JPH0825730B2 - 水酸アパタイトの湿式合成法 - Google Patents

水酸アパタイトの湿式合成法

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JPH0825730B2
JPH0825730B2 JP30547990A JP30547990A JPH0825730B2 JP H0825730 B2 JPH0825730 B2 JP H0825730B2 JP 30547990 A JP30547990 A JP 30547990A JP 30547990 A JP30547990 A JP 30547990A JP H0825730 B2 JPH0825730 B2 JP H0825730B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、水酸アパタイトの湿式合成法に関するもの
である。
〔従来の技術〕 化学式Ca10(PO4)(OH)で表示される水酸アパタ
イトは人工骨等の生体材料として注目されている物質で
あり、種々の合成法が提案されている。
その中の一つとして、例えば特開昭62−252307号公報
に開示されている水酸アパタイトの湿式合成法では、水
酸化カルシウム懸濁液に撹拌下、pH11付近に至るまで2
〜4倍に希釈したリン酸水溶液を滴下し、この後、約5
倍以上に希釈したリン酸水溶液を滴下してpH10〜9に調
節し、得られた沈澱物を乾燥することにより、水酸アパ
タイトの合成を行っている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、上記従来の構成では、反応条件としてpH10
〜9を保つために水酸化カルシウム懸濁液に約5倍以上
に希釈した低濃度のリン酸水溶液を徐々に滴下している
ので、合成に非常に長い時間を要するという問題点を有
している。
〔課題を解決するための手段〕
請求項第1項の発明に係る水酸アパタイトの湿式合成
法は、上記の課題を解決するために、撹拌下、水酸化カ
ルシウム懸濁液に水酸アパタイトを分散させる水溶性高
分子分散剤を加えた後、リン酸水溶液をpH9〜11になる
まで加えることを特徴としている。
請求項第2項の発明に係る水酸アパタイトの湿式合成
法は、上記の課題を解決するために、撹拌下、反応温度
を5〜50℃に保ちながら、水酸化カルシウム懸濁液にリ
ン酸水溶液をpH9〜11になるまで加えた後、水酸アパタ
イトを分散させる水溶性高分子分散剤を加えることを特
徴としている。
〔作 用〕
請求項第1項の構成によれば、撹拌下、水酸化カルシ
ウム懸濁液に水酸アパタイトを分散させる水溶性高分子
分散剤を加えた後、リン酸水溶液をpH9〜11になるまで
加えるので、水酸化カルシウムとリン酸との反応により
生成した水酸アパタイト粒子によって水酸化カルシウム
粒子表面が覆われて反応が妨げられることが少なくな
る。これにより、水酸アパタイトの生成反応が速やかに
進行する。
請求項第2項の構成によれば、撹拌下、反応温度を5
〜50℃に保ちながら、水酸化カルシウム懸濁液に水酸ア
パタイトを分散させる水溶性高分子分散剤を加えた後、
リン酸水溶液をpH9〜11になるまで加えるので、水酸化
カルシウムとリン酸との反応により生成した水酸アパタ
イト粒子によって水酸化カルシウム粒子表面が覆われて
反応が妨げられることが少なくなる。これにより、水酸
アパタイトの生成反応が速やかに進行する。しかも、反
応温度を5〜50℃に保っているので、水溶性高分子分散
剤の重合反応が起こりにくくなり、粘度の低いスラリー
が得られる。
〔実施例1〕 200のステンレス製タンクに150のイオン交換水を
注入し、撹拌機(佐竹化学機械工業社製A510)にて撹拌
しながら、以下の操作を行った。
まず、20kgの水酸化カルシウム(日本石灰工業社製CH
−2N)を加えることにより、水酸化カルシウム懸濁液を
得た。この水酸化カルシウム懸濁液に水溶性高分子分散
剤として、アクリル酸のH+イオンがNH4 +イオンに置換さ
れている、分子量約1万のアクリル系−NH4(第一工業
製薬社製D−134)を加えて、アクリル系−NH4を0.5%
含む水酸化カルシウム懸濁液を調製し、これにリン酸水
溶液として85%リン酸(ラサ工業社製食品添加用)をpH
