
得られたフィルム状培地は、そのままシャーレ内にフィ
ルム状培地が固定化された状態で使用してもよい。ま
た、ラミネート法により調製したフィルム状培地は透明
性が高いため肉眼による観察が容易であり、特に好まし
い。
【0013】培地組成物に用いられる(a)水及びアル
コールに可溶な高分子化合物としては、ヒドロキシプロ
ピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン
オキサイド等が挙げられるが、ヒドロキシプロピルセル
ロースが特に好ましい。この(a)成分は、培地組成物
中に0.1〜10重量%、特に0.5〜3重量%配合す
るのが好ましい。
【0014】また、(b)水に可溶でアルコールに不溶
な高分子化合物としては、通常ゲル化剤として用いられ
る高分子化合物が挙げられ、例えばキサンタンガム、ロ
ーカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン、ペク
チン等の天然ゲル化剤;ポリアクリルアミド等の合成ゲ
ル化剤が好ましい。このうち、キサンタンガムが特に好
ましい。この(b)成分は、培地組成物中に1〜30重
量%、特に5〜15重量%配合するのが好ましい。
【0015】また、(c)菌体培養用栄養分は、検出し
ようとする微生物の生育に適し、水可溶性のものが選択
される。例えば、多種の微生物を増殖させる場合には、
一般的な栄養培地成分が用いられ、特定の微生物を選択
的に増殖させる場合には選択培地成分が用いられる。こ
の(c)成分は、通常培地組成物中に0.5〜20重量
%、特に1〜5重量%配合するのが好ましい。
【0016】更にこの培地組成物には、コロニーの観察
を容易にするため、種々の発色剤を配合するのが好まし
い。かかる発色剤には、コロニーを着色する色素、例え
ばトリフェニルテトラゾリウムクロライド、3−(p−
ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−
フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド、3−
(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフ
ェニル−2H−テトラゾリウムブロマイド等の色素;5
−ブロモ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド等の
酵素基質:ブロムチモールブルーやニュートラルレッド
のようなpH指示薬等が含まれる。また、コロニーの観察
を容易にするため、発色剤を配合せず、シート自体を着
色してもよい。
【0017】これらの成分を含有する培地組成物を含む
薄膜を形成させる際のアルコール懸濁液中の培地組成物
の濃度は、コーティングの際、培地組成物が容易に基体
であるシートに浸透しない程度の粘度になる濃度である
ことが好ましく、1〜70重量%、特に6〜30重量%
が好ましい。ここで、アルコールとしては炭素数1〜5
のアルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。
【0018】このアルコール懸濁液のシートやガラス表
面等への塗布は、例えばバーコーター、ドクターブレー
ド、ベーカーアプリケーターなどによる塗布や吹き付け
(噴霧)による塗布が挙げられるが、ベーカーアプリケ
ーターによるのが好ましい。次いで、乾燥は自然乾燥、
減圧乾燥、熱風乾燥が好ましい。更に、ガス、γ線、電
子線等により滅菌するのが好ましい。
【0019】得られたフィルム状培地におけるシート上
の薄膜層は、0.01〜2mm、特に0.1〜1mmである
のが好ましい。
【0020】本発明フィルム状培地は、シートの片面全
体に1種の培地組成物を含む薄膜が均一に形成されてい
てもよく(例えば図1)、また菌体培養用栄養分と発色
剤を変化させた複数種の培地組成物を含む薄膜を形成し
たものでもよい(例えば図2、図3)。
【0021】得られた本発明フィルム状培地は、試験に
供されるまでの間雑菌による汚染を防止する目的で、周
囲を撥水性フィルムの袋、プラスチックシャーレ、ガラ
スシャーレ等で覆っておくのが好ましい。
【0022】本発明フィルム状培地を使用して微生物を
培養・検出するには、非薄膜形成面に検体液を接種して
培養し、薄膜形成面に形成されたコロニーを検出するこ
とにより行われる。非薄膜形成面に接種された検体液中
の微生物は、液体とともにシート中を毛細管現象により
拡散し、薄膜形成面に到達する。薄膜形成面には、前記
(a)、(b)及び(c)成分が固体状態で存在するの
で、(a)、(b)成分粒子間で(c)成分を利用して
増殖し、コロニーを形成する。従って、薄膜形成面を観
察すれば、形成したコロニーが容易に観察できる。試料
を定量的にフィルム状培地へ接種すれば、培養後出現し
たコロニーを計測することにより、容易に菌数を算定す
ることができる。なお、菌体液の接種は通常ピペット等
により一定量を接種する方法が採用されるが、水分の多
い固体を非薄膜形成面にスタンプする方法でもよい。ま
た、検体液接種後の培養は、静置しておいてもよく、輸
送期間中に培養を兼ねてもよい。
【0023】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0024】実施例1 培地組成物成分としてペプトン1.7g、ダイズペプト
ン0.3g、塩化ナトリウム0.5g、ブドウ糖0.2
5g、リン酸一水素カリウム0.25g、キサンタンガ
ム(三栄源エフ・エフ・アイ)10gとヒドロキシプロ
ピルセルロース(HPC、和光純薬)1g、トリフェニ
ルテトラゾリウムクロライド0.002gを用いエタノ
ール100mlに懸濁し、よく攪拌して調製した。次にこ
のエタノール懸濁液を濾紙(アドバンテックNo.1
55φmm)に1.5mlずつ滴下し、ベーカーアプリケー
ターにより均一になるようにコーティングし、乾燥後ポ
リエチレン袋(厚さ40μm 、60×85mm)に挿入
し、エチレンオキサイドガス滅菌後供試した。
【0025】各種菌株をトリプトソーヤブイヨンで35
℃24時間培養後、10倍段階希釈を行い、それぞれ1
mlずつをフィルム状培地の非薄膜形成面に接種するか、
又はトリプトソーヤ寒天培地(TSA、日水製薬)に接
種して35℃24時間培養後の菌数測定を行った。その
結果を表1に示した。その結果、各種菌株ではフィルム
状培地及びTSAにおいてもほぼ同様の菌数を示した。
また、フィルム状培地に形成したコロニーを白金線を用
いて刺すことにより釣菌し、更にTSA平板に接種して
35℃、24時間培養したところコロニーの形成が認め
られた。
【0026】
【表1】
【0027】実施例2 培地組成物成分としてダイズペプトン1.0g、ペプト
ン0.5g、塩化ナトリウム0.5g、酵母エキス0.
