JPH08252657A - 連続鋳造用浸漬ノズルの詰まり防止方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は浸漬ノズルのノズル閉塞を防止した
上で、常に安定して介在物欠陥のない加工用鋼板を鋳造
できる鋳造方法を提供する。 【構成】 浸漬ノズル内径と同等かそれより小さい径の
穴を複数個有し、且つ、その穴の位置を変更可能な介在
物付着耐火物を通過させた溶鋼を浸漬ノズル内に供給す
ることを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズルの詰まり防止
方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は溶鋼を連続鋳造する際に
浸漬ノズル内で生じるノズル詰まりを防止することによ
り、鋳片の品質向上と安定化をはかると同時に、キャス
ト当たり鋳造量を増加させ、連続鋳造の生産性を向上さ
せようとするものである。

【０００２】

【従来の技術】現在、連続鋳造においては、溶鋼を酸化
させることなくタンディッシュからモールド内に供給す
るために、浸漬ノズルが利用されている。浸漬ノズルの
材質としては、Ａｌ₂ Ｏ₃ 及びＣを主体とし、これに２
０wt％程度のＳｉＯ₂ を含有したアルミナグラファイト
のものが主流となっている。このような浸漬ノズルで
は、鋳造時間の経過とともに鋼中析出物のアルミナ及び
地金がノズル内壁に付着し、激しい場合にはノズル閉塞
を引き起こし鋳造を停止する場合もあった。また、ノズ
ル閉塞と鋳型内の溶鋼流動を乱す原因にもなるため、パ
ウダー巻き込みによる介在物欠陥を増加させる。

【０００３】この問題を解決する手段の一つとして、例
えば特公昭５８−３４６７号公報に示されるように、浸
漬ノズル内孔と同心円となる多孔質の円状耐火物（内孔
体）を浸漬ノズル本体に内装し、この多孔質耐火物内壁
からＡｒその他不活性ガスを吹き込むことが知られてい
る。このガス吹き込みは、ノズル内壁と溶鋼との接触面
積を減少させ、更に溶鋼を撹拌すること、あるいは付着
物をガス気泡により強制的に剥離させることによりノズ
ル内壁へのアルミナ介在物の付着成長を防止する効果が
ある。

【０００４】また、別の手段として、例えば特開昭６４
−４０１５４号公報に記載されているいるように、Ｚｒ
Ｏ２−ＣａＯ−Ｃ質材料からなるノズルの使用が試みら
れている。このＺｒＯ２−ＣａＯ−Ｃ質材料をノズル内
壁に用いることで、耐火物中ＣａＯと溶鋼中Ａｌ２Ｏ３
とを反応させカルシウムアルミネイトの低融点物を生成
させる。この低融点物を溶鋼流により洗い流し、微小な
溶損を与えることにより付着を防止するものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ノズル
内壁へのアルミナの付着を確実に防止するためには溶鋼
中に多量のＡｒガスを吹き込む必要があり、この場合吹
き込まれたＡｒ気泡は完全に浮上せず、モールド内で凝
固界面に捕捉され、熱間圧延、冷間圧延後に発生する気
泡系欠陥の原因となる。これに対し、浸漬ノズル内壁か
らのＡｒガス吹き込みを効果的に実施する方法が提案さ
れているが、気泡系欠陥が発生しない程度までＡｒ流量
を低減し、その上でアルミナの付着を確実に防止できる
技術は開発されていない。

【０００６】一方、Ａｒガス吹き込みを実施せず、ノズ
ル閉塞を防止するためにＺｒＯ２−ＣａＯ−Ｃ質のノズ
ルが使用されているが、鋳造時間が長いか、あるいは溶
鋼の清浄性が低下する場合には、ノズル内壁に付着した
アルミナを低融点化するのに十分なＣａＯを供給できな
くなり、鋳造後半でノズル閉塞が発生する。このため、
ＺｒＯ２−ＣａＯ−Ｃ質のノズルも確実な閉塞防止対策
になっていないのが現状である。

