JPH08283887A - 硬ろう付け加熱後の膨張率が小さい熱交換器用耐熱銅合金及びその製造方法 - Google Patents

硬ろう付け加熱後の膨張率が小さい熱交換器用耐熱銅合金及びその製造方法

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JPH08283887A
JPH08283887A JP11002995A JP11002995A JPH08283887A JP H08283887 A JPH08283887 A JP H08283887A JP 11002995 A JP11002995 A JP 11002995A JP 11002995 A JP11002995 A JP 11002995A JP H08283887 A JPH08283887 A JP H08283887A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 硬ろう付け加熱後の膨張を脱酸銅と同等の低
い水準に抑えた熱交換器用耐熱銅合金を得る。 【構成】 Fe:1.3乃至2.1重量%、P:0.0
01乃至0.1重量%、Co:0.2乃至1.0重量
%、およびZn:0.01乃至1.0重量%、FeとC
oの含有量の合計が2.5重量%以下、残部がCuおよ
び不可避的不純物からなる銅合金鋳塊を熱間加工後、急
冷した後、冷間加工を行い、その後500乃至830℃
の温度で10秒以上加熱し、5℃/sec以上の冷却速
度で冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は硬ろう付け加熱後におい
ても、強度及び疲労特性の低下が小さく、さらに硬ろう
付け加熱後の膨張率が小さい熱交換器用耐熱銅合金およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】風呂釜又は湯沸し器等の熱交換器の缶体
及びパイプは、溶接又はろう付けにより組み立てられる
ので、それに使用する材料としては、溶接性及びろう付
け性が良好であることが必要とされ、更に、熱交換器の
構成部材であるため、熱伝導性がよいことも必要である
ことから、従来、りん脱酸銅が一般的に使用されてい
る。
【0003】しかし、脱酸銅の場合、ろう付け部および
溶接部において熱応力が繰り返し負荷されると、この部
分から疲労破壊を起こすことが知られている。これは、
ろう付け時の熱によってその部分の結晶粒が粗大化し、
疲労破壊に対する抵抗力が低下することによるものであ
る。熱応力による疲労破壊を防止するために、従来の熱
交換器においては、パイプ部にベローズを入れたりして
構造上の面から熱応力を発生し難くする手段も講じられ
てきたが、ベローズを設けると、熱交換器の構造が複雑
になるとともに製造コストが高くなるという欠点があ
る。
【0004】したがって、脱酸銅と同程度の優れた耐食
性を有するとともに、ろう付けおよび溶接等の熱による
結晶粒の粗大化が防止され、熱応力による疲労破壊に対
して耐久性が高い熱交換器用銅合金が望まれていた。こ
のような状況のもと、本出願人は疲労破壊に対する耐久
性を高めた銅合金として、Fe:1.3乃至2.1重量
%、P:0.001乃至0.1重量%、Co:0.2乃
至1.0重量%、およびZn:0.01乃至1.0重量
%を有し、且つ前記Feの含有量および前記Coの含有
量の合計が2.5重量%以下であり、残部がCuおよび
不可避的不純物からなる銅合金を先に提案した(特開平
4ー272148号公報)。
【0005】この銅合金は、例えば図3に示す熱交換器
において、特に耐久性を要求される缶体中のフランジ部
1に使用されているが、その場合、フランジ部1と脱酸
銅からなるバーナーケース2とをボルト締めした状態で
パイプ3のろう付けが行われることが多く、この硬ろう
付け加熱(例えば、窒素中において830℃、10分間
の加熱)により、図4に示すように、上記銅合金からな
るフランジ部1が膨張し、冷却後、脱酸銅からなるバー
ナーケース2との間に寸法差に基づくたわみ5が生ずる
という不具合が発生している。なお、図3において、4
はフィンである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の銅合
金の上記問題点に鑑みてなされたもので、上記従来の銅
合金と同一成分組成の銅合金において、硬ろう付け時お
よび溶接時等の熱による結晶粒の粗大化抑制、及び熱応
力の繰り返しに起因する疲労破壊に対する高い耐久性と
いう優れた特性を従来同様に備えるとともに、硬ろう付
け加熱後の膨張を脱酸銅と同等の低い水準に抑えた熱交
換器用耐熱銅合金を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記銅合金に対してはこ
