JPH08277082A - エレベータ駆動装置及びエレベータ - Google Patents

エレベータ駆動装置及びエレベータ

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JPH08277082A
JPH08277082A JP8430695A JP8430695A JPH08277082A JP H08277082 A JPH08277082 A JP H08277082A JP 8430695 A JP8430695 A JP 8430695A JP 8430695 A JP8430695 A JP 8430695A JP H08277082 A JPH08277082 A JP H08277082A
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亮二 岡田
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謙介 加藤
Kiju Endo
喜重 遠藤
Jiyun Sugawara
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 B種ロープを相手材料としても摺動面の異常
摩耗が生ぜず、またロープの異常摩耗も引き起こさない
シーブを実現する。 【構成】 乗りかご1は、ロープ2によって建物最上階
機械室にある駆動装置3に連結されている。駆動装置3
には電動機4により減速機5を介して回転駆動されるシ
ーブ6が設けられ、このシーブ6のロープ溝には、一端
側に乗りかご1を、他端側に釣合い錘7を吊るしたロー
プ2が巻きかけられている。このようなエレベータ駆動
装置において、重量%でNi:0.5〜2.0,Cu:
0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率が90%以
上である球状黒鉛鋳鉄で、シーブ6を形成する。この場
合、ロープ2としては、外層素線の強度が180kg/
mm2以上、ビッカース硬さが480〜500の高強度
ロープを用いると好都合である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長行程・大容量のロー
プ式エレベータを駆動するのに好適なエレベータ駆動装
置、及びそのエレベータ駆動装置が設置されたエレベー
タに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ロープ式エレベータは、両端に乗りかご
と釣合い錘を有するロープがシーブに巻きかけられ、シ
ーブを電動機で回転させたとき、ロープとシーブとの間
に生じる摩擦力によってロープを上下方向に移動させ、
これにより乗りかごを昇降させるようになっている。
【0003】ところで、摩擦力によってロープもしくは
シーブのどちらかが異常摩耗した場合には、摩耗した部
材を交換する必要がある。そのような事態を防ぐため
に、ロープやシーブを設計する際には、それらの材質の
組み合わせには相当の注意が払われている。一般にロー
プに硬鋼線材2種を素線とするE種ロープ(標準引張り
強度=135kg/mm2,ビッカース硬さHv=33
0〜380)が用いられる場合は、シーブには片状黒鉛
鋳鉄(例えばFC250)が用いられる。長行程もしく
は大容量のエレベータの場合では、より強度の高い硬鋼
線材4種を素線とするA種ロープ(標準引張り強度=1
65kg/mm2,ビッカース硬さHv=430〜49
0)が用いられ、この場合は、シーブは耐摩耗性に優れ
る球状黒鉛鋳鉄(例えばFCD700)が用いられる。
【0004】シーブにブリネル硬さHB=280〜33
5、地の組織がパーライトの球状黒鉛鋳鉄を用い、ロー
プにビッカース硬さHv=400〜460のロープを用
いるエレベータ駆動装置が特開昭54−104145号
公報に開示されている。
【0005】また、球状化率=80〜100%、黒鉛粒
径20〜100μm、黒鉛粒数70個/mm2〜100
個/mm2で、ブリネル硬さHB=260〜320である
球状黒鉛鋳鉄を用いたシーブが特開平2−34747号
公報に開示されている。
【0006】さらにシーブに、C:3.3〜3.8%,S
i:1.5〜3.0%を有する亜共晶成分からなり、かつ
鋳放し時のパーライト面積率が90%以上あるコンパク
ト・バーミキュラ黒鉛鋳鉄を用い、ロープには引張り強
さが165kg/mm2級のA種ロープを用いたエレベ
ータが特開平4−128340号公報に開示されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】エレベータが長行程化
