JPH08247294A - 高圧用密封装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 密封流体の圧力変動に対して密封装置の各構
成部材の撓みや変形、破壊が発生せず、密封流体に異物
が混入している場合でも、この異物がシール特性を発揮
するメインシールまで到達することを防ぐことのによ
り、安定したシール性能と寿命の長い高圧用密封装置を
提供する 【構成】 補助シール９から突出して、メインシール６
に当接するトラップリップ１２（可撓性のリップ）を、
このトラップリップ１２のリップ先端部１２ａの環状密
封空間１０側の当接角度が大きくなるように備え、この
可撓性のリップ１２により環状密封空間１０の一部を仕
切り、連通孔１１と接続したトラップ室１３を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は密封流体の圧力により相
対往復移動するハウジング部材と軸の隙間を密封する高
圧用密封装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来のこの種の密封装置としては、図７
に示されるように、２つのシール部１０３と１０４によ
りハウジング１０１と軸１０２との隙間を密封するもの
があるり、この密封装置１００は２つのシール部１０３
と１０４と軸１０２の摺動表面とにより閉塞される密封
空間１０５を備えている。

【０００３】この密封装置１００を回動する軸に対して
用いて作動させた場合には、軸が回動することに伴い、
シール先端部の自吸作用により密封空間１０５の圧力が
低下し、各シール部のリップ先端部１０３ａ，１０４ａ
から密封空間１０５側のリップ軸方向部が１０３ｂ，１
０４ｂが軸１０２の外周面に強く圧接させられてシール
性の低下や摩擦の増大により寿命の短縮させられる等の
問題や、また、密封流体が封入されている領域Ｓ１０
１，Ｓ１０２と密封空間１０５との圧力差により密封流
体がリップ先端部１０３ａ，１０４ａと軸１０２の摺動
面との間を通過して密封空間１０５の中に浸入してしま
うという問題があった。

【０００４】そこで、どちらかの密封領域Ｓ１０１，Ｓ
１０２と密封空間１０５を連通させるために連通孔１０
６を設けて圧力差をなくし、上記の問題を解決させてい
る。さらに、実公昭５７−４１５０２では図８に示され
るように、領域Ｓ１０１側にある密封流体が極力密封空
間１０５の中に浸入しないように被覆部材１０７を設け
て連通孔１０６を覆い、領域Ｓ１０１側の気体が微小隙
間１１０を経て連通孔１０６を通過することにより圧力
差を解消するように構成した密封装置１２０が知られて
いる。

【０００５】また、相対往復動を行うハウジングまたは
軸に装着される密封装置において、上記のような２つの
シール部材と、シール部材の間に密封空間を備えた構成
の密封装置を適用することがある。すなわち、往復動を
行う部材に装着される密封装置は軸方向に比較的高い圧
力が加わるので密封性を高める場合や、メインシールを
密封流体中の異物から保護する保護シールを必要とする
場合に、２つのシール部を設けるのである。

【０００６】図９に示された密封装置１３０はＡ１３１
方向に往復動する軸１３２とハウジング１３１との間の
隙間を密封するもので、領域Ｓ１０３側に高い圧力が加
わる密封流体Ｌ１３０が封入されている。この密封装置
１３０はメインシール１３３とメインシール１３３を保
護する保護シール１３４を領域Ｓ１０３側に備え、保護
シール１３４が、メインリップ１３３ａに密封流体Ｌ１
３０に混入している異物Ｐ１３０が噛込んでシール性能
を低下させることを防止している。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このような図９の往復
動に供される従来例では、２つのシール部材の間に形成
される密封空間１３５の圧力差の問題として図７の従来
例で説明した問題に加えて、特に、高い流体圧が保護シ
ール１３４に直接加わることから、保護シールがメイン
シール１３３側に撓んだり、変形したりする問題があり
領域Ｓ１０３と密封空間１３５を疎通させる連結孔１３
６が必要である。