れまで冷間圧延の途中で析出焼鈍(575℃×2Hr+
500℃×4Hr、その後炉中で徐冷)を施し、その徐
冷過程でFeを意図的に析出させ、熱交換器缶体に要求
される熱伝導性・導電率を向上させていたが、本発明者
らのその後の研究により、このように処理された銅合金
が硬ろう付け加熱を受けると、FeやFe2PなどのF
e析出物が硬ろう付け加熱の過程で固溶し、これにより
銅合金の膨張が脱酸銅に比べて大きくなり、さらに冷却
過程は空冷(急速空冷)のため一旦固溶したFeは再び
析出を辿ることができず、その結果、硬ろう付け加熱後
は元に戻らず加熱前の長さよりも大きくなってしまうこ
とが分かった。
【0008】本発明者らは、この知見に基づき種々の実
験・調査を行い、硬ろう付け加熱前に予めFe析出物を
母相中に固溶させておくことにより、硬ろう付け加熱過
程における固溶とそれに伴う膨張を抑え、硬ろう付け加
熱後の伸びを抑えることができ、しかも、上記銅合金の
前記特性が損なわれないことを見い出し、以下の発明を
完成した。
【0009】本発明に関わる硬ろう付け加熱後の膨張率
が小さい熱交換器用耐熱銅合金は、Fe:1.3乃至
2.1重量%、P:0.001乃至0.1重量%、C
o:0.2乃至1.0重量%、およびZn:0.01乃
至1.0重量%を有し、且つ前記Feの含有量および前
記Coの含有量の合計が2.5重量%以下であり、残部
がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金であって、
次式で定義される硬ろう付け後の膨張率R(%)が
0.05%以下であり、さらに結晶粒径が1乃至50μ
mであることを特徴とする。 R=(L1−L0)÷L0×100 ・・・・ ここで、L1:ろう付け後の長さ L0:ろう付け前の長さ
【0010】また、本発明に関わる硬ろう付け加熱後の
膨張率が小さい熱交換器用耐熱銅合金は、Fe:1.3
乃至2.1重量%、P:0.001乃至0.1重量%、
Co:0.2乃至1.0重量%、およびZn:0.01
乃至1.0重量%を有し、且つ前記Feの含有量および
前記Coの含有量の合計が2.5重量%以下であり、残
部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金であっ
て、導電率が20乃至50%IACSであり、さらに結
晶粒径が1乃至50μmであることを特徴とする。
【0011】さらに、本発明に関わる硬ろう付け加熱後
の膨張率R(%)が0.05%以下である熱交換器用耐
熱銅合金の製造方法は、Fe:1.3乃至2.1重量
%、P:0.001乃至0.1重量%、Co:0.2乃
至1.0重量%、およびZn:0.01乃至1.0重量
%を有し、且つ前記Feの含有量および前記Coの含有
量の合計が2.5重量%以下であり、残部がCuおよび
不可避的不純物からなる銅合金鋳塊を熱間加工後、急冷
した後、冷間加工を行い、その後500乃至830℃の
温度で10秒以上加熱し、5℃/sec以上の冷却速度
で冷却することを特徴とする。
【0012】なお、この製造方法については上記組成以
外のCu−Fe−Ti、Cu−Ni−Tiなどの析出硬
化型合金にも適用することができる。
【0013】
【作用】はじめに、本発明に係わる熱交換器用耐熱銅合
金の成分添加理由、組成限定理由、及び性質限定理由に
ついて説明する。
【0014】Fe Feは銅合金の強度向上に寄与する元素である。Fe含
有量が1.3重量%未満の場合は、硬ろう付け後の強度
が不十分である。また、Feの含有量が2.1重量%を
超えると、Cu中への固溶が飽和状態となり、巨大化し
たFeの結晶粒が晶出し内部欠陥が発生しやすくなっ
て、健全な製品の製造が困難になる。従って、Fe含有
量は1.3乃至2.1重量%、より好ましくは1.6乃
至2.0重量%とする。
【0015】Co Coは結晶粒の粗大化の抑制に必須の元素である。ま
た、800乃至900℃の温度でのろう付け行程におい
ても、二次再結晶粒の成長を抑制して組織を微細に保持
し、耐熱疲労性を向上させる作用を有する。Co含有量
が0.2重量%未満の場合は、このような効果を十分に
得ることができない。また、Co含有量が1.0重量%
を超える場合は、含有量の増加に見合うCoの添加効果
の向上が得られず、無駄である。従って、Co含有量は
O.2乃至1.0重量%、より好ましくは0.3乃至
0.7重量%とする。なお、上述したFe及びCoの含
有量が2.5重量%を超えると、Feの巨大晶出物に起
因する内部欠陥が発生しやすくなる。従って、Fe及び
Coの合計の含有量は2.5重量%以下であることが必
要である。
【0016】P Pは銅合金溶湯中における脱酸効果を有している。P含
有量が0.001重量%未満の場合は、溶湯中における
脱酸効果を得ることができない。また、P含有量が0.
