JPH08269775A - 摺動面構成体 - Google Patents

摺動面構成体

Info

Publication number
JPH08269775A
JPH08269775A JP9975595A JP9975595A JPH08269775A JP H08269775 A JPH08269775 A JP H08269775A JP 9975595 A JP9975595 A JP 9975595A JP 9975595 A JP9975595 A JP 9975595A JP H08269775 A JPH08269775 A JP H08269775A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sliding surface
crystal
crystals
pyramidal
examples
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP9975595A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3420381B2 (ja
Inventor
Yusuke Toyoda
裕介 豊田
Katsumune Tabata
勝宗 田畑
Kenji Dousaka
健児 堂坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP09975595A priority Critical patent/JP3420381B2/ja
Priority to US08/614,378 priority patent/US5871852A/en
Publication of JPH08269775A publication Critical patent/JPH08269775A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3420381B2 publication Critical patent/JP3420381B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
  • Electroplating And Plating Baths Therefor (AREA)
  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 酸を含む腐食性摺動環境下において、優れた
耐酸性と耐焼付き性を発揮する摺動面構成体を提供す
る。 【構成】 摺動面構成体4はFe結晶の集合体より構成
される。集合体におけるCr含有量は2重量%≦Cr≦
48重量%である。摺動面4aにおける六角錐状Fe結
晶6の面積率Aは40%≦A≦100%である。Crの
含有により摺動面構成体4は優れた耐酸性を発揮する。
摺動面4aは、多数の六角錐状Fe結晶6の存在により
入組んだ様相を呈するので良好な保油性を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動面構成体、特に、F
e結晶の集合体より構成され、耐酸性を有する摺動面構
成体に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、自動車用ディーゼルエンジンお
よびメタノールエンジンにおいて、そのシリンダスリー
ブを鋳鉄より構成したものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ディーゼルエンジンに
おいては、燃料の燃焼に伴い硫酸が生成され、またメタ
ノールエンジンにおいては燃料の燃焼に伴いギ酸が生成
される。
【0004】そのため、シリンダスリーブには高度の耐
酸性を具備することが要求されるが、現状ではこのよう
な要求を満足する手段は開発されていない。
【0005】本発明は前記に鑑み、鋳鉄製シリンダスリ
ーブ内周面等に設けられて、その耐酸性向上に寄与し、
また優秀な摺動特性を発揮することのできる前記摺動面
構成体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る摺動面構成
体は、Fe結晶の集合体より構成され、その集合体にお
けるCr含有量が2重量%≦Cr≦48重量%であり、
また摺動面における角錐状Fe結晶の面積率Aが40%
≦A≦100%であることを特徴とする。
【0007】
【作用】Fe結晶の集合体においてCr含有量を前記の
ように設定すると、CrはFeと共に置換型固溶体を構
成し、酸を含む腐食性摺動環境においては摺動面が、そ
の各角錐状Fe結晶表面に固体皮膜が形成されることに
より不働態化するので、摺動面構成体は優れた耐酸性を
発揮する。
【0008】また角錐状Fe結晶の面積率Aを前記のよ
うに設定すると、相隣る両角錐状Fe結晶は相互に食込
んだ状態を呈し、したがって摺動面は、多数の微細な山