【０００７】これらの問題を有する現状に鑑み、本発明
は浸漬ノズルのノズル閉塞を防止した上で、常に安定し
て介在物欠陥のない加工用鋼板を鋳造できる鋳造方法を
提供することを目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、浸漬
ノズル内径と同等かそれより小さい径の穴を複数個有
し、且つ、その穴の位置を変更可能な介在物付着耐火物
を通過させた溶鋼を浸漬ノズル内に供給することを特徴
とする連続鋳造用浸漬ノズルの詰まり防止方法である。

【０００９】

【作用】本発明者らは、浸漬ノズルの閉塞を防止する方
法について種々の検討を行なった結果、浸漬ノズルの閉
塞の原因となる介在物を除去した溶鋼を浸漬ノズル内に
供給する本発明を完成したものである。つまり、溶鋼を
浸漬ノズルと同等かそれ以上に介在物を付着する介在物
付着耐火物を通過させ溶鋼中介在物を除去し、且つ、除
去した介在物を鋳造を中断することなく系外に取り出せ
ば、ノズル閉塞による鋳造の中断あるいは鋳型内の溶鋼
流動を乱すことも防止可能となることを見いだしたもの
である。

【００１０】以下、第１図に基づき本発明を更に詳細に
説明する。図１は上ノズル１の下に介在物付着耐火物２
に設置された穴４、介在物付着耐火物２とスライディン
グノズル８の接続耐火物７、溶鋼注入量を制御するスラ
イディングノズル８、スライディングノズル８と浸漬ノ
ズル１０の接続耐火物９、および浸漬ノズル１０の吐出
口１１を介して溶鋼６を注入する際の断面図である。

【００１１】本発明は浸漬ノズル１０に介在物が付着
し、吐出口１１からの溶鋼量が左右で不均一になるのを
防止するのと、激しい時には浸漬ノズル１０が閉塞し鋳
造ができなくなるのを防止するために発明されたもので
ある。溶鋼６中の介在物１２は介在物付着耐火物２を通
過することにより、介在物付着耐火物２の内壁に付着さ
れ、浸漬ノズル１０内へは介在物が除去された溶鋼が供
給されるため、浸漬ノズル１０内での介在物による閉塞
が防止可能になる。

【００１２】介在物の付着は溶鋼と耐火物の接触面積が
大きくなる程付着されやすくなる。従って、浸漬ノズル
１０を閉塞する介在物を介在物付着耐火物２の穴で除去
するためには、浸漬ノズル１０の内径と同等か、あるい
はそれより小さい径の穴にする必要がある。また、介在
物付着耐火物２の厚みは厚いほど介在物の付着効果は大
きいが、耐火物のコストおよび作業性を考慮すると工業
的には穴径と同じか、穴径の２倍程度で十分効果が発揮
できる。

【００１３】介在物付着耐火物２の材質は通常の製鋼で
使用されているアルミナ系耐火物、マグネシア系耐火物
あるいは浸漬ノズルに使われているアルミナグラファイ
ト系耐火物等、耐熱性のある耐火物であれば使用可能で
ある。

【００１４】介在物付着耐火物２の穴の内壁に介在物が
付着すると浸漬ノズルの閉塞と同様に溶鋼の供給が不可
能になる。従って、本発明では介在物付着耐火物２の穴
の内壁に介在物が付着し、溶鋼の供給速度が低下した時
点で介在物付着耐火物２を油圧等で移動させ、新しい穴
に変更できるようにしたものである。

【００１５】変更の時期は通常行なわれているようにス
ライディングノズル８の開口度の測定値を用いるか、鋳
型内湯面レベルを観察すれば、介在物付着耐火物２の介
在物付着度合を容易に判断可能である。また、経験的に
把握されている鋼種ごとの浸漬ノズル内の溶鋼通過で判
断しても良い。尚、第１図は介在物付着耐火物２の穴３
を使用して鋳造していたが、介在物付着耐火物２の穴３
に介在物１２が付着し、スライディングノズル８の開口
度から判断して、溶鋼の供給速度が遅くなったと判断
し、介在物付着耐火物の穴４に変更した状態の図であ
る。図１では複数の穴を直線的に配置した例を示した
が、円周上に配置し介在物付着耐火物を回転することに
より、新しい穴に変更しても良い。