【０００８】しかしながら、連結孔１３６を設けると、
密封流体Ｌ１３０の異物Ｐ１３０が連結孔１３６を通り
抜けて密封空間１３５に入り込み、さらにメインシール
１３３と保護シール１３４との隙間にある流路１３７を
通り抜けてメインリップ１３３ａまで到達してしまう。

【０００９】また、図８のような被覆部材１０７を高圧
側に設定すると、この被覆部材１０７は金属等の剛性を
備えたカバーであることから、微小隙間１１０をつぶし
て圧力側と密封空間との間の疎通をなくし、シール部１
０３をシール部１０４側に撓ませてしまう。さらには、
圧力が瞬時に加わった場合には、被覆部材１０７のカバ
ー部１０７ａが潰れて変形してしまうという問題があ
る。

【００１０】本発明は上記従来技術の問題を解決するた
めになされたもので、その目的とするところは、密封流
体の圧力変動に対して密封装置の各構成部材の撓みや変
形、破壊が発生せず、密封流体に異物が混入している場
合でも、この異物がシール特性を発揮するメインシール
まで到達することを防ぐことのにより、安定したシール
性能と寿命の長い高圧用密封装置を提供することにあ
る。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明にあっては、同軸的に設けられ、相対移動するハ
ウジングと軸の隙間を密封するもので、メインシール
と、このメインシールよりも密封流体側に配設される補
助シールと、前記メインシールと補助シールにより閉塞
される環状密封空間とを備え、さらに、密封流体側と環
状密封空間とを連通させる連通孔を備える高圧用密封装
置において、メインシールまたは補助シールのどちらか
一方のシールから突出して、他方のシールに当接する可
撓性のリップを、この可撓性のリップのリップ先端部の
前記環状密封空間側の当接角度が大きくなるように備
え、この可撓性のリップにより前記環状密封空間の一部
を仕切り、連通孔と接続したトラップ室を形成すること
を特徴とする。

【００１２】また、前記トラップ室の外側に可撓性のリ
ップ先端部を覆い、微小流路を形成する可撓性のサブリ
ップを備えることを特徴とすることも好ましい。

【００１３】同軸的に設けられ、相対移動するハウジン
グと軸の隙間を密封するもので、メインシールと、この
メインシールよりも密封流体側に配設される補助シール
と、前記メインシールと補助シールにより閉塞される環
状密封空間とを備える高圧用密封装置において、前記補
助シールのハウジングまたは軸の摺動面と当接するリッ
プ先端部は近接して設けられた２本の環状の突条であ
り、どちらか一方の突条に摺動面とは接しない非当接部
を設けることでリップ先端部にシール脆弱部を形成し、
さらにこの補助シールにリップ先端部よりもメインシー
ル側に延びて摺動面と当接するサブリップと、このサブ
リップと前記リップ先端部により閉塞されるトラップ室
とを備えてもよい。

【００１４】

【作用】上記のように構成された本発明にあっては、密
封流体側の圧力が環状密封空間よりも高まると、連通孔
を通って密封流体の圧力が環状密封空間に伝わり、密封
装置の各構成部材の撓みや変形を抑える。

【００１５】可撓性のリップはリップ先端部が他方のシ
ールと環状密封空間側の当接角度が大きくなるように当
接しているので、一方向弁として機能すると同時に、開
弁隙間間隔が狭いので密封流体中に含まれる異物を環状
密封空間へは送らずにトラップ室の中に蓄積する。

【００１６】可撓性のサブリップを備えることで、リッ
プ先端部から環状密封空間へと通じる微小流路が形成さ
れて圧力変化が緩やかになり、リップの開弁隙間間隔を
安定させる。

【００１７】補助シールのリップ先端部にはシール脆弱
部が形成されるので、所定以上の圧力が加わった場合に
は、この脆弱部が差圧弁となり密封流体を補助シールの
トラップ室に導き、さらに、サブリップと摺動面の隙間
を通って環状密封空間へと流入する。この時サブリップ
と摺動面の隙間間隔は非常に狭いので密封流体中の異物
は通り抜けることができず、トラップ室の中に蓄積され
る。