部と、それら山部の間に形成された多数の微細な谷部
と、山部相互の食込みに因る多数の微細な沢部とからな
る入組んだ様相を呈する。
【0009】このような摺動面構成体においては、それ
が酸を含む腐食性摺動環境に置かれても各角錐状Fe結
晶の腐食(酸化)が抑制されるので、潤滑下では、摺動
面構成体の保油性が良好に維持され、一方、無潤滑下で
は、多数の微細な角錐状Fe結晶により摺動荷重の分散
が図られる。これにより摺動面構成体は、潤滑下および
無潤滑下において、優れた耐焼付き性を発揮する。
【0010】なお、Cr含有量がCr<2重量%では摺
動面構成体の耐酸性向上度合が低くなる。一方、Cr>
48重量%ではCr−Fe系金属間化合物の生成量が多
くなるため、摺動面においてFe結晶が粒状化し易く、
また前記化合物の粒界偏析に起因して摺動面構成体の強
度が低下する。さらに、角錐状Fe結晶の面積率AがA
<40%では摺動面が単純化傾向となるので望ましくな
い。
【0011】
【実施例】図1において、ディーゼルエンジン用シリン
ダブロック1はAl合金製シリンダブロック本体1aと
鋳鉄製シリンダスリーブ2とを備え、そのシリンダスリ
ーブ2の内周面3にメッキ処理により層状摺動面構成体
4が形成される。シリンダスリーブ2内にはAl合金製
ピストンPが摺動自在に設けられる。
【0012】摺動面構成体4は、図2に示すように体心
立方構造(bcc構造)を持つFe結晶の集合体より構
成される。また集合体は添加元素であるCrを含有し、
その集合体におけるCr含有量は2重量%≦Cr≦48
重量%に設定される。集合体は、図3に示すように、シ
リンダスリーブ2の内周面3より柱状に成長し、且つミ
ラー指数で(hhh)面を、摺動面4a側に向けた多数
の(hhh)配向性Fe結晶5、またはシリンダスリー
ブ2の内周面3より柱状に成長し、且つミラー指数で
(2hhh)面を摺動面4a側に向けた多数の(2hh
h)配向性Fe結晶の少なくとも一方を有する。
【0013】前記のようにFe結晶の集合体がミラー指
数で(hhh)面を摺動面4a側に向けた多数の(hh
h)配向性Fe結晶5を有する場合、それら(hhh)
配向性Fe結晶5の先端部を、図4に示すように摺動面
4aにおいて六角錐状Fe結晶6、または図5に示すよ
うに三角錐状Fe結晶7にすることができる。六角錐状
Fe結晶6は、三角錐状Fe結晶7に比べて平均粒径が
小さく、且つ粒径も略均一である。六角錐状Fe結晶6
等において、粒径と高さとの間には相関関係があり、し
たがって粒径が略均一である、ということは高さも略等
しいということである。
【0014】またFe結晶の集合体がミラー指数で(2
hhh)面を摺動面4a側に向けた多数の(2hhh)
配向性Fe結晶を有する場合、それら(2hhh)配向
性Fe結晶の先端部を小角錐状Fe結晶にすることがで
きる。
【0015】六、三角錐状Fe結晶6,7および小角錐
状Fe結晶といった角錐状Fe結晶の、摺動面4aにお
ける面積率Aは40%≦A≦100%に設定される。
【0016】Fe結晶の集合体においてCr含有量を前
記のように設定すると、CrはFeと共に置換型固溶体
を構成し、酸を含む腐食性摺動環境においては摺動面4
aが、例えば、各六角錐状Fe結晶6表面に固定皮膜が
形成されることにより不働態化するので、摺動面構成体
4は優れた耐酸性を発揮する。
【0017】また前記のように面積率Aを設定すると、
図4に示すように六角錐状Fe結晶6において、相隣る
ものは相互に食込んだ状態となる。これにより摺動面4
aは、三角錐状Fe結晶7より形成される場合に比べて
表面積を拡大され、また多数の極微細な山部8と、それ
ら山部8の間に形成された多数の極微細な谷部9と、山
部8相互の食込みに因る多数の極微細な沢部10とから
なる非常に入組んだ様相を呈する。
【0018】このような摺動面構成体4においては、そ
れが硫酸を含む腐食性摺動環境に置かれても各六角錐状
Fe結晶6の腐食(酸化)が抑制されるので、潤滑下で
は、摺動面構成体4の保油性が良好に維持され、一方、
無潤滑下では、多数の極微細な六角錐状Fe結晶6によ
り摺動荷重の分散が図られる。これにより摺動面構成体
4は、潤滑下および無潤滑下において、優れた耐焼付き
性を発揮する。
【0019】さらに六角錐状Fe結晶6の均一微細化に
伴い、局部的な高面圧化を回避すると共に摺動荷重の微
細分化を達成することができ、これにより摺動面構成体
4は、潤滑下では勿論のこと、無潤滑下においても優れ
た耐摩耗性を発揮する。
【0020】図6に示すように、摺動面4aに沿う仮想
面11に対する(hhh)面の傾きは六、三角錐状Fe
結晶6,7の傾きとなって現われるので、摺動面構成体
4の保油性および耐摩耗性に影響を与える。そこで、
(hhh)面が仮想面11に対してなす傾き角θは0°
≦θ≦15°に設定される。この場合、(hhh)面の
傾き方向については限定されない。傾き角θがθ>15
°になると、摺動面構成体4の保油性および耐摩耗性が