すると、乗りかごと釣合い錘をつなぐロープ長さが長く
なり、駆動機が昇降させる全重量中に占めるロープ重量
が増加する。また同様にエレベータ乗客の容量が増した
場合も、規格上求められる安全率を確保するためロープ
本数が増え、ロープ重量が増加する。ロープ重量が増加
すると、エレベータ乗客の容量(乗客数)が低下、もし
くは駆動機の大型化が必要となり、エレベータシステム
としての効率が低下する。また、ロープ破断時に落下す
るエレベータ乗りかごを停止させる非常止め装置には、
破断した全ロープ重量と乗客・乗りかごを合わせた重量
を停止させる能力が求められているため、ロープ重量が
増加すると非常止め装置が停止させる重量も増加し、そ
の制動能力の向上が必要となる。非常止め装置の制動力
の向上は、新たな技術開発がないかぎり非常止め装置、
すなわち乗りかごの重量増加に結びつき、ロープ本数の
増加という悪循環を引き起こすことになる。
【0008】エレベータシステムにおけるロープ本数を
低減させる、もしくは細い軽量ロープを用いるために
は、ロープ強度(引張り強さ)を増さねばならない。し
かし、高強度のロープは表層が硬くなるため、従来のシ
ーブ材質のままではシーブ摺動面の摩耗が進み、摩擦係
数の低下を発生させ、シーブの寿命を短くしてしまう。
シーブは建家最上階にある機械室の駆動装置内に組み込
まれ、且つ比較的に重量部品であるため、その交換には
多大の労力と時間を必要とする。したがって、エレベー
タシステムにおいてロープ重量を低減するには、高強度
ロープを用いても摺動面の異常摩耗、摩擦係数の低下を
生せず、かつ逆にロープの摩耗を促進しないシーブ材質
の開発が不可欠である。
【0009】今後は、土地の有効利用の点から建築物の
高層化、もしくは大深度利用が進められ、エレベータの
長行程化、高速化、大容量化が必要となる。したがって
エレベータシステムの効率の点から、現在のA種ロープ
以上の高強度ロープの利用が必要となる。しかしなが
ら、A種ロープよりも高強度のロープ、すなわちロープ
の引張り強さが180kg/mm2級、外層線の硬さが
Hv=約480〜500であるB種以上のロープを利用
可能とするシーブは、従来例には見当らない。
【0010】また、従来はシーブ材料についてその平均
硬さ(ブリネル硬さ)と黒鉛形状についてだけ規定して
きたが、ロープの外層線とシーブとの接触部に生じる変
形は、シーブの平均硬さではなく、組織、析出物の個々
の硬さが問題となる。しかしながら、ロープの硬さ変化
に対応できるシーブ材料の組織、析出物の個々の硬さ、
面積率を詳細に開示した従来例も見当らない。
【0011】上記の各公知例は、ロープの引張り強さが
165kg/mm2級、外層線の硬さがHv=400〜
490、具体的にはA種ロープを相手材料として使用で
きるシーブは開示されているが、B種ロープが使用でき
るシーブについては何ら開示されていない。すなわち、
特開昭54−104145号公報では、ロープ外層線の
硬さをHv=400〜460とし、具体的にはA種ロー
プを使用できるシーブを示しており、B種ロープが使用
できるシーブについては示されていない。
【0012】また、特開平2−34747号公報でも、
シーブはブリネル硬さHB260〜320で、A種ロー
プを使用できるシーブを示している。さらに、特開平4
−128340号公報でも、ロープ外層線の硬さHv=
420〜460、引張り強さが165kg/mm2級の
A種ロープで使用できるシーブを示しており、B種ロー
プが使用できるシーブについては示されていない。ま
た、上記各公報は、シーブ材料については、黒鉛形状と
平均硬さだけを規定しており、最適なシーブ材料の組
織、組成の詳細については示していない。
【0013】本発明の目的は、引張り強さが180kg
/mm2級、外層線の硬さがHv=約480〜500の
B種ロープを相手材料としても、摺動面の異常摩耗が生
ぜず、またロープの異常摩耗を引き起こさない材料を用
いたシーブを用いたエレベータ駆動装置、及びそのエレ
ベータ駆動装置を設置したエレベータを提供することで
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、電動機と、該電動機に減速機を介して結
合されたシーブと、該シーブの溝に巻きかけられ、一端
側に乗りかごが、他端側に釣合い錘が設けられたロープ
とを備え、前記電動機で前記シーブを回転駆動すること
により、前記乗りかごを昇降させるエレベータ駆動装置
において、前記シーブを、重量%でNi:0.5〜2.