【００１８】

【実施例】以下に本発明を図示の実施例に基づいて説明
する。

【００１９】（第１実施例）図１は本発明を第１の実施
例として高圧用の密封装置１に適用したもので、密封装
置１はハウジング２と軸３の隙間に設けられ、軸３に接
合されたピストン部材４を圧力室５に流入される密封流
体Ｌの圧力により矢印Ａ１方向に往復動させる場合にお
いて、軸３とハウジング２を密封するものである。

【００２０】密封装置１はメインシール６と密封流体Ｌ
側に補助シール９とを備えている。メインシール６はハ
ウジング２の内周に嵌着される嵌着部６ｂと軸３の摺動
面と当接するメインリップ６ａを有し、メインリップ６
ａはバネ８で軸３に緊迫している。また７はメインリッ
プ６ａの軸３の往復動や密封流体Ｌの圧力による変形を
防止するためのサポートリングである。

【００２１】補助シール９は、密封流体Ｌ中の異物Ｐが
メインリップ６ａに噛み込んでシール性能がを低下する
ことを防止するもので、補助リップ９ａが軸３の摺動面
と当接している。しかしこの補助シール９はあくまでも
メインシール６を保護する目的で配設されているもので
あり、密封流体Ｌの圧力が急激に変化して衝撃圧となっ
た場合にはメインシール６と補助シール９の間に存在し
ている環状密封空間１０との圧力差により撓む場合があ
る。そこで補助シール９の径方向部に密封流体Ｌの圧力
室５と環状密封空間１０とを接続する連通孔１１が設け
られている。

【００２２】さらに、この連通孔１１を覆うように補助
シール９から延びた可撓性のリップとしてのトラップリ
ップ１２がメインシール６の嵌着部６ｂの内周に当接し
ている。このトラップリップ１２は環状密封空間１０の
一部を仕切り、連通孔１１と接続されたトラップ室１３
を形成する。

【００２３】ここで、可撓性のリップとは本実施例では
リップ先端部９ａと同じ材料で成形されたゴム状の弾性
体を例示しているが、これにこだわらず、スプリング性
を備えた金属やプラスチック製であっても良い。

【００２４】トラップリップ１２のリップ先端部１２ａ
は環状密封空間１０側の当接角度が大きくなるように接
触しているので、密封流体Ｌを連通孔１１から環状密封
空間１０方向への一方向に流通させる一方向弁となる。

【００２５】次に上記のように構成された密封装置１の
作用を説明する。

【００２６】圧力室５の圧力が環状密封空間１０よりも
高まると、連通孔を通って密封流体Ｌの圧力が環状密封
空間１０に伝わり、密封装置１の補助シール９の撓みや
変形を抑える。

【００２７】トラップリップ１２はリップ先端部１２ａ
が環状密封空間１０側の当接角度が大きくなるように当
接しているので、一方向弁として機能すると同時に、開
弁隙間間隔が狭いので密封流体中に含まれる異物を環状
密封空間１０へは送らずにトラップ室１３の中に蓄積す
る。トラップ室１３からリップ先端部１２ａと嵌着部６
ｂの内周表面の隙間を通って環状密封空間１０へと浸入
した密封流体Ｌには異物Ｐが存在しないので、メインリ
ップ６ａに噛み込むことはない。

【００２８】圧力室５の圧力が環状密封空間１０よりも
低くなると、環状密封空間１０内にある密封流体は補助
リップ９ａを通って圧力室５側へと還流する。

【００２９】（第２実施例）図２は本発明の第２実施例
である。当実施例ではトラップリップ２１がメインシー
ル６側から突出し補助リップ９と当接している。また、
トラップ室１３の外側にでリップ先端部２１ａを覆う補
助リップ９から突出した可撓性のサブリップ２２が設け
られている。トラップリップ２１とサブリップ２２との
間には微小流路２３が形成される。