低下する。この傾き角θは(2hhh)面についても同
じである。
【0021】摺動面構成体4を形成するためのメッキ処
理において、電気Feメッキ処理を行う場合のメッキ浴
条件は、表1の通りである。
【0022】
【表1】
【0023】Cr含有添加剤としては、Crを含み、且
つ水溶性であるものが用いられ、例えば無水クロム酸、
硫酸クロム、クロムミョウバン(硫酸クロムカリウム、
硫酸クロムアンモニウム等)、塩化クロム(III )、ホ
ウフッ化クロム等が該当する。
【0024】通電法としては、主としてパルス電流法が
適用される。パルス電流法においては、図7に示すよう
に、メッキ用電源の電流Iは、その電流Iが最小電流I
minから立上って最大電流Imax に至り、次いで最小電
流Imin へ下降するごとく、時間Tの経過に伴いパルス
波形を描くように制御される。
【0025】そして、電流Iの立上り開始時から下降開
始時までの通電時間をTONとし、また先の立上り開始時
から次の立上り開始時までを1サイクルとして、そのサ
イクル時間をTC としたとき、通電時間TONとサイクル
時間TC との比、即ち、時間比TON/TC はTON/TC
≦0.45に設定される。最大陰極電流密度CDmax
はCDmax≧2A/dm2 に、また平均陰極電流密度C
DmはCDm≧1A/dm2 にそれぞれ設定される。
【0026】このようなパルス電流法を適用すると、メ
ッキ浴内において電流が流れたり、流れなかったりする
ことに起因して陰極近傍のイオン濃度が均一化され、こ
れにより摺動面構成体4の組成を安定化させることがで
きる。
【0027】前記電気Feメッキ処理において、メッキ
浴条件および通電条件を変えることによって(hhh)
配向性Fe結晶または(2hhh)配向性Fe結晶の析
出、その存在量等を制御する。この制御は、パルス電流
法の適用下では容易であり、したがって摺動面4aを狙
い通りの形態に形成し易くなる。また摺動面構成体4に
おいて、Cr含有量を正確に制御すると共にCrを均一
に分散させるため、電気Feメッキ処理中、メッキ浴と
同一組成および同一温度に調整された補充液を陽、陰極
間に所定の供給量にて供給する。これを行わない場合に
は、メッキ浴におけるCr含有添加剤濃度にばらつきが
生じるため、摺動面構成体4におけるCr含有量の制御
が困難となる。
【0028】また摺動面構成体4におけるCr含有量
は、通常、メッキ浴におけるCr含有添加剤濃度により
制御されるが、その濃度を含むその他のメッキ浴条件が
一定の場合には最大陰極電流密度CDmaxおよび平均
陰極電流密度CDmにより制御される。
【0029】前記のように、Fe結晶の集合体にCrを
含有させると摺動面構成体4の耐酸性を向上させること
ができるが、さらに前記集合体にNiをNi≧2%含有
させると、耐酸性を一層向上させることが可能である。
これは摺動面4aの不働態化がNiの添加により増進さ
れるからである。
【0030】Ni含有量の上限値はCr含有量により決
められる。即ち、Cr<10重量%のときNi=40重
量%であり、また10重量%≦Cr<20重量%のとき
Ni=30重量%であり、さらに20重量%≦Cr<3
0重量%のときNi=20重量%であり、さらにまた3
0重量%≦Cr≦48重量%のときNi=10重量%で
ある。各場合において、Ni含有量がその上限値を超え
ると、Ni系金属間化合物の生成量が多くなるため、摺
動面4aにおいてFe結晶が粒状化し易く、また前記化
合物の粒界偏析に起因して摺動面構成体4の強度が低下
する。
【0031】メッキ浴に添加されるNi含有添加剤とし
ては、Niを含み、且つ水溶性であるものが用いられ、
例えば硫酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニ
ッケル、スルホサリチル酸ニッケル、酢酸ニッケル等が
該当する。その添加量は300g/リットル以下であ
る。
【0032】Crの場合と同様の理由、即ち、摺動面構
成体4におけるNi含有量を正確に制御すると共にNi
を均一に分散させるため、電気Feメッキ処理中、メッ
キ浴と同一組成および同一温度に調整された補充液を
陽、陰極間に所定の供給量にて供給する。また摺動面構
成体4におけるNi含有量は、通常、メッキ浴における
Ni含有添加剤濃度により制御される。
【0033】メッキ処理としては、電気Feメッキ処理
の外に、例えば気相メッキ法であるPVD法、CVD
法、スパッタ法、イオンプレーティング等を挙げること
ができる。 (1) Crを含有する摺動面構成体について 鋳鉄(JIS FC250)よりなるシリンダスリーブ
2の内周面3に、電気Feメッキ処理を施すことにより
Fe結晶の集合体より構成された厚さ15μmの摺動面
構成体4を形成した。
【0034】摺動面構成体の各例において、表2は例1
〜16に関するメッキ浴組成を、また表3は例1〜16
に関するメッキ浴のpHおよび温度ならびにパルス電流