0,Cu:0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率
が90%以上である球状黒鉛鋳鉄で形成したことを特徴
としている。
【0015】また、本発明は、上記構成のエレベータ駆
動装置において、前記シーブを、重量%でNi:0.5
〜2.0,Cu:0.5〜2.0を含み、かつパーライト
面積率が90%以上である球状黒鉛鋳鉄で形成するとと
もに、前記ロープに、外層素線の強度が180kg/m
2以上、ビッカース硬さが480〜500の高強度ロ
ープを用いたことを特徴としている。
【0016】前記球状黒鉛鋳鉄は、パーライト相のビッ
カース硬さが350〜450に設定すると良い。さら
に、本発明は、上記の各エレベータ駆動装置を実際にエ
レベータに設置したものである。
【0017】
【作用】今までロープを高強度ロープに切り替える際に
は、ロープ硬さの増加に見合うようにシーブ硬さを増し
てきた。例えばE種ロープ(Hv=330〜380)か
らA種ロープ(Hv=400〜460)に切り替える場
合、シーブはFC250(HB=200〜220)から
FCD700(HB=270〜290)にした。この
際、シーブの硬さはブリネル硬さ計で測定する平均硬さ
だけに注目し、その範囲はブリネル硬さHBで規定され
てきた。
【0018】ロープとシーブの摺動におけるロープの摩
耗は粘性摩耗である。すなわち、ロープ側の摩耗は、外
層線がシーブとの繰返し接触によって塑性変形し、加工
硬化によって断線に至る機構である。シーブ側の摩耗
は、ロープとの繰返し接触による変形によって、シーブ
組織の黒鉛の先端に応力が集中し、破壊、摩耗に至る機
構である。したがって、ロープとシーブの摩耗に影響す
るシーブの硬さとは、ロープとの接触部分における最高
硬さであり、平均硬さではない。すなわち、組織、析出
物の個々の硬さが問題となる。
【0019】発明者らは上記見地に立ち、平均硬さだけ
ではなく、シーブ材質における各組織(析出物を含む)
の個々の硬さ、その面積率とロープ摩耗量、シーブ摩耗
量を検討した。その結果、B種ロープを相手として適す
る、ブリネル硬さだけでは規定出来ない組織の硬さ、組
成を見出した。添加元素が摩擦特性と組織に及ぼす作用
を以下説明する。
【0020】加えたNiは、硬質相として化合物相を析
出することはなく、ほとんどが球状黒鉛鋳鉄のパーライ
ト地に固溶する。パーライト地に固溶したNiは、その
硬さを増し、鋳物組織全体を平均的に硬くする。その結
果、シーブとロープと接触する部分において、硬さの低
いシーブ側の変形を低減させ、シーブの摩耗を抑制す
る。Ni添加の場合、Pを添加した場合に生じるステダ
イト相のような必要以上に硬い化合物相を析出すること
がないため、ロープ側をアタックせず、ロープの摩耗を
促進することはない。また、Niには組織を均一にする
効果があり、鋳物表面から深さ方向に組織均一性を増
し、硬さのバラツキを低減する。その結果、摩耗による
シーブの摩擦特性変化がなく、信頼性を高めることがで
きる。上記効果は、Ni添加量が重量%で0.5%以上
で生じる。0.5%以下ではNi添加による著しい効果
は認められない。また、2%を超えるとパーライト地の
硬さが必要以上に高くなり、B種ロープを相手として
も、相手ロープへのアタックが増し、ロープ側摩耗が増
大するため適切でない。したがって、Niの適切な添加
量範囲は0.5%以上で2%以下である。
【0021】Cuは、Niと同様にパーライト地の硬さ
を増し、鋳物組織全体を平均的に硬くする。また、組織
を均一にする効果があり、鋳物表面から深さ方向に組織
均一性を増し、硬さのバラツキを低減する。その結果、
摩耗によるシーブの摩擦特性変化がなく、信頼性を高め
ることができる。さらに、Cuの添加は鋳物の耐食性を
著しく増し、腐食によって生じる摩擦の促進を防ぎ、よ
り信頼性を高めることができる。上記効果は、Cu添加
量が重量%で0.5%以上で生じる。0.5%以下ではC