【００３０】可撓性のサブリップ２２を備えることで、
リップ先端部２１ａから環状密封空間１０へと通じる微
小流路２３が形成されて圧力変化が緩やかになり、トラ
ップリップ２１の開弁隙間間隔を安定させると同時に、
微小流路２３がラビリンスシールとなり、万が一トラッ
プリップ２１から漏れた異物Ｐを捕捉することが可能に
なる。

【００３１】その他の構成及び作用について、上記した
第１の実施例と同様である場合には、同一の構成部分に
ついては同一の符号を付してその説明を省略する。

【００３２】（第３実施例）図３は本発明の第３の実施
例で、第１の実施例のメインシール６に突条３１を設け
この突条３１にトラップシール１２のトラップ室１３側
側面が対向するように構成したものである。

【００３３】突条３１とトラップシール１２の側面は密
接させてもよいし、また微小間隔で離して対向させても
よい。３３は突条３１とトラップシール１２の側面を微
小間隔で離して対向させた場合に形成される微小流路で
ある。

【００３４】本実施例では、突条３１と広い面積で接触
することになるので、トラップリップ１２の一方向弁と
しての機能が、より確実になり、環状密封空間１０から
トラップ室１３へと密封流体が逆流することが完全に防
止される。

【００３５】（第４実施例）図４は本発明の第４の実施
例で、トラップリップ４１をメインシール６のメインリ
ップ６ａの近傍に設けたもので、トラップ室１０の体積
が大きくなり、大量の異物Ｐを蓄積することができる。
４２は補助リップからメインリップ６ａに当接するよう
に突出させたサブリップである。

【００３６】（第５実施例）図５は本発明の第５の実施
例であり、連通孔５１が補助シール５４の最外周部にあ
り、連通孔５１と環状密封空間１０を連通する流路５６
を嵌着部６ｂの端部に形成している。トラップリップ５
２は流路５６を塞ぐように設けられている。当実施例で
はトラップ室１３は密封装置の圧力室５側の外周部に設
けられることになる。また、流路５６の環状密封空間１
０側の出口には補助シール５４から突出したサブリップ
５５がメインシール６と当接している。

【００３７】異物Ｐは流路５６を第２のトラップ室とし
てみるならば、２つのトラップ室の中に捕捉されること
になる。

【００３８】（第６実施例）図６は本発明の第６の実施
例であり、メインシールには改良を加えず、補助シール
６１に本発明の技術的特徴を取り込んだもので、図６０
（ａ）は密封装置６０の全体構成図であり、図６０
（ｂ）は補助リップ６２の拡大説明図である。

【００３９】図６０（ｂ）で、補助リップ６２の構成を
説明する。リップ先端部６２ａ，６２ｂは近接して設け
られた２本の環状の突条であり、軸３の摺動表面と当接
して補助シールリップとしている。リップ先端部６２ｂ
には非当接部としての切れ目６３が設けてあり、この部
分が他の部分のリップ先端部よりもシール性能が劣るシ
ール脆弱部６５を形成している。

【００４０】また、この補助シール６２にリップ先端部
６２ａ，６２ｂよりもメインシール６側に延びて摺動面
と当接するサブリップ６２ｃ，６２ｄと、サブリップ６
２ｃとリップ先端部６２ａ，６２ｂにより閉塞されるト
ラップ室６４とを備えている。所定以上の圧力が圧力室
５に加わった場合には、この脆弱部６５が差圧弁となり
密封流体Ｌを補助シール６２のトラップ室６４に導く。
密封流体Ｌはさらに、サブリップ６２ｃ，６２ｄと摺動
面の隙間を通って環状密封空間へと流入するが、この時
サブリップ６２ｃ，６２ｄと摺動面の隙間間隔は非常に
狭いので密封流体Ｌ中の異物Ｐは通り抜けることができ
ず、トラップ室６５の中に蓄積される。

【００４１】

【発明の効果】本発明は上記の構成及び作用を有するも
ので、密封流体中の異物がトラップ室の中に留まり、メ
インシールが直接接触する環状密封空間には浸入しない
ので、メインシールの異物によるシール性能低下や劣化
が起こらず、安定したシール性能を長期間発揮する高圧
用密封装置が提供される。また、可撓性のリップは、衝
撃圧に対しても変形や破壊されるものではなく、丈夫で
あり、また、リップ部と同じ材料で成形することによ
り、低コストで実施可能なものである。

【００４２】可撓性のサブリップを備えることで、リッ
プ先端部から環状密封空間へと通じる微小流路が形成さ
れて圧力変化が緩やかになり、リップの開弁隙間間隔を
安定させるので、衝撃圧が加わり、その瞬間だけリップ
の開弁隙間間隔が大きくなって捕らえるべき異物を環状
密封空間へと流出させる危険を低下させる。

【００４３】補助シールのリップ先端部に本発明を適用
したものは、サブリップがトラップリップとして働き、
異物をトラップ室の中に蓄積する。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の第１の実施例に係る密封装置。

【図２】図２は本発明の第２の実施例に係る密封装置。

【図３】図３は本発明の第３の実施例に係る密封装置。

【図４】図４は本発明の第４の実施例に係る密封装置。

【図５】図５は本発明の第５の実施例に係る密封装置。

【図６】図６は本発明の第６の実施例に係る密封装置。

【図７】図７は従来の密封装置。

【図８】図８は従来の密封装置。

【図９】図９は従来の密封装置。

【符号の説明】

１ 密封装置 ２ ハウジング ３ 軸 ４ ピストン部材 ５ 圧力室 ６ メインシール ７ サポートリング ８ バネ ９ 補助シール １０ 環状密封空間 １１ 連通孔 １２ トラップリップ（可撓性のリップ） １３ トラップ室 Ｌ 密封流体 Ｐ 異物

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 同軸的に設けられ、相対移動するハウジ
   ングと軸の隙間を密封するもので、メインシールと、こ
   のメインシールよりも密封流体側に配設される補助シー
   ルと、前記メインシールと補助シールにより閉塞される
   環状密封空間とを備え、さらに、密封流体側と環状密封
   空間とを連通させる連通孔を備える高圧用密封装置にお
   いて、 メインシールまたは補助シールのどちらか一方のシール
   から突出して、他方のシールに当接する可撓性のリップ
   を、この可撓性のリップのリップ先端部の前記環状密封
   空間側の当接角度が大きくなるように備え、この可撓性
   のリップにより前記環状密封空間の一部を仕切り、連通
   孔と接続したトラップ室を形成することを特徴とする高
   圧用密封装置。
2. 【請求項２】 前記トラップ室の外側に可撓性のリップ
   先端部を覆い、微小流路を形成する可撓性のサブリップ
   を備えることを特徴とする請求項１に記載の高圧用密封
   装置。
3. 【請求項３】 同軸的に設けられ、相対移動するハウジ
   ングと軸の隙間を密封するもので、メインシールと、こ
   のメインシールよりも密封流体側に配設される補助シー
   ルと、前記メインシールと補助シールにより閉塞される
   環状密封空間とを備える高圧用密封装置において、 前記補助シールのハウジングまたは軸の摺動面と当接す
   るリップ先端部は近接して設けられた２本の環状の突条
   であり、どちらか一方の突条に摺動面とは接しない非当
   接部を設けることでリップ先端部にシール脆弱部を形成
   し、 さらにこの補助シールにリップ先端部よりもメインシー
   ル側に延びて摺動面と当接するサブリップと、このサブ
   リップと前記リップ先端部により閉塞されるトラップ室
   とを備えることを特徴とする高圧用密封装置。