法の実施条件をそれぞれ示す。なお、メッキ処理時間
は、例1〜16における厚さを前記のように15μmに
設定すべく、5〜60分間の範囲内で種々変化させた。
また前記補充液の供給量は0.5リットル/min に設定
された。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】表4は例1〜4、表5は例5〜8、表6は
例9〜12、表7は例13〜16に関する摺動面の結晶
形態、摺動面における三、六角錐状Fe結晶の面積率A
および粒径、各配向性Fe結晶の存在率S、Cr含有量
ならびに摺動面構成体断面における硬さをそれぞれ示
す。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】三、六角錐状Fe結晶の面積率Aは、摺動
面の面積をb、その摺動面において全部の三、六角錐状
Fe結晶が占める面積をcとしたとき、A=(c/b)
×100(%)として求められた。また六角錐状Fe結
晶の粒径は、頂点を挟んで相対向する両角部間の距離、
即ち、三本の対角線の長さの平均値である。三角錐状F
e結晶の粒径は、各角部から頂点を通って各対向辺に至
る距離、即ち、三つの距離の平均値である。
【0043】各配向性Fe結晶の存在率Sは、例1〜1
6のX線回折図(X線照射方向は摺動面に対して直角方
向)に基づいて次式から求められた。一例として、例4
のX線回折図を図8に示す。なお、例えば{110}配
向性Fe結晶とは、{110}面を摺動面側に向けた配
向性Fe結晶を意味する。 {110}配向性Fe結晶:S110 ={(I110 /IA110 )/T}×100、 {200}配向性Fe結晶:S200 ={(I200 /IA200 )/T}×100、 {211}配向性Fe結晶:S211 ={(I211 /IA211 )/T}×100、 {310}配向性Fe結晶:S310 ={(I310 /IA310 )/T}×100、 {222}配向性Fe結晶:S222 ={(I222 /IA222 )/T}×100 ここで、I110 、I200 、I211 、I310 、I222 は各
結晶面のX線反射強度の測定値(cps)であり、また
IA110 、IA200 、IA211 、IA310 、IA222
ASTMカードにおける各結晶面のX線反射強度比で、
IA110 =100、IA200 =20、IA211 =30、
IA310 =12、IA222 =6である。さらにTは、T
=(I110 /IA110 )+(I200 /IA200 )+(I
211 /IA211 )+(I310 /IA310 )+(I222
IA222 )である。
【0044】図9(a)は例4における摺動面の結晶構
造を示す顕微鏡写真であり、多数の六角錐状Fe結晶が
観察される。この場合、表4に示すように、六角錐状F
e結晶の面積率AはA=90%である。この六角錐状F
e結晶は(hhh)面、したがって{222}面を摺動
面側に向けた{222}配向性Fe結晶であり、その
{222}配向性Fe結晶の存在率Sは、表4、図8に
示すように、S=91.5%である。
【0045】図10(a)は例1における摺動面の結晶
構造を示す顕微鏡写真であり、多数の六角錐状Fe結晶
が観察される。この場合、表4に示すように、六角錐状
Fe結晶の面積率AはA=90%である。この六角錐状
Fe結晶は前記同様に{222}配向性Fe結晶であ
り、その存在率Sは、表4に示すように、S=93.4
%である。
【0046】Cr含有量の測定は、Crを含有しない例
1,5,9,13を除いて、シリンダスリーブ2より例
2〜4,6〜8,10〜12,14〜16を剥離し、次
いで例2等について、過塩素酸酸化過マンガン酸カリウ
ム滴定法(JIS G1217)に則って分析を行う、
という方法で行われた。
【0047】次に、例1〜16について次のような腐食
(酸化)テストを行った。即ち、例1〜16を、沸騰し
ている5%硫酸中に2時間浸漬し、次いで例1〜16を
30%硝酸中に浸漬して例1等から腐食生成物を除去
し、その後、直ちに例1〜16を流水にて洗浄し、乾燥
した。
【0048】図9(b)は、腐食テスト後の例4におけ
る摺動面の結晶構造を示す顕微鏡写真であり、多数の六
角錐状Fe結晶が、同図(a)の腐食テスト前の状態と
殆ど変わらない状態で残存していることが観察される。
これは例4におけるCr含有量がCr=10重量%であ
ることに起因する。
【0049】図10(b)は、腐食テスト後の例1にお
ける摺動面の結晶構造を示す顕微鏡写真であり、同図
(a)の六角錐状Fe結晶が腐食されて粒状化している
ことが観察される。この粒状化は例1におけるCr含有
量がゼロであることに起因する。
【0050】次に、腐食テスト後の例1〜16を有する
チップを作製し、それらについて、潤滑下でチップオン
ディスク方式による焼付きテストを行って、焼付き発生
荷重を測定したところ、表8の結果を得た。テスト条件
は次の通りである。ディスクの材質:Al−10重量%