u添加による著しい効果は認められない。また、2%を
超えるとCuが肉厚部に偏析し、組織の不均一を引き起
こす。したがって、Cuの適切な添加量範囲は0.5%
以上で2%以下である。
【0022】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に従って説明
する。図1は本発明の一実施例であるエレベータの駆動
装置及びエレベータを示す概略構成図である。図1にお
いて、1は乗客を乗せるための乗りかごである。なお、
図では簡略化のために乗りかごのドア開閉機、外枠、非
常止め装置等の詳細、及びテールコード、釣合いロー
プ、張車等は図示していない。乗りかご1は、ロープ2
によって建物最上階機械室にある駆動装置3に連結され
ている。駆動装置3は、電動機4と、減速機5と、減速
機5を介して電動機4によって駆動されるシーブ6とか
らなる。シーブ6のロープ溝(詳細は後述)には、一端
側に乗りかご1を吊し、他端側に釣合い錘7を吊るした
ロープ2が巻きかけられている。そして、電動機4でシ
ーブ6を回転させることにより、ロープ2とシーブ6と
の間の摩擦力によってロープ2が上下方向に移動し、こ
れにより乗りかご1が昇降する。なお、図中8は乗りか
ご1と釣合い錘7が昇降する昇降路である。
【0023】図2はシーブ6の正面図である。図3はシ
ーブ6の側面図であり、II−II から上半分は図2の I
−I 断面を示す断面図である。図3において、6aはロ
ープ2を巻きかけるロープ溝である。図3では半円形状
の丸溝シーブを示すが、本発明は丸溝形状に限るもので
はなく、V形状のV溝、丸溝の底部に切り込みのあるア
ンダーカット溝であってもよい。
【0024】次に、シーブ材料について詳細に説明す
る。本実施例でのシーブ材料の評価は、まずシーブを模
擬したリングとロープを模擬したリングの端面を押し付
けながら回転させ、両リングの回転数に差を与えて回転
中に滑りを生じさせるリング式要素試験で行った。次
に、この要素試験で評価した材料で実機形状のシーブを
製作し、エレベータの駆動装置として重要な特性である
シーブとロープ間で滑りの発生する限界値(以後、トラ
クション特性と表記する)を求めた。
【0025】まず図4〜8を用いて、リング式要素試験
方法とその結果を説明する。図4はリング式要素試験に
用いたリング試験片6Rの形状を示す。試験片6Rは外
径が40mm、厚さ8mmのリングであり、回り止めの
キー溝付き穴で試験機に取り付けられる。
【0026】図5はリング式要素試験における試験片の
摩擦状態を示す概略図である。図5において、6RSは
シーブを模擬したリング試験片であり、6RRはロープ
を模擬したリング試験片である。6RRはロープとほぼ
同組成の炭素鋼を用い、焼き入れ、焼き戻しを行い、焼
き戻し温度を変えてA種ロープ、B種ロープの外層線の
硬さと同じにした。要素試験の試験条件を表1にまとめ
る。なお、滑り速度は回転数の差から生じる滑りから算
出した。
【0027】
【表1】
【0028】検討したシーブ試験片とロープ試験片の組
合せを表2にまとめる。なお、下記組合せグループ
〜 は1組の試験を意味するのではなく、複数回の試
験を意味する。特に試作シーブ材の組合せグループ
, は、下記の表3に示す範囲で組成を変えた複数
の試験片とA,B種ロープ相当材との組合せを意味す
る。
【0029】
【表2】
【0030】試作シーブ材は、球状黒鉛鋳鉄に各種元素
を加え、平均硬さ硬さ、析出相の硬さおよび析出相の面
積等の組織を制御したものである。試作シーブの組成範
囲とFCD700の組成を表3にまとめる。なお、下記
の組成表示は重量%であり、以後ことわりの無いかぎり
組成表示はすべて重量%である。
【0031】
【表3】
【0032】2時間ごとに試験片の重量変化(摩耗量)
を測定した結果の1例を図6,7,8に示す。なお、図
6はシーブ試験片の重量変化を、図7はロープ試験片の
重量変化を示す。また、この時の摩擦係数の変化を図8