5g、リン酸水素二カリウム0.25g、ピルビン酸ナ
トリウム0.1g、硝酸カリウム0.1g、ラウリル硫
酸ナトリウム0.02g、キサンタンガム(三栄源エフ
・エフ・アイ)10gとヒドロキシプロピルセルロース
(HPC、和光純薬)1g、5−ブロモ−3−インドリ
ル−β−D−ガラクトシド(X−Gal)0.03gを
用いたエタノール100mlに懸濁し、よく攪拌して調製
した。フィルム状培地の作製方法は実施例1と同様に行
った。
【0028】各種菌株をトリプトソーヤブイヨンで35
℃24時間培養後、10倍段階希釈を行い、それぞれ1
mlずつをフィルム状培地(X−Gal)の非薄膜形成面
に接種するか、又はx−Gal加寒天培地(培地成分の
うちキサンタンガム及びHPCを除き、代わりに1.5
%寒天を添加した培地)に接種して35℃24時間培養
後の菌数測定を行った。その結果を表2に示した。その
結果、各種菌株ではフィルム状培地(X−Gal)及び
X−Gal加寒天平板ともほぼ同様の菌数を示した。
【0029】
【表2】
【0030】実施例3 フィルム状培地の作製は実施例1と同様に行った。市販
食品を購入し、その食品10gに90mlの滅菌生理食塩
水を加えて均一になるようにストマッキングした試料を
10倍段階希釈し、その1mlをフィルム状培地の非薄膜
形成面に接種した。更に同様の試料の1mlを滅菌シャー
レにとり、あらかじめ滅菌し45℃程度に冷却してある
標準寒天培地(日水製薬)を注ぎ、混釈した。培養は、
35℃48時間培養し、出現したコロニーを算出した。
その結果を表3に示す。その結果、各種食品においてフ
ィルム状培地及び標準寒天培地はほぼ同様の菌数を示し
た。
【0031】
【表3】
【0032】実施例4 実施例1と同様な培地組成を有するエタノール懸濁液1
mlを47φmmのシャーレに滴下し、均一になるように広
げて乾燥した後、半透明な13.5g/m2の密度を有す
るレーヨン不織布を接触固定させた。これをエチレンオ
キサイドガス滅菌後供試した。各種菌株をトリプトソー
ヤブイヨンで35℃24時間培養後、10倍段階希釈を
行い、それぞれ1mlずつを上記のフィルム状培地の非薄
膜形成面に接種し、35℃24時間培養後菌の観察を行
った。その結果、培地及び拡散シートは透明となり、発
育したコロニーを表裏両面より容易に観察することがで
きた。
【0033】
【発明の効果】本発明のフィルム状培地を用いれば、検
体液の接種が容易であり、更にコロニーの観察及び鈞菌
が正確かつ容易にできるため、種々の微生物の検査を簡
便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シートの片面全体に同一組成の培地組成物を含
む薄膜が形成された本発明フィルム状培地を示す説明図
である。
【図2】シートの片面にそれぞれ異なる組成を有する培
地組成物を含む薄膜が形成された本発明フィルム状培地
を示す説明図である。
【図3】長方形状のシートの片面にそれぞれ異なる組成
を有する培地組成物を含む薄膜が形成された本発明フィ
ルム状培地を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀米 一己 茨城県結城市北南茂呂1075−2 日水製薬 株式会社診断薬研究部内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 毛細管現象により水を拡散することので
    きるシートの片面に、(a)水及びアルコールに可溶な
    高分子化合物、(b)水に可溶でアルコールに不溶な高
    分子化合物及び(c)菌体培養用栄養分を含有する培地
    組成物を含む薄膜を形成したことを特徴とするフィルム
    状培地。
  2. 【請求項2】 培地組成物を含む薄膜が、当該培地組成
    物のアルコール懸濁液を当該シートの片面に塗布後乾燥
    することによりコーティングして形成されたものである
    か、又は当該培地組成物のアルコール懸濁液を乾燥して
    得られた薄膜を当該シート片面にラミネートして形成さ
    れたものである請求項1記載のフィルム状培地。
  3. 【請求項3】 培地組成物が、更に発色剤を含有するも
    のである請求項1記載のフィルム状培地。
  4. 【請求項4】 1枚のシートに、異なる組成を有する複
    数の培地組成物を含む薄膜が形成されている請求項1〜
    3のいずれかの項記載のフィルム状培地。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のフィルム状培地の非薄膜
    形成面に検体液を接種して培養し、薄膜形成面に形成さ
    れたコロニーを検出することを特徴とする検体中の微生
    物の検出方法。
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