Si合金;ディスクの周速度:15m/sec ;給油量:
0.3ml/min ;チップの摺動面の面積:1cm2
【0051】
【表8】
【0052】図11は例1〜16に関する三、六角錐状
Fe結晶の面積率Aと焼付き発生荷重との関係をCr含
有量別に示したものである。図中、点(1)〜(16)
は例1〜16にそれぞれ対応する。
【0053】図11から、例3,4,7,8,11,1
2は他の例1,2等に比べて焼付き発生荷重が格段に高
いことが判る。これは次の理由による。即ち、例3,
4,7,8,11,12においては、Cr含有量がCr
≧2重量%に設定されていることから例3等が優れた耐
酸性を発揮し、その結果、腐食テスト後においても前記
面積率A≧40%が維持される、つまり良好な保油性が
維持されているからである。例1は前記粒状化に伴い、
例4に比べて耐焼付き性は極端に低くなる。
【0054】次に、シリンダスリーブを想定して、鋳鉄
(JIS FC250)よりなるディスクの一面外周部
に前記同様の方法で例1〜16を形成し、それらについ
て、濃度35重量%の硫酸中にてチップオンディスク方
式による摩耗テストを行い、腐食摩耗率を測定したとこ
ろ、表9の結果を得た。テスト条件は次の通りである。
チップの材質:Al−10重量%Si合金;ディスクの
周速度:0.15m/sec ;チップに対する押圧力:2
MPa(一定);チップの摺動面の面積:1cm2 ;摺動
距離:200〜500m;腐食摩耗率:ディスクの重量
減少量(mg)/摺動距離(m).
【0055】
【表9】
【0056】図12は例1〜16に関する三、六角錐状
Fe結晶の面積率Aと腐食摩耗率との関係をCr含有量
別に示したものである。図中、点(1)〜(16)は例
1〜16にそれぞれ対応する。
【0057】図12から、例3,4,7,8,11,1
2は他の例1,2等に比べて腐食摩耗が大いに抑制され
ていることが判る。これは次の理由による。即ち、例
3,4,7,8,11,12においては、Cr含有量が
Cr≧2重量%に設定されていることから例3等が優れ
た耐酸性を発揮する。その結果、摩耗テスト中において
も前記面積率A≧40%が維持されるので、局部的な高
面圧化が回避されると共に摺動荷重の微細分化が達成さ
れるからである。因に、例1〜16を持たない鋳鉄(J
IS FC250)製ディスクの腐食摩耗率は0.45
mg/mであった。 (2) CrおよびNiを含有する摺動面構成体につい
て 鋳鉄(JIS FC250)よりなるシリンダスリーブ
2の内周面3に、電気Feメッキ処理を施すことにより
Fe結晶の集合体より構成された厚さ15μmの摺動面
構成体4を形成した。
【0058】表10は摺動面構成体の例1〜3に関する
メッキ浴組成を、また表11は例1〜3に関するメッキ
浴のpHおよび温度ならびにパルス電流法の実施条件を
それぞれ示す。なお、メッキ処理時間は、例1〜3にお
ける厚さを前記のように15μmに設定すべく、5〜6
0分間の範囲内で種々変化させた。また前記補充液の供
給量は0.5リットル/min に設定された。
【0059】
【表10】
【0060】
【表11】
【0061】表12は例1〜3に関する各配向性Fe結
晶の存在率Sを示し、表13は例1〜3に関する摺動面
の結晶形態、摺動面における六角錐状Fe結晶の面積率
Aおよび粒径、CrおよびNi含有量ならびに摺動面構
成体断面における硬さをそれぞれ示す。
【0062】
【表12】
【0063】
【表13】
【0064】各配向性Fe結晶の存在率S、六角錐状F
e結晶の面積率A、粒径およびCr含有量の求め方は前
記と同じである。Ni含有量の測定は、Niを含有しな
い例1を除き、シリンダスリーブ2から剥離された例
2,3について、くえん酸添加吸光光度法(JIS G
1216)に則って分析を行う、という方法で行われ
た。
【0065】次に、前記同様に例1〜3について次のよ
うな腐食(酸化)テストを行った。即ち、例1〜3を、
沸騰している5%硫酸中に2時間浸漬し、次いで例1〜
3を30%硝酸中に浸漬して例1等から腐食生成物を除
去し、その後、直ちに例1〜3を流水にて洗浄し、乾燥
した。
【0066】次に、腐食テスト後の例1〜3を有するチ
ップを作製し、それらについて、潤滑下でチップオンデ
ィスク方式による焼付きテストを行って、焼付き発生荷
重を測定したところ、表14の結果を得た。テスト条件
は前記と同じである。
【0067】
【表14】
【0068】図13は例1〜3に関する焼付き発生荷重
をグラフ化したものである。図13、表13,14か
ら、例2,3の如く、Cr含有量=2重量%において、
Niを含有させると焼付き発生荷重が向上することが判
る。この場合、例3の如く、Ni含有量をNi≧1重量
%に設定すると、耐焼付き性が格段に高くなる。
【0069】なお、本発明はシリンダスリーブに限ら
ず、ピストン、ピストンリング等の耐酸性を要求される