1重量%を超えると、熱間加工性の劣化及び導電率の低
下を招来する。従ってP含有量は0.001乃至0.1
重量%とする。
【0017】Zn ZnはSnめっき又ははんだめっき等のめっき層のめっ
き密着性を向上させると共に、はんだ濡れ性を向上させ
る効果がある。Zn含有量が0.01重量%未満の場合
は、このような効果が不十分である。また、Zn含有量
が1.0重量%を超えると、ろう付け性及び導電性が低
下する。このため、Zn含有量は0.01乃至1.0重
量%とする。
【0018】なお、銅合金中には不可避的不純物とし
て、B、Cr、Ti、Zr、Mg、Ni及びSn等の元
素がスクラップ材等から混入することが考えられる。こ
れらの元素の総含有量が0、2重量%以下の場合は、本
発明合金の物性に悪影響を及ぼす虞れはないので、この
程度の含有は許容される。
【0019】膨張率 硬ろう付け後の膨張率は、缶体の寸法及び強度等に関わ
る特性である。熱交換器缶体の場合、熱疲労に対する抵
抗力を向上させるため、缶体を補強する等の工夫がなさ
れているが、ろう付け後膨張して寸法が異なると缶体形
状が変化し、補強効果が著しく低下する。上記式で定
義される膨張率が0.05%を超える場合は後工程で缶
体寸法の修正が困難であるため、膨張率は0.05%以
下とする。
【0020】結晶粒径 結晶粒径は、熱交換器缶体の強度及び耐熱疲労特性に関
わる。結晶粒径が小さい程耐熱性は向上し、硬ろう付け
加熱後も機械的性質の低下は小さく、また、熱応力の繰
り返しによる疲労破壊に対して耐久性が高い。しかしな
がら、結晶粒径が1μm未満の場合、成形加工性が低下
して成形時に割れが生じるようになり、一方、結晶粒径
が50μmを超えるような場合は、硬ろう付け加熱後の
機械的性質及び耐熱疲労特性が低下する。従って、結晶
粒径は1乃至50μmとする。
【0021】導電率 この銅合金の膨張率は含有元素であるFeの固溶量に関
係し、膨張率を抑えるためにはろう付け加熱前に予めF
e析出物を母相中に固溶させる必要がある。一方、Fe
の固溶量は導電率に表れ、Feの固溶量が多いほど導電
率が下がるという関係にある。従って、この銅合金で
は、ろう付け加熱前の導電率でろう付け加熱後の膨張率
を評価することもでき、また、ろう付け加熱後の膨張率
を抑えるためにはろう付け加熱前の導電率を抑えておく
必要がある。
【0022】図1は、後述する実施例の欄の表1に記載
した銅合金の冷間圧延材を、同欄に記載した手順に従い
種々の導電率(ろう付け加熱前)に調整し、そのろう付
け加熱後の膨張率を同欄に記載した方法により求め、ろ
う付け加熱前の導電率とろう付け加熱後の膨張率の関係
をグラフ化したものである。図1より、膨張率を0.0
5%以下とするためには、ろう付け加熱前の銅合金の導
電率を50%IACS以下にするとよいことが分かる。
しかしながら、熱交換器缶体としては熱伝導性・導電率
に優れることが望まれており、導電率20%IACS以
上は必要である。従って、ろう付け前において導電率は
20乃至50%IACSとする。
【0023】次に、本発明に係わる熱交換器用耐熱銅合
金の製造方法についてその処理条件の限定理由について
説明する。
【0024】本発明方法において、冷間加工材に対し、
500乃至830℃の温度で10秒以上の加熱を行うの
は、Fe析出物を母相中に固溶させるためである。も
し、従来のようにFeが析出した状態だと硬ろう付け時
の加熱により、500℃付近から固溶しはじめ、従って
銅合金の膨張は脱酸銅に比べて大きくなり、さらに硬ろ
う付け時の冷却過程は空冷(急速空冷)のため、一旦固
溶したFeは固溶したままの状態で冷却され再び析出を
辿ることができず、その結果初期長さよりも大きくなっ
てしまう。
【0025】加熱温度が500℃未満の場合はFe析出
