JP4625923B2 - リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法 - Google Patents

リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法 Download PDF

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本発明は、リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、有機マトリックス内部に分散する水系溶媒よりなる結晶成長場で、無機結晶の核形成誘導及び結晶成長場への反応物質の供給制御により、リン酸カルシウムナノ粒子を製造する方法に関するものである。本発明は、骨や歯を構成する無機物質との組成・結晶構造の類似性から生体適合性を有し、人工骨あるいは人口歯根等へ応用されているリン酸カルシウムナノ粒子に関する技術分野において、従来法では、サイズ、形状及び凝集構造を制御したリン酸カルシウムナノ粒子を製造することが困難であったことを踏まえ、リン酸カルシウムの結晶核形成の誘導及びリン酸カルシウムの結晶成長に必要な無機イオンの反応場への供給を制御して、サイズ、形状及び凝集状態の制御されたリン酸カルシウムナノ粒子を製造することを可能とする、リン酸カルシウムナノ粒子の新規な製造方法を提供するものである。本発明は、サイズ、形状及び単分散あるいはカードハウス構造などの凝集状態が制御されたリン酸カルシウムナノ粒子を製造し、提供することを可能にするものである。
リン酸カルシウムは、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))として、骨や歯を構成する無機物質との元素組成及び結晶構造における類似性から、生体適合性を有しているので、人工骨あるいは人工歯根等として応用されている。また、リン酸カルシウムは、生体高分子化合物の分離・精製に用いるクロマトグラフィーの充填剤としても利用され、更には、薬剤の担体としてドラッグデリバリーシステムへの利用も検討されている。特に、リン酸カルシウムナノ粒子は、高い比表面積を有するため、このような用途に好適である。なお、ここでいうナノ粒子は、粒径500nm以下のものを指している。
上記の用途に用いるリン酸カルシウムナノ粒子を製造する場合に、より高い生体親和性及び生体骨を構成する無機物質との結晶構造の類似性を維持する上では、加熱処理を経ない、常温の製造過程によることが望ましい。また、投入エネルギーの節約の観点から見ても、リン酸カルシウムナノ粒子の製造には、常温製造が望ましい。また、リン酸カルシウムナノ粒子の利用を考えると、単分散粒子と、結晶子が凝集した構造(板状結晶の凝集したカードハウス構造など)の粒子とを任意に作り分けられることが望ましい。例えば、リン酸カルシウムナノ粒子の単分散粒子は、生体材料、クロマトグラフィーの充填剤などに利用可能であり、リン酸カルシウムナノ粒子の結晶子が凝集した凝集体構造は、結晶子の間に別の物質を担持させ、薬剤の除放(ドラッグデリバリーシステム)などに応用できることから、リン酸カルシウムナノ粒子を製造する際に、それらを作り分けられることが望ましい。
リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法としては、これまでに、エマルジョン又はマイクロエマルジョン内部での結晶成長により、そのサイズを規定する方法が知られている。例えば、界面活性剤/水/無極性有機液体系又は界面活性剤/水/アルカノール/無極性有機液体系のW/O型マイクロエマルジョン相に、Ca(NO/アンモニア水溶液及び(NHHPO/アンモニア水溶液をそれぞれ可溶化させ、これらの可溶化液を混合することにより粒径100nm以下の球状ハイドロキシアパタイト粒子を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、より大きいハイドロキシアパタイト粒子を製造するために、非イオン性界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液及びリン酸溶液を可溶化して混合し、反応させてハイドロキシアパタイト粒子を合成する方法において、非イオン性界面活性剤の曇点以上の温度で反応させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
このような、W/O型エマルジョンないしはW/O型マイクロエマルジョン内部での結晶成長により、そのサイズを規定する公知の方法では、粒子サイズを制御するために、相分離による微小な空間内に単一の結晶子を形成させている。換言すれば、公知の方法では、有機マトリックスに鋳型としての役割を果たさせているため、鋳型の形を変えない限り、結晶子のサイズ及び形状の制御が制限され、また、結晶子の凝集構造を制御することもできないという問題があった。
特開平5−17111号公報 特開2002−137910号公報
