JPH08254839A - 電子写真用感光体の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】電荷発生層の塗布性と感光体特性に優れる電子
写真用感光体の製法を得る。 【構成】ナトリウムアルコキシド，ナトリウム有機酸
塩、カリウムアルコキシドまたはカリウム有機酸塩の群
から選ばれた少なくとも一つを用いて電荷発生物質を有
機溶媒中に分散させた塗布液を用いて電荷発生層２を形
成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は電子写真用感光体の製造
方法に係り、特に電荷発生層、電荷輸送層が有機材料を
含んで電子写真方式のプリンター，複写機などに用いら
れる積層型の電子写真用感光体の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、レーザービームプリンターや複写
機用として、有機感光体が広く用いられるようになり、
その感光材料として、有機光導電性物質の研究が進めら
れている。有機光導電性物質を用いた感光体は、従来用
いられているセレンなどの無機光導電性物質を用いた場
合に比して、可とう性，熱安定性，膜形成性，透明性，
価格などの点で利点があるが、暗抵抗，光感度の点で無
機光導電性物質を用いた場合に劣っている。そこで膜形
成が容易である利点を生かして、感光体の感光層を主と
して電荷発生に寄与する層と、暗所での表面電荷の保持
および光受容時の電荷輸送に寄与する層とに機能分離し
た積層構造が考案され、それぞれ各層の機能に適した材
料の選択により全体として電子写真特性の向上をはかる
構成のものが現在主流になっている。

【０００３】この種の積層型感光体は、通常導電性基体
上に有機電荷発生物質を含む電荷発生層と、有機電荷輸
送物質を含む電荷輸送層を形成した構造が採られてい
る。この電荷発生層はレーザープリンター用には、赤外
光領域に吸収ピークを有するフタロシアニン化合物など
を、複写機用には可視光領域に吸収ピークを有するアゾ
化合物等を電荷発生物質として、ポリエステル，アクリ
ルなどの結着樹脂バインダー中に分散させた塗布液によ
り塗布形成している。一方、電荷輸送層はヒドラゾン，
スチルベン誘導体等の低分子化合物を電荷輸送物質とし
て、ポリカーボネート等の結着剤樹脂バインダーと混合
させた塗布液により塗布形成している。

【０００４】この積層型感光体を用いた実際の画像形成
に際しては、カールソン方式が適用される。具体的には
暗所での感光体へのコロナ放電による帯電，帯電された
感光体表面への露光による原稿の文字や絵などの静電潜
像の形成，形成された静電潜像のトナーによる現像，現
像されたトナー像の紙などの支持体への転写定着により
行われ、トナー像転写後の除電，残留トナーの除去，光
除電などを行った後、再使用に供される。かかる積層型
感光体は電荷発生部と電荷輸送部を機能分離しているの
で、それぞれ最適に設計ができるため特性面で有利であ
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述のように有機材料
は多くの利点を持つが、感光体として要求される全ての
電子写真特性を十分に満足するものは現在のところ得ら
れていない。積層型感光体の作製行程においては、とり
わけ電荷発生物質である有機顔料を有機溶媒に分散する
工程が重要であり、有機顔料成分が増加すると分散性お
よび液安定性が悪化してくる。特に液安定性への影響が
大きく、分散液中の顔料の平均粒径が時間経過とともに
大きくなり、塗工性が悪化し、塗工ムラが生じる。ひい
ては外観不良による画像ムラの発生を引き起こす。また
感光体特性としては帯電保持率が低下し、品質安定性を
低下させる欠点があった。これは顔料粒子が二次凝集体
を形成することに起因し、従来よりこの欠点を解消する
ために表面改質を施したり、塗布液の再分散を行うなど
の工程を増やして対処していたが、コスト上昇につなが
り好ましくなかった。また一般的に分散性の向上には、
界面活性剤が有効であるが感光体の塗布液の分散性の向
上に十分に機能するものは得られていない。

【０００６】この発明は上述の点に鑑みてなされその目
的は、電荷発生層の塗布液中の有機顔料の分散性の向上
と安定化を図ることにより、高感度で品質の安定した電
子写真用感光体の製造方法を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上述の目的はこの発明に
よれば導電性基体上に電荷発生層，電荷輸送層を設けて
なる電子写真用感光体の製造方法において、ナトリウム
アルコキシド，ナトリウム有機酸塩、カリウムアルコキ
シドまたはカリウム有機酸塩の群から選ばれた少なくと
も一つを用いて電荷発生物質を有機溶媒中に分散させ、
この塗布液を用いて電荷発生層を形成するとすることに
より達成される。