各種摺動部材に適用される。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、前記のように特定され
た構造を具備することにより、鋳鉄製シリンダスリーブ
内周面等に設けられて、その耐酸性向上に寄与し、また
優秀な摺動特性を発揮する摺動面構成体を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピストンを備えたシリンダブロックの要部を示
す一部拡大縦断面図である。
【図2】体心立方構造およびその(hhh)面、(2h
hh)面を示す斜視図である。
【図3】図1、3矢示部の拡大図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】三角錐状Fe結晶の平面図である。
【図6】体心立方構造における(hhh)面の傾きを示
す説明図である。
【図7】電気メッキ用電源の出力波形図である。
【図8】摺動面構成体のX線回折図である。
【図9】摺動面の一例の結晶構造を示す顕微鏡写真であ
り、(a)は腐食テスト前に、(b)は腐食テスト後に
それぞれ該当する。
【図10】摺動面の他例の結晶構造を示す顕微鏡写真で
あり、(a)は腐食テスト前に、(b)は腐食テスト後
にそれぞれ該当する。
【図11】三,六角錐状Fe結晶の面積率Aと焼付き発
生荷重との関係を示すグラフである。
【図12】三,六角錐状Fe結晶の面積率Aと腐食摩耗
量との関係を示すグラフである。
【図13】各例の焼付き発生荷重を示すグラフである。
【符号の説明】
4 摺動面構成体 4a 摺動面 5 (hhh)配向性Fe結晶 6 六角錐状Fe結晶(角錐状Fe結晶) 7 三角錐状Fe結晶(角錐状Fe結晶)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年5月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正内容】
【0007】
【作用】Fe結晶の集合体においてCr含有量を前記の
ように設定すると、CrはFeと共に置換型固溶体を構
成し、酸を含む腐食性摺動環境においては摺動面が、そ
の各角錐状Fe結晶表面に固体皮膜が形成されることに
より不態化するので、摺動面構成体は優れた耐酸性を
発揮する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】Fe結晶の集合体においてCr含有量を前
記のように設定すると、CrはFeと共に置換型固溶体
を構成し、酸を含む腐食性摺動環境においては摺動面4
aが、例えば、各六角錐状Fe結晶6表面に固定皮膜が
形成されることにより不態化するので、摺動面構成体
4は優れた耐酸性を発揮する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】前記のように、Fe結晶の集合体にCrを
含有させると摺動面構成体4の耐酸性を向上させること
ができるが、さらに前記集合体にNiをNi≧1重量
含有させると、耐酸性を一層向上させることが可能であ
る。これは摺動面4aの不態化がNiの添加により増
進されるからである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正内容】
【図12】三,六角錐状Fe結晶の面積率Aと腐食摩耗
との関係を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe結晶の集合体より構成され、その集
    合体におけるCr含有量が2重量%≦Cr≦48重量%
    であり、また摺動面における角錐状Fe結晶の面積率A
    が40%≦A≦100%であることを特徴とする摺動面
    構成体。
  2. 【請求項2】 前記角錐状Fe結晶は、ミラー指数で
    (hhh)面を摺動面側に向けた(hhh)配向性Fe
    結晶、またはミラー指数で(2hhh)面を摺動面側に
    向けた(2hhh)配向性Fe結晶の少なくとも一方で
    ある、請求項1記載の摺動面構成体。
  3. 【請求項3】 前記角錐状Fe結晶は、ミラー指数で
    (hhh)面を摺動面側に向け、且つ六角錐状をなす
    (hhh)配向性Fe結晶である、請求項1または2記
    載の摺動面構成体。
  4. 【請求項4】 前記集合体はNiを含有している、請求
    項1,2または3記載の摺動面構成体。
JP09975595A 1995-03-15 1995-03-31 摺動面構成体 Expired - Fee Related JP3420381B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09975595A JP3420381B2 (ja) 1995-03-31 1995-03-31 摺動面構成体
US08/614,378 US5871852A (en) 1995-03-15 1996-03-12 Slide surface construction