10になるまで一気に加えることにより、数10分間でスラ
リーが得られた。
なお、上記リン酸を加えた当初、スラリーの粘度は低
かったが反応熱による温度の上昇と共に高くなり、50℃
を越えた時点から、スラリーの粘度は増大してヨーグル
ト状になり、溶液表面がほとんど波打たない程度になっ
た。この粘度の増大は温度の上昇に伴う上記分散剤の重
合に依るものと考えられる。
上記スラリーを凍結乾燥機(セントラル科学貿易社製
FD−20−55−MP)にて乾燥させることにより粉末状の試
料が得られた。粉末X線回折法により生成物の同定を行
った結果、この試料は水酸アパタイトの単一相からなる
ことが分かった。また、走査電子顕微鏡写真により粒子
径を調べた結果、粒径が0.1μm以下の球状微粒子から
なることが分かった。
なお、スラリーの粘度の高低は上記結果には影響を与
えなかった。また、上記水酸化カルシウム懸濁液に加え
るアクリル系−NH4の濃度を0.1〜20%の範囲で変えた場
合も上記と同様の結果が得られた。
また、リン酸を加える際、pH11よりも大きくなると炭
酸カルシウムが生じやすく、pH9よりも小さくなるとβ
−リン酸三カルシウム〔Ca3(PO4〕が生じやすく、
pHよりも小さくなるとβ−リン酸三カルシウム〔Ca3(P
O4〕が生じてしまうので、pH9〜11にすることが単
一な水酸アパタイトを製造する上で好ましい。
また、水酸化カルシウム懸濁液における水酸化カルシ
ウム濃度は10〜30%程度であることが、単一な水酸アパ
タイトを効率良く製造する上で適当である。
〔実施例2〕 前記実施例1において、水溶性高分子分散剤として、
分子量約1万のアクリル系−NH4(第一工業製薬社製D
−134)の代わりに、分子量約2万のアクリル系−NH
4(第一工業製薬社製D−102)を用いた場合も、上記実
施例1と同様の効果が得られた。
〔実施例3〕 前記実施例1において、水溶性高分子分散剤として、
分子量約1万のアクリル系−NH4(第一工業製薬社製D
−134)の代わりに、分子量約1万のアクリル系−HH
(第一工業製薬社製D−134A)を用いた場合も、前記実
施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例4〕 前記実施例1において、水溶性高分子分散剤として、
分子量約1万のアクリル系−NH4(第一工業製薬社製D
−134)の代わりに、無水マレイン酸系(第一工業製薬
社製D−114)を用いた場合も、前記実施例1と同様の
結果が得られた。
〔実施例5〕 反応温度を50℃以下に保つために冷却槽付きの300
のステンレス製タンクに150のイオン交換水を注入
し、撹拌機(佐竹化学機械工業社製A510)にて撹拌しな
がら、以下の操作を行った。
まず、20kgの水酸化カルシウム(日本石炭工業社製CH
−2N)を加えることにより、水酸化カルシウム懸濁液を
得た。この水酸化カルシウム懸濁液に85%リン酸(ラサ
工業社製食品添加用)をpH10になるまで一気に加えた。
その後、水溶性高分子分散剤として、分子量約1万のア
クリル系−NH4(第一工業製薬社製D−134)をその濃度
が0.5%になるように加えることにより、数分間で市販
の牛乳程度にさらさらした粘度のスラリーが得られ、撹
拌も容易であった。これは、反応温度を50℃以下に保っ
たために、上記分散剤の重合があまり進まなかったため
と考えられる。
上記スラリーを凍結乾燥機(セントラル科学貿易社製
FD−20−55−MP)にて乾燥させることにより粉末状の試
料が得られた。粉末X線回折法により生成物の同定を行
った結果、この試料は水酸アパタイトの単一相からなる
ことが分かった。また、走査電子顕微鏡写真により粒子
径を調べた結果、粒径が0.1μm以下の球状微粒子から
なることが分かった。
なお、反応温度が低すぎると、水酸アパタイトの反応
速度が小さくなり過ぎ、合成に時間を要することになる
ので、5℃以上に反応温度を保つことが望ましい。
〔比較例〕
200のステンレス製タンクに150のイオン交換水を
注入し、撹拌機(佐竹化学機械工業社製A510)にて撹拌
しながら、以上の操作を行った。
まず、20kgの水酸化カルシウム(日本石灰工業社製CH
−2N)を加えることにより、水酸化カルシウム懸濁液を
得た。この水酸化カルシウム懸濁液に85%リン酸(ラサ
工業社製食品添加用)をpH10になるまで一気に加えた