【０００８】上述の発明において有機溶媒はケトン類，
エーテル類，アルコール類の群から選ばれた少なくとも
一つであること、または電荷発生物質がビスアゾ顔料で
あるとすることが有効である。ナトリウムアルコキシ
ド，ナトリウム有機酸塩，カリウムアルコキシド，カリ
ウム有機酸塩の具体例が化学式（Ｉ−１）ないし化学式
（Ｉ−１９）に示される。

【０００９】

【化１】

【００１０】

【化２】

【００１１】

【作用】ナトリウムアルコキシド，ナトリウム有機酸
塩，カリウムアルコキシド，カリウム有機酸塩を添加せ
しめることにより、電荷発生物質の有機溶媒中における
分散安定性が向上する。有機溶媒がケトン類，エーテル
類，アルコール類の群から選ばれた少なくとも一つであ
るときにまたは電荷発生物質がビスアゾ顔料であるとき
に分散性が最も良くなる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照
しながら説明する。図１はこの発明の実施例に係る負帯
電積層型の電子写真用感光体を示す断面図である。感光
体は支持体１，電荷発生層２，電荷輸送層３より構成さ
れる。電荷発生層２と電荷輸送層３は感光層４となる。
図中で白丸は分散剤を示す。

【００１３】図２はこの発明の実施例に係る正帯電積層
型の電子写真用感光体を示す断面図である。感光体は支
持体１，電荷輸送層３，電荷発生層２，表面被覆層５よ
り構成される。電荷発生層２と電荷輸送層３は感光層４
となる。図中で白丸は分散剤を示す。支持体である導電
性基体１としては、アルミニウム製円筒やアルミニウム
蒸着フィルム等の導電性基体単独、あるいは該導電性基
体の表面をアルマイト化したもの、あるいは樹脂皮膜な
どによる表面修飾を施したものが用いられる。本実施例
では該導電性基体としてアルミニウム製の肉厚１ｍｍ、
長さ３１０ｍｍ、外径６０ｍｍの円筒基体を洗浄、乾燥
したものを用いた。表面修飾に用いられる高分子分散皮
膜の材料としてはカゼイン，ポリビニルアルコール，ナ
イロン，ポリアミド，メラニン，セルロースなどの絶縁
性高分子あるいはポリチオフェン，ポリピロール，ポリ
アニリンなどの導電性高分子、あるいはこれら高分子に
金属酸化物粉末，低分子化合物を含有せしめたものが用
いられる。

【００１４】電荷発生層２は、電荷発生物質と樹脂バイ
ンダーより構成される。電荷発生物質としては、ビスア
ゾ化合物を用いることができる。電荷発生層用のバイン
ダーとしては、ポリカーボネート，ポリエステル，ポリ
アミド，ポリウレタン，エポキシポリビニルブチラー
ル，ポリビニルアセタール，フェノキシ樹脂，シリコー
ン樹脂，アクリル樹脂，塩化ビニル樹脂，塩化ビニリデ
ン樹脂，酢酸ビニル樹脂，セルロース樹脂，またはこれ
らの共重合体、およびこれらのハロゲン化物、シアノエ
チル化合物が用いられる。

【００１５】電荷輸送層３は、電荷輸送物質と樹脂バイ
ンダーより構成される。電荷輸送物質としては、ヒドラ
ゾン系化合物，ブタジエン系化合物，アミン系化合物，
スチリル系化合物，ジスチリル系化合物を単独または組
み合わせて用いることができる。電荷輸送用の樹脂バイ
ンダーとしては、各種ポリカーボネート，ポリスチレ
ン，ポリフェニレンエーテルアクリル樹脂などを用いる
ことができる。 実施例１ ポリアミド（商品名：Ｔ１７１，（株）ダイセルーヒュ
ルス製）４重量部とスチレン−マレイン酸樹脂（商品
名：スプラパールＡＰ２０，ＢＡＳＦ Ｊａｐａｎ Ｌ
ｔｄ．製）１重量部をメタノール２００重量部と１−ブ
タノール１００重量部との混合溶媒に溶解させ調整した
樹脂皮膜塗布液を用いて上述円筒基体上に樹脂皮膜０．
１μｍをＤｉｐ法にて形成し、支持体を作成した。

【００１６】電荷発生物質として下記化学式（II）に示
したビスアゾ化合物１０重量部、結着剤樹脂としてポリ
ビニルアセタール（商品名 エスレックＫＳ−１：積水
化学工業）１０重量部とを、メチルエチルケトン８００
重量部と混合し、さらにアルカリ金属含有物質として前
記化学式（Ｉ−１）に示したナトリウムメチラート０．
０２重量部（０．２重量％）を加え３時間混合機により
混練を行い電荷発生層用の塗液を作成した。