このような状況下にあって、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、粒子のサイズ、形状及び凝集状態を制御したナノサイズのリン酸カルシウム粒子を、簡便な方法で製造することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、有機マトリックス内部に分散する水系溶媒よりなる結晶成長場で、無機結晶の核形成誘導及び結晶成長場への反応物質の供給制御により、所望のリン酸カルシウムナノ粒子を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、粒子のサイズ、形状及び凝集状態を制御することを可能とするリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法を提供することを目的とするものであり、それにより得られるサイズと構造が制御されたリン酸カルシウムナノ粒子を提供することを可能とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成されている。
(1)有機マトリックス内部に分散する水系溶媒よりなる結晶成長場で、無機結晶の核形成誘導及び結晶成長場への反応物質の供給制御により、リン酸カルシウムナノ粒子を製造する方法において、1)有機溶媒及びジ(2エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムを含む有機マトリックスに反応物質のカルシウムイオン供給源とリン酸イオン供給源を含む水系溶媒を分散させる、2)有機マトリックスにおける結晶核形成誘導能及び反応物質の供給を制御する、3)有機マトリックスに包含される水系溶媒中でリン酸カルシウムの結晶核形成・結晶成長を促進させる、4)上記1)〜3)により、サイズ・構造を制御したリン酸カルシウムナノ粒子を作製する、リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法であって、
反応物質の供給速度に対する結晶核形成の形成頻度を調整することにより、平均粒子径が10〜100nmで単分散状態のナノ粒子と、平均粒子径が100〜500nmで凝集状態のリン酸カルシウムナノ粒子の凝集体を作り分けることを特徴とするリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
(2)カルシウムの供給源として、水酸化カルシウム及び/又はハロゲン化カルシウム、リン酸イオン供給源としてオルトリン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を使用する、前記(1)に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
(3)反応を15〜35℃の温度範囲で行う、前記(1)に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
(4)反応系のpHを7.0〜12.0に調整する、前記(1)に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
(5)撹拌、ポンプによる液送又は超音波によって、有機マトリックスのマクロ構造を均一化し、水系溶媒の分散状態を制御する、前記(1)に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
(6)反応物質の供給速度を制御する、前記(1)に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
(7)カルシウム化合物及びリン酸化合物の使用量を、リン原子に対するカルシウム原子のモル比として、1.2〜4.0の範囲で変える、前記(1)に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、有機マトリックス内部に分散する水系溶媒よりなる結晶成長場で、無機結晶の核形成誘導及び結晶成長場への反応物質の供給制御により、サイズ、形状及び凝集状態を制御したナノサイズのリン酸カルシウム粒子を製造することを特徴とするものである。
本発明では、有機マトリックスに対し、反応物質のカルシウムイオン供給源とリン酸イオン供給源を含む水系溶媒を混合して有機マトリックス中に水系溶媒を分散させ、有機マトリックスに囲まれた水系溶媒中でリン酸カルシウムナノ粒子を結晶成長させる。本発明では、有機マトリックスとして、結晶核形成を誘導する官能基を有する高分子が使用される。上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などが例示される。
機マトリックスにおいて、有機溶媒に結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物を分散させ、結晶核形成を誘導する官能基の割合を変えることで、結晶核形成の誘導能を制御することができる。有機マトリックス中の結晶核形成を誘導する官能基の割合を変えるには、リン酸カルシウムの結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物における官能基の数を変える方法、及び有機マトリックスにおける結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物の含有量を変える方法が例示される。