が、その途端、かなりの発熱が起こると共に、粘度が上
昇して上記撹拌機による撹拌が不能になった。
上記スラリーを凍結乾燥機(セントラル科学貿易社製
FD−20−55−MP)にて乾燥させることにより粉末状の試
料が得られた。粉末X線回折法により生成物の同定を行
った結果、この試料は水酸アパタイトの単一相からなる
のではなく、水酸アパタイト、β−リン酸三カルシウム
〔Ca3(PO4〕及び未反応の水酸化カルシウムの混合
相からなることが分かった。
以上の実施例1〜5では、水溶性高分子分散剤として
アクリル系の分散剤を挙げたが、水酸化カルシウム粒子
表面に存在して、水酸化カルシウムとリン酸との過度の
反応を抑制すると共に、水酸化カルシウムとリン酸との
反応で生成した水酸アパタイト粒子を水酸化カルシウム
粒子表面から分散させる働きをし、かつ、生成した水酸
アパタイトを溶解しないものであれば、いかなる水溶性
高分子分散剤であってもよく、ポリアクリル酸塩以外に
も例えば、ニトロフミン酸塩、リグニンスルフォン酸
塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の分散剤が用
いられる。
このような水溶性高分子分散剤の存在下では、水酸化
カルシウム懸濁液に高濃度のリン酸を一気に加えても水
酸化カルシウムとリン酸との反応による発熱がある程度
抑えられ、しかも、生成した水酸アパタイト粒子により
水酸化カルシウム粒子表面が覆われて反応が妨げられる
ことが少なくなるため、本実施例のように水酸アパタイ
トの生成反応が速やかに進行すると考えられる。
〔発明の効果〕
請求項第1項の発明に係る水酸アパタイトの湿式合成
法は、以上のように、撹拌下、水酸化カルシウム懸濁液
に水酸アパタイトを分散させる水溶性高分子分散剤を加
えた後、リン酸水溶液をpH9〜11になるまで加えるの
で、水酸化カルシウムとリン酸との反応により生成した
水酸アパタイト粒子によって水酸化カルシウム粒子表面
が覆われて反応が妨げられることが少なくなる。これに
より、水酸アパタイトの生成反応や速やかに進行するの
で、短時間で大量の水酸アパタイトを合成できるという
効果を奏する。
請求項第2項の発明に係る水酸アパタイトの湿式合成
法は、以上のように、撹拌下、反応温度を5〜50℃に保
ちながら、水酸化カルシウム懸濁液に水酸アパタイトを
分散させる水溶性高分子分散剤を加えた後、リン酸水溶
液をpH9〜11になるまで加えるので、水酸化カルシウム
とリン酸との反応により生成した水酸アパタイト粒子に
よって水酸化カルシウム粒子表面が覆われて反応が妨げ
られることが少なくなる。これにより、水酸アパタイト
の生成反応が速やかに進行するので、短時間で大量の水
酸アパタイトを合成できるという効果を奏する。しか
も、反応温度を5〜50℃に保っているので、水溶性高分
子分散剤の重合反応が起こりにくくなり、粘度の低いス
ラリーが得られる。このため、撹拌が容易になるという
効果も併せて奏する。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】撹拌下、水酸化カルシウム懸濁液に水酸ア
    パタイトを分散させる水溶性高分子分散剤を加えた後、
    リン酸水溶液をpH9〜11になるまで加えることを特徴と
    する水酸アパタイトの湿式合成法。
  2. 【請求項2】撹拌下、反応温度を5〜50℃に保ちなが
    ら、水酸化カルシウム懸濁液にリン酸水溶液をpH9〜11
    になるまで加えた後、水酸アパタイトを分散させる水溶
    性高分子分散剤を加えることを特徴とする水酸アパタイ
    トの湿式合成法。
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EP1132431A4 (en) * 1998-11-13 2007-05-02 Mitsui Chemicals Inc AQUEOUS DISPERSION OF AN ORGANIC POLYMER AND INORGANIC FINE PARTICLES HAVING EXCELLENT DISPERSION STABILITY AND USE THEREOF

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