【００１７】

【化３】

【００１８】電荷輸送物質として下記化学式（III ）に
示される化合物１０００重量部、樹脂バインダーとして
ビスフェノールＡ型−ビフェニル共重合ポリカーボネー
ト（商品名ＢＰ−Ｐｃ：出光興産製）１０００重量部、
酸化防止剤として２，６−ジ−ｔｅｒｔ−ブチル−４−
メチルフェノール５０重量部をジクロロメタン７０００
重量部に溶解し、表面潤滑剤としてシリコーンオイルＫ
Ｐ３４０（信越化学社製）を加え混合して電荷輸送層の
塗布液を調製した。

【００１９】以上の塗布液を用いて上述支持体上に電荷
発生層０．３μｍ、電荷輸送層３０μｍを順次Ｄｉｐ法
にて形成し、感光体を作製した。

【００２０】

【化４】

【００２１】実施例２〜９ 実施例１のアルカリ金属含有物質の組成を変更し、その
他は実施例１と同様に感光体を作製した。用いたアルカ
リ金属含有物質の組成を表１に、評価した感光体の特性
とあわせて示した。 比較例１ 電荷発生層用塗布液中にアルカリ金属含有物質を配合し
ない他は実施例１と同様にして感光体を作製した。 実施例１０ 実施例１の電荷発生物質を下記化学式（IV）で示される
化合物に変えて、実施例１と同様に感光体を作成した。

【００２２】

【化５】

【００２３】実施例１１ 実施例１の電荷発生物質を下記化学式（Ｖ）で示される
化合物に変えて、実施例１と同様に感光体を作成した。

【００２４】

【化６】

【００２５】比較例２ 電荷発生層用塗布液中にアルカリ金属含有物質を配合し
ない他は実施例１０と同様にして感光体を作製した。 比較例３ 電荷発生層用塗布液中のアルカリ金属含有物質を配合し
ない他は実施例１１と同様にして感光体を作製した。

【００２６】またそれぞれの電荷発生層を形成する塗布
液について、１週間放置後にそれぞれの実施例，比較例
と同様に感光体を作成した。このようにして得られた積
層型有機感光体の電子写真特性を電子写真式複写機を模
擬したプロセスを有する試験機に取り付けて測定した。
測定条件を以下に示す。

【００２７】コロナ放電により感光体表面を−８００Ｖ
に負帯電させた後、５秒後の暗中での帯電保持率を、Ｖ
ｋ５（％）とした。また−８００Ｖに帯電させ照度２
（ｌｘ）の白色光を照射し、表面電位を−４００Ｖにな
るまでの時間を求め、半減衰露光量Ｅ_1/2 とした。これ
らの結果を表１に示した。

【００２８】

【表１】

【００２９】（アルカリ金属含有物質の添加量は電荷発
生物質に対しての重量％を示す。） 以上の結果から明らかなようにかなように、実施例１か
ら９および比較例１よりアルカリ金属含有物質を添加し
ない場合にはＶｋ５の低下がみられたが、アルカリ金属
含有物質を０．０５重量％から２重量％の範囲で添加し
た場合には塗布液を１週間放置しても平均粒径に変化が
見られなかった。また作成した感光体における半減露光
量に変化がなく、Ｖｋ５の低下も確認されなかった。こ
れに対しアルカリ金属含有物質の添加量が少ない場合に
は平均粒径の増大が著しく、多い場合にはＶｋ５が低下
した。また電荷発生物質を変更した場合にもアルカリ金
属含有物質による電子写真特性の低下は確認されなかっ
た。以上よりアルカリ金属含有物質を添加した場合、塗
布液の保存安定性が良好であることが分かる。 実施例１２ 電荷輸送物質として下記化学式（VI）に示される化合物
１０００重量部、樹脂バインダーとしてビスフェノール
Ａ型−ビフェニル共重合ポリカーボネート（商品名ＢＰ
−Ｐｃ：出光興産製）１０００重量部、酸化防止剤とし
て２，６−ジ−ｔｅｒｔ−ブチル−４−メチルフェノー
ル５０重量部をジクロロメタン７０００重量部に溶解
し、表面潤滑剤としてシリコーンオイルＫＰ３４０（信
越化学社製）を加え混合して電荷輸送層の塗布液を調整
した。電荷発生物質として下記化学式（VII) に示した
ビスアゾ化合物を１０重量部、結着剤樹脂としてポリビ
ニルアセタール（商品名 エスレックＫＳ−１：積水化
学工業）１０重量部とを、メチルエチルケトン８００重
量部と混合し、さらにナトリウムメチラート０．０２重
量部（０．２重量％）を加え３時間混合機により混練を
行い電荷発生層用の塗液を作成した。