本発明で、上記結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物としては、ジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムが用いられる
また、有機マトリックスにおける結晶核形成を誘導する官能基の割合を変える際に、結晶核形成を誘導する官能基の量を、水溶液中のカルシウムイオンに対するモル比にして1.0〜100の間で変えることが好ましい。モル比1.0よりも少なくすると、リン酸カルシウムの自発沈殿が支配的となる傾向が現れ、モル比100を超えると、カルシウムイオンが官能基と結合するのみで消費され、充分な結晶成長が起きない傾向が現れる。
本発明では、リン酸カルシウムの結晶成長に必要なイオンの供給源として、リン酸イオンの供給源としては、例えば、オルトリン酸又はそのアルカリ金属塩などが用いられ、カルシウムイオンの供給源としては、例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウムハロゲン化物などが用いられる。
本発明では、上記イオンの供給源は、水溶液として用いられるが、その濃度を変えることによって、水系溶媒におけるリン酸カルシウムの結晶成長に必要な反応物質(カルシウムイオン及びリン酸イオン)の濃度及びその量を変えることができ、その結果、反応場への反応物質の供給速度及び供給量を変えることができる。カルシウム化合物及びリン酸化合物の使用量は、化学量論的な相互割合を基本とし、リン原子に対するカルシウム原子のモル比として、1.2〜4.0の範囲で、水溶液中のカルシウム原子及びリン原子の濃度として、それぞれ0.05mol/L〜5.0mol/L、0.03〜3.0mol/Lの間で変えることが望ましい。それぞれの上限は、液体の粘度が上昇して充分な撹拌が不可能となってしまうためであり、それぞれの下限は、リン酸カルシウムの結晶成長に必要な反応物質が少なくなり、結晶成長に時間がかかり過ぎるとともに、得られるリン酸カルシウムナノ粒子の量も少なくなってしまうためである。
本発明のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法を具体的に説明すると、先ず、有機溶媒、結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物及びリン酸カルシウムの結晶成長に必要なイオンの供給源の水溶液を混合し、マイクロエマルジョンを形成維持する。この場合、有機溶媒と結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物との混合物、カルシウムイオンの供給源の水溶液及びリン酸イオンの供給源の水溶液を別々に用意しておき、リン酸カルシウムナノ粒子の製造の際に、それらを混合し、マイクロエマルジョンを形成維持するようにしてもよい。本発明の方法における温度条件は、好適には、例えば、15〜35℃ある。マイクロエマルジョンを形成維持する際に、結晶成長反応の進行中、撹拌子もしくは撹拌棒などによる撹拌又はポンプによる液送によって有機マトリックスのマクロ構造の均一化及び結晶成長場のサイズ制御を行なうこと、あるいは超音波の利用などにより、有機マトリックスのマクロ構造の均一化及び結晶成長場のサイズ制御を行なうことにより、有機マトリックスのマクロ構造の均一化及び水系溶媒の分散状態の制御を図ることが好ましい。マイクロエマルジョン中で生成したリン酸カルシウムナノ粒子は、例えば、遠心分離、デカンテーション、溶媒の蒸発などにより分別し、水、エタノール、アセトンなどで洗浄してから、乾燥させてリン酸カルシウムナノ粒子製品とする。あるいは、洗浄・乾燥を経ることなく、有機溶媒中にリン酸カルシウムナノ粒子が分散した状態で製品としてもよい。
また、マイクロエマルジョンを形成維持するに先立って、緩衝液により、反応物質のpHを7.0以上、望ましくは7.0〜12.0に調整することが好ましい。この場合に、緩衝液として、トリス緩衝液、グッド緩衝液などを用いてもよいが、リン酸カルシウムの結晶成長に必要な両イオンの供給源の水溶液をpH調整することで、緩衝液として機能させることも可能である。pHが7.0よりも低いと、酸性領域で安定なリン酸カルシウム結晶(リン酸八カルシウムなど)が析出し、結晶子サイズが大きくなる傾向が現れる。
本発明では、リン酸カルシウムの結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物の割合及び/又はその官能基の数、有機マトリックスにおけるリン酸カルシウムの結晶形成を誘導する官能基の数、反応場への反応物質の供給速度及び量を調節することによって、得られるリン酸カルシウムナノ粒子の、サイズ、形状及び分散・凝集状態を調節することができる。結晶核形成の誘導能が相対的に高く、反応物質の供給が穏やかな系では、粒径100nm以下のハイドロキシアパタイトナノ粒子が単分散の状態で得られ、また、結晶核形成の誘導能が相対的に低く、反応物質の供給が急激な系では、100〜500nmのハイドロキシアパタイト板状ナノ粒子の凝集体(カードハウス構造)が得られる(図4参照)。
図1に、粒子形成のメカニズム、得られるナノ粒子のサイズ及び粒子の凝集状態を説明するための概念図を示す。
有機溶媒としてのシクロヘキサンと、リン酸カルシウムの結晶核形成を誘導する官能基を有する有機化合物としてのジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムとの混合物に、反応物質の供給源としての水酸化カルシウム及びリン酸二水素カリウムを水溶液として混合し、攪拌してマイクロエマルジョンを形成維持した場合で説明すると、シクロヘキサンに囲まれた、中が反応物質を含む水系媒体が形成される。水系媒体のシクロヘキサンとの界面付近では、ジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムが、親水基である−SO 基を水系溶媒側に、疎水基である2−エチルヘキシル基をシクロヘキサン側にして配向し、有機マトリックスに囲まれた水系溶媒が結晶成長場となる。−SO 基は、カルシウムイオンとの相互作用で、結晶核形成の誘導能を示すと考えられる。
このように、結晶核形成を誘導する官能基、すなわち、−SO 基を有する有機マトリックスに囲まれた水系溶媒中で、結晶形成が進行する。官能基による結晶核形成の形成頻度と、反応物質の反応場への供給速度を制御することにより、サイズ及び構造を作り分けることが可能である。反応物質の反応場への供給に対し、結晶核形成の頻度が高い場合、平均粒径10〜100nmのナノ粒子が単分散の状態で得られる。反応物質の反応場への供給に対し、結晶核形成の頻度が低い場合、個々の結晶が大きく成長し、先にできた結晶子の表面を核形成サイトとして別の結晶子が形成されるため、平均粒径100〜500nmのナノ粒子の凝集体が得られる。
本発明は、有機マトリックス内部に分散する水系溶媒よりなる結晶成長場で、無機結晶の核形成誘導及び結晶成長場への反応物質の供給制御により、サイズ、形状及び凝集状態が制御されたリン酸カルシウムナノ粒子を製造する方法に係るものであり、本発明により、(1)簡便な工程により、サイズ、形状及び凝集状態が制御されたリン酸カルシウムナノ粒子を製造することができる、(2)結晶核形成の形成頻度と、反応物質の供給速度を制御することにより、サイズと構造を作り分けることが可能となる、(3)反応物質の供給に対し、結晶核形成の頻度を相対的に高くすることにより、平均粒径10〜100nmのナノ粒子が単分散の状態で得られ、反応物質の供給に対し、結晶核形成の頻度を相対的に低くすることにより、平均粒径100〜500nmのナノ粒子の凝集体が得られる、(4)単分散粒子の場合、それ自体が薬剤、生体材料として利用可能であり、カードハウス構造などの凝集体の場合、粒間に別の物質を担持させることが可能であり、ドラッグデリバリーシステムなどにおける薬剤の担体として利用可能である、いう格別の効果が奏される。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(1)リン酸カルシウムナノ粒子の製造
本実施例では、結晶核形成の誘導能が高く、反応物質の供給速度が相対的に小さい系を作製した。有機マトリックスとして、シクロヘキサン及びジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムの混合物を用い、リン酸カルシウムの結晶成長に必要なイオンの供給源として、水酸化カルシウム水溶液及びリン酸二水素カリウム水溶液を用いた。シクロヘキサン16.5g及びジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウム9.0gと、pHを7.1に調整した、水酸化カルシウム0.02g及びリン酸二水素カリウム0.02gの水溶液4.5gを混合し、72時間撹拌した。得られたリン酸カルシウムナノ粒子を、水及びエタノールによって洗浄し、乾燥させた。
(2)リン酸カルシウムナノ粒子の特性
得られたリン酸カルシウムナノ粒子のサイズ及び凝集状態について、透過型電子顕微鏡(TEM)によってキャラクタリゼーションを行なった。図2に、高分解能透過型電子顕微鏡写真を示す。観察された結晶格子はリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトの結晶構造に帰属され、得られたナノ粒子がハイドロキシアパタイトであることが確認された。また、図4に、透過型電子顕微鏡像を示す。この図から分かるように、結晶核形成の誘導能が相対的に高く、反応物質の供給が穏やかな系では、粒径100nm以下のナノ粒子が単分散の状態で得られた。
(1)リン酸カルシウムナノ粒子の製造
本実施例では、結晶核形成の誘導能が低く、反応物質の供給速度が相対的に大きい系を作製した。有機マトリックスとして、シクロヘキサン及びジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムの混合物を用い、リン酸カルシウムの結晶成長に必要なイオンの供給源として、水酸化カルシウム水溶液及びリン酸二水素カリウム水溶液を用いた。シクロヘキサン21.0g及びジ(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウム6.0gと、pHを7.2に調整した、水酸化カルシウム0.45g及びリン酸二水素カリウム0.24gの水溶液3.6gを混合し、72時間撹拌した。得られたリン酸カルシウムナノ粒子を、水及びエタノールによって洗浄し、乾燥させた。