物はマトリックス中に固溶しないため膨張率は大きくな
り、一方、830℃を超えると再結晶粒が粗大化し、材
料強度が低下する。従って、加熱温度は500乃至83
0℃とする。特に550〜650℃の温度範囲で加熱す
るとろう付け後の強度低下が小さくなると同時に、Fe
の固溶により膨張率が小さくなるので好ましい。また、
加熱時間が10秒未満の場合は、上記温度範囲で加熱し
てもFeの固溶が不十分であるため、加熱時間は10秒
以上とする。
【0026】さらに冷却速度を5℃/sec以上とした
のは、冷却速度が5℃/sec未満だと、冷却中にFe
2P及びFe等が析出するためである。なお、冷却中に
生じたこれらの析出物は銅合金の耐熱性および機械的性
質の強化には寄与しない。したがって、冷却速度は5℃
/sec以上とする。
【0027】
【実施例】次に、本発明の実施例に係る硬ろう付け加熱
後の膨張率が小さい熱交換器用耐熱銅合金を製造し、そ
の特性を試験した結果について、本願特許請求の範囲か
ら外れる比較例と比較して説明する。
【0028】先ず、下記表1に示す成分および組成(単
位は重量%)を有する銅合金および脱酸銅(Cu−0.
02重量%P)をクリプトル炉を使用し、大気中で木炭
被覆下にて溶製した後、鋳造して厚さが50mm、幅が
75mm、長さが180mmの鋳塊を得た。
【0029】
【表1】
【0030】そして、この鋳塊の表面および裏面を5m
mずつ面削した後、カンタル炉を用い、940℃で1時
間保持した後、15mmの厚さになるまで熱間圧延を行
い、これらの圧延材を水中に投入して急冷した。次に、
これらの熱間圧延材の表面の酸化スケールを除去した
後、この熱間圧延材を冷間圧延し、厚さが0.8mmの
冷間圧延材を得た。
【0031】表1の組成をもつ冷間圧延材を525乃至
800℃に調整した塩浴炉に浸漬し、30秒間保持した
後、100℃以下まで約10℃/secの速度で水中冷
却し、これらを実施例1〜5の試験材とした。それらの
特性を表2に示す。
【0032】また、表1の組成をもつ冷間圧延材を40
0乃至850℃に調整した塩浴炉に浸漬し、30秒間保
持した後、100℃以下まで約10℃/sec又は2℃
/secの速度で冷却し、これらを比較例1〜3の試験
材とし、表1の組成をもつ冷間圧延材を塩浴炉により5
75℃×2Hr+500℃×4Hrの析出焼鈍を行い、
100℃以下まで2℃/secの速度で冷却し、これを
比較例4(従来例に相当)の試験材とし、さらに、脱酸
銅(-1/4H相当、500℃で上り前焼鈍を行った後、1
0%の冷間圧延)の冷間圧延材は比較例5の試験材とし
た。それらの特性を表3に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】続いて、このように製造した実施例1〜
5、及び比較例1〜5の各試験材に対して、実際の硬ろ
う付け加熱条件を想定して、窒素中830℃の温度で1
0分間加熱を行い、加熱後の特性を調べた(膨張率のみ
は下記試験方法の加熱条件による)。その結果を表4及
び表5に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】但し、表2〜表5において、各特性は以下
に示す試験方法により測定した。 (1)引張試験においては、各試験材から圧延方向に平
行に切り出したJIS5号試験片を使用して、引張強
さ、耐力および伸びを測定した。 (2)各試験材の硬さは、ビッカース硬度計を使用し
て、荷重2kgの条件で測定した。 (3)導電率は幅10mm、長さが300mmの試験片
を使用して、これらの試験片の電気抵抗をダブルブリッ
ジにより測定し、平均断面積法により算出した。 (4)結晶粒径は光学顕微鏡により測定した。
【0039】(5)膨張率の測定については、厚さ0.