に示す。
【0033】図6,7,8において、−□−がFCD7
00(従来材料)とA種ロープ相当材の組合せ(グル
ープ)、−△−がFCD700(従来材料)とB種ロー
プ相当材の組合せ(グループ)、−●−が試作シーブ
材とA種ロープ相当材の組合せ(グループ)、−○−
が試作シーブ材とB種ロープ相当材の組合せ(グルー
プ)である。
【0034】なお、図6ではFCD700(従来材料)の
A種ロープ相当材の組合せにおけるFCD700の最終
摩耗量を0.95として、図7ではFCD700(従来
材料)のA種ロープ相当材の組合せにおけるA種ロープ
相当材の最終摩耗量を1.0として、各摩耗量を相対値
として表示した。図8では、各組合せの最終摩擦係数を
1.0として、各摩擦係数を相対値として表示した。こ
の結果における試作材の組成(定量分析結果)を表4に
示す。
【0035】
【表4】
【0036】図6に示すように、試作材は、A種及びB
種ロープ相当材のどちらを相手材としても、FCD70
0(従来材料)の摩耗量の約1/3となり良好な耐摩耗
性を示す。さらに図7に示すように、試作材であるA種
ロープ相当材とB種ロープ相当材は、FCD700(従
来材料)を相手としたA種、B種ロープ相当材の摩耗量
より約30から40%も低減しており、試作材は摺動相
手のロープ材の摩耗も低減させる。
【0037】さらに、図8に示すように、試作シーブ材
とA種、B種ロープ相当材の組合せは摩擦初期ではある
が、FCD700(従来材料)とA種、B種ロープ相当
材との組合せよりも、摩擦係数が約20%高い。シーブ
とロープ間の摩擦係数が高ければ、回転を乗りかごの上
下運動に変換する効率が増し、さらにシーブとロープと
の間の滑りが生じにくくなるため、乗りかごの位置制御
の精度が増す効果がある。
【0038】表3に示す範囲で試作シーブ材の組成を変
えて上記の要素試験を行い、各種添加元素の効果を確認
した。その結果、Pの添加は摩擦係数を増加させるが、
A種、およびB種ロープ相当材の著しい摩耗を引き起こ
す。Pの添加によってシーブ材にFeC3−Fe−Fe
3で示される硬質のステダイト相が析出するために、
ロープ相当材の摩耗が促進されると考えられる。したが
って、シーブ材料にPの添加は望ましくない。
【0039】Niの添加は図6,7,8に示すように、
シーブ材、ロープ材の耐摩耗性と、両者間の摩擦係数を
増加させる。これは、上記P添加と異なり、添加したN
iは、硬質相を析出せず、ほとんどがパーライト相に固
溶し、その硬さを均一的に増して、シーブ材を全体的に
硬くするため、ロープを必要以上にアタックすることな
く、ロープとに接触によるシーブの変形を抑制するため
である。このときの適切な硬さの範囲は、パーライト相
の硬さがビッカース硬さでHv350〜450の範囲で
ある。パーライト相のビッカース硬さがHv350以下
では、十分な耐摩耗性が得られず、Hv450以下では
ロープ側の摩耗が増す。なお、上記効果が表れるには重
量%で、0.5%以上のNi添加が必要である。しか
し、Ni量を3%まで増すとパーライト相の硬さが増
し、切削性が著しく低下し、かつロープ相当材の摩耗量
が増加する。これは、必要以上に硬くなったシーブがロ
ープをアタックするためである。したがって、切削性と
ロープ側の耐摩耗性を考慮するとNi添加量は2%が限
度であり、望ましくは1.5%以下である。
【0040】Crの添加はA種、及びB種ロープ相当材
の著しい摩耗を引越す。Crの添加は、Niと異なり、
シーブ材にFeC3で示されるビッカース硬さが約10
00に達する硬質のセメンタイト相が析出する。その結
果、平均的硬さを示すブリネル硬さが等しくとも、著し
く硬い相が混在するためにロープ相当材の摩耗が促進さ
れると考えられる。したがって、シーブ材料にCrの添
加は望ましくない。
【0041】Cuの添加は、Niの添加と同様にシーブ
材、ロープ材の耐摩耗性を増す。さらに、湿度雰囲気で
の耐食性を増す。この効果が表れるのは重量%で、0.