【００１６】介在物付着耐火物２の穴の数については、
浸漬ノズル閉塞が生じ易い鋼種か、あるいは多連鋳を必
要とする大ロットの鋼種かにより異なるが、通常のスラ
ブ連鋳機の場合は２個ないし３個あれば良い。また、介
在物付着耐火物の位置であるが、浸漬ノズル１０の前で
あればスライディングノズル８の前でも後でも同じ効果
を有する。

【００１７】

【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明に
ついて説明する。Ｔｉを０．０８wt％含有する炭素濃度
３０ppm の極低炭素鋼を４００分間鋳造した。浸漬ノズ
ルの通過溶鋼量は４ｔ/minで、鋳造中は内径９０mmのア
ルミナグラファイト浸漬ノズルの内孔体から４．０Nl/m
inのＡｒガスを流した。本発明の実施例および比較例と
も鋳造寸法は厚み２４５mm×幅１５００mmで、８５００
mm長さに切断して１コイル単位とした。このスラブを常
法により熱間圧延、冷間圧延し、最終的に厚み０．７mm
×幅１５００mmコイルの冷延鋼板とした。

【００１８】鋳片品質については、冷間圧延後の検査ラ
インで目視検査を行ない、１コイル当たりに発生する介
在物欠陥の発生個数を評価した。また、浸漬ノズルの詰
まり状況は、鋳造後に浸漬ノズルを回収し吐出口直上の
内壁アルミナの付着厚みで評価した。

【００１９】表１に示すごとく、実施例は浸漬ノズル内
径と同等かそれより小さい穴径を有する介在物付着耐火
物を使用し、介在物を介在物付着耐火物に付着させ、３
ｃｈごとに介在物付着耐火物の穴の位置を変更した結
果、浸漬ノズルのノズル詰まりを確実に防止でき、９ｃ
ｈを完鋳した。３ｃｈごとに穴の位置を変更した理由
は、従来の極低炭素鋼の鋳造経験から、３ｃｈでは浸漬
ズルの詰まりによる操業および品質への悪影響が発生し
ないことが分かっているためである。その結果、鋳型内
の湯面変動は抑制され、パウダー巻き込み等に起因する
介在物欠陥は全く発生しなかった。

【００２０】これに対して、比較例１は介在物付着耐火
物を使用しなった場合で、特に、６ｃｈ以降浸漬ノズル
の詰まりが発生し鋳造を中断した。また、浸漬ノズル詰
まりのため鋳型内の湯面変動が大きくなり、パウダー巻
き込みによる介在物欠陥が多発した。比較例２は浸漬ノ
ズルの内径より、介在物付着耐火物の穴が大きい場合
で、３ｃｈごとに介在物付着耐火物の穴の位置を変更し
たが、６ｃｈ以降浸漬ノズルの詰まりが発生し鋳造を中
断した。鋳造後、介在物付着耐火物の穴の介在物付着量
を調査したが、実施例と比較するとほとんど介在物を付
着しておらず、その結果、浸漬ノズルの詰まりが発生し
たものである。その結果、湯面変動が大きくなり、パウ
ダー巻き込みによる介在物欠陥が多発した。

【００２１】

【表１】

【００２２】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明により連
続鋳造用ノズルの閉塞を確実に防止できるため、鋳片の
品質向上と安定化が実現でき、生産性も格段に良くな
る。また、浸漬ノズル閉塞に起因する種々の非定常作業
を省略することができ、操業性も良好となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による注入方法を示した図である。

【符号の説明】

１…上ノズル ２…介在物付着耐火物 ３…穴 ４…穴 ５…穴 ６…溶鋼 ７…介在物付着耐火物とスライディングノズルの接続耐
火物 ８…スライディングノズル ９…スライディングノズルと浸漬ノズルの接続耐火物 １０…浸漬ノズル １１…吐出口 １２…介在物

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 浸漬ノズル内径と同等かそれより小さい
   径の穴を複数個有し、且つ、その穴の位置を変更可能な
   介在物付着耐火物を通過させた溶鋼を浸漬ノズル内に供
   給することを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズルの詰まり
   防止方法。