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09975595A JP3420381B2 (ja) 1995-03-31 1995-03-31 摺動面構成体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08269775A true JPH08269775A (ja) 1996-10-15
JP3420381B2 JP3420381B2 (ja) 2003-06-23

Family

ID=14255808

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP09975595A Expired - Fee Related JP3420381B2 (ja) 1995-03-15 1995-03-31 摺動面構成体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3420381B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP3420381B2 (ja) 2003-06-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0005910A1 (en) Piston and cylinder assemblies
CN102007231A (zh) 结构化铬固体颗粒层及其制备方法
US5322742A (en) Slide member
Sriraman et al. Synthesis and evaluation of hardness and sliding wear resistance of electrodeposited nanocrystalline Ni–Fe–W alloys
JP3420381B2 (ja) 摺動面構成体
US5597657A (en) Slide surface construction
JP2858237B2 (ja) 機能性Cu皮膜
JPH06174088A (ja) 摺動面構成体
US5871852A (en) Slide surface construction
JP3432943B2 (ja) 摺動面構成体
JPH06174089A (ja) 摺動面構成体
US5401585A (en) Slide surface construction
JP3420378B2 (ja) 摺動面構成体およびその製造方法
JPH0641789B2 (ja) 摺動部材
JP2645793B2 (ja) 摺動面構成体
JP2741438B2 (ja) 摺動部材
JP2657334B2 (ja) 摺動部材
JP2789163B2 (ja) 高硬度金属皮膜
JP3005263B2 (ja) 摺動部材
JP2704848B2 (ja) 摺動部材
JPH06235096A (ja) 摺動部材
JP3420382B2 (ja) 摺動面構成体
JPH07126889A (ja) 摺動部構成体
US5928800A (en) Slide surface construction
JP3354284B2 (ja) 摺動面構成体

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 5

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080418

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090418

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 6

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090418

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 7

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100418

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110418

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110418

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees