JPH0826492B2 - 異収縮糸 - Google Patents

異収縮糸

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JPH0826492B2
JPH0826492B2 JP3030926A JP3092691A JPH0826492B2 JP H0826492 B2 JPH0826492 B2 JP H0826492B2 JP 3030926 A JP3030926 A JP 3030926A JP 3092691 A JP3092691 A JP 3092691A JP H0826492 B2 JPH0826492 B2 JP H0826492B2
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史朗 今井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ドレープ性や反発弾性
のある布帛を製造するに適した、新規な潜在嵩高性を有
するポリアミド系マルチフィラメント糸条からなる異収
縮糸に関する。
【0002】また、本発明は、布帛とした際、風合いが
ソフトであり、ぬめり感が少なく、高度のバルキー性を
有するスパンライクな特性をかもし出す、嵩高糸を呈す
る異収縮糸に関するものである。
【0003】
【従来の技術】従来より、熱収縮率の異なる2種以上の
糸条を用い混繊・合糸などした、いわゆる異収縮糸使い
の織編物は、その良好な嵩高性やドレープ性などの特性
を付与できることから、高付加価値素材として多数提案
され、また実用化も進んでいる。特に、ポリエステル異
収縮糸に関しては、高級シルキー素材とするのに好適な
ため、多数の提案がみられる。
【0004】他方、ナイロン6、ナイロン66に代表さ
れるポリアミド系においては、ポリアミド自体の結晶化
速度が速く、残存非結晶領域が小さいことから、繊維の
内部構造差を利用し、大きな収縮差などを持たせること
が難しく、また、布帛化した後にその効果を充分に発現
させることが困難であった。かかる改良策として、例え
ば、非晶性単位としてイソフタラミド成分を有するポリ
アミド共重合体を用い、2次転移温度等を改良せしめる
方法(特開昭55−116815号公報)、ナイロン4
6を低収縮成分として用いた異収縮糸(特開昭59−1
79834号公報)などが提案されている。しかしなが
ら、かかる方法においては、熱安定性に劣ったり、ま
た、良好な嵩高性やドレープ性などの特性を十分付与で
きないなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
な問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発
明は、光沢や嵩高性に優れ、手触りが柔らかく、ドレー
プ性に富むなどの優れた特性を有する織編物となし得る
異収縮糸を提供することを目的とするものである。
【0006】また、本発明の目的は、布帛とした際、風
合いがソフトであり、ぬめり感が少なく、高度のバルキ
ー性を有するスパンライクな特性をかもし出す、嵩高糸
を呈する異収縮糸を提供することを目的とするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明は次の構成を有する。すなわち、本発明
の異収縮糸は、収縮率の異なる少なくとも2種以上のポ
リアミド系マルチフィラメント糸条から構成された糸条
であって、該糸条を構成する低収縮側の糸条(A)は、
少なくとも珪酸塩層状物の層間にポリアミドが一部存在
する珪酸塩層状物分散ポリアミド複合体から主としてな
り、かつ該珪酸塩層状物が実質的に繊維軸方向に配列し
てなるマルチフィラメント糸条であって、他方、高収縮
側の糸条(B)は、該珪酸塩層状物を低収縮側の糸条
(A)中の珪酸塩層状物含有量よりも少なく含有するか
もしくは含有しないポリアミドマルチフィラメント糸条
から主として構成されたものであることを特徴とする異
収縮糸である。
【0008】なお、かかる本発明の異収縮糸において、
好ましくは、低収縮側の糸条(A)を構成する繊維の単
糸繊度が、高収縮側の糸条(B)のそれよりも小さいも
のであることを特徴とするものであり、また、好ましく
は、低収縮側の糸条(A)が、高収縮側の糸条(B)よ
りもオーバーフィードされて、ループ、たるみ、または
交絡が形成されてなることを特徴とする異収縮糸であ
る。
【0009】
【作用】以下、さらに詳しく本発明について説明をす
る。本発明の異収縮糸は、その低収縮側の糸条として、
珪酸塩層状物の層間に少なくともポリアミドが一部存在
した状態下に該珪酸塩層状物がポリアミド中にミクロ分
散(非常に高度に分散しているミクロ分散という)して
なるポリアミド系マルチフィラメント糸条を用いたこと
に特徴を有するものであり、単にポリアミド樹脂中に無
機物質を練込み充填したもの、他の成分を共重合したも
の、他の合成樹脂からなる繊維と混繊等したものとは、
構造、作用、効果とも全く異なるものである。
【0010】かかる構成により、光沢、嵩高性に優れ、
手触りが柔らかい異収縮糸を得ることができ、また、布
帛とした際、風合いがソフトであり、ぬめり感が少な
く、高度のバルキー性を有するスパンライクな特性をか
もし出す、ループ、たるみあるいは交絡の形態堅牢性に
優れた嵩高糸を呈する異収縮糸を得ることができるので
ある。
【0011】本発明の低収縮サイドの糸条(A)は、珪
酸塩層状物の層間に少なくともポリアミドが一部存在し
た状態下に該珪酸塩層状物がポリアミド中にミクロ分散
してなるポリアミド系マルチフィラメント糸状からなる
ものであるが、かかるポリアミドとしては、例えば、ナ
イロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン61
0などおよびこれらの共重合物などの溶融紡糸可能なポ
リアミド類が挙げられる。
【0012】また、珪酸塩層状物としては、モンモリロ
ナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、
ヘクトライト、ソーコナイト等であり、中でもモンモリ
ロナイトまたはサポナイトが好ましく用いられる。
【0013】珪酸塩層状物の層間に少なくともポリアミ
ドの一部を存在せしめた状態下に、該珪酸塩層状物をポ
リアミド中にミクロ分散した珪酸塩層状物分散ポリアミ
ド複合体を作成する方法としては、例えば、下記、
の方法等を好ましいものとして挙げることができるが、
本発明はかかる方法に限定されるものではない。 珪
酸塩層状物に、例えば、12−アミノドデカン酸や14
−アミノテトラデカン酸などのカルボキシル基を有する
炭素数10以上のアルキル鎖を有する有機化合物の陽イ
オンを作用させ、該珪酸塩層状物の層間に吸着させた
後、所望のポリアミド形成モノマと混合し、少なくとも
該モノマの一部を該珪酸塩層状物の層間内で重合析出さ
せる方法。 ε−カプロラクタムなどラクタムあるい
は6−アミノ−n−カプロン酸などのポリアミドモノマ
ーの有機イオンを珪酸塩層状物に作用させ、該有機イオ
ンでイオン交換せしめた後、所望のポリアミド形成モノ
マと混合し、少なくとも該モノマの一部を該珪酸塩層状
物の層間内で重合析出させる方法。
【0014】かかる方法により、珪酸塩層状物をポリア
ミド中にミクロ分散することができる。ここで、該珪酸
塩層状物は、層間が拡大し、一層毎に分散した状態とな
ってもよく、また、層間は拡大しているが複数層がまと
まったものとして分散した状態のものであってもよく、
あるいは両者が混在した状態でミクロ分散したものであ
ってもよい。
【0015】珪酸塩層状物分散ポリアミド複合体におけ
るポリアミドに対する珪酸塩層状物の割合は、0.1〜
50重量%が好ましく、特に1〜20重量%が好まし
い。珪酸塩層状物の割合が、上記範囲をあまりにも超え
ると、溶融紡糸における曳糸性の低下や柔軟性、強度の
低下をきたすおそれがある。
【0016】また、かかる珪酸塩層状物は、実質的に繊
維軸方向に配列していることが好ましい。なお、本発明
でいう「実質的」な繊維軸方向への配列とは、透過型電
子顕微鏡(TEM)観察で、該珪酸塩層状物の陰影が繊
維軸の法線に対して45度の角度以上に繊維軸方向に向
いているものが70%以上であることをいう。かかる比
率が85%以上であれば特に好ましい。また、かかる配
向角は60度以上がより好ましく、70度以上が特に好
ましく、優れた効果が得られるものである。
【0017】一方、本発明における高収縮側の糸条
(B)は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、
ナイロン610などおよびこれらの共重合物などの溶融
紡糸可能なポリアミド類から主として構成されるもので
あるが、第3成分としてポリエステルなど他の成分から
なる糸条とから混成されたものであってもよい。
【0018】なお、かかる高収縮側の糸条(B)におい
て、上記珪酸塩層状物を含有させてもよいが、その場
合、該含有量としては、所望する収縮率差が得られるよ
う上記(A)のそれよりも少なくする必要がある。
【0019】本発明の異収縮糸は、上記低収縮側の糸条
(A)と高収縮側の糸条(B)から少なくとも構成され
てなるものであるが、かかる異収縮混用糸となす方法
は、従来から用いられてきている、同時溶融紡糸法、同
時延伸法、同時仮撚法、あるいは別延伸混繊糸法、タス
ラン加工などの流体交絡処理等の方法により混繊・合糸
して製造することができる。なお、例えば、タスラン加
工などの流体交絡処理によって混繊し、嵩高糸となす場
合においては、上記低収縮側の糸条(A)を高収縮側の
糸条(B)より、オーバーフィードして流体交絡処理す
るのが好ましい。異収縮糸としては、低収縮側の糸条
(A)が、高収縮側の糸条(B)よりもオーバーフィー
ドされて、ループ、たるみまたは交絡が形成されてなる
ものが、嵩高性などの本発明の所期の効果を良好に発揮
し得て好ましいものである。
【0020】異収縮の繊維どうしは、糸中でそれらが均
一に混ぜられてなる混繊糸構造のものであってもよい
し、あるいは均一に混ぜられていない芯鞘構造やサイド
バイサイド構造等の複合糸構造もしくは合撚糸構造等で
あってもよく、特別に限定されなく、適宜所望の目的、
用途などに合わせて具体的な糸の異収縮混構造は決定さ
れればよい。
【0021】かかる異収縮糸において、低収縮側の糸条
(A)と高収縮側の糸条(B)との収縮率の値の差は少
なくとも3%以上、好ましくは5%以上であるのが好ま
しい。
【0022】また、かかる異収縮糸において、低収縮側
の糸条(A)および高収縮側の糸条(B)における該マ
ルチフィラメント糸の断面形状としては、円形断面であ
ってもよいが、三角形、四角形のほか、Y字形、トライ
ローバル、十字形などの異形断面となすことにより、剛
性を高くし、より嵩高によるボリューム感と良好な外観
を兼ね備えた独特の感触のものが得られることから、よ
り好ましい。
【0023】なお、上記フィラメント糸条の単糸繊度と
しては、5デニール以下の範囲が好ましい。より好まし
くは、2デニール以下の範囲である。さらに、かかる構
成単糸繊度において、低収縮側の糸条(A)を構成する
単糸繊度が、高収縮側の糸条(B)のそれより平均とし
て小さくすると、より感触がソフトなものが得られるの
で好ましい。
【0024】かくして、本発明の異収縮糸は、織編物な
どの布帛とした際に、光沢、嵩高性に優れ、手触りが柔
らかく、高付加価値素材として、衣料用、特に外衣用な
どの用途に好ましく用いられるものである。
【0025】また、通常の織密度より緻密に製織するこ
とにより、ドレープ性に優れ、かつ独特の感触を有する
高級感のある布帛が得られるのみならず、樹脂含浸やコ
ーティングなどを施すことにより、良好な防水・撥水性
を有する布帛となすこともできる。特に、フッ素系撥水
・撥油剤を付与することにより、ドレープ性に優れ、か
つ、優れた透湿、撥水性を有する布帛となすこともでき
る。
【0026】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によって、本発明
の有効性や権利の範囲が限定されたり、制限を受けるも
のではない。むしろ、次の応用や展開をもたらすもので
ある。なお、実施例において、「割合」は全て重量に基
づくものである。
【0027】実施例1 モンモリロナイトと、NH2 C11H22COOHを用い
て、イオン交換されたモンモリロナイト有機複合物をε
−カプトラクタム中に添加し重合せしめる製造方法にて
珪酸塩層状物分散ポリアミド複合体チップ(モンモリロ
ナイト含量:5重量%)を作り、このポリマを用いて、
150d(デニール)/24f(フィラメント)のマル
チフィラメント未延伸糸条を得た。
【0028】一方、ナイロン6のみからなる150d/
17fのマルチフィラメント未延伸糸条を同様に紡糸し
た。
【0029】次いで、かかる2種類の未延伸糸条をイン
ターレースノズルに通して合糸しながら、同時延伸し
た。なお、上記2種類の糸条を同一条件にて、各々別々
に延伸したところ、珪酸塩層状物分散ポリアミド複合体
からなる糸条は、収縮しにくいものであって、両者の収
縮率差は5%であった。
【0030】かかる延伸糸を用いて、タテ110本/イ
ンチ、ヨコ100本/インチの織密度でタフタを試織
し、常法により精錬後、酸性染料を用い染色加工を施し
た。
【0031】得られた布帛は、光沢や嵩高性に優れ、手
触りが柔らかくぬめり感も少なく、ドレープ性に富んだ
ものであった。
【0032】実施例2 実施例1と同様の珪酸塩層状物分散ポリアミド複合体チ
ップ(モンモリロナイト含量:5重量%)を用い、トラ
イローバルな断面形状を有する、50d/48fの延伸
糸(A)を得た。かかる延伸糸の収縮率は5%であっ
た。
【0033】一方、ナイロン6のみからなる同様トライ
ローバルな断面形状を有する、50d/24f、収縮率
12%の延伸糸(B)を紡糸した。
【0034】次いで、かかる2種類の糸条をタスラン加
工に供した。各々の供給速度は糸条(B)の速度を10
0としたとき、糸条(A)は110とした。
【0035】かかる延伸糸をタテ110本/インチ、ヨ
コ90本/インチの織密度でタフタを試織し、常法によ
り精錬後、酸性染料を用い染色加工を施した。
【0036】得られた布帛は、製織、染色等の工程通過
によるループやたるみ等の低下、消失もなく、ふくらみ
感があって、ソフトであり、従来のナイロン特有のぬめ
り感は少なく、高度のバルキー性を有するスパンライク
な感じの高級感あるものであった。
【0037】
【発明の効果】本発明の異収縮糸は、既に述べたところ
からも明らかなように、その低収縮糸条として、珪酸塩
層状物の層間に少なくともポリアミドが一部存在した状
態下に該珪酸塩層状物がポリアミド中にミクロ分散して
いる繊維から主としてなる構成をとることにより、織編
物などの布帛とした際、光沢、嵩高性に優れ、しかも、
手触りが柔らかい高級感のある布帛を形成することがで
きるものである。
【0038】従って、本発明の異収縮糸は、高付加価値
素材として、衣料、特に、外衣などにも好ましく適用さ
れるものである。
【0039】また、通常の織密度より緻密に製織するこ
とにより、ドレープ性に優れ、かつ、独特の感触を有す
る高級感のある布帛が得られるのみならず、樹脂含浸や
コーティングなどを施すことにより、良好な防水・撥水
性を有する布帛となすことも可能である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】収縮率の異なる少なくとも2種以上のポリ
    アミド系マルチフィラメント糸条から構成された糸条で
    あって、該糸条を構成する低収縮側の糸条(A)は、少
    なくとも珪酸塩層状物の層間にポリアミドが一部存在す
    る珪酸塩層状物分散ポリアミド複合体から主としてな
    り、かつ該珪酸塩層状物が実質的に繊維軸方向に配列し
    てなるマルチフィラメント糸条であって、高収縮側の糸
    条(B)は、該珪酸塩層状物を低収縮側の糸条(A)中
    の珪酸塩層状物含有量よりも少なく含有するかもしくは
    含有しないポリアミドマルチフィラメント糸条から主と
    して構成されたものであることを特徴とする異収縮糸。
  2. 【請求項2】低収縮側の糸条(A)を構成する繊維の単
    糸繊度が、高収縮側の糸条(B)のそれよりも小さいも
    のであることを特徴とする請求項1記載の異収縮糸。
  3. 【請求項3】低収縮側の糸条(A)が、高収縮側の糸条
    (B)よりもオーバーフィードされて、ループ、たる
    み、または交絡が形成されてなることを特徴とする請求
    項1または2に記載の異収縮糸。
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