(2)リン酸カルシウムナノ粒子の特性
得られたリン酸カルシウムナノ粒子のサイズ及び凝集状態について、粉末X線回折及び透過型電子顕微鏡(TEM)によってキャラクタリゼーションを行なった。図3に、粉末X線回折による測定結果を示す。この図から、回折パターンのピークは、リン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトの結晶構造に帰属され、得られたナノ粒子がハイドロキシアパタイトであることが確認された。図4に、透過型電子顕微鏡像を示す。この図から分かるように、結晶核形成の誘導能が相対的に低く、反応物質の供給が急激な系では、100〜500nmの板状ナノ粒子が凝集したカードハウス構造が形成された。
以上詳述したように、本発明は、リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法に係るものであり、本発明により、結晶核形成を誘導する官能基による結晶核の形成頻度と、反応物質の供給速度とを制御することにより、粒子サイズ及び粒子の構造を作り分けることが可能であり、それにより、形状及び凝集状態が制御されたリン酸カルシウムナノ粒子を製造することができる。結晶核形成の形成頻度と反応物質の供給速度を制御することにより、平均粒径10〜100nmのナノ粒子が単分散の状態で得られ、また、平均粒径100〜500nmのナノ粒子の凝集体が得られる。本発明で得られるリン酸カルシウムナノ粒子は、単分散ナノ粒子である場合は、それ自体が薬剤、生体材料として利用可能であり、また、カードハウス構造などの凝集体である場合は、粒間に別の物質を担持させることが可能であるため、ドラッグデリバリーシステムなどにおける薬剤の担体として利用可能である。本発明により、リン酸カルシウムナノ粒子の新しい生産技術として、サイズ及び構造を任意に制御した新しいリン酸カルシウムナノ粒子を提供することができる。
本発明の、有機マトリックス内部でのリン酸カルシウムナノ粒子合成を模式的に示す説明図である。 実施例1で得られたリン酸カルシウムナノ粒子の高分解能透過型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られたリン酸カルシウムナノ粒子の粉末X線回折測定結果を示す。 実施例1及び2で得られた各リン酸カルシウムナノ粒子のサイズ、形状及び凝集状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. 有機マトリックス内部に分散する水系溶媒よりなる結晶成長場で、無機結晶の核形成誘導及び結晶成長場への反応物質の供給制御により、リン酸カルシウムナノ粒子を製造する方法において、(1)有機溶媒及びジ(2エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムを含む有機マトリックスに反応物質のカルシウムイオン供給源とリン酸イオン供給源を含む水系溶媒を分散させる、(2)有機マトリックスにおける結晶核形成誘導能及び反応物質の供給を制御する、(3)有機マトリックスに包含される水系溶媒中でリン酸カルシウムの結晶核形成・結晶成長を促進させる、(4)上記(1)〜(3)により、サイズ・構造を制御したリン酸カルシウムナノ粒子を作製する、リン酸カルシウムナノ粒子の製造方法であって、
    反応物質の供給速度に対する結晶核形成の形成頻度を調整することにより、平均粒子径が10〜100nmで単分散状態のナノ粒子と、平均粒子径が100〜500nmで凝集状態のリン酸カルシウムナノ粒子の凝集体を作り分けることを特徴とするリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
  2. カルシウムの供給源として、水酸化カルシウム及び/又はハロゲン化カルシウム、リン酸イオン供給源としてオルトリン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を使用する、請求項1に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
  3. 反応を15〜35℃の温度範囲で行う、請求項1に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
  4. 反応系のpHを7.0〜12.0に調整する、請求項1に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
  5. 撹拌、ポンプによる液送又は超音波によって、有機マトリックスのマクロ構造を均一化し、水系溶媒の分散状態を制御する、請求項1に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
  6. 反応物質の供給速度を制御する、請求項1に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
  7. カルシウム化合物及びリン酸化合物の使用量を、リン原子に対するカルシウム原子のモル比として、1.2〜4.0の範囲で変える、請求項1に記載のリン酸カルシウムナノ粒子の製造方法。
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