8mm、幅8mm、長さ20mmの試験材にて、膨張長
さ測定機を用い、硬ろう付け加熱温度に相当する850
℃まで10℃/分で昇温した後、冷却(空冷却、約63
℃/分)し、その後の長さ変化(膨張率)を測定した。 (6)疲労試験においては、薄板疲労試験機を使用し、
各試験材から切り出した幅が10mmの試験片に対し
て、周期が60Hz、応力振幅は2.5mm、平均応力
が15kgf/mm2の条件で両振り繰り返し応力を負
荷した。そしてこの繰り返し応力により試験片が破断す
るまでの回数を測定した。
【0040】実施例1〜5は、硬ろう付け想定加熱前に
各々525、550、600、650、800℃の温度
で30秒間加熱を行い、続いて100℃以下まで約10
℃/secの速度で水中冷却して製造した試験材であ
る。これに対し、比較例1及び2は各々400、850
℃の加熱を行った試験材、比較例3は加熱後の冷却速度
を2℃/secとした試験材であり、いずれも本発明の
特許請求の範囲から外れるものである。また、比較例4
は従来の製造方法に相当する方法で得られた試験片、比
較例5は従来の脱酸銅(-1/4H相当)の試験片である。
【0041】表2〜表5から明らかなように、実施例1
〜5は硬ろう付け想定加熱後の膨張率は比較例5(脱酸
銅)に近い値を有し、従来の製造方法に相当する比較例
4に比べ小さくなっている。これは硬ろう付け想定加熱
前において、Feが母相へ固溶しているためで、加熱前
の導電率は本発明で規定する20乃至50%IACSの
範囲内にある。さらに、結晶粒径は比較例5(脱酸銅)
に比べて小さく、そのため機械的性質及び疲労特性に優
れ、特に耐力は9.5倍を有している。
【0042】これに対し、比較例1は加熱温度が400
℃と低いため、Feは母相中に十分に固溶できず、その
ため導電率が55%IACSと高く、硬ろう付け想定加
熱後の膨張率が0.07%と大きくなっている。比較例
2は加熱温度が850℃と高いため、結晶粒が80μm
と粗大化し、そのためろう付け後の機械的性質及び疲労
特性が劣っている。比較例3は加熱後の冷却速度が2℃
/secと小さいため、Feが析出し、加熱前の導電率
は60%IACSと本発明で規定する範囲よりも高く、
従ってろう付け想定加熱後の膨張率が0.08%と大き
くなっている。
【0043】従来の製造方法に相当する比較例4は意図
的にFeを析出させているため、加熱前の導電率は70
%IACSと高く、そのため、ろう付け想定加熱後の膨
張率は0.09%と大きくなっている。比較例5(脱酸
銅)は硬ろう付け加熱により結晶粒径は200μmに粗
大化し、硬ろう付け想定加熱後の機械的性質及び疲労特
性が劣っている。
【0044】また、図4は試験片(実施例1、比較例
1、4、5)の膨張長さの測定結果を示すものであり、
aは実体温度の変化を示し、b、c、d、eはそれぞれ
実施例1、比較例1、4、5の膨張長さ(伸び率を併
記)の変化を示す。ここに示すように、比較例1及び4
では、母相中に析出していたFeが500℃付近から固
溶しはじめ、そのため膨張が比較例5(脱酸銅)に比べ
て大きくなり、さらに、冷却過程では冷却速度が大きい
ため一旦固溶したFeは再び析出せず、その結果、冷却
後は元に戻らず加熱前の長さよりかなり大きくなってい
る。一方、実施例1は、加熱前にFeを固溶させている
ため、冷却後は比較例5(脱酸銅)と遜色ない低い膨張
率(=冷却後の伸び率)となっている。
【0045】
【発明の効果】本発明に係る熱交換器用耐熱銅合金(請
求項1)は、硬ろう付け時および溶接時等の熱による結
晶粒の粗大化が抑制され、硬ろう付け後の機械的性質及
び疲労特性に優れ、また、硬ろう付け後の膨張率を前記