5%以上の添加が必要である。しかしながら、Cu量が
2%を超すと偏析が生じ、部分的に組織変化が生じ耐摩
耗性が低下する。したがって、Cu添加量は2%までが
限度であり、望ましくは1.5%以下である。
【0042】組織の点ではフェライトの存在が著しく耐
摩耗性を低下させる。パーライトの面積率をパラメータ
ーにすると約90%以上で良好な耐摩耗性を発揮する。
組織的には球状黒鉛とパーライトだけでフェライトの無
い組織が望ましい。
【0043】以上の検討結果から、A種、及びB種ロー
プを相手材として、耐摩耗性に優れ、かつロープの異常
摩耗を引き起こさず、高い摩擦係数を示すシーブ材料
は、C:3.0〜3.4%、Si:1.5〜2.5%、さら
にNi:0.5〜2.0%、Cu:0.5〜2.0%を含ん
だパーライト相と球状黒鉛からなる組織を有する球状黒
鉛鋳鉄である。この材料のパーライト相の硬さはビッカ
ース硬さで350〜450の範囲が望ましく、組織全体
の平均硬さはブリネル硬さでHB290〜310の範囲
が望ましい。
【0044】以上の要素試験から決定した組織、組成の
シーブを作成し、トラクション特性を評価した。図9は
本実施例のシーブとロープのトラクション特性を評価す
るために用いた試験装置9の正面概略を示す。図9にお
いて、6Tはシーブ試験片であり、駆動モータ(図示せ
ず)から減速機10を介して軸(図示せず)で直結され
ている。シーブ試験片6Tは端面にロープ溝(図示せ
ず)として丸溝が形成されている。このロープ溝に1本
のロープ試験片2Tが180度巻きかけられており、そ
の一端にエレベータにおける乗りカゴの重量を模擬した
錘11が吊るされ、他端はロープ試験片2Tの張力を測
定するロードセル12を介して装置台13に接続されて
いる。
【0045】この状態でシーブ試験片6Tを図中A方向
(ロードセル12側から錘11側)へ回転数を加速しな
がらさせ回転させ、同時にロードセル12によってロー
プ試験片2Tの張力の変化を測定し、シーブ試験片6T
とロープ試験片2Tとの間で滑りを生じる摩擦係数を算
出した。
【0046】試験条件を表5に、検討したシーブ試験片
とロープ試験片の組合せを表6にまとめる。なお、ロー
プのビッカース硬さHvはロープ素線の断面で測定した
実測値である。錘は1本のロープに許される荷重(規格
値)から設定した。また、定量分析によって求めた本実
施例のシーブの組成を表7に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】錘11と静止摩擦係数との関係を図10に
示す。図中−○−がA種ロープを用いた場合、−●−が
Bロープを用いた場合の静止摩擦係数である。なお、縦
軸の静止摩擦係数は、同様の条件におけるFCD700
の静止摩擦係数を1.0とした相対値である。
【0051】図10に示すように、A種ロープを用いた
場合、本実施例シーブの静止摩擦係数はFCD700に
比較し約5〜10%高くなり、B種ロープを用いた場
合、FCD700の静止摩擦係数とほぼ同等である。す
なわち、本実施例のシーブはトラクション性能において
も、従来材料FCD700と同等以上の性能を有する。
【0052】以上のごとく本実施例のシーブでは、ロー
プの耐摩耗性を低下させることなく、シーブの耐摩耗性
を増し、かつエレベータシーブとして不可欠なトラクシ
ョン性能をも改善することができる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
シーブの耐摩耗性を約3倍向上させることができ、シー
ブ寿命を大幅に伸ばすことが可能である。また、上記シ
ーブを用いることによって、従来材料では使用困難であ
ったB種ロープの使用が可能となる。その結果、ロープ
強度が約7%増すため、ロープの細径化が可能となり、
ロープの軽量化、シーブの小径化が達成でき、コスト低
減が達成できる。さらに、上記シーブを用いた駆動装置
を用いることによって、エレベータシステムにおけるロ
ープ重量比率が低減し、エレベータシステムの効率向上
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエレベータ駆動装置及びエレベータの
概略構成図である。
【図2】シーブの正面図である。
【図3】一部断面を含むシーブの側面図である。
【図4】シーブ材料の摩擦特性の評価に用いた試験片の
正面図である。
【図5】シーブ材料の摩擦特性を評価するためのリング
式要素試験の説明図である。
【図6】本発明のシーブ材料の摩耗試験結果の一例を示
した図である。
【図7】本発明のシーブ材料の摩耗試験結果の一例を示
した図である。
【図8】本発明のシーブ材料の摩耗試験結果の一例を示
した図である。
【図9】シーブ材料のトラクション特性の評価に用いた
試験装置の概略図である。
【図10】本発明のシーブ材料とFCD700のトラク
ション特性を示した図である。
【符号の説明】
1 エレベータ乗りかご 2 ロープ 3 駆動装置 4 電動機 5 減速機 6 シーブ 7 釣合い錘 8 昇降路 9 試験装置 10 減速機 11 錘 12 ロードセル 13 装置台 6a ロープ溝 6R リング試験片 6RR ロープを模擬したリング試験片 6RS シーブを模擬したリング試験片 2T ロープ試験片 6T シーブ試験片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 簀河原 準 茨城県ひたちなか市市毛1070番地 株式会 社日立製作所水戸工場内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電動機と、該電動機に減速機を介して結
    合されたシーブと、該シーブの溝に巻きかけられ、一端
    側に乗りかごが、他端側に釣合い錘が設けられたロープ
    とを備え、前記電動機で前記シーブを回転駆動すること
    により、前記乗りかごを昇降させるエレベータ駆動装置
    において、 前記シーブを、重量%でNi:0.5〜2.0,Cu:
    0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率が90%以
    上である球状黒鉛鋳鉄で形成したことを特徴とするエレ
    ベータ駆動装置。
  2. 【請求項2】 電動機と、該電動機に減速機を介して結
    合されたシーブと、該シーブの溝に巻きかけられ、一端
    側に乗りかごが、他端側に釣合い錘が設けられたロープ
    とを備え、前記電動機で前記シーブを回転駆動すること
    により、前記乗りかごを昇降させるエレベータ駆動装置
    において、 前記シーブを、重量%でNi:0.5〜2.0,Cu:
    0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率が90%以
    上である球状黒鉛鋳鉄で形成するとともに、前記ロープ
    に、外層素線の強度が180kg/mm2以上、ビッカ
    ース硬さが480〜500の高強度ロープを用いたこと
    を特徴とするエレベータ駆動装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のエレベータ駆動装
    置において、 前記球状黒鉛鋳鉄は、パーライト相のビッカース硬さが
    350〜450であることを特徴とするエレベータ駆動
    装置。
  4. 【請求項4】 電動機と、該電動機に減速機を介して結
    合されたシーブと、該シーブの溝に巻きかけられたロー
    プと、該ロープの一端側に設けられた乗りかごと、前記
    ロープの他端側に設けられた釣合い錘とを備え、前記電
    動機で前記シーブを回転駆動することにより、前記乗り
    かごを昇降させる構成のエレベータにおいて、 前記シーブを、重量%でNi:0.5〜2.0,Cu:
    0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率が90%以
    上である球状黒鉛鋳鉄で形成したことを特徴とするエレ
    ベータ。
  5. 【請求項5】 電動機と、該電動機に減速機を介して結
    合されたシーブと、該シーブの溝に巻きかけられたロー
    プと、該ロープの一端側に設けられた乗りかごと、前記
    ロープの他端側に設けられた釣合い錘とを備え、前記電
    動機で前記シーブを回転駆動することにより、前記乗り
    かごを昇降させる構成のエレベータにおいて、 前記シーブを、重量%でNi:0.5〜2.0,Cu:
    0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率が90%以
    上である球状黒鉛鋳鉄で形成するとともに、前記ロープ
    に、外層素線の強度が180kg/mm2以上、ビッカ
    ース硬さが480〜500の高強度ロープを用いたこと
    を特徴とするエレベータ。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載のエレベータにおい
    て、 前記球状黒鉛鋳鉄は、パーライト相のビッカース硬さが
    350〜450であることを特徴とするエレベータ。
  7. 【請求項7】 重量%でNi:0.5〜2.0,Cu:
    0.5〜2.0を含み、かつパーライト面積率が90%以
    上である球状黒鉛鋳鉄で形成されエレベータ用シーブ。
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WO2006072663A3 (en) * 2005-01-05 2007-05-18 Metso Paper Inc Ductile iron and method for manufacturing ductile iron for engineering components requiring strength and toughness

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