【００３０】以上の塗布液を用いて上述支持体上に電荷
輸送層１５μｍ，電荷発生層０．５μｍを順次Ｄｉｐ法
にて形成し、感光体を作製した。

【００３１】

【化７】

【００３２】実施例１３〜２０ 実施例１２のアルカリ金属含有物質の組成を変更し、そ
れ以外は実施例１２と同様に感光体を作製した。用いた
金属含有物質の組成を表２に評価した感光体の特性とあ
わせて示した。 比較例 ４ 電荷発生層用塗布液中のアルカリ金属含有物質を配合し
ない他は実施例１２と同様にして感光体を作製した。

【００３３】またそれぞれの電荷発生層を形成する塗布
液について、１週間放置後にそれぞれの実施例，比較例
と同様に感光体を作成した。このようにして得られた積
層型有機感光体の電子写真特性を電子写真式複写機を模
擬したプロセスを有する試験機に取り付けて測定した。
測定条件を以下に示す。

【００３４】コロナ放電により感光体表面を＋８００Ｖ
に正帯電させた後、５秒後の暗中での帯電保持率を、Ｖ
ｋ５（％）とした。また＋８００Ｖに帯電させ照度２
（ｌｘ）の白色光を照射し、表面電位を＋４００Ｖにな
るまでの時間を求め、半減衰露光量Ｅ_1/2 とした。これ
らの結果を表２に示す。

【００３５】

【表２】

【００３６】（アルカリ金属含有物質の添加量は電荷発
生物質に対しての重量％を示す）以上の結果から明らか
なようにかなように、実施例１２から２０および比較例
４よりアルカリ金属含有物質を添加しない場合にはＶｋ
５の低下がみられたが、アルカリ金属含有物質を０．０
５重量％から２重量％の範囲で添加した場合には塗布液
を１週間放置しても平均粒径に変化が見られなかった。
また作成した感光体における半減露光量に変化がなく、
Ｖｋ５の低下も確認されなかった。これに対しアルカリ
金属含有物質の添加量が少ない場合には平均粒径の増大
が著しく、多い場合にはＶｋ５が低下した。以上よりア
ルカリ金属含有物質を添加した場合、塗布液の保存安定
性が良好であることが分かる。

【００３７】

【発明の効果】本発明によれば、ナトリウムアルコキシ
ド，ナトリウム有機酸塩、カリウムアルコキシドまたは
カリウム有機酸塩の群から選ばれた少なくとも一つを用
いて電荷発生物質を有機溶媒中に分散させた塗布液を用
いて電荷発生層を形成するので電荷発生物質の有機溶媒
中における分散性が向上し、そのために塗工性が改善さ
れるとともに、感光体の外観が良くなり正帯電あるいは
負帯電のいずれにおいても電子写真特性に優れる感光体
が安定して得られる。

【００３８】有機溶媒がケトン類，エーテル類，アルコ
ール類の群から選ばれた少なくとも一つであるときにま
たは電荷発生物質がビスアゾ顔料であるときに分散性が
最もよくなり、正帯電あるいは負帯電のいずれにおいて
も電子写真特性に優れる感光体が安定して得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例に係る負帯電積層型の電子写
真用感光体を示す断面図

【図２】この発明の実施例に係る正帯電積層型の電子写
真用感光体を示す断面図

【符号の説明】

１ 導電性基体 ２ 電荷発生層 ３ 電荷輸送層 ４ 感光層 ５ 表面被覆層

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】導電性基体上に電荷発生層，電荷輸送層を
   設けてなる電子写真用感光体の製造方法において、ナト
   リウムアルコキシド，ナトリウム有機酸塩、カリウムア
   ルコキシドまたはカリウム有機酸塩の群から選ばれた少
   なくとも一つを用いて電荷発生物質を有機溶媒中に分散
   させ、この塗布液を用いて電荷発生層を形成することを
   特徴とする電子写真用感光体の製造方法。
2. 【請求項２】請求項１に記載の製造方法において、有機
   溶媒はケトン類，エーテル類，アルコール類の群から選
   ばれた少なくとも一つであることを特徴とする電子写真
   用感光体の製造方法。
3. 【請求項３】請求項１に記載の製造方法において、電荷
   発生物質がビスアゾ顔料であることを特徴とする電子写
   真用感光体の製造方法。