の通り限定したことで、例えば、熱交換機缶体のフラン
ジ部として脱酸銅からなるバーナーケースと組み付けて
使用するときなど、硬ろう付け加熱後に生ずるたわみが
抑えられ、たとえ生じても後工程で容易に修正できるよ
うになる。また、本発明に係る熱交換機用耐熱銅合金
(請求項2)は、硬ろう付け前の導電率を限定したこと
で、ろう付け加熱後の膨張率を小さくすることができ
る。
【0046】本発明の熱交換機用耐熱銅合金の製造方法
(請求項3)によれば、従来の製造方法による材料に比
べて硬ろう付け後の機械的性質及び疲労特性を劣化させ
ることなく、硬ろう付け後の膨張率の小さい熱交換器用
耐熱銅合金を得ることができる。従って、本発明は熱交
換器の信頼性向上に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験材の硬ろう付け加熱前の導電率と硬ろう付
け加熱後の膨張率の関係を示す図である。
【図2】硬ろう付け加熱を施したときの試験材の膨張履
歴を示したものである。
【図3】熱交換器の構造を示す概略図であり、(a)は
その正面図、(b)は側面図である。
【図4】従来の製造方法による銅合金と(フランジ部)
と脱酸銅(バーナーケース部)を用いた硬ろう付け後の
熱交換器内部の構造(たわみが発生した場合)を示す側
面図である。
【符号の説明】
1 フランジ部 2 バーナーケース部 5 たわみ部

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe:1.3乃至2.1重量%、P:
    0.001乃至0.1重量%、Co:0.2乃至1.0
    重量%、およびZn:0.01乃至1.0重量%を有
    し、且つ前記Feの含有量および前記Coの含有量の合
    計が2.5重量%以下であり、残部がCuおよび不可避
    的不純物からなる銅合金であって、次式で定義される
    硬ろう付け後の膨張率R(%)が0.05%以下であ
    り、さらに結晶粒径が1乃至50μmであることを特徴
    とする硬ろう付け加熱後の膨張率が小さい熱交換器用耐
    熱銅合金。 R=(L1−L0)÷L0×100 ・・・・ ここで、L1:ろう付け後の長さ L0:ろう付け前の長さ
  2. 【請求項2】 Fe:1.3乃至2.1重量%、P:
    0.001乃至0.1重量%、Co:0.2乃至1.0
    重量%、およびZn:0.01乃至1.0重量%を有
    し、且つ前記Feの含有量および前記Coの含有量の合
    計が2.5重量%以下であり、残部がCuおよび不可避
    的不純物からなる銅合金であって、導電率が20乃至5
    0%IACSであり、さらに結晶粒径が1乃至50μm
    であることを特徴とする硬ろう付け加熱後の膨張率が小
    さい熱交換器用耐熱銅合金。
  3. 【請求項3】 Fe:1.3乃至2.1重量%、P:
    0.001乃至0.1重量%、Co:0.2乃至1.0
    重量%、およびZn:0.01乃至1.0重量%を有
    し、且つ前記Feの含有量および前記Coの含有量の合
    計が2.5重量%以下であり、残部がCuおよび不可避
    的不純物からなる銅合金鋳塊を熱間加工後、急冷した
    後、冷間加工を行い、その後500乃至830℃の温度
    で10秒以上加熱し、5℃/sec以上の冷却速度で冷
    却することを特徴とする、請求項1の式で定義される
    硬ろう付け加熱後の膨張率R(%)が0.05%以下で
    ある熱交換器用耐熱銅合金